
監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
被相続人が所有していた家が遠方にあり、経済的な価値がほとんどないケース等において、他に有益な相続財産がなければ、相続放棄して受取を拒否したいと考える方は少なくないでしょう。しかし、相続放棄すると、その家がどうなるのか気になるかもしれません。
そこで、この記事では、相続放棄すると家がどうなるのか、相続放棄した家に住みたい場合にはどうするべきか、空き家を相続放棄すべき理由、相続放棄する場合の注意点等について解説します。
相続放棄をしたら家はどうなる?
次の順位の相続人が相続する
唯一の相続人が相続放棄すると、次順位の法定相続人がいる場合、その者が家を含めた財産を相続することになります。
相続には「相続順位」が設けられており、より高い順位の相続人がいる場合、後順位の者は相続人になることができません。しかし、より高い順位の者が相続放棄すると、相続放棄した者は最初から相続人ではなかったものとして扱われるので、次順位の者に相続権が移ることになります。
相続順位について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
相続の順位と相続人の範囲全員が相続放棄した場合・相続人がいない場合は国のものになる
後順位の法定相続人を含めた全員が相続放棄した場合、相続人がいなくなります。このとき、被相続人の債権者等の利害関係人または検察官の申立てにより、相続財産清算人が選任されることがあります。
選任後は、相続人に名乗り出ることを求める公告や、遺贈を受けた者や被相続人の債権者に申し出を求める公告を行います。
それらの申し出がなかった場合において、特別縁故者等がいなければ、最終的に家を含めた相続財産は国庫に帰属することになります。
空き家になる場合、相続財産清算人の選任が必要
相続放棄しても、相続財産である家に住んでいる等、その家を占有していた者には保存義務が課せられます。一方で、遠くに住んでいる等、相続財産である家を占有していない者は、相続放棄しても保存義務が課せられることはありません。
また、相続放棄した者の全員が家を占有していなかった場合、家庭裁判所によって選任された相続財産清算人が家を管理することになります。
相続放棄をしても家に住みたい場合の対処法
相続財産に高額な借金等が含まれており相続放棄する場合、相続財産である家に住み続けることは基本的にできません。ただし、主に以下のような場合には、住み続けることが可能です。
- 相続放棄後に相続財産清算人から買い戻す
- 限定承認する
これらの場合について、次項より解説します。
相続放棄後に相続財産清算人から買い戻す
相続人の全員が相続放棄すると、被相続人の債権者等によって相続財産清算人の選任の申立てが行われることがあります。
相続財産清算人は、被相続人の債権者に対して、相続財産から返済を行うために家等を売却するケースがあります。このとき、競売よりも高額で任意売却を申し込むと、債権者が認めれば応じてもらえる可能性があります。
限定承認する
限定承認とは、相続財産に含まれるプラスの財産の範囲内で、マイナスの財産を相続する方法です。どれだけ調べても借金等がいくらあるのか分からない場合や、どうしても残したい相続財産がある場合等に利用されることがあります。
限定承認した相続人には「先買権」という権利があります。先買権を行使すると、家庭裁判所が選任した鑑定人による評価額を支払うことによって、相続財産に含まれる家などを買い戻すことができます。
ただし、限定承認は手続きの負担が重く、かなりの時間が必要であり、税金が発生してしまうおそれがある等の理由から、あまり利用されていません。
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空き家を相続放棄すべき理由
空き家は、一等地にあるなどの特別な事情がない限り、相続放棄する等して受け取らないことが望ましいと考えられます。なぜなら、空き家を相続すると以下のような不利益を被るおそれがあるからです。
- きちんと手入れをしなかったために壁が崩れる等、周辺住民に損害を与えて賠償請求を受ける
- 景観が悪くなったり害虫が発生したりして、周辺住民とトラブルになる
- 浮浪者が住み着いてしまい、立ち退いてもらうための手間がかかる
- 修繕費や固定資産税を負担させられる
相続放棄する場合の注意点
家の片づけや遺品整理はNG
相続放棄をしたい場合には、経済的な価値のある相続財産を捨てたり、売却したりしてはいけません。なぜなら、相続放棄が無効となり、すべての財産を相続することになってしまうリスクがあるからです。
生ごみを捨てる等、経済的な価値のないものを処分することに問題はありません。ただし、ガラクタだと思ったものが価値のある骨とう品であった場合等は問題となるおそれがあるため、なるべく遺品整理等は行わないのが望ましいでしょう。
また、形見分けについても、新品のコート等を受け取ってしまうとリスクが生じるので、なるべく行わないようにしましょう。
他の相続人に相続放棄することを連絡する
相続放棄する場合には、他の相続人や次順位の法定相続人等に対して、事前に連絡しましょう。もしも、相続放棄する旨を伝えなければ、後でトラブルに発展するおそれがあります。
相続財産に、自分にとって負担にしかならない家が含まれている等の理由で相続放棄すると、次順位の法定相続人に相続権が移るケース等があります。このとき、次順位の法定相続人にとっても、その家が不要で相続したくない場合が少なくありません。
結果的に、不要な家を押し付けられたと思われてしまうと、後で親族間の感情的な対立を招くおそれがあります。このような事情から、相続放棄については、なるべく親族間で共有するのが望ましいでしょう。
家の相続放棄に関するQ&A
家だけ相続放棄できますか?
家だけを相続放棄することはできません。なぜなら、相続放棄は家庭裁判所で行う手続きであり、申立てが認められれば、最初から相続人ではなかったとみなされるからです。
そのため、家を含めたすべての財産を相続できなくなります。
なお、相続人の1人として他の相続人と話し合い、自分は預貯金や有価証券等を相続して、家は他の相続人が相続する等のケースがあります。これは、相続放棄とは異なる手続きです。
このような場合には、相続財産に高額な借金等が含まれていると、債権者から請求を受けるおそれがあるので注意しましょう。
亡くなった父は賃貸に住んでいました。家の鍵を返すよう言われているのですが、返しても大丈夫でしょうか。それとも次順位の父の兄弟に渡すべきでしょうか?
賃貸物件は相続の対象なので、被相続人が借りていた家を借りる権利も相続されます。そのため、勝手に賃貸契約を終わらせて鍵を返す行為は、相続財産を処分する行為とみなされるおそれがあります。
相続財産を処分すると、相続放棄が無効となるリスクが生じてしまいます。そのため、賃貸契約は終わらないことを前提として、他の相続人に引き渡す等するのが望ましいでしょう。
ただし、賃貸契約を継続すると家賃の支払いが必要となり、家賃を相続財産から支払うことも処分行為に該当するおそれがある等、不都合が生じる場合もあります。大家との話し合いが必要なケース等については、弁護士に相談することをおすすめします。
相続放棄した家が倒壊したら誰の責任になりますか?
相続放棄した家を現に占有していた者は、保存義務があるので家が倒壊した場合の責任を負います。保存義務とは、自己の所有物と同一の注意で保存する義務です。
保存義務を免れるためには、次順位の相続人に引き渡すか、家庭裁判所に相続財産清算人を選任してもらう方法が考えられます。
しかし、次順位の相続人も相続放棄することがあります。また、相続財産清算人を選任してもらうためには、100万円程度になることもある予納金を支払わなければならないおそれがあることに注意しましょう。
相続放棄した家の解体費用は誰が払うべきですか?
そもそも、相続放棄した者は、相続財産である家を解体する権限を有していません。もしも解体してしまうと、単純承認したことになって、相続放棄が無効となるおそれがあります。
家が老朽化しており、周辺住民に損害を及ぼすおそれがある場合に、必要な範囲で修繕することは保存行為とされているため可能です。
ただし、家が激しく老朽化している場合や、家の立地が悪い場合等では、修繕費用が高額になるおそれがあります。そのような場合には、相続財産清算人を選任してもらうときの予納金と比較して、選任申立てを行うか判断する方法が考えられます。
家の相続放棄についてお困りなら、弁護士へご相談ください
被相続人の子の全員が都会に住んでいるような場合には、実家の相続が負担になってしまい、相続放棄を検討することがあるかもしれません。しかし、相続放棄をすると家以外の財産も相続できなくなってしまいます。また、保存義務が発生すると、家を修繕する負担が生じるかもしれません。
そこで、家の相続放棄を考えている方は弁護士にご相談ください。弁護士であれば、相続放棄したときのリスク等についてアドバイスできます。
また、自分の子に負担を与えず、家を有効活用してもらうために、地元の親戚に遺贈したい等の希望のある方は、弁護士にご相談いただければ遺言書の作成についてサポートいたします。
休業補償とは、仕事中や通勤中の事故により仕事を休んだことで、受け取れなかった収入を労災保険が補償する制度をいいます。
交通事故の加害者が加入する自動車保険から支払われる「休業損害」とは異なるものですが、両方とも請求することで、実際の減収額よりも高い金額の補償を受けられる場合があります。
このページでは、交通事故の被害者の方に向けて、休業補償とはいったい何なのか、休業損害との違い、請求方法などについて解説していきますので、ぜひご一読ください。
交通事故の休業補償とは
交通事故の休業補償とは、仕事中・通勤中の交通事故によるケガで仕事を休んだ場合に、その間受け取れなかった収入の補償として、労災保険から出る保険金をいいます。
休業補償は、仕事中の事故にあった場合に支払われる「休業補償給付」と、通勤中に事故にあった場合に支払われる「休業給付」と2つに分けられます。
休業補償の請求は、被害者である労働者が勤務先を通じて行います。 会社に労災が起きたことを報告すれば、会社が代行して請求してくれることが通例です。
請求を円滑に行えば、1ヶ月ごとに申請することで、毎月1ヶ月分の休業補償を受け取ることも可能です。
休業補償はいつもらえる?
休業補償は請求してから約1ヶ月後に、指定口座に振り込まれるのが通例です。具体的には、会社を管轄する労働基準監督署に休業給付の請求書を提出し、審査を通過すれば、休業補償を受けとることが可能です。
ただし、事故状況によっては審査に時間を要し、1ヶ月以上かかる場合もあります。生活上の心配があって、できる限り早くお金をもらいたい場合は、後述する「受任者払い制度」を活用するという選択肢もあります。
休業補償はいつまでもらえる?
休業補償は基本的に、ケガの完治日または症状固定日までもらうことができます。
症状固定とは、症状が残っているものの、これ以上治療を続けてもその効果が期待できなくなったと医師から診断された状態をいいます。
ケガの完治日、または症状固定日までの間、「療養のために働けず賃金をもらっていない」という要件を満たしていれば、途中で支払いがストップされることはありません。
ただし、治療開始から1年6ヶ月経過してもケガが治らず、かつ労基署により傷病等級1~3級に当たると認定された場合は、傷病年金の支払いに切り替えられます。一方、1~3級に当たらない場合はそのまま休業補償が支払われます。
交通事故の休業補償と休業損害の違い
休業補償に似ているワードとして、休業損害というものがあります。
いずれも交通事故によるケガで生じた収入減に対する補償ですが、補償金を支払う機関が異なります。加害者側の自動車保険から支払われる補償を「休業損害」、被害者側の労災保険から支払われる補償を「休業補償」といいます。
以下にそれぞれの特徴をまとめましたので、ご確認ください。
休業補償 | 休業損害 | |
---|---|---|
請求先 | 勤務先が加入する労災保険 | 加害者が加入する自賠責保険、任意保険 |
対象となる事故 | 仕事中・通勤中に発生した人身事故 | 人身事故 |
貰える金額 | 【1日あたりの支給額】 平均給与の80% (保険給付60%+特別支給金20%) |
【1日あたりの支給額】 原則:6100円 例外:6100円を超えることを証明できれば、1万9000円を限度とした実際の収入額 (自賠責保険に請求する場合) |
もらえる上限額 | なし | 休業損害や治療費、入通院慰謝料など、傷害に関する損害すべて含めて120万円まで(自賠責保険に請求する場合) |
過失割合の影響 | 受けない | 過失相殺により減額される(被害者に重過失がある場合) |
有給休暇の取り扱い | 補償されない | 補償される |
待機期間 | 休業3日間(休業4日目から支給される) | なし(休業初日から支給される) |
いつ貰えるか | 申請から約1ヶ月後 | 申請から約1~2週間後 |
貰える期間 | ケガの完治日または症状固定日まで | ケガの完治日または症状固定日まで |
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
休業補償と休業損害はどちらを請求する?
仕事中・通勤中の事故によるケガで仕事を休んだ場合は、労災の休業補償と自賠責などの休業損害の両方を請求するべきでしょう。両方に請求すれば、被害者がより大きな補償を受けられるからです。
例えば、労災保険から休業補償として平均給与の60%を受け取った上で、残りの40%を休業損害として、加害者側の保険会社に請求すれば、給与の100%の補償が受けられます。
なお、労災保険からは休業特別支給金として平均給与の20%も支払われますが、休業特別支給金は労働者へのお見舞金として支払われるものであるため、休業損害を請求していたとしても、請求が可能です。つまり、2つの保険に請求すれば、最大120%の補償を受けることができます。
さらに、両方の保険に請求すれば、休業補償では受けられない休業3日分の補償が休業損害でカバーできる、被害者に過失がある場合でも、休業補償では過失相殺による減額を受けないなど、多くのメリットを受けられます。
交通事故の休業補償の特徴
労災保険から支払われる休業補償には、いくつか特徴があります。休業補償を請求する際の前提知識として、これらの特徴についてあらかじめ把握しておくのが望ましいといえます。以下で詳しく見ていきましょう。
待機期間がある
休業損害には待機期間がないため、休業1日目から請求することが可能です。
一方、休業補償は「賃金を受けない日の4日目」から支給されるものです。そのため、最初の休業3日間は待機期間として休業補償を受け取ることができません。
ただし、通勤災害ではなく業務災害の場合は、待機期間3日間について勤務先へ休業補償を請求することができます。
支払いに過失割合の影響・上限はない
過失相殺とは、自分にも事故を起こした責任がある場合には、その過失分だけ減額されることをいいます。
故意に起こした事故でない限りは、基本的に休業補償として給与の80%の補償をすべて受けることが可能です。また、支払い上限額もないため、被害者の収入に応じた補償を受けられます。
一方、休業損害には過失相殺があるため、被害者にも過失がある場合は、過失分だけ減額されてしまいます。また、加害者側の自賠責保険から支払われる分については、休業損害や治療費、入通院慰謝料などケガに関する賠償金について120万円の上限額があります。
自営業者や専業主婦(夫)は対象とならない
労災保険による休業補償を受けられるのは、会社員やアルバイト、パートなど、原則雇用されている人に限定されます。そのため、基本的に会社に雇用されていない自営業者や専業主婦(夫)は対象となりません。
また、経営者や会社役員などについては、使用者であって労働者とはいえないため、原則として休業補償を受けられません。ただし、中小企業の事業主や一人親方、特定作業従事者で労災保険に特別加入している場合は、休業補償を請求することが可能です。
一方、休業損害は会社に雇用される人以外にも、自営業者や主婦、事故に遭わなければ働いていた可能性の高い無職者なども対象となります。
産休・育休は給与が支給されている場合は対象外
産休や育休中については、会社から給与の支払いを受けていない場合に限り、休業補償の対象となります。待機期間は通常と同じく3日間で、休業4日目から支払いを受けることが可能です。
また、産休や育休中に会社から給与が支払われている場合は、基本的に休業損害についても補償の対象外となります。休業補償も休業損害も、交通事故がなければ本来得られたはずの収入に対する補償であるため、給与の支払いがないケースに限定されます。
有給休暇を取得した日は対象外
有給休暇を取得した日は、休業補償の支給対象外となります。
そもそも休業補償は、仕事中・通勤中の事故が原因で働くことができず、給与をもらえなかった日を対象に支払われるものであるからです。有給休暇を取得した場合は、給与を受け取ることができるため、休業補償は支払われません。
一方、休業損害については、有給休暇を取得して休んだ日でも請求することが可能です。
これは、交通事故による療養のために有給休暇を取得した場合は、有給休暇を意に反して使わざるをえなかったという経済的損害が発生したとみなされるからです。
所定休日は要件を満たせば対象となる
所定休日とは、会社が定めた休日のことをいいます。昨今では週休2日制としている会社が多いため、土日が所定休日となることが一般的です。
休業補償は、仕事中または通勤中の事故により働くことができず、給料をもらえなかった期間のすべての日が支給対象日になります。つまり、土日など会社の所定休日の分も、給与をもらっていないならば、支払われます。
例えば、普段は週3日しか働いていない方であっても、仕事中の事故によるケガの治療のために、11月1日から11月25日まで会社を休んだ場合は、4日目から25日目までの22日分の休業補償が支払われることになります。
交通事故における休業補償の計算方法
交通事故における休業補償は、以下の計算式で算出します
休業補償=給付基礎日額の60%×対象日数
- 給付基礎日額
事故日または診断日前3ヶ月間の給与合計額÷3ヶ月の総日数で算出します。つまり、平均賃金に相当する額となります。ただし、この給与合計額には、賞与など臨時で支払われたものは含みません。
- 対象日数
休業4日目から治療終了日または症状固定日までの日数を指します。
では、以下の例を使って、実際に休業補償を算出してみましょう。
(例)会社員Xさん、事故発生日が11月、事故前3ヶ月間の給与合計120万円
8月は31日間、9月は30日間、10月は31日間ですので、総日数は92日となります。よって、会社員Xさんの給付基礎日額は、120万円÷92日≒1万3043円となります。
休業4日目以降について、労災保険から支払われる1日あたりの支給額を計算すると、
休業補償 (1万3043円×0.6)≒7826円
特別支給金 (1万3043円×0.2)≒2609円
7826円+2609円=1万0435円となります。
休業補償の請求方法
労災の休業補償は、被害者が勤務している会社を通じて請求することが通例です。
会社を管轄する労働基準監督署に所定の請求書を提出して申請すると、労基署により審査がなされ、労災として認定されると休業補償を受けとることが可能となります。
休業補償の請求から受け取りまでの流れは、主に以下のとおりです。
- 被害者が勤務先を経由して休業給付請求書を労働基準監督署に提出する
- 労働基準監督署が調査する
- 労基署から支給・不支給の決定通知ハガキが届く
- 厚生労働省より指定口座に休業補償と特別給付金が振り込まれる
請求書を受理してから支給決定までの期間は1ヶ月程度ですが、それ以上かかる場合もあります。1ヶ月ごとなど期間を区切って請求することも、休業したすべての期間分をまとめて請求することもいずれも可能です。
請求の時効に注意
休業補償には、賃金を受けない日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年という時効が定められています。
つまり、仕事中・通勤中の事故による療養のため働くことができずに、給与を受け取れなかった日の翌日から2年経つごとに、順番にそれぞれの請求権が時効にかかり、休業補償をもらえなくなってしまうためご注意ください。休業補償を請求するにあたっては時効に注意して、できる限り早く申請するよう努めるべきでしょう。
早く受け取りたい場合は受任者払い制度を利用する
受任者払い制度とは、会社が社員に対して休業補償に相当するお金を立て替え払いし、後で労災保険から休業補償を会社に直接支払ってもらう制度をいいます。
休業補償は、本来は社員に直接支給されるものですが、本制度を活用すれば、社員は休業補償の支給決定までに早くお金をもらうことができるため、社員の生活を保護することができます。
受任者払い制度を利用する場合は、社員から休業補償の受け取りを会社へ委任する旨の「委任状」を作成してもらい、休業給付支給請求書とセットで、労働基準監督署に提出しなければなりません。
休業補償の請求が認められなかった場合の対処法
休業補償の請求が認められず、結果に不満がある場合には、都道府県労働局に審査請求を行えば、審査をやり直してもらうことが可能です。ただし、休業補償の不支給が決定された日の翌日から3ヶ月以内に請求する必要があります。審査請求で審査官の判断をくつがえすには、新たな証拠や医師による診断書、意見書、新たに行った検査結果などが求められます。
審査請求の結果についても納得がいかない場合は、審査決定後2ヶ月以内に労働保険審査会に対して再審査請求を行うことが可能です。
審査請求や再審査請求を行っても、結果がくつがえらない場合は、国を相手に行政訴訟を起こすという選択肢もあります。
勤務中・通勤中の交通事故の休業補償・休業損害請求は弁護士にご相談ください
勤務中・通勤中の事故が原因で働けなかった場合は、その収入の減少を休業補償として請求することができます。
ただし、労災保険への休業補償の請求は書式が複雑であるため、会社の担当者自身、理解が不十分なケースが少なくありません。このような場合は、被害者主導で手続きを進める必要があり、手間や負担がかかります。また、休業損害についても、本来の給与水準ではなく、最低限の自賠責基準になっている可能性もあり、増額交渉などが必要となる場合もあります。
交通事故に精通する弁護士に任せれば、事故の損害内容を把握したうえで、休業補償と休業損害、いずれも適切な補償を受けられるようサポートすることが可能です。
休業補償や休業損害の請求についてお悩みの方は、ぜひ弁護士法人ALGまでご相談下さい。
親権とは、未成年の子供を監護・養育し、子供の財産を管理する親の権限・義務をいいます。
現時点では、離婚する際には、父親と母親のどちらを子の親権者とするかを決めなければなりませんが、一般的に、父親が親権に指定される可能性は低く、全体の1割程度であるのが実状です。
しかし、父親として、子のためにもご自身が親権者になった方がよいと考え、親権を取得することを求める方もおられることでしょう。この記事では、父親が親権獲得するために必要な情報や、役に立つ情報について解説します。
父親が親権を取りにくい理由
親権者は、父親と母親のいずれを親権者にすれば、子が健全に成長できるか、子にとってふさわしいかという視点で決められます。その際には、子を監護してきた実績やこれまでの監護状況、居住環境、健康状態、監護に対する意欲、祖父母などの監護補助者の支援の状況、子の意思、子の年齢等々が考慮されます。
父親が親権を取りにくい理由としては、以下のような事情があります。
フルタイムで働いているため子供の世話が難しい
父親と母親のどちらが親権者として適格かを判断する際には、従前の監護実績・状況が重要な要素となります。
かつては、父親が働き、母親は専業主婦ということが多かったのに対し、近年では、女性の社会進出が進んでいることに伴い、共働き家庭が増えています。また、子育てに対する父母の役割分担意識にも変化してきました。とはいえ、今もなお、監護養育の実情からすると、父親がフルタイムで働き、母親が主に子を監護していることが多い状況です。
また、子が乳幼児の場合には、母親の方が、心理的、身体的な結びつきが強いように考えられています。
そのため、母親の監護養育に大きな問題点がなければ、母親が親権者として指定されることが多いというのが実情であり、父親が親権を取りにくい理由の一つとなっています。
子供への負担を考えると母親優先になりがち
特に乳幼児については、特段の事情がない限り、母の監護養育に委ねることが子の福祉に合致するという考え方があります。乳幼児には、母親の存在が情緒的成熟のために不可欠であって、スキンシップを含めて母親の愛情が必要であるということがその根拠にあります。
しかし、先述のとおり、現在の社会においては、監護養育の在り方も多様化し、父親が母親と同様の役割を担っていることも少なくありません。
父親が親権を獲得するためのポイント
これまでの育児に対する姿勢
親権者について判断する際には、どちらが子の監護養育を主に行っていたのかが重視されています。単に生物学上母親だというだけで母親が親権者として有利なわけではありません。
そのため、たとえば、母親が子らの監護養育を実際にはあまりしていない一方、父親は仕事をしながらも子らの監護養育をしているような状況があれば、父親が親権を取得できる可能性もあります。
離婚後、子育てに十分な時間が取れること
親権者を父母のいずれとするかの判断においては、子育てのために十分な時間が取れるかどうかが重視されますが、他方で、経済力の大きさはあまり重視されない傾向にあります。
たとえば、父が子のために長時間勤務して生活費を稼いだとしても、直接子どもと触れ合える時間がなければ、親権者として適格であるとは判断してもらえません。父親の方が母親より経済力があったとしても、その場合に母親は養育費の支払いを受けることができるため、経済力がより大きいことが有利になることにはならないのです。
そこで、離婚後、たとえば、出勤時間を調整して子どもの監護養育のための時間を確保できる、不在時は祖父母に子の面倒をみてもらえる体制を整えられる等といったように、父親側で子育てに十分な時間が取れるということも非常に重要なポイントになります。
子供の生活環境を維持できるか
子の生活環境が変化すると、子にとっては、幼稚園や学校との関係、近所の友人関係等といった社会的な繋がりが断絶されたり、疎遠となったりする場合があります。そのような場合には、新しい生活環境にうまく適用できるかどうかという不安も生じますし、子に精神的負担を与えることになり得ます。
そのため、子の生活環境を維持できるかという点も重要なポイントになります。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
父親が親権争いで有利になるケース
父親が親権の争いで有利になるケースを紹介します。
母親が育児放棄をしている
母親が育児放棄をして子の適切な監護ができていない場合、父親が子の監護を行っているのであれば、父親が親権の争いで有利になるといえます。
なお、このような場合、裁判所では、そもそも育児放棄と評価できるかが争点になることが多いため、母親が育児放棄している証拠をとっておいくことが重要になります。
母親が子供を虐待している
母親が子を虐待している場合、父親にとって親権の争いで有利な事情となり得ます。
母親が子を虐待している場合には、警察や児童相談所へ相談すべきケースもありますので、父親として適切な対応をすることも必要です。こうした行政機関に相談した場合には、その相談記録等が、母親が子を虐待していたことを立証する資料ともなります。
また、子に対する虐待については、そもそも子供を虐待していたと評価できるかが争点となることが多いため、上記行政機関への相談記録や虐待しているところを撮影した写真や動画等資料を収集しておくことも重要です。
子供が父親と暮らすことを望んでいる
子の親権者を定める目的は、子の利益及び福祉にありますから、子が自らの意思を表明できる場合には、当然その意思を尊重すべきこととなります。
そのため、子が父親と暮らすことを望んでいるのであれば、父親が親権を獲得するために有利になるといえます。
なお、裁判所は、子の親権者を指定するにあたり、子の年齢が15歳以上の場合には、その子の陳述を聴取しなければならない決まりとなっています。
また、子の年齢が15歳未満でも、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を尊重して判断するように求められています。
ただし、子が他方の親に気を遣ってしまう場合も少なくないため、子の真意は、発言だけでなく、態度や行動等を総合的に観察して検討されています。
妻の不貞は父親の親権獲得に有利にはならない
妻が不貞をしたこと自体は、父親の親権者獲得に有利には働きません。妻が不貞をしたからといって、子の監護養育能力が否定されるわけではないからです。不貞の問題は、慰謝料等で解決すべき問題であり、親権者は、あくまでも子の利益及び福祉の観点から判断されることになります。
もっとも、母親が不貞相手と過ごすために長時間家を空け、子の監護をしていない等、不貞行為が子の監護に悪影響を及ぼしているような場合には、そのことが母親側の不利な事情となることがあります。
父親が親権を獲得した場合、母親に養育費を請求することは可能か?
離婚をしても、親は子に対する扶養義務を負います。そのため、母親が親権を獲得した場合には、父親が母親に対して子の養育費を支払う義務を負いますし、逆に父親が親権を獲得した場合には、父親から母親に養育費を請求することが可能です。
親権を得られなくても子供には会える
仮に父親が親権を得ることができなかったとしても、子に会うことはできます。
夫婦としては離婚や別居をすることになったとしても、子どもにとっては、どちらも、かけがえのない父であり母であることに変わりはありません。子の利益及び福祉にとって双方の親との交流を持つことは非常に重要であり、子は、両親双方と交流することにより人格的成長を遂げると考えられています。
子供の親権を父親が勝ち取れた事例
弁護士法人ALG横浜法律事務所にも、父親から親権についての相談は数多くあり、子の親権を父親が勝ち取れた事例があります。
ケースとしては、子が15歳となっており、まずは子の意思が尊重されるケースでした。ただし、母親に子の監護を継続したいとの思いが非常に強かったことに加え、上の子については、17歳で母親が親権を取ることを希望していたことから、裁判官としても判断に迷われていました。これについては、下の子に対する母の監護に極めて不適切な事情が多々あり、離婚前から当該子が自身の希望により父親の下で生活し、父親に子を監護してきた実績があったこと、離婚後も子らが双方の親について自由に面会することを認めること等により、最終的に父親側で当該子の親権を獲得することができました。
父親の親権に関するQ&A
乳児の親権を父親が取るのは難しいでしょうか?
通常、子供が乳児の場合には、父親が親権を取るのは極めて困難といえます。 子が乳飲み子のうちは母親の存在が必要不可欠である上、情緒的成熟のためにも、母親の愛情が必要であると考えられているからです。 もっとも、母親が育児放棄や虐待をしているなど、親権者として不適格だと判断される他の事情があれば、父親が親権を獲得できる可能性があります。
未婚の父親が親権を取ることは可能ですか?
未婚で生まれた子(非嫡出子)については、母親が親権者となり、父親が認知しても、父親に親権が発生することはなく、母親の単独親権の状態が続きます。 母親との協議で父親を親権者とすることはできますが、合意ができなかった場合には、家庭裁判所に親権者指定あるいは変更の調停・審判を申し立てる必要があります。 ただし、認知前に母親が子を監護養育していたのであれば、母親が育児放棄や虐待をしているなど親権者として不適格な事情がない限り、実際に父親が親権を獲得するのは困難だと考えられます。
元妻が育児をネグレクトしています。父親が親権を取り返すことはできますか?
親権者を変更するためには、裁判所で親権者変更の調停や審判を申し立てる必要があります。 親権者の変更により父親が親権を獲得するのは一般的には困難といえますが、母親が育児放棄、虐待をしているような場合には、そうした事実を裏付ける証拠を提出することにより、親権を取り返すことも可能です。
妻は収入が少なく、子供が苦労するのが目に見えています。経済面は父親の親権獲得に有利になりますか?
経済力も親権者の考慮要素の1つにはなりますが、経済的な問題は、養育費や母子手当等の公的な援助で一定程度解決することができます。そのため、むしろ、従前主に子を監護養育していたのが父親と母親どちらなのかといったこと等の方が重視されるといえます。
父親の親権争いは一人で悩まず弁護士に相談しましょう
これまでご説明したように、父親が親権を獲得するハードルが高いのは事実ですが、必要なポイントを押さえることで、親権を獲得できる可能性はあります。
父親の親権争いは、一人で悩まず離婚問題に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。
夫婦が離婚する場合、子の親権者を決めなければなりません。離婚調停の際、親権について争いになることが多々あります。そこで、離婚調停において、親権を判断するうえでのポイントとなる事情はどのようなものであるか、調停の中ではどのように親権者の判断をしていくのかなどについて、この記事の中で解説していきます。
離婚調停で親権者を判断するポイント
離婚調停において、父親と母親のいずれが親権者として的確であるかを判断する際、どのような事情がポイントとなって考慮されているかについて解説していきます。
子供への愛情
親権者の判断において、子どもへの愛情の深さは当然重要な要素となります。しかし、愛情の深さ自体を客観的な評価することは難しいことから、子どもへの関わりの程度や内容から子供への愛情について検討することになります。
そのため、愛情をもって接していても、仕事などで子どもと接する時間が短くなってしまう当事者については親権の判断で不利になる傾向があります。
今までの監護実績
親権者の判断において、非常に重要な要素となってくるのが今までの監護実績です。監護実績とは、子どもの日常生活に関する世話や保育園や学校への送り迎え、予防接種等の各種の手続きへの対応など、子どもの生活に必要な事柄にどのくらい関わってきたかという点になります。
また、子どもと遊んでいた時間など、子どもと一緒に過ごしていた時間も監護実績の一部として評価されますが、実績としての重要性は子どもの生活に必要な事柄への関わりだといえます。
離婚後の養育体制
親権者の判断において、監護実績と同様に重要性の高い要素が離婚後の養育費の体制となります。離婚後にも子どもが安定して生活できる環境を準備することができなければ、子どもへの愛情があっても、親権を取ることは難しくなってしまいます。
養育体制は、当事者や子供の生活状況、監護補助者の有無、家計のバランス、監護場所となる自宅の周囲の環境や間取りなども含めて総合的に評価されます。
親族の協力の有無
離婚後に子どもを監護していくにあたって、協力をしてくれる監護補助者がいるかどうかという点も、親権者の判断要素になります。
監護補助者による監護補助を見込むことができれば、子どもの急な体調不良や親権者が急な残業などの事態が生じても、子どもが安定して生活できる環境が整いやすいといえることから、両親や兄弟姉妹などが監護補助を申し出てくれることは親権の判断では有利になるといえます。
離婚後の経済状況
監護実績や養育体制と比較すると、重要性は高くはないといえますが、離婚後の経済状況も親権の判断要素となっています。
もっとも、当事者の収入の多寡のみで評価されるわけではなく、親権者が受領見込みの養育費や国や自治体による手当なども含めて検討することになりますので、親権争いの時点で、専業主婦のため収入がないからといって必ずしも不利になるというわけではありません。
子供の年齢、意思
子どもがある程度大きくなった後の離婚案件においては、親権の判断において、子どもの意思が尊重される傾向が増えていきます。監護実績や養育体制で優っていたとしても、子どもが他方配偶者との生活を希望する場合には、親権者となれないこともあり得ます。
目安としては、子供が15歳に達していれば、どちらに親権者になるべきかについて子どもの意思が基本的に尊重されるといえ、子どもが10歳以降から徐々に子どもの意思の尊重される度合いが高まっていくといえます。
親の健康状態
親の健康状態についても、子どもの生活環境の安定の観点から、親権者の判断要素の1つとなっています。
しかし、考慮要素としての重要性はそこまで高くはないと考えられており、持病や障害があるからといって親権者になれないわけではなく、精神疾患のために精神状態が不安定となり、子どもに暴言を言ってしまうなどの子供への悪影響の有無がポイントとなります。
親権者を決める際の離婚調停の流れ
親権争いのある離婚調停については、当事者間の話し合いだけでは解決困難ですので、家庭裁判所の調査官による監護実績の聞き取り、自宅訪問による養育体制の調査、保育園や学校など関係各所への事情確認、子どもへの心情調査などの調査官調査が実施されることになります。
調査官調査の結果をまとめた調査官調査報告書を踏まえて、調停での協議を進めていくことになります。
離婚調停の申し立て
離婚調停の申し立てをする際には、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に、戸籍謄本などの必要書類と一緒に申立書を提出することになります。また、その際、夫婦の戸籍謄本などの必要書類も一緒に提出します。また、調停を申し立てるためには、1200円分の収入印紙や裁判所との連絡用に郵便切手などの費用の支払いも必要となります。
家庭裁判所調査官による調査
親権を争う離婚調停では、家庭裁判所調査官は非常に重要な存在といえます。調査官は、当事者はもちろん、子どもや学校等から事情を聴き取り、子どものこれまでの監護状況や今後の養育体制などについて検討し、どちらを親権者とすることが子どもの安定した生活に資するかを判断することになります。
調査官調査の結果は、基本的に裁判官も尊重することになりますので、調査官に親権者として適切と評価してもらうことが親権を争ううえで極めて重要となります。
離婚調停で親権者が決まらず不成立になった場合
離婚調停で話し合いを繰り返しても親権者について合意できない場合には、調停での解決をすることができず、最終的に調停は不成立になります。その場合、当事者のいずれかが離婚訴訟を提起することにより、裁判官に親権者を判断してもらうこととなります。
もっとも、裁判においても、調停段階で実施した調査官調査の結果は基本的に尊重されることになりますので、調停後に子どもの意向が大きく変わるなどの事情変更がない限りは、裁判官の判断は調査官調査と合致することが多いといえます。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
離婚調停で親権を獲得するためのポイント
調停委員を味方につける
調停委員には、調停に関して判断権限があるわけではなく、法律や子どもの専門家というわけでもないため、調停委員を味方につけたからと言って親権者となれるわけではありません。親権者となるうえで重要なのは調査官にどのように評価されるかとなります。
それでも、調停は調停委員を介して相手方と話し合いをする手続きではありますので、調停委員が味方になってくれるのであれば、その方が好ましいとはいえます。
自分が親権者として適していることを主張する
離婚調停は法的手続きの1つであり、親権者をどちらにするかは法的な判断ですので、子どもへの愛情を訴えるだけの抽象的な主張にとどまったり、相手方の非難ばかりしたりしていても、親権者として適格性の主張として効果的ではありません。
自分が親権者として適していると主張する際には、監護実績や養育体制について、裏付けとなる証拠を用意するとともに、裏付け証拠のない部分についてもなるべく具体的なエピソードを主張することで、子どもにとって安心な生活環境を整備できることを調査官にアピールしていく必要があります。
調査官調査に協力する
親権者の判断において、家庭裁判所調査官による調査が決定的に重要な位置づけとなっていることから、調査官調査にきちんと協力して臨むことが必要となります。調査官調査は、基本的に平日の日中に行われますので、必要に応じて、仕事の調整などをしなければなりませんが、調査官調査の重要性からすれば、積極的に調査に協力していくべきといえます。
また、単に調査官調査に対応するだけではなく、調査に際に相手方を非難し続けて、調査の趣旨を外れてしまうようなことは避ける必要性があり、調査官がどのような事項を調査しているのかも理解しながら調査に臨むことも重要です。
離婚調停で父親が親権を獲得した解決事例
妻側が精神的に不安定になりがちで、夫や子どもに対して暴言を繰り返したことから、夫が子どもを連れて別居をした事案において、夫側の同居中の監護実績、離婚後の養育体制の充実、妻側が監護をすることになった場合の懸念点を主張していくことによって、調査官調査において、夫が親権者として適格だという評価を得ることができた結果、最終的には子どもと妻との面会交流の実施条件を取り決めたうえで、夫側が親権者とした離婚が成立しました。
親権と離婚調停に関するQ&A
共同親権が導入されたら調停無しで親権を獲得できますか?
法改正の内容は、夫婦が離婚するときに、協議によって単独親権か共同親権かを選択することができ、協議がまとまらなければ家庭裁判所が判断するという枠組みになっていますので、共同親権が導入されれば、調停なしで親権を取得できるというわけではありません。むしろ、共同親権も選択できるという現状にはない選択肢が増える分、争点が増えることになるので、当事者の協議だけでは解決できずに調停を行うことになる案件は増えるのではないかと考えられます。
離婚調停中に相手方が子供を連れ去った場合、親権への影響はありますか?
別居前に主たる監護を担っていた当事者が子連れで別居をすることについては、裁判所は基本的にマイナス要素として扱っていませんが、別居の態様や別居時の当時者間の協議状況によっては不利になる可能性があります。離婚調停で親権が争点になっている状況で、他方配偶者の同意なく無断で子連れ別居をした場合には不利な要素となる可能性は相当程度あるといえます。特に、別居後に他方配偶者と子どもの面会交流を拒否する場合には、不利になる可能性が高まります。
離婚調停中に夫婦のどちらかが死亡してしまった場合、自動的にもう一方が親権者となりますか?
離婚調停で親権を協議している最中に、一方の配偶者が事故や病気など死亡してしまった場合には、他方の配偶者が自動的に親権者となります。
離婚調停で決めた親権者を変更することはできますか?
必ず家庭裁判所での手続きを行う必要がありますが、親権者変更調停で当事者が合意した場合、親権者変更審判で、裁判所が、子のために必要と判断した場合には、離婚調停で決めた親権者を変更することもできます。ただし、親権者を事後的に変更するハードルは極めて高いことから、早く離婚したいからといって、安易に相手方に親権を譲ってしまうことは避けるべきです。
妊娠中に離婚調停を行った場合の親権はどうなりますか?
妊娠中に離婚調停を行っており、離婚調停が成立した時点でもまだ妊娠中のときには、離婚が成立した後に生まれた子どもの親権者は母親になります。他方で、妊娠中に離婚調停を行っており、調停成立前に子ども生まれた場合には、当然に母親が親権者になるわけではなく、親権者をどちらにするのか話し合いことになるのはほかの案件と変わりません。もっとも、出生直後の乳児にとっては、母親の存在の必要性の方が高いと考えざるを得ませんので、母親にネグレクトや虐待があるなどの例外を除くと、父親が親権者となることはほぼ困難だと見込まれます。
離婚調停で親権を獲得したい方は、弁護士に依頼してみませんか?
離婚事案において、親権争いがある場合とない場合を比較すると、離婚までに道のりは何倍も大変になるといえます。
親権争いは子どもを親同士で取り合う側面があるために、どうしても感情的な対立になる傾向がありますが、親権も法的な判断ですので、監護実績や養育体制などについて、証拠に基づいた主張をしていくことが重要です。
親権獲得を目指すうえでは、親権争いのある離婚案件に数多く担当している弁護士に相談をして、ひつような証拠の収集等を進めていくのが有用です。
親がほとんど財産を保有せずに亡くなり、高額な借金をしていたケース等では、相続放棄したいと考える方が多いでしょう。
相続放棄すれば、借金を相続せずに済むため、自分の財産から返済する必要はありません。ただし、相続放棄には期限が設けられているため、期限内に手続きを行わなければなりません。
また、相続放棄できなくなってしまうような言動には注意しなければなりませんし、親族等への影響に配慮する必要もあります。
この記事では、借金の相続放棄について、相続放棄できないケースや注意点等も含めて解説します。
親の借金は相続放棄すれば払う必要がなくなる?
親が高額な借金を抱えている場合、相続放棄すれば、その借金を返済する義務を負いません。ただし、相続放棄は必ずできるわけではありません。
相続放棄できなくなるケースについて、次項で解説します。
相続放棄できないケース
相続放棄ができなくなるのは、主に以下のようなケースです。
- 熟慮期間のうちに相続放棄を申し立てなかった
相続放棄の期限は、自己のために相続が開始したことを知ってから3ヶ月です。この期間を熟慮期間といいます。熟慮期間を経過してしまうと、基本的に相続放棄は認められなくなります。
- 法定単純承認になる言動をしてしまった
相続財産を処分する等、単純承認したとみなされる言動をすると相続放棄できなくなります。例えば、被相続人の財産を消費したり、被相続人の財産から借金を返済したりすると単純承認が成立します。
- 裁判所から送付された相続放棄照会書に回答しなかった
相続放棄すると、裁判所から相続放棄照会書が送付されます。照会書が届いたら、相続放棄回答書に必要事項を記入して返送しなければなりません。返送しないと、相続放棄が却下されるおそれがあります。
相続放棄したら借金はどうなる?誰が払うの?
相続放棄すると、最初から相続人ではなかったものとして扱われるため、次順位の相続人が借金も含めて相続することになります。すると、次順位の相続人に対して、被相続人の債権者による取り立てが行われるおそれがあります。
次順位の相続人も相続放棄すれば、借金を返済する必要はなくなります。しかし、次順位の相続人が入院している等、自由に動けない状況であれば迷惑をかけてしまいます。
また、次順位の相続人が「借金を押し付けられた」等の感情を抱いてしまい、親族関係が悪化するおそれもあります。
借金がある場合の相続放棄によるトラブルを防ぐための注意点
親の借金が原因で相続放棄する場合、次順位の相続人を含めた親族等に、なるべくその旨を伝えるようにしましょう。
そして、自分の相続放棄が認められたときに連絡して、次順位の相続人にも、すぐに相続放棄等の対応を行ってもらいましょう。
なお、次順位の相続人が自由に動けないケース等では、熟慮期間内に限定承認することによって、相続順位が移ることを防げます。ただし、限定承認には大変な手間と費用がかかるため、専門的な知識のない方には難しい方法です。この方法を検討する場合には、事前に弁護士に相談しましょう。
相続人全員が相続放棄したら借金はどうなる?
次順位の相続人も含めて、相続人全員が相続放棄すると、債権者等の申立てによって相続財産清算人が選任されます。相続財産清算人は、債権者等からの申し出を求める公告を行って借金等を清算します。
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相続放棄には期限がある
相続放棄は、自己のために相続が開始されたことを知ってから3ヶ月以内に行わなければなりません。この期限に遅れると、単純承認したものとして扱われるので、基本的に相続放棄はできなくなります。
借金があることを知らなかった…期限後には相続放棄できない?
熟慮期間を経過してしまうと、被相続人が借金をしていたことに気づいたとしても、基本的には相続放棄できなくなります。しかし、被相続人に借金や相続財産がまったくないと信じた相当な理由があった場合には、例外的に相続放棄できる可能性があります。
これは、あくまでも例外的な扱いであり、なるべく期限内に相続放棄するべきなのは間違いありません。
また、仮に例外的な扱いが認められたとしても、熟慮期間の開始が「借金があることを知ってから3ヶ月」になるため、時間的な余裕はまったくありません。すぐに弁護士に相談する必要があります。
熟慮期間経過後に相続放棄できた事例
本件は、被相続人が1000万円以上の税金を滞納していたため、熟慮期間の経過後に相続放棄した事例です。相続人は被相続人と疎遠で、亡くなったことを知ったのですら死亡の半年後でした。
私たちは、熟慮期間の経過後に相続放棄が認められた事例を研究し、相続人からの聞き取りも行いました。そして、相続人は被相続人と疎遠で、役所から滞納した税金の存在を知らされるまで把握することはできなかったことから、相続放棄を受理するべき事情がある旨の書類を作成し、裁判所に申し立てました。結果として、相続放棄は受理されました。
相続放棄後に借金の取り立てを受けた場合の対処法
相続放棄した後で、被相続人の債権者から請求がきたら、相続放棄したことを説明すれば返済する必要はありません。もしも、相続放棄した証拠を見せるように言われたら、相続放棄が認められると自動的に送られてくる「相続放棄受理通知書」を見せましょう。もしも、書類の交付を求められた場合には、家庭裁判所で「相続放棄受理証明書」を発行してもらって渡しましょう。
なお、相続放棄の手続きを行う前に、被相続人の債権者から請求を受けるケースがあります。このようなケースでは、相続放棄する旨を伝えて返済は拒否しましょう。
もしも、被相続人の財産から返済してしまうと、単純承認したことになるため相続放棄はできなくなります。
借金の相続放棄に関するQ&A
亡くなった人の借金はどうやって調べたらいいですか?
被相続人が抱えている、借金等のマイナスの財産について調べるための主な方法として、以下のようなものが挙げられます。
●被相続人の自宅等を調べる
被相続人の自宅を探して、引き出しの中や金庫の中、あるいは郵送物に、督促状や契約書のような書類がないかを確認します。
●被相続人の預貯金通帳やパソコン、スマートフォン等を調べる
被相続人の金銭の出し入れ等の記録や、送付されたメール等の記録、インターネット上のギャンブル等の記録がないかを確認します。
●信用情報機関に問い合わせる
「全国銀行個人信用情報センター(KSC)」「株式会社シー・アイ・シー(CIC)」「株式会社シー・アイ・シー(CIC)」に問い合わせることによって、金融機関等からの借り入れが判明する可能性があります。
実家の住宅ローンが残っていることが判明しました。相続放棄したらどうなりますか?
実家の住宅ローンが残っている状態で被相続人が亡くなった場合であっても、被相続人が団体信用生命保険に加入していれば、生命保険金によってローンの残額が支払われます。その場合、住宅ローンの支払いを免れるために相続放棄する必要はありません。 しかし、病歴等の原因により、被相続人が保険に加入していなかった場合には、住宅ローンも相続の対象となるため、相続放棄するべきケースもあります。 ただし、相続放棄すると、実家等のプラスの財産を相続することもできなくなります。さらに、実家に住んでいた者等が相続放棄すると、実家の保存義務を負うおそれがあるため、壁や塀が崩れないように修繕する等の負担が生じることもあります。 状況によっては、単純承認した方が損失は少なくなるため、事前に弁護士に相談することをおすすめします。
親が借金まみれなのですが、生前に相続放棄できますか?
親が高額な借金を抱えており、絶対に相続したくない場合であっても、生前に相続放棄することは認められていません。そのため、親が亡くなってから、熟慮期間のうちに相続放棄する必要があります。
このような事態を防ぐためには、親が生きているうちに、自己破産や個人再生、任意整理等の手段で借金を清算してもらうことが望ましいでしょう。
借金の相続放棄についてお困りでしたら、弁護士にご相談ください
親が高額な借金を抱えていた場合等では、確実に相続放棄したいことでしょう。相続放棄は自分で行うこともできますが、もしも申立てが認められないと、二度と申し立てられなくなってしまいます。そのため、確実に相続放棄するためには、事前に弁護士に相談しましょう。
また、相続放棄すると取り消せないため、もしも借金を上回る価値のある財産があると、結果的に損をするおそれがあります。そのため、相続財産調査の方法等についてアドバイスを受けるためにも、弁護士に相談することをおすすめします。
交通事故で負った怪我により仕事を休まざるを得ない場合、収入が減ってしまったり、途絶えてしまったりする方もいらっしゃるでしょう。こうした損害は「休業損害」として相手方に請求できます。
しかし、今現在収入が得られていない被害者の方にとっては、治療が終わるまで休業損害の支払いを待っていると、生活が困窮してしまうことが予想されます。
そこで、この記事では、休業損害を先払いしてもらう方法や注意点などについて解説していきます。
目次
休業損害を先払い(内払い)してもらう3つの方法
事故の怪我によって仕事を休む場合、収入が減ってしまうため、休業損害の支払いが遅くなると生活に支障をきたすケースもあります。
そのため、以下の方法で示談に先立って休業損害を受け取ることが可能です。
- 相手方任意保険会社から内払いを受ける
- 自賠責保険に対し被害者請求を行う
- 裁判所の仮払い仮処分を申し立てる
〈休業損害の先払い(内払い)とは?〉
休業損害の先払いとは、相手方と事故で被った損害賠償金に関する示談が成立する前に、休業損害を支払ってもらうことをいいます。
休業損害の先払い請求の方法
休業損害の先払い請求の方法は、主に以下のとおりです。
- 相手方任意保険会社に休業損害の先払いが可能か確認する
- 可能な場合は、必要書類を準備して提出する
- 先払いの内容について、相手方任意保険会社と交渉する
必要書類に関しては、以下で詳しく解説していきますが、被害者の方は主に「休業損害証明書」をきちんと用意することが重要です。
勤務先に休業損害証明書の作成を依頼し、手元に届いた際には不備や不足がないかご自身でもチェックするようにしましょう。また、不備や不足の確認についてご自身だけでは不安が残る場合は、交通事故に詳しい弁護士に確認を依頼することもおすすめします。
休業損害証明書の確認ができたら、他の必要書類と一緒に相手方保険会社に提出し、休業損害の計算内容や先払いの時期、方法を交渉していきます。
任意保険への請求に必要な書類
休業損害の先払いを求めるために、主な必要書類は以下のとおりです。
〈交通事故証明書〉
事故の事実を証明する書類で、事故発生の日時、場所、当事者の氏名などが記載されています。自動車安全運転センターの窓口で発行を申請する方法と、インターネットで申請する方法があります。
〈診断書〉
主治医に発行を依頼しましょう。病院によっては診断書発行の専門窓口があるため注意しましょう。
〈診療報酬明細書〉
一般的には受診した病院の窓口に発行の依頼をします。
〈休業損害証明書〉
相手方保険会社が書式を用意しているので、郵送してもらい、勤務先に作成を依頼しましょう。自営業者や家事従事者は、休業損害証明書や源泉徴収票に代わる書類を準備する必要があります。
〈前年度分の源泉徴収票〉
自営業者は確定申告票の控えや課税証明書、会計書類など、家事従事者は同居家族の収入資料、住民票などの資料の提出を求められる場合があります。
なお、交通事故証明書や診断書、診療報酬明細書については、すでに相手方保険会社が入手していることもあるため、これらの書類を用意する必要があるかを確認しておくと良いでしょう。
先払いの注意点
休業損害の先払い請求をするにあたって、「相手方保険会社が必ず先払いに対応してくれるわけではない」ことに注意しましょう。
治療費などの一括対応は、任意保険会社の対応として広まっているなかで、休業損害の先払いには消極的であり、必要性や相当性について争いになる場合があります。
本来、休業損害を含む損害賠償金は、すべての損害が確定した後に示談交渉が行われます。そのため、相手方保険会社が休業損害の先払いに応じてくれるかは任意であり、強制はできません。
なお、休業損害の先払いを受けた場合は、最終的な損害賠償金を算定する際に、すでに支払われた分として控除されます。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
自賠責保険に対する被害者請求
相手方任意保険会社が休業損害の先払いを拒否する場合は、相手方自賠責保険会社に被害者請求をする方法があります。
被害者請求をすることで、事故発生時から請求時までの損害額が自賠責基準で算出され、休業損害や慰謝料も含めて支払われます。
ただし、自賠責保険の上限額は治療費や慰謝料、休業損害などの傷害部分で上限120万円までとなっています。相手方保険会社が治療費などを一括対応ですでに支払っている場合、それらが差し引かれ、残りの金額で休業損害が支払われることになります。
そのため、休業の期間によっては、自賠責保険の範囲では賄えない可能性があります。
先払い対応をしてもらえない場合の仮払い仮処分について
自賠責保険への先払い請求を行わない場合は、裁判所に仮払い仮処分の申立てを行う方法があります。
〈仮払い仮処分とは?〉
交通事故にあったことが原因で、日常生活を送るために必要な収入の確保が難しくなっていると考えられるときに、裁判所が相手方に向けて損害賠償金の仮の支払いを命じる制度です。
申立てが認められれば、裁判所から相手方に対し損害賠償金の仮払い(先払い)を命じる仮処分命令が出されます。そのため、話し合いが進まず、生活費の確保が難しい場合に非常に有効な手段といえます。
ただし、仮払いを命じる仮処分は、示談交渉や訴訟などで最終的な損害賠償金が確定する前に行う処分であるため、裁判所は仮処分命令を出すかどうかを慎重に判断します。申立てをしたからといって、必ず認められるわけではありません。
休業損害の先払いなどが受けられず悩んでいる方は早めに弁護士にご相談ください
休業損害は先払い請求をすることができます。しかし、相手方保険会社に休業損害の先払いを申し入れたけれど応じてくれない、支払いが途絶えてしまったというトラブルも多く見受けられるのが実情です。
休業損害の先払いについては、私たちにご相談ください。弁護士であれば、どのような方法で先払い請求をするのが良いかアドバイスをしたり、被害者の方の代理人として、相手方保険会社と交渉することが可能です。
私たち弁護士法人ALGは、交通事故に詳しい弁護士が多数在籍しております。休業損害の先払いについても経験豊富な弁護士がおりますので、おひとりで悩まず、まずは一度お問い合わせください。
婚姻している夫婦の間に生まれた子は、その夫婦の法律上の子として扱われます。他方で、婚姻していない男女の間に生まれた子については、当然両親が推定されるわけではありません。
そのため、婚姻していない男女の間に生まれた子については、その子を認知することで法律上の親になることができます。本ページでは、子供の認知について説明します。
子供の認知とは
子の認知とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子について、法律上の父子関係を認めることです。
通常は血縁関係があることを前提に法律上の血縁関係を認めることが多く、母親は出産の事実で親子関係が明らかであることから、父親が認知をすることが多いです。
認知が必要になるケース
法律上の婚姻をしている場合には、その夫婦の間生まれた子はその夫婦の子であると推定されることから、内縁関係の両親の間に生まれた子や不貞関係の両親の間に生まれた子は、認知が必要となります。
子供を認知しないとどうなる?
まず、子の両親を確定することができないため、子の戸籍の両親欄がそろわないことになります。
また、法律上の親には扶養義務があるので、養育費の支払いを求めることができますが、認知をしていなければ、子に対する扶養義務が発生しないため、養育費を請求することができません。
嫡出推定制度について
民法では、子の父親を早期に確定し、子の親子関係の安定させるため、嫡出推定制度を設けています(民法772条)。
これは、婚姻成立日から200日を経過した日より生まれた子、婚姻を解消した日から300日以内に生まれた子は、夫の子であると推定する制度です。
なお、民法改正により、婚姻解消から300日以内に生まれた子であっても、母が元夫以外の男性と再婚し、再婚後に生まれている場合には、現在の夫の子として推定されることになりました。
これにより、父親が認知等を行わずとも、親子関係を確定させることができます。
子供が認知されたときの効果
戸籍に記載される
子を認知した場合には、その子の親であることが確定するため、戸籍に記載されることになります。戸籍には、認知した日、認知した父、子の氏名が記載されることになります。
養育費を請求できる/支払い義務が生じる
子の認知をすると、法律上の親子関係が発生するため、子に対する扶養義務が発生することになります(民法877条1項)。そのため、子の母や子は、父に対して、養育費の支払いを求めることができるようになります。
また、養育費の金額や終期等について合意した場合には、その支払い義務が生じ、その合意内容を強制執行認諾文言付公正証書や養育費調停調書に記すと、未払いになった場合には強制執行等を持つ仕立てることが可能となります。
認知後の養育費はいつから請求できる?過去の分は請求可能?
子の認知をしたら、親子関係が発生することから、すぐにでも養育費の支払いを求めることはできます。
通常、養育費は、明確性や双方の公平の観点から、請求の意思表示をした時点から具体的な養育費の支払い義務が発生すると考えられています。そのため、請求した時点よりも過去の養育費は、支払いを求めることが難しいことが多いです。
子供に相続権が発生する
子を認知すると、親子関係が生じることから、認知をした人の相続権も得ることになります。
例えば、父親が死亡した場合には、両親が婚姻していなかったとしても、認知された子はその父親の相続人となりますし、認知された子が先に死亡した場合で、その子に配偶者も子もいない場合には、父親がその子の相続人となることになります。
父親を親権者に定めることができる
通常は、母親が単独の親権者となることが多いですが、子の認知をした父親も親であることには変わりがないため、その子の親権者になることも可能です。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
子供の認知の種類
子どもを認知するための種類は、大きく分けて、任意認知、強制認知の二種類があります。
任意認知(話し合い)
任意認知は、父親と母親が話し合い、任意で届け出を行う方法です。認知届に所定の事項を記載し、役所に提出することで認知が完了となります。
強制認知(話し合いで拒否された場合)
父親が認知を拒否した場合などには、任意認知をすることができませんので、裁判所に調停もしくは訴訟を申し立てて、強制的に認知をしてもらう方法です。
①家庭裁判所に認知調停を申し立てる
強制認知をするにあたっては、すぐに訴訟提起することはできず、まずは認知調停を申し立てて、協議を行うことが必要です。
調停内で、認知について双方で合意をし、DNA検査を行って、DNA検査を行って親子関係を確認した場合には、合意に代わる審判により判断がされることになります。
②家庭裁判所に認知の訴え(裁判)を提起する
調停内で合意ができなかった場合には、認知訴訟を提起し、裁判所に判断してもらうことになります。
訴訟では、裁判官が客観的な証拠に基づいて判断をすることになるので、証拠を収集することができるかが重要となります。
遺言による認知
仮に、父親が生存中に認知をすることができない場合には、遺言に認知する旨の記載をすることで、認知する方法もあります。なお、認知される子が成人の場合には、その子の承諾も必要となります。
子供の認知はいつまでできるのか?
子どもを認知するにあたっての期間制限がありません。ただし、父親が死亡した場合には、その脂肪から3年以内に認知請求をする必要があります。
子供の認知を取り消すことは可能か?
子どもを一度認知した場合には、子の法律関係が不安定になることを防止するため、その取り消し事由は制限されており、原則取り消すことはできません(民法785条)。
しかし、親子関係がない場合や父親の承諾なく認知届が提出された場合、強迫によって認知がされた場合など、限定的な場合に認知を取り消すことができます。
血縁関係のない子を認知してしまった場合は?
認知をした子との間に親子関係がない場合には、認知の取り消しや無効を求めることができます。
ただし、認知を取り消すためには、当事者間の合意で行うことはできず、家庭裁判所における調停、訴訟などによって判断をもらう必要があります。
子供の認知に関するQ&A
不倫相手との子供を認知したら妻にバレますか?
認知をした事実は、認知をした側(父親)の戸籍に記載されます。そのため、妻が戸籍を取得した場合には、その記載から、妻が、妻以外の女性との間に子がいて、認知していることを知ることになります。
認知された子供はどこで確認ができますか?
関連する質問「認知された子供はどうやって確認するのですか?」
認知された子は、自身の戸籍にその記載がされますので、自身の戸籍で確認することができます。
認知された子供は父親の姓を名乗れますか?
認知をしたとしても、法律上の親子関係ができるだけで、姓は父親の姓を名乗ることはできません。
父親の姓を名乗るためには、養子縁組をする、家庭裁判所によるこの氏の変更許可決定をもらうなどの手続きが必要となります。
認知した子供のDNA鑑定を行った結果、親子の可能性0%でした。支払った養育費を取り返すことは可能でしょうか?
認知をした子との間に親子関係がない場合には、認知を取り消すことが可能です。認知が取り消されたということは、扶養義務がなくなりますので、既に支払った養育費の返還を求めることができる可能性はあります。
子供の認知で不安なことがあれば、お気軽に弁護士にご相談下さい。
子を認知すると、法的に様々な義務が発生することになります。
子の認知をする場合、子の認知を求める場合などが考えられますので、認知をする、認知をしてもらうにあたり、心配なことや不安なことがある場合には、一度ご相談にお越しください。
自分が遺した財産を相続人ではない人に相続してもらいたい場合、養子縁組して相続してもらう方法が考えられます。養子縁組によって法定相続人が増えることによって相続税を抑えられる可能性があるというメリットがあります。
しかし、誰かれ構わずに養子縁組をしてしまうと、相続の時にトラブルとなってしまうこともありますので、注意が必要です。この記事では、養子の法定相続分や、相続における養子縁組の注意点等について解説します。
養子は法定相続人に含まれる?実子との違いは?
養子は法定相続人になります。そして、養子の相続順位や法定相続分は実子と違いがありません。相続順位は、以下のように定められています。
- 常に相続人になる:配偶者
- 第1順位:子
- 第2順位:両親等
- 第3順位:兄弟姉妹
被相続人に配偶者や実子がおらず、養子縁組した養子が1人だけという場合には、基本的には、その養子のみが法定相続人になります。
普通養子縁組
普通養子縁組とは、養子が養親と法律上の親子関係となる一方で、実親との親子関係もなくならずに継続する制度です。
養子は、養親が亡くなったときに、子として法定相続人になることができます。また、実親が亡くなったときにも子として法定相続人になることが可能です。
養子縁組には、養子縁組を役所に届けるだけいい場合や家庭裁判所の許可を要する場合など、手続きは複数ありますが、いずれにしても、養子縁組した事実は戸籍に記載されます。そのため、戸籍を確認すれば、養親や養子であることは分かります。
特別養子縁組
特別養子縁組とは、養親と養子が法律上の親子関係になり、養子になった子と実親との法律上の親子関係を終了する制度です。
そのため、養子は、養親が亡くなったときには法定相続人になることができます。しかし、実親が亡くなっても法定相続人になることはできません。
特別養子縁組は、普通養子縁組と比べて、養親や養子になることについて、年齢等に関する条件が設けられており、家庭裁判所の審判を経る必要性もあります。
養子の戸籍には、養子という文言は記載されませんが、民法817条の2の裁判確定日といった記載があることによって特別養子縁組したことが分かるようになっています。
他方で、住民票には続柄までしか記載されてないため、特別養子縁組をしたことは住民票だけでは分かりません。
養子の法定相続分はどれぐらい?
養子を含めた子の法定相続分は次のとおりです。
- 配偶者がいる場合:相続財産の1/2を子の人数により等分
- 配偶者がいない場合:相続財産のすべてを子の人数により等分
例えば、実子が2人、養子が1人である場合、養子の法定相続分は以下のようになります。
- 配偶者がいる場合:1/6
- 配偶者がいない場合:1/3
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
養子縁組できる人数に上限はある?
養子縁組できる人数に制限は設けられていないため、養子は何人でも法定相続人になることができます。
ただし、養親と養子には互いに扶養義務がある等、相続とは直接的な関係のない点について考慮する必要があります。
相続が発生する前に養親と養子が不仲になってしまい、離縁をするかどうかでトラブルになったり、相続直前に養子縁組をした養子と実子が相続財産の取り分で揉めるおそれもあります。
相続税の基礎控除額の計算において制限がある
相続税の基礎控除とは、相続税の金額を計算するときに用いられる非課税枠のことです。基礎控除額は、次のような式によって計算します。
基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)
この式において、法定相続人の数に加えられる養子の数には、以下のような制限が設けられています。
- 被相続人に実子がいる場合:1人まで
- 被相続人に実子がいない場合:2人まで
ただし、特別養子縁組をした場合や、配偶者の連れ子を養子にした場合には、この制限から除外されます。
このようなルールを把握せずに養子を増やしても、相続税の節税にならないおそれがあるため注意しましょう。
養子がいる場合の相続でのデメリットや注意点
他の親族と遺産の取り分でトラブルになりやすい
養子を増やすと、実子の相続財産の取り分が減ってしまい、トラブルになるおそれがあります。相続税の基礎控除が増えて税負担を抑えることができたとしても、1人あたりの相続財産の金額は減ってしまうリスクが高いことに注意しなければなりません。
また、実子の親である配偶者等の親族も不満を抱くかもしれません。
そして、養親が亡くなる前に養子との関係が悪化してしまうと、養子が協議離縁に応じてくれなければ、簡単には離縁できなくなってしまいます。養子縁組するためには、親子としての関係を継続する覚悟が必要だと言えるでしょう。
養子の子が代襲相続人になれないことがある
養子が養親よりも先に亡くなってしまった場合、養子の子が代襲相続人になれるのは、養子になった後で生まれた場合に限ります。
養子になる前に生まれていた子は、代襲相続人になれません。養子の子にも財産を遺したい場合には、養子の子とも養子縁組する方法や生前贈与する方法、遺言書を作成して遺贈する方法等が考えられます。
孫を養子にすると相続税が2割加算される場合がある
被相続人が孫を養子にすると、その孫が支払う相続税が2割加算されるため注意しましょう。
孫を養子にすると相続税が2割加算されるのは、通常であれば被相続人から子への相続が発生し、それから孫への相続が発生するため、相続税を支払う機会が2回あることが理由です。
孫を養子にすると相続税を支払う機会が1回になるため、税負担を公平に近づけるために2割加算の対象となります。
孫を養子にしても、人数制限の範囲内であれば基礎控除は増えますが、かえって家族全体での相続税の負担が重くなってしまうリスクもあるので注意しましょう。
養子縁組に関する相続トラブルは弁護士にご相談ください
自分の相続のことを考えて、生前に養子縁組する場合や離婚と再婚にとって実子も養子もいる場合など、養子縁組の絡む相続は、相続時にトラブルが発生しやすい部分があります。
自分の世話をしてくれた人養子にしておけば、財産を相続させることは容易になりますが、実子との関係が悪化してしまうこともありますし、養子縁組後に養子と不仲になってしまうこともありえます。
そこで、相続のために養子縁組したい方や、すでに養子縁組したものの状況が変わって不安になってしまった方は弁護士にご相談ください。弁護士であれば、養子縁組について注意するべきことについてアドバイスできます。
また、遺言書を作成するのが望ましい状況であればサポートすることも可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
交通事故で怪我を負ってしまい、治療のための通院などで仕事を休業したことで収入が減少した場合には、「休業損害」として相手方に請求することができることがあります。
休業損害の計算には、「休業日数」や「稼働日数」が重要となり、受け取れる休業損害の金額に影響を与える要素となります。
この記事では、休業損害の計算に必要な、「休業日数」と「稼働日数」の数え方について解説していきます。休業損害を請求したいとお考えの方は、このページで理解を深めていきましょう。
休業損害の計算における稼働日数とは
休業損害の計算における「稼働日数」とは、休日などを除いた実際に働いた日数のことです。出社日や在宅勤務に関わらず、実際に就労した日は稼働日数としてカウントすることができます。
休業損害を請求するためには、休業日数や稼働日数などを記載する「休業損害証明書」を勤務先に作成してもらい、相手方保険会社に提出する必要があります。しかし、休業損害証明書に記載する稼働日数は、「事故前3ヶ月の稼働日数」となります。事故後に稼働した日数ではないので注意しましょう。
有給を取得した日は休業日数や稼働日数に含まれる?
有給休暇は、実際には仕事を休んでいても、出勤したものと取得した日とみなされることになり、給与が発生することになりますので、稼働日数に含めることになります。
そのため、事故前3か月に有給を取得した日があったとしても、休業損害証明書に記載する際には、有給休暇を取得したにも稼働日数に含める必要があります。
また、事故後に治療等のために有給を取得した場合、有給休暇は出勤したものとして稼働日数に含まれることから、収入が減ることはありませんが、本来は治療等以外の目的に使用することができた有給休暇を事故のために使用したということで休業日数に含めることになります。
治療のために半休・早退・遅刻した日休業日数や稼働日数に含まれる?
有給を使用しない半休、遅刻や早退をした日は、稼働をしていない以上は、稼働日数には含まれません。そのため、休業損害証明書に記載する事故前3か月について、たまたま遅刻や早退が多かった場合には、休業損害の基礎となる収入の算定がふりになってしまう場合がありますので注意を要します。
他方で、交通事故の治療等のために、有給を使用しない半休、遅刻・早退をする必要性がある日もありますが治療等のために遅刻などした場合、事故がなければ遅刻などをすることはなかったという点から、休業日数には含まれます。
〈半休の場合〉
半休の場合については、通常0.5日分の稼働として計算されることが多いでしょう。例えば、午前中に通院して午後から出勤、あるいは、午前中に出勤して午後から通院などという場合には、0.5日分が休業日数となります。
〈遅刻・早退の場合〉
遅刻・早退の場合は、その時間数に応じた就労時間が休業日数として計算されます。例えば、1日の労働時間が8時間の場合で3時間遅刻したとすると、実際の稼働時間は5時間となります。そのため、休業日数は「3時間÷8時間=0.375日」となります。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
休業損害における休業日数の数え方
休業日数にはどのようなものが含まられるかだけではなく、休業日数をどのように数えるのかどうかも、休業損害を計算するうえで非常に重要です。
休業日数とは、基本的に、完治または症状固定までの期間で怪我の治療のために会社を休んだ日のことを指します。
休業日数を数えるうえでポイントとなるのは、連続休業か断続休業化のいずれであるかという点です。連続休業とは、所定の休日も含めて一定期間仕事を休み続けることであり、断続休業とは、通院をした日などに限って、休業したり、出勤したりが断続的に続いていることです。
前者の場合には、所定休日を含めて休業日数として数える代わりに、1日当たりの基礎収入を算定する際、事故前3か月の収入を歴日数で割ることになりますが、後者の場合にはし、所定期日を含めずに休業した日のみを数える代わりに、1日当たりの基礎収入を算定する際、事故前3か月の収入を稼働日数で割ることになります。
自宅療養した日は休業日数に含まれる?
治療のための通院ではなく、自宅療養のために休業した日が休業日数として含まれるかどうかについては、担当医から指示で自宅療養していた場合には、休業日数として認められる可能性が高いといえますが、医師の指示ではなく、自己判断による自宅療養の場合には、事故との関連性が明らかでないため休業日数として認められないことも増えてきます。
そのため、自宅療養については、担当医に相談してみることが重要です。
休業損害の計算や日数についてご不明な点があれば、弁護士にご相談ください
交通事故の怪我により、仕事を休んだことで減収してしまった場合には「休業損害」を請求できます。
しかし、休業損害は算定基準ごとに、稼働日数や休業日数、計算方法などに違いがあり、受け取れる金額も異なるため、注意が必要です。
適切な休業損害を受け取るためには、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
交通事故に詳しい弁護士であれば、休業損害を適切に計算して、に相手方保険会社と交渉していくことも可能です。
休業損害は稼働日数や休業日数など、交通事故に詳しくなければ分からないことも多く、不安に思う方もいらっしゃるでしょう。そうした不安を取り除くためにも、まずは一度私たちにお問い合わせください。
配偶者が不倫(法的には、「不貞行為」といいます。)をしたとき、配偶者に離婚や慰謝料を請求するだけではなく、不貞相手にも慰謝料を請求することができます。円満だった夫婦関係や家族を壊した相手ですから、不貞相手にも慰謝料を請求したいと考えることでしょう。
以下では、どのようにして不貞相手に慰謝料を請求するのか、慰謝料を請求するためには何が必要なのかを解説します。
不倫相手に慰謝料請求できる条件
不貞相手に慰謝料を請求するためには、配偶者と不貞相手との間に肉体関係があること、配偶者が結婚していることを不貞相手が知っていたこと、時効が経過していないこと、不貞行為を証明する証拠があること、などの条件があります。
肉体関係があった
慰謝料を請求するためには、配偶者と不貞相手の間に、性交渉を伴う肉体関係があることが必要です。性交渉を伴う肉体関係があることで、平穏な夫婦関係が壊され、精神的苦痛を受けるからです。そのため、メールを送る、二人だけで食事に行く、デートに行く、というだけでは、不貞行為と認められることが少ないです。
ただし、性交渉がない場合でも、抱き合ったり、キスをしたりした場合は、平穏な夫婦関係を破壊したとして、低額ながら慰謝料が認められることがあります。
客観的な証拠がある
不貞相手に慰謝料を請求しても、不貞行為を否定することは珍しくないため、不貞行為の客観的証拠が必要となることが多いです。
客観的な証拠とは、性交渉があったことを推測させるメール、ラブホテルに出入りする写真、ラブホテルの領収証、性交渉の様子を撮影した動画や音声です。
まだ証拠がないのであればどのような証拠が必要なのか、証拠をもっているのなら今ある証拠で足りるのか、自信がない場合は弁護士に相談してみましょう。
時効が過ぎていない
不貞行為を知った時から3年が経過してしまうと、消滅時効(民法724条1号)といって、不貞関係があったことが事実でも、慰謝料を請求することができなくなってしまいます。配偶者の不貞行為を知った時は、弁護士に相談して、時効期間が経過しないように、何をすればよいのか確認しましょう。
故意・過失がある
交際相手が既婚者であると不貞相手が知っていた、注意を尽くせば知ることができたことが必要です。交際相手が既婚者であると知っているか、注意を尽くせば既婚者であると知ることができた場合には、不貞行為をやめることができるからです。
不倫相手に慰謝料請求できないケース
不貞行為についての証拠があり、時効期間が過ぎていない場合でも、不貞行為が行われた時点で夫婦関係が破綻していた場合には、不貞行為により侵害される平穏な夫婦関係がないため、慰謝料を請求することはできません。
家庭内別居していただけでは、夫婦関係が破綻していたとは認められませんが、具体的な離婚の話合いをしていた、家庭裁判所で離婚調停を行っていたような場合には、不貞行為当時、夫婦関係が破綻していたと評価される可能性が高いです。
離婚しない場合、不倫相手だけに慰謝料請求できる?
配偶者と離婚しない場合でも、不貞相手だけに慰謝料を請求することはできます。
ただし、不貞相手だけに慰謝料を請求する場合、離婚する場合と比べて慰謝料が低額になることや、後ほど説明するように、不貞相手から求償権を行使されることがあるのでご注意ください。
不倫相手に請求する慰謝料の相場は?
不貞行為に対する慰謝料の相場は、離婚しなかった場合は数十万円から100万円程度、離婚した場合は、100万円から300万円程度となることが多いです。
不貞行為の回数や期間だけでなく、不貞行為の結果、どのような影響が生じたかによっても、不貞慰謝料の金額は変わってきます。
不倫相手に慰謝料請求する際に必要なもの
不倫の証拠
すでに説明したように、不貞相手に慰謝料を請求するためには、不貞行為の証拠が必要です。証拠がない場合は、探偵などの調査会社に証拠の収集を依頼することもできますが、調査費用は高額になりやすく、結果的に慰謝料よりも調査費用の方が高くなることもありえます。
弁護士に相談すれば、必要な証拠を相談しながら進めることができます。
相手の氏名、住所または勤務先
慰謝料を請求するためには、相手の氏名と住所を知っておくことが必要です。相手の住所が分からなければ、内容証明郵便を送ったり、裁判を起こしたりすることができないからです。
相手の電話番号など、断片的な情報しか分からない場合も、弁護士に依頼すれば、弁護士会を通じて、相手の氏名や住所を把握することができる可能性もありますので、相手の連絡先が分からないと諦めずに、まず弁護士にご相談ください。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
不倫相手に慰謝料を請求する方法
相手と直接交渉する
慰謝料の支払いを求めて、不貞相手と直接交渉することもできますが、この方法はおすすめできません。やはり支払わない、その場では慰謝料を払うと言われても、後日、脅されて慰謝料を払うと言ったが本心ではなかったなど、トラブルになりやすいからです。
また、不貞相手と直接話すことで感情的になってしまい、自分に不利な発言をしてしまうこともあるので、交渉は書面で行うか、代理人に任せましょう。
内容証明郵便で請求する
慰謝料を請求する際は、内容証明郵便を送るのがよいでしょう。相手と直接会うことを回避できることや、送った書面の内容や受け取った日時が郵便局に記録されるため、慰謝料を請求したことの証拠となり、後日交渉や裁判となった時に有利に働くことがあります。
また、通常の郵便よりも費用はかかりますが、こちらの慰謝料請求が本気なのだというプレッシャーを相手に与えることができます。
調停・裁判で請求する
相手との話合いが難航する場合は、裁判所に調停を申し立てたり、裁判を起こしたりすることができます。
調停とは、裁判所で調停委員を交えて行われる話合いの手続きで、当事者だけではこじれてしまう交渉を、調停委員を介することで冷静に進めることが期待できます。調停が成立すると、調停調書という書類が作られ、相手が合意した慰謝料を払わない時は、強制的に取り立てることができます。
交渉や調停では相手が慰謝料の支払いに応じない場合は、裁判を提起することが考えられます。裁判では、証拠をもとに、慰謝料の請求が認められるか、慰謝料の金額はいくらになるのかを、裁判官が判断します。
不倫相手に慰謝料請求する場合の注意点
不倫相手から「求償権」を行使される可能性がある
離婚はせずに不貞相手に慰謝料を請求する場合、不貞相手から配偶者への求償に注意する必要があります。
慰謝料を支払った不貞相手は、「求償」といって、支払った慰謝料の一部をあなたの配偶者に請求することができます。慰謝料を支払う原因を作った責任は、配偶者と不貞相手の両方にあり、2人で1つの責任を負うことになるからです。
例えば、不貞相手から慰謝料200万円が支払われた場合、不貞相手はあなたの配偶者には半分の100万円を請求することができます。そのため、夫婦全体で見れば、不貞相手からは100万円しか回収できなかったことになります。
ダブル不倫の場合は慰謝料が相殺される可能性がある
既婚者同士の不貞行為、いわゆるダブル不倫の場合、不貞相手から慰謝料を取ることができても、不貞相手の配偶者があなたの配偶者に慰謝料を請求することで、結果的に慰謝料が相殺されることがあります。
離婚する場合は、元配偶者が慰謝料を請求されても関係はありませんが、離婚せずに不貞相手だけに慰謝料請求する場合、2つの夫婦間で慰謝料が回るだけになることもあります。
不倫相手が慰謝料を払わない場合の対処法
不貞相手が不貞を認めていても、慰謝料を払うお金がないと言って、慰謝料を支払わないことがあります。その場合は、慰謝料の減額や分割払いなどを検討して、できる限り慰謝料を回収できるように交渉してみましょう。
分割払いで合意した場合には、後日慰謝料の支払いがストップした場合に備えて、公正証書を作成しておくと、分割払いの条件に違反した場合に、再度交渉したり、裁判を提起したりしなくとも、強制執行ができるようになります。
不倫相手に対してやってはいけない事
不貞相手が慰謝料を支払わないからと言って、不貞相手を恫喝したり、暴力を振るったりしてはいけません。不貞相手から逆に慰謝料を請求されたり、刑事責任を問われたりすることになりかねません。
また、不貞行為を勤務先に報告したり、SNSに投稿したりすることも、名誉棄損として、損害賠償請求されたり、刑事処罰の対象にされたりするので、注意しましょう。
不倫相手への慰謝料請求に関するQ&A
不倫相手が複数いた場合、全員に慰謝料請求することは可能でしょうか?
複数の不貞相手に、それぞれ慰謝料請求することは可能です。
ただし、個別に交渉する場合、解決まで時間がかかることと、不貞相手に請求できる慰謝料が倍増するわけではないことに注意してください。
離婚した後でも不倫相手に慰謝料を請求することはできますか?
離婚後でも不貞相手に慰謝料請求することは可能です。離婚後に不貞行為を知った場合や、離婚が済んでから慰謝料を請求することもあるでしょう。
ただし、すでにご説明したように、不貞相手に慰謝料を請求するためには、不貞行為を知ってから3年という期間制限があるので、時効が過ぎてしまわないように注意しましょう。
不倫相手への慰謝料請求をお考えなら弁護士にご相談ください
不貞相手と直接慰謝料の交渉をすると、時間や労力がかかるうえに、大きな精神的負担もかかります。
慰謝料交渉の代理を弁護士に任せることで、迅速かつ精神的な負担なく解決することができます。
また、弁護士に相談すれば、慰謝料を請求するために必要な証拠の精査だけでなく、優秀な調査会社を紹介することで、必要な証拠を、適切な費用で集めることができます。
弁護士法人ALGでは、経験豊富な弁護士に加え、優れた調査会社を併設しているため、証拠の収集から慰謝料の交渉まで、ワンストップで対応することができます。不貞相手への慰謝料請求にお悩みの方は、弁護士法人ALGにご相談ください。
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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)