離婚時の財産分与と年金分割について

離婚時の財産分与と年金分割について

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

老後の生活に不安があると考えて離婚に踏み切れない方は多いかもしれません。そのような方のお悩みは、年金分割という制度によって軽減できる可能性があります。

年金分割は、婚姻中に支払ってきた年金を離婚時に夫婦間で清算する制度です。夫婦間でお金の清算をする点では財産分与と共通する点もありますが、年金分割特有の複雑な仕組みもありますので、年金分割を検討されている方は、この記事を参照してみてください。

離婚時の財産分与と年金分割制度について

年金分割とは、将来の厚生年金の受給額を夫婦間で公平にするため、婚姻期間中に納めた厚生年金の納付記録を夫婦間で分割する制度です。

元々は、婚姻期間中の年金は夫婦の共有財産であると捉えて財産分与の対象となっていました。しかし、平成19年の年金法の改正により、年金分割が法律上の制度として確立されたことから、財産分与とは別の手続きとなりました。

年金分割の按分割合の決まり

年金分割は、夫婦間で将来の年金受給額の公平を図るための制度であり、年金には老後の保障という社会福祉の意味があります。そのため、当事者が合意すれば、どのような割合でも分けることができるというわけではなく、以下のような制限があります。

なお、実際に年金分割においては、按分割合2分の1とすることが圧倒的に多いです。

  • 年金分割によって、分割を受ける方(対象期間の標準報酬総額の少ない方)が、元々の持分を減らすことがないようにすること。
  • 年金分割によって、分割される方(対象期間の標準報酬総額の多い方)が、分割を受ける方(対象期間標準報酬総額の少ない方)の対象期間標準報酬総額を下回らないようにすること。

なお、実際に年金分割においては、按分割合2分の1とすることが圧倒的に多いです。

年金分割のできる年金、できない年金

年金分割の対象となるのは、年金制度の2階部分である厚生年金と旧共済年金です。
そのため、夫婦が自営業や非正規雇用であり、どちらも国民年金にしか加入していない場合には年金分割の対象となる年金はありません。

また、年金制度の3階部分である確定給付企業年金、確定拠出年金、退職等年金給付などについても、加入者の年金額を増やす制度ではあるものの、年金分割では対象外です。

年金分割の種類

合意分割 3号分割
離婚日 平成19年4月1日以降 平成20年4月1日以降
夫婦間の合意 必要(夫婦間で合意できない場合には、裁判所で按分割合を決定することになります) 不要
分割対象期間 婚姻期間全体(平成19年4月1日以前も含みます) 婚姻期間のうち、平成20年4月1日以降に第3号被保険者となっている期間
分割割合 夫婦間の合意した割合(または裁判所が決定した割合) 2分の1
請求期限 離婚日の翌日から2年以内 離婚日の翌日から2年以内
対象者 夫婦の一方(または両方)が第2号被保険者であること 夫婦の一方(または両方)が第2号被保険者であり、夫婦の一方に第3号被保険者となっている期間があること

年金分割の方法

年金分割の方法は、合意分割の場合と3号分割の場合で異なりますので、合意分割と3号分割のそれぞれの分割方法について解説していきます。

合意分割の場合

合意分割とは、夫婦の合意や裁判所の決定によって分割割合を決める方法です。
夫婦の話し合いで、按分割合を決めることができない場合には、家庭裁判所に決めてもらうという手続きを行うことが可能です。

夫婦間の合意による場合

年金分割については、夫婦で分割割合について話し合い、合意を目指することもできます。この場合、法律上の制限以内であれば夫婦が自由に割合を決定することができます。

分割割合の合意ができたら、合意内容を記載した協議書を作成します。その後。夫婦が揃って年金事務所に行き、協議書や必要書類を提出することで年金分割を行うことができます。なお、年金分割の合意内容を公正証書にしておくことで、夫婦の一方のみ年金事務所に足を運ぶだけで手続きが可能となります。

調停による場合

年金分割について、夫婦の話し合いで解決できない場合、家庭裁判所に調停を申し立てるという方法があります。

調停とは、裁判所で選任された調停委員の関与の下で夫婦間の話し合いを進めて合意を目指していくというものです。夫婦だけだと感情的になってしまう場合でも、調停委員という第三者が介入することでスムーズに解決できることがあります。

調停で合意が成立した場合、裁判所で調停調書という書面が作成されますので、夫婦揃って、または、夫婦の一方が年金事務所に足を運んで調停調書と必要書類を提出することで年金分割を行うことができます。

審判による場合

年金分割調停でも合意に至らず、調停が不成立となった場合、自動的に審判という手続きに移行します。

審判とは、裁判官が書面などにより当事者双方の意見も確認したうえで、裁判官が按分割合を決定するというものです。
審判に不服がある場合には、審判の決定から2週間以内に高等裁判所に即時抗告をすることができることになっています。

なお、審判で年金分割の按分割合を決定する場合、特段の事情がない限り、2分の1とされることが圧倒的に多いです。

離婚訴訟における附帯処分の手続き

附帯処分とは、離婚訴訟を行う際、離婚に関連する内容を一緒に裁判所に判断してもらうことを求める手続きであり、年金分割について附帯処分を申し立てることもできます。

審判に寄る場合と同様に、裁判所が年金分割の按分割合を決定する場合、特段の事情がない限り、2分の1とされることが圧倒的に一般的です。

離婚訴訟の際に年金分割の附帯処分の手続きをとってくことで、離婚訴訟が終わった後に年金分割の手続きを改めてする必要がなくなるというメリットがあります。

3号分割の場合

第3号被保険者に該当する方が、年金事務所に申請することで年金分割を行うことができます。
合意分割と異なり、3号分割の場合、分割割合は2分の1ずつと決まっていることから、年金分割の請求したい当事者が、他方当事者の同意を得ることなく、単独で手続きをすることが可能となっています。

年金分割の手続きの流れ

年金分割の大まかな流れは以下のような形となります。

  1. ・年金分割のための情報通知書を取得する
    年金事務所に申請して、年金分割のための情報通知書の発行を受けます。
         ↓
  2. ・按分割合の決定と証明書類の取得
    夫婦間の協議や、調停、審判などで、年金分割の按分割合について取り決めをします。また、取り決めた内容を証明する公正証書や調停調書などの書類を取得します。
    なお、3号分割の場合は、夫婦間での按分割合決定は不要です。代わりに第3号被保険者加入期間証明書という書類の取得が必要となります。
         ↓
  3. ・年金分割改定の請求
    上記書類のほかに標準報酬改定請求書、年金手帳、離婚後の戸籍謄本などの必要書類を準備して、年金事務所に年金分割改定の請求を行います。手続完了後、標準報酬改定通知書が送られてくるので保管しておきます。

離婚時の財産分与で専業主婦の年金について

専業主婦であるから年金分割の額が増えるということはなく、専業主婦であるか、仕事をしているかにかかわらず、年金分割の対象となるのは婚姻期間中に支払った年金部分のみであり、結婚前に配偶者が加入していた期間は年金分割の対象となりません。

また、配偶者が自営業者などで厚生年金・旧共済年金に加入しておらず、夫婦ともに国民年金のみという場合にはそもそもとして年金分割は行うことができません。

そして、当然のことではありますが、年金を受け取ることができるのは、年金受給年齢になってからですので、年金分割が完了したとしても実際に受け取ることができるのは離婚してから相当先になるということも少なくありません。そのため、専業主婦の方で離婚後の生活費の足しに年金分割を考えている場合には注意が必要です。

熟年離婚した場合の年金分割

相場

婚姻期間が長い熟年離婚では、対象となる年金支払い期間が大きくなる分、年金分割できる金額も比較的高くなります。
もっとも、一般的に年金受給額の増額幅は最大でも月数万円程度となることが多く、相場的には月3万円となりますので、年金分割をするだけで老後の生活を安定させることが難しい場合もあります。

年金分割が成立後に配偶者が亡くなってしまった場合

夫が亡くなってしまった場合

年金分割した後は、当事者それぞれ年金の標準報酬に基づいて支給されることになります。
そのため、年金分割の成立後に夫が亡くなってしまった場合であっても、分割後の妻の年金額に影響を及ぼすことはありません。

そのため、離婚時に年金分割を完了させておけば、その後に夫が死亡したとしても、妻は自分が死亡するまでの間、分割した年金額を受給額し続けることができます。

妻が亡くなってしまった場合

年金分割した後は、当事者それぞれ年金の標準報酬に基づいて支給されることになるのは、夫が亡くなった場合でも変わりません。
そのため、年金分割の成立後に妻が亡くなったとしても、夫の年金額に影響はなく、妻に分割した分が戻ってくることはありません。

離婚時の財産分与と年金分割に関するQ&A

財産分与のときに夫婦共働きの場合、年金分割はどうなりますか?

共働きで会っても、年金分割を行うことは可能です。夫婦双方が厚生年金に加入していた場合には、夫婦双方に厚生年金の納付記録が存在することになり、合意分割によって按分割合を決めたうえで、標準報酬月額が多い方から少ない方へ分割することになります。

また、年金分割は、将来夫婦が受け取る年金額を公平にするための制度ですので、必ずしも夫から妻に分割されるとは限りません。共働き夫婦において、妻の方が高収入の場合や、夫が自営業者・妻が厚生年金加入者である場合には、妻から夫に年金分割がされることもあります。

離婚時の年金分割を拒否することは可能ですか?

年金分割は、拒否することが原則としてできません。年金分割は、老後の保障という社会福祉の意味合いがあり、公的機関である厚生労働大臣に対して請求するものです。そのため、夫婦間の合意で年金分割の請求権を放棄することはできないと考えられています。

ただし、年金分割は、婚姻期間中における夫婦間の協力を前提としていますので、このような前提が覆されるような特別の事情がある場合には、例外的に按分割合を小さくしたりする余地があります。

また、年金分割の請求期間を過ぎていたり、婚姻期間前の年金分の分割を求められている場合には年金分割を拒否することができます。

障害年金を受給していた場合、離婚後に年金分割の対象になりますか?

国民年金は年金分割の対象とならず、厚生年金のみが年金分割の対象となるのと同様に、障害年金のうち障害基礎年金は年金分割の対象とならない一方で、障害厚生年金は年金分割の対象となりますので、障害年金を受給していた場合でも年金分割を行うことになります。

もっとも、年金分割をする側が、障害厚生年金を受給している場合、病気や怪我に対する保障という障害年金の趣旨から、障害年金の受給開始時期によっては(障害認定日が平成20年3月31日以前を除く)、受給者の同意なく行える3号分割を行うことができません。

離婚後に夫婦のどちらかが再婚した場合、年金分割に影響はありますか?

夫婦のどちらかが再婚しても、年金分割の結果として受け取ることになった年金額に影響はありません。
再婚により氏名や住所の変更などがある場合、年金受給者の情報を更新しておくために年金事務所への届出が必要です。

他方で、年金分割を受けた当事者が再婚をした場合(事実婚を含みます)、遺族厚生年金は受給することはできなくなります。そして、再婚した際には遺族厚生年金の失権手続を行うことが義務付けられており、この手続きを怠ってしまうと不正受給にあたるために注意を要します。

なお、分割を受けた当事者が再婚した後は、夫婦に子供がいる場合には、その子供に遺族厚生年金が支給されることになります。

離婚時に年金分割をしなかった場合はどうなりますか?

共働きで夫婦間に収入に差がない場合、婚姻期間が短期間である場合など、夫婦の協力によって支出された年金保険料に夫婦間で差がないか、支出された年金保険料が少ないような場合、将来受給できる年金額の差が小さいため、年金分割をしてもしなくても、年金分割によって年金受給額もあまり変わりませんので、離婚時に年金分割をしなくても問題にはなりません。

他方で、夫婦のどちらかがパートタイマーや専業主婦だった場合、夫婦間での収入の差が大きく、離婚後の当事者間で将来受け取れる年金額に大きな差が生じます。このような場合は、離婚時の翌日から2年以内という期限内に年金分割手続を行っておく必要があります。

あらかじめ離婚後の年金分割の見込み額を知ることはできますか?

50歳以上の方、または、障害年金の受給権者の方であれば、年金分割の見込み額を知ることが可能です。

見込み額を知りたい場合、年金分割のための情報提供請求書に見込み額を知りたい旨を記載して年金事務所に提出します。なお、見込み額の開示は、夫婦のどちらか一方からでも請求できます。

年金見込み額は以下の3パターンで開示してもらうことができます。

  • 按分割合の上限(2分の1)
  • 按分割合の下限(分割を行わない場合)
  • 当事者の希望による按分割合

離婚したいと思った時、年金の財産分与について詳しくしりたいと思ったら弁護士に聞いてみましょう

年金分割の計算は非常に複雑で夫婦できちんと算定するのは難しいものです。他方で、年金分割を拒否することは原則としてできず、請求されれば年金分割を行わざるを得ないという特徴もあります。

そのため、財産分与や親権など決めるべきことがたくさんある離婚協議の中で、年金分割についてどの程度の労力を割くのかを検討しておかないと余分な手間をかけることになってしまいます。

弁護士に相談することで、そもそも年金分割をするべきなのかどうか、あるいは、どの程度年金額が増えるのかといった点を把握することができます。
弁護士法人ALGには、離婚事件を数多く取り扱う弁護士が多く在籍しています。離婚事件というと、夫婦で話し合うものというイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、弁護士に相談することで、早期によりよい解決を図ることができますので、ぜひ一度ご相談ください。

相手から離婚を求められたけれど離婚をしたくない場合、また、離婚には応じても良いと考えているが相手の出してきた条件に納得ができない場合、多くの方は離婚を拒否したいと考えるかと思います。

今回は、相手から離婚を求められた場合に、離婚を拒否することができるのか、またどう拒否すればいいのかについて説明いたします。

そもそも離婚を拒否することはできるのか

離婚の種類 解説 拒否の仕方
協議離婚 裁判所を通さずに、話合いによる合意で離婚するもの 相手に離婚に応じないことを伝える
離婚調停 裁判所の調停という手続きを利用し、話合いにより離婚を合意するもの 調停委員を通して離婚する意思がないことを相手に伝える
離婚裁判 協議や調停では合意が成立せず、裁判所の離婚判決により離婚が成立するもの 離婚原因がないことを裁判の中で主張・立証する

拒否が難しいケース

協議や調停では、こちらが拒否している限り、離婚は成立しません。

ただし、民法で定められている離婚原因(民法770条1項1号から5号)が明らかな場合には、裁判で離婚が認められる可能性が高いです。そのため、離婚を拒否し続けても、いずれは離婚が認められることになります。

離婚原因として代表的なものは、不貞行為、暴力行為を伴うDV、別居が長期間に渡る場合等が挙げられます。

離婚調停の拒否について

離婚調停は、裁判所を介した当事者同士の話合いなので、離婚をしたくないと調停委員を通じて相手に伝えることで、離婚を拒否することはできます。
以下では、離婚調停を拒否した場合のデメリットや欠席する際の方法について説明いたします。

拒否した場合のデメリット

離婚調停を拒否したからといって、相手が離婚意思を翻す可能性は高くありません。また、離婚を欠席し、こちらの考えを一切伝えないことにもメリットはありません。

また、調停への欠席を繰り返せば、当事者に話し合う気がなく合意の可能性がないものとして、裁判所は早期に調停を不成立とすることになります。そうすると、相手が離婚訴訟を提起して、離婚が成立する時期が早くなってしてしまう可能性が高いです。

欠席する場合の連絡方法

離婚調停が申し立てられると、裁判所からいつ調停が開かれるかという日程が記載された呼出状が届きます。この呼出状には、担当書記官の名前が記載されていますので、以後、事務連絡は、この担当書記官宛てに行うこととなります。

欠席する場合には、なぜ調停に出席することができないのかについて、書記官に説明する必要があり、この説明をせずに放置し欠席した場合、離婚訴訟を提起される可能性が高くなっていきます。

離婚裁判を拒否すると離婚が成立する可能性が高くなる

離婚裁判では、裁判所が、法律に基づき、離婚請求が認められるかどうかを判断します。裁判に欠席を続ける場合、離婚を争う意思がないものとして、裁判所が離婚を認める判決を出す可能性が高くなります。

離婚調停での財産分与の拒否はできるのか

財産分与とは、離婚に伴い、夫婦が結婚期間に積み上げた財産を公平に清算する手続きです。

離婚調停は、離婚に関する諸条件を協議する場でもあるので、財産分与を拒否することも可能です。しかし、財産分与を拒否することで、離婚調停が不成立となった場合は、離婚訴訟が提起されることになります。訴訟では、財産分与についても主張と証拠に基づいて裁判所に判断されます。

通帳開示を拒否する場合

調停で預金通帳の開示を求められても、任意の開示請求にとどまる場合は、通帳の開示を拒否することは可能です。

しかし、通帳の開示を拒否することで財産分与の条件が折り合わない場合は、離婚訴訟が提起されることになります。離婚訴訟では、「調査嘱託」という手続きを取ることで、裁判所から銀行に預金情報の開示が求められ、いずれ預金情報が明らかになってしまいます。

離婚調停の拒否に関するQ&A

離婚調停を拒否したら相手から別居したいと言われた場合はどうしたらいいですか?

離婚調停を拒否していても、別居期間が長期間に渡ると、客観的に夫婦関係が破綻していると判断され、裁判になれば離婚が認められる可能性が高くなります。
そのため、相手から別居を求められた場合は、法律上夫婦には同居義務があることなどを伝え、できるだけ別居しないように話し合う方が良いでしょう。

離婚調停の拒否(欠席)はいつまで通じますか?

調停で離婚を拒否する意思を明確にした場合、相手は離婚を求めているわけですから、話合いが成立する余地はありません。そのため、2、3回調停が行われた後、調停は不成立となり、離婚を求める相手が離婚訴訟を提起することになります。

相手との復縁を望むなら、裁判所に夫婦円満調停を申し立てて、夫婦関係の継続に向けて話し合うというのもひとつの方法です。

離婚調停の拒否を検討している場合は弁護士にご相談ください

離婚調停を申し立てられたけれども離婚を拒否したい場合、離婚の手続きや裁判所の運用を理解していないと、自分の意に沿わない条件で離婚が認められてしまう可能性があります。また、条件を整理してみると、相手と協議して離婚に応じた方が良い場合があるかもしれません。

また、相手から離婚を求められている状況で、一人で相手や調停委員とやり取りするのは、精神的にも負担が大きくなってしまいます。

離婚を求められた場合は、一度弁護士に相談していただくことで、どのように対応すれば良いのか、どうすれば自分が一番納得できるのかということが整理されます。当事務所には、離婚に精通した弁護士が多数在籍しているので、お困りの際はお気軽にご相談ください。

離婚する際に、夫婦の財産を清算する必要がありますが、最も保有している方が多いと考えられるのが預貯金ではないでしょうか。
清算するにあたって、夫婦共同の預貯金だけでなく、夫単独の預貯金も妻単独の預貯金も、さらに子供名義の預貯金も財産分与の対象となり得ます。

きちんと公平に預貯金を財産分与するためには、お互いに通帳を開示して、財産分与の対象となるもの、対象とならないものを判別する必要があります。
しかし、財産分与の対象となるのかどうかわからなかったり、配偶者が通帳を開示しなかったりしてトラブルになるケースもあります。

本記事では、財産分与の対象となる預貯金、対象にはならない預貯金など、財産分与時の預貯金について、様々な角度から詳しく解説します。

通帳の預貯金は財産分与の対象になる?

財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に協力して築きあげた財産を離婚する際に公平に分け合うことをいいます。
通帳の預貯金は財産分与の対象となるものもあれば、財産分与の対象とならないものもあります。
次項で詳しく解説していきましょう。

財産分与の対象になる預貯金

婚姻期間中に夫婦それぞれの収入からお金を出し合って貯めた預貯金は財産分与の対象です。通帳の名義が夫でも妻でも構いませんし、子供名義でも財産分与の対象になり得ます。
具体的な期間は、夫婦の入籍日から、別居もしくは離婚した日までに貯めたお金です。

財産分与の対象にはならない預貯金

夫婦それぞれが婚姻前の独身時代に貯めたお金や、親族から生前贈与や遺産相続したお金、別居後に貯めたお金は財産分与の対象となりません。
また、親族がお年玉や入学祝いなどの名目で子供に贈与したお金や子供がアルバイトして貯めたお金も子供の固有財産となりますので財産分与の対象となりません。

婚姻前の口座を婚姻後も使い続けている場合は要注意

「結婚して新しく口座を開設するのがめんどくさかった」、「口座を増やしたくない」などの理由で結婚前と結婚後と同じ口座を使い続けている方は多く見受けられます。

生活費や交際費など、頻繁に細かく引き出したり、預け入れたりしている場合は、婚姻前の預貯金なのか、婚姻後の預貯金なのか区別が難しくなり、本来、財産分与の対象とならない預貯金を財産分与してしまったり、財産分与の対象とならない婚姻前の預貯金だと証明するのが難しかったりしてトラブルになるケースがありますので、注意が必要です。

財産分与の対象にしないためにできることはある?

次のような資料があれば、財産分与の対象とならない財産だと証明しやすくなります。

  • 婚姻前の残高がわかる通帳のコピー
  • 生前贈与で得たお金だとわかる贈与契約書と贈与前後の通帳のコピー
  • 遺産相続で得たお金だとわかる遺産分割協議書と相続した前後の通帳のコピー など

昔の通帳が手元に残っていない場合は、銀行に取引明細書を発行依頼して取得できる可能性がありますので、問い合わせてみてください。

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へそくり用の隠し口座は財産分与の対象になる?

へそくり用の隠し口座が財産分与の対象となるかどうかは、資金の出どころによります。
婚姻期間中の夫もしくは妻の収入を資金にしたへそくり用の隠し口座は財産分与の対象となります。
例えば、専業主婦(主夫)が、配偶者のお給料で家族の生活費をやりくりして余ったお金をへそくり用の隠し口座に貯めているケースでは、財産分与の対象となります。

一方で、婚姻前の独身時代に内緒で貯めたお金や独身時代に購入した貴金属や洋服、バックなどを換金してへそくり用の隠し口座に貯めている預貯金は、財産分与の対象となりません。

子供名義の預貯金は財産分与の対象になる?

子供名義の預貯金は、夫婦の収入などを原資にして貯めたお金であれば財産分与の対象となります。
夫婦の収入で払込みをして加入している学資保険や、子供を育てる親を支援するお金である児童手当なども財産分与の対象です。

一方で、子供自身が取得した財産は、子供の固有財産となり、夫婦が築いた財産ではないので財産分与の対象になりません。例えば、親族からもらったお年玉や入学祝い金や子供自身が働いて稼いだアルバイト代は財産分与の対象外です。

財産分与するには通帳の開示が必要

離婚の際、公平に預貯金の財産分与をするためには、夫婦それぞれの通帳を開示する必要があります。
通帳を確認しなければ、正確な預貯金の額がわからないからです。
重要なのは、相手に通帳の開示を依頼するとともに、ご自身の通帳も正直に開示することです。

通帳のコピーを用意しましょう

不正な入出金がないかどうか把握するために、財産分与の対象となる期間について、すべての通帳のコピーを取得しておくことをお勧めします。
財産分与をするにあたって通帳を開示する範囲は、「婚姻した日から別居した日、もしくは離婚した日となります。」
さらに、金融機関名、支店名、口座種別、口座番号、口座名義が記載している部分も漏れなくコピーしておくようにしましょう。

通帳開示をしたくない場合

配偶者以外から通帳開示を求められたのであれば、開示を拒否することができます。
また、配偶者であっても、通帳の開示を強要することまではできません。

しかし、通帳を開示しなければ、財産分与の話し合いは進められず、分配できないままとなり、解決できない状態が続きます。
開示する必要があるのは、婚姻期間中の分だけで問題ありません。
素直に必要な範囲だけでも通帳開示をしたほうが、スムーズに解決できるでしょう。

通帳開示を拒否された場合

通帳開示は強要できませんので、相手が応じない可能性は十分にあります。
相手が応じないかもしれない場合は、通帳の所在がわかるのであれば、同居中に通帳のコピーをしておくのが有用です。

相手から通帳開示を拒まれ、通帳の所在もわからない場合は、「弁護士会照会制度」と「調査嘱託制度」を利用して通帳の中身が調査できます。
次項よりそれぞれ詳しく解説していきます。

弁護士会照会制度

弁護士会照会とは、弁護士が依頼を受けた事件について、事件の解決に必要な情報を取得するため、銀行や会社などの団体に事実を問い合わせることをいいます。弁護士が職務活動を円滑に行えるよう設けられた法律上の制度です。

財産分与において、裁判外で争っていても弁護士照会制度を利用することができ、銀行に照会を行って、口座の有無、取引履歴の調査などが可能となります。
ただし、弁護士会照会を利用するには、金融機関名と支店名を特定している必要があります。
また、弁護士会照会に応じて回答するかは金融機関次第となり、名義人の同意がない限り開示に応じない金融機関もあり、必ずしも回答されるかどうかはわかりません。

調査嘱託制度

調査嘱託制度とは、裁判所が官公庁や企業、事業所に調査を嘱託して必要な事項について報告を求めることができる制度です。

財産分与においては、裁判所が調査嘱託を行い、配偶者が開示しない預金口座について、裁判所が当該金融機関に調査や報告を求めて預金残高、取引履歴を開示が可能となります。
弁護士会照会制度とは異なり、調査嘱託は財産分与の請求を裁判所に申し立てた場合に利用できる調査手続きです。
しかし、調査嘱託するには、調停で調査嘱託を行うことは少なく、裁判に移行しなければ調査嘱託がされないケースが多いです。

また、金融機関名と支店名が必要となりますので、どこの銀行に預金があるか特定していなければ、調査嘱託は利用できません。

財産分与時の通帳に関するQ&A

別居時に通帳を持ち出され、預貯金を使い込まれてしまいました。財産分与は請求できないのでしょうか?

別居時に通帳を持ち出されて使い込まれた預貯金を財産分与として請求できるかどうかは、財産分与の対象となるお金(共有財産)なのか、対象外のお金(特有財産)なのかによって異なります。

通帳がご自身の名義でも相手の名義であっても、婚姻期間中に夫婦で協力して形成した預貯金であれば、夫婦の一方が勝手に持ち出して使い込んだとしても、離婚する際の財産分与の対象となります。
したがって、特段の事情がない限り、不法行為や不当利得にはなりませんので返還を求められませんが、持ち出して使い込まれた預金額の半額を財産分与として請求できます。

一方で、ご自身が独身時代に貯めた預貯金や親族から生前贈与や遺産相続した預貯金などは、法律上返還を求めることができます。

口座があるのは確実なのに、通帳を隠されてしまい残高が分かりません。どうすればよいでしょうか?

まずは、当事者間の話し合いや調停のなかで、任意で通帳の残高を開示するように求めましょう。
特に調停では、調停委員に説得されて、相手方が開示に応じる可能性もあります。

任意で通帳の残高を開示するように求めても応じない場合は、預貯金を保有している金融機関や支店名などの情報を把握しているのであれば、弁護士を介して、弁護士会照会を利用しましょう。
対象となる金融機関に対して、預貯金の残高の回答を求めることができます。
しかし、弁護士会照会に応じるかどうかも金融機関次第なので、回答してもらえない場合は、家庭裁判所に離婚調停・裁判や財産分与請求調停・審判などの申立てを行ったうえで、調査嘱託制度を利用する方法もあります。

銀行口座を解約されてしまったら、通帳開示できませんよね。諦めるしかないのでしょうか?

確かに、解約されている口座について、開示請求できる権利は認められないという判例もありますが、実際には開示してくれるケースもあるようです。

金融機関によって対応は異なりますが、一度、弁護士を介して、弁護士会照会や調査嘱託制度を利用してみてはいかがでしょうか。

宝くじの当選金が口座に入っています。財産分与の対象になりますか?

婚姻期間中に購入した宝くじの当選金は、財産分与の対象となり得ます。 夫婦には、お互い同等の生活を維持するための生活保持義務があり、夫婦間の公平性を考えると偶然得た利益であっても、夫婦の一方が独占するのは許されず、夫婦の生計のために使われるべきであると考えられるからです。
ただし、宝くじの当選金は、実際に当てた人の運が貢献しており、一方の配偶者が何らかの貢献をしたとは考えられにくいともされています。
したがって、財産分与する割合は、実際に宝くじを当てた人の割合を有利にされる可能性があります。

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財産分与で預貯金等を確認することは大切です。弁護士に相談することをお勧めします

離婚後の生活を安定させるためにも、離婚時に財産分与を行うのはとても大切です。
実際に相手名義の預貯金を正確に把握していない夫婦も多く、把握できなければ、公平に財産分与ができません。

そもそも財産分与の対象となるのか対象とならないのかわからないという方や相手が通帳を開示してくれず困っている方は、まずは弁護士にご相談ください。
ご家庭の状況を確認のうえ、適切に財産分与を行えるようにアドバイスさせていただきます。
弁護士に依頼すれば、相手と直接交渉(話し合い)も可能ですので、弁護士から通帳の開示を求めたり、財産分与について話しあったりすることも可能です。
また、弁護士を介せば、「弁護士会照会制度」や「調査嘱託制度」も利用できますので、相手の預貯金の情報を把握できる可能性は高まります。

まずは、弁護士法人ALGにお気軽にお問合せください。

「仕事から帰ってきたら突然妻と子がいなくなっていました。その後妻からは離婚の申し出と婚姻費用の請求をされています。どのように対応すればよいでしょうか。」

離婚案件においては、このような相談が数多く寄せられます。そのような事態は初めてのことでしょうから、どのように対応したらよいか分からないという方が多いと思います。今回は、このようなケースで、どのような法律関係に置かれているか、どのように対応すべきか等を解説していきます。

妻が勝手に別居した!婚姻費用の支払い義務は?

勝手に別居した妻から、婚姻費用の請求がされました。婚姻費用とは何でしょうか。また、勝手に別居したにもかかわらず、婚姻費用の支払義務はあるのでしょうか。

婚姻費用を簡単に説明すると、夫婦は別居中であっても、適正に生活費を分配しなければならない義務があります。具体的には、夫婦の生活費に回せる収入を合算し、それを家族に分配するわけですが、その結果、どちらか一方から、他方に対し、毎月一定金額を支払わなければなりません。これを婚姻費用といいます。

そして、婚姻関係にある以上、基本的には、婚姻費用の義務は免れることはできません。例外的に、婚姻関係の破綻を招いた有責性のある当事者が婚姻費用の請求をするような場合には、婚姻費用の請求が信義則違反として認められないということもあります。

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正当な理由がない、勝手な別居は「同居義務違反」

夫婦には同居義務があるため、正当な理由がない勝手な別居は、同居義務違反として判断される可能性はあります。

他方、別居に至るのは夫婦関係の悪化が基本的な要因と考えられるため、いずれか一方のみが悪いというようには判断し難いことが多く、結果的に、同居義務違反として問題視されることは多くはないというのが実情です。

そのため、同居義務違反を理由に、別居した側からの婚姻費用の請求が信義則違反であるという主張が認められることは多くないと考えられます。

同居義務違反なら慰謝料を請求できるケースも

同居義務違反の内容が悪質で有責性を帯びるようなケースでは、婚姻費用の請求が信義則違反となる可能性もありますが、加えて、離婚条件として慰謝料を請求できるケースもあるでしょう。

相手方が一定額の離婚慰謝料を支払うということで合意ができれば良いですが、相手方が離婚慰謝料の支払いを拒絶した場合には、離婚訴訟の中で離婚慰謝料の請求を行う必要があります。

その場合でも、同居義務違反と判断されるケースは多くないため、慰謝料請求のハードルは低くないことには注意が必要です。

家出の原因が相手にある場合は婚姻費用が減額される可能性あり

例えば、自ら不貞を働いておきながら、別居し、婚姻費用の請求をしてきたとします。その場合、婚姻費用の支払をしたくないという心情になると思います。

実は、自ら婚姻関係の破綻を招いたような有責配偶者が婚姻費用の請求をしてきた場合には、婚姻費用の請求が信義則違反となり、請求が全部又は一部認められないことがあります。したがって、家出の原因が相手方にある場合には、その内容次第では、婚姻費用の支払義務が免除又は減額されることがあります。

なお、仮に信義則違反がある場合でも、それは有責配偶者の請求が認められないだけで、子の生活費については、養育費相当額の支払い義務があると判断されることが一般的です。

家出の原因が自身(払う側)にある場合はどうなる?

夫が不貞を働き、その結果妻が別居し、妻が婚姻費用の請求をしたとします。その場合、婚姻費用の支払義務者側に有責性があることになります。

しかし、婚姻費用の支払義務者側に有責性があったとしても、支払をすべき婚姻費用額が増額するというようには考えないのが通常です。支払義務者の有責性については、婚姻費用の問題ではなく、慰謝料の問題であると考えるのが通常だからです。

勝手に出て行った相手から婚姻費用を請求された場合の対処法

勝手に家を出た相手から婚姻費用の請求がされた場合、どのように対応すべきでしょうか。

まずは、相手方の有責性等に鑑み、婚姻費用支払義務があるかどうかを検討することとなります。
婚姻費用の支払義務があると考えられる場合には、婚姻費用の適正額を計算することとなります。婚姻費用の基本となる金額は、婚姻費用算定表というものが存在しますので、その算定表を参照すると良いでしょう。

その上で、相手方と協議を重ね合意に至るかどうか交渉することとなります。相手方が調停の申し立てをしてきたときには、調停手続きにおいて協議してくこととなります。

勝手な別居と婚姻費用に関するQ&A

勝手に家出した妻が実家にいることが分かりました。実家の世話になるなら婚姻費用は払わなくても良いですか?

相手方が実家に帰り、実際には実家からの援助で生活ができている場合、婚姻費用の支払義務はあるのでしょうか。また、婚姻費用の金額に影響しますでしょうか。

多くの案件では、婚姻費用の支払義務はあり、婚姻費用の金額に影響はないと判断されると思われます。前者については、実家からの援助の有無にかかわらず、夫婦である以上、生活費を分配する義務自体は消滅しないと考えられます。

後者についても、実家からの援助を、権利者の収入認定の際に考慮するということは稀にありますが、基本的には、実家からの援助を法的に期待するのは妥当ではなく、婚姻費用の金額には影響しないのが一般的です。

浮気相手の家に転がり込んでいるようなのですが、それでも婚姻費用を払わなければならないのですか?

浮気相手の家に転がり込んでいる場合は、婚姻費用の請求が信義則に反するものとして、認められない可能性があります。
そのようなケースでは、浮気相手の家に転がり込んでいるということを証拠によって立証するか、相手が認めなければ、裁判所が浮気相手の家に転がり込んでいるという事実を認定しないため、証拠の存在が重要ということになります。

勝手に出て行った妻から離婚したいと言われたので離婚届を送ったのですが提出されません。何度か送っても放置されているのですが、それでも婚姻費用は払わなければいけませんか?

双方に離婚意思があり、離婚届を送っているにもかかわらず、離婚届の提出がなされないような場合でも、婚姻関係自体は継続している以上、婚姻費用の支払義務はあると判断されることが一般的です。
確かに、婚姻関係が破綻していることを理由に、婚姻費用の支払義務を免除したり、減額したりするケースもありますが、よほど例外的なケースであると理解した方がよいでしょう。

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弁護士が早期解決のお手伝いをいたします

婚姻費用の協議が長引くと、それだけ離婚の話をするのが先延ばしになります。最終的に離婚は致し方ないという場合には、婚姻費用は早期に決着をつけ、離婚協議に時間を割いた方が生産的です。

他方で、婚姻費用として相場より高い金額を支払ってしまって生活に困るというのも良くありません。支払義務の有無や適正な婚姻費用額等、一般の方には判断しづらい部分も多々ありますので、弁護士にご相談いただき、早期に進めていくことをお勧めいたします。

夫婦間でいざこざや確執などがあり、別居を考えたときに、当面の生活費を考えるとなかなか別居に踏み切れない方もいるかと思います。しかし、別居をしても、婚姻関係が継続する限り、配偶者に婚姻費用を請求できます。
では、次に、ご自身の家庭では、「どのくらいの婚姻費用が受け取れるのか?」気になるかと思います。

本記事では、婚姻費用の金額を簡単に算定できる「婚姻費用算定表」に関して、詳しく解説していきます。

婚姻費用算定表とは

婚姻費用算定表とは、標準的な婚姻費用を簡易かつ迅速に算定できるように作成された早見表をいいます。

婚姻費用算定表は、

  • 夫婦のみの場合
  • 子供がいる場合 子の人数と子の年齢

それぞれに応じて表がわかれており、夫婦それぞれの年収に応じて標準的な月額の婚姻費用が算定できます。
現在は、調停や審判などの裁判所の手続きでも参考資料として活用されており、裁判所のウエブページから簡単に婚姻費用算定表を見ることができます。

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婚姻費用算定表の使い方

実際に、婚姻費用算定表をみて、ご自身の家庭ではどのくらいの婚姻費用の金額が相場であるか確認してみましょう。

とても簡単ですので、次項より詳しく解説していきます。

お互いの年収を調べておく

養育費を支払う側、受け取る側それぞれの年収を調べておきます。
サラリーマン、公務員などの給与所得者と個人事業主、フリーランスなどの自営業者では年収の調べ方が異なります。次項でそれぞれの年収の調べ方について確認していきましょう。

給与所得者の年収の調べ方

給与所得者の年収の調べ方は、会社から年に1回配布される源泉徴収票の「支払金額」(控除されていない金額)を見れば、確認できます。
そのほかには、市区町村役場で入手できる課税証明書の「給与収入」を確認すれば、年収(総収入)がわかります。

自営業者の年収の調べ方

自営業者の年収の調べ方は、確定申告書の「課税される所得金額」を確認すれば年収(総収入)がわかります。
そのほかには、給与所得者と同様に、市区町村役場で入手できる課税証明書の「給与収入」を見て、確認することも可能です。

裁判所のHPから最新版の婚姻費用算定表をダウンロードする

婚姻費用算定表は、以下の裁判所ウエブページで掲載されています。
使用する際の主な注意点は以下になります。

  • 夫婦のみ、もしくは子供がいる場合は子供の人数・年齢に応じて、表が分かれている
  • 裁判所のウエブページでは、表10から表19までが婚姻費用算定表となっている
  • 算定表には「養育費」と「婚姻費用」がありますので、間違えないように注意が必要
裁判所のHP

支払う側と受け取る側の年収が交わる箇所を探す

該当する婚姻費用算定表の縦軸に記載されている支払う側(義務者)と横軸に記載されている受け取る側(権利者)の年収を確認し、双方の年収の線が交差する箇所を見ます。
給与所得者と自営業者では記載している数字が異なり、枠が違いますのでご注意ください。

婚姻費用算定表が自分のケースに当てはまらない場合

婚姻費用算定表には、子供が4人以上いるケースや、支払う側の年収が2000万円以上のケースなどは算定表に掲載されておらず、婚姻費用の相場がわかりません。
婚姻費用算定表が自分のケースに当てはまらない場合は、次のような計算式で婚姻費用を算定できます。

①(支払う側の基礎収入+受け取る側の基礎収入)×受け取る側の世帯の生活費指数÷(支払う側の世帯の生活費指数+受け取る側の世帯の生活費指数)
②①で計算した金額-受け取る側の基礎収入

基礎収入とは、実際に生活費に充てられる収入をいいます。
生活費指数とは、親=100、15歳未満の子=62、15歳以上の子=85を用いて、世帯人員にどれだけの生活費がかかるかを数値で示したものとなります。

婚姻費用の金額を正確に把握したいときは、計算式が複雑になり得ますので、弁護士に相談するのをお勧めします。

婚姻費用算定表に関するQ&A

婚姻費用を算定表より多くもらうにはどうしたらいいですか?

婚姻費用算定表は、あくまでも婚姻費用の相場を参考にすることによって、調停や審判など裁判所の手続きで、スムーズに婚姻費用を取り決められるように利用されています。
夫婦当事者間で、婚姻費用算定表より高額な金額で合意できれば、多くもらっても問題ありません。

また裁判所の手続きで婚姻費用を決める場合でも特別な事情があり、根拠となる資料を示しながら主張して認められれば、婚姻費用を算定表より多くもらえる可能性はあります。
例えば、子供や養育費を受け取る側(義務者)が病気やケガをして高額な医療費がかかるケースや、子供が私立学校に進学したり、塾や習い事に通ったりして高額な教育費がかかるケースなどです。

年収350万~450万は婚姻費用相場が6万~8万となっているのですが、年収450万円に近ければ8万円という考え方で良いのでしょうか?

今回のケースでは夫婦のみの婚姻費用算定表をみると、権利者の年収0円、義務者の年収450万円だと、婚姻費用の相場6万円~8万円の枠の1番上部分が交わる部分になっていますので、婚姻費用の相場は8万円という認識で問題ありません。

ただし、婚姻費用の相場が6万~8万円と金額に幅をもたせているのは、家庭ごとの個別の事情によって、6万円程度が相当と考えられる場合もあれば、8万円程度が相当と考えられる場合もあるということになります。
また夫婦間で合意できれば、相場から外れた金額で取り決めても構いません。

婚姻費用算定表の金額に、子供の学費は含まれていますか?

婚姻費用には、子供の学費(教育費)も含まれています。 ただし、婚姻費用算定表では、公立小学校、公立中学校、公立高校に通う前提での学費(教育費)が考慮されています。

私立学校の学費(教育費)や、塾代・習い事代などは考慮されていませんので注意が必要です。
支払う側(義務者)が私立学校や塾・習い事に通わせることを了承しており、収入や資産状況などに鑑みて、支払う側(義務者)に負担させるべきだと認められた場合には、“婚姻費用算定表“と”実際かかっている学費“の差額分を加えて婚姻費用として、受け取れる可能性はあります。

専業主婦は収入0のところを見ればいいでしょうか?年収100万円として考えることもあると聞いたのですが…

実際は専業主婦であっても、健康状態や生活状況などを客観的にみて、働こうと思えば働けるのに、無職のままでいるような方は、潜在的に、アルバイト・パートタイマーの収入程度の水準の稼働能力(収入を得る能力)があると判断される場合があります。
家庭裁判所の実務上では、潜在的稼働能力は、およそ100万円~120万円とみなされる例が多いため、専業主婦であっても年収100万円として算定される可能性があります。

ただし、心身の不調により働けない方、子供が幼くて監護が必要なため働けない方、長年専業主婦だったため再就職が難しく働けない方などは、収入0として算定される可能性が高いです。

年金生活者です。年金を収入と見なして婚姻費用算定表を使えばよいでしょうか?

年金生活者の方は、単純に婚姻費用算定表を当てはめただけでは、婚姻費用を算定できません。 算定表には、仕事するうえで最低限支出しなければならない被服費、交通費、交際費など「職業費」が含まれています。年金生活者は、会社に行くための交通費や、会社の同僚との飲み会もないので交際費もかからないことから、職業費は不要と考えられます。

職業費が占める割合は、年収にもよりますが、全収入のうち、およそ15%~20%と考えられていますので、職業費がかかっていない分を考慮して婚姻費用を算定する必要があります。
年金生活者の正確な婚姻費用の金額を知りたい方は、法律の専門家である弁護士に相談するのをお勧めします。

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弁護士がそれぞれの事情を考慮して婚姻費用を算定します

別居や離婚を考えたときに、「うちの家庭なら、どのくらいの婚姻費用がもらえるのだろうか」と気になったときに、婚姻費用算定表を活用すれば、簡単に算定できます。
しかし、婚姻費用算定表はあくまでも婚姻費用の目安を知るためのものであり、家庭ごとのそれぞれ個別の事情に対応していません。

具体的には、子供の私立学校の学費、塾代、習い事代など高額な教育費がかかるケースや、病気やケガをして高額な医療費がかかるケースや、年金受給者・専業主婦など収入計算が複雑になるケースなどが挙げられます。
正確な婚姻費用の金額を知りたい方は、ぜひ弁護士にご相談ください。

それぞれの家庭の事情を伺い、適正な婚姻費用についてアドバイスいたします。
そのほかに、婚姻費用の請求についても、相手に直接交渉したり、裁判所の手続きを行ったり、サポートできますので、精神的負担や時間・労力などの軽減にもなるかと思います。
1人で悩みを抱え込まず、まずはお気軽に弁護士法人ALGにお問合せください。

近時の自動車保険では、その多くに弁護士費用特約がついています。

交通事故の被害者となった場合、適正な賠償を受けられるようにするためには、弁護士が代理人として介入することが重要です。しかし、弁護士が介入した場合、弁護士費用は生じるため、実質的な賠償金の増額が少なかったり、むしろマイナスとなってしまったりすることもあります。

そこで、弁護士費用を代わりに負担してくれる弁護士費用特約が重要になってきます。ここでは、弁護士費用特約についてご説明します。

弁護士費用特約とは

弁護士費用特約とは、ご自身が被害者として、加害者に損害賠償請求する際の弁護士費用を、保険会社が負担してくれるというものです。

例えば、A損害保険会社と自動車保険契約を締結しているとします。その自動車保険契約の中に、弁護士費用特約というものが定められていれば、加害者への損害賠償請求をする際の弁護士費用を、A損害保険会社が代わりに負担してくれます。

弁護士費用特約があることで、経済的な心配なく、弁護士に代理人として介入してもらうことが可能となります。

法律相談費用は10万円まで補償

ただし、弁護士費用特約も、上限なく弁護士費用を支払ってくれるものではありませんので、注意が必要です。

例えば、多くの弁護士費用特約では、法律相談料は10万円が支払いの上限となっています。法律相談料は弁護士事務所によってそれぞれ異なりますが、例えば、30分あたり5000円という事務所であれば、10時間までは実質無料で相談を受けられることになります。

交通事故の法律相談で10時間を要するということは稀だと考えられますので、法律相談料は全額カバーされることがほとんどでしょう。

弁護士費用は最大300万円まで補償

実際に弁護士に依頼した場合には、通常は弁護士費用として着手金や成功報酬金等が生じます。

多くの弁護士費用特約では、弁護士費用は300万円が上限となっています。つまり、保険会社の認める弁護士費用が300万円までであれば、被害者の方に実質的な負担なく、弁護士を介入させることができます。

弁護士費用が300万円を超えることは多くありません。多くの案件では、実質的な負担なく、弁護士を介入させられる可能性があります。

300万円を超えるケースってどんな事故?

弁護士費用は経済的利益(損害賠償額とは一致しないことも多いです)により変動します。

弁護士費用特約には、その計算式が定められています。
代表的な弁護士費用特約では、例えば、経済的利益が1640万円であれば、着手金は税込み100万1000円です(1640万円×5%+9万円+税)。無事解決した場合の報酬金は、税込み200万2000円です(1640万円×10%+18万円+税)。

そのため、経済的利益が1640万円では、わずかに着手金と報酬金の税込み合計金額が300万円を超えることになります。

経済的利益が1640万円程度までになるのは、一概にはいえませんが、相当程度高い等級の後遺障害が認定された場合や死亡事案が多いと考えられます。

あなたも加入しているかも?弁護士費用特約は加入率が高い

自動車購入時にはあまり意識している人は多くないかもしれませんが、基本的に自動車購入時には、弁護士費用特約の加入を勧められているはずです。弁護士費用特約を付けても保険料はさほど増額せず、経済的負担も小さいため、多くの人が加入しています。

他方で、万が一事故にあったときに弁護士費用特約に加入していなければ、弁護士費用は全額自費負担となってしまい、最終的に手元に残る金銭が減ってしまいますので、ご自身が弁護士費用特約に加入しているかどうか、確認をした方がよいでしょう。

クレジットカードなど、自動車保険以外で加入しているケースもある

多くの方は、自動車保険に含まれる弁護士費用特約に加入していますが、中には、クレジットカード契約に含まれる弁護士費用特約に加入している方もいます。クレジットカードにも弁護士費用特約がつけられることをご存じの方は多くないかもしれません。

例えば、そもそも自動車を購入しておらず、自動車保険に加入していない方が、歩行中に自動車に轢かれた場合、自動車保険に加入していない以上、自動車保険の弁護士費用特約は使用できません。しかし、もしクレジットカードに弁護士費用特約を付けており、その事故が弁護士費用特約の対象となるのであれば、弁護士費用特約を使用することができます。

自動車保険に加入されていない方は、一度、クレジットカード等で弁護士費用特約に加入していないか、確認されることをお勧めします。

弁護士費用特約の適用範囲

ここでは、(1)誰が弁護士費用特約を使えるか、(2)どのような場合に弁護士費用特約が使えるか(逆に、使えないか)について説明します。

(1)の点は、代表的な弁護士費用特約では、次にあたる人が被保険者として、弁護士費用特約を使用できることになっています。

①記名被保険者
②記名被保険者の配偶者
③記名被保険者またはその配偶者の同居の親族
④記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子
⑤①から④まで以外の者で、契約自動車の正規の乗車装置またはその装置のある室内に搭乗中の者
⑥①から⑤まで以外の者で、契約自動車の所有者

(2)については、保険金請求者が賠償義務者(交通事故の加害者)に対し、当該交通事故に関する損害賠償請求を行う場合の弁護士費用を、保険金として支払ってくれます。ただし、保険金(弁護士費用)を支払ってくれない場合も定められています。そのうち代表的なものを以下紹介します。

  • 被保険者の故意または重大な過失によって発生した被害事故の場合
  • 被保険者が運転資格を持たずに運転していた場合
  • 被保険者について、酒気帯び運転や薬物使用状態にある間の事故の場合
  • 地震もしくは噴火またはこれらによる津波によって生じた損害である場合
  • 賠償義務者が上記(1)の①から④、⑥にあたる場合 等です。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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弁護士特約を使って弁護士に依頼するメリット

弁護士費用を気にせず依頼できる

交通事故の損害賠償請求を行う際、弁護士を介入させることには多くの利点があります。最終的な慰謝料等の損害賠償金額が増額することはもちろん、通院中の注意事項についてアドバイスを受けたり、相手方保険会社との連絡の窓口になってくれたりします。
弁護士費用特約のメリットは、何より、このような利点を、経済的負担なく(もしくは少なく)享受できるという点にあります。

慰謝料を含む損害賠償金額が大幅にアップする

交通事故の示談交渉段階では、保険会社は、被害者が自身で交渉している場合と、弁護士が介入している場合で、扱いを異にしています。

例えば、慰謝料について、被害者本人で交渉している場合には、自賠責基準や、それに近い保険会社基準というもので計算し、提示をしてきます。しかし、この基準で計算した慰謝料は低額で、適切な賠償内容ではありません。

他方、弁護士が介入すると、裁判基準というもので保険会社も計算をするようになり、慰謝料が増額することになります。このように、弁護士が介入すると、慰謝料を含む損害賠償金額が大幅にアップする可能性があります。

保険の等級は変わらない

対人保険や対物保険、車両保険を使用した場合、保険の等級が下がることにより、保険料が増額することになります。
他方、弁護士費用特約は使用したとしても、保険の等級が下がることはありません。

例えば、過失0の事故の被害者として、加害者に損害賠償請求する際、弁護士費用特約を使用しても、等級は下がることなく、保険料が増額することはありません。保険料の増額も気にすることなく、弁護士費用特約は使用することができます。

弁護士費用特約の使い方

交通事故が得意な弁護士を探す

交通事故にあったら、ます重要なのが、交通事故分野に精通した弁護士を探すことです。交通事故の被害にあった際、弁護士を介入させることが非常に重要です。最終的な賠償額の増額のみならず、通院時の注意点等についてアドバイスをもらうこともできます。

事故後、なるべく早い段階で弁護士に相談をすることで、知らず知らずのうちに取り返しのつかない状態になってしまうということを避けることもできます。まずは交通事故分野に精通した弁護士を探しましょう。

保険会社に連絡し、弁護士費用特約利用の同意を得る

弁護士を探した後は、弁護士費用特約保険会社に連絡をする必要があります。弁護士費用特約を使用するためには、当然、保険会社に利用の同意を得る必要があるためです。

法律相談料も弁護士費用特約により支払いがなされますので、実際に法律相談をする前には、弁護士費用特約保険会社には連絡をしておくのが良いです。実際に弁護士に依頼することとした場合も、事前に保険会社に確認をしておくのがよいでしょう。

弁護士に弁護士費用特約を使いたいと伝える

弁護士費用特約を使用する場合、弁護士は弁護士費用特約会社から支払を受けることになりますので、弁護士にも弁護士費用特約を利用する旨を伝える必要があります。そのため、法律相談を行う前段階から、弁護士に対しても、弁護士費用特約を使用する旨を伝えるのがよいでしょう。

実際に依頼する際も、事前に、弁護士に対して弁護士費用特約の使用を希望する旨を伝える必要があります。弁護士によっては、弁護士費用特約を使用する場合には受任しないということもあるためです。

弁護士を変更したくなった場合

依頼者は、弁護士をいつでも解任することが可能です(民法651条)。
そのため、弁護士を変更したくなった場合には、まずは弁護士との委任契約を解除する必要があります。その後、新たな弁護士と委任契約を締結することになります。

注意点として、解任をした弁護士に対しても、少なくとも着手金が発生していることが通常です。その費用を弁護士費用特約により支払った場合、弁護士費用特約の上限300万円のうち、20万円は使用済みということとなり、残り280万円が上限となります。

そのため、仮に次の弁護士に対する報酬が合計290万円となった場合、280万円までしか弁護士費用特約が支払わないため、10万円分は自ら弁護士費用を負担しなければなりません。

弁護士費用特約が特に効果的なケース

被害者に過失がないケース

弁護士費用は、事案の難易度等によっても変動しますが、基本的には経済的利益により変動します。加害者の賠償額が大きいほど、経済的利益も大きくなることが多いです。
被害者に過失があるケースでは、加害者への賠償請求額過失分低くなり、結果的に弁護士費用も低くなる可能性があります。

逆に、被害者に過失がないケースでは経済的利益も大きくなり、弁護士費用も高くなることが考えられます。したがって、弁護士費用特約を使用することのメリットも大きくなります。

後遺症が残りそうなケース

交通事故の負傷が、その後の治療により完治することが、被害者の方にとっては最も重要なことではありますが、他方で、一定数、完治せずに症状が残ってしまうケースが存在します。そのような場合、「後遺障害」というものが認められれば、その等級(ランク)に応じて、加害者に損害賠償請求できる金額が上がります。

後遺障害が認められるか否か、また、その等級はどうかにより、損害賠償請求額は大幅に変わってきます。重度の後遺障害が認定されるケースでは、弁護士費用も数百万円ということがあり得ます。
そのような弁護士費用が上限300万円まで軽減できるとなれば、非常に被害者の方にとってはメリットが大きいといえるでしょう。

加害者が無保険のケース

加害者が無保険というケースが稀に存在します。
自賠責保険にも何かしらの事情で入っていなかったり、自賠責保険には加入しているものの、任意保険には入っていなかったりする場合です。

このような場合、相手方個人に請求せざるを得ない側面がありますが、一般の方が加害者個人に対して損賠償請求をするのは非常にハードルが高いでしょう。また、任意の交渉では埒が明かず、訴訟提起せざるを得ないことも多いと考えられます。

いずれにしても、加害者が無保険の場合には弁護士が介入しないと解決に至らないことも多く、弁護士介入の必要性が高いところです。弁護士費用特約がついていれば、弁護士費用の負担が軽減し、適正な解決に至れる可能性が高まります。

請求できる損害賠償金額が小さい事故のケース

請求できる損害賠償金額が小さい事故の場合にも、弁護士費用特約が有効です。

損害賠償金額が小さくとも、業務を行う以上、一定額以上の弁護士費用は必ず必要になります。賠償額が小さいにもかかわらず、一定額以上の弁護士費用がかかるとすると、実質的に、被害者の方の手元に残る賠償金がほとんどないということになってしまいます。

弁護士費用特約により、弁護士費用全額が弁護士費用特約によって賄われたならば、手元に残る賠償金が低額ではあっても、そのまま残せることになります。

弁護士費用特約に関するQ&A

保険会社が弁護士特約の利用を嫌がります。諦めるしかないでしょうか?

約款上、弁護士費用特約を使える状況なのであれば、弁護士費用特約を使用することは加入者の権利です。保険会社が弁護士費用特約の利用を拒むことはできません。
保険会社としては、弁護士費用を負担しなければならないため、一部、弁護士費用特約の使用を渋るところもあるかもしれませんが、屈することなく、正式に弁護士費用特約を使用する旨を伝えましょう。
それでも渋るようであれば、担当者の部署の上司に代わってもらうとか、依頼予定の弁護士から保険会社に話をしてもらうといった対応を取るのがよいかもしれません。

弁護士特約のデメリットはありますか?

弁護士費用特約自体にデメリットはありません。
弁護士費用の全部又は一部を保険会社が負担してくれるという内容であり、不利益はありません。
弁護士費用特約を使用する場合、弁護士を自由に選択できないのではないか、と思われる方もいますが、弁護士は自由に選ぶことができます。保険会社が弁護士を積極的に紹介してくることはあるかもしれませんが、どの弁護士に依頼するかは自由ですし、どの弁護士に依頼しても、弁護士費用特約は使用することができます。

弁護士特約を使うタイミングはいつがいいですか?

弁護士費用特約を使うタイミング、すなわち、弁護士に依頼するタイミングはいつが良いかという点についてご説明します。
交通事故は、治療終了後の損害賠償請求が最も重要な点ですが、それまでの間にも、物損処理、通院中の注意点、一括対応延長交渉、後遺障害等級申請等、処理すべき問題が多く存在します。これらの問題も、弁護士が介入していた方が、適切な対応ができる可能性が高まります。したがって、基本的には事故からなるべく早い段階で弁護士を介入させた方がよいと考えられます。

事故後に加入しても弁護士費用特約を使えますか?

保険一般にいえることですが、 保険金の支払いを受けるためには、事故時に保険に加入している必要があります。
弁護士費用特約も同様です。弁護士費用特約に加入している状況で発生した事故でなければ、弁護士費用特約を使用することはできません。
すなわち、事故後、弁護士費用特約に加入したとしても、当該事故の損害賠償請求に際し、弁護士費用特約を使用することはできません。
早めにご自身が弁護士費用特約に加入しているかどうかを確認することをお勧めします。

1事故1名当たりの補償ということは、1事故2名なら補償も2倍になるのですか?

自動車に2人乗っていたときに追突事故にあったとします。この場合、被害者が2名です。
このような場合、弁護士費用特約はどのように適用されるかというと、被害者それぞれが、弁護士費用特約を使用できます。
すなわち、被害者Aの弁護士費用が280万円となった場合、弁護士費用特約で280万円が支払われます。被害者Bが200万円の弁護士費用となった場合、弁護士費用特約で200万円が支払われます(それぞれ、上限は300万円です)。
他方、被害者Aの弁護士費用が330万円、被害者Bの弁護士費用が50万円であった場合、Aについては300万円が、Bについては50万円が、それぞれ弁護士費用として支払われます。「併せて380万円で、600万円(300万円×2人分)だから、合計380万円が支払われる」ということではありません。

まずは弁護士にご相談ください

交通事故は、早期に弁護士に相談をし、適切なタイミングで弁護士を介入させることが、適切な賠償を受けるために重要なことです。しかしながら、弁護士を介入させるためには一定の費用が必要となり、一定程度負担が生じるのは間違いありません。

弁護士費用特約を使用することができれば、弁護士費用の負担なく、または最小限にすることができ、かつ、適正な賠償金を獲得できる可能性が高まります。この記事を読んでいただいた方は、是非弁護士費用特約に加入しているかどうかをご確認の上、加入していない場合には、加入を検討していただくことをお勧めいたします。

交通事故で受傷するケガで最も多いのが「むちうち」です。

このむちうちの治療先として、整形外科と整骨院が挙げられます。
どちらに行くべきか迷う方が多いかと思いますが、治療効果や損害賠償の観点からすると、まずは整形外科に通院したうえで、二次的に整骨院を利用することをおすすめします。

本記事では、なぜ交通事故でむちうちを負った場合は整形外科に行くべきなのか、その理由や、整骨院に通院する場合の注意点などについて解説していきます。事故でむちうちを負い、病院の通い方について悩まれている方は、ぜひご一読下さい。

交通事故後は、できるだけ早く整形外科を受診しましょう

交通事故に遭った場合は、外傷や体に違和感がなくても、できる限り早く整形外科を受診し、診察や検査を受けるようにしましょう。
神経など予期せぬ部分にケガを負っている可能性もあり、また、治療が遅れると、ケガが悪化するおそれがあるからです。整形外科であれば、CTやMRI等の精密検査を行ったうえで、最適な治療を受けることが可能です。

また、むちうちは事故後2~3日後に発症する(首の痛みや筋肉の張りが現れる)ケースが多いため、事故当日は無症状でも、万が一に備えて整形外科を受診しておくことが重要です。
事故後しばらく経ってから病院に行くと、医師よりむちうちと診断されたとしても「本当にこの交通事故でケガをしたのか?」と、加害者側の保険会社より、事故とケガとの因果関係を疑われる可能性があります。そのため、遅くとも事故後2週間以内には、整形外科を受診することが望ましいでしょう。

むちうち治療で整形外科に行くべき理由

むちうちを負った場合、整形外科と整骨院、どちらに行くべきか迷う方もいらっしゃると思いますが、まずは整形外科を受診し、医師の指示のもと通院を続けることが必要です。
整形外科に行くべき理由について、以下で解説していきます。

交通事故の損害賠償を請求するため

交通事故の被害に遭った場合に、加害者側に対して、治療費や慰謝料などの損害賠償金を請求するためには、今受けている治療が、今回の交通事故によって受傷したケガのためであるという因果関係が必要となります。これを証明するのが、医師が作成する「診断書」や「後遺障害診断書」です。
整骨院で施術を行うのは、医師ではなく柔道整復師であるため、これらの診断書を作成することはできません。
そのため、むちうちを負った場合は、まずは整形外科を受診し、継続的に通院しながら、診断書を取得する必要があります。

後遺障害等級認定を申請するため

治療を尽くしたものの、痛みやしびれなど、むちうちによる後遺症が残ってしまった場合に、自賠責保険を通じて後遺障害等級認定を受けると、むちうちであっても、高額な後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができるようになります。

後遺障害等級認定は自動的に実施されるものではなく、認定を希望する被害者が、後遺障害診断書やMRI・レントゲン等の検査資料を自賠責保険に提出することで、審査が開始されるものです。しかし、これらの後遺障害診断書等は、いずれも病院でないと入手できません。

また、後遺障害等級認定においては、通院頻度や治療の経過も重要視されるため、継続的に病院に通院することも必要となります。 
仮に整形外科に通わず、整骨院だけに通院すると、後遺障害等級認定を受けられなくなるリスクがあるため注意が必要です。

整形外科と整骨院(接骨院)を併用する際に起きやすいトラブル

むちうちでは整形外科への通院が原則ですが、整骨院(接骨院)との併用も可能です。
ただし、整骨院に通う場合は、医師の了承を得た上で、加害者側の保険会社にも事前に連絡することが必要です。これを忘れると、損害賠償請求で次のトラブルが生じるおそれがあります。

保険会社に整骨院(接骨院)への通院を連絡しなかった場合

事故によるケガの治療費は、加害者側の保険会社が病院へ直接支払うケースが多く、これを、任意一括対応といいます。これらは保険会社の義務ではなく、サービスの一環として行われるものです。
しかし、加害者側の保険会社は、整骨院(接骨院)の治療費については支払いを認めないことが少なくありません。これは、整骨院での主な施術はマッサージ等であるため、医師の医療行為とは異なり、治療行為でないと考えられているからです。

また、整形外科に通院せず、整骨院にばかり通い続けると、ケガの治療の必要性を怪しまれ、治療費の支払いを早期に打ち切られるリスクもあります。
したがって、事前に医師に整骨院に通院する許可をもらったら、整骨院に通い始める前に、加害者側の保険会社に連絡しておくようにしましょう。

整形外科の医師の許可なしに整骨院(接骨院)に通った場合

病院の治療だけでなくマッサージも受けたい、夜でも通いやすい等の理由から、整骨院(接骨院)での施術を希望する方がいるかもしれませんが、医師に無断で通院を開始することは控えるようにしましょう。必ず医師の了承を得てから通院を開始することが重要です。

整骨院での治療費やその分の慰謝料については、基本的に、加害者側の保険会社に請求することができますが、医師の了承がなく整骨院に通った場合は、整骨院に通った分の治療費や慰謝料を支払ってもらえない可能性が高くなります。これは、医師がケガの治療に有効であると判断していなければ、整骨院での施術の必要性や有効性が認められにくいからです。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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整骨院(接骨院)に通院する場合の注意点

整骨院に通院することになった場合であっても、最低でも月に1~2回程度の頻度で、整形外科にも通院を続けることが必要です。
整形外科に行くのをやめて、整骨院だけ通い続けると、加害者側の保険会社に「これ以上、ケガの治療は必要ないのでは?」と判断され、早期に治療費の支払いを打ち切られる可能性があるからです。
また、定期的に整形外科に通院すれば、主治医にケガの症状を伝え、今後の治療方法についてアドバイスをもらうことも可能です。
さらに、医師が治療経過を観察し、整骨院での施術の必要性を適宜判断していれば、整骨院での治療費や慰謝料の支払いも認められやすくなるというメリットがあります。

むちうちの治療方法

整形外科のむちうち治療

整形外科のむちうち治療では、湿布や鎮痛剤が処方されたり、以下のような治療が行われたりすることが一般的です。

  • ブロック注射:局所麻酔を打ち、痛みの緩和や自然治癒力の向上を図る。
  • 牽引療法:機械や手で首を引っ張り、硬くなった筋肉や関節にかかる負担を軽減させる。
  • 電気療法:患部に電気パッドを装着し、微電流を流し、動作の回復や痛みの軽減を図る。
  • 運動療法:運動により、動きが悪くなった関節の可動域訓練や筋肉強化を図る。
  • 温熱療法:ホットパックなどで筋肉を温め、血行を良くする。

整骨院(接骨院)のむちうち治療

整骨院(接骨院)のむちうち治療では、ハンドテクニックによる施術がメインで行われます。首や肩周りのマッサージや全身マッサージによって筋肉をほぐして、血行を良くしたり、骨を正常な位置に戻す整体などが行われたりします。

また、整形外科と同様に、牽引療法や電気療法等が行われる場合もあります。
ただし、整骨院では投薬治療や精密検査ができないため、痛みやしびれなどの症状を和らげるための対症療法が基本となります。したがって、整骨院に通院する場合は、柔道整復師に自覚症状を詳細に伝え、効果的な施術を受けることが必要です。

後遺障害等級認定を見据えて検査を受けましょう

むちうちは、痛みやしびれ、頭痛やめまいなどの症状が出るケースが多いですが、明らかな外傷がなく、レントゲンやMRI検査などでも異常所見が見つからないことが多々あります。

むちうちによってこのような神経症状が後遺障害として残った場合に、適切な後遺障害等級認定を受けるためには、整形外科の医師に自覚症状や生活への支障等を詳細に伝え、後遺障害診断書に記録してもらい、さらに、必要な検査を受けることが必要です。

後遺障害認定に必要な検査とは、レントゲンやCT、MRI等の画像診断はもちろんのこと、神経学的検査(スパーリングテスト、ジャクソンテスト、知覚テスト、反射テスト等)などの検査が挙げられます。後の後遺症に備えて、できる限り早い時期にこれらの検査を受け、検査結果を記録してもらうことが重要です。

お困りのことがあったら弁護士にご相談ください

むちうちは明らかな外傷がなく、MRIなどの画像にも写りにくいため、医学的証拠を得ることが難しいケガです。そのため、相手方の保険会社との示談交渉の際に、「本当に今回の事故でむちうちになったのか?」「治療が必要だったのか?」などと、事故とケガとの関連性や治療の必要性について、もめるケースが少なくありません。

この点、交通事故に精通した弁護士に任せれば、慰謝料請求を見据えた通院の仕方や自覚症状の伝え方等のアドバイス、治療費打切りの延長交渉、後遺障害等級認定の申請サポート等をしてもらえるため、適正な賠償を受けられる可能性が高まります。
むちうちについてお悩みの場合は、ぜひ交通事故対応を得意とする弁護士法人ALGにご相談ください。

交通事故にあってしまった後、まずは治療で精一杯になってしまいます。
とはいえ、事故日から時間が経過する前に、弁護士に加害者への損害賠償請求等を依頼した方が、負担も少ないでしょう。また、弁護士特約という保険に加入していれば、弁護士費用を自己負担せずに済む場合も多くなります。

弁護士に依頼するとしても、どのように弁護士を探したらいいのかわからない方のために、交通事故に遭った場合の弁護士の探し方を以下で解説します。

交通事故を得意とする弁護士の探し方

交通事故に遭った経験のある知人がいる場合や知人が弁護士の場合、まずはその知人に聴いてみるとよいかと思います。知人に依頼することができますし、知人と同じ弁護士を選ぶこと、知人が当時弁護士をあの手この手で探した場合には、弁護士に関する情報を教えてもらうこともできるからです。また、弁護士からさらに別の弁護士を紹介されるという場合もあります。

特に、知人につてなどがない場合には、お住まいの都道府県の弁護士会に問い合わせてみるのも良いでしょう。弁護士会は、所属する弁護士や法律事務所の情報を持っているので、交通事故に詳しい弁護士を探していると伝えれば、様々な情報を教えてくれるはずです。

インターネットを利用して探す

インターネットの検索エンジンに、「交通事故 弁護士 〇〇(地名)」とまずは入力して検索をしてみましょう。交通事故を得意分野とする弁護士の所属する法律事務所は、そのホームページに、交通事故に関する内容及び取り扱っている弁護士の情報を掲載していることが多いからです。「地名」を入れる理由としては、検索エンジンでは全国の弁護士の情報が出てくるので、東京に住んでいるのに九州の弁護士が検索されるといったことを防ぐためです。
最近では、インターネットに多くの情報を掲載する弁護士が多いので、交通事故分野に強い弁護士を探すことができるでしょう。

保険会社から弁護士を紹介してもらう

保険会社は、交通事故をメインとして取り扱っている部署があり、この部署の方々は、日々、弁護士を相手にしたり、弁護士と一緒に仕事をしたりしています。そのため、何度も同じ弁護士と仕事をしているので、交通事故分野に精通している弁護士をよく知っていると思われます。
したがって、事故に遭った際に、保険会社に聞いてみるのも1つの手です。

もっとも、加害者側の保険会社は、被害者であるあなたに利益な情報ばかりを教えてくれるわけではないでしょう。問い合わせるならば、自分の加入している保険会社に聞いてみることをおすすめします。

交通事故に強い弁護士・法律事務所の選び方

交通事故に強い弁護士を選ぶとしても、一体どんな弁護士であれば交通事故に強いのかわからないという方も多いでしょう。

もちろん、交通事故の業務経験が豊富な弁護士はその分野に長けていることはいうまでもありませんが、その他、紛争の解決には経験だけでなく様々な知識やテクニックを備えている必要があります。

どのような弁護士を選ぶべきか、以下に解説していきます。

交通事故の示談交渉の経験が豊富

交通事故の損害賠償請求は、最終的に示談により金額が決まることが多いです。示談というのは、話し合いにより、治療費、慰謝料、その他費用を加害者側の保険会社が被害者に対しいくら支払うかを決めることをいいます。

これは裁判ではなくあくまで交渉なので、弁護士が何度も示談交渉をしたことがあればあるほど、どのくらいまでの金額なら認められやすくどのように交渉をすれば有利に働きやすいのかを知っています。そのため、示談交渉の経験が豊富な弁護士に依頼することをおすすめします。

過去の解決事例をチェックしましょう

最近では、過去に所属弁護士が解決した実際の事件をホームページに掲載している法律事務所が多くあり、ほとんどの場合成功したケースが記載されています。その解決事例のなかに、自分の交通事故と近い内容のものがあれば、その事務所ないし弁護士が、同様に事件を解決してくれることが期待できます。

ただし、全く同じ事件というのは存在しないので、解決事例で成功したからといって、必ず同じ結果になるとは限らないことに注意しましょう。

医学的知識を兼ね備えている

弁護士と言うと、法律の知識しか必要ないように見えますが、交通事故の紛争を解決するには、相当な医学的知識が必要になります。

どのような症状ならば本来治療は何か月間続くのか、どのような検査が必要なのか、整骨院に通う必要はあるのか、後遺障害等級が認定されるためにはどのような診断書を医師に書いてもらうべきかなど、医学に関する知識が豊富に要求されます。したがって、医学に関する専門知識があればあるほど、交通事故の紛争について適切な法的アドバイスができるといえます。

後述のとおり、医学について詳しい弁護士は多くありませんので、きちんと探しさえすれば、見つかるはずです。

専門の部署があり、交通事故に特化した弁護士がいる

交通事故専門の部署がある事務所は、そう多くありません。そもそも、法律事務所は一般企業と異なり所属人数がそう多いわけではないので、所属弁護士数が10人を超えるだけでも中規模事務所として扱われます。

そのため、部署を作ること自体が難しくなりますが、そんな中でも交通事故を専門とする部署がある場合、交通事故に特化した弁護士が部署を作れるほどに所属しているということなので、交通事故に詳しいことは予測がつくかと思います。

交通事故を専門部署として打ち出している法律事務所があれば、まず問い合わせてみましょう。様々な知識を持った弁護士が対応してくれるはずです。

後悔しない弁護士・法律事務所の選び方

交通事故に遭うとそれだけでも精神的にダメージを受けるので、弁護士費用がかからないとしても、きちんと事件に誠実に向き合い解決してくれる弁護士に依頼をしたいと思います。他の弁護士に頼んでいれば結果は違ったかもしれないのに、などと考えなくていいように後悔しない選び方を紹介します。

説明がわかりやすく理解しやすい

交通事故に遭うのは初めてという方がほとんどだと思います。どのように治療が進むのか、加害者側の保険会社にどう対応すればよいのか、損害賠償はどの範囲まで認められるのか、交渉は自分で全部するのかなど、わからないことだらけなのは当然です。

精神的にも疲れている中、説明がわかりにくいとより不安が掻き立てられる一方で、丁寧にわかりやすく説明をしてくれる弁護士がいると信頼関係を築きやすいかと思います。

まずは、法律相談に行き、わからないことを素直に聞いてみましょう。わかりやすく答えてくれれば、依頼をしても今後、信頼関係を構築しやすいでしょう。

弁護士以外の受付・事務局の対応が優れている

法律事務所では、ほとんどの場合、受付や事務員が電話応対を行います。直接、弁護士に電話が繋がるわけではなく、弁護士が不在の場合には、事務員が代わりに伝言を聞いたり、わかる範囲で依頼者の質問に答えたりします。

そのため、受付や事務員の対応が悪いと、嫌な気持ちになることも多く、不明点も聞きづらくなりますが、逆に、丁寧な応対をしてくれる事務員のいる事務所では、不安にならずにわからないことを聞いたりできます。法律相談を申し込む際の受付や事務員の応対も、事務所選びの参考にしてみましょう。

きちんと、事務員の教育が行き届いている法律事務所は、それだけでも優れた事務所であるといえるでしょう。

費用倒れについて説明してくれるかどうかもポイント

相談者の方に対し、きちんとリスクについても説明してくれるかどうかは、弁護士選びにとって重要なポイントになります。依頼を受けたいからといって、このような請求ができますよ、これが認められればこれだけの損害賠償金がもらえますよ、などと良い方向の可能性にしか触れない弁護士は、適切な説明をしているとはいえません。

相談者のことを親身に考える弁護士は、加害者側に請求できない「費用」について詳しく説明し、いたずらに期待を持たせないという配慮もしています。

報酬金等の料金体系が明確

依頼者が弁護士特約に加入している場合、弁護士報酬を依頼者が負担しない場合もありますが、訴訟へ進むと自己負担が発生することも多いです。そのため、料金体系をきちんと説明し、弁護士報酬としていくら支払う必要が出てくるのかを明確に説明してくれなければ、不安になる方もいるでしょう。

きちんと報酬体系について事前に説明してくれるかどうか、見定めることも重要なポイントです。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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弁護士の変更はできる?

弁護士に依頼したものの、やはり合わなかったり、別の弁護士に依頼したいといったことがあれば、弁護士を変えることは可能です。もっとも、依頼した弁護士とは委任契約を解除し、別の弁護士に依頼することになるので、新たに着手金はかかることに注意が必要です。同じ事務所内で弁護士を変える場合にも料金が発生することは多いので、事前に確認してから変更するようにしましょう。

もっとも、弁護士を変更する場合には、さらに注意が必要です。前の弁護士に支払った着手金は基本的に返還されないこともそうですが、従前の業務内容は守秘義務にもあたるので新しい弁護士に必ずしも引き継がれるわけではありません。したがって、また1から、自分で弁護士に交通事故に関する説明をしなければなりません。その点は注意をしましょう。

後悔しないためにも、交通事故に強い弁護士を選びましょう

交通事故に遭うというのは、大変辛くストレスのかかる経験です。金額としてできる限り加害者側に多く請求できるにこしたことはないでしょうし、寄り添ってくれたし親身に話を聞いてくれる弁護士に依頼しなければ、二重のストレスを抱えることにもなります。

他の弁護士に依頼すればよかった、などと後悔をしないためにも、きちんと交通事故分野に精通しており、わかりやすくリスク等を説明してくれ、親身に話を聞いてくれる弁護士を探すことが大切です。まずは、交通事故に強い法律事務所を探し、相談に行ってみることをおすすめします。

交通事故でケガをして、病院に通った場合、精神的苦痛に対する慰謝料を請求することが可能です。
慰謝料は基本的に通院日数・期間に応じて支払われるものであるため、6ヶ月という長期の通院になると、相手に請求できる慰謝料も高額となる傾向にあります。

ただし、相手方の保険会社から、相場よりも低い慰謝料が提示されることも少なくありません。安易に相手の提案に応じると、適正な慰謝料が受け取れなくなるおそれがあります。

そこで、本記事では、6ヶ月通院した場合の慰謝料にスポットをあて、正しい慰謝料の相場や、治療費の打ち切りを打診された場合の対応方法等について解説していきますので、ぜひお役立て下さい。

6ヶ月の通院期間ではどれくらいの慰謝料がもらえるの?

交通事故でケガをして通院した場合、加害者に対して、「入通院慰謝料」を請求することができます。

入通院慰謝料は、基本的に、通院期間や実通院日数を基礎として計算され、期間・日数が長くなればなるほど、慰謝料も増えるのが通常です。ただし、ケガの症状や治療内容に照らして、通院頻度が少なすぎると、慰謝料が減額されることもあります。

また、慰謝料の相場は、軽傷(すり傷、むちうち等)か、重傷(骨折、脱臼等)かによっても、相場が異なります。
例えば、むちうちの軽傷で、通院期間6ヶ月、実通院日数60日間の場合の入通院慰謝料は、下表のとおりです。

【通院期間6ヶ月、実通院日数60日の入通院慰謝料】
自賠責基準弁護士基準
むちうちで他覚所見がない場合や軽傷の場合51万6000円89万円
それ以外の怪我(骨折等の重傷)51万6000円116万円

なお、自賠責基準とは、加害者側の自賠責保険が用いる最低補償の基準です。
これに対し、弁護士基準とは、弁護士が加害者側に慰謝料を請求する際に用いる基準です。被害者に過失がない事故の場合は、基本的に、自賠責基準よりも弁護士基準の方が、慰謝料が高額となることが多くなります。

通院期間とは

通院期間とは、初診日から治療終了日、または初診日から症状固定日までの期間のことをいいます。
症状固定日とは、「症状がまだ残っているものの、これ以上治療を続けても、改善が望めない状態に陥ったと主治医が判断した日」のことをいいます。
なお、基本的に、治療終了日、または症状固定日以降の通院は、入通院慰謝料の支払い対象となりません。

実通院日数とは

実通院日数とは、ケガの治療のために、実際に病院へ通院した日数のことをいいます。
あくまで通院「日数」であるため、例えば、1日に2回に分けて通院したり、1日に病院と接骨院2つ通ったりしても、実通院日数は1日として数えられます。
入通院慰謝料は通院期間に応じて算定されるのが通常ですが、ケガの症状や治療内容などに照らし、通院頻度が極端に低い場合は、実通院日数に応じて、慰謝料が算定される場合があります。

ただし、通院日数を増やせば、慰謝料が増えるというわけではありません。必要以上に通院すると過剰診療が疑われ、過剰と判断された治療費の支払いを拒否されたり、慰謝料が減額されたりすることがあるためご注意ください。

通院が少ないと慰謝料が減る

自賠責基準による入通院慰謝料は、1日あたり4300円(2020年3月31日以前に起きた事故については4200円)で算定します。そのため、通院日数が少ないと、慰謝料の合計額が減ることになります。

一方、弁護士基準による入通院慰謝料は、基本的に、実通院日数ではなく、通院期間をベースに算定します。しかし、通院期間が長くても、実通院日数が少ない場合は、軽傷の場合で実通院日数の約3倍、重症の場合で実通院日数の約3.5倍が、慰謝料算定の通院期間として用いられることがあり、その場合は入通院慰謝料が減額されます。

ただし、骨折などのケガのように、実際に通院治療を行うより、自宅療養で安静にしていた方がケガの治療に有効と判断された場合は、通院頻度が低くても、通院期間を慰謝料の算定期間とする場合もあります。

実通院日数が少ない場合の慰謝料はいくら?

それでは、実通院日数が少ない場合の慰謝料の相場を見てみましょう。
ここでは、日弁連が発行する通称・赤い本に掲載された「慰謝料算定表」を使い、弁護士基準による慰謝料を日割り計算して、慰謝料を算出します。

【通院6ヶ月、月1日しか通院しなかった場合】

  • 実通院日数:6日
  • 通院期間:6日×3=18日(通院頻度が極端に少ないため実通院日数×3とします)
  • 慰謝料の計算式:1ヶ月分の慰謝料×18/30
  • 軽傷の慰謝料:19万円×18/30=11万4000円
  • 重傷の慰謝料:28万円×18/30=16万8000円

【通院6ヶ月、週1日しか通院しなかった場合】

  • 実通院日数:24日
  • 通院期間:24日×3=72日(通院頻度が少ないため、実通院日数×3とします)
  • 慰謝料の計算式:2ヶ月分の慰謝料+2ヶ月と3ヶ月の慰謝料の差額×12/30
  • 軽傷の慰謝料 36万円+(36万-19万)×12/30=42万8000円
  • 重傷の慰謝料 52万円+(73万-52万)×12/30=60万4000円

【通院6ヶ月、週3日通院した場合】

  • 実通院日数:72日
  • 通院期間:180日(適切な通院頻度が保たれているため、原則どおり180日で計算します)
  • 軽傷の慰謝料:89万円
  • 重傷の慰謝料:116万円
弁護士基準の慰謝料(入院無し、通院期間6ヶ月)
月1通院週1通院週3通院
むちうちで他覚所見がない場合や軽傷の場合11万4000円42万8000円89万円
それ以外の怪我(骨折等の重傷)16万8000円60万4000円116万円

相手方から治療費打ち切りの話が出た場合の対応

ケガの治療費は、相手方の保険会社が病院に直接支払ってくれる場合が多いです。
しかし、ある程度治療を続けると、保険会社から「そろそろ症状固定ですね」と言われ、それと同時に治療費の支払いの打ち切りを打診されることがあります。
ケガの症状によりますが、打ち切りの打診時期は、打撲で通院1ヶ月、むちうちで通院3ヶ月、骨折で通院6ヶ月というケースが多くなります。

しかし、医師がまだ治療が必要だと判断しているなら、打診を受け入れる必要はありません。ケガが治っていないのに、治療を終えると、ケガが悪化したり、慰謝料が減額されたりするおそれがあります。そのため、安易に打ち切りに応じず、保険会社に治療費支払いの延長を求めることが重要です。
仮に、治療費の支払いが打ち切られたとしても、健康保険などを使って、治療費を被害者側でいったん立て替えて治療を続け、立て替えた分を示談交渉時に加害者に請求する等の方法もあります。

まだ通院が必要な場合

医師から、「まだ治療が必要である」という診断を受けたら、相手方の保険会社に対して、以下の対応が必要となります。

【治療の必要性を訴える】
具体的には、ケガの症状や治療がいつ終わるのか等、医師に医学的な見解を診断書やカルテに記載してもらい、その写しを保険会社に見せて、治療費の支払いの延長交渉を行う

ただし、個人で治療の必要性を訴えても、相手方の保険会社が治療費の支払いを頑なに拒否する場合はよくあります。このようなケースでは、交通事故に精通した弁護士に一度相談し、今後の対応方法についてアドバイスを受けられることをおすすめします。

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6ヶ月の通院後、「症状固定」と診断されたら

症状固定とは

症状固定とは、これ以上治療を続けても、改善の見込みがない状態になったことをいい、そのタイミングは医師が判断します。
基本的に、症状固定日以降に発生した治療費や慰謝料については、加害者側に請求できなくなるため、症状固定日については慎重な見極めが必要となります。
なお、症状固定日に、痛みやしびれなどの後遺症が残っている場合は、後遺障害等級認定の申請が行えるようになります。

後遺症が残ったら

後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定を受けられる可能性があります。
後遺障害等級認定とは、自賠責保険から「間違いなく、交通事故によって負った後遺障害です」と正式に認定を受けることをいいます。

後遺障害として認定されると、後遺障害等級(1級~14級)に応じた後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できるようになるため、損害賠償金額が大幅にアップする可能性があります。
ただし、自覚症状だけで後遺障害認定を受けることは簡単ではなく、MRIやレントゲンなどの画像検査や、触診などによる神経学検査を受け、後遺症の存在を証明する医学的な証拠を得ることが必要となります。また、医師に書いてもらう「後遺障害診断書」の内容も後遺障害認定の可否を左右するため重要です。

適切な後遺障害認定を受けるには、専門知識が必要とされ、提出資料も多岐にわたるため、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

後遺障害等級認定についての詳細は、以下の記事をご覧ください。

後遺障害等級認定の申請方法

主婦が6ヶ月通院した場合の慰謝料

主婦であっても、会社員等と同じように、慰謝料を請求することが可能です。
慰謝料をもらえるかどうかについて、収入の有無は関係ありませんので、主婦であるからといって、慰謝料を減額されることもありませんので、ご安心ください。

また、主婦は慰謝料の他にも、主婦の休業損害(主婦の休損)を請求できる場合があります。
休業損害とは、仕事を休んだ分の減収分の補償をいいますが、家事も労働の一種と考えられていますので、事故によるケガのために、家事をすることができなかった場合は、休業損害を請求することが可能です。

なお、家事に支障が出た日の証明は容易でないため、基本的には、実際に通院した日数に応じて、休業損害が算定されるのが通常です。

家事ができなくなって家政婦に来てもらった場合は?

家事ができなくなって、家政婦を雇った場合の家事代行費用も、相手方の保険会社に請求することが可能です。ただし、相場よりも高額であったり、ケガの症状に照らして、必要以上に家政婦に頼んでいたりする場合は、費用を全額支払ってもらえない場合があります。

なお、家政婦を雇った日については、基本的に、主婦休損を請求することができません。
例えば、休業日数が14日で、家政婦を雇った日数が5日だとすると、以下のいずれかを相手方に請求することになります。

①9日分の休業損害+5日分の家事代行費用
②14日分の休業損害

具体的には、①と②の金額を比較し、高額である方を請求するのが望ましいといえます。

6ヶ月ほど通院し、約800万円の賠償金を獲得した事例

6ヶ月ほど通院し、約800万円の賠償金を受け取ることができた、弁護士法人ALGの解決事例をご紹介します。

【事案の概要】
依頼者は相手方の車に追突され、むちうちを負いました。
6ヶ月ほど治療を続けたものの、後遺症が残ったため、頚椎除圧固定の手術を受け、その後、後遺障害等級11級7号の認定を受けました。
相手方は、依頼者の手術は、事故前からあった首の疾患が主な原因であるとして、30%の素因減額を主張しました。

【担当弁護士の活動】
弁護士が裁判を起こしたところ、相手方は、顧問医の意見書を提出し、「依頼者の首に事故前からあった加齢によって起きた変性が、本手術を行うことになった主な原因である」と主張しました。
そこで、当方は相手方の主張や証拠の曖昧な点を指摘し反論しました。

【解決結果】
裁判所は当方の主張を認め、素因減額は認めないという判断を下しました。
その結果、既払い金を除き、約800万円の賠償金を受け取る内容での和解成立に成功しました。

6ヶ月通院した場合の慰謝料請求は弁護士にお任せください

通院6ヶ月目は、交通事故の慰謝料請求において、様々な対応を迫られる節目の時期です。
通院期間が長いため、慰謝料も高額となることが予想され、さらに後遺障害等級認定を受けられる可能性も出てきます。また、相手方の保険会社が治療費の打ち切りを打診し始める時期でもあるため、延長交渉などの対応も必要となります。

今後の対応に少しでも疑問や不安を感じた場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士に任せれば、治療費の支払いの延長交渉、後遺障害認定の支援、弁護士基準による慰謝料の増額交渉等をしてもらえるため、適正な賠償を受けられる可能性が高まります。
通院を6ヶ月続けられ、慰謝料についてお悩みの場合も、交通事故対応を得意とする弁護士法人ALGにご相談ください。

法律上相続人の地位にある人を、法定相続人といい、法定相続人は、亡くなった家族(被相続人)の遺産を相続する権利があります。

もっとも、被相続人が遺言書で「遺産は全てはAに相続させる」というように、法定相続人以外の第三者に遺産を全て相続させる意思を遺す場合があります。このような場合、法定相続人は、少しも遺産を取得できないのでしょうか。

法定相続人には、「遺留分侵害額請求権(民法1046条)」という権利があり、遺贈を受けた人などに対し、その一部を分けてもらうよう請求することができます。
以下では、この権利について、順次説明していきます。

遺留分はいつまで請求できる?期限はあるのか?

遺留分侵害額は、いつまでも請求できるわけではありません。
遺留分を有する権利者が「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間」または「相続開始の時から10年を経過するまで」と決められています。
遺留分権利者になれるのは、被相続人の「兄弟姉妹以外の相続人」です。そのため、被相続人の親や子、などが権利者です。

①遺留分があることを知った時から1年(時効)

遺留分侵害額の請求は、いつでもできるわけではありません。先に述べたとおり期間の制限があり、これを過ぎると時効にかかってしまいます。
「相続の開始と遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知った時から1年」を過ぎてしまうと、遺留分侵害額請求権が消滅してしまいます。

時効はいつからカウントされる?起算点について

ここにいう「相続の開始を知った時」とは、被相続人が亡くなったことを知り、かつ、自分自身がその相続人であることを知った時を指します。一般的に、親や子がなくなったことは当日に知ることが多く、その時点で自身が相続人であることが明確になるのが通常なので、死亡日当日になることが多いです。
なお、遺贈等の場合、被相続人の作成した遺言書の存在を知り、かつ、受遺者が遺言書内でその旨の記載があることを知ったことが必要です。

②相続開始から10年(除斥期間)

相続開始の時から10年についても注意が必要です。
すなわち、遺留分侵害額請求をできる権利者が被相続人の死亡や遺贈の事実などを知らなくても、相続が開始してから10年が経過すると、請求権は消滅し、行使することができなくなります。
これを除斥期間といいます。10年経てば、初めから権利を有しなかったのと同一の効果が生じるので、注意が必要です。

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遺留分侵害額請求権の時効を止める方法

相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間を経過する前に、遺留分侵害額の請求をするという意思表示をしましょう。具体的に目に見える形で行うことが大切です。これにより、1年間という時効期間はストップすることになります。

相手方に内容証明郵便を送る

請求をする相手に対し、「配達証明付き」内容証明郵便を送るなどして、形に残すことが大切です。
相手方にきちんと通知内容が到達したことを証明として残しておけば、後に請求をしたかどうかといったトラブルを避けられるからです。
なお、意思表示は相手方に到達しなければ効果は生じませんので、相手に届いたことを確認できる方法でなければリスクがあります。

内容証明郵便に記載する事項

内容証明郵便に必要事項を書かなければ、請求の効果が生じない場合があるので、気を付けて内容証明を作成するようにしましょう。

例えば、下記の事項を忘れずに書くようにしましょう。

  • 請求者の氏名
  • 請求相手の氏名
  • 被相続人に関する情報
  • 請求する権利の名前
  • 請求日
  • どの遺産について、請求権を行使するのか

最後の項目については、具体的にどの遺贈、贈与について権利行使するのか特定している必要があります。

遺留分を請求した後の時効にも要注意!

遺留分侵害額請求権を行使すると、新たな消滅時効期間が進行することになるので注意が必要です。
具体的には、遺留分侵害額請求権を行使したときから5年間が消滅時効期間です。これは、令和2年4月1日以降の法改正に基づく期間ですので、それ以前に行使した場合には、10年間と大幅に異なることになります。

金銭債権の時効を止める方法はある?

まず、以下の方法により、進行している消滅時効をストップさせることができます。
相手が自ら債務のあることを承認すること、遺留分侵害額請求の訴訟を提起し、確定判決を取得することです。
もっとも、判決が確定しても、新たに10年の消滅時効が進行するので、請求を怠らないようにしましょう。

遺言や遺贈の無効についても争う場合の注意点

そもそも遺言の内容が無効であるとして、無効確認訴訟を提起することもできます。
その場合でも、注意しなければならないのは、遺留分侵害額請求権の消滅時効期間は進行してしまうことです。
訴訟では、まず遺言の無効について争い、予備的に遺留分侵害額請求をすることもできるので、そのような方法をとることが安全です。

訴訟を提起していれば、当然に遺留分侵害額請求権についても考慮がされると思い込まないようにしましょう。

遺留分の期限に関するQ&A

遺留分は放棄できますか?また、放棄するのに期限はありますか?

遺留分の放棄にあたり、特に期間制限はありません。
もっとも、相続開始前に放棄するためには、家庭裁判所の許可が必要です。誰かの働きかけにより、無理に遺留分を放棄しなければならなくなる事態を避けるためです。
これに対し、相続開始後、遺留分の放棄をするのは自由です。本来、請求をできる相手に対し、放棄するとの意思表示をすれば足ります。

遺留分の時効が迫っているのですが、相手が請求に応じない場合はどうしたらいいですか?

相手に対し、内容証明等の通知書を送り、請求権を行使したにもかかわらず、相手方が支払ってくれない場合もあります。そのときは、時効期間を経過しないように、訴訟提起などの手続きが必要です。調停でも行うことができますが、あらかじめどのような手続きが必要か調べておきましょう。

調停や裁判を起こすことで、遺留分の期間制限を止めることはできますか?

遺留分侵害額請求の訴訟を提起すると、訴訟が終了するまでは、時効期間が満了することはありません。ここでいう訴訟の終了とは、確定判決が下されるまでのことを指します。
判決が出た後、一定期間を経過して判決が確定した場合は、新たにそこから、10年間の消滅時効期間が進行することになります。

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遺留分の請求には時効があります。なるべく早めに弁護士にご相談下さい。

遺留分侵害額請求を行使しようと思っていると、いつの間にか時効期間が経過していた、ということも少なくありません。このような事態を避け、適切に権利を行使するならば、法律の専門家である弁護士に依頼する方が安心できます。複雑な手続きであくせくしなくても済むよう、弁護士に依頼することをおすすめします。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。