相続放棄の手続き方法と注意点

相続放棄の手続き方法と注意点

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

相続をすれば、被相続人の財産だけではなく、借金といった負の財産までも受け継ぐことになります。また、さまざまな理由で、親族といえどもはや関わり合いになりたくないというときであっても、相続が生じれば被相続人の財産・負債を受け継ぐことになってしまいます。
そうならば、もし、死亡した親族に莫大な借金があったときにも相続せざるを得ないのでしょうか?

このような事態に陥った場合に、相続放棄をするという手段があります。

相続放棄とは

相続放棄とは、相続人が被相続人を相続する権利の一切を放棄することです。そして、放棄した後は、初めから相続人でなかったこととなります(民法939条)。

そのため、相続人でなくなり、被相続人の財産・負債などを相続しなくてもよくなります。また、相続人でなかったことになるので、限定承認をする際の共同相続人でもなくなり、限定承認の手続きをする必要がなくなります。この、相続放棄の手続きは、家庭裁判所にて行うことになります。

相続放棄の手続き方法

相続放棄をするためには、単に家庭裁判所に行って、相続放棄をしたいですと伝えるだけでは認められません。相続放棄に必要な書類を集めて、申請を行うことで、相続放棄ができます。
以下では、その方法を解説いたします。

必要書類を集める

1 相続放棄申述書
これは、裁判所のHPからダウンロードできる書式を使って、記入していきます。また、収入印紙800円分を貼り付けます。

2 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
被相続人の最後の住所にあった市役所で住民票除票は入手できます。戸籍附票は、被相続人の本籍地の市役所から入手できます。

3 申述人(相続放棄する方)の戸籍謄本
戸籍については、ご自身の本籍のある市役所から取り寄せることができます。

4 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本(申述人が、被相続人の配偶者、子又はその代襲相続人の場合)
こちらも、被相続人の本籍地の市役所から取り寄せることができます。

5 被代襲者の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本(申述人が代襲相続人であるとき)
こちらは、被代襲者(本来の相続人)の本籍のある市役所から取り寄せることができます。

6 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本(申述人が、被相続人の直系尊属、又は、兄弟姉妹及びその代襲者であるとき)
被相続人の本籍地のある市役所から取り寄せることができます。

7 被相続人の子及びその代襲者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本(申述人が被相続人の直系尊属又は兄弟姉妹及びその代襲者であるとき)
被相続人の子及びその代襲者の本籍地のある市役所から取り寄せることができます。

8 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本(申述人が被相続人の直系尊属又は兄弟姉妹及びその代襲者であるとき)
被相続人の直系尊属の本籍地のある市役所から取り寄せることができます。

家庭裁判所に必要書類を提出する

次に、集めた書類を、相続人の最後の住所地の家庭裁判所に提出します。どこの家庭裁判所なのかは、裁判所のHPを閲覧することで確かめることができます。
提出時は、返送用の郵便切手も一緒に入れて提出してください。

家庭裁判所から届いた書類に回答し、返送する

相続放棄の書類を提出してしばらくすると、相続放棄照会書が家庭裁判所から返送されてきます。これは、申述人が被相続人の死亡を知った日や、本当に申述人が自分の意志で放棄したいと述べているのかといった事項について確認するために送付されているものです。事実をありのままに記載し、回答書を家庭裁判所に送りましょう。

もっとも、この手続きが省略され、相続放棄照会書が送られてこないこともあります。相続放棄申述書を家庭裁判所が確認して、問題ないと判断されると、送付されないことがあります。

もし、いつまでも送付されてこないときは、一度家庭裁判所に問い合わせましょう。

返送期限内に回答書を送れない場合

回答書を返送期限内に送付できないと、相続放棄が却下され放棄できない可能性があります。そうすると、相続放棄は一回しかできないので、二度と相続放棄することができなくなります。

こうした事態を未然に防ぐため、どうしても間に合わない事情があれば、家庭裁判所に事情を説明して待ってもらう必要があるでしょう。また、相続放棄手続きの初めから専門家に依頼するのも一つの手段です。

相続放棄申述受理通知書が届いたら手続き完了

以上の手続きを終えて、相続放棄申述受理通知書が届いたら手続きが完了します。大体10日前後で家庭裁判所から送付されます。相続放棄申述通知書は再発行不可なので、紛失しないようにしましょう。

ほとんどの手続きは、相続放棄申述通知書をコピーすることで何とかなりますが、金融機関によっては、相続放棄申述受理証明書の提出を要求されることがあります。その際は、家庭裁判所に相続放棄申述受理証明書を発行してもらうことができます。相続放棄申述受理証明書は、何度でも発行できるので必要な数発行してもらいましょう。

相続放棄の期限は3ヶ月

相続放棄はいつまでもできるわけではありません。相続が始まったことを知ってから3か月経過すると、相続放棄することはできなくなります。

3か月の期限は、申述の期限であるので、家庭裁判所への書類の提出が3か月以内であれば、問題ありません。また、手続きの途中で超えてしまっても問題はありません。
そのため、少なくとも書類を集めて家庭裁判所に提出することは急いでしなければなりません。

3ヶ月の期限を過ぎそうな場合

3か月の期間を過ぎそうな場合、あきらめて相続を承認するという手段もあります。しかし、相続放棄をしたい場合は、期間を延ばすことを求めることもできます。

放棄の期間の伸長の申立てを家庭裁判所に提出して、承認されれば、期間の伸長がなされます。
伸ばせる期間は、3か月程度が通常でありますが、それ以上の期間に伸長される可能性もあります。

3ヶ月の期限を過ぎてしまった場合

3か月を過ぎてしまうと、通常はそこで相続放棄はできなくなります。そのため、できる限り期限を守ってスピーディに相続放棄の申述をする必要があります。

もっとも、「相当な理由」があれば相続放棄することができます。
「相当の理由」とは、①相続人が被相続人と関わりがなかったなど相続放棄できなかった理由があることや、②相続人が借金などの債務があることをまったく知らなかったこととされています。

このように、一応3か月の期間が過ぎても認められる可能性があるとはいえ、早く手続きを済ませるべきでしょう。

相続放棄の申し立ては一度しかできない

注意が必要なのは、相続放棄の申し立ては、一度きりの手続きだという点です。もし失敗したときは、もう一度相続放棄に挑戦するなどということはできません。したがって、一発で確実にする必要があります。また、むやみに放棄すれば、後から財産が発見されて大損するということもありえます。

このような性質から、ご自身で行うよりも、弁護士などの専門家に依頼して行うことが確実かつ安全と考えられます。

相続放棄が無効・取り消しになるケースがある

相続放棄の申述が受理されても、相続放棄が事後的に無効になることがあります。
例えば相続財産を隠したり、相続財産をほしいままに消費したりすれば、民法921条3号によって、事後的に無効となる可能性があります。相続放棄という制度を悪用して、債務だけ逃れようとしたりするのを防止するためです。
相続放棄をしたときは、相続財産には手を触れないほうがいいでしょう。

後から財産がプラスだと分かっても撤回できない

民法919条1項により、相続放棄は撤回することができません。すなわち、あとから財産がたくさんあったから相続したいと考えても、もう取り返しがつかず、財産を得ることは永久にできなくなります。

そのため、慎重に相続放棄をするかどうかを決定する必要があります。専門家に依頼すれば、慎重かつスピーディに相続放棄ができるので、専門家に依頼するべきでしょう。

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相続放棄は一人でもできるがトラブルになる場合も…

相続放棄は、限定承認とは異なり、一人ですることができます。しかし、相続にはトラブルがつきものであり、それは放棄する場合も同じです。

明らかに相続放棄したほうがいい場合

他の相続人は、多額の借金を上回る財産があることを知っている場合もあります。そのため、他の相続人とよく相談して決めるほうがいいでしょう。そうでなければ、相続放棄をした後で、財産に気づき、なぜ教えてくれなかったのかなどと、トラブルになる恐れがあります。

また、逆に、借金があることに気づかず相続してしまった相続人から、言ってくれればよかったのにと責められ、トラブルに発展する危険もあります。

把握していない相続人がいる場合がある

隠し子がいたことが判明するなど、面識のない相続人がいることがあります。相続放棄をした場合、そのような相続人に相続財産が渡ってしまう恐れもあります。もし、そのことを考慮せずに相続放棄すると、面識のない相続人に多額の財産が渡ってしまい、大損することになります。

したがって、相続人についても被相続人の戸籍等を取り寄せてよく調査したうえで、慎重に相続放棄をする必要があります。

相続放棄後の相続財産について

相続放棄をすると、相続財産はどうなるのでしょうか。すべての財産を失ってしまうわけではありません。また、そのまま放置するとまずいものがあります。
以下では、それらを解説します。

墓や生命保険など、相続放棄しても受け取れるものはある

本人が死亡したことにより遺族に支払われる性質の金銭は、相続放棄をしても受け取ることができます。例えば、死亡保険金(遺族が受取人になっているもの)、国民健康保険などからの葬祭費等、遺族年金、死亡一時金などがあります。

また、お墓などの祭祀財産は相続財産に含まれないので、相続放棄をしてもお墓の管理権などは、引き継ぐことができます。

全員で相続放棄をしても家や土地の管理義務は残る

相続放棄をした者は、その放棄により相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけると同一の注意をもってその財産を管理する義務を負います(民法940条1号)。
全員で放棄しても、相続財産管理人が選任されるまでは、この義務があります。

例えば、相続財産に住宅などの不動産があるとき、早急に相続財産管理人を選任しないと、その不動産が倒壊するなどして通行人がケガした場合、民法717条により損害賠償責任を負う可能性があります。
したがって、全員で相続放棄をした場合も相続財産管理人を早急に選任したほうがいいでしょう。

相続放棄したのに固定資産税の請求がきたら

基本的に支払う義務はありません。
請求されてしまったときは、被相続人の死亡以前に発生した固定資産税に関しては、相続放棄申述通知書又は相続放棄申述受理証明書を役所に提出すれば、督促などを受けることはなくなります。

一方、被相続人の死亡した翌年以後に発生した固定資産税は、放棄した人の登記がされている場合は、仮に相続放棄の申述が終わっていても支払い義務が発生します。そこで、共同相続人によって共有者としての登記がされてしまっている場合などは、相続放棄をした後速やかに移転登記手続や更生登記手続をしたほうがいいでしょう。

相続放棄手続きにおける債権者対応

相続財産の中に、債務があった場合、債権者からの取り立てがありえます。その場合に、よく考えずに対応すると、最悪の場合相続放棄できなくなったり、払ったお金が無駄になったりする恐れがあります。
以下では、そのような場合の対処法を解説します。

「とりあえず対応しよう」はNG

前述のように、相続放棄をすれば、債務を承継する必要はありません。そのため、相続人に債権の取り立てがあっても無視すべきでしょう。とりあえず対応してしまい、被相続人の財産から支払ってしまうと、単純承認として、相続放棄ができなくなる恐れがあります。

しつこいようなら、専門家に相談してから決めますなどと言って、判断を保留しましょう。
支払うべきと考えていても、まずは専門家の判断を仰ぎましょう。

「利子だけ払っておこう」はNG

利子だけでも支払うのはおすすめしません。なぜかというと、もし自分の債務でないことを分かった上で支払ってしまうと、不当利得ではなく非債弁済として返還を求めることができないものになる可能性があります。放棄するか決めていないとき、放棄すると決めたときは、少しの利子であっても、手は触れないようにしましょう。

利子だけでも払ってほしいなどと言われたときには、専門家に相談するなどと言ってすぐに支払うことは避け、専門家の判断を仰いでから支払うようにしましょう。

サインはしないようにしましょう

場合によっては、債権者からサインを求められることもあります。よく考えずにサインをすると、場合によっては、債務引受の方法によって相続債務を承継させられたりする場合があります。

したがって、債権者からとにかくサインしてほしいなどと言われても、決してサインはしないようにしましょう。
もし、不安なら、専門家に相談してからにしますなどと言って、その場でのサインを避け、後日専門家の判断を仰ぎましょう。

遺産に触れないようにしましょう

住宅ローンの解約で今の家に住み続けられるようにするなどと言われても、遺産に決して触れないようにしましょう。

遺産を勝手に処分したりすると、相続放棄ができなくなったり、放棄したかった債務を引き受けることになったりしかねません。相続放棄をすべきかどうかわからないときや、相続放棄をしたいと考えているときは、決して遺産には触れないでください。
そして、専門家に依頼して、その判断を仰ぎましょう。

相続放棄に関するお悩みは弁護士にご相談下さい

これまで述べた通り、相続放棄は、専門家が正確かつスピーディに行わなければ、相続放棄ができなくなるなど、大変な事態に陥ってしまいます。

また、相続放棄のできる期間は3か月と大変短く、事情によってはその延長等をする必要があります。これに関しても、簡単に行える手続きではありません。弁護士は、相続放棄に関してもプロですから、相続放棄をしなければならない事態に陥ったときには、弁護士にご相談ください。

休業損害とは

休業損害とは、交通事故に遭って仕事を休まなければならなくなった、又は仕事をする能力が落ちてしまったことによって収入が減ってしまったことへの損害をいいます。

休業損害が認められる期間は、被害者が負った傷が回復し、又はこれ以上症状が良くならないと医師に診断される時期までとなります。

被害者は、事故に遭っていなければ通常通り仕事をして給与を得られていたはずです。休業損害は、被害者が交通事故で失った損失を損害賠償の形で補わせるものといえます。

 

休業補償との違い

「休業補償」とは労働者が怪我や病気等によって休んだことで働けない状況になったとき、政府が労働者に補償をするという制度です。

「休業損害」は、対象が交通事故一般です。一方、休業補償は、対象が労働をしている時に生じた災害や通勤で生じた災害等の労働災害が対象となります。また、休業損害を請求できる権利者は、被害者などです。一方、休業補償を請求できる権利者は労働者です。

休業損害と休業補償は、二重取りすることはできません。なぜなら、どちらも事故による損害を補うという点で共通しているからです。

休業「損害」休業「補償」
請求できる人交通事故被害者労働者
問題となる事件交通事故労働災害
性質損害の填補

休業損害の請求条件

主婦については、事故による傷害によって家事労働ができなくなった期間について、休業損害が認められることがあります。

学生については、まだ働いていないため原則として休業損害の発生が認められません。もっとも、アルバイト収入等がある学生については、休業損害が認められることがあります。

無職者については、労働していないため原則として休業損害が認められません。もっとも、労働をする力と労働する意欲があり、仕事が内定する可能性が高い場合には休業損害が認められることがあります。

休業損害の計算方法と算定に必要な要素

稼働日数とは

稼働日数は、出勤などで実際に労働した日数のことをいいます。
休業損害は、交通事故で負傷した人の基礎収入額に休業日数をかけて計算されます。断続的に欠勤している事案で基礎収入額を計算する際には、実際に働いた稼働日数を使います。

稼働日数は、給与が発生する対象となる日のことをいうため、給与が発生することになる有給も稼働日数に含まれます。

基礎収入とは

基礎収入は、休業損害を計算するために重要な要素となり、損害を被った人の収入源を対象とします。
基礎収入額は、給与所得者、事業取得者、自営業、アルバイト、家事従事者(専業主婦、兼業主婦)、会社役員、学生等といった職業によって計算方法が多少異なります。

また、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準という算定基準のいずれかを利用するかによって、1日あたりの基礎収入の金額が異なります。

職業によって休業損害の算定に違いが出る

主婦の場合

 

主婦の場合、基本的に、1日あたりの基礎収入額×休業日数で休業損害が計算されます。

1日あたりの基礎収入額は、算定基準によって異なります。まず、自賠責保険による損害賠償の計算方法となる自賠責基準を用いる場合、休業損害は日額6100円×休業日数となります(2020年4月1日以降の事故に限る)。

次に、裁判例に基づいて定められた弁護士基準を用いる場合、休業損害は、基礎収入額(事故日前年の女性の全年齢・全学歴計の貸金センサス(厚生労働省が毎年実施する賃金の統計結果をまとめたもの)÷365日)×休業日数となります。

もっとも、通常は時間経過とともに家事ができる割合が徐々に回復していくことから、事故直後を最大額とし、日数の経過とともに請求額を徐々に小さくしていく方式で解決がなされることもあります(期間逓減方式)。

自営業の場合

自営業の場合、基礎収入額は、一般的には確定申告書の申告所得額とされます。
休業損害は、前年度の確定申告時の申告所得額(年間収入額―必要経費等)÷365日となります。

なお、家賃などの固定経費(販売数等の増減に関係なく毎期一定に支払う費用)を支払わなければならない場合には、(前年度の申告所得額+固定経費)÷365日となります。

年度によって収入に差異がある場合には、事故前3年間の申告所得額÷3年÷365日で算定されることもあります。

アルバイトの場合

基本的には、事故前3か月分の給与額÷90日で計算されます。もっとも、わずかな日数しか勤務していないような場合には、事故前3か月分の給与額を事故前3か月間の勤務日数で割る計算方法も存在します。
自賠責基準を用いると、6100円×休業日数で算定されます。

弁護士基準を用いると、(事故前月収×3か月)÷30日で算出された金額を、休業日数でかけて計算されます。

無職の場合

無職の場合、働いているといえないため、休業損害が原則認められません。

もっとも、働き始めが具体的に予定されていた場合、具体的には、就職が内定して就職後の収入が決まっていた場合等には、就職後の収入を基礎収入として計算します(大阪地判平成9年11月27日交民30巻6号1696頁)。もっとも、裁判例は、必ずしも給与見込額や平均賃金をそのまま算定に用いるわけではなく、事案によって個別的に計算しています。

公務員の場合

自賠責基準では、1日あたり6100円×休業日数で算定されます。
弁護士基準によると、被害者の個別の収入を考慮した上で、1日あたりの基礎収入額×休業日数で計算されます。

公務員の場合、基礎収入額は、給与所得者の計算式が利用されます。具体的には、事故前3か月の給与合計額÷当該期間の稼働日数(弁護士基準)あるいは、事故前3か月の給与合計額÷当該期間の暦日数(任意保険会社基準)で計算されます。

会社役員の場合

「会社役員」といっても、純粋に経営のみを担当している方から、従業員と兼任している方等、様々です。

従業員と兼任している方の休業の場合は、労務の対価の割合を基礎収入額として休業損害を計算します。もっとも、企業の経営によって得られた利益配当の性質を持っている部分については当該役員自身の働いた対価とはいえないため、休業損害とは認めらない傾向にあります。

労務対価部分が報酬に占めている割合は、会社の経営状況や当該役員の地位や職務内容、他の役員や従業員らの報酬額や職務内容を総合的に考慮して判断されます。

会社員の各種手当は含めて算定可能か

まず、賞与の休業損害については、勤務先に賞与減額証明書を作成してもらいましょう。賞与の規定に計算式が存在している場合には、当該計算式に従って休業で減少した金額を計算します。
賞与の規定がない場合、事故の前年度の賞与支給額を目安として、個別具体的に賞与がどの程度減額されるのか計算されます。

次に、残業代の休業損害のついては、勤務先に休業損害証明書を作成してもらうことで、残業代の休業損害を請求できます。
損害の計算方法としては、復職した後に実際に受け取る給与から事故前3か月間の平均給与の差額となります。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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休業損害証明書の書き方

  1. ①源泉徴収票若しくは事故発生前3か月分の賃金台帳の写しを休業損害証明書の左上に添付します。
  2. ②休んだ期間を記載します。
  3. ③休んだ日、有給休暇使用日数、遅刻日数、早退日数を誤りなく記載します。
  4. ④休業の月を記入し、欠勤は「〇」、所定休日は「×」、遅刻は「△」とその時間、早退は「▽」とその時間を各自記入します。
  5. ⑤休業した期間中の給与について、給与を支給したか、一部支給か、支給しなかったかのいずれかの該当するところに「〇」を記入します。
  6. ⑥事故前3か月の支給された給与額を記入します。
  7. ⑦社会保険や労災保険からの給付の有無を記入します。
  8. ⑧証明書作成年月日、勤務先所在地、会社名や商号、代表者氏名(社印必要)、電話番号、担当者名、担当者連絡先を記載します。

受け取れるのはいつから?

休業損害は、相手方保険会社が休業損害証明書を確認した後、約2週間程度で受け取ることができる場合があります。
もっとも、休業損害証明書は、会社から出してもらうことになるため、あらかじめ会社に連絡しておくことで早めに作成してもらうべきです。

また、休業損害証明書は、月ごとに提出することができるため、月ごとの休業損害証明書を提出すれば、その月ごとの休業損害を受け取ることが可能となります。
ただし、休業損害の先払いについては、基本的には相手方保険会社に応じる義務がないため、一方的に先払いを拒絶されるケースもあります。

休業損害の請求時効

休業損害は、いつまでも請求できるわけではなく、一定の期間までに請求しなければ認められません。
被害者が交通事故で被った休業損害については、損害及び加害者を知ったときから5年間(民法724条の2)で請求しなければなりません。
また、交通事故から20年間で損害賠償請求権は時効消滅してしまうので(民法724条2号)、注意が必要です。

先払いはしてもらえる?

交通事故の休業損害は、以下の3つの方法のいずれかで先払いをしてもらえる可能性があります。

①任意保険会社から休業損害の内払いを受ける方法②自賠責保険に対し被害者請求を行う方法③裁判所に仮払い仮処分を申し立てる方法となります。

もっとも、交通賠償の基本的なルールとして、損害賠償は後払いでよいとされているため、先払いに応じてくれるか否かは相手方保険会社側が善意で応じてくれるか否かがポイントです。

休業損害はいつまで貰える?打ち切られることはある?

休業損害は、これ以上治療を続けたとしても、被害者の症状の回復の見込みが認められない状態という症状固定まで基本的にはもらうことができます。

したがって、医師が症状固定と判断したタイミングで治療が終了するため、保険会社は当該症状固定時をもって休業損害の支払いを打ち切ることになります。

被害者が症状固定時以降も独自に休んだとしても、保険会社が症状固定と判断した時点をもって休業損害の支払いを打ち切ってくることになりますので注意が必要です。

交通事故がきっかけで退職することになった場合の休業損害

休業損害は、事故によって働けなくなった損害を補うものであり、事故を原因とする退職も、「事故によって収入が減収したこと」に含まれます。
したがって、交通事故がきっかけで退職することになった場合も、原則として休業損害を請求できます。

もっとも、事故による負傷が原因で退職したことを証明しなければ、休業損害を請求することはできません。
休業損害を認めてもらうための資料として、勤務先に対し、退職時から2年以内の期間内に退職証明書を請求するべきでしょう(労働基準法115条)。

休業損害について不安なことがあれば弁護士にご相談ください

休業損害を請求するためには資料の収集や、保険会社との交渉等、様々な負担を伴います。弁護士に依頼していただくことで、依頼者の方は、保険会社等と交渉する必要がなくなり、物理的負担及び精神的な負担が大きく軽減されます。

また、弁護士費用特約を用いられる場合、ご本人は原則として費用を負担されないため、依頼者の方の金銭的な負担も少なくなります。
弊所は、交通事故の取り扱い例が豊富であり、ご依頼者のお力になれるとの自負があります。
不安なことがあれば、ぜひ弁護士への依頼をご検討ください。

交通事故に遭ってしまった後、治療を行っていくことになりますが、一定期間治療しても、それ以上の改善が見込めず、症状が残存してしまう場合があります。事故の被害者としては、残存した症状に対しても、加害者から賠償をしてほしいと思うでしょう。そこで、適切な賠償がなされるようにするためにも、後遺障害等級の申請というものを知っておく必要があります。後遺障害等級の申請方法や、申請結果に対して不服がある場合の対処法等を紹介していきます。

後遺障害等級認定とは

残存してしまった障害(後遺障害)にも様々なものがあり、自賠責保険で等級が設けられています。例えば、「一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの」であれば第8級6号、「局部に神経症状を残すもの」であれば14級9号というように定められています。
後遺障害等級が認定されると、その等級に応じて、慰謝料を受け取ることができます。

後遺障害等級認定の申請方法

後遺障害等級が認定されることで、後遺症慰謝料等も賠償されることとなり、賠償額が増加します。もっとも、後遺障害等級は、何もしなくても勝手に認定してもらえるというものではありません。きちんと申請手続きを行う必要があります。申請の方法には、「事前認定」と「被害者請求」という2種類の方法があります。「事前認定」は、加害者の任意保険会社に申請を委ねる方法、「被害者請求」は被害者自ら申請を行う方法です。

事前認定(加害者請求)による申請方法

これ以上治療を継続しても症状の改善を望めない状態になったことを「症状固定」といいます。症状固定をした後に、後遺障害等級申請をするのは、事前認定でも被害者請求でも共通です。事前認定の場合には、症状固定後、加害者の任意保険会社担当者に、後遺障害等級申請を行いたい旨を伝え、医師に作成してもらった後遺障害診断書を任意保険会社に渡せば、手続きを代わりに行ってくれます。任意保険会社が申請手続きを行ってから数か月後、後遺障害等級の認定結果が返ってくることになります。

被害者請求による申請方法

まずは必要書類を集めましょう

一方、被害者請求の場合、被害者自ら申請手続きを行うため、必要書類等を収集する必要があります。必要書類としては、例えば以下のものがあげられます。

  • 支払請求書 自賠責保険会社のパンフレットに同封されていることが多いです。自賠責保険会社に確認しましょう。
  • 交通事故証明書 加害者の任意保険会社が所持しており、依頼すれば交付されるのが通常です。
  • 診断書及び診療報酬明細書 任意保険会社が従前一括対応をしている場合には、これも任意保険会社が所持しているのが通常です。一括対応がされていない場合には、自賠責書式のものを病院に作成してもらうことになります。
  • 後遺障害診断書 自賠責保険会社又は任意保険会社から、後遺障害診断書の書式をもらい、主治医に作成依頼することになります。

この他にも、事故発生状況説明書や印鑑証明書等、必要な書類があります。詳しくは、自賠責保険会社に問い合わせをすることで確認することができます。

後遺障害等級認定までの流れ

必要書類を収集した後、加害者が加入している自賠責保険会社に書類一式を送付することになります。書類一式を送付した後の流れは、事前認定の場合と同じです。つまり、自賠責保険会社で受付がなされた後、書類一式は、損害保険料算出機構の自賠責損害調査事務所に送付されることになります。そして、自賠責損害調査事務所が後遺障害等級に該当するかどうかを判断します。申請書類だけでは事故に関する事実確認ができないものについては、事故当時者への照会や追加書類の依頼、医療機関等への照会が行われることもあります。後遺障害等級申請をしてから数か月後に、結果が通知されます。

事前認定と被害者請求のメリット・デメリット

事前認定(加害者請求)

事前認定を行う場合、後遺障害診断書さえ主治医に書いてもらえば、あとは任意保険会社が手続きを行ってくれるため、被害者にとっては手続き的な負担が少ないというメリットがあります。

一方、事前認定の場合には、加害者の任意保険会社に申請手続きを委ねることになるので、申請資料も必要最小限のものになると考えられます。その結果、その他の補充資料を提出すれば後遺障害等級が認定されるような場合でも、資料不足のために、適切な認定がなされないという可能性があります。そのため、最大限適切に後遺障害等級の該当性を判断してもらいたいという場合には、事前認定の方法によることはお勧めできません。

被害者請求

被害者請求を行う場合には、被害者の手続き的な負担は増えます。通常は被害者請求の経験はないでしょうから、必要書類の収集や申請書類の作成を負担と感じることが多いでしょう。

一方、適切な後遺障害等級の認定を受けるべく、提出資料を被害者自身で検討することができます。例えば、事故による身体への衝撃の強さを疎明するために、事故車両の写真やドライブレコーダーの映像等を提出してもよいでしょう。MRI等の画像について民間鑑定資料を添付することもあります。

弁護士に依頼すれば、必要資料の収集や提出資料の検討などを代わりに行ってもらうことができます。後遺障害等級申請の際は、弁護士に依頼したうえで被害者請求を行うのが最善といえるでしょう。

後遺障害認定までにかかる期間

後遺障害申請を行ってから、認定結果が返ってくるまでには、概ね1~3か月程度かかります。事案によって結果が返ってくるまでの期間は異なります。自賠責損害調査事務所が追加資料を必要と判断したり、医療機関に紹介をかけたりする場合には、それだけ時間もかかります。また、重大事故の場合には資料も多量になることが多く、確認に時間がかかることがあります。

認定されなかった場合・認定された等級に納得いかなかった場合にできること

後遺障害等級申請の結果について、例えば非該当であったり、予想していたよりも低い等級しか認定されていなかったりすることがあります。そのような場合には、異議申し立ての手続きを行うことができます。異議申し立ての手続きは、追加資料等を提出することで、再度判断してもらう手続きですが、非該当が14級、14級が12級というように、結果が覆ることがあります。最初の認定結果の紙に、認定の理由が記載されていますので、その理由を踏まえ、追加資料を収集し、異議申し立てを行う必要があります。

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異議申し立てをする方法

後遺障害等級の申請結果に対して不服がある場合には、①自賠責保険に対しての異議申し立て、②一般財団法人地場精機保険・共済紛争処理機構への紛争処理申請、③訴訟の提起という方法で、認定結果に異議を述べることができます。通常は①の方法を選択するため、①について解説していきます。

必要書類と入手方法

自賠責保険に対する異議申し立てを行うには、必ず、「異議申立書」というものを作成し、提出する必要があります。異議申立書の「異議申立の主旨」に、認定結果に対する意見や、その根拠等を記載する必要があります。異議申立書は、自賠責保険会社に備え付けてあります。弁護士に依頼すれば、弁護士が作成してくれます。

また、異議申立の内容を裏付ける資料等があれば、それも提出した方がよいでしょう。典型的なものとしては、新たに取得した各医療機関のカルテや、画像鑑定書等があります。

異議申立書の書き方

異議申し立てをする場合には、一度下された判断が間違っているということを説明しなければなりません。そのためには、なぜ誤った判断が下されたのか、その理由を正しく理解し、それに応じて適格な主張をする必要があります。

例えば、むち打ちの症状が残存したものの、後遺障害等級非該当の判断が下された場合には、事故による身体への衝撃が大きかったことや、事故直後から一貫して症状を訴えていたことを主張する必要があります。これらの主張を説得的に行うためにも、事故当時の車両の写真や各医療機関のカルテという立証資料も一緒に提出するとよいでしょう。

書類に不足や不備があるとやり直しになる

異議申立を行っても、異議申立書の内容が不適切であったり、立証資料が不十分であったりすると、結局、後遺障害等級は認定されないことになります。このような場合には、十分な立証資料等をそろえて、再度異議申立てをしなければなりません。自賠責保険への異議申立に回数制限はないため、何度でも異議申立をすることはできますが、何度も行うことは負担も大きく、時効の問題もあることから、1回目の手続きで最大限資料をそろえて異議申立を行った方がよいでしょう。

「異議申立て」成功のポイント

異議申立によって後遺障害等級認定結果を覆すことは容易ではありません。異議申立をしても結果が覆らないことは多々あります。だからこそ、異議申立が成功する可能性を高めるためにも、様々な工夫が必要となります。

後遺障害等級認定申請の結果の通知書には、なぜその判断に至ったのかの理由が記載されています。もっとも、例えばむち打ち症で14級9号が認定されなかった場合のように典型的なものについては、定型的な文言しか通知書に記載されず、実際に重視された理由については不明なままです。そこで、判断結果について、更なる理由の開示を求めることも有効です。
同時に、目標とする等級が認定されるには、どのような要件を満たす必要があるのかを調べるのがよいでしょう。
目標等級が認定されなかった理由と目標等級獲得に必要な要件について把握をしたうえで、前回の申請時には不足していたと考えられる資料を用意できれば、異議申立が成功する可能性は高まります。一方、漠然と、判断結果について納得ができないと訴えても、認定結果が覆る可能性は著しく低いでしょう。適切な主張・立証を行うことが肝要です。

後遺障害等級認定・異議申し立ては弁護士にお任せください

後遺障害等級認定申請は、十分な資料を提出するためにも被害者請求を行うのがお勧めです。弁護士に依頼することで、必要資料の収集を代わりに行ってくれますし、提出資料の検討もプロの目線で行ってくれます。

異議申立に至っては、専門家でなければ、そもそもどういった内容を主張すべきかも判断が難しいと思われます。加えて、必要十分な資料を収集し、適切に提出するということも困難でしょう。

後遺障害等級認定の結果次第で、賠償額は大きく変わります。最大限の賠償を得るためにも、経験豊富な弁護士に、後遺障害等級認定申請・異議申立をご依頼ください。

交通事故による後遺障害認定申請をした際、症状が残存しているにもかかわらず、認定結果が非該当になったり、想定していた等級よりも、低い等級が認定されたりすることがあります。

被害者の方が、後遺障害認定の結果に納得ができない場合、異議申し立てをすることで、後遺障害認定の結果を争うことができます。異議申し立てが認められれば、残存した症状を前提とした適切な賠償を得ることにつながりますので、以下で、交通事故の後遺障害の異議申し立てについて解説します。

後遺障害等級の異議申し立ての方法

後遺障害の異議申し立ての方法には、①自賠責保険に対する異議申し立て、②自賠責紛争処理機構への申請、③訴訟提起の3つの方法があります。

このうち、最も典型的な方法は、①といえます。①の方法は、回数制限がなく、申立費用も原則として必要なく、結果が出るまでの期間も最も短いといえます。

②の方法は、①の方法よりも時間がかかる傾向にあるものの、中立の第三者の判断を得ることができるメリットがあります。

③の方法は、①や②の方法でも結果が覆らなかった場合の最後の手段といった位置づけであり、時間も費用もかかりますが、法律の専門家である裁判官の判断を仰ぐことができます。

自賠責保険会社に異議申立てをする方法

自賠責保険への異議申し立てについては、事前認定と被害者請求の2つのルートがあります。

事前認定とは、相手方の保険会社を通じて異議申し立てをするものであり、被害者請求とは、被害者が直接、自賠責保険に異議申し立てをするものです。

被害者請求の場合、被害者自身で準備をする書類が増えることになりますが、相手方保険会社に任せるのではなく、被害者自身が、異議申し立てに必要と考える資料を主体的に選択できるメリットがあります。

異議申し立て~審査完了までの流れ

異議申し立てをすることを決めた場合、異議申立書を作成することが必要となります。異議申立書以外の必要書類については、事前認定をするか、被害者請求によって異なりますが、異議申立書が完成したら、必要書類と一緒に提出することになります。

その後、異議申立てに関する資料は、自賠責保険の審査会において、内容の審査が行われ、異議申立てを認めるかどうか検討されます。異議申立ての結果が出るまでの期間は、被害者の症状によって幅がありますが、おおよそ2か月から6か月程度となります。

必要書類と入手方法

異議申立書は、異議申し立てをする際には必ず提出する書類であって、異議申し立てをする理由を記載するものです。

これ以外には、異議申立てに理由があることを裏付けるためには、診断書や診療報酬明細書、画像記録などの医療記録のほか、新たな後遺障害診断書、主治医の意見書、カルテ、医療照会の回答書などを提出することが多いといえます。
また、被害者本人が症状を記載した陳述書を出すこともあります。弁護士に委任した場合には、委任状と印鑑証明書も必要となります。

郵送先

異議申立てに関する書類の提出先は、事前認定と被害者請求で異なります。
事前認定であれば、相手方の任意保険会社に、被害者請求であれば、相手方の自賠責保険会社に提出することになります。
万が一、提出先を間違えると、結果が出るまでに余計な時間がかかってしまうので注意が必要です。

審査に時間がかかる理由

異議申立てをした場合、自賠責保険の調査会は、異議申立書はもちろん、提出された資料を確認するほか、被害者が通院した病院に医療照会を行うなどして、異議申立てを認めるべきかどうか審査します。

そのため、回答があるまでは、どうしても一定の期間がかかってしまうことになりますし、被害者の症状が重い事案、異議申立てを認めるべきは悩ましい事案などでは、審査により長い時間を要することが多いといえます。事案によっては、上部機関に書類が回されてより詳細な検討をされることもあります。

自賠責紛争処理機構に申請する方法

以下のいずれかに該当する場合は自賠責紛争処理機構が使えない

次のいずれかに該当する場合、自賠責紛争処理機構を使うことはできません。

(1) 民事調停または民事訴訟に係属中であるとき又は当事者間の紛争が解決しているとき
(2) 他の相談機関または紛争処理機関で解決を申し出ている場合
※他の機関での中断・中止・終結の手続きをされた場合には受け付けることができます。
(3) 不当な目的で申請したと認められる場合
(4) 正当な権利のない代理人が申請した場合
(5) 弁護士法第72条に違反する疑いのある場合
(6) 自賠責保険・共済から支払われる保険金・共済金等の支払額に影響がない場合
※例えば、既に支払限度額まで支払われている場合
(7) 本機構によって既に紛争処理を行った事案である場合
(8) 自賠責保険・共済への請求がない場合あるいはいずれの契約もない場合

異議申し立て~審査完了までの流れ

紛争処理申請書の作成と必要な添付資料の収集を行い、自賠責保険・共済紛争処理機構へ書類を送付します。
その後、紛争処理委員会が、加害者側任意保険会社(共済組合)からの提出書類等をもとに審査することになり、結果が決まったら、紛争処理委員会から調停結果の通知が送られてくることになります。

審査完了までにかかる期間は、事案にもよりますが、3ヶ月以上はかかるケースが多いといえます。

必要書類と入手方法

必ず、提出する必要のあるものとしては、紛争処理申請書、紛争の問題点や交渉の経過の概要および請求の内容を記入した申請書別紙、医療照会等の同意書、交通事故証明書となります。

弁護士に委任した場合には、委任状と印鑑証明書が必要となります。必要に応じて提出するものとしては、自賠責保険への異議申し立てと重複するものが多いですが、新たな診断書・後遺障害診断書、画像等の検査結果資料、医師の意見書、カルテ、被害者の陳述書などが挙げられます。

郵送先

書類を郵送する先は、東京都千代田区にある東京本部と大阪府大阪市にある大阪本部のうち、いずれか近い方を選択することになります。

裁判で異議申し立てをする場合

自賠責保険会社と自賠責保険・共済紛争処理機構への異議申し立てを行っても、後遺障害認定結果に納得ができない場合には、最後の手段として訴訟提起を行い、裁判所で後遺障害等級認定を行ってもらう方法があります。

もっとも、実務上、裁判所は、自賠責保険の認定結果を重要視していますので、 自賠責保険の認定結果を訴訟で覆すことは非常に困難といえます。

裁判で異議申し立てをする場合、裁判所に提出する訴状を準備するほか、症状を裏付ける資料を証拠として提出することになります。
弁護士に依頼している場合、被害者本人が裁判所に行く必要が少ないですが、裁判は証拠に基づくシビアな事実認定を行う場ですので、自らの症状について弁護士と綿密な打ち合わせが必要といえます。

裁判による異議申し立てを行うことにメリットのあるケースとしては、勤務中の事故で、労災保険からも後遺障害等級の認定を受けている場合で、労災保険の方が、自賠責保険よりも上位の等級を認定しているとき、自賠責保険でも労災と同等の後遺障害等級が認定されるべきと主張して、訴訟提起をして解決する方法をとることがあります。

自分で後遺障害の異議申し立てをするのは難しい

最も典型的な異議申し立て方法は、自賠責保険に対する異議申し立てですが、この方法による場合でも、異議申し立てが認められた確率はかなり低いものになっています。

後遺障害認定結果に納得がいかないからと言って、適切な準備をせず、やみくもに異議申し立てをしても、後遺障害等級は覆る可能性は低いといわざるを得ません。

異議申し立ての書類に不足しているものや不備があるとまたやり直し

いずれの方法で異議申し立てをするとしても、異議申し立てには必要となる書類が決まっており、書類の中身も異議申し立ての判断をするのに足りるものでなければなりません。

そのため、必要書類が不足していたり、書類に不備がある場合、異議申し立てを一からやり直したり、改めて追加の書類を準備したりしなければならなくなることがあります。

異議申し立ての審査には時間がかかる

異議申し立ては、いずれの方法であっても、短期間で回答が出るものではなく、短くても数か月間が必要となることから、書類の不備などで手続きが止まってしまうと、より一層回答までの時間を要することになり、結果として、交通事故の解決が遠のくことになります。

書類の不足や不備を防止し、スムーズ、かつ、適切な後遺障害の異議申し立てを行うためには、弁護士に依頼して手続きを進めることが有効といえます。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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弁護士に後遺障害の異議申し立てを依頼した場合

後遺障害の異議申立てを弁護士に依頼した場合、弁護士において、当初の後遺障害申請の結果を分析し、目標とする等級に必要な書類を準備し、異議申立書を作成することになります。

異議申し立てが認められるためには、当初の後遺障害認定の際に不足していた資料や主張を補足していくことが必要ですので、弁護士による的確な分析を踏まえて、異議申立てすることによって、異議申し立てが認められる可能性が上がります。

弁護士に依頼する際には弁護士費用がかかりますが、弁護士費用特約に加入している場合には、被害者の方の負担はほとんどありませんし、弁護費用特約に加入していない場合でも、事案によっては、被害者の方の負担の少ない弁護士費用の提示が可能なケースもあります。

異議申し立てはいつまでにしなければいけないのか

異議申立てをすることに期間制限が定められているわけではありません。
しかし、民法上、交通事故における損害賠償請求権は症状固定から5年間が消滅時効とされており、請求権自体が消滅してしまえば、異議申立てをすることもできなくなります。

そのため、異議申し立てができるのは症状固定から5年となります。なお、民法改正前の消滅時効の期間は症状固定から3年間であることには注意が必要です。また、異議申立てを行ったとしても、時効を更新する効力はないため、異議申し立ての審査中に消滅時効の期間が経過してしまう恐れがある場合には、時効の完成猶予や更新の承認を得る手続きを踏んでおく必要があります。

異議申し立ては弁護士にお任せください

異議申立ては、やみくもに申し立てをすればよいものではなく、また、自覚症状では症状が残存しているからといって、必ず後遺障害が認定されるわけでもありません。異議申し立てが認められるために必要な主張や資料をきちんと準備する必要があります。

異議申し立てをご検討中の方は、交通事故の被害にあい、ただでさえ大変な状況にあり、異議申し立てをするために準備をする余裕がない場合も少なくないのではないでしょうか。

被害者の方の不安を解消し、異議申し立てのために被害者の手間を省略し、的確なアドバイスを得ることもできますので、ぜひ一度、弁護士に相談されてみることをお勧めします。

交通事故に遭ってしまったとき、どんなお金が請求できるのでしょうか。
まず、怪我の治療費、車の修理代、仕事を休まなければならなかったことによる収入減分などが思い浮かぶのではないでしょうか。これらは全て「損害賠償」として、加害者に請求できるお金です。
そして、この「損害賠償」の中の1つに、「慰謝料」があります。
不倫された人が、不倫した配偶者やその不倫相手に対し慰謝料を請求できるように、交通事故においても、事故の被害者は、事故に遭ってしまったことによる精神的苦痛を、慰謝料として加害者に賠償してもらうことが可能です。今回は、この交通事故における慰謝料について解説します。

交通事故における慰謝料とは

交通事故に遭遇し生命の危機や強い恐怖を感じた場合、その後も、突然事故の光景がフラッシュバックしたり、怪我をしたことにより辛い治療や手術に耐えなければいけなくなったり、後遺障害で仕事に制限ができてしまったり・・・
事故に遭ったことでトラウマを抱え、事故後の精神健康状態が悪化したり、仕事や日常生活に支障をきたしてしまったりすることも、珍しくありません。
交通事故における慰謝料は、交通事故の被害者が、加害者に対し、このような「事故に遭ってしまったせいで被った精神的な苦痛」を賠償してもらうものです。具体的には、以下の3種類があります。

  • 入通院慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
  • 死亡慰謝料

入通院慰謝料

入通院慰謝料とは、文字通り、事故による怪我の治療のために通院したり、入院したりしたときに支払われる慰謝料(怪我の痛みや手術などの苦痛に対する損害賠償金)です。実際に医療機関で医師の治療を受けないと支払われません。
入通院慰謝料の額は、次の2つを基に金額を算出します。

  • 入通院日数(治療した実日数)
  • 入通院期間(治療開始日から治療終了日まで)

また、治療費や休業損害など、実際に発生した財産的損害と入通院慰謝料は別物です(財産的損害は入通院慰謝料の内容には含まれません)。これらを混同しないように注意しましょう。

後遺障害慰謝料

交通事故の怪我の治療は、「怪我が治癒した(治った)とき」と「症状が固定したとき」に終了します。「症状が固定したとき」とは、治療やリハビリによっても、これ以上の症状の改善が見込めないと判断された状態です。
例えば、事故により眼を怪我してしまい、治療を受けたものの、これ以上治療を続けても視力の回復は見込めないと判断された場合、「症状固定」とされます。症状固定というのは、医学的な概念ではなく法的な概念ですが、症状固定の判断は第一次的には、主治医が行います。この症状固定時に、残った障害(先の例でいうと、低下した視力の度合い)が1級から14級までの後遺障害等級に認定されれば、等級に応じた「後遺障害慰謝料」の請求権が発生します。

死亡慰謝料

交通事故により被害者が死亡した場合、死亡慰謝料が発生します。
死亡慰謝料には、以下の2種類があります。

①本人慰謝料(死亡した被害者本人の精神的苦痛を賠償させる慰謝料)
②遺族慰謝料(遺族が受けた精神的苦痛を賠償させる慰謝料)

死亡した被害者本人は加害者に慰謝料を請求することはできないので、請求権を相続した遺族(原則、配偶者、子、父母などの近親者)が、死亡した被害者に代わり①の本人慰謝料を請求することになります。慰謝料の金額は、遺族の人数や、死亡した被害者本人の家庭内での経済的な立場(一家の大黒柱か、専業主婦か、子供かなど)により、変動することがあります。

適正な交通事故慰謝料を算定するための3つの基準

交通事故の慰謝料には、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種類があります。そして、これらの慰謝料は、目に見えない精神的苦痛の賠償金であるため、妥当だと思う金額は、慰謝料を払う側ともらう側、それぞれの主観によって異なります。
そこで、交通事故では、慰謝料を客観的に算定するための基準として、以下の3つが存在します。

①自賠責基準
(法令で定められた最低限の基準)
②任意保険基準
(自賠責保険と同等かそれより少し高い基準。保険会社により異なり、内容は非公開)
③弁護士基準(裁判基準)
(過去の裁判例を基に算定された基準。裁判や弁護士が示談交渉を行う際に用いる)

自賠責基準

すべての自動車やバイクは、自賠責保険への加入が義務付けられています。そのため、仮に事故の加害者が任意の保険に加入していなかったとしても、被害者は、この自賠責保険から補償を受けることができます。自賠責基準はこの自賠責保険における算定基準であり、3つの基準の中で、最も金額の低い、最低限の基準となることが多いです。
なお、補償の対象は事故による怪我や死亡などの損害(対人賠償)に限定され、自動車の破損などの物損は対象外です。また、自賠責保険で補償してもらえる傷害による損害は、治療費や休業損害などの財産的損害と慰謝料を全てひっくるめて、120万円が上限となっています。

任意保険基準

任意保険基準とは、民間の保険会社が独自に定めた損害金の算定基準です。内容は各保険会社によって異なりますが、自賠責基準と同等か、これよりも少し高い基準となっているようです。上限額のある自賠責保険からはみ出した部分の補償を、民間の保険会社で賄うというイメージです。
しかし、民間保険会社はあくまでも営利企業ですので、自社の利益のため、その支払基準は低く設定されています。そのため、自賠責保険を超える部分の保険金を出し渋られたり、治療の打ち切りを言い渡されたりすることも、珍しくありません。そのため、任意保険基準において算出された金額では、必ずしも充分な補償を受けられるわけではありません。

弁護士基準(裁判基準)

弁護士基準とは、過去の交通事故事件の裁判例を蓄積した基準であり、「もしこの交通事故の損害賠償を裁判で争った場合、過去の裁判例からするとこれくらいの金額が得られるであろう」というものです。裁判で用いられる基準のため、裁判基準ともいわれます。弁護士が示談交渉や裁判で賠償額を争うときは、この弁護士基準に則り行われます。弁護士基準は、自賠責基準や任意保険基準と比べて、基本的には最も高額な算定基準となることが多いです。

交通事故慰謝料の算定方法

交通事故の慰謝料(入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料)の額は、

  • 自賠責基準
  • 任意保険基準
  • 弁護士基準

この3つの、どの基準をもとに算出するかによって変わります。本章では、その具体的な金額の算定方法について、解説します。 なお、任意保険基準での算出方法については、各保険会社が独自の算定基準(非公開)を定めており、保険会社以外の第三者では正確な金額の算出は不可能なため、本章での解説は割愛します。

入通院慰謝料

自賠責基準

自賠責保険における入通院慰謝料の額は1日4300円(但し、2020年3月31日以前に起きた事故については、1日4200円)であり、次の①と②の式で計算された金額のうち、低い金額となります。

① 4300円×対象日数(治療を始めた日から治療が終わった日までの期間)
② 4300円×{実治療日数(入院日数+通院日数)×2}

例えば、
・治療を始めた日から治療が終わった日までが100日
・入院したのは7日
・通院して治療を受けた実日数が30日
であった場合、
①の「対象日数」は100日 
②の「実治療日数×2」は74日(入院7日+通院30日の37日の2倍)
となるため、低い金額となる②の計算式が採用され慰謝料額は31万8200円となります。

弁護士基準

弁護士基準は、通称「赤い本※」と呼ばれる書籍の入通院慰謝料【別表Ⅰ】及び【別表Ⅱ】にまとめられおり、以下のように使い分けられます。

【別表Ⅰ】怪我が骨折などの他覚所見のある重症の場合
【別表Ⅱ】怪我がむちうちなどの他覚所見のない軽傷の場合

この表から算出される金額は、あくまでも相場の目安にすぎません。実際には、この金額に、怪我の程度や通院期間に対する実通院日数などの個別具体的要素が加味されます。

通常の怪我の場合【別表Ⅰ】
入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 AB 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306 314 321 328 334 340
1月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311 318 325 332 336 342
2月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315 322 329 334 338 344
3月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319 326 331 336 340 346
4月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323 328 333 338 342 348
5月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325 330 335 340 344 350
6月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327 332 337 342 346
7月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329 334 339 344
8月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331 336 341
9月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333 338
10月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335
11月 150 179 207 234 258 278 296 312 324 332
12月 154 183 211 236 260 280 298 314 326
13月 158 187 213 238 262 282 300 316
14月 162 189 215 240 264 284 302
15月 164 191 217 242 266 286
むちうち等他覚所見のない比較的軽傷の場合【別表Ⅱ】
入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 A’B’ 35 66 92 116 135 152 165 176 186 195 204 211 218 223 228
1月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199 206 212 219 224 229
2月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201 207 213 220 225 230
3月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202 208 214 221 226 231
4月 67 95 119 136 152 165 176 185 192 197 203 209 215 222 227 232
5月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204 210 216 223 228 233
6月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205 211 217 224 229
7月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206 212 218 225
8月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207 213 219
9月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208 214
10月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209
11月 117 135 150 160 171 179 187 193 199 204
12月 119 136 151 161 172 180 188 194 200
13月 120 137 152 162 173 181 189 195
14月 121 138 153 163 174 182 190
15月 122 139 154 164 175 183

※「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」

後遺障害慰謝料

自賠責基準

交通事故によって負った後遺症が、後遺障害等級に該当すると認定された場合、後遺障害慰謝料の請求権が発生します。
自賠責保険における後遺障害に対する慰謝料額の目安は、障害の態様と等級に応じ、次の【別表第1】と【別表第2】に掲げられている金額となります。

なお、被害者に配偶者や子供などの被扶養者がいる場合は、さらに慰謝料額が加算されます。

別表第1 介護を要する後遺障害慰謝料
等級 自賠責基準
1級 1650万円(1850万円)
2級 1203万円(1373万円)

※カッコ内の金額は被扶養者がいる場合の適用額
自賠責基準は新基準を反映しています。令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準が適用されます。

別表第2 後遺障害慰謝料
等級 自賠責基準
1級 1150万円(1350万円)
2級 998万円(1168万円)
3級 861万円(1005万円)
4級 737万円
5級 618万円
6級 512万円
7級 419万円
8級 331万円
9級 249万円
10級 190万円
11級 136万円
12級 94万円
13級 57万円
14級 32万円

※カッコ内の金額は被扶養者がいる場合の適用額
自賠責基準は新基準を反映しています。令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準が適用されます。

弁護士基準

弁護士基準による後遺障害慰謝料の基準額も、自賠責保険と同様に、認定された後遺障害の等級に応じて、次の表のとおりに定められています。

自賠責保険のように、介護状態の態様で算定表上の金額に違いはありませんが、実際はこれに障害の重症度、事故の状況や扶養家族の状況など、さまざまな個別具体的な事情が加味され、金額が変動します。

等級 弁護士基準
1級 2800万円
2級 2370万円
3級 1990万円
4級 1670万円
5級 1400万円
6級 1180万円
7級 1000万円
8級 830万円
9級 690万円
10級 550万円
11級 420万円
12級 290万円
13級 180万円
14級 110万円

死亡慰謝料

自賠責基準

自賠責基準では、被害者本人分と遺族固有分がはっきりと区別されているのが特徴です。
本人分は年齢や性別などにかかわらず一律400万円と決まっています。
遺族固有分は、下表のとおりです。遺族としてみなされるのは、
・配偶者
・子供(養子、認知した子及び胎児も含む)
・父母(養父母を含む)
が基本で、人数と扶養状況によって金額が異なります。

請求権者の人数 金額
1人 550万円
2人 650万円
3人以上 750万円
被扶養者がいる場合 上記プラス200万円

例えば、死亡者(夫)に妻と子が1人いて、夫が扶養していた場合、自賠責基準における死亡慰謝料の額は、
400万円(本人慰謝料)
650万円(請求権者2人の額)
200万円(扶養者加算)
の、合計1250万円となります。

弁護士基準

弁護士基準では、本人分と遺族固有分を合わせた総額として、目安の金額が下表のとおりに定められています。

死亡者の属性 金額
一家の大黒柱 2800万円
母親、配偶者 2500万円
その他
(独身の男女、子供、幼児など)
2000万~2500万円

自賠責基準と比べると、トータル的にみても高額であることが一目瞭然です。
また、実務上は、この目安額に、死亡者の収入や事故が起きた経緯、家族構成などの個別具体的な事情が考慮されることとなりますので、金額が変動する可能性があります。

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通院期間別の入通院慰謝料相場比較

(例)通院期間3ヶ月・実通院日数45日の場合

自賠責基準 弁護士基準
38万7000円 重症73万円
軽傷53万円

※通院期間は30日を1ヶ月としてカウントします。
①通院期間=3ヶ月×30日=90日、
②実通院日数(45日)×2=90日
①、②いずれも90日となるため、自賠責基準における入通院慰謝料の額は、
日額4300円×90日=38万7000円となります。

※弁護士基準では、
重症の場合は入通院慰謝料【別表Ⅰ】
軽傷の場合は入通院慰謝料【別表Ⅱ】
を基準に算定します。

※通院期間が3ヶ月の場合、軽いむちうちや打撲などのケースが考えられます。

(例)通院期間6ヶ月・実通院日数(85日)の場合

自賠責基準 弁護士基準
73万1000円 重症116万円
軽傷89万円

※通院期間は30日を1ヶ月としてカウントします。
①通院期間=6ヶ月×30日=180日
②実通院日数(85日)×2=170日
自賠責基準における入通院慰謝料の額は、少ない日数である②の170日が対象日数となり、
日額4300円×170日=73万1000円となります。

※弁護士基準では、
重症の場合は入通院慰謝料【別表Ⅰ】
軽傷の場合は入通院慰謝料【別表Ⅱ】
を基準に算定します。

※通院期間が6ヶ月の場合、むちうちや、経過が良好な軽い骨折などのケースが考えられます。

(例)通院期間8ヶ月・実通院日数(140日)の場合

自賠責基準 弁護士基準
103万2000円 重症132万円
軽傷103万円

※通院期間は30日を1ヶ月としてカウントします。
①通院期間=8ヶ月×30日=240日
②実通院日数(140日)×2=280日
自賠責基準における入通院慰謝料の額は、少ない日数である①の240日が対象日数となり、
日額4300円×240日=103万2000円となります。

※弁護士基準では、
重症の場合は入通院慰謝料【別表Ⅰ】
軽傷の場合は入通院慰謝料【別表Ⅱ】
を基準に算定します。

※通院期間が8ヶ月の場合、長引くむちうちや、骨癒合まで時間のかかる関節部(膝、腰、肩、肘など)の骨折などのケースが考えられます。

慰謝料以外にも請求できるものがある

交通事故に遭うと、怪我の治療費や病院までの交通費、休業を余儀なくされたことによる収入減、車の修理代など、様々な損害が発生します。
「損害賠償」は、これらの交通事故により発生した損害金の総称です。
「法律」に民法や刑法などたくさんの種類があるように、「損害賠償」のうちの1つとして、慰謝料や治療費、車の修理代などがあります。
「損害賠償」として加害者に請求できるお金は、慰謝料の他には何があるでしょうか。以下で解説します。

休業損害

交通事故に遭い怪我をすると、入院や治療のために、仕事を休んだり、勤務時間を短縮したりする必要性が生じる場合があります。休業損害とは、このように、事故が原因で仕事ができなかったり、仕事時間が減ったりしたために生じた収入減をいいます。
この点、会社員の方が有給休暇を使用して入通院した場合でも、休業損害は請求できます。また、専業主婦の方が事故に遭った場合も、家事は労働としてお金に換算することが可能なので、休業損害が請求できるケースがあります。

逸失利益

逸失利益とは、「この交通事故がなければ、本来なら将来にわたって得られたであろうお金」のことです。以下の2種類があります。

①後遺障害逸失利益 交通事故により後遺障害等級に認定される程の障害を負った場合、事故前と同じ仕事が全くできないか、仕事内容に制限が生じることがあります。その結果、事故前の収入水準を維持できずに、生涯年収の低下につながります。後遺症逸失利益は、このような、後遺障害を負ったせいで失った将来の収入を補償するものです。認定された等級により、金額が異なります。

②死亡逸失利益 交通事故の被害者が、死亡しなければ本来得られていたであろう、将来の収入相当額に対する補償です。死亡時点での年収や年齢などを基に算出されます。

その他に請求できるもの

交通事故の損害賠償として加害者に請求できるお金には、慰謝料、休業損害、逸失利益のほか、一例として、以下のものが挙げられます。

  • 治療費
    必要性、相当性が認められない過剰診療や著しく高額な診療は、補償の対象外です。
  • 付添費用
    被害者の入通院に親族などが付き添う際に発生する損害金です。
  • 雑費
    入院雑費は1日1500円、将来の雑費としておむつ代や介護用品代などが認められます。
  • 交通費、宿泊費
  • 子供の学習費、保育費、通学付添費
    事故を原因とする進級遅れや補習費などが認められます。
  • 装具、器具などの購入費
    義歯、義眼、義手、義足、車椅子介護支援ベッドなど、必要があれば将来の交換費用も含めて認められます。
  • 家屋や自動車の改造費
  • 葬儀関係費用
    原則150万円ですが、これを下回る場合は実際に支出した額となります。
  • 診断書などの文書料
  • 車の修理代

ただし、いずれも事故との因果関係と請求の相当性が認められる必要があります。

交通事故慰謝料を受け取るまでの流れ

交通事故が発生してから慰謝料を受け取るまでの流れは、次のとおりです。

①事故発生(警察への通報、保険会社への連絡など)

②治療開始

③治療の終了(治癒または症状固定)

④症状固定の場合、後遺障害等級の認定手続き
※後遺障害等級の認定申請をした場合、症状の重さによりますが、結果が出るまで1ヶ月から2ヶ月ほど要します。認定された等級に納得がいかない場合、異議を申し立てることができます。

⑤示談交渉
※スムーズにいけば3ヶ月ほどで終了しますが、争いがある場合は、1年以上、長期間にわたることもあります。

⑥示談成立
※示談が不成立となった場合、裁判やADR(裁判外紛争解決手続)などで争うことがあります。裁判になった場合、審理期間は平均12ヶ月位といわれているため、慰謝料を受け取るまで、さらに時間を要します。

⑦示談金の支払い
※示談成立後、一定の期間の後、保険会社から慰謝料を含む示談金が支払われます。

慰謝料の支払い時期について

交通事故に遭ってから実際に慰謝料を受け取るまでには、原則、治療が終了した後に、示談交渉を経て、金額を確定しなければなりません。
しかし、交通事故に遭うと、治療費の負担や休業による収入減など、被害者には大きな経済的負担がかかります。このような状況が何ヶ月(事案によっては1年以上)も続くことによる経済的困窮を避けるため、被害者は、任意保険会社に対し、損害金の一部(治療費や休業損害など)を示談交渉の成立前に先払いするよう、求めることができます。なお、この先払い請求に応じるかどうかは、各保険会社の判断によるうえ、慰謝料の先払いは不可能ではないですが、なかなか認められないのが実情です。

慰謝料の増減要素

自賠責基準による慰謝料の額は、画一的に定められています。任意保険基準に基づき保険会社が提示する慰謝料も、自賠責保険と同等の金額と考えられます。
一方で、弁護士基準に則れば、事故が起きた経緯や状況、加害者の態様、被害者の過失などの個別具体的な事情によっては、保険会社の提示した慰謝料の額から大きく変動する可能性があります。慰謝料が増額するケース、減額されるケースにはどのようなものがあるでしょうか。以下で解説します。

慰謝料が増額するケースとは?

基本的に、保険会社が提示する慰謝料の額は自賠責基準と同程度であり、最低限の水準の金額となります。しかし、加害者や事故の態様などにより、示談交渉で、保険会社が提示した慰謝料の額から増額できる可能性があります。過去の裁判例で増額が認められた例として、以下が挙げられます。

  • 加害者の態様が悪質である場合
    (運転中に違法薬物を使用していた、飲酒運転をしていた、ひき逃げをした…など)
  • 怪我や後遺障害の態様が、大きな精神的苦痛を伴うものである場合
    (生死をさ迷うほどの大きな怪我をした、つらい治療や手術を何度も受けなければならなかった…など)
  • 家族が精神的な苦痛を被った場合
    (兄が妹の死亡事故を目撃した、経済的支柱である夫が亡くなったために家族の経済状況が悪化した…など)

慰謝料が減額する要素

交通事故による慰謝料は、事故の内容や加害者の態様により、保険会社の提示額から増額できるケースがある一方で、被害者の元々の身体的、心因的な健康状態によっては、保険会社が、慰謝料を含む損害賠償の減額を主張してくる可能性があります。これを「素因減額」といいます、例えば、以下のようなケースです。

  • 被害者が元々患っていた椎間板ヘルニアが、交通事故が原因で悪化した場合
  • 被害者が元々患っていたうつ病が、交通事故後のPTSDの発症に寄与したと認められる場合

また、被害者の過失割合が高い(被害者の落ち度が大きい)場合にも、慰謝料を含む損害賠償金が減額される可能性があります。例えば、被害者(歩行者)が、酩酊中に横断歩道のない道路を横断している際に、走行中の自動車と接触し怪我をしたような場合には、被害者にも落ち度があるとして、損害賠償額が減額される可能性があります。

適切な慰謝料を請求するために

必ず整形外科で診てもらう

交通事故に遭った場合、目立った怪我や症状がなくても、まず、初診は必ず「医療機関」を受診しましょう。交通事故で多く見られる捻挫・骨折などの場合は「整形外科」を受診し、「医師」に診断書を交付してもらいましょう。事故直後に自覚症状がなくても、数日後に体の痛みが発症することがあります。そして、治療費や慰謝料を請求するためには、医療機関で治療を受けたという事実と、医師による診断書が必要となります。この点、「整骨院」は医療機関ではないため、医師による治療や診断書の交付を受けることはできません。そのため、整形外科を一度も受診しないまま整骨院での施術を受けるだけでは、慰謝料や治療費などの損害賠償が適切に請求できない場合があります。

人身事故で処理する

交通事故に遭遇した場合、直後に目立った外傷や自覚症状がなくても、痛みや違和感が発生すれば、警察には「物損事故」ではなく「人身事故」として処理してもらいましょう。
物損事故で処理されてしまっても、治療費や慰謝料の賠償を受けることは多くの場合できますが、不利益がないとは言えません。
特に、物損事故では実況見分調書が作られないため、事故状況に被害者と加害者との間で食い違いがある場合に揉めやすくなります。
また、物損事故で処理していることから、怪我自体が軽傷と判断され治療が早く打ち切られてしまうケースもあります。
むちうちなどで体に痛みや違和感がある場合には、警察に診断書を提出し人身事故へと切り替えをしましょう。

慰謝料が減額する要素

交通事故における加害者側の保険会社は、自社の利益のため、被害者の過失割合や既往症などを理由に、慰謝料を含む示談金の額を、大幅に減額した額で提示してくることがあります。必ずしも、被害者の目線に立ち、被害者の補償のために充分な金額を支払ってくれるとは限らないということです。
被害者は、保険会社の提示した額を鵜吞みにし、安易に同意してしまうと、本来請求可能であった金額が受け取れず、損をしてしまう可能性があります。一旦成立した示談交渉は、原則やり直せないからです。
この点、弁護士は、過去の裁判例の蓄積である弁護士基準に則り、保険会社と示談交渉を行います。そのため、慰謝料を含む示談金の減額を防ぐだけにとどまらず、事案によっては、保険会社が提示する金額からの増額も実現可能です。

 

交通事故に関して不安があれば、弁護士へご相談ください

交通事故に遭遇し損害賠償を受けるためには、事故後の処理から治療・通院、後遺障害等級の認定や示談交渉に至るまで、長期間にわたり、たくさんの段階を適切に経なければなりません。
また、後遺障害等級が思っていたより低い等級で認定されてしまったり、保険会社から治療の打ち切りを宣言されたり、自賠責保険の基準を超える額の保険金を出し渋られたりすることもあります。
この点、交通事故事件に精通した弁護士であれば、治療内容のアドバイス、後遺障害等級認定の異議申立て、休業損害や逸失利益の適正額の算定、被害者の代理人として保険会社との交渉及び最も高額な算定基準である弁護士基準に則った損害賠償金の獲得など、被害者の利益の最大化に向け、様々な局面からのサポートが可能です。
安易に示談交渉に同意する前に、保険会社から提示された金額が本当に適正なものなのか、弁護士の判断を仰ぐことをおすすめします。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。