
監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
交通事故のけがを治療していると、「症状固定」というなんだか聞きなれない単語を耳にすると思います。そしてその単語は、お医者様や保険会社様から、聞くことになると思われます。この「症状固定」という言葉を保険会社から言われたときは注意が必要です。以下でその理由を解説していきます。
症状固定とは
そもそも「症状固定」というのは、「療養をもってしても、その効果が期待しえない状態で、かつ、残存する症状が、自然的経過によって到達すると認められる最終の状態に達したとき」をいいます。ここでいう「療養」とは、「傷病に対して行われる医学上一般に承認された治療方法」を言います。
なんだか難しい単語が並びましたが、平たく言えば、「これ以上治療してもよくならない状態」のことを、「症状固定」といいます。
症状固定を決めるのは医師
「症状固定」となったかどうかは、被害者様でも、保険会社でも、我々弁護士でもありません。これを決めるのは、「医師」です。
そのため、保険会社から「症状固定ではないか」などと打診されても、それに対して回答する必要はありません。保険会社も営利企業ですから、自分に有利な症状固定日を主張してきます。
あくまで、ご担当医さまから「症状固定です」と言われたときにだけ症状固定となるので、保険会社の話を鵜呑みにしてはいけません。
症状固定と言われたが痛みがある場合は通院してよいのか
ご担当医様が、「症状固定です」とおっしゃっても、まだ痛みが残っている場合があります。そうなった場合、その後に治療を受けても、原則として治療費として賠償請求することはできません(もっとも、重篤な後遺症が残っている場合など、その必要性・相当性が認められるときは、将来の治療費として賠償請求することができる場合があります)。したがって、治療に行っても治療費は賠償によって取り戻すことはできず、自費で健康保険などを活用して通院することになります。
もっとも、まったくの無駄ではありません。もし後遺症が辛いならば、我慢しないで通院を続けた方がいいでしょう。通院を続けておくと、後遺障害等級が認定されなかった場合に異議申し立てをする際に有利に考慮される場合があるからです。
症状固定時期は賠償額に大きく影響する
一般的に、治療費については、交通事故によって受けた傷の程度などに照らし、症状固定までに行われた必要かつ相当な治療行為の費用であるならば、事故との因果関係がある損害としてその賠償が認められています。
したがって、保険会社に言われるがまま症状固定すると、本来貰えるはずだった治療費がもらえなくなる場合があります。また、症状固定までの期間が短すぎると、むち打ち症などの他覚所見がない後遺症の場合、実際の痛みはたいしたことないのではないかと思われて、後遺症と認められない場合があります。
もっとも、長くのばせばいいというものではありません。例えば、後遺症を傷の大きさで判断する外貌醜状については、時が経てば少しずつ傷が薄くなっていきますので、早めに症状固定したほうがいいでしょう。
症状固定の前後で支払われる慰謝料が異なる
・症状固定前の慰謝料
症状固定までは、前述した治療費(付添監護費)、休業損害、そして慰謝料といった損害があります。このうち慰謝料については、傷害慰謝料(入通院慰謝料)と呼ばれています。これについては、入通院期間をもとにいわゆる赤い本の別表に基づき算定されます。
症状固定後については、後遺障害慰謝料というものがあります。これは、後遺障害等級認定がされた後に、その等級認定に沿った慰謝料が認められます。
等級に対応した慰謝料は以下の通りです。
1級 | 2800万円 | 2級 | 2370万円 | 3級 | 1990万円 |
---|---|---|---|---|---|
4級 | 1670万円 | 5級 | 1400万円 | 6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 | 8級 | 830万円 | 9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 | 11級 | 420万円 | 12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 | 14級 | 110万円 |
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
症状固定後の流れ
症状固定となった場合は、さっそく医師に後遺障害診断書を作成してもらい、後遺障害等級認定申請を行いましょう。申請をしなければ、後遺障害等級は認定されませんし、等級に沿った慰謝料ももらえません。申請の方法については、事前認定と被害者請求の方法があります。
症状固定についてのお悩みは弁護士にご相談ください
前述のように、症状固定についての判断は専門家である医師が行います。したがって、我々には何もすることはできません。しかし、症状固定の判断をどう扱うかに関しては、我々弁護士の方が専門家でしょう。また、保険会社との交渉についても、医師は対応してはくれませんから、弁護士にお任せいただいた方がよいでしょう。そして、保険会社との交渉が面倒だったり、辛かったりする場合でも、我々にお任せいただければと思います。
交通事故の被害にあった場合、その被害により生じた損害に対して、加害者から賠償をしてもらう必要があります。そのためには、加害者との間で損害の内容、損額の額、過失割合などについて交渉をしていくことになります。そして、交渉した結果、加害者との間で合意ができれば、示談が成立し、賠償金の支払いを得ることができます。交渉が長引けば、それだけ損害の補填は遅れますし、示談が成立しなければ、訴訟をせざるを得なくなり、解決までに長い時間と手間がかかります。つまり、交通事故の被害にあった場合、納得した内容で示談をまとめることができるかが重要となるのです。
交通事故における示談とは
交通事故が発生した場合、被害者と加害者との間では、賠償するべき金額を巡って様々な争点が生じますが、当事者間の交渉の結果、賠償額を合意して、交通事故に関する紛争を解決することを示談といいます。つまり、示談とは、訴訟手続によらずに法的紛争を解決すること意味し、民法上の和解契約の一つとして位置づけられます。なお、加害者と交渉するとはいっても、現在、自動車やバイクを運転する人のほとんどは、自動車保険(任意保険)に加入していることから、実際には、保険会社の担当者と示談交渉することになることが多いといえます。保険会社との間で示談が成立すると、免責証書、示談書といった書面を取り交わし、賠償金の支払いを受けることになります。
示談金に含まれているもの
交通事故の被害によって発生する損害には、大きく分けて、修理代、代車費用、携行品の損害といった物損と治療費、慰謝料、休業損害といった人損があります。示談金には、物損も人損も含まれることになり、同じタイミングで示談をすることになりますが、物損の方が先に損害額が確定することも少なくないことから、治療継続中に物損だけ先行して示談することもあります。また、治療の結果、後遺障害が認定された場合には、後遺障害に関する損害も示談金に含まれてきます。
交通事故の示談金に相場はある?
交通事故は、定型的に処理される部分はあるものの、事故によって発生する損害の内容や金額は千差万別ですから、示談金の相場というものを一概に定めることは難しいといえます。しかし、例えば、慰謝料については、治療期間に基づいて算定することから、治療期間の見込みが分かれば、示談金も見当が付きますし、後遺障害についても、認定された等級によって、損害額を見通すことが可能といえます。そのため、損害の費目ごとでは、示談時に受領するべき金額の相場をある程度は判断することができるので、保険会社との示談交渉では、そのような相場を見越しながら、合意する金額を検討していくことになります。
示談交渉の流れ
交通事故の損害は、物損と人損に分けることができますので、示談をする場合、それぞれ損害の算定をして金額の合意をすることになります。物損と人損は同時に示談をすることもありますが、先に損害額が確定する物損を先行して示談することもあります。
物損の示談においては、修理費やレッカー費用、代車費用は、被害者ではなく、業者に保険会社が支払うことにするなど、被害者への最終的な支払額以外の部分を話し合うこともありますし、修理費は、修理業者と保険会社の調査員が修理金額の協定を結ぶ形で決定することも多いです。
人損の示談においては、治療終了後に示談交渉する場合と、後遺障害認定申請後に示談交渉をする場合があります。前者は、治療によって、治癒に至った時、治癒とまではいかなくてもほとんど症状がなくなった時の示談交渉の流れであり、後者は、治療を継続したにもかかわらず、痛みやしびれが残ってしまった時の示談交渉の流れとなります。なお、いずれの場合でも、治療をいつまで続けるかなど、示談交渉に先立っての交渉が必要となるケースは少なくありません。
示談にかかる期間
示談にかかる期間を明確に定めることは非常に困難です。なぜなら、損害額はわずかであっても、過失割合で大きな対立があれば、示談交渉は長期化しますし、損害額がかなり大きくても、争点の少ない事故の場合、示談交渉がすぐに終わることもあるからです。そのため、以下に記載するのは、あくまで目安程度だと考えてください。
まず、物損の場合、事故後、1~2か月程度で示談することが多いといえます。もっとも、対立の大きな争点がある場合には、示談まで3か月以上かかったり、そもそも示談に至らないこともあります。
次に、人損の場合、治療終了、または、後遺障害認定申請の結果が出てから1~3か月程度で示談に至ることが多いといえます。人損の方が、損害額が大きくなる傾向もあり、その分だけ示談に時間を要することになります。人損のうち、死亡事故の場合、特に損害額は大きくなることから、示談にはそれなりの時間を要することになりますが、事故時に亡くなってしまった場合などでは、治療自体に長期間必要となる事故と比べると、死亡事故の方が事故時から示談まではかえって時間がかからないということもあります。
示談交渉が進まない場合の対処法
示談交渉がなかなか進まない理由はいくつかあります。
まず、示談をするためには損害を確定させる必要がありますので、治療が長期化する、後遺障害認定申請の結果が返ってこない状態では示談交渉を進めることはできません。この場合には、損害額が確定する時点までは待つほかないというのは実情です。
次に、損害額が決まっても、過失割合に争いがある場合には、なかなか示談交渉は進まず、結果的に訴訟を選択することになるケースもあります。また、過失割合も決まり、示談交渉を進めることができる状態になっても、保険会社の担当者の対応が遅いとか、相場以下の回答しか出してこないといった場合にも示談交渉は進みませんし、逆に、被害者の方が、被害者感情の高さ故に損害額にこだわり過ぎてしまう場合などでも示談交渉は進みません。この場合には、弁護士に相談するなど、第三者の意見を取り入れてみたり、保険会社の担当者の変更を申し入れるなどすることで示談交渉が進むことがあります。
加害者が無保険だった場合の示談交渉
交通事故における無保険とは、任意保険未加入と自賠責保険未加入の2つを意味しています。自賠責保険未加入は違法行為ですので、当然に問題ですが、事故を起こしたときに賠償金を用意する経済力もないのに任意保険未加入のまま自動車を運転する行為も極めて問題です。
このような無保険の相手方との事故にあってしまった場合、賠償金の獲得に苦労することが多いです。
まず、任意保険未加入の場合、自賠責から最低限の賠償金を受領したうえで、加害者本人と示談交渉を行い、加害者の財産がどの程度あるか検討しながら、解決を図ることになります。
次に、自賠責すら未加入の場合、加害者本人から賠償金の獲得が困難と見込まれることが多いことから、政府保障事業を利用して損害の補填を試みることになり、実質的には示談交渉をしないようなケースもありえます。なお、政府保障事業の利用にあたっては注意点もあることから、利用する場合には、利用のためのルールをよく確認する必要があります。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
交通事故の示談交渉で注意すべきこと
示談交渉は「人身事故」でおこないましょう
交通事故にあった場合、怪我をして通院をしているにもかかわらず、事故直後はあまり痛くなかったので、物損事故にしてそのままにしてしまった、加害者から人身事故扱いにしないで欲しいと頼まれて物損事故にしてしまったということがあります。もちろん、その後の手続きにおいて一切もめることがないのであれば、物損事故のままだったとしても、保険会社から賠償金を得ることできれば問題ないこともあります。
しかし、怪我をしているにもかかわらず、物損事故というのはその時点で矛盾しているわけですから、交渉段階において争点がある場合には、物損事故のままにしていることが被害者に不利な事情として働くことがあります。
そのため、交通事故でけがをした場合には、必ず人身事故届を提出してください。
示談してしまうと撤回できません
示談交渉は、和解契約の一種でもあり、一度、示談を成立させた後、事後的に示談交渉をやり直すことはできません。理論上は、示談の前提になる事実を誤解していた場合などには、錯誤を主張して示談をやり直す余地はありますが、保険会社、加害者がやり直しに応じるとは考え難く、訴訟が必須と見込まれます。
示談交渉後にさらに損害の請求ができる例外的ケースとしては、将来的な後遺障害の発生が予想される場合があります。そのような場合には、示談をする際に、将来、事故による後遺障害が発生した時には再協議することを盛り込んでおくなどしておく必要があります。
示談をする大前提として、自らに発生した損害項目に漏れがないか、損害額は妥当かどうかなどを慎重に検討する必要があるのです。
示談を相手任せにしたり、焦ったりすると不利な結果となる場合があります
保険会社は、被害者に対して、加害者本人だけでは到底負担できない額であっても、損害賠償してくれる相手であって、被害者保護に有益な存在です。しかし、保険会社の担当者は、必ずしも被害者の利益に最大限配慮してくれるわけではありません。焦って示談したり、知識のないまま示談すると、不利な結果になることもあるので注意が必要です。
例えば、交通事故で車を買い替えた場合、買い替え諸費用を請求できる余地がありますが、多くの保険会社は時価額の賠償を持ちかけるだけで、買い替え諸費用の賠償ができることを保険会社の方から提案してくることはありません。そのため、被害者に十分な知識がないまま示談すると損をすることがあるのです。また、保険会社は、任意保険の基準で慰謝料を算定しますが、本来、被害者は裁判基準に基づいて慰謝料請求できます。そうすると、任意保険基準と裁判基準の差額が生じることになるわけですが、保険会社は、本来支払う必要のある裁判基準の慰謝料しか提示していないにもかかわらず、任意保険基準と裁判基準の差額の範囲で、あたかも被害者に譲歩しているかのような交渉を持ちかけてくることもあります。
損害賠償請求権には時効があります
交通事故の損害賠償の請求には5年間の時効があり、時効期間を経過させてしまうと請求自体ができなくなることから注意が必要です。もっとも、加害者が任意保険会社に加入している場合、保険会社は、被害者保護という社会的責任を担っていることもあり、よほどのことがない限り、時効を主張してくることないため、実際には大きな不安を持つ必要はないとはいえます。もっとも、人損ではなく、物損については、保険会社であっても時効を主張してくるケースもあることから、時効期間への注意を怠っていいわけではありません。
なお、令和2年4月1日以前の事故については、民法が改正される前の事故となり、時効期間は3年となっています。
成立前の示談書チェックポイント
示談交渉が無事にまとまり、示談が成立した場合に作成するのが示談書や免責証書と呼ばれる合意書面となります。この書面にサインをすれば、示談が成立し、事後に撤回はできませんから、内容をよく確認する必要があります。
まず、何より重要なポイントは示談書に記載された金額に間違いがないかという点です。示談書の作成に移行している時点で、損害額に争いはなくなっているのが通常ですが、示談金額が適正かどうかも今一度確認しておくことが無難です。
また、損害額の部分に注意がいきがちですが、事故の日付、当事者の名前など事故の内容に関する部分に誤りがないかも確認が必要です。誤記があった場合には、示談書や免責証書の有効性が問われかねないですし、単純に書き直しの手間が生じることもあります。
交通事故の示談交渉で、不安に思うことがあれば示談成立前に一度ご相談下さい
交通事故の示談交渉をする場合、過失割合が適正か、算定されている賠償額は妥当か、訴訟をするか示談をするかどちらが有利かなど、様々なことを考慮したうえで、合意するかどうかを決める必要があります。被害者が、交通事故に関する知識を持っていることはまれであって、保険会社の担当者の説明のままで示談することになってしまう恐れもあります。
交通事故の被害にあってしまった以上、適切な賠償を得て、損害を回復する必要はあるわけですから、示談交渉をする場合には、交通事故に関する専門的な知識を駆使しながら進めていくことが重要です。示談交渉にあたって不安に思うことがある方は是非お早めに弁護士に相談してみてください。弁護士に依頼をした場合、忙しい仕事の合間などに保険会社とやり取りする煩わしさからも解放されます。
交通事故に遭った結果生じる代表的なケガの一つとして、いわゆる「むちうち」というものが挙げられます。
しかし、よくあるケガであるにもかかわらず、適切な賠償を受けることが非常に困難な症状の一つでもあります。
このページでは、交通事故の結果、むちうちとなってしまった場合に適切な賠償を受けるための情報を掲載しています。
むちうちに対する保険会社の対応や、むちうちに対する賠償額算定の仕組み等を確認し、適切な賠償額を受け取れるようにしましょう。
むちうちとは?
むちうちとは、交通事故などによって体が衝撃を受けた際、頭部が急にゆさぶられた結果、首の筋肉や神経等が傷ついた状態をいいます。もっとも、「むちうち」は正式な傷病名ではないので、医師の診断としては、「頸椎捻挫」や「外傷性頸部症候群」などと記載されることが一般的です。
むちうちの主な症状
代表的なむちうちの症状として、首の痛みが挙げられます。
しかし、むちうちの症状は首以外の部位でも発生します。
肩、背中や腕の痛み、しびれ、めまい、頭痛、吐き気、耳鳴りなど、体の様々な部位にむちうちの症状が現れることもあります。
また、上述したような症状が、事故当日にはなく、事故から数日後に発生する方もいます。
むちうちの症状に気づいた際には、病院で医師に診てもらいましょう。
むちうちの主な治療方法
むちうちの治療を受ける際に、整形外科に通院するか、整骨院(接骨院)に通院するかの選択肢があります。
整形外科に通院する場合、治療の担当をするのは医師です。
整形外科における事故後の初期段階での治療は、頸椎の固定のためのカラー、鎮痛剤の投与・処方などが行われます。
また、炎症がおさまってきた際には、温熱治療なども行われるようになります。
他方、整骨院の場合、施術を担当するのは柔道整復師です。
柔道整復師は医師ではない以上、診察、検査や手術を行うことができません。
整骨院で受けられる施術としては、手技療法(手や指で体を擦る、押す、揉む、叩く、震わす等して刺激を与える方法)、物理療法(電気、光、温熱、冷却、超音波等の物理的エネルギーを使って)などが挙げられます。
むちうちで認定される可能性のある後遺障害等級と認定基準
後遺障害等級 | 認定基準 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
むちうちの症状に対する治療を行ったものの、症状が残存してしまった場合、後遺障害等級の認定を受けられる可能性があります。
具体的には12級13号もしくは14級9号の認定を受けることができるかもしれません。
12級13号に該当するには、むちうちの症状について医学的に証明ができる必要があります。
症状が医学的に証明できると言えるのは、レントゲン等の画像検査や神経学的検査などで異常が発見でき、それが交通事故と因果関係のあるものであり、自覚症状の原因とも一致すること、そして今後も完治の見込みは厳しいこと等を医師が証明した場合です。
仮に、証明が難しくとも、症状が医学的に説明可能であれば14級9号の認定を受けられる可能性があります。
14級の認定を受けるには、事故後、発生している症状について適切な治療を行い、症状が連続・一貫していることを通院時に医師に残してもらうことが重要です。
むちうちで請求できる慰謝料と慰謝料相場
同じむちうちの症状を訴える被害者でも、後遺障害等級認定を受けるかどうかによって、受け取ることができる慰謝料の金額が大きく異なります。
これは、後遺障害等級認定を受けた場合に、入通院慰謝料に加え、後遺障害慰謝料が発生するからです。
さらに、入通院慰謝料も後遺障害慰謝料も、弁護士が介入するかどうかによって、慰謝料の金額が大きく変動します。
それでは、それぞれの慰謝料が、弁護士が間に入ることによってどれぐらい金額が変わるのか見てみましょう。
入通院慰謝料
入通院慰謝料は、傷害慰謝料とも呼ばれることもあり、事故によってケガをしたことや、入通院をしなければならない苦痛(精神的損害)を受けたことに対する賠償です。
自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|
77万4000円 | 89万円 |
自賠責基準では、通院期間と実通院日数の2倍の小さい方に日額4300円(令和2年4月1日より前に発生した事故は日額4200円)をかけることで賠償額が求められます。
今回の例ですと、通院期間180日(6か月)と実通院日数90日の2倍のいずれも同じ180日ですので、これに4300円をかけます。その結果77万4000円の賠償額を算出できます。
他方、弁護士基準では、原則として、通院期間に応じて計算がされます。
通院期間6カ月に対応する入通院慰謝料は89万円ですので、これが賠償額となります。
今回の例では、実通院日数が確保できているので自賠責基準でもそれなりの賠償額が算出できます。
もっとも、6カ月で実通院日数90日というのは、週3,4回の高頻度での通院となり、あまり現実的ではありません。
実際は、大幅に自賠責基準の方が低い賠償額となるケースの方が多いでしょう。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、事故によって受けた症状に対する治療を行ったものの、後遺障害が残存してしまった場合に、被害者の精神的苦痛を慰藉するためのものです。
自賠責基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|
12級13号 | 94万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
入通院慰謝料とは異なり、後遺障害慰謝料は認定された後遺障害等級に応じて、慰謝料の金額が定められていますので、煩雑な計算は不要となります。
もっとも、自賠責基準では弁護士基準で受けられる賠償額の3分の1にも満たない賠償額となっています。
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むちうちで適正な等級認定・慰謝料請求するためのポイント
通院頻度を適切に保つ
被害者の方は、仕事をしていたり、家事・育児に時間がとられたり、多忙な方も少なくありません。
しかし、あまりにも通院日の間隔があいてしまうと、治療費の対応を保険会社から打ち切られてしまう可能性が高まります。
これは、通院が減ったのは、むちうちの痛み等の症状が緩和されたからだろう、と保険会社が考えるからです。
重要なのは、症状の程度に応じた治療を受けることです。
したがって、ほぼ毎日通院することもお勧めできません。
過剰な通院は、保険会社に対し、必要がないのに通院している可能性を強く疑わせ、治療費を打ち切られる要因となりかねないからです。
必ず整形外科を受診する
むちうちを治療するとき、整形外科ではなく、整骨院(接骨院)に通院される方がいます。
その方たちに聞くと、整骨院の方が、患部に対して施術の効果を実感できたり、営業時間が長かったりするため、通院されているそうです。
しかしながら、整形外科と異なり、整骨院の施術を担当する柔道整復師は医師ではありません。
そのため、整骨院の施術については、保険会社側から整骨院における治療の必要性が激しく争われることが多いです。
整骨院に通院したい場合であっても、必ず整形外科の許可もしくは指示に基づいて通院するようにしましょう。医師がその必要性を認めるのであれば、保険会社も治療の必要性を認めやすくなるからです。
通院中に保険会社からむちうちの治療費を打ち切られそうになったら
むちうちの場合、被害者がいくら痛いと感じていても、レントゲンやMRI画像を見ても明らかな異常が現れないことも珍しくありません。
画像上の異常が発見できない場合、被害者の訴える症状が、事故前からあった症状であったり、心因性の症状であったりすることを疑われやすい傾向があります。
また、保険会社の運用として、むちうちについては〇カ月、という運用を決めている会社もあるようです。
まだ通院を続けたいのに、保険会社から打ち切りを予告された場合、さらに治療期間が必要であることを保険会社に対して主張する必要があります。
それでもなお、打ち切られてしまった場合、通院をやめてはいけません。
症状がいつ治ったか決めるのは保険会社ではありません。
担当の医師が、被害者に対する治療が必要であると判断する限り、国民健康保険等を利用して、通院を続けることが重要です。
交通事故でむちうちになったら弁護士へご相談下さい
むちうちは、被害者にとって深刻な症状です。
しかしながら、多くのむちうちの症状を訴える交通事故被害者が、適切に賠償を受けられていなかったり、治療費を打ち切られて受けるべき治療をあきらめてしまったりしています。
もし、保険会社の対応に疑問を感じたり、適切な賠償を提示されていないと感じたりした場合には、ぜひ、弊所にご相談ください。
むちうち事案を多数取り扱う弁護士が、あなたが受けるべき適切な賠償額がどの程度かといった見通しのみならず、様々な点で依頼者一人一人の状況に応じたサポートを提供いたします。
被相続人との関係が、残念ながら生前悪かったため、相続人には一切の財産をやらないという趣旨の遺言を残されてしまう場合もあると思います。また、被相続人が愛人に「ぞっこん」で、死ぬ前に自分の子や妻にではなく愛人に財産全てを贈与してしまったなんて場合もあるかもしれません。そのような場合に役立つのが、遺留分侵害額請求です。
遺留分侵害額請求とは
遺留分侵害額請求とは、わかりやすく言えば、被相続人が処分した財産の一部を取りもどす制度です。
被相続人には、生前はもちろん死後に至っても、自らの財産を自由に処分する権利があります。生前は贈与など、死後は遺言、遺贈や死因贈与といった方法が考えられます。
一方で、被相続人がすべての財産を勝手に処分できるようになってしまうと、遺された家族は生活していけなくなってしまう危険もあります。
そこで、遺留分という制度を設け、遺留分を侵害するほどの財産の処分を制限し、遺された相続人に一定の財産を残せるようにしたのが、遺留分侵害額請求という制度です。
遺留分侵害額請求の方法
では、遺留分侵害額請求とは、具体的にはどのようにすればいいのでしょうか。以下では遺留分侵害額請求をする方法とその後の流れを解説していきたいと思います。
相手方に遺留分侵害額請求の意思表示を行う
遺留分侵害額請求の方法は、相続放棄とは異なり、裁判所に出向かなくても、口頭で遺留分を侵害している相手方、すなわち、被相続人から財産を渡された相手に対して言えば効力が生じます。
しかし、口頭では、後々言った言わないの水かけ論に発展することも予想されることや、遺留分侵害額請求は時間が経つと消滅してしまうことから、以下のように内容証明郵便で遺留分侵害額請求の意思表示をしましょう。
内容証明郵便について
内容証明郵便で意思表示を行うことにより、その内容で郵便を相手方に出したことが分かります。また、配達証明オプションをつけることにより、いつ相手に届いたかが分かります。そうすると、相手は、そんな内容の意思表示は知らない、受け取っていないなどと言えなくなり、確実に遺留分侵害額請求ができます。また、上記のように、遺留分侵害額請求は時間制限があるので、いつ届いたかが分かれば、時間制限内に遺留分侵害額請求を行使したことがわかります。
内容証明郵便の出し方は、下記の郵便局のHPをご覧ください。
https://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/syomei/相手方と話し合う(協議)
内容証明郵便を発送し、遺留分侵害額請求権を行使したら、次はいよいよ相手方との交渉に入ります。
まずは相手方に任意で侵害額を支払うように交渉します。そして、その際には、請求側であればできる限りもらえる額が大きくなるように、遺贈された土地の価格が高価で、侵害額も大きいと主張したりします。
合意できたら和解書を作成し、遺留分を受け取る
何とか相手方が任意に支払ってくれるようになれば、和解をして、和解書を作成します。その際には、相手が約束を反故にしても大丈夫なように、強制執行ができるような文章の体裁にしておいた方がいいでしょう(公正証書で作成する場合ならなおさらです。)。また、後で作成したものであり、自分はそんな文書知らないなどと言われないためにも、公正証書として残しておくのも手ではあります。
合意できなかったら調停を行う
合意に至らなければ、調停を行うことになります。
調停の申立先は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所か、当事者が合意で定める家庭裁判所です。
調停では、調停官という第三者を交えて、相手方と交渉していくことになります。第三者が入るので、直接の交渉よりも相手を説得しやすい面もありますが、当然費用も掛かりますし、請求する側も請求される側も一方的に有利な合意はできないでしょう。
調停でも合意できなかったら訴訟する
調停でも合意が形成されない場合、訴訟という最後の手段に出ることができます。合意なんて形成できないから最初から訴訟をしたいという方もいるかもしれません。しかし、調停前置主義により、調停を挟まないと訴訟というステージに至れません。
訴訟では、もちろん裁判官の判断である判決を貰うという手もありますが、途中で和解するという形で終わることもあります。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
特別受益・生前贈与がある場合の遺留分侵害額請求の注意点
まず、特別受益とは、被相続人から共同相続人に対して、「遺贈」された財産、及び、婚姻や養子縁組のため、若しくは生計の資本として「贈与」された財産のことを言います。
生前贈与とは、主に相続対策で行われる、被相続人が亡くなる前に特定の者に、財産を贈与することです。
この、特別受益、生前贈与がされている場合、注意が必要です。なぜかというと、遺留分は前述のように、遺された相続人の生活を守ることが目的です。そうだとすれば、特別受益や生前贈与で財産を得ていたときは、遺産を事前に受け取っていたと判断され、遺留分が無くても大丈夫ということになります。そのため、特別受益や生前贈与を受け取っていると、遺留分が減額、最悪の場合なくなってしまうかもしれません。
複数の人に対して遺贈や生前贈与を行っている場合
まず、遺贈を受けた者と生前贈与を受けた者に関しては、遺贈を受けた者に先に遺留分侵害額請求をします。そして、それでも遺留分を侵害されているときに、生前贈与を受けた者に対して遺留分侵害額請求をします。これは、遺贈が相続財産から支出されるのに対し、生前贈与は、相続財産になる前に生前の時点で支出されているので、侵害の程度が遺贈の方が大きいと考えられているからです。
そして、遺贈を受けた者、又は、生前贈与を受けた者が複数いるときは、遺贈、生前贈与の金額に応じた割合で負担します。
税金がかかるケース
まず、遺留分侵害額請求によって金銭を得ることになった相続人には、相続税がかかります。もし、すでに相続税の申告を遺留分侵害額請求の前にしていた場合、修正申告することになります。
逆に金銭を失った側の相続人は、相続税の負担が軽くなります。すでに申告済みであるときは、更正の請求をしてください。
また、遺留分侵害額請求を受けて、お金に代えて資産の移転を行った者は、譲渡所得税を負担することとなります。
逆に、資産の移転を受けた者に関しては、お金の額と同額で資産を取得したことになり、取得費として税務上計算されます。
請求には時効がある
前述のように、遺留分侵害額請求には、時間制限、すなわち、時効があります。具体的には、相続が始まったこと及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知ってから1年間遺留分侵害額請求を行使しないときは、遺留分侵害額請求をすることはできません。また、相続が開始したことを知らなくても、相続開始から10年経過したときも、遺留分侵害額請求をすることはできません。
もっとも、この時効は、遺留分侵害額請求の意思表示をするまでの期間であり、遺留分侵害額請求をして、遺留分を受け取るまで1年で済ませなければならないわけではありません。そのため、前述した内容証明郵便を速やかに送付するのが適切です。
遺留分侵害額請求のお悩みは弁護士にご相談ください
以上に述べたように、遺留分侵害額請求は、1年の時効という短い期間で遺留分侵害額があるかどうか判断し、遺留分侵害請求の意思表示をしなければ、相続が始まったからすぐに遺留分侵害額請求をしても、空振りをする恐れがあるばかりか、かえって、他の相続人などとの争いを加熱させる危険もあります。
そこで、遺留分侵害額請求については弁護士などの専門家に任せるのが安全と言えるでしょう。
弁護士は、遺留分侵害額請求の専門家で、交渉、調停、訴訟も任せることができます。
人が死亡すると、相続が発生します。亡くなった人(被相続人)の財産は、相続人が遺産分割協議をして分けることになりますが、必ずしも被相続人が生前希望していた内容で遺産が分けられるとは限りません。そこで利用できるのが、遺言書です。被相続人が遺言書を作成しておくことで、遺産の分け方を被相続人が決めることができます。また、遺言書を作成することで、相続人同士の争いを防止することも期待できます。ここでは、遺言書の法的な効力や注意点等を説明していきます。
遺言書とは
遺言書とは、被相続人が、自分の死後、遺産をどのように分けるか等を記載した文書です。きちんと作成された遺言書であれば、法的な効力が認められるため、相続人が協議をしなくても、遺言書の記載通りに遺産が分けられることになります。他にも遺言書に記載することで法的な効力が認められるものがあります(認知や祭祀に関する権利承継者の指定等)が、基本的には、遺産についてどのように分配するかを決めるものだと考えてよいでしょう。
遺書、エンディングノートとの違い
遺言書というのは、法律のルールに沿って記載されたものです。
この点が遺書やエンディングノートとは異なります。遺書やエンディングノートは、何を書くのかも自由ですし、決まった形式もありません。
この違いが、法的な効力の有無に影響します。遺書やエンディングノートの中に、例えば、全ての遺産を妻に相続させるという趣旨のことが記載されていても、それには何ら法律的な効力は認められません。したがって、遺書やエンディングノートを根拠に、財産を取得することはできません。
一方、法律のルールに沿って作成された遺言書であれば、その記載に法律的な効力が認められ、遺言書を根拠に、遺産を取得することができます。
遺言書の種類
遺言には、普通方式遺言と、特別方式遺言があります。一般的に用いるのは普通方式遺言です。普通方式遺言には、法律上3種類のものが定められています。①自筆証書遺言(遺言書が遺言書の全文、日付及び氏名を自書し、押印して作成するもの)、②公正証書遺言(遺言者が遺言内容を公証人に伝え、公証人が作成するもの)、③秘密証書遺言(遺言者が遺言内容を秘密にして遺言書を作成したうえで、公証人の関与のもと、封印をした遺言書の存在を明らかにするもの)3つです。いずれの遺言書でもあっても、法律上の効力に違いはありませんが、相続人は遺言の種類の違いには注意しておかなければなりません。
遺言書の保管場所
まず、自筆証書遺言と秘密証書遺言は、被相続人が自由に遺言書を保管する場所を設定できます。自宅の金庫内、机の引き出しの中、銀行の貸金庫など、様々なケースがあります。
なお、自筆証書遺言については、今般、法律が整備され、法務局に自筆証書遺言を保管できるようになりました。
公正証書遺言は、公証人が保管することになっているため、公証役場に保管されています。どこの公証役場で保管されているものかわからなくても、昭和64年1月1日以降に作成された公正証書遺言であれば、全国の公証役場で検索をかけてもらうことができます。
遺言書はその場で開封しないようにしましょう
遺言書は勝手に開封してはいけません。必ず、家庭裁判所において開封の手続きを行うようにしましょう(基本的には、検認手続きの中で開封することになります。)。この手続きを踏まなければ、様々な不利益を被ることになります。
まず、勝手に開封をしてしまうと、5万円以下の過料に科されることがあります。
また、勝手に開封してしまうと、他の相続人から、遺言書が偽造、変造された等と疑いをもたれ、紛争に発展していく可能性もあります。
他にも、遺言書を勝手に開封し、検認の手続きも行っていない場合には、遺言書をもとに、不動産の相続登記や預金の払い戻しをすることもできません。
開封には検認の申立てが必要
遺言書に封がされている場合には、裁判所の検認手続きの中で、開封をすることになります。
検認手続きとは、遺言書の状態(遺言書に何が書いてあるか等)を裁判所が確認する手続きです。これにより、遺言書の偽造や滅失等を防ぐことができます。
公正証書遺言及び法務局保管の自筆証書遺言以外の遺言書では、家庭裁判所で開封し、検認手続きを経る必要があります。
公正証書遺言及び法務局保管の自筆証書遺言は検認手続きが不要ですが、これは、偽造等の危険性が低いと考えられているためです。
「勝手に開封すると効果がなくなる」は本当か?
遺言書を、検認手続きを経ずに開封してしまった場合、遺言書の法的な効力はなくなってしまうのでしょうか。実は、そうではありません。勝手に開封してしまったかどうか、検認手続きを踏んでいるかどうかという問題と、遺言書の効力の有無の問題とは、全く無関係です。
検認手続きを踏んでいても、方式不備等で無効な遺言書の効力が、有効になるわけではありません。一方、きちんと作成された遺言書について、検認手続きを経ずに、相続人が勝手に開封してしまっても、その遺言の効力は有効なままです。
しかし、勝手に開封し、検認手続きを経なければ、他の相続人と紛争になる可能性が高まりますし、法務局や銀行で各種手続を経ることもできません。
知らずに開けてしまった場合の対処法
法律を知らずに遺言書を勝手に開封してしまったり、遺言書だと気づかずに開封してしまったりするケースは散見されるため、注意が必要です。
このような場合でも、裁判所にその旨を説明したうえで、検認手続きを経るようにしてください。
それでも、勝手に開封してしまったことで、一定のリスクを背負うことにはなります。典型的なのは、他の相続人から、「開封してから検認手続きを経るまでの間に遺言書の偽造がなされた」等と争われ、訴訟に発展していくことです。不要な紛争を回避するためにも、遺言書は必ず、検認手続きの中で開封をするようにしましょう。
遺言書の内容は何よりも優先されるのか
相続財産をどのように分配するかについては、被相続人の意思である遺言書が優先されます。そのため、一部の相続人が遺言書の内容に不服であったとしても、有効な遺言書である限り、遺言書の内容が実現されることになります。
遺言書の内容に相続人全員が反対している場合
遺言書の記載に、相続人全員が不服である場合があります。そのような場合にまで、遺言書の記載通りに遺産を分ける必要があるのでしょうか。
遺言書で遺産を分配されているのが、相続人だけであり、その分け方について、相続人全員が不服であるというような場合があります。この場合には、相続人全員の同意があれば、遺言書の内容と異なる遺産分割協議を行うことは可能です。
一方で、遺産を寄付したい・愛人に譲りたい等、相続人以外の第三者が遺産を譲り受けるというような内容になっている場合には、その第三者の同意もなければ、遺言書と異なる内容で遺産を分配するということはできません。
遺言書に遺産分割協議を禁止すると書かれていたら
遺言書には、遺産の全部または一部について、「その分割を相続開始の時から5年間禁止する」というように記載されることがあります。これは、遺言者が、すぐに相続人間で遺産分割協議をしてしまうと不都合があると考えるときに用いられる文言です。
遺産分割の禁止を遺言で定める場合には、最大5年間禁止することができ、基本的に、相続人は、この期間は、遺産分割をすることができません。
遺産分割の禁止について、相続人全員が反対である場合や、期限前に遺産分割協議ができるかどうかについては、遺言者が遺産分割を一定期間禁止した理由との関係で、個別に判断する必要があります。迷った場合には弁護士に相談しましょう。
遺言書の内容に納得できない場合
遺言書の内容が、一部の相続人に有利な内容で、納得ができないという場合があります。ただ、遺言書が有効であれば、遺言書の内容通りに遺産が分配されてしまうことになってしまいます。
もっとも、それが、特定の相続人の遺留分を侵害する場合には、遺留分侵害額請求をすることができます。遺留分というのは、最低限もらえる遺産というようなイメージでよいです。
遺留分侵害額請求を正しく行うには、様々な法律のルール等を正確に理解する必要がありますので、弁護士に相談することをお勧めいたします。
遺言書の通りに分割したいけれど、反対する相続人がいる場合
遺言書の記載通りに手続きを進めたいのに、遺言書の内容に反対する相続人がいる場合があります。
遺言書の記載内容次第では、遺言書通りの内容を実現するために、反対する相続人の協力が必要なケースがあります(典型例は、遺贈による不動産登記)。こういったケースでも、「遺言執行者」がいれば、遺言執行者の権限として、不動産登記等を進めることができますので、手続きを円滑に進めることができます。遺言執行者を遺言書で指定しておくか、相続人が遺言執行者の選任を裁判所に申し立てるのがよいでしょう。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
遺言書で指定された財産を受け取りたくない場合
遺言書で指定された遺産を取得したくないというケースがあります。例えば、倒壊しかけている建物や売却できる見込みのない土地等です。
このように、遺言書で指定された遺産を取得したくない場合、相続人全員と協議をして、遺言書とは違う内容で遺産分割できればよいですが、それが難しい場合には、相続放棄をするよりありません(家庭裁判所で期限内に手続きをする必要があります。)。
相続放棄は全ての遺産の取得を放棄するということです。価値の高い遺産だけを取得し、価値の低い資産は取得しないということはできないため、注意が必要です。
遺言書が2通出てきた場合
遺言書が2通発見されるということがあります。この場合、どちらの遺言書が有効なのでしょうか。
民法上、遺言者はいつでも遺言を撤回できます。そして、遺言の撤回の方法の一つとして、前に作成した遺言書とは矛盾する内容の遺言書を新しく作成するというものがあります。
したがって、遺言書が2通出てきた場合で、古い遺言書の記載内容と、新しく作成された遺言書の記載内容が抵触する場合には、新しい遺言書が有効と判断されることになります。
遺言書にない財産が後から出てきた場合
遺言書に従って遺産を分配したものの、後日、遺言書に記載されていない遺産が発見されることがあります。遺言者がその存在を忘れていた場合や、遺言を作成した後に取得した財産であるため、遺言書には記載されなかった場合等です。このような遺産は、未だ分配されていないため、別途、全ての相続人で、遺産分割協議が必要ということになります。
このようなことを避けるためにも、遺言書には「その他一切の財産は●●に取得させる」といった記載をしておくことをお勧めします。
遺産分割協議の後に遺言書が出てきた場合、どうしたらいい?
遺産分割協議を行った段階では、遺言書の存在をしらなかったものの、遺産分割成立後に、遺言書が発見されるケースがあります。こういったケースでは、「遺産分割協議は錯誤に基づき成立したものであるから取り消す」ということが認められる場合があります。取り消しができるかどうかは、遺言書の存在を知らなかったことについての重過失の有無、遺言と遺産分割の乖離の大きさなどによって、個別に判断されることになります。
後日の紛争を防止するために、遺産分割協議前に、遺言書が存在するかどうかについて、きちんと調査するのがよいでしょう。
遺言書が無効になるケース
遺言書は一定の場合に無効となる場合があります。実務的にも、遺言書の有効性を争う訴訟は多数見受けられます。
遺言書は、それが遺言者の真意であることを確証できるよう、厳格な要件があります。例えば、自筆証書遺言では、遺言書の全文、日付及び氏名を全て自書し、押印する必要があります。プリンターで印刷したもの、作成日の記載がないもの、押印がないもの等、一つでも要件を欠けば、全て無効です。
また、遺言作成時に、遺言能力がなかった場合にも、無効ということになります。民法上は、15歳に達した者は遺言をすることができると定めていますが、実務で問題となることが多いのは、認知症等により、判断能力がなかったというような場合です。
遺言書に関するトラブルは弁護士にご相談ください
相続や遺言書に関するトラブルは大変多いです。しかし、相続や遺言書の分野は非常に専門的であり、複雑な法律上のルールがあったり、個別的に判断しなければならないものばかりです。弊所は、相続分野の実績が豊富であり、遺産分割協議、遺留分減殺請求、使途不明金訴訟等、多数の事件を取り扱っています。遺言書についても、作成依頼から遺言書無効確認訴訟等まで手掛けています。これから遺言書を作成したいという方も、遺言書に関するトラブルが生じてしまっている方も、ぜひ一度ご相談ください。
相続は、被相続人(相続される側の人)の死亡によって開始します(民法882条)。相続の効力は、相続開始と同時に当然に発生し、本人でなければ認められないもの(使用貸借における借主の地位など)を除く全てが相続人に承継されることになります(民法896条)。
もっとも、相続人は相続方法を選択する意思が尊重されるべきです。
相続の選択肢として、①単純承認②限定承認③相続放棄の3つが存在します。
目次
単純承認とは
単純承認とは、被相続人の権利義務が無限定に相続人に受け継がれるものであり、相続の効果がそのまま相続した人に発生するものです(民法920条)。
単純承認については、単純承認をしますという明確な意思表示がなされる場合に限りません。一定の期間内に限定承認や相続放棄の意思表示がされなかったこと等によって自動的に単純承認とされることがあります(民法921条2号)。
単純承認のメリット
単純承認のメリットは、特別な手続が不要という点にあります。相続人は、相続を知った時から3か月以内に、相続について、限定承認や相続放棄をする意思表示がされなければ、自動的に単純承認とされます(民法915条)。
例えば、限定承認の場合には、相続人の全員が共同で限定承認しなければならず、限定承認よりも手続的負担がないというメリットがあります(民法923条)。
単純承認のデメリット
単純承認をすると、プラスとマイナス含め、被相続人の相続財産の全てを相続することになります。また、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続について限定承認や相続放棄をする意思表示がされなければ単純承認したとされます(民法915条)。
そのため、マイナスの財産がプラスの財産よりも大きい場合には、相続人が大きなマイナスの財産を引き継いで債権者に債務を支払わなければならないというデメリットがあります。
単純承認と見なされるケース(法定単純承認)
法定単純承認は、以下の3つの場合において、単純承認がなされたと法律上みなすものです。
具体的には、
①相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき(民法921条1号)
②相続人が相続の開始を知った時から3か月以内に限定承認や相続放棄をするという意思表示がなされなかった場合(民法921条2号)
③相続人が債権者を害することを知りながら相続財産を隠匿または消費等する場合(民法921条3号)
です。
相続財産の全部または一部を処分した場合
遺産の不動産を売却する等、相続人が自身の相続財産として認めた意思表示をしたといえる場合には、相続財産の全部または一部を処分したものとして、単純承認したとみなされます。
ただし、現状を維持する保存行為や民法602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、法定単純承認にあたりません(民法921条1号)。
不動産の名義変更を行った場合
不動産の名義変更という行為は、当該不動産という財産の所有権を自身に移すという処分行為にあたります。
したがって、不動産の名義変更を行った場合には、相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合という法定単純承認の要件に該当することになり、単純承認をしたとみなされます(民法921条1号)。
熟慮期間内に何も行わなかった場合
熟慮期間は、相続人が相続の開始を知った場合、相続人において、限定承認をするか相続放棄をするかについて慎重に考える期間のことをいいます。
相続人が、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に何も行わなかった場合、熟慮期間を経過したとして、単純承認がなされたものとみなされます(民法921条2号)。なお、熟慮期間は、相続人らの請求によって伸ばせますが、一度目以降は簡単に認められない傾向にあります(民法915条1項ただし書)。
相続放棄や限定承認後に財産の隠匿・消費などがあった場合
限定承認や相続放棄がなされた後、相続財産の全部または一部を隠した、内密に消費した、悪意で財産目録に記載しなかった場合には、単純承認をしたとみなされます(民法921条3号)。
相続財産の隠匿や消費は、限定承認や相続放棄がなされたという相続債権者や他の相続人の信頼を害する行為であるため、相続財産の隠匿や消費を行った相続人に対するペナルティとして、単純承認したものとみなされてしまうので注意が必要です。
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単純承認にならないケース
単純承認にあたりそうなケースにおいても、相続財産からの費用の支払いが社会通念上相当の範囲内といえる場合や現状維持の保存行為にあたる場合等には、単純承認にあたらないケースが存在します。単純承認にならないケースは、個別の事案に応じて判断されます。
葬儀費用を相続財産から出した場合
被相続人の葬儀費用の支払いは、社会通念上相当と認められる程度のものならば、処分行為にはあたらず、法定単純承認には該当しません。
葬式費用や通夜費用、火葬費用等は、通常社会的に支払うべき葬儀費用とされますが、墓石や仏壇の購入費用等の葬儀とは別個に支出される費用については含まれません。
生前の入院費を相続財産から支払った場合
被相続人の生前の入院費を相続財産から支払うことは、入院に伴う代価として通常支払うべき債務の支払いをするものです。
したがって、生前の入院費を相続財産から支払うことは、債務の弁済という現状を維持する行為として保存行為にあたるため、単純承認とみなされません(民法921条1号ただし書)。
形見分けは単純承認となるかどうか判断が分かれる
形見分けが単純承認となるかどうかの判断は、形見分けをしたものの経済的価値が認められるかどうかによって判断されます。
まず、机や椅子等の家財道具や相続財産の主要部分を占めるような価値を有するものを形見分けすれば、経済的に価値を有する財産を処分したものとして単純承認とみなされます。
一方、使い古した古着など、経済的価値がないといえるものを形見分けしたとしても、処分行為にあたらず、単純承認にはあたりません。
単純承認するかどうかはどうやって決める?
単純承認するかどうかは、プラスの財産とマイナスの財産を比較することが重要な基準となります。負債や相続税がプラスの財産を明らかに超える場合には、単純承認するよりも、限定承認ないし、相続放棄を選択した方がよいといえます。
もっとも、プラスの財産が多かったとしても、保証人等の相続人の義務・地位も考慮し、相続人にとって大きな負担となるおそれがある場合には、単純承認をするべきではありません。
単純承認したくない場合
限定承認は、プラスの財産がマイナスの財産よりも多い場合、プラスの財産を相続する方法です(民法922条)。しかし、限定承認は、共同相続人全員が共同で行わなければならず非常に手間がかかります(民法923条)。
相続放棄は、家庭裁判所へ相続放棄の申し出をすることで、プラスの財産及びマイナスの財産全ての相続を否定するものです(民法938条)。
しかし、相続放棄と限定承認は、熟慮期間という期間制限があり、期間の伸長も容易にできないという欠点があります(民法915条1項、同921条2号)。
単純承認についてお悩みの方は弁護士へご相談下さい
相続の方法としては、①単純承認②限定承認③相続放棄の3つが存在します。しかし、一度相続方法を決定してしまうと、基本的に撤回することができません。また、相続人の方が予想外のマイナス財産を相続してしまう等、相続人にとって大きな不利益となります。
弁護士に依頼すれば、相続財産の範囲を適切に確定し、相続人の方にとってどの相続方法が一番ベストになるかについて決定することができるため、単純承認でお悩みでしたら弁護士への相談をご検討ください。
相続をすれば、被相続人の財産だけではなく、借金といった負の財産までも受け継ぐことになります。また、さまざまな理由で、親族といえどもはや関わり合いになりたくないというときであっても、相続が生じれば被相続人の財産・負債を受け継ぐことになってしまいます。
そうならば、もし、死亡した親族に莫大な借金があったときにも相続せざるを得ないのでしょうか?
このような事態に陥った場合に、相続放棄をするという手段があります。
相続放棄とは
相続放棄とは、相続人が被相続人を相続する権利の一切を放棄することです。そして、放棄した後は、初めから相続人でなかったこととなります(民法939条)。
そのため、相続人でなくなり、被相続人の財産・負債などを相続しなくてもよくなります。また、相続人でなかったことになるので、限定承認をする際の共同相続人でもなくなり、限定承認の手続きをする必要がなくなります。この、相続放棄の手続きは、家庭裁判所にて行うことになります。
相続放棄の手続き方法
相続放棄をするためには、単に家庭裁判所に行って、相続放棄をしたいですと伝えるだけでは認められません。相続放棄に必要な書類を集めて、申請を行うことで、相続放棄ができます。
以下では、その方法を解説いたします。
必要書類を集める
1 相続放棄申述書
これは、裁判所のHPからダウンロードできる書式を使って、記入していきます。また、収入印紙800円分を貼り付けます。
2 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
被相続人の最後の住所にあった市役所で住民票除票は入手できます。戸籍附票は、被相続人の本籍地の市役所から入手できます。
3 申述人(相続放棄する方)の戸籍謄本
戸籍については、ご自身の本籍のある市役所から取り寄せることができます。
4 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本(申述人が、被相続人の配偶者、子又はその代襲相続人の場合)
こちらも、被相続人の本籍地の市役所から取り寄せることができます。
5 被代襲者の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本(申述人が代襲相続人であるとき)
こちらは、被代襲者(本来の相続人)の本籍のある市役所から取り寄せることができます。
6 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本(申述人が、被相続人の直系尊属、又は、兄弟姉妹及びその代襲者であるとき)
被相続人の本籍地のある市役所から取り寄せることができます。
7 被相続人の子及びその代襲者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本(申述人が被相続人の直系尊属又は兄弟姉妹及びその代襲者であるとき)
被相続人の子及びその代襲者の本籍地のある市役所から取り寄せることができます。
8 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本(申述人が被相続人の直系尊属又は兄弟姉妹及びその代襲者であるとき)
被相続人の直系尊属の本籍地のある市役所から取り寄せることができます。
家庭裁判所に必要書類を提出する
次に、集めた書類を、相続人の最後の住所地の家庭裁判所に提出します。どこの家庭裁判所なのかは、裁判所のHPを閲覧することで確かめることができます。
提出時は、返送用の郵便切手も一緒に入れて提出してください。
家庭裁判所から届いた書類に回答し、返送する
相続放棄の書類を提出してしばらくすると、相続放棄照会書が家庭裁判所から返送されてきます。これは、申述人が被相続人の死亡を知った日や、本当に申述人が自分の意志で放棄したいと述べているのかといった事項について確認するために送付されているものです。事実をありのままに記載し、回答書を家庭裁判所に送りましょう。
もっとも、この手続きが省略され、相続放棄照会書が送られてこないこともあります。相続放棄申述書を家庭裁判所が確認して、問題ないと判断されると、送付されないことがあります。
もし、いつまでも送付されてこないときは、一度家庭裁判所に問い合わせましょう。
返送期限内に回答書を送れない場合
回答書を返送期限内に送付できないと、相続放棄が却下され放棄できない可能性があります。そうすると、相続放棄は一回しかできないので、二度と相続放棄することができなくなります。
こうした事態を未然に防ぐため、どうしても間に合わない事情があれば、家庭裁判所に事情を説明して待ってもらう必要があるでしょう。また、相続放棄手続きの初めから専門家に依頼するのも一つの手段です。
相続放棄申述受理通知書が届いたら手続き完了
以上の手続きを終えて、相続放棄申述受理通知書が届いたら手続きが完了します。大体10日前後で家庭裁判所から送付されます。相続放棄申述通知書は再発行不可なので、紛失しないようにしましょう。
ほとんどの手続きは、相続放棄申述通知書をコピーすることで何とかなりますが、金融機関によっては、相続放棄申述受理証明書の提出を要求されることがあります。その際は、家庭裁判所に相続放棄申述受理証明書を発行してもらうことができます。相続放棄申述受理証明書は、何度でも発行できるので必要な数発行してもらいましょう。
相続放棄の期限は3ヶ月
相続放棄はいつまでもできるわけではありません。相続が始まったことを知ってから3か月経過すると、相続放棄することはできなくなります。
3か月の期限は、申述の期限であるので、家庭裁判所への書類の提出が3か月以内であれば、問題ありません。また、手続きの途中で超えてしまっても問題はありません。
そのため、少なくとも書類を集めて家庭裁判所に提出することは急いでしなければなりません。
3ヶ月の期限を過ぎそうな場合
3か月の期間を過ぎそうな場合、あきらめて相続を承認するという手段もあります。しかし、相続放棄をしたい場合は、期間を延ばすことを求めることもできます。
放棄の期間の伸長の申立てを家庭裁判所に提出して、承認されれば、期間の伸長がなされます。
伸ばせる期間は、3か月程度が通常でありますが、それ以上の期間に伸長される可能性もあります。
3ヶ月の期限を過ぎてしまった場合
3か月を過ぎてしまうと、通常はそこで相続放棄はできなくなります。そのため、できる限り期限を守ってスピーディに相続放棄の申述をする必要があります。
もっとも、「相当な理由」があれば相続放棄することができます。
「相当の理由」とは、①相続人が被相続人と関わりがなかったなど相続放棄できなかった理由があることや、②相続人が借金などの債務があることをまったく知らなかったこととされています。
このように、一応3か月の期間が過ぎても認められる可能性があるとはいえ、早く手続きを済ませるべきでしょう。
相続放棄の申し立ては一度しかできない
注意が必要なのは、相続放棄の申し立ては、一度きりの手続きだという点です。もし失敗したときは、もう一度相続放棄に挑戦するなどということはできません。したがって、一発で確実にする必要があります。また、むやみに放棄すれば、後から財産が発見されて大損するということもありえます。
このような性質から、ご自身で行うよりも、弁護士などの専門家に依頼して行うことが確実かつ安全と考えられます。
相続放棄が無効・取り消しになるケースがある
相続放棄の申述が受理されても、相続放棄が事後的に無効になることがあります。
例えば相続財産を隠したり、相続財産をほしいままに消費したりすれば、民法921条3号によって、事後的に無効となる可能性があります。相続放棄という制度を悪用して、債務だけ逃れようとしたりするのを防止するためです。
相続放棄をしたときは、相続財産には手を触れないほうがいいでしょう。
後から財産がプラスだと分かっても撤回できない
民法919条1項により、相続放棄は撤回することができません。すなわち、あとから財産がたくさんあったから相続したいと考えても、もう取り返しがつかず、財産を得ることは永久にできなくなります。
そのため、慎重に相続放棄をするかどうかを決定する必要があります。専門家に依頼すれば、慎重かつスピーディに相続放棄ができるので、専門家に依頼するべきでしょう。
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相続放棄は一人でもできるがトラブルになる場合も…
相続放棄は、限定承認とは異なり、一人ですることができます。しかし、相続にはトラブルがつきものであり、それは放棄する場合も同じです。
明らかに相続放棄したほうがいい場合
他の相続人は、多額の借金を上回る財産があることを知っている場合もあります。そのため、他の相続人とよく相談して決めるほうがいいでしょう。そうでなければ、相続放棄をした後で、財産に気づき、なぜ教えてくれなかったのかなどと、トラブルになる恐れがあります。
また、逆に、借金があることに気づかず相続してしまった相続人から、言ってくれればよかったのにと責められ、トラブルに発展する危険もあります。
把握していない相続人がいる場合がある
隠し子がいたことが判明するなど、面識のない相続人がいることがあります。相続放棄をした場合、そのような相続人に相続財産が渡ってしまう恐れもあります。もし、そのことを考慮せずに相続放棄すると、面識のない相続人に多額の財産が渡ってしまい、大損することになります。
したがって、相続人についても被相続人の戸籍等を取り寄せてよく調査したうえで、慎重に相続放棄をする必要があります。
相続放棄後の相続財産について
相続放棄をすると、相続財産はどうなるのでしょうか。すべての財産を失ってしまうわけではありません。また、そのまま放置するとまずいものがあります。
以下では、それらを解説します。
墓や生命保険など、相続放棄しても受け取れるものはある
本人が死亡したことにより遺族に支払われる性質の金銭は、相続放棄をしても受け取ることができます。例えば、死亡保険金(遺族が受取人になっているもの)、国民健康保険などからの葬祭費等、遺族年金、死亡一時金などがあります。
また、お墓などの祭祀財産は相続財産に含まれないので、相続放棄をしてもお墓の管理権などは、引き継ぐことができます。
全員で相続放棄をしても家や土地の管理義務は残る
相続放棄をした者は、その放棄により相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけると同一の注意をもってその財産を管理する義務を負います(民法940条1号)。
全員で放棄しても、相続財産管理人が選任されるまでは、この義務があります。
例えば、相続財産に住宅などの不動産があるとき、早急に相続財産管理人を選任しないと、その不動産が倒壊するなどして通行人がケガした場合、民法717条により損害賠償責任を負う可能性があります。
したがって、全員で相続放棄をした場合も相続財産管理人を早急に選任したほうがいいでしょう。
相続放棄したのに固定資産税の請求がきたら
基本的に支払う義務はありません。
請求されてしまったときは、被相続人の死亡以前に発生した固定資産税に関しては、相続放棄申述通知書又は相続放棄申述受理証明書を役所に提出すれば、督促などを受けることはなくなります。
一方、被相続人の死亡した翌年以後に発生した固定資産税は、放棄した人の登記がされている場合は、仮に相続放棄の申述が終わっていても支払い義務が発生します。そこで、共同相続人によって共有者としての登記がされてしまっている場合などは、相続放棄をした後速やかに移転登記手続や更生登記手続をしたほうがいいでしょう。
相続放棄手続きにおける債権者対応
相続財産の中に、債務があった場合、債権者からの取り立てがありえます。その場合に、よく考えずに対応すると、最悪の場合相続放棄できなくなったり、払ったお金が無駄になったりする恐れがあります。
以下では、そのような場合の対処法を解説します。
「とりあえず対応しよう」はNG
前述のように、相続放棄をすれば、債務を承継する必要はありません。そのため、相続人に債権の取り立てがあっても無視すべきでしょう。とりあえず対応してしまい、被相続人の財産から支払ってしまうと、単純承認として、相続放棄ができなくなる恐れがあります。
しつこいようなら、専門家に相談してから決めますなどと言って、判断を保留しましょう。
支払うべきと考えていても、まずは専門家の判断を仰ぎましょう。
「利子だけ払っておこう」はNG
利子だけでも支払うのはおすすめしません。なぜかというと、もし自分の債務でないことを分かった上で支払ってしまうと、不当利得ではなく非債弁済として返還を求めることができないものになる可能性があります。放棄するか決めていないとき、放棄すると決めたときは、少しの利子であっても、手は触れないようにしましょう。
利子だけでも払ってほしいなどと言われたときには、専門家に相談するなどと言ってすぐに支払うことは避け、専門家の判断を仰いでから支払うようにしましょう。
サインはしないようにしましょう
場合によっては、債権者からサインを求められることもあります。よく考えずにサインをすると、場合によっては、債務引受の方法によって相続債務を承継させられたりする場合があります。
したがって、債権者からとにかくサインしてほしいなどと言われても、決してサインはしないようにしましょう。
もし、不安なら、専門家に相談してからにしますなどと言って、その場でのサインを避け、後日専門家の判断を仰ぎましょう。
遺産に触れないようにしましょう
住宅ローンの解約で今の家に住み続けられるようにするなどと言われても、遺産に決して触れないようにしましょう。
遺産を勝手に処分したりすると、相続放棄ができなくなったり、放棄したかった債務を引き受けることになったりしかねません。相続放棄をすべきかどうかわからないときや、相続放棄をしたいと考えているときは、決して遺産には触れないでください。
そして、専門家に依頼して、その判断を仰ぎましょう。
相続放棄に関するお悩みは弁護士にご相談下さい
これまで述べた通り、相続放棄は、専門家が正確かつスピーディに行わなければ、相続放棄ができなくなるなど、大変な事態に陥ってしまいます。
また、相続放棄のできる期間は3か月と大変短く、事情によってはその延長等をする必要があります。これに関しても、簡単に行える手続きではありません。弁護士は、相続放棄に関してもプロですから、相続放棄をしなければならない事態に陥ったときには、弁護士にご相談ください。
休業損害とは
休業損害とは、交通事故に遭って仕事を休まなければならなくなった、又は仕事をする能力が落ちてしまったことによって収入が減ってしまったことへの損害をいいます。
休業損害が認められる期間は、被害者が負った傷が回復し、又はこれ以上症状が良くならないと医師に診断される時期までとなります。
被害者は、事故に遭っていなければ通常通り仕事をして給与を得られていたはずです。休業損害は、被害者が交通事故で失った損失を損害賠償の形で補わせるものといえます。
休業補償との違い
「休業補償」とは労働者が怪我や病気等によって休んだことで働けない状況になったとき、政府が労働者に補償をするという制度です。
「休業損害」は、対象が交通事故一般です。一方、休業補償は、対象が労働をしている時に生じた災害や通勤で生じた災害等の労働災害が対象となります。また、休業損害を請求できる権利者は、被害者などです。一方、休業補償を請求できる権利者は労働者です。
休業損害と休業補償は、二重取りすることはできません。なぜなら、どちらも事故による損害を補うという点で共通しているからです。
休業「損害」 | 休業「補償」 | |
---|---|---|
請求できる人 | 交通事故被害者 | 労働者 |
問題となる事件 | 交通事故 | 労働災害 |
性質 | 損害の填補 |
休業損害の請求条件
主婦については、事故による傷害によって家事労働ができなくなった期間について、休業損害が認められることがあります。
学生については、まだ働いていないため原則として休業損害の発生が認められません。もっとも、アルバイト収入等がある学生については、休業損害が認められることがあります。
無職者については、労働していないため原則として休業損害が認められません。もっとも、労働をする力と労働する意欲があり、仕事が内定する可能性が高い場合には休業損害が認められることがあります。
休業損害の計算方法と算定に必要な要素
稼働日数とは
稼働日数は、出勤などで実際に労働した日数のことをいいます。
休業損害は、交通事故で負傷した人の基礎収入額に休業日数をかけて計算されます。断続的に欠勤している事案で基礎収入額を計算する際には、実際に働いた稼働日数を使います。
稼働日数は、給与が発生する対象となる日のことをいうため、給与が発生することになる有給も稼働日数に含まれます。
基礎収入とは
基礎収入は、休業損害を計算するために重要な要素となり、損害を被った人の収入源を対象とします。
基礎収入額は、給与所得者、事業取得者、自営業、アルバイト、家事従事者(専業主婦、兼業主婦)、会社役員、学生等といった職業によって計算方法が多少異なります。
また、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準という算定基準のいずれかを利用するかによって、1日あたりの基礎収入の金額が異なります。
職業によって休業損害の算定に違いが出る
主婦の場合
主婦の場合、基本的に、1日あたりの基礎収入額×休業日数で休業損害が計算されます。
1日あたりの基礎収入額は、算定基準によって異なります。まず、自賠責保険による損害賠償の計算方法となる自賠責基準を用いる場合、休業損害は日額6100円×休業日数となります(2020年4月1日以降の事故に限る)。
次に、裁判例に基づいて定められた弁護士基準を用いる場合、休業損害は、基礎収入額(事故日前年の女性の全年齢・全学歴計の貸金センサス(厚生労働省が毎年実施する賃金の統計結果をまとめたもの)÷365日)×休業日数となります。
もっとも、通常は時間経過とともに家事ができる割合が徐々に回復していくことから、事故直後を最大額とし、日数の経過とともに請求額を徐々に小さくしていく方式で解決がなされることもあります(期間逓減方式)。
自営業の場合
自営業の場合、基礎収入額は、一般的には確定申告書の申告所得額とされます。
休業損害は、前年度の確定申告時の申告所得額(年間収入額―必要経費等)÷365日となります。
なお、家賃などの固定経費(販売数等の増減に関係なく毎期一定に支払う費用)を支払わなければならない場合には、(前年度の申告所得額+固定経費)÷365日となります。
年度によって収入に差異がある場合には、事故前3年間の申告所得額÷3年÷365日で算定されることもあります。
アルバイトの場合
基本的には、事故前3か月分の給与額÷90日で計算されます。もっとも、わずかな日数しか勤務していないような場合には、事故前3か月分の給与額を事故前3か月間の勤務日数で割る計算方法も存在します。
自賠責基準を用いると、6100円×休業日数で算定されます。
弁護士基準を用いると、(事故前月収×3か月)÷30日で算出された金額を、休業日数でかけて計算されます。
無職の場合
無職の場合、働いているといえないため、休業損害が原則認められません。
もっとも、働き始めが具体的に予定されていた場合、具体的には、就職が内定して就職後の収入が決まっていた場合等には、就職後の収入を基礎収入として計算します(大阪地判平成9年11月27日交民30巻6号1696頁)。もっとも、裁判例は、必ずしも給与見込額や平均賃金をそのまま算定に用いるわけではなく、事案によって個別的に計算しています。
公務員の場合
自賠責基準では、1日あたり6100円×休業日数で算定されます。
弁護士基準によると、被害者の個別の収入を考慮した上で、1日あたりの基礎収入額×休業日数で計算されます。
公務員の場合、基礎収入額は、給与所得者の計算式が利用されます。具体的には、事故前3か月の給与合計額÷当該期間の稼働日数(弁護士基準)あるいは、事故前3か月の給与合計額÷当該期間の暦日数(任意保険会社基準)で計算されます。
会社役員の場合
「会社役員」といっても、純粋に経営のみを担当している方から、従業員と兼任している方等、様々です。
従業員と兼任している方の休業の場合は、労務の対価の割合を基礎収入額として休業損害を計算します。もっとも、企業の経営によって得られた利益配当の性質を持っている部分については当該役員自身の働いた対価とはいえないため、休業損害とは認めらない傾向にあります。
労務対価部分が報酬に占めている割合は、会社の経営状況や当該役員の地位や職務内容、他の役員や従業員らの報酬額や職務内容を総合的に考慮して判断されます。
会社員の各種手当は含めて算定可能か
まず、賞与の休業損害については、勤務先に賞与減額証明書を作成してもらいましょう。賞与の規定に計算式が存在している場合には、当該計算式に従って休業で減少した金額を計算します。
賞与の規定がない場合、事故の前年度の賞与支給額を目安として、個別具体的に賞与がどの程度減額されるのか計算されます。
次に、残業代の休業損害のついては、勤務先に休業損害証明書を作成してもらうことで、残業代の休業損害を請求できます。
損害の計算方法としては、復職した後に実際に受け取る給与から事故前3か月間の平均給与の差額となります。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
休業損害証明書の書き方
- ①源泉徴収票若しくは事故発生前3か月分の賃金台帳の写しを休業損害証明書の左上に添付します。
- ②休んだ期間を記載します。
- ③休んだ日、有給休暇使用日数、遅刻日数、早退日数を誤りなく記載します。
- ④休業の月を記入し、欠勤は「〇」、所定休日は「×」、遅刻は「△」とその時間、早退は「▽」とその時間を各自記入します。
- ⑤休業した期間中の給与について、給与を支給したか、一部支給か、支給しなかったかのいずれかの該当するところに「〇」を記入します。
- ⑥事故前3か月の支給された給与額を記入します。
- ⑦社会保険や労災保険からの給付の有無を記入します。
- ⑧証明書作成年月日、勤務先所在地、会社名や商号、代表者氏名(社印必要)、電話番号、担当者名、担当者連絡先を記載します。
受け取れるのはいつから?
休業損害は、相手方保険会社が休業損害証明書を確認した後、約2週間程度で受け取ることができる場合があります。
もっとも、休業損害証明書は、会社から出してもらうことになるため、あらかじめ会社に連絡しておくことで早めに作成してもらうべきです。
また、休業損害証明書は、月ごとに提出することができるため、月ごとの休業損害証明書を提出すれば、その月ごとの休業損害を受け取ることが可能となります。
ただし、休業損害の先払いについては、基本的には相手方保険会社に応じる義務がないため、一方的に先払いを拒絶されるケースもあります。
休業損害の請求時効
休業損害は、いつまでも請求できるわけではなく、一定の期間までに請求しなければ認められません。
被害者が交通事故で被った休業損害については、損害及び加害者を知ったときから5年間(民法724条の2)で請求しなければなりません。
また、交通事故から20年間で損害賠償請求権は時効消滅してしまうので(民法724条2号)、注意が必要です。
先払いはしてもらえる?
交通事故の休業損害は、以下の3つの方法のいずれかで先払いをしてもらえる可能性があります。
①任意保険会社から休業損害の内払いを受ける方法②自賠責保険に対し被害者請求を行う方法③裁判所に仮払い仮処分を申し立てる方法となります。
もっとも、交通賠償の基本的なルールとして、損害賠償は後払いでよいとされているため、先払いに応じてくれるか否かは相手方保険会社側が善意で応じてくれるか否かがポイントです。
休業損害はいつまで貰える?打ち切られることはある?
休業損害は、これ以上治療を続けたとしても、被害者の症状の回復の見込みが認められない状態という症状固定まで基本的にはもらうことができます。
したがって、医師が症状固定と判断したタイミングで治療が終了するため、保険会社は当該症状固定時をもって休業損害の支払いを打ち切ることになります。
被害者が症状固定時以降も独自に休んだとしても、保険会社が症状固定と判断した時点をもって休業損害の支払いを打ち切ってくることになりますので注意が必要です。
交通事故がきっかけで退職することになった場合の休業損害
休業損害は、事故によって働けなくなった損害を補うものであり、事故を原因とする退職も、「事故によって収入が減収したこと」に含まれます。
したがって、交通事故がきっかけで退職することになった場合も、原則として休業損害を請求できます。
もっとも、事故による負傷が原因で退職したことを証明しなければ、休業損害を請求することはできません。
休業損害を認めてもらうための資料として、勤務先に対し、退職時から2年以内の期間内に退職証明書を請求するべきでしょう(労働基準法115条)。
休業損害について不安なことがあれば弁護士にご相談ください
休業損害を請求するためには資料の収集や、保険会社との交渉等、様々な負担を伴います。弁護士に依頼していただくことで、依頼者の方は、保険会社等と交渉する必要がなくなり、物理的負担及び精神的な負担が大きく軽減されます。
また、弁護士費用特約を用いられる場合、ご本人は原則として費用を負担されないため、依頼者の方の金銭的な負担も少なくなります。
弊所は、交通事故の取り扱い例が豊富であり、ご依頼者のお力になれるとの自負があります。
不安なことがあれば、ぜひ弁護士への依頼をご検討ください。
交通事故に遭ってしまった後、治療を行っていくことになりますが、一定期間治療しても、それ以上の改善が見込めず、症状が残存してしまう場合があります。事故の被害者としては、残存した症状に対しても、加害者から賠償をしてほしいと思うでしょう。そこで、適切な賠償がなされるようにするためにも、後遺障害等級の申請というものを知っておく必要があります。後遺障害等級の申請方法や、申請結果に対して不服がある場合の対処法等を紹介していきます。
後遺障害等級認定とは
残存してしまった障害(後遺障害)にも様々なものがあり、自賠責保険で等級が設けられています。例えば、「一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの」であれば第8級6号、「局部に神経症状を残すもの」であれば14級9号というように定められています。
後遺障害等級が認定されると、その等級に応じて、慰謝料を受け取ることができます。
後遺障害等級認定の申請方法
後遺障害等級が認定されることで、後遺症慰謝料等も賠償されることとなり、賠償額が増加します。もっとも、後遺障害等級は、何もしなくても勝手に認定してもらえるというものではありません。きちんと申請手続きを行う必要があります。申請の方法には、「事前認定」と「被害者請求」という2種類の方法があります。「事前認定」は、加害者の任意保険会社に申請を委ねる方法、「被害者請求」は被害者自ら申請を行う方法です。
事前認定(加害者請求)による申請方法
これ以上治療を継続しても症状の改善を望めない状態になったことを「症状固定」といいます。症状固定をした後に、後遺障害等級申請をするのは、事前認定でも被害者請求でも共通です。事前認定の場合には、症状固定後、加害者の任意保険会社担当者に、後遺障害等級申請を行いたい旨を伝え、医師に作成してもらった後遺障害診断書を任意保険会社に渡せば、手続きを代わりに行ってくれます。任意保険会社が申請手続きを行ってから数か月後、後遺障害等級の認定結果が返ってくることになります。
被害者請求による申請方法
まずは必要書類を集めましょう
一方、被害者請求の場合、被害者自ら申請手続きを行うため、必要書類等を収集する必要があります。必要書類としては、例えば以下のものがあげられます。
- 支払請求書 自賠責保険会社のパンフレットに同封されていることが多いです。自賠責保険会社に確認しましょう。
- 交通事故証明書 加害者の任意保険会社が所持しており、依頼すれば交付されるのが通常です。
- 診断書及び診療報酬明細書 任意保険会社が従前一括対応をしている場合には、これも任意保険会社が所持しているのが通常です。一括対応がされていない場合には、自賠責書式のものを病院に作成してもらうことになります。
- 後遺障害診断書 自賠責保険会社又は任意保険会社から、後遺障害診断書の書式をもらい、主治医に作成依頼することになります。
この他にも、事故発生状況説明書や印鑑証明書等、必要な書類があります。詳しくは、自賠責保険会社に問い合わせをすることで確認することができます。
後遺障害等級認定までの流れ
必要書類を収集した後、加害者が加入している自賠責保険会社に書類一式を送付することになります。書類一式を送付した後の流れは、事前認定の場合と同じです。つまり、自賠責保険会社で受付がなされた後、書類一式は、損害保険料算出機構の自賠責損害調査事務所に送付されることになります。そして、自賠責損害調査事務所が後遺障害等級に該当するかどうかを判断します。申請書類だけでは事故に関する事実確認ができないものについては、事故当時者への照会や追加書類の依頼、医療機関等への照会が行われることもあります。後遺障害等級申請をしてから数か月後に、結果が通知されます。
事前認定と被害者請求のメリット・デメリット
事前認定(加害者請求)
事前認定を行う場合、後遺障害診断書さえ主治医に書いてもらえば、あとは任意保険会社が手続きを行ってくれるため、被害者にとっては手続き的な負担が少ないというメリットがあります。
一方、事前認定の場合には、加害者の任意保険会社に申請手続きを委ねることになるので、申請資料も必要最小限のものになると考えられます。その結果、その他の補充資料を提出すれば後遺障害等級が認定されるような場合でも、資料不足のために、適切な認定がなされないという可能性があります。そのため、最大限適切に後遺障害等級の該当性を判断してもらいたいという場合には、事前認定の方法によることはお勧めできません。
被害者請求
被害者請求を行う場合には、被害者の手続き的な負担は増えます。通常は被害者請求の経験はないでしょうから、必要書類の収集や申請書類の作成を負担と感じることが多いでしょう。
一方、適切な後遺障害等級の認定を受けるべく、提出資料を被害者自身で検討することができます。例えば、事故による身体への衝撃の強さを疎明するために、事故車両の写真やドライブレコーダーの映像等を提出してもよいでしょう。MRI等の画像について民間鑑定資料を添付することもあります。
弁護士に依頼すれば、必要資料の収集や提出資料の検討などを代わりに行ってもらうことができます。後遺障害等級申請の際は、弁護士に依頼したうえで被害者請求を行うのが最善といえるでしょう。
後遺障害認定までにかかる期間
後遺障害申請を行ってから、認定結果が返ってくるまでには、概ね1~3か月程度かかります。事案によって結果が返ってくるまでの期間は異なります。自賠責損害調査事務所が追加資料を必要と判断したり、医療機関に紹介をかけたりする場合には、それだけ時間もかかります。また、重大事故の場合には資料も多量になることが多く、確認に時間がかかることがあります。
認定されなかった場合・認定された等級に納得いかなかった場合にできること
後遺障害等級申請の結果について、例えば非該当であったり、予想していたよりも低い等級しか認定されていなかったりすることがあります。そのような場合には、異議申し立ての手続きを行うことができます。異議申し立ての手続きは、追加資料等を提出することで、再度判断してもらう手続きですが、非該当が14級、14級が12級というように、結果が覆ることがあります。最初の認定結果の紙に、認定の理由が記載されていますので、その理由を踏まえ、追加資料を収集し、異議申し立てを行う必要があります。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
異議申し立てをする方法
後遺障害等級の申請結果に対して不服がある場合には、①自賠責保険に対しての異議申し立て、②一般財団法人地場精機保険・共済紛争処理機構への紛争処理申請、③訴訟の提起という方法で、認定結果に異議を述べることができます。通常は①の方法を選択するため、①について解説していきます。
必要書類と入手方法
自賠責保険に対する異議申し立てを行うには、必ず、「異議申立書」というものを作成し、提出する必要があります。異議申立書の「異議申立の主旨」に、認定結果に対する意見や、その根拠等を記載する必要があります。異議申立書は、自賠責保険会社に備え付けてあります。弁護士に依頼すれば、弁護士が作成してくれます。
また、異議申立の内容を裏付ける資料等があれば、それも提出した方がよいでしょう。典型的なものとしては、新たに取得した各医療機関のカルテや、画像鑑定書等があります。
異議申立書の書き方
異議申し立てをする場合には、一度下された判断が間違っているということを説明しなければなりません。そのためには、なぜ誤った判断が下されたのか、その理由を正しく理解し、それに応じて適格な主張をする必要があります。
例えば、むち打ちの症状が残存したものの、後遺障害等級非該当の判断が下された場合には、事故による身体への衝撃が大きかったことや、事故直後から一貫して症状を訴えていたことを主張する必要があります。これらの主張を説得的に行うためにも、事故当時の車両の写真や各医療機関のカルテという立証資料も一緒に提出するとよいでしょう。
書類に不足や不備があるとやり直しになる
異議申立を行っても、異議申立書の内容が不適切であったり、立証資料が不十分であったりすると、結局、後遺障害等級は認定されないことになります。このような場合には、十分な立証資料等をそろえて、再度異議申立てをしなければなりません。自賠責保険への異議申立に回数制限はないため、何度でも異議申立をすることはできますが、何度も行うことは負担も大きく、時効の問題もあることから、1回目の手続きで最大限資料をそろえて異議申立を行った方がよいでしょう。
「異議申立て」成功のポイント
異議申立によって後遺障害等級認定結果を覆すことは容易ではありません。異議申立をしても結果が覆らないことは多々あります。だからこそ、異議申立が成功する可能性を高めるためにも、様々な工夫が必要となります。
後遺障害等級認定申請の結果の通知書には、なぜその判断に至ったのかの理由が記載されています。もっとも、例えばむち打ち症で14級9号が認定されなかった場合のように典型的なものについては、定型的な文言しか通知書に記載されず、実際に重視された理由については不明なままです。そこで、判断結果について、更なる理由の開示を求めることも有効です。
同時に、目標とする等級が認定されるには、どのような要件を満たす必要があるのかを調べるのがよいでしょう。
目標等級が認定されなかった理由と目標等級獲得に必要な要件について把握をしたうえで、前回の申請時には不足していたと考えられる資料を用意できれば、異議申立が成功する可能性は高まります。一方、漠然と、判断結果について納得ができないと訴えても、認定結果が覆る可能性は著しく低いでしょう。適切な主張・立証を行うことが肝要です。
後遺障害等級認定・異議申し立ては弁護士にお任せください
後遺障害等級認定申請は、十分な資料を提出するためにも被害者請求を行うのがお勧めです。弁護士に依頼することで、必要資料の収集を代わりに行ってくれますし、提出資料の検討もプロの目線で行ってくれます。
異議申立に至っては、専門家でなければ、そもそもどういった内容を主張すべきかも判断が難しいと思われます。加えて、必要十分な資料を収集し、適切に提出するということも困難でしょう。
後遺障害等級認定の結果次第で、賠償額は大きく変わります。最大限の賠償を得るためにも、経験豊富な弁護士に、後遺障害等級認定申請・異議申立をご依頼ください。
交通事故による後遺障害認定申請をした際、症状が残存しているにもかかわらず、認定結果が非該当になったり、想定していた等級よりも、低い等級が認定されたりすることがあります。
被害者の方が、後遺障害認定の結果に納得ができない場合、異議申し立てをすることで、後遺障害認定の結果を争うことができます。異議申し立てが認められれば、残存した症状を前提とした適切な賠償を得ることにつながりますので、以下で、交通事故の後遺障害の異議申し立てについて解説します。
目次
後遺障害等級の異議申し立ての方法
後遺障害の異議申し立ての方法には、①自賠責保険に対する異議申し立て、②自賠責紛争処理機構への申請、③訴訟提起の3つの方法があります。
このうち、最も典型的な方法は、①といえます。①の方法は、回数制限がなく、申立費用も原則として必要なく、結果が出るまでの期間も最も短いといえます。
②の方法は、①の方法よりも時間がかかる傾向にあるものの、中立の第三者の判断を得ることができるメリットがあります。
③の方法は、①や②の方法でも結果が覆らなかった場合の最後の手段といった位置づけであり、時間も費用もかかりますが、法律の専門家である裁判官の判断を仰ぐことができます。
自賠責保険会社に異議申立てをする方法
自賠責保険への異議申し立てについては、事前認定と被害者請求の2つのルートがあります。
事前認定とは、相手方の保険会社を通じて異議申し立てをするものであり、被害者請求とは、被害者が直接、自賠責保険に異議申し立てをするものです。
被害者請求の場合、被害者自身で準備をする書類が増えることになりますが、相手方保険会社に任せるのではなく、被害者自身が、異議申し立てに必要と考える資料を主体的に選択できるメリットがあります。
異議申し立て~審査完了までの流れ
異議申し立てをすることを決めた場合、異議申立書を作成することが必要となります。異議申立書以外の必要書類については、事前認定をするか、被害者請求によって異なりますが、異議申立書が完成したら、必要書類と一緒に提出することになります。
その後、異議申立てに関する資料は、自賠責保険の審査会において、内容の審査が行われ、異議申立てを認めるかどうか検討されます。異議申立ての結果が出るまでの期間は、被害者の症状によって幅がありますが、おおよそ2か月から6か月程度となります。
必要書類と入手方法
異議申立書は、異議申し立てをする際には必ず提出する書類であって、異議申し立てをする理由を記載するものです。
これ以外には、異議申立てに理由があることを裏付けるためには、診断書や診療報酬明細書、画像記録などの医療記録のほか、新たな後遺障害診断書、主治医の意見書、カルテ、医療照会の回答書などを提出することが多いといえます。
また、被害者本人が症状を記載した陳述書を出すこともあります。弁護士に委任した場合には、委任状と印鑑証明書も必要となります。
郵送先
異議申立てに関する書類の提出先は、事前認定と被害者請求で異なります。
事前認定であれば、相手方の任意保険会社に、被害者請求であれば、相手方の自賠責保険会社に提出することになります。
万が一、提出先を間違えると、結果が出るまでに余計な時間がかかってしまうので注意が必要です。
審査に時間がかかる理由
異議申立てをした場合、自賠責保険の調査会は、異議申立書はもちろん、提出された資料を確認するほか、被害者が通院した病院に医療照会を行うなどして、異議申立てを認めるべきかどうか審査します。
そのため、回答があるまでは、どうしても一定の期間がかかってしまうことになりますし、被害者の症状が重い事案、異議申立てを認めるべきは悩ましい事案などでは、審査により長い時間を要することが多いといえます。事案によっては、上部機関に書類が回されてより詳細な検討をされることもあります。
自賠責紛争処理機構に申請する方法
以下のいずれかに該当する場合は自賠責紛争処理機構が使えない
次のいずれかに該当する場合、自賠責紛争処理機構を使うことはできません。
(1) 民事調停または民事訴訟に係属中であるとき又は当事者間の紛争が解決しているとき
(2) 他の相談機関または紛争処理機関で解決を申し出ている場合
※他の機関での中断・中止・終結の手続きをされた場合には受け付けることができます。
(3) 不当な目的で申請したと認められる場合
(4) 正当な権利のない代理人が申請した場合
(5) 弁護士法第72条に違反する疑いのある場合
(6) 自賠責保険・共済から支払われる保険金・共済金等の支払額に影響がない場合
※例えば、既に支払限度額まで支払われている場合
(7) 本機構によって既に紛争処理を行った事案である場合
(8) 自賠責保険・共済への請求がない場合あるいはいずれの契約もない場合
異議申し立て~審査完了までの流れ
紛争処理申請書の作成と必要な添付資料の収集を行い、自賠責保険・共済紛争処理機構へ書類を送付します。
その後、紛争処理委員会が、加害者側任意保険会社(共済組合)からの提出書類等をもとに審査することになり、結果が決まったら、紛争処理委員会から調停結果の通知が送られてくることになります。
審査完了までにかかる期間は、事案にもよりますが、3ヶ月以上はかかるケースが多いといえます。
必要書類と入手方法
必ず、提出する必要のあるものとしては、紛争処理申請書、紛争の問題点や交渉の経過の概要および請求の内容を記入した申請書別紙、医療照会等の同意書、交通事故証明書となります。
弁護士に委任した場合には、委任状と印鑑証明書が必要となります。必要に応じて提出するものとしては、自賠責保険への異議申し立てと重複するものが多いですが、新たな診断書・後遺障害診断書、画像等の検査結果資料、医師の意見書、カルテ、被害者の陳述書などが挙げられます。
郵送先
書類を郵送する先は、東京都千代田区にある東京本部と大阪府大阪市にある大阪本部のうち、いずれか近い方を選択することになります。
裁判で異議申し立てをする場合
自賠責保険会社と自賠責保険・共済紛争処理機構への異議申し立てを行っても、後遺障害認定結果に納得ができない場合には、最後の手段として訴訟提起を行い、裁判所で後遺障害等級認定を行ってもらう方法があります。
もっとも、実務上、裁判所は、自賠責保険の認定結果を重要視していますので、 自賠責保険の認定結果を訴訟で覆すことは非常に困難といえます。
裁判で異議申し立てをする場合、裁判所に提出する訴状を準備するほか、症状を裏付ける資料を証拠として提出することになります。
弁護士に依頼している場合、被害者本人が裁判所に行く必要が少ないですが、裁判は証拠に基づくシビアな事実認定を行う場ですので、自らの症状について弁護士と綿密な打ち合わせが必要といえます。
裁判による異議申し立てを行うことにメリットのあるケースとしては、勤務中の事故で、労災保険からも後遺障害等級の認定を受けている場合で、労災保険の方が、自賠責保険よりも上位の等級を認定しているとき、自賠責保険でも労災と同等の後遺障害等級が認定されるべきと主張して、訴訟提起をして解決する方法をとることがあります。
自分で後遺障害の異議申し立てをするのは難しい
最も典型的な異議申し立て方法は、自賠責保険に対する異議申し立てですが、この方法による場合でも、異議申し立てが認められた確率はかなり低いものになっています。
後遺障害認定結果に納得がいかないからと言って、適切な準備をせず、やみくもに異議申し立てをしても、後遺障害等級は覆る可能性は低いといわざるを得ません。
異議申し立ての書類に不足しているものや不備があるとまたやり直し
いずれの方法で異議申し立てをするとしても、異議申し立てには必要となる書類が決まっており、書類の中身も異議申し立ての判断をするのに足りるものでなければなりません。
そのため、必要書類が不足していたり、書類に不備がある場合、異議申し立てを一からやり直したり、改めて追加の書類を準備したりしなければならなくなることがあります。
異議申し立ての審査には時間がかかる
異議申し立ては、いずれの方法であっても、短期間で回答が出るものではなく、短くても数か月間が必要となることから、書類の不備などで手続きが止まってしまうと、より一層回答までの時間を要することになり、結果として、交通事故の解決が遠のくことになります。
書類の不足や不備を防止し、スムーズ、かつ、適切な後遺障害の異議申し立てを行うためには、弁護士に依頼して手続きを進めることが有効といえます。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
弁護士に後遺障害の異議申し立てを依頼した場合
後遺障害の異議申立てを弁護士に依頼した場合、弁護士において、当初の後遺障害申請の結果を分析し、目標とする等級に必要な書類を準備し、異議申立書を作成することになります。
異議申し立てが認められるためには、当初の後遺障害認定の際に不足していた資料や主張を補足していくことが必要ですので、弁護士による的確な分析を踏まえて、異議申立てすることによって、異議申し立てが認められる可能性が上がります。
弁護士に依頼する際には弁護士費用がかかりますが、弁護士費用特約に加入している場合には、被害者の方の負担はほとんどありませんし、弁護費用特約に加入していない場合でも、事案によっては、被害者の方の負担の少ない弁護士費用の提示が可能なケースもあります。
異議申し立てはいつまでにしなければいけないのか
異議申立てをすることに期間制限が定められているわけではありません。
しかし、民法上、交通事故における損害賠償請求権は症状固定から5年間が消滅時効とされており、請求権自体が消滅してしまえば、異議申立てをすることもできなくなります。
そのため、異議申し立てができるのは症状固定から5年となります。なお、民法改正前の消滅時効の期間は症状固定から3年間であることには注意が必要です。また、異議申立てを行ったとしても、時効を更新する効力はないため、異議申し立ての審査中に消滅時効の期間が経過してしまう恐れがある場合には、時効の完成猶予や更新の承認を得る手続きを踏んでおく必要があります。
異議申し立ては弁護士にお任せください
異議申立ては、やみくもに申し立てをすればよいものではなく、また、自覚症状では症状が残存しているからといって、必ず後遺障害が認定されるわけでもありません。異議申し立てが認められるために必要な主張や資料をきちんと準備する必要があります。
異議申し立てをご検討中の方は、交通事故の被害にあい、ただでさえ大変な状況にあり、異議申し立てをするために準備をする余裕がない場合も少なくないのではないでしょうか。
被害者の方の不安を解消し、異議申し立てのために被害者の手間を省略し、的確なアドバイスを得ることもできますので、ぜひ一度、弁護士に相談されてみることをお勧めします。
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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)