監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
身近な人が亡くなり、残された親族で起きる遺産を巡る争いは当事者間でうまく収めることは困難です。
そのような遺産争いを終わらせる有効な手段が遺産分割調停です。
遺産分割調停とは
遺産分割調停とは、家庭裁判所の調停委員が相続人の間に入って、各相続人の言い分を聞き、法的見地から見た公平な遺産分割を図る手続きです。
第1調停期日と最後の調停期日を除き、家庭裁判所にて、当事者が同時に調停室に入ることはなく、原則として一人一人の主張を順に調停委員が聴取し、利害の調整が進められます。
遺産分割調停の流れ
必要書類を集める
遺産分割調停の申立てをするには、「申立書」の他に状況に応じた添付書類が必要となります。
例えば、被相続人が出生してから亡くなるまでのすべての戸籍謄本類や、相続人全員の戸籍謄本、不動産の登記簿謄本や預金通帳の写しといった、遺産に関する資料が代表的なものです。
そのほかにも、相続人と被相続人の関係や遺産の状況次第で必要になる書類があり亜ます。
相続人全員の住所が必要なことに注意が必要
遺産分割調停を起こす際、一部の相続人を除外することはできません。
一部の相続人だけで勝手に遺産分割を行うことが許されないからです。
そのため、申立の段階で、全相続人の住所を申立書に記載し、調停に関する書類が全相続人に届いて、参加できるようする必要があります。
未成年・認知症の相続人がいる場合は代理人が必要
相続人の中に未成年や認知症患者等、一人では自分が受け取る遺産について判断をすることが困難である人がいる場合、その人のために代理人が選任される必要があります。
遺産分割調停は、全相続人から見て公平に行われる必要があるので、このような制限があります。
管轄の家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる
遺産分割調停を申し立てる際、申立先となることができる裁判所は限られています。
相続人全員で合意ができるのであれば、その合意に基づいて合意された裁判所に調停を申し立てられます。
合意がない場合、申立人以外の相続人の住所を管轄する裁判所に提起する必要があります。
申し立てにかかる費用
遺産分割調停を申し立てる際、申立人は大きく二つの費用を収める必要があります。
まず、亡くなった方一人の遺産の分割を求める場合には、1200円分の収入印紙が必要です。
他方、親族のお1人が亡くなって、その相続関係が整理されないまま相続人の一人が亡くなる等、複数の相続を同時に処理する場合には被相続人の人数毎に1200円の費用が掛かります。
また、連絡用の郵便切手を一定の価額分、納める必要があります。
必要となる郵便切手代は裁判所によって異なるため、申立先の家庭裁判所にご確認ください。
2週間程度で家庭裁判所から呼出状が届く
申立書及び添付書類に不備がない場合には、申立書や呼出状を入れた封筒が申立人以外の相続人に発送されます。
家庭裁判所の状況次第で前後することはありますが、申し立てた日から大体2週間程度で書類が届くことが多いです。
調停での話し合い
調停当日になりますと、原則として相続人が1人ずつ調停室に入り、言い分を調停委員に述べる機会が与えられます。調停委員は、各当事者が言い分を整理し、対立点を明確化し、全相続人が合意できる案がないかを模索します。
1回の調停でまとまらない場合には、複数回調停が開催され、利害の調整を行い続け、合意の成立を目指します。もっとも、合意の可能性がない、と判断される場合には調停が不成立となって終了する場合もあります。
調停成立
調停で話し合った結果、一定の合意に達することができた場合、合意内容が裁判所で調停調書という形でまとめられます。
この調停調書の内容通り、きちんと遺産が分割される場合には問題はありません。
ただ、相続人の中に合意を守らず、遺産を勝手に持ち出した者がいる場合、調停調書での合意であれば、裁判所の強制執行手続きにより、合意の内容通りの遺産分割を達成するという手段がとれる可能性があります。
成立しなければ審判に移行する
上述のように、調停委員は各相続人の言い分を聞いて、利害の調整を図りますが、毎度うまくいくわけではありません。一部もしくは全相続人の対立が激しく、合意が成立する見込みがない場合には調停が不成立となります。
その場合、調停は自動的に審判という手続きに移行します。
審判手続では、調停にあった話合いの側面がなくなり、裁判官が法的に妥当な遺産分割を定めることになります。
調停不成立と判断されるタイミング
調停が不成立となる決まった回数はありません。
もっとも、同じ争点について解決できない期間が長引くと、合意の成立の見込みが低いと判断される可能性が高まります。
その一方で、早期に審判移行をしてほしいと望む相続人がいたとしても、すぐに調停を不成立にすることもできないのです。
遺産分割調停にかかる期間
遺産分割調停は1、2カ月に1回程度のペースで行われるのが通常です。
そして、1度の調停でとれる時間も限られています。
そのため、相続人間で互いに譲歩がうまくできず、調停期日が何回も開かれることとなる場合ですと、終了まで1年以上かかるケースもあります。
遺産分割調停のメリット
遺産分割調停は、第三者である調停委員が間に入ることによって次のようなメリットがあります。
冷静に話合いを行うことができる
どうしても、揉めている相手と直接顔を合わせて話し合いをしてしまうと、互いに感情的になってしまうものです。その結果、問題の解決に意味のない時間が増えてしまいます。
調停では、同時に意向が異なる相続人を部屋に入れることが基本的にはないので、冷静に互いの言い分が主張され、解決されることが期待できます。
遺産分割を進めることができる
遺産分割協議を延々とやっても解決をしないことは珍しくありません。
調停手続きを用いれば、一定間隔で期日が入りますので解決に向け、各相続人が自身の主張を整理して準備するようになることが期待できます。
また、非協力的な相続人がいたとしても、調停不成立の際には裁判官が審判手続によって遺産を分割する審判を出すので、解決が全くされない事態は避けられます。
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遺産分割調停のデメリット
遺産分割調停にはメリットがありますが、同時に調停手続ならではのデメリットがあります。
希望通りの結果になるとは限らない
当事者の言い分を調停委員が聞きますが、あくまでも相続人の利害調整をした結果、合意が成立しないと遺産分割調停が成立しません。合意を成立させるには各相続人が一定の譲歩をする必要があるのが通常ですので、期待する分割方法とは異なる形の遺産分割となるかもしれません。
長期化する恐れがある
遺産分割調停が1,2カ月に1回のペースで開催されるため、早期に調停がまとまらない限り、半年、一年と多くが決まらないまま進行してしまうことがあります。
特に相続人が多かったり、遺産となる財産が多かったりする場合には合意ができずに調停が長期化することも少なくありません。
基本的に法定相続分の主張しかできない
遺産分割調停において、調停委員は、法律に従った遺産分割方法を原則としてとらえています。
そのため、法定相続分を超えるような主張を展開しても、その方向で調停委員が他の相続人を説得してくれる可能性は非常に低いです。
遺産分割調停で取り扱えないもの
被相続人の遺産を確認すると、一部の相続人が勝手に被相続人の預貯金を引き出していることがあります。これを「使途不明金」と呼びますが、遺産分割の対象となるかどうかはっきりしない使途不明金については、基本的には、調停では取り扱ってもらえません。
使途不明金について解決を望む場合には、訴訟などの別手続を検討せざるを得ないでしょう。
また、遺言の有効・無効という問題は調停では取り扱えません。
遺産分割調停はあくまでも遺産の分け方についての手続ですので、そもそも遺言の分け方を指定する遺言の有効性については調停で決定することが想定されていません。
遺言の有効性について争いたい場合には、遺言無効確認訴訟などを検討することになります。
遺産分割調停を欠席したい場合
遺産分割調停が開催される日にどうしても都合が合わない場合、欠席をすること自体はできます。ただ、相続人が一人でも欠席してしまうと、遺産分割調停を実質的に進めることができなくなり、欠席が相次ぐと、不成立となって審判手続に移行する可能性があります。
審判手続では欠席しても、裁判官が判断を下してしまうので、そうなるまでの調停段階で欠席し続けることはあまりお勧めできません。
本人が直接、出席できないとしても、弁護士を代理人に立てて、代理人に出席してもらうことは可能です。欠席を続けるよりは、代理人を立てられないか検討することが好ましいです。
遺産分割調停の呼び出しを無視する相続人がいる場合
遺産分割調停の呼出を無視して、その後も調停に参加をしない者がいる場合、調停が成立する見込みがないものとして調停が不成立となります。
その代わり、審判手続きが開始し、裁判官が遺産分割の審判を出すことになるので、ご自身の利益を守るためにも呼出状を無視することはお勧めできません。
遺産分割調停は弁護士にお任せください
遺産分割調停を開始する時点で、必要書類の収集から一苦労であることが多いです。
また、平日に毎回調停期日に出頭することも、仕事や子育ての関係で難しい場合もあるかと思われます。
弁護士に依頼し、書類収集から申立、申立以降も代理人として出頭してもらえるメリットがあります。
また、調停委員に対して話す内容を整理したり、逆に調停委員から述べられている内容が不当でないかについて助言をもらえるメリットもございます。
遺産分割調停を開始すべきか悩んでいる場合、遺産分割調停を起こされてその対応に悩んでいる場合、まずは弁護士にご相談下さい。
遺産分割に際して、遺言執行者が必要になる場合があります。遺言執行者は、被相続人の遺言書で指定されている場合もあります。
では、遺言執行者とは何者なのでしょうか。遺言執行者は、何をするのでしょうか。ここでは、このような遺言執行者に対する疑問にお答えしていきます。
遺言執行者とは
遺言執行者とは、被相続人に代わって、遺言の内容を実現する者のことです。本来、遺言に記載されている不動産の相続人への名義変更などは、被相続人本人が行うものですが、既に亡くなっている被相続人が、登記手続きをすることは不可能です。もっとも、相続人が登記を行うことももちろんできます。しかし、相続人にとって遺言の内容が不利な場合、きちんと実行してくれるかはあやしいものです。そのため、このような手続を被相続人に代わって、相続人との利害を離れて、遺言の内容に従って実行する者が必要となり、遺言執行者という制度が存在するのです。
遺言執行者がやるべきこと
相続人の確定
まずは、相続人が誰なのかを確定する必要があります。相続人が不明のまま、遺産分割を実行することは、後に遺産分割をもう一回やることになりかねません。そのため、戸籍謄本を取り寄せ、その記載をたどる方法で、相続人を確定させることが先決となります。
相続財産の調査
次に、相続財産を調査することになります。遺言に書かれているからといって、本当にその財産が存在するかどうかは分かりません。実際、銀行口座などを誤記してしまう方はいらっしゃいます。そのため、どこにどれだけの財産があり、遺言書通りに分配できるか確認するためにも、しっかり相続財産の対象と、相続財産に何が含まれているかを調査する必要があります。
財産目録の作成
調査を終了したら、財産目録を作成します。そして、作成した目録を、相続人に交付します。相続財産として何が含まれ、どれだけあるのかをきちんと目録にしておくことで、相続財産の現状と遺言執行者の権限の範囲を明らかにするためです。
その他
遺言執行者として就職した場合、直ちに遺言執行者としての任務を開始しなければなりません(民法1007条1項)。また、任務を開始したなら、相続人に遺言の内容を通知する義務が課せられます(同条2項)。
そして、遺言執行者と相続人との関係は、委任に関する規定が準用されます(1012条3項・1020条)。そのため、相続人に対して、執行の内容を報告する義務(645条)や、善管注意義務(644条)、遺言執行に関して受けとった郵便物などを引き渡す義務として、受取物の引渡し義務(646条)を負います。
一方で、遺言の執行にかかった費用は、相続人に対して請求できます(費用償還請求権 650条)。もちろん、遺言執行の報酬も請求できます(報酬請求権)。
遺言執行者の権限でできること
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します(1012条1項)。
具体的には、被相続人の所有権登記がされている不動産の登記を、相続人に移すこともできます。また、相続に関する訴訟でも、当事者となる場合があります。遺言による認知がされていたときは、認知の届け出もできます。相続人の排除やその取消も、遺言執行者が家庭裁判所に申立を行うことになります。
このように、遺言の内容を実現するために、広範な権限をもっています。
遺言執行者が必要になるケース
では、どのようなときに遺言執行者が必要になるのでしょうか。まず、相続人が一人しかいないときに、その一人に前部の財産を相続させたいときには必要ないということはあきらかです。
遺言執行者が必要になるのは、遺言を残しても、それが実行されるとは限らない場合といえるでしょう。
例えば、相続人が複数おり、しかも、互いの仲が悪い場合や一部の相続人にとって遺言の内容が不利になる場合は、遺言を初めに入手した相続人の都合で遺言を無視した遺産分割がされてしまうかもしれません。
そのような場合に、中立の第三者を遺言執行者につけておけば、遺言の内容が実現されやすくなるでしょう。
遺言執行者になれるのは誰?
では、遺言執行者になれるのは誰でしょうか。これは、特別な資格が必要な職ではありませんので、ほぼ誰でもなれると言っていいでしょう。また、法律上の人であればいいので、法人も遺言執行者になれます。
もっとも、誰でもなれるからといって、適当に知っている人を指名しても意味がありません。遺言執行者は前述のように、登記手続き、訴訟追行等、専門的知識が必要な任務が多い役割です。そのため、弁護士といった専門家に依頼するのが適当でしょう。
遺言執行者になれない人
遺言執行者になれない人とは、どのような人でしょうか。
相続に利害関係を有する人が遺言執行者になると、前述のように、きちんと遺言の執行をしてくれるかどうかに疑問が生じますので、利害関係人も遺言執行者になることはできません。
未成年者は、未熟であるため選任できません。破産者は、お金がない状態であるため、お金を扱うことが多い遺言執行者に任命することは危険であるとの配慮から就任することができません。
遺言執行者の選任について
遺言執行者は、どのように選任されるのでしょうか。遺言執行者は、遺言で指名してこれを受諾することで、選任されます。もちろん、指名されたからといって遺言執行者になる義務はなく、指名を拒否することもできます。
他に、遺言執行者を選ぶ人を遺言で決めて、遺言執行者を選ぶ人が指名した人が遺言執行者となる場合があります。
さらに、相続における利害関係者が家庭裁判所に請求することで、家庭裁判所が選任する場合もあります。
遺言書に複数の遺言執行者が指名されていた場合
遺言執行者は、複数を選任することができます。その場合は、全員で好き勝手に遺言の執行をすると大変なことになります。そのため、保存行為という遺産の価値を守る行為以外は、遺言執行者の過半数でどのように遺言を執行するのかを決めることになります。
遺言執行者が二人いると、その意見が食い違うと何もできなくなります、そのため、よほどの事情がない限り、一人の遺言執行者にするべきでしょう。
家庭裁判所で遺言執行者を選任する方法
家庭裁判所で遺言執行者を選任する場合は、裁判所のホームページを見て必要な書類を集めて、申立書を書いて提出することになります。
裁判所のホームページによれば、以下の書類と、申立書が必要です。
- 遺言者の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本(全部事項証明書)(申立先の家庭裁判所に遺言書の検認事件の事件記録が保存されている場合(検認から5年間保存)は添付不要)
- 遺言執行者候補者の住民票又は戸籍附票
- 遺言書写し又は遺言書の検認調書謄本の写し(申立先の家庭裁判所に遺言書の検認事件の事件記録が保存されている場合(検認から5年間保存)は添付不要)
- 利害関係を証する資料(親族の場合,戸籍謄本(全部事項証明書)等)
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遺言執行者の仕事の流れ
遺言執行者は、相続開始後に遺言や、家庭裁判所の選任により選任されます。その後の流れはどうなるのでしょうか、以下では、遺言執行者の仕事の流れを説明します。
①相続開始
②遺言や家庭裁判所等による遺言執行者の指名
③指名承諾
④任務開始
⑤遺言の内容を相続人に伝える
⑥任務終了
⑦報酬の請求
簡単な流れとしては、以上のようになります。
遺言執行者の辞任
遺言執行者は、正当な事由があれば、辞任することができます。逆に言えば、正当な事由なく自由に辞任することはできません。
正当な事由にあたるのは、病気、海外への出張など長期的に遠方に出向く必要があるとき、多忙などの理由で、遺言執行が困難になる場合と考えられます。
任務を怠る遺言執行者を解任できる?
遺言執行者を解任できる場合は、その任務を怠ったときとその他正当な事由があるときです。そのため、任務を怠る遺言執行者がいれば、解任事由にあたるので解任ができます。
もっとも、解任とつたえれば、解任にできるわけではありません。利害関係人が家庭裁判所に遺言執行者の解任を請求し、家庭裁判所がそれに理由があると考えて、解任の審判をしたときに初めて遺言執行者は解任されます。
遺言執行者が亡くなってしまった場合、どうしたらいい?
遺言執行者が死亡しても、遺言執行者の相続人にその任務は承継されません。そのため、新たに遺言執行者を選任しなければ、遺言執行者は空白のままとなります。
もっとも、遺言執行者が有していた報酬請求権などの権利義務は遺言執行者の相続人に引き継がれます。そのため、それまでの遺言執行者の仕事への報酬は、相続人に支払う必要があります。また、相続人の側も、委任終了後の引継ぎをする義務が生じます(654条)。
遺言執行者についてお困りのことがあったら弁護士にご相談ください
これまでにお話ししたように、遺言執行者に関しては、法律的な問題がつきまといます。また、遺言執行者を選ぶ際にも、遺言執行者には高度な専門的知識を持った人を選ぶ方が、迅速に遺言の執行が終了すると考えられます。
したがって、もし、遺言執行者に関して問題が生じた場合は、弁護士などの専門家に依頼されるのが得策でしょう。弊所では、遺言執行者を含む、相続問題に詳しい弁護士が数多く在籍しておりますので、ぜひご検討のほど宜しくお願い致します。
交通事故でケガをして通院していると、突如として、相手方保険会社から、治療費の支払いを打ち切りますとの連絡がされることがあります。このようなことを言われて、戸惑った方もいらっしゃると思います。また、なぜいきなり支払いを打ち切るんだとお怒りになられた方もいらっしゃると思います。
以下では、相手方保険会社はなぜ打ち切りを迫るのか、治療費の打ち切りには、どのように対処すべきなのかを解説していきます。
治療打ち切りとは
治療打ち切りとは、一括対応の打ち切りとも言い、相手方保険会社が、治療費の支払いをすることをやめるということです。そのため、治療打ち切りを受け入れたとしても、自費での通院をやめなくてもよい場合があります。
治療費の打ち切りと症状固定の違い
治療費の打ち切りと症状固定は、まったく違います。
治療費の打ち切りは、相手方保険会社が決定することで、ご自身の判断で、自費での通院をしても構いませんし、ケガの治療状況とは無関係に言い渡されます。通院を継続することで、症状が改善する場合もあります。
症状固定は、通院先のご担当医が決定することであり、これ以上治療してもケガの状態がよくならない場合に言い渡されます。もちろん、痛みが残る場合にご自身の判断で通院を継続することもできますが、医療の専門家であるお医者様がこれ以上治らないと判断しているので、症状が改善される見込みは一般的には薄いでしょう。
保険会社が治療費の打ち切りを迫る理由
相手方保険会社が治療費の打ち切りを迫るのは、なんといっても、これ以上出費を増やしたくないからです。
治療費は、相手方保険会社持ちですから、治療費を打ち切れば、それだけコストも削減できます。
また、治療期間を短くする狙いもあると思います。治療費が出なければ、通院をすることを控える、又は、やめるという選択肢を取ることになると思います。そうすると、治療期間で決まる、通院慰謝料を抑えることができます。そうなれば、相手方保険会社としては、通院慰謝料の支払いを少なくすることができますので、コスト削減になります。
そして、通院期間が短ければ、実際は大したケガではないと自賠責が判断し、後遺障害が認定されづらくなります。また、認定されたとしても、低い等級になる可能性があります。そうなれば、後遺障害に関連する損害賠償も低く抑えることができます。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
まだ痛みがあるのに治療費の打ち切りを迫られた場合の対処法
弁護士に依頼して保険会社と交渉してもらう
相手方保険会社負担で治療を継続するには、どうすればいいのでしょうか。治療打ち切りを伝えられたらもう終わりなのでしょうか。
そうではありません、弁護士に依頼して交渉することで、必要な期間、治療打ち切りを先延ばしにすることができることがあります。弁護士なら、治療打ち切りに対する交渉も慣れていますし、治療打ち切りが適当かどうかについてもよく理解しています。
そのため、弁護士に依頼して、治療費を打ち切られないように交渉することが、もっとも有効な手段だと考えます。
自身で延長交渉を行う
もっとも、ご自身で交渉することも、まったく問題ありません。しかし、保険会社もまた、弁護士と同様に交通事故での交渉に慣れています。
そのため、ご自身で交渉を行っても、相手方保険会社にうまくまるめ込まれてしまい、結局治療打ち切りとなる可能性が高いでしょう。
そのため、弁護士にご依頼されることを強くおすすめいたします。
治療打ち切りの連絡を無視したらどうなる?
治療打ち切りの連絡を無視するとどうなるのでしょうか。
こちらは被害者なのだから、被害者の同意なく、治療を打ち切られるはずはないと思っていらっしゃる方もいるかもしれません。
しかし、無視すれば、黙示の同意があったと相手方保険会社は考え、治療打ち切りをするのが通常です。
決して無視せず、少なくとも、治療打ち切りに反対する意思を示す必要があります。
打ち切り後も自費で通院を継続すべきか
治療打ち切りになってしまった場合、自費で通院すべきなのでしょうか。
治療が必要かどうかは残念ながら、医学の専門家でない我々弁護士には判断できかねます。そのため、治療打ち切り後も通院が必要かどうかは、ご担当医様とよく相談なさってください。
また、ご担当医様が治療してももう治らないと判断されている場合でも、辛い痛みが残っているときは、通院を継続なさった方がいいでしょう。通院を継続していることは、自覚症状が強く出ていることを裏付け、後遺障害認定に有利に働く場合があるからです。
治療費を立て替えるお金がない場合
まずは、自分が加入している保険会社に相談してみましょう。
それでも、対応ができないと言われた場合は、治療費を抑えるために、健康保険を使って、通院しましょう。健康保険を使う場合には、第三者行為の傷病届が必要になります。全国健康保険協会であれば、ホームページに書式が掲載されているので、ダウンロードして、提出しましょう。
交通事故の治療の打ち切りを迫られたら、弁護士に相談してみよう
交通事故の治療打ち切りを打診されたら、ご自身で対応することも可能ですが、上記のように、相手方保険会社もプロですから、プロに交渉を依頼したほうが良い結果を期待できると思います。
弊所は、交通事故を多く取り扱っており、それだけ治療打ち切り対する交渉経験が豊富な弁護士が多数在籍しており、治療打ち切りへ十分対応することができるでしょう。
「配偶者が不倫していたことがわかったので離婚を考えている」、あるいは「配偶者に不倫していたことがバレて離婚を切り出されてしまった」など、男女関係の問題で離婚に発展するケースは少なくありません。このようなケースでは、「不貞慰謝料」が問題となります。
今回は、「不貞慰謝料」とは具体的にどのようなものなのか、いわゆる「離婚慰謝料」との違いや金額の相場、請求の方法、請求されてしまった場合の対処法など、幅広く解説していきます。
不貞慰謝料とは
結婚して配偶者がいる人が、自分の意思で、配偶者ではない異性と性行為、または性行為に近い行為をして肉体関係を持つことを、「不貞行為」といいます。そして、「不貞慰謝料」とは、配偶者の不貞行為が原因でもう一方の配偶者が精神的苦痛を受けた場合に、そのつらい気持ちを慰めるために請求できるお金のことを指します。
不貞行為は、配偶者ではない異性と肉体関係を持つことを禁止する「貞操義務」に反する不法な行為なので、賠償金である慰謝料が発生することになります。
不貞慰謝料と離婚慰謝料の違い
「不貞慰謝料」と「離婚慰謝料」は、どちらも離婚に関連して生じる精神的苦痛に対する賠償金です。しかし、請求できる根拠、つまり精神的苦痛が生じた原因が違います。
それぞれ、
- 不貞慰謝料の根拠:不貞行為など、離婚の原因となる行為そのもの
- 離婚慰謝料の根拠:離婚によって夫婦関係が解消されたことそのもの
が原因で精神的苦痛が生じています。
このように請求の根拠が違えば、慰謝料の金額や時効が成立するまでの期間は異なってきます。例えば、不貞慰謝料は「不貞行為の事実と不倫相手を知った日から3年」または「最後の不貞行為の日から20年」、離婚慰謝料は「離婚した日から3年」で時効が成立します。
不貞行為に対する慰謝料の相場
相手の不法な行為が原因で発生する不貞慰謝料は、離婚慰謝料とは違い、離婚をするしないにかかわらず請求できます。とはいえ、下表のとおり、離婚や別居の有無によって金額の相場は変わってきます。
離婚の有無 | 慰謝料の相場 |
---|---|
離婚も別居もしなかった場合 | 50万~100万円 |
離婚しなかったけど別居した場合 | 100万~200万円 |
離婚した場合 | 200万~300万円 |
このように、不貞慰謝料の相場には幅があります。なぜなら、不貞慰謝料の金額は、それぞれの家庭の夫婦関係や不貞行為の詳細など、様々な事情を考慮して決められるからです。次項も併せてご確認ください。
不貞慰謝料額の判断基準
不貞慰謝料額は、主に下記のような事情を考慮して決められます。
〇夫婦関係に関する事情
- 婚姻期間の長短
- 婚姻期間と比べて同居期間や別居期間が長いか
- 子供の有無や人数
- 不貞行為が原因で離婚や別居に至っているか
〇不貞行為に関する事情
- 不貞行為の悪質度(過去に不貞行為をしていた、不倫相手が妊娠や出産をした等)
- 不貞行為の期間や頻度
〇その他の事情
- 不貞行為をした配偶者や不倫相手の収入
- 社会的制裁の有無(退職した、減給・降格処分を受けたなど)
- 発覚後の態度(素直に認めた、真摯に謝罪した等)
不貞慰謝料を請求したい方
不貞慰謝料は誰に請求できる?
不貞慰謝料は、“不貞行為を行った配偶者”と“不倫相手”に対して請求できます。誰にどのように請求するかは、不倫された配偶者が決められるので、不貞慰謝料を請求するパターンは、
①不貞行為を行った配偶者と不倫相手両方に請求する
②不貞行為を行った配偶者にだけ請求する
③不倫相手にだけ請求する
の3パターンに区別できます。
ただし、不倫相手に不貞慰謝料を請求できるのは、「既婚者だと知りながら付き合っていた」、または「注意すれば既婚者だと気づけた」場合等、故意・過失があるケースに限られます。
不貞慰謝料を請求する前に確認すべきこと
一般的な社会生活を送っている人にとって、慰謝料の請求・支払いは高額なお金のやりとりですから、慰謝料請求は、請求される側にとっても深刻な問題です。そこで、不貞慰謝料を確実に受け取るためにも、下記のポイントを事前に確認しておくと良いでしょう。
- 不貞行為の詳しい事実関係
- 不貞行為の事実を立証できる証拠の有無
- 時効が成立していないか
※不貞行為から一定の時間が経ってしまい時効が成立している場合、慰謝料を請求しても認められません。 - 夫婦関係が破綻していなかったか
※不貞行為を行った時期に既に夫婦関係が破綻していたケースでは、不貞慰謝料の請求は認められません。
- 不倫相手が既婚者との不倫であると知っていたか、または知ることができたか
- 不倫相手の資力はどれくらいか
証拠になるもの
不貞行為が実際に行われたことを証明できなければ、請求された相手方も言い逃れができてしまうので、しっかりとした証拠を集める必要があります。証拠の数が多くなるほど、また有力な証拠であるほど、説得力が増すのでより有利になります。
以下、不貞行為の証拠となり得る具体例を挙げたのでご確認ください。
【写真・動画】
性行為やそれに近い行為をしている様子が写っている写真や動画は、決定的な証拠になります。また、2人が裸でベッドにいる様子が写っているものも、有力な証拠です。
なお、ラブホテルに2人で出入りしている写真や動画は証拠となり得る一方、ビジネスホテルに出入りしているだけの写真や動画では不貞行為を証明するのは難しい場合が多いです。
【メール・SNS】
性行為の内容に関するメッセージのやりとりなど、肉体関係があったことが推測できるメールやSNS(LINE、TwitterのDM等)のメッセージも証拠となる可能性があります。日時が記録されているものや、複数回のやりとりがあったことがわかるものだと、より有力な証拠となります。
【領収書】
ラブホテルを利用した際の領収書やクレジットカードの明細書のほか、2人旅であることがわかる旅行先の領収書や、異性向けの高価なアクセサリーの明細書なども証拠となり得ます。とはいえ、一緒に利用した相手やプレゼントした相手はわからないので、他の証拠と併せて説得力を高める証拠として扱われます。
不貞慰謝料を請求する方法
不貞慰謝料の請求にあたっては、まず、請求する意思があることを相手に伝え、その後金額や支払い方法といった細かい条件について話し合います。請求する意思を伝える方法は、直接対面する方法でも、電話やメールを利用する方法でも構いません。不倫相手に請求する場合や、こちらの意思を伝えても返答がない場合には、内容証明郵便(文書の内容を郵便局に証明してもらえる郵便サービス)を利用して慰謝料請求する旨の通知書を送ると、より本気度が伝わります。
それでも相手方が話し合いに応じない、あるいは話し合いでは解決できない場合には、裁判所に調停や裁判を申し立て、第三者の力を借りて解決を図ることになります。
内容証明郵便での請求について
配偶者と別居している場合や、不倫相手と顔を合わせたくない場合、電話やメールのほか、内容証明郵便を利用して慰謝料請求の意思を伝える方法をとることができます。
文書の内容を証明してもらえる内容証明郵便で慰謝料請求すれば、いつ、誰に、どのような請求をしたかという証拠になりますし、相手に心理的なプレッシャーを与えられるので、交渉の場に引き込みやすくなります。
ただし、内容証明郵便を利用する場合には費用がかかりますし、規定の書式に併せて書面を作成しなければならないといったデメリットもあります。
内容証明郵便に記載する内容
内容証明郵便には、下記のような内容を盛り込みましょう。ただし、文字数や行数には制限があるので、要求を簡潔に書く必要があります。
・不貞行為の事実
「いつから」不倫関係が始まったのか、「どこで」不貞行為を行ったのか、「誰と」不貞行為をしたのか、相手がした不貞行為の事実をわかる範囲で記載します。
・不貞行為の違法性
「不貞行為が民法709条で規定する不法行為に当たること」を記載するとともに、「不貞行為によって婚姻関係が破綻したこと」「精神的に傷ついたこと」も書いておきましょう。
・要求内容
請求金額、支払期限、支払方法、振込先といった条件も細かく記載します。
・要求に応じてもらえない場合の法的措置
例えば、「期限までに満額を支払わない場合は、すぐに法的措置をとる」など記載しておくと、要求に応じてもらいやすくなる可能性があります。
離婚後でも慰謝料請求は可能?
たとえ離婚した後でも、時効が成立していなければ、不貞慰謝料を請求することはできます。ただし、離婚時に「慰謝料を請求しない」等の取り決めをしていた場合には、離婚した後に不貞行為の事実が判明したようなケースを除いて、請求するのは困難です。
また、離婚後に請求する場合、相手が簡単には話し合いに応じてくれないことが多く、希望する金額をスムーズに支払ってもらえないケースもあるので注意が必要です。
相手が慰謝料を支払わないときの対処法
慰謝料を支払うことを約束したにもかかわらず支払ってもらえない場合、まずは督促状を送って支払いを促しましょう。それでも支払われなければ、強制執行(相手の財産を差し押さえて、強制的に未払いの慰謝料等を回収する手続)による取り立てを検討します。
強制執行では、給与(基本的に4分の1まで)や預貯金だけでなく、自動車や不動産、貴金属・絵画等、様々な財産を差し押さえることができます。
ただし、強制執行を申し立てるためには、債務名義(慰謝料の支払いについて取り決めた判決書や調停調書、強制執行認諾文言付き公正証書といった書面)が必要です。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
不貞慰謝料を請求されている方
慰謝料を請求されたらまず確認すること
慰謝料を請求されてしまったら、まずは落ち着いて下記のポイントを確認し、本当に慰謝料を支払う必要があるのか、請求されている金額が妥当かどうか、よく考えましょう。
- ・誰から請求されているか
(配偶者本人が請求しているのか、代理人である弁護士が請求しているのか) - 相手が主張する内容に誤りはないか
- 時効が成立していないか
- 請求金額が相場より高額ではないか
内容証明郵便で請求された場合の対処法
慰謝料を請求する書面が内容証明郵便で届いたら、しっかりと対応する必要があります。無視したり、いい加減な対応をしたりすると、交渉での立場がより不利になってしまう可能性があります。
内容証明郵便の封筒には、大きな「内容証明郵便」という赤字のハンコが押されているので、すぐにわかるでしょう。
回答書を送付する
内容証明郵便で慰謝料を請求されたら、「合意」「反論」「減額の希望」など、請求に対するご自身の回答を請求者に伝えましょう。このときに謝罪の気持ちも込めると、請求者の心証が良くなり、減額につながる可能性があります。
なお、内容証明郵便で請求されたからといって、回答も内容証明郵便で送らなければならないわけではありません。メールや書面等、形に残るもので安易に回答すると、後の交渉で不利な証拠になってしまう可能性があるので、むしろ注意が必要です。
内容証明を無視することは避けるべき
内容証明郵便は、あくまでも書面の内容を公的に証明するだけのものであり、内容が真実だと保証したり、法的な効力を発生させたりする効果はありません。そのため、記載された回答期日や支払期日を無視しても、直接不利益を受けることはありません。
しかし、話し合いに応じる気がないと判断され、裁判に発展してしまうリスクがあるので、無視することは避けるべきでしょう。
代理人を通して請求されたら
第三者を通して慰謝料を請求された場合、第三者の職業によって交渉する相手が異なってきます。
まず、“弁護士”を通して慰謝料を請求されたケースでは、弁護士が請求者の代理人として活動しているので、弁護士を相手に交渉することになります。このケースでは、請求者の意思が固く、厳しい態度で慰謝料の支払いを求めてくる可能性が高いです。また、交渉を仕事にしている弁護士と対等にやりとりをするのは難しいので、弁護士に依頼して代理人になってもらうことをおすすめします。
一方、“行政書士”が作成した書面によって慰謝料を請求されたケースでは、請求者本人を相手に交渉します。なぜなら、行政書士は慰謝料を請求する書面の作成を請け負っただけで、慰謝料の交渉に関して代理人となっているわけではないからです。このケースでは、請求者は、当事者間の話し合いで解決したいと考えている可能性が高いので、こちらが現実的な妥協案を提示することで、穏便に解決できると考えられます。
請求された慰謝料を減額するには
慰謝料を減額する方法
請求された慰謝料を減額したい場合には、減額してもらいたい理由をしっかりと示したうえで、請求者と話し合うことになります。
当事者間の話し合いでは慰謝料の減額に応じてもらえないときは、調停を申し立て、調停委員を間に挟んだ話し合いを行います。それでも合意できなければ、裁判を提起し、裁判所に判断してもらうことになります。
慰謝料が減額されやすいケース
下記のような事情があると、慰謝料の減額を認めてもらいやすいでしょう。
- 請求者にも過失があった(請求者も不倫やモラハラをしていた等)
- 請求された慰謝料の金額が相場より高額である
- こちら(支払う側)の収入や財産が少ない
- 不貞行為の悪質度が低い(期間が短い、回数が少ない等)
合意後、慰謝料を支払わないとどうなる?
慰謝料の支払いについて合意したにもかかわらず、支払わない場合、様々な問題が発生します。
【公正証書で合意した場合】
“強制執行認諾文言付き公正証書”で合意内容を残していた場合、すぐにでも強制執行を申し立てられ、財産(給与、預貯金、自動車、不動産、貴金属等)を差し押さえられてしまう可能性があります。財産を差し押さえられてしまうと、生活に大きな支障が生じます。
【公正証書以外で合意した場合】
すぐに強制執行を申し立てられることはありせんが、慰謝料を請求する裁判や強制執行の許可を得るための裁判を起こされてしまう可能性があります。裁判には多くの手間や費用がかかりますし、強制執行が認められてしまうと、これまで通りの生活を送ることが難しくなってしまいます。
金銭的な問題等でどうしても慰謝料を支払うことが難しいのであれば、確実に支払える金額まで減額してもらう、分割払いにしてもらう等、きちんと対策をとる必要があります。
不貞慰謝料について悩んだら弁護士に相談してみましょう
配偶者が不倫していたことがわかった場合、慰謝料を支払ってもらいたいと考えられる方は多いでしょう。また、不貞慰謝料を請求されてしまった方も、「慰謝料を支払いたくない」「請求された金額が高すぎる」「そもそも不貞行為をした事実はない」等、様々なお悩みや困りごとを抱えていらっしゃるかと思います。
不貞慰謝料をはじめ、慰謝料の問題を希望するとおりに解決するためには、きちんとした戦略を立てることが重要です。そのためにも、ぜひ弁護士にご相談ください。ご相談者様のお悩みや困りごとに真摯に向き合い、ご希望を最大限に叶えるための戦略を考えさせていただきます。
結婚の約束をしていた相手から突然別れを切り出されてしまったら、大変なショックを受けることでしょう。心の傷はお金で癒えるものではありませんが、このような一方的な婚約破棄については、慰謝料を請求できる可能性があります。
今回は、婚約破棄による苦しみや悩みを抱えていらっしゃる方へ向けて、慰謝料を請求できる条件やその方法、相場、慰謝料以外に請求できる賠償金等について解説していきます。
婚約破棄で慰謝料は発生するのか
不当に婚約を破棄された場合、慰謝料を請求することができます。
ただし、その大前提として、
①正式に婚約が成立していること
②婚約破棄をする正当な理由がないこと
という条件を満たしている必要があります。
婚約成立と見なされる条件
結婚を約束する契約である「婚約」は、当人同士が合意すれば成立します。しかし、不当に婚約破棄された場合に慰謝料の請求を認めてもらうためには、「婚約が成立していたこと」を証明できなければなりません。
例えば、第三者にも婚約が成立していたことがわかる下記のような事情があれば、婚約が成立したと認められる可能性が高いでしょう。
- 結納金または結納品の受け渡し
- 婚約指輪を贈った、贈られた
- 両家の顔合わせ(親族への紹介等)が済んだ
- 結婚後の新居へ引っ越した
- 結婚式や披露宴の予約をした
- 新婚旅行を申し込んだ
婚約破棄の正当な理由
婚約を破棄することに正当な理由があれば、慰謝料の請求は認められません。例えば、下記のようなケースでは正当な理由があると評価される傾向にあります。
- 婚約相手が浮気した
- 婚約相手から暴力を振るわれた、またはひどい侮辱を受けた
- 結婚に関する重要な取り決め(両親との同居の有無、結婚後の居住地など)を一方的に変更された
- 婚約相手が重大な事実(多額の借金や重大な犯罪歴など)を隠していた
- 婚約相手が事故や病気で大きな後遺症を負ってしまった
- 婚約相手が失業する等して経済状況が悪化した
不当な婚約破棄の理由
逆に下記のような理由や事情で婚約を破棄されたケースは、不当な婚約破棄として慰謝料請求が認められる可能性が高いでしょう。
- 単純な心変わり(他に好きな人ができた、何となく結婚したくなくなったなど)
- 性格の不一致
- 不当な差別
- 親の反対
- 他の異性と交際または結婚したい
婚約破棄の慰謝料相場
婚約破棄による慰謝料の相場は、30万~300万円程度です。
婚約破棄の場合、破棄されるまでの交際期間、婚約破棄の原因・時期・経緯、いわゆる寿退社や妊娠・堕胎・出産の有無など、様々な事情を考慮して慰謝料の金額を決めるため、相場にはかなりの幅があります。
慰謝料の増額要素
慰謝料は、婚約破棄されたことで受ける精神的な苦痛が大きいと考えられるほど高額になります。下記のような事情がある場合には、婚約破棄による精神的なダメージが大きいと評価され、慰謝料が増額する可能性が高いでしょう。
- 交際期間が長い
- 周囲の人が婚約の事実を知っており、被害者が別人と交際すること等が難しくなっている
- 婚約破棄の理由が身勝手なものである(何となく結婚したくなくなった、他に好きな人ができた等)
- 結婚に対する期待が高まる結婚式直前に婚約破棄した
- いわゆる寿退社をしたなど、キャリアを諦めた
- 妊娠している、または出産した
- 婚約相手の収入が高い
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
婚約破棄の慰謝料を請求する方法
婚約破棄の慰謝料を請求する場合、まずは婚約相手に「慰謝料を請求すること」と「請求する金額」を伝えて、話し合いを始めます。このとき、郵便局に書面の内容を証明してもらえる“内容証明郵便”を利用して慰謝料を請求すると、相手にこちらの本気度を示せるほか、請求を行ったという事実の証拠にもなります。
婚約相手が話し合いに応じない、または話し合いがまとまらない場合には、慰謝料請求調停を申し立てましょう。それでも合意できなければ、裁判で争うことになります。
婚約破棄の慰謝料請求に時効はあるか
婚約破棄の慰謝料を請求する権利には時効があるので、一定期間が経過すると請求できなくなってしまいます。
なお、時効が成立するまでの期間は、婚約破棄が「不法行為」または「債務不履行」のどちらに当たるかによって異なります。
【不法行為に当たるケース】
時効期間:婚約破棄から3年
例:他の人と肉体関係をもってしまい、その人と交際・結婚するために婚約破棄したケース
【債務不履行に当たるケース】
時効期間:婚約破棄から10年
例:好きな異性ができてしまったため婚約破棄したケース、自分の親が反対していることを理由に婚約破棄したケース
慰謝料以外に請求できるもの
慰謝料以外にも、婚約破棄により被った損害の賠償を請求できます。
例えば、
- 支払った結納金
- 婚約指輪の代金
- 式場や披露宴のキャンセル料
- 新婚旅行のキャンセル料
- 結婚後の新居の購入代金
- 結婚に先立ち退職していた場合、退職していなければ得られたと考えられる給与
などの損害があれば、賠償金を請求できるでしょう。
婚約破棄の慰謝料についてのお悩みは弁護士にご相談ください
突然の婚約破棄により幸せな結婚生活の夢が壊されてしまった場合、慰謝料を請求したいと思われる方は多いでしょう。しかし、婚約を破棄してきた相手との交渉は、精神的にも時間的にも大変なご負担となりますし、婚約したかどうかの基準はあいまいで、証明には手間がかかります。
婚約破棄によりつらいお気持ちやお悩みを抱えていらっしゃる方は、お気兼ねなく弁護士にご相談ください。お心の傷を少しでも癒せるよう、慰謝料請求の交渉をはじめ、様々なお手伝いをさせていただきます。
車の性能がどれだけ進化しても、残念ながら、交通事故による死亡事故が絶えません。
死亡事故に遭われた本人の無念のみならず、突然、大切な家族を奪われた遺族の悲しみや怒りは言葉を尽くしても表現できないことが通常です。
しかし、交通賠償実務を見ていますと、残念ながら、ご遺族の中には適切な金銭賠償を保険会社から受けられていないことがあります。
このページでは、ご遺族の方々が、適正な慰謝料を受け取ることができるよう、死亡慰謝料について解説していきます。
死亡事故の慰謝料と請求できる慰謝料の種類
被害者本人の慰謝料
慰謝料は、精神的苦痛を慰藉するために支払われるものです。
そして、精神的苦痛という観点だけで見ると、交通事故に遭って死亡した被害者本人の苦痛は計り知れません。
そのため、被害者本人が慰謝料を請求できる立場にあるはずなのですが、死亡している以上、この立場は相続人に受け継がれます。
遺族の慰謝料(近親者の慰謝料)
死亡事故によって、被害者の遺族も精神的苦痛を負いますので、一部の遺族にも固有の死亡慰謝料請求が法律上、認められています。
民法711条は、慰謝料を請求することができる遺族として「被害者の父母、配偶者及び子」しか挙げていませんが、解釈上、被害者の兄弟姉妹や祖父母、内縁関係にある妻や夫も、被害者との関係性が強い場合には認められることがあります。
死亡事故慰謝料の計算方法
死亡慰謝料は、特定の計算方法によるのではなく、一定の金額が基準として設定されえています。
弁護士が請求する場合(裁判基準)、家庭の中での被害者の立場によって金額が決まります。
これは、被害者家族の収入源となっていた者が亡くなってしまう場合と、その他の者が亡くなった場合とで精神的苦痛が違うからではありません。
むしろ、死亡慰謝料には、残された家族が経済的に困るからという扶養的な側面があるからです。
死亡事故の慰謝料相場
自賠責基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|
一家の支柱 | 400万円 | 2800万円 |
母親・配偶者 | 2500万円 | |
その他 | 2000万~2500万円 |
死亡慰謝料については、上の表のとおりです。
自賠責基準だと、弁護士の基準と異なり、被害者が家の中でどういった立ち場であったかにかかわらず、一律400万円となっております。
もっとも、この後説明するように、自賠責の基準では400万円に加えて、被害者の家族構成に従い、近親者の慰謝料が支給される可能性があります。
近親者の慰謝料について
請求者1人 | 550万円 |
---|---|
請求者2人 | 650万円 |
請求者3人以上 | 750万円 |
扶養家族がいる場合 | 上記+200万円 |
自賠責基準では、被害者の家族構成次第で、この表に従った近親者の慰謝料が支払われます。
例えば、亡くなった一家の大黒柱である被害者に配偶者がおり、3人の未成年の子どもを育てていた場合、「請求者が3人以上」及び「扶養家族がいる場合」にあたります。
そのため、保険金としては、①被害者本人の慰謝料 400万円、②「請求者が3人以上」いる場合の保険金 750万円、そして、③「扶養家族がいる場合」の保険金 200万円の合計である1350万円が死亡慰謝料としてしはらわれることになります。
ただ、ご注意いただきたいのは、自賠責保険において、死亡事故によって支給される保険金の上限が3000万円となっており、3000万円を超える金額が支給されないことです。
慰謝料の算定額に影響する3つの基準の違い
自賠責基準の場合の例を弁護士基準に当てはめると、一家の大黒柱である被害者が亡くなったことによって、その家族は死亡慰謝料として2800万円を受け取れることになります。
この金額だけで、自賠責基準を大幅に上回ります。
また、自賠責保険において、死亡事故によって支給される保険金の上限が3000万円となっており、3000万円を超える金額が支給されません。
そのため、損害額が大きい場合、自賠責基準では十分に賠償を受けられない可能性があります。
他方で、弁護士基準においては、そのような上限はございませんので、適正な賠償額が3000万円を超える場合であっても、超えた部分が切り捨てられることはありません。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
死亡慰謝料が増減する要素
慰謝料の増額事由
死亡慰謝料が増額する場合として、よく挙げられるのは、加害者の悪性が強い場合です。
例えば、加害者が飲酒運転や無免許運転であった場合や、事故を起こした際に信号無視をしていた場合、事故直後に逃走したひき逃げの場合のように、加害者が事故時もしくは事故の前後で悪質な運転態度が認められるときには増額されることがあります。
慰謝料の減額事由
死亡慰謝料が減額されている事例の大半は、死亡慰謝料そのものが減額されている場合よりも、過失相殺などその他の要因によって減額されているケースです。
一部、高齢者の場合に減額をする、という裁判例もありますが、それらも高齢である一事をもって減額を認めているわけではなく、事故前の健康状態等を考慮して最終的に妥当な金額を定めているのであり、減額事由であるとは考えるべきではありません。
死亡事故の慰謝料に相続税などの税金はかかる?
死亡事故によって支払われる慰謝料は原則として、非課税です。
相続税などの税金は基本的にかかりません。
これは、慰謝料が、事故によって生じた精神的苦痛というマイナスを、ゼロに戻すための性質を持つからであり、何ら事故によって財産上プラスの利益が生じていないからです。
もっとも、死亡事故によって生じる慰謝料以外の一部の給付(搭乗者傷害保険の死亡保険金など)については、課税される可能性がありますので、課税対象であるか否かは税理士等、税務の専門家にご相談ください。
内縁関係や婚約者でも死亡慰謝料は認められる?
被害者本人の慰謝料を内縁関係にある方や、婚約者が受け取ることはできません。
これは、民法上、相続権がないからです。
他方、遺族としての慰謝料を請求できる可能性があります。
すでに述べましたように、被害者との関係性が強い場合には民法711条には挙げられていない者であっても請求ができるかもしれません。
最近の裁判例の傾向ですと、内縁の配偶者は比較的認められやすい傾向がありますが、裁判所は各事例毎に同居関係などの生活状況などを見ていますので、一概に認められるものではないことは注意が必要です。
慰謝料のほかに受け取れるもの
死亡逸失利益
死亡逸失利益は、被害者が将来得られたはずの収入を補償するものとなります。
細かい計算式は省略しますが、被害者が67歳まで働くと考えて、事故発生時から労働できる期間に得られたであろう収入から、被害者の生活費と中間利息を差し引いた金額が賠償対象となります。
葬儀関係費用
葬儀関係費用も、通常、慰謝料とは別に受け取れます。
不当な慰謝料額にしないために、弁護士にご相談ください
交通事故によって近しい親族が亡くなってしまうと、精神的にも経済的にも、元の生活が戻ってこないという声をよく聞きます。
しかし、加害者や加害者側の保険会社が初めから適正な賠償額を提示してくれないこともあります。
さらには、刑事事件として事故が扱われる場合、そちらの対応にも追われることになってしまい、負担は一人の人間では抱えきれない場合もあります。
そのため、一度は弁護士にご相談ください。
ご負担を少しでも軽くするお手伝いをさせていただければ幸いです。
専業主婦だから休業損害は認められないと思っていませんか。専業主婦も家事労働を行う仕事です。事故により家事労働ができなくなった場合には、休業損害が認められることがあります。本ページでは、主婦の休業損害とは何か、その算定の方法等を解説していきます。
主婦でも休業損害は認められるのか
専業主婦は、家族のために家事労働を行っています。この家事労働は、家政婦や代行サービス等を利用すれば、報酬の支払いが必要となるように、本来であれば対価が発生するものですが、家族間での労働であるため、具体的な金銭が発生していないだけなのです。そのため、交通事故により、家事労働ができなくなった場合には、他の給与所得者のように休業損害を請求することができるのです。
そして、家族のために家事労働を行っていることが休業損害を請求する根拠ですので、家事労働を男性が行っている場合には、主夫休損が認められます。
仕事を休業していない兼業主婦の場合
家事には支障が出ている場合には、家事労働を休業しているわけですから、休業損害が認められるとも思えます。しかし、パート等の仕事はできていたということだと、その仕事の内容にもよりますが、家事への支障がそこまで多くないのではないかと推測されてしまうため、休業損害が認められない可能性があります。
専業主婦の休業損害計算方法
休業損害は、一日当たりの収入額に休業した日数をかけて算定します。
専業主婦の場合、実際には給与をもらっているわけではないので、一日当たりの収入額をいくらとして考えるのかが問題となります。また、休業した日数についても、会社に勤務している場合と異なり、休業した日を特定することができないので、どのように休業した日を認定するのかが問題となります。
基礎収入
自賠責保険では、休業損害の一日の基礎収入を6100円と定めているため、専業主婦の基礎収入も6100円となります。
弁護士が専業主婦の休業損害を請求する場合、専業主婦の基礎収入は、全女性の賃金の平均賃金を基礎収入として考え、一日当たりの収入を算定します。具体的には、厚生労働省が毎年行っている賃金調査の結果である賃金センサスのうち、事故前年度の全女性、全年齢、全学歴の収入の総額を用い、これを365日で割った金額を基礎収入とします。
休業日
専業主婦の場合の休業日数は、いくつか考え方があります。
実務上、基準が明確であるとの考えから、事故日から治癒又は症状固定日までの間で、実際に入院や通院をした日を休業日として算定することが多いです。
その他の方法として、事故で受傷した傷害の程度、通院の頻度、医師の指示等を勘案し、事故日から治癒又は症状固定日までの期間を、一定の期間ごとに区切り、家事ができなかった程度に応じて基礎収入に割合をかけて算出することもあります。
兼業主婦の休業損害計算方法
兼業主婦の場合、家事労働だけではなくパート等の仕事をしている分の収入も得ているため、専業主婦と同様に収入を認定するのか、パート等の仕事の収入を収入として考えるのかが問題となります。
基礎収入
兼業主婦の場合の収入は、家事労働の収入(賃金センサス)とパート等の収入を比較し、高い方を収入として考えます。
そのため、賃金センサスの全女性の平均賃金とパート等の収入を比較し、賃金センサスの金額の方が高ければ、専業主婦と同様に収入を認定しますし、パート等の収入の方が高ければ会社員と同様にパート等の収入で収入を認定することになります。
休業日数
家事労働の収入とパート等の収入を比較し、家事労働の収入の方が高い場合には専業主婦と同様に実際に入通院をした日事故日から治癒又は症状固定日までの期間を期間ごとに分けて家事ができなかった割合をかけて算定します。
パート等の収入の方が高い場合には、実際に仕事を休業した日数を休業日数として算定します。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
主婦の休業損害請求方法
休業損害を請求する場合には、通常、勤務先の会社に休業損害証明書を作成してもらい請求を行います。しかし、専業主婦の場合には、会社が休業について証明してくれるわけではないので、休業損害証明書はなくても家事労働への休業損害を請求することができます。
必要書類
専業主婦の場合には、会社が発行する休業損害証明書がない代わりに、家族と同居して家事労働を行っていることを示すために住民票や非課税証明書が必要となります。
また、兼業主婦の場合には、休業損害証明書と、家事労働の休業損害またはパート等の収入の休業損害のどちらを請求するかを判断するため、パート等の収入を示す事故前年の源泉徴収票が必要となります。
主婦の状況別休業損害
家事が出来ない間家政婦を雇った場合
家事労働ができず家政婦を雇った場合には、その家政婦を雇ったことにより費用を請求することができる可能性があります。もっとも、損害として認められるのは、家政婦を雇う必要がありかつ合理的な金額の範囲内ですので、家政婦を雇った金額のすべてが支払われるわけではありません。
そのため、家政婦を雇う場合には、事前に加害者の保険会社に事情を説明し、費用の支払いについて調整をしておく方が、後々のトラブルを減らすことができます。
2世帯で暮らしている場合
専業主婦の休業損害が認められているのは、専業主婦が家事労働を担っていることが前提となっています。そのため、二世帯住宅で、家庭の中に家事労働を行う人がいて、自分が主に家事労働を行っていない場合には、休業の程度が小さいとみなされる可能性があり、休業損害が減額となる可能性があります。
二世帯住宅の場合には、生活環境や家事の分担状況等を積極的に主張していく必要が出てきます。
主婦の休業損害は複雑なことが多いので弁護士に相談することをおすすめします
家事労働に対する休業損害は、家事労働者の収入をどのように認定するか、兼業主婦の場合度の収入で基礎収入を認定するか、休業日数をどのように考えるか等を検討しながら請求をする必要があります。しかし、保険会社からは、そもそも家事労働の休業損害が認められていなかったり低額な金額での提案がされていたりします。
家事労働への支障は家族への影響もある重大な損害です。弁護士であれば、適切な損害の賠償をしてもらうために交渉をすることができますので、一度ご相談ください。
友人の車に乗っているときに、事故に遭ってしまい、ケガをしてしまった。そんなとき、いったい誰に、損害賠償請求をすればいいのでしょうか。事故を起こした相手のドライバーでしょうか。それとも、友人に対して損害賠償をするのでしょうか。また、そのような請求をする際に、注意することはあるのでしょうか。以下では、他人の車に乗っていて事故に遭遇してしまったとき、どのようにすべきかを述べていきます。
同乗中に事故に遭ったら、だれに慰謝料を請求すればいい?
事故を起こしたのは、相手のドライバーと、あなたが乗っている車のドライバーなので、そのどちらか、又は、その両方に損害賠償を請求できます。この違いは、誰に事故の過失があるかで異なってきます。
運転者に過失がない場合
運転者に過失がなければ、運転者に責任はないので、相手のドライバーに請求することになります。これは、ある意味当然といえば当然の結論と言えるでしょう。
運転者と加害者双方に過失がある場合
運転者と加害者に過失がある場合、その両方に請求することができます。過失割合というのもありますが、共同不法行為となるので、同乗者としては、どちらかに全額の損害賠償を請求できます。過失割合は、運転者と加害者の間で、求償という形で調整することになります。
単独事故、または相手に過失がない場合
単独事故、又は、相手方に過失がないときは、運転者以外に過失がある人がいませんから、運転者にのみ損害賠償請求できます。
家族が運転する車への乗車や好意同乗の場合でも慰謝料を請求できる?
家族の運転する車への乗車や、運転者の好意あるいは無償で乗車を許されていた場合(好意同乗)、車に乗っているという利益を享受しているとして、慰謝料を減額するという考え方が、かつては取られていました。その背景には、車が貴重品であり、車に乗れること自体が、高価な利益になるという事情がありました。しかし、今の状況を考えると、車が貴重品であり、乗車すること自体が高価な利益とは誰も思わないでしょう。そのため、現在では、単に好意・無償で同乗していた場合では、慰謝料は減額せず、後述のように、同乗者にも事故の責任の一端があると認められるような場合に慰謝料を減額するという運用をしています。
同乗者が子供でも慰謝料はもらえる?
同乗者が、まだ子どもであっても、慰謝料はもらえます。子どもがまだ幼くて、痛みをうまく伝えられない場合であっても、慰謝料は請求できます。そして、子どもであることを理由に、慰謝料の金額を減額されることもありません。
もっとも、未成年者は、制限行為能力者ですので、単独で慰謝料請求することができません。そのため、慰謝料の請求は、未成年者の親、未成年者後見人が行うことになります。
同乗者の慰謝料相場
慰謝料の算定は、運転者か同乗者かで変わることはありません。同乗者も運転者と同じ方法で、慰謝料を算定します。そのため、同乗者の慰謝料相場も、運転者と同じで、変わることはありません。
過失により慰謝料が減額されることもある
事故の原因が、同乗者にあるとき、同乗者にも責任を取ってもらうことになります。以下のようなことを同乗者がしていたときは、その分同乗者が請求できる慰謝料が低くなります。
運転者が飲酒運転だと知っていた
ご存じの通り、現行法では、飲酒運転を勧めた者や依頼同乗者に、刑事罰が科せられるようになっております。そのため、そのような犯罪行為に手を染めていたときは、最悪100%の減額となり、慰謝料請求できないのは、言うまでもありません。
しかし、単に飲酒運転であることを知っていただけの場合はどうでしょうか。
運転者とともに飲酒して、運転者が相当酔っていたことを知っていながら同乗
したときには、20%程度の減額をしています(東京地判平成7年6月21日交通民集28巻3号910頁)。
飲酒運転自体犯罪ですし、そのような行為をしていることを知って同乗した以上は、リスクを負うのもやむを得ないといえるでしょう。
運転者が無免許だと知っていた
無免許運転も、違法行為なのは知っての通りです。したがって、飲酒運転だと知っていたときと同様の結果になるのは当然です。
運転者が無免許であることを知っていながら、間接的に運転を促した事案で、30%の減額を肯定した事例もあります(鳥取地裁昭和50年2月26日判タ324号290頁)。
無免許運転自体危険行為ですから、そのような危険を知りながら乗っている以上、過失が認められるのは当然といえるでしょう。
危険な運転を止めなかった・煽った
飲酒運転・無免許運転だけが危険な運転ではありません。裁判例は、制限速度を30キロもオーバーして追い越した直後に急ブレーキをかけて追突された事案で、運転者の交際相手の同乗者は、このような危険な運転を容認していたことを理由の一つとして、40%もの減額を認めた事例があります(神戸地裁平成26年12月19日交民47巻6号1569頁)。
運転者が危険な運転を始めたら、すぐに止めるか、そもそもそのような危険な運転をする傾向のある運転者の車には乗らないようにしましょう。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
同乗者も弁護士費用特約を使える?
これに関しては、ご自身、ドライバーの加入する保険の特約によるとしか言えません。ご自身の保険会社は、同乗していた場合でも弁護士特約を使える場合が多いと思います。
一方で、ドライバーの場合、同乗者まで、弁護士特約を付けている場合は、なかなかないのではないでしょうか。
ご自身やドライバーの保険に弁護士特約があるかどうか不安なときは、加入する保険会社に問い合わせるのが確実でしょう。
同乗者の慰謝料に関する判例
同乗者の慰謝料が減額された判例
前述のように、危険行為をした場合は、大幅な減額がされています。しかし、シートベルトを締め忘れたときはどうでしょうか。
名古屋地裁一宮支部令和2年5月28日判決(ウェストロー2020WLJPCA05286001)は、シートベルト不着用と損害に因果関係があることを前提に、過失割合を10%としています。これは、シートベルトの着用義務は、同乗者のものも、運転者に課せられた義務であること、シートベルトを装着していても、ある程度のケガ自体は避けることはできなかったことなどの事情があったためです。
シートベルトの着用により、命が守られることもありますし、着用しない理由は、妊娠中の場合等のほかは、ほとんどないと思います。ご自身の身を守るためにも、車を運転しないときであっても、十分安全に気を付けて車に乗る必要があります。
同乗者の慰謝料が減額されずに済んだ判例
運転者が、最高約180キロ、事故直前には約144キロもスピードを出して、単独事故を起こし、同乗者が死傷した事案で、同乗者は運転者の無謀運転を止めることはしていませんでした。しかし、同乗者は、スピードを出すことを特段求めていたわけではなく、ほとんど運転者と話もせず、寝ていたために、好意同乗者としての減額を認めませんでした。また、この事案では、死亡した同乗者はシートベルトをしていませんでしたが、このような無謀な運転による事故であること、運転者がシートベルト着用を求めていないことから、減額はされませんでした(京都地裁平成29年7月28日交民50巻4号1001頁)。
止めようとしなかったのではなく、寝ていて止めることができなかったのだから、過失はないとされたのだと思います。また、シートベルトをしていても、同じ結果になるような酷い事故のときは、シートベルトをしていなくとも減額されないようです。
このような酷い事故に遭うことはまれですが、シートベルトをしておけば、死の結果発生の可能性を低減できますし、過失割合でも不利な認定をされることはありませんので、同乗する際にはシートベルトを忘れずにしてください。
同乗者の事故は揉めやすいので弁護士にご相談ください
運転者と同乗者、そして加害者と、当事者が複雑に絡み合い、しかも、誰に責任があるのかで、非常にもめやすい案件と言えます。そのため、同乗者がいるとき、事故車に同乗したときは、早めに弁護士などの専門家に相談するのが得策ではないかと思います。
相続が発生すると、相続税の申告などいろいろすることがあり、故人を惜しむ暇すらありません。その中でも、相続人の調査は、必須と言ってもよいでしょう。これをしていないと、後々のトラブルにつながり、故人も浮かばれない、なんて事態になりかねません。では、相続人調査は、どのようにすればいいのでしょうか。ここでは、相続人調査のやり方と注意点を解説していきたいと思います。
相続人調査の重要性
ここでは、相続人調査をすべき理由を解説していきます。
相続人調査をすると、新たな相続人がいることが判明することがあります。隠し子だったり、ご兄弟が既に死亡していて、代襲相続が生じていたりします。また、故人自身も知らない、兄弟がいる可能性だってあります。
相続人が欠けた状態で、遺産分割協議をすると、協議をやり直すことになります。せっかく相続人で長い間話し合って合意に至っても、すべてご破算です。そのため、事前にしっかりと、誰が相続人なのか調査しておく必要があります。
遺産分割協議が終わらなければ、財産を取得することもできません。そのため、遺産分割協議の前提として、相続人調査をしっかりとする必要があります。
相続人調査の方法
では、どのように相続人調査をすべきでしょうか。
まず、被相続人、相続人の戸籍を取ります。そして、戸籍をチェックして、相続相関図を作成していきます。戸籍の取得と、チェック、関係図への書き込みを繰り返し、最終的にすべての相続人の相関図が完成したら、終了となります。
相続人調査に必要になる戸籍の種類
戸籍、といっても、謄本だけではなく、除籍謄本など、いろいろなものがあります。すべて、必要になることもあれば、戸籍謄本だけで十分な場合もあります。以下では、その種類と、どのようなときに必要になるかを解説します。
戸籍謄本
戸籍謄本とは、戸籍の内容すべてを写した書面を言います。これに対し、戸籍抄本は、一部のみを写した書面をいいます。
相続人調査の目的は、知らない相続人を探すところにあるのですから、抄本ではだめで、謄本を用意する必要があります。
被相続人が、戸籍の最後の一人ではないときは、戸籍謄本を取ることになります。例えば、夫婦の一方のみが先に亡くなったときは、戸籍謄本を取ることになります。
また、相続人は、基本生存しているので、除籍はされておらず、戸籍謄本はどこかで必ず入手することになるでしょう。
除籍謄本
除籍謄本とは、戸籍から誰もいなくなったことを証明する書面です。
被相続人が戸籍に乗っている最後の人であれば、除籍謄本を取る必要があります。
また、相続人が既に亡くなって、代襲相続人がいないか探す際にも、除籍謄本を手掛かりにすることがあります。
相続人を探す際には、除籍された戸籍も調べるので、ほぼ必ず必要になるでしょう。
改製原戸籍
戸籍法の改正により、戸籍の様式が変更されるため、戸籍法を改正したときに、従前の戸籍から新しい戸籍に書き換えることがあります。この書き換える前の戸籍を、改製原戸籍と言います。
改製原戸籍は、だいぶ古いものですので、被相続人が高齢の場合、必ず必要になるといえるでしょう。
相続人調査に必要な戸籍は1つだけではない
上記の通り、いろいろな種類の戸籍を入手する必要があります。そして、すべての相続人を調査するには、1つの戸籍を取れば解決するものではありません。以下では、どのような戸籍が、どれだけ必要かを解説します。
生まれてから死亡するまでの戸籍すべてが必要
基本的に、被相続人が、生まれてから、死亡するまでの戸籍が必要です。
まず、生まれた当初は、両親と同じ戸籍にいますが、結婚することで、その戸籍から除籍されています。そうすると、両親が誰か、存命なのか、兄弟姉妹はいるのかを知るために、生まれた後の戸籍が必要です。
また、結婚して、子どもが生まれていたとしても、その子どもが、結婚すると、同じように戸籍から離脱します。さらに、養子縁組を相続税対策でしているかもしれません。そのため、死亡するまでの戸籍も必要になります。
亡くなった人に子がいた場合
被相続人の子どもがいるとき、子どもの戸籍謄本を取っておきましょう。その子どもが既に亡くなっていたとしても、代襲相続が発生している場合があります。そのときは、さらにその子の子どもの戸籍もとる必要があります。これは、再代襲相続も生じている可能性があるからです。
そして、これらの戸籍は、生まれてから死亡までのものを用意すべきでしょう。なぜなら、前述のように、戸籍から離脱した人がいる可能性があるからです。
亡くなった人に子がいなかった場合
子どもがいなければ、配偶者と両親などの直系尊属が相続することになります。直系尊属がいなければ、兄弟姉妹に相続権が移ります。そして、兄弟姉妹に関しては、代襲相続も生じえます。そのため、直系尊属が死亡したことが分かる戸籍、直系尊属がすべて亡くなっているのであれば、兄弟姉妹が生まれてから死亡するまでの戸籍が必要になります。
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抜け漏れなく戸籍を取得する方法
戸籍に抜けや漏れがあっては、相続人を見落としてしまいかねません。そこで、以下の方法によって、抜け漏れなく戸籍を収集しましょう。
- ①:死亡したときの戸籍謄本(除籍謄本)を取得する
- ②:①の戸籍の中から「1つ前の本籍地」が記載されている箇所を見つける
- ③:見つけ出した「1つ前の本籍地」の戸籍謄本を取得する
- ④:②と③を繰り返す
戸籍を取得出来たら記載内容を確認する
戸籍を取得したら、その内容を確認しましょう。戸籍が作成された原因や、日時は確認すべきです。なぜなら、改製により戸籍が作成されているときは、その前の記録が分からないからです。
また、戸籍が除籍された日と理由も見ておきましょう。場合によっては、その後にも別の戸籍が続いている可能性があります。
古い戸籍は確認が困難なことも
古い戸籍を見た人は分かると思いますが、信じられないほど達筆で、しかも、毛筆で書かれているため、何が書いてあるのかわからないことがあります。そのときは、無理にご自分で解読しようとせず、専門家に依頼するのも一つの手段です。
相続関係相関図を作成したら相続人調査完了
戸籍を集めて、解読したら、相続関係図を作ります。相続関係図は、家系図のようなもので、これで相続人の関係が判明し、誰が法定相続人なのかが一目で分かるようになります。いちいちわかりにくい戸籍を見直す必要がないので、作成することをお勧めします。
相続人調査をしっかり行うことで後々のトラブル回避にもつながります。弁護士へご相談下さい
相続人が多くなれば、戸籍の枚数も膨大になってきます。それを一つ一つ確認してく必要がありますが、万一漏れがあれば、前述のように、遺産分割が無駄になってしまいます。また、古い戸籍は読むのも一苦労です。やはり、相続人調査はご自分でなさるよりも、弁護士などの専門家に依頼されることをお勧めします。
相続が発生した場合、相続財産の中身が分からなければどのように手続きを進めていくべきかどうかを正確に判断することができず、結果として、予期せぬ不利益を被ってしまう可能性もあります。そのため、相続が発生した場合、被相続人の財産を調査し、被相続人の財産状況について正確に把握する必要があります。以下では、相続財産ごとの相続財産調査の方法を紹介し、相続財産調査の必要性について解説してきます。
相続財産調査の重要性
相続が発生した場合、相続財産の内容が分からなければ相続人間で遺産分割を進めることはできませんし、相続財産を把握していなければ、相続人が相続財産の受取りに必要な手続きを行うこともできません。
また、相続税の面からも相続財産の把握は必要となりますし、相続放棄の判断のためには、マイナスの財産の存在も把握が必要となってきます。そのため、被相続人が、生前に相続財産を自ら整理し、遺言書を残しているような場合を除き、被相続人の財産を把握するために、速やかな相続財産調査を行うことが必要となります。
相続財産にあたるもの
プラスの財産の種類
プラスの財産としては、以下のようなものが挙げられます。
- 現金・預貯金
- 不動産(土地、建物)
- 借地権・地上権
- 有価証券(株式、公社債、投資信託等)
- 自動車
- 宝石・貴金属
- 著作権・特許権・商標権
- ゴルフ会員権
マイナスの財産の種類
マイナスの財産としては、以下のようなものが挙げられます。
- 消費者金融から借り入れ
- 銀行から借り入れ
- リボ払いの残債務
- 住宅ローン
- 公租公課(税金等)の未払い
- 病院などの施設利用費の未払い
相続財産調査の流れ
相続財産の主な流れとしては、預貯金などのプラスの財産の調査を行い、同時並行で、消費者金融からの借り入れなどのマイナスの財産の調査を行っていきます。
調査を行うといっても、比較的簡単に調査が可能な相続財産もあれば、手続きが煩雑な相続財産もありますので、場合によっては、相続財産調査には相当な負担を要することもあります。相続財産調査が完了したら、調査結果を財産目録として整理し、相続財産の中身を一覧にしておくことになります。
財産調査に期限はある?
相続財産調査は、法律上、期限があるわけではありません。しかし、原則として、相続開始後、3か月以内に終わらせる方がよいといえます。
なぜならば、相続放棄をするかを判断する熟慮期間は、相続の開始を知った日(通常、被相続人の死亡の日)から3か月以内とされており、被相続人に多額の借金があるなど、相続放棄をするべきケースかを期限内に判断するためには、3か月という期限内に相続財産調査を終えておく必要があるからです。
預貯金の調査方法
預貯金の相続財産調査の基本となるのは、被相続人名義の通帳の確認です。被相続人名義の通帳の記帳を確認すれば、預貯金の残高は確認できますが、残高を明確に示すものとして、被相続人が亡くなった日付で残高証明書を発行してもらうことも有効です。また、生前贈与がなされていたかを確認したいなど、被相続人名義の財産の動きまで調査したいときには、取引証明書を取得することになります。
このように、被相続人がどこの銀行のどこの支店に口座を開設しているかが判明している場合には、通帳を確認したり、残高証明書を取得したりすれば、相続財産の調査が可能です。一方で、被相続人が、どこの銀行のどこの支店に口座を開設しているか判明していない場合には、金融機関に対して、全店照会という方法を用いることで、被相続人が対象とした金融機関に口座を開設しているかを確認することができます。
もっとも、全店照会は、金融機関ごとに行う必要があるので、実際には、すべての金融機関に全店照会をすることは現実的ではなく、被相続人が口座を開設している可能性の高い金融機関を対象とすることになります。
相続人に気付かれなかった口座はどうなるか
被相続人が、金融機関に預けている預貯金は、法律上、預貯金債権と位置付けられ、預貯金債権には消滅時効が定められており、預貯金債権が成立した時期によって、時効期間が異なる可能性がありますが(2020年4月1日に民放が改正されたため)、長くとも10年間とされています。
そのため、相続人が、被相続人の銀行口座を長期間放置してしまうと、消滅時効が完成してしまい、預貯金債権が消滅し、預貯金の引き出しができなくなってしまう恐れがあります。もっとも、実際には、金融機関側が、預貯金債権に関する消滅時効を主張することは多くはないようです。
万が一のためにも、預貯金の相続財産調査を漏れなく行うことが重要といえます。
不動産調査の方法
不動産の相続財産調査を行う上で重要なことは、不動産の地番や家屋番号を特定することです。
不動産の相続財産調査をするうえで参考になる資料としては、不動産を購入した際の契約書、登記をした際の登記済権利証、税金の支払いのために送付される固定資産税の納税通知書などが挙げられます。また、登記済権利証などを見つけることができたもの以外にも不動産を所有している可能性がある際には、役所に対して、名寄帳を発行してもらうことで、請求先の役所に被相続人が所有している不動産を確認することができます。
もっとも、名寄帳は、役所ごとに発行してもらうことになるので、複数の場所に不動産を取得している場合には、その都度、名寄帳の取得が必要となります。なお、名寄帳を取得する場合、固定資産評価証明書を一緒に取得しておくと、相続手続きがスムーズになるといえます。
株式の探し方
株式については、株券が保管されていれば、調査は比較的容易といえますが、現在は、電子化されているケースも多く、株式を発行している株式会社からの被相続人宛ての連絡内容(株式総会の通知、株主優待券の送付など)から、株式の有無を確認していくことが必要となります。
また、株式を取得する場合、証券口座を開設することも多いことから、証券口座を開設した金融機関から書面などから、株式の相続財産調査を進めることができる場合もあります。その他、株式、公社債、投資信託等の有価証券については、証券保管振替機構に問い合わせをすることで被相続人の証券口座の有無を確認することで、相続財産調査を進める場合もあります。
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借金の調査方法
相続財産調査は、プラスの財産のみならず、マイナスの財産についても行う必要があります。
マイナスの財産の調査方法としては、まず、被相続人の自宅から、金融機関や消費者金融の請求書面や督促書面、借入の契約書がないかを確認します。また、被相続人名義の通帳の履歴で定期的な引き落としがないかどうかも確認する必要があります。
被相続人が、借入に関する書類を破棄してしまっている可能性もありますので、信用情報機関(JICC、CIC、全銀協)に照会をかけることも重要です。信用情報機関は、消費者金融等から得た個人の信用情報を管理しており、返済状況や延滞情報を把握していることから、信用情報期間に照会をかけることで被相続人のマイナスの財産を調査することができます。
連帯保証人になっていないか調査する方法
法律上、相続が発生した場合、連帯保証人の地位は、相続人に引き継がれることになります。そのため、被相続人が、連帯保証人となって、マイナスの財産を負っていないかを確認する必要があります。
連帯保証に関する契約書が保管されていれば、被相続人の連帯保証の内容を確認することができますし、奨学金など信用情報機関に登録されている種類の債務については、信用情報機関への照会で連帯保証の有無を確認することができます。
しかし、連帯保証は、個人間で行われることも多く、地道に調べるほか方法がない点もあり、当然、相続財産調査にも限界があります。そのため、被相続人が連帯保証人になっている可能性がある場合には、相続人の地位を放棄する相続放棄や被相続人のプラスの財産の範囲でのみマイナスの財産を引き受ける限定承認といった手続きをしておくことが選択肢となります。
住宅ローンがある場合
住宅ローンの借り入れを行う場合には、ほとんどの方が団体信用生命保険に加入しています。団体信用生命保険に加入している場合、契約者が返済の途中で死亡したとしても、住宅ローンの残債務は保険金から支払われることになり、マイナスの財産が残ることはありません。そのため、被相続人の住宅ローンの借り入れを行っていた場合、団体信用生命保険の加入状況を確認することが重要です。
被相続人の自宅に団体生命信用保険について書類がない場合には、借入先の金融機関に問い合わせてみることで加入状況を確認できることがあります。
借金が多く、プラスの財産がない場合
相続財産を調査した結果、プラスの財産より、マイナスの財産の方が多いことが判明することも少なくありません。もっとも、相続人は、マイナスの財産も相続することになるため、マイナスの財産の方がプラスの財産よりも多い場合、被相続人の負債を背負うことになってしまいます。
このような事態を回避するためには、相続放棄の手続きを行い、相続人の地位を放棄することが必要です。相続放棄を行った場合、当該相続人は、相続開始時から相続人でなかったことになり、プラスの財産を受け取ることもできなくなりますが、マイナスの財産を引き受ける必要もなくなります。相続放棄には、相続開始を知った時から3か月という期間制限がありますので、相続財産調査は速やかに行う必要があります。
財産目録の作成について
相続財産調査が終わったときは、調査の結果を財産目録として形にすることになります。財産目録とは、被相続人の相続財産を一覧表にしたものであり、遺産分割協議で使用したり、相続税の申告の際に参照したりします。
財産目録の作成方法について、特定の決まりがあるわけではないですが、相続財産の所在を明確にし、相続財産の数量が一目でわかるようにすることが重要といえます。例えば、預貯金については、単に残高を記載するだけではなく、金融機関名、支店名、口座番号、種別なども一緒に記載します。不動産についても、土地と建物と記載するだけでなく、登記簿謄本の記載に従い、地番や家屋番号なども記載します。また、預貯金であれば、残高を記載すればよいので、金額は明確となりますが、金額の評価が必要な財産(不動産、美術品、貴金属など)については、いつの時点を評価の基準とするかを検討する必要もあります。
相続財産調査は弁護士へお任せください
相続財産調査は、生前の被相続人が、相続人のためにきちんと準備をしておいてくれたような場合には、ご自身で対応することも難しくないケースもあります。しかし、多くの場合、被相続人の財産について十分整理されていないまま、相続が開始されることになり、相続人が手間をかけて相続財産調査をしなければなりません。特に、被相続人にマイナスの財産がある場合には、相続放棄との関係で、迅速かつ正確な相続財産調査を行う必要があります。
相続財産調査を弁護士に依頼した場合、自身の手間を省いたうえで、弁護士によるスムーズな調査によって、預貯金などのプラスの財産、消費者金融からの借り入れなどのマイナスの財産のいずれについても、正確に把握し、弁護士が作成した財産目録によって、財産の状況を一目で確認することができるようになります。相続手続きにお悩みの方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)