離婚前の別居で知っておきたいポイント

離婚前の別居で知っておきたいポイント

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

結婚生活を送っている途中、夫婦が別々に暮らすこと(別居)を選択する場合もあるでしょう。
一口に別居といっても、これからの生活について冷静に考えるために距離を置くケースもあれば、すぐにでも離婚したくて別居に踏み切るケースもあります。しかし、どちらのケースでも、「別居した事実」は、離婚を進めるうえでかなり重要な意味を持ちます。
そこで、別居がもたらす離婚手続上の効果や別居に伴うメリット・デメリット、起こり得る問題への対応策などを詳しく解説していきます。

別居すると離婚しやすくなるのは本当か

別居している期間が長ければ長くなるほど、離婚を請求するうえで有利な事情になりますので、相手の同意がなくても離婚しやすくなります。「相手の同意がなくても」という点が大きいですが、これは、別居期間が長いほど、夫婦としての実態が失われており、夫婦関係が破綻していると判断される傾向にあるためです。
この判断により、法律上の離婚事由である「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)にあたるとして、実際に裁判をしても離婚が認められる可能性が高くなります。
また、不倫やDVといった離婚原因を作った“有責配偶者”からの離婚請求は基本的に認められないのですが、別居期間がそれなりに長いなどの事情がある場合には、有責配偶者から離婚を切り出しても認められることがあります。

どれくらいの別居期間があれば離婚できる?

「何年別居すれば離婚できる」と言い切ることは困難です。夫婦関係が破綻していると客観的に判断されるようになるまでの期間は、夫婦によって違うからです。
別居期間が相当長いといえるかどうかは、基本的に、夫婦の年齢、子供の有無、別居の理由などを考慮して、同居期間と比較しながら判断します。
なお、過去の事案からみて、裁判所は大体3~5年程度の別居を目安に離婚請求を認める傾向にあります。

ただし、これはあくまでも夫婦間にDVや不倫、浪費癖などの問題がない場合の目安です。離婚事由となり得る問題があれば、別居期間が短い、または別居していなくとも離婚が認められる可能性があります。

単身赴任や家庭内別居も別居として認められる?

単身赴任や家庭内別居は、婚姻関係の破綻を示す「別居」としては認められない可能性が高いです

単身赴任は、仕事の都合で別居するものであり、当事者の意思によるものではありません。したがって、婚姻関係の破綻を示す「別居」と認められないのが基本です。
とはいえ、例外的に別居と認められるケースもあります。例えば、単身赴任中に離婚にまつわる話し合いを始めたケースで、別居期間について“離婚の意思を伝えた時点から”数え始めた事案があります。

家庭内別居は、実態はともかく、はたから見る限り夫婦関係はうまくいっているように見えることが多いです。家庭内別居が、婚姻関係の破綻を示す「別居」にあたると主張して離婚を認めさせるためには、次のような事情を、離婚を求める側が、客観的に証明する必要があります。

  • 寝室が別である
  • それぞれの生活空間が違う
  • 家事を各自で行っている
  • 家計を別にしている

正当な理由なしに別居すると、離婚時に不利になる

夫婦には法律上同居義務がありますので、正当な理由なく別居すると、離婚手続を進めるうえで不利になりかねません。
例えば、悪意の遺棄をした有責配偶者だとみなされて、離婚請求が認められなくなったり、慰謝料を請求されてしまったりする可能性があります。

正当な理由とはどんなもの?

別居が認められる正当な理由とは、誰が聞いても共同生活を続けるのは難しいと思うような理由です。
具体的には、配偶者が、

  • 肉体関係を伴う浮気をした
  • 自分や子供にDVをしている
  • 収入があるのに生活費を支払わない
  • 健康なのに働こうとしない
  • 重度のアルコールやギャンブルの依存症である
  • 多額の借金を隠していた
  • ひどい浪費癖がある

といった問題を抱えている場合に、正当な理由があると認められる傾向にあります。

不利にならない別居の方法

では、いざ別居するにあたってどのような点に気をつければ良いのでしょうか?
離婚手続を行ううえで不利にならないようにするためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

相手に別居の同意を得る

別居したい場合、相手に別居を希望する理由を明かしたうえで同意を得ることで、有責配偶者だとみなされるリスクを避けることが望ましいです。
相手の同意なく一方的に別居すると、同居義務に違反したとして、「悪意の遺棄」を行った「有責配偶者」だと判断されてしまう可能性があります。そうなると、離婚請求が認められなくなる、慰謝料を支払う必要が出てくるといった不利益を受けてしまいます。
できれば別居に同意する旨を書面で記してもらうのが望ましいですが、難しければ、メールやSNSなどのメッセージのやり取りでも構いません。争われた際に証拠として提出することもできますので、きちんと保存しておきましょう。

親権を獲得したい場合は子供と一緒に別居することを検討する

裁判で親権者を決める際には、「父母のどちらを親権者にするとより子供の利益になるか」というポイントが重視されます。
この点、それまでの環境を維持することは子供の利益になると考えられているため、いままで子の面倒をよく見ていた(金銭面ではなく物理的な意味で)親の方が、親権者に決まりやすい傾向にあります。そのため、子供を連れて別居する場合には、自分が子供を連れていくことが、本当に子供の利益となるのか慎重に吟味する必要があります。

加えて、相手も子供の親権を望んでいる場合、勝手に子供を連れて別居すると「子供を連れ去った」と判断され、親権者を決めるうえで不利になってしまう可能性もあります。

相手が浮気していた場合は証拠を確保しておく

別居すると生活の場が別々になるので、離婚手続で役に立つ証拠を集めるのが難しくなります。なるべく同居している間に、浮気などの証拠を集めておくことが重要です。 特にスマートフォンやPCでのメッセージのやり取り、GPSの移動履歴などは、同居中でもないと目にする機会すらないでしょう。こうした証拠に偶然出くわした場合は必ず確保するという心構えが必要です。

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別居のメリットとデメリット

別居する場合、メリットが得られる一方でデメリットも受けます。詳しくみてみましょう。

〇メリット
・離婚事由になる
離婚事由となるような事情がなく、相手も離婚に同意していない場合、なかなか離婚できません。しかし、長期間別居することで「婚姻関係が破綻した」と判断されれば離婚事由になるので、離婚が認められる可能性が高まります。

・相手に離婚の意思が固いことを伝えられる
別居すれば、本気で離婚を望んでいることが相手に伝わります。また、離れて暮らすことで「離婚」が現実味を帯びてくるので、相手もまじめに向き合わざるを得なくなります。
相手が話し合いに真面目に応じない、または断固として離婚に応じないような場合には、別居することで離婚に一歩近づくかもしれません。

〇デメリット
・同居義務違反と判断される可能性がある
正当な理由なく一方的に別居すると、夫婦の同居義務に違反したとして、「悪意の遺棄」をした有責配偶者とみなされてしまう可能性があります。

・夫婦関係の修復が難しくなる
お互いに冷静になるために一旦別居したのだとしても、離れて暮らすことで愛情が冷めてしまい、夫婦としてやり直すことが難しくなる可能性もあります。

・証拠集めが難しくなる
離れて暮らす相手の持ち物や行動を把握するのは難しいものです。相手の浮気の事実や隠した財産などを十分に調べる前に別居すると、同居していた時と比べて証拠を集めるのが困難になってしまいます。

別居の際に持ち出すべきもの

別居の際には、次のような貴重品やしばらく生活できるだけの生活用品を持ち出すことは避けられないでしょう。

  • 財布
  • 通帳
  • クレジットカード
  • 運転免許証
  • スマートフォン
  • 充電器
  • 常備薬
  • 当面の衣服
  • 子供が学校で使う教材や道具

また、離婚に備えて、相手の浮気や隠し財産の証拠などの持ち出しも重要です。ただし、通帳やクレジットカードといった相手名義のものを勝手に持ち出すことは避けましょう。トラブルに発展する事態を避けるため、複製や写真におさめるなどして持ち出すことをおすすめします。

別居に伴う手続き

別居するにあたっては、次のような手続が必要になります。

・別居する旨の通知
これから離れて暮らすことを伝えます。

・配偶者の課税証明書の取得
婚姻費用を請求するうえで、所得の有無と金額を証明する「課税証明書」が必要になるので、住民票のある役所に発行請求します。
なお、同居の配偶者でないと代理取得できないので、住民票を異動する前に請求する必要があります。

・婚姻費用の請求
別居中でも夫婦である以上、生活費を分担しなければなりません。配偶者より収入が少なければ婚姻費用を支払ってもらえるので、忘れずに請求しましょう。

・住民票の異動
引っ越してから14日以内に、引っ越し先の役所に住民票の異動を届け出ます。配偶者からDV被害などを受けていて、引っ越し先の住所を知られたくないといった事情があれば、引っ越し先の役所に相談し、閲覧制限をかけてもらうと良いでしょう。

・児童手当の受取人の変更
児童手当は世帯の主たる生計者が受給しています。子供を連れて別居したものの、ご自身が受取人ではない場合には、転居先の役所に受取人の変更を届け出る必要があります。

別居後、荷物を取りに行きたくなった場合

たとえ自宅であっても、別居後、配偶者がひとりで管理している家に勝手に入ってはいけません。また、自分のものか配偶者のものか区別がつきにくい荷物も、勝手に持ち出すべきではありません。別居後にこうした行為をすると、住居侵入罪や窃盗罪に問われてしまう危険があります。
荷物を取りに自宅へ行きたい場合は、荷物の引き取りについて、配偶者ときちんと話し合わなければなりません。直接荷物を取りに行くことを了承してもらえない場合でも、郵送してもらったり、残してきた荷物分の金額を支払ってもらったりすることで、解決を図れる可能性があります。

別居後、生活が苦しくなってしまった場合

たとえ別居中でも、結婚している限り、収入の少ない配偶者は多い方の配偶者に対して生活費(婚姻費用)を請求できます。婚姻費用には、配偶者の生活費だけでなく子供の養育費も含まれています。
別居後、生活が苦しくなってしまったら、あるいは生活が苦しくなることが予想できる場合には、婚姻費用分担請求をすると良いでしょう。

また、生活保護や児童手当、児童扶養手当を受給できる場合もあります。ただし、それぞれ一定の条件を満たさなければならないので、まずは配偶者に対する婚姻費用の分担請求を検討するべきでしょう。

有利な結果と早期解決へ向けて、離婚に詳しい弁護士がアドバイスいたします

相手が離婚に乗り気ではない場合、別居することで良い方向に風向きが変わることがあります。ただし、デメリットを考えずに安易に別居すると、思わぬ不利益を受けてしまいます。
別居をお考えの方は、まずは弁護士に相談し、踏み切るタイミングや事前に準備するべきもの等について、アドバイスを受けることをおすすめします。
離婚したのに相手が応じてくれない、別居に踏み切る勇気が出ないなど、離婚や別居に関してお悩みを抱えている方は、ぜひ離婚問題に精通した弁護士への相談をご検討ください。

夫婦の間で離婚に関連する問題が起こった場合、慰謝料を請求できることがあります。こうした離婚慰謝料はケースに応じて相場が決まっています。
そこで今回は、離婚慰謝料の相場をケース別にご紹介します。慰謝料を請求する際や、請求された慰謝料が妥当かどうかを判断する際などに参考になさってください。

ケース別で見る離婚慰謝料の相場

離婚慰謝料は、一般的に100万~300万円程度に収まることが多いといわれています。
しかし、一口に離婚慰謝料といっても種類はさまざまです。例えば、不貞行為を原因とする離婚慰謝料や悪意の遺棄を原因とする離婚慰謝料、DV・モラハラを原因とする離婚慰謝料などが挙げられます。
では、それぞれの相場はどの程度なのでしょうか?以下、説明していきます。

不貞行為(肉体関係のある浮気、不倫)の離婚慰謝料の相場

こちらが不貞行為に対する離婚慰謝料の相場です。

不貞慰謝料の相場
離婚の有無慰謝料の相場
離婚しなかった場合50万~100万円
離婚した場合100万~300万円

不貞行為とは、既婚者が配偶者以外の人とする、性行為またはこれに類似する行為です。一般的な言葉では「肉体関係のある浮気」や「不倫」と言い換えることができます。
表をご覧いただくとわかるとおり、離婚しなかった場合と離婚した場合では、慰謝料の相場が大きく異なります。
これは、離婚しなかった場合と比べて離婚した方が、不貞行為を原因とする精神的な苦痛が大きいと考えられるためです。同じ理由で、離婚しなかったものの別居をした場合の慰謝料の方が、別居しなかった場合の慰謝料と比べて高額になります。

不貞相手への慰謝料請求について

不貞行為は2人ですることなので、不貞行為をした配偶者だけでなく、不貞相手にも慰謝料を請求できるのが基本です。
ただし、不貞相手に請求するためには、次の条件を満たさなければなりません。

  • 不貞相手が、既婚者との性行為やその類似行為だと知っていた、または注意すれば知ることができた
  • 不貞行為のせいで婚姻関係が壊れた(不貞行為の前に共同生活が破綻していなかった)

なお、前項の不貞慰謝料の相場は、不貞行為をした配偶者と不貞相手の両方に請求できる慰謝料の合計金額です。
つまり、不貞行為が原因で離婚した場合、配偶者と不貞相手それぞれに300万円(合計600万円)を請求できるわけではなく、不貞行為に関する2人の責任の度合いに応じて、合計300万円の範囲内でそれぞれに対して慰謝料を請求できるということです。

悪意の遺棄の離婚慰謝料の相場

悪意の遺棄をされた場合に請求できる慰謝料の相場は、下記のとおりです。

悪意の遺棄の慰謝料の相場
離婚原因慰謝料の相場
悪意の遺棄50万~300万円

悪意の遺棄とは、正当な理由がないにもかかわらず、夫婦の義務を果たさないことをいいます。
具体例を出すと、同居を拒否して勝手に家を出る、収入があるのに生活費を負担しない、健康上の問題がないのに働かないといったものです。
悪意の遺棄で請求できる慰謝料の相場には大きな幅があります。なぜかというと、悪意の遺棄にあたる行為からどれだけの精神的苦痛を受けたのかによって、慰謝料の金額は変わってくるからです。一般的に、婚姻中の同居期間に対する別居期間の長さ、未成年の子供の有無、悪意の遺棄にあたる行為の悪質度などを総合的に考慮して、慰謝料の金額が決定されます。

DV(家庭内暴力)・モラハラの離婚慰謝料の相場

DVやモラハラの被害を理由に請求できる慰謝料の相場は、下表のとおりです。

DV・モラハラの慰謝料の相場
離婚の有無慰謝料の相場
離婚しなかった場合50万~100万円
離婚した場合200万~300万円

DV(家庭内暴力)とは、家庭内で行われる暴力全般のことです。
DVには、殴る蹴るといった身体的暴力はもちろん、ひどい暴言を浴びせるといった精神的暴力、生活費を渡さないといった経済的暴力、性行為を強制する性的暴力なども含まれます。
そしてモラハラは、DVのうち、精神的暴力のひとつです。大声で露骨な暴言を浴びせるようなわかりやすい暴力ではなく、不機嫌な態度や冷たい言葉で心を傷つけて精神的に支配します。

DVの中でも身体的暴力は、暴力行為の事実やその程度を比較的証明しやすい部類です。
これに対して、身体的暴力以外は立証が難しい場合が多く、客観的な証拠がなければ慰謝料を請求できないこともあります。慰謝料請求を考えている方は、日頃から証拠となりそうなものを集めておくことをおすすめします。

性格の不一致で離婚した場合の慰謝料相場

性格の不一致が原因で離婚した場合、基本的に慰謝料はもらえません。
そもそも離婚慰謝料は、配偶者の違法な行為から受けた精神的苦痛に対する賠償です。夫婦の性格の不一致はどちらか一方が悪いといえるものではなく、違法な行為でもありません。
そのため慰謝料は発生しないので、一般的な相場もありません。

その他のケース

そのほかにも離婚慰謝料をもらえるケースがあります。どのケースも、配偶者の違法な行為から受けた精神的苦痛の程度によって、慰謝料の金額が変わってきます。

・一方的に離婚を切り出されたケース
配偶者に一方的に離婚を切り出され、理由も説明してもらえないケースでは、慰謝料が認められる可能性があります。相場としては、0~100万円程度といわれています。

・セックスレスになっているケース
正当な理由がないにもかかわらず性交渉を拒否され続けた場合、セックスレスを理由に慰謝料を支払ってもらえる可能性があります。金額は、セックスレスの期間や性交渉がなくなった原因などに応じて、0~100万円の範囲に収まることが多いです。

・中絶しなければならなくなったケース
脅されて中絶した、強姦された・避妊していると嘘をつかれた結果妊娠して中絶したといったケースでは、おおよそ100万~200万円の慰謝料が認められます。

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離婚の慰謝料に明確な算定基準はある?

離婚慰謝料には相場はありますが、金額を計算する明確な算定基準はありません。話し合いをして夫婦が合意できるなら、相場より高額あるいは低額な金額にするなど、自由に取り決めることができます。
このように話し合いで慰謝料について取り決める場合は、裁判で争う場合と比べて、夫婦それぞれの事情に応じた柔軟な解決を図ることができます。
話し合いで解決できなければ、調停や裁判などの裁判手続を利用することになります。しかし、裁判手続には時間と労力がかかりますし、話し合いのように自由に取り決めることはできないので留意しましょう。

離婚慰謝料の金額に影響を与える要素

慰謝料の金額を決める際には、それぞれの夫婦の事情が大きく影響します。そのため、場合によっては相場から外れた金額になることもあります。
では、具体的にどのような事情がどういった影響を及ぼすのでしょうか?以下、みていきましょう。

婚姻期間

婚姻期間が長いほど、夫婦の信頼関係が強くなると考えられるので、配偶者の違法な行為や離婚によって受ける精神的な苦痛が大きくなると一般的に考えられます。そのため、婚姻期間が長くなるにつれ、受け取れる慰謝料も高額になる場合が多いです。

当事者双方の年齢

高齢の夫婦の場合も、慰謝料が高額になりやすいといわれています。夫婦の年齢が上がるほど婚姻期間が長くなる傾向にあること、若い時に離婚するよりも高齢になってから離婚する方が精神的な苦痛が大きいと考えられることといった理由があるためです。

当事者双方の資産や収入状況

慰謝料を請求された配偶者の資産や収入が多い場合、相場どおりの慰謝料を請求すると、一般的な場合と比べて負担が軽くなってしまいます。そこで、資産や収入に見合った負担にするために慰謝料が高額になることがあります。
反対に、慰謝料を請求された配偶者に資力がない場合には、相場どおりの慰謝料では必要以上の負担になってしまうので、慰謝料が低額になる可能性があります。

不貞行為があった場合

不貞相手が妊娠/出産した場合

不貞相手が妊娠・出産した場合、妻が受ける精神的なショックは大きくなりますし、夫婦関係も大きく壊れることになるので、慰謝料が高額になりがちです。
なお、不貞相手が中絶した場合でも、不貞相手との間に子供ができた事実に変わりはないので、慰謝料は高額になるでしょう。

不貞行為によって婚姻関係が破綻したかどうか

不貞行為の前に婚姻関係が破綻していた場合、慰謝料を請求しても認められません。法律で守られるべき「平穏な夫婦生活」は既に壊れているので、配偶者の不貞行為が違法にならないからです。
一方、家庭が円満だった場合には、不貞行為によって壊される婚姻関係の程度が大きく、深刻な精神的苦痛を受けると考えられるので、慰謝料が高額になる可能性が高いでしょう。

不貞行為を知ったことによりうつ病等を発症した場合

配偶者が不貞行為をした事実を知ってうつ病などの精神病を発症した場合、それだけ大きな精神的苦痛を受けたと考えられるので、慰謝料が高額になる可能性があります。
なお、慰謝料を請求する際には、うつ病などを発症したことを証明するための証拠が必要です。一般的には医師の診断書や病院のカルテ、領収書等が証拠となるでしょう。

DV・モラハラの場合

DV・モラハラの期間・回数

DV・モラハラを受けていた期間が長かったり、日常的に行われていたなど回数が多かったりするほど、慰謝料は高額になります。被害を受けていた期間が短いまたは回数が少ない場合と比べて、精神的な苦痛が大きいと考えられるからです。

DVによる怪我の程度や後遺症の有無

配偶者から身体的な暴力を受けて重い怪我を負った場合、慰謝料が高額になる可能性が高いです。さらに、怪我が完治せずに後遺症が残ってしまったときは、慰謝料がより高額になるでしょう。

モラハラを受けたことによりうつ病等を発症した場合

うつ病などの精神病は強いストレスがかかった結果発症することが多いので、配偶者のモラハラが原因で発症した場合、かなり強い精神的苦痛を受けていたと推測できます。そのため、慰謝料が高額になる可能性が高いでしょう。
ただし、モラハラが原因で発病したという因果関係を立証する必要があります。例えば、配偶者から受けたモラハラの詳細を記録したメモ・日記や、発病の原因について触れた医師の診断書などが証拠となり得るでしょう。

離婚慰謝料の相場についてわからないことがあれば弁護士に相談しましょう

ここまで、離婚慰謝料の相場や、慰謝料の金額に影響を与える事情などについて解説してきました。しかし、そもそも配偶者の違法行為を証明できる証拠がなければ、慰謝料を支払わせることもできないでしょう。相手が言い逃れできないだけの客観的な証拠を集める必要があります。
離婚問題に詳しい弁護士に相談すれば、どのようなものが証拠になるのか、どういった方法で集めれば良いのかといったアドバイスを受けることができます。
また、反対に離婚慰謝料を請求されてお困りの方は、請求された慰謝料が適正なのか、減額の余地はあるのかといった点を確認されたいでしょう。この点についても、弁護士ならご夫婦の事情に応じた慰謝料の目安をつけられますし、減額のための糸口を見つけられる可能性もあります。
離婚慰謝料の相場について疑問やお悩みを抱えていらっしゃる方は、ぜひ弁護士への相談をご検討ください。

交通事故に遭ってしまったら、乗っていた車が壊れたり、ご自身や同乗者の方が怪我をしたり、時には亡くなってしまったりする等、様々な損害が発生します。しかし、泣き寝入りすることはありません。加害者に対して、こうした損害を埋め合わせるよう請求できます。
今回は交通事故における損害賠償について、その対象となるもの、一般的な相場、請求の流れ、減額される事情、加害者が支払えない場合の対処法など、請求するうえで欠かせない知識をご紹介します。

交通事故の損害賠償とは

交通事故における損害賠償とは、加害者にお金を支払わせることで、事故によって発生した損害を埋め合わせることをいいます。
例えば、車の修理費や怪我の治療費、通院にかかった交通費、働けなかったために得られなかった収入、将来の介護にかかる費用、事故による精神的・肉体的苦痛などが、事故によって発生した損害にあたります。このような損害を受けてしまったら、賠償を請求することができます。
損害賠償を適切に受けるためには、対象となる損害をしっかりと把握しなければなりません。

慰謝料との違い

慰謝料と混同されている方も多いですが、損害賠償金は慰謝料とイコールではありません。違いについてはこちらをご覧ください。

交通事故の慰謝料

損害賠償の対象になるもの

交通事故、特に人の生命・身体が害される人身事故で請求できる損害賠償の項目は、大まかに「精神的損害」と「財産的損害」に区別できます。そして、「財産的損害」はさらに「積極損害」と「消極損害」に分けられます。
それぞれが具体的にどのような損害を指すのか、以下、詳しくみていきましょう。

精神的損害

「精神的損害」とは、交通事故によって受けた精神的な苦痛のことです。例えば、怪我の痛みや後遺障害が残った苦しみ、被害者が亡くなってしまったことによる悲しみなどが考えられます。こうした精神的損害の賠償として支払われるお金が「慰謝料」です。
慰謝料には、次の3つの種類があります。

〇入通院慰謝料
交通事故を原因とする怪我の入通院に伴う、精神的な苦痛の賠償として支払われるお金です。

〇後遺障害慰謝料
事故により後遺障害が残ってしまったという、精神的な苦痛の賠償として支払われるお金です。

〇死亡慰謝料
事故に遭った被害者が亡くなってしまったことで生じた、精神的な苦痛の賠償として支払われるお金です。

財産的損害

「財産的損害」とは、交通事故により失われた財産上の利益のことです。「積極損害」と「消極損害」の2種類に分けることができます。
どちらも耳慣れない言葉なので、具体的にどのような損害かイメージがつきにくいのではないでしょうか。例えばどんなものが含まれるのか、細かくみていきましょう。

積極損害にあたる費目

財産的損害のうち「積極損害」とは、交通事故によって実際に支払うことになった、または将来的に支払わなければならないお金をいいます。次のような損害が積極損害にあたります。

〇治療関連費
交通事故が原因で負った怪我を治療するためにかかったもろもろのお金です。純粋な治療費のほか、入院費用、検査代、投薬料、付添看護費、診断書などの文書料、治療器具代、入院雑費、通院交通費といった、治療に関連してかかる費用もまとめて請求できます。

〇将来の介護費
事故の被害者に重い後遺障害が残ってしまい、将来にわたって介護が必要になってしまった場合に請求できる、介護をするうえで必要になるお金です。

〇家屋・車両改造費
事故により後遺障害が残ってしまい、日常生活を送るうえで家や車をバリアフリー化する際に必要になったお金です。

〇葬儀関係費
事故の被害者が亡くなってしまった場合に行う、葬儀にかかるもろもろのお金です。葬儀費用や仏壇・仏具の購入費、墓石積立費、お布施、お花代などが含まれます。

〇弁護士費用
交通事故による損害賠償を請求するにあたって、弁護士に相談・依頼した際にかかる費用です。かかった弁護士費用そのものが請求できるわけではなく、認容された損害賠償額の1割程度で計算されます。なお、弁護士費用が請求できるのは、裁判の判決で損害賠償請求が認められた場合だけなので注意しましょう。

消極損害にあたる費目

「消極損害」とは、財産的損害のうち、交通事故さえなければ得られたはずの収入や利益といったお金をいいます。
消極損害には「休業損害」と「逸失利益」があるので、次項以下で説明していきます。

休業損害

「休業損害」とは、交通事故が原因で働けなくなり、減ってしまった収入や利益のことです。
例えば、

  • 交通事故による治療のために仕事を休んだため、その日数分の賃金が一部または全部支払われなかったケース
  • 交通事故の影響で仕事を休んだ結果、ボーナスが減ったケース

などで、休業損害が認められる可能性が高いでしょう。

休業損害は、一般的に“1日あたりの損害額”に“仕事を休んだ日数”をかけて計算します。なお、職業や怪我の内容などによって、損害額や仕事を休んだ日数の考え方が変わることもあるので注意が必要です。

逸失利益

「逸失利益」とは、交通事故に遭わなければ得られていたはずの収入や利益といったお金のことです。収入・利益が減った原因によって、次の2種類に分けることができます。

〇後遺障害逸失利益
交通事故による後遺障害が残ってしまった影響で減ってしまったお金です。
「1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数」という計算式で求めることができます。

〇死亡逸失利益
交通事故により被害者が亡くなってしまった影響で減ってしまったお金です。
こちらは、「1年あたりの基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応したライプニッツ係数」という計算式で求められます。

休業損害と同様、被害者の職業や怪我の内容、性別、年齢、実際の収入額などの個別の事情によって、“基礎収入”や“ライプニッツ係数”の数値が変わるので気をつけましょう。

物損事故における損害賠償について

物損事故は、物にだけ被害が及ぶ事故なので、基本的に財産的損害しか認められません。
認められる損害の項目としては、

  • 壊れた物の修理費・格落ち損(評価損)
  • 代車料
  • 買替差額
  • 新車の登録手続き関係費
  • 休車損害

などがあります。

一方、精神的損害に対する賠償である、慰謝料は認められないのが通常です。なぜなら、誰も怪我をしない物損事故では肉体的苦痛は発生しませんし、精神的苦痛についても、財産損害を賠償すれば癒されるだろうと考えられているからです。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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損害賠償額に相場はある?

交通事故の損害賠償額について、一般的な相場を紹介するのは困難です。交通事故はひとつとして同じ状況のものはないので、それぞれの事案によって損害賠償額の求め方や金額が違ってくるからです。
ただし、損害賠償金の種類によっては相場があるので、損害賠償額の目安を示すことができる場合もあります。

使用する算定基準によっても損害賠償額は大きく変わる

損害賠償を計算する際には、3つある算定基準のうち、どれか1つを使います。使用する算定基準によって、損害賠償額は大きく変わります。
一般的に「自賠責基準 < 任意保険基準 < 弁護士基準」の順に、算定される金額が高額になる傾向にあります。それぞれの基準の特徴は次のとおりです。

〇自賠責基準
自動車を所有している人すべてが加入しなければならない、自賠責保険で使用されている基準です。

〇任意保険基準
自賠責保険で補償しきれない損害の賠償を目的としている、任意保険で使用されている基準です。
任意保険を提供する保険会社ごとに指標が異なるので、注意が必要です。

〇弁護士基準
過去の交通事故に関する裁判例を参考に作成された基準です。主に裁判所や弁護士が使用します。

損害賠償請求の流れ

交通事故で損害を受けたら、次のような流れで加害者に対して損害賠償を請求します。

①相手方本人と、相手方が加入する保険会社を確認する
②-1物損のみ:損害額確定後、示談交渉を開始する
②-2人身事故:完治または症状固定の診断がなされるまで治療を継続する
③-1完治した場合:示談交渉を開始する
③-2症状固定した場合:後遺障害等級認定を申請し、その結果をもって示談交渉を開始する

自賠責保険に請求する方法

自賠責保険に損害賠償を請求する方法は、“誰が”請求するかによって「被害者請求」と「加害者請求」の2通りに分けられます。

〇被害者請求
加害者側の自賠責保険会社に対して、被害者本人(または代理人の弁護士)が損害賠償金を支払うよう請求する方法です。つまり、被害者側が請求します。

〇加害者請求
加害者が被害者に損害賠償金を支払った後、支払った金額分の保険金を自分に支払うよう、加入している自賠責保険会社に請求する方法です。被害者請求とは違い、加害者側が自分の自賠責保険会社に請求することになります。

損害賠償請求に時効はある?

損害賠償を請求する権利も時効にかかるので、請求できる期間は限られています。ただし、事故の状況によって時効にかかるまでの期間が異なります。

【物損事故】
〇事故日から3年

【人身事故】
〇後遺症がないケース:事故日から5年
〇後遺症が残ったケース:症状固定日から5年
〇被害者が亡くなったケース:死亡日から5年

※加害者がわからないケース:事故日から20年
後になって加害者がわかった場合は、加害者がわかった日から3年(物損事故)または5年(人身事故)

損害賠償額の減額要素

損害賠償を請求しても、計算したとおりの金額を満額支払ってもらえるとは限りません。例えば、「過失相殺」や「素因減額」を行うべき事情があれば、損害賠償金は減額されてしまいます。

過失相殺

「過失相殺」とは、加害者だけでなく被害者も事故に関する責任を負う場合に、その責任の重さ(過失割合)に応じて、支払ってもらえる損害賠償金を減額することです。
加害者に追突されたケースやセンターラインをオーバーしてきた加害者に衝突されたケースなどのもらい事故でもない限り、基本的に被害者にも過失割合が認められるので、過失相殺によって損害賠償金が減額されることは珍しくありません。

素因減額

「素因減額」とは、被害者の特殊な体質や身体的・精神的な要因によって、事故による損害が発生した、または拡大したといえる場合に、その要因(素因)を考慮して損害賠償金を減額することです。
例えば、椎間板ヘルニアの持病を持っている被害者が、事故後痛みやしびれの悪化を訴えたような場合、事故後の痛みやしびれのすべてが事故の影響によるものとは考えにくいので、ある程度損害賠償金が減らされてしまう可能性があります。
これに対して、平均より首が長く頚椎に不安定なところがあった被害者がバレリュー症候群を発症したとしても、疾患といえる程度でない限り、素因減額すべきでないと判断した裁判例があります。つまり、平均的な体格・体質から多少外れていても、すぐに素因減額が行われるわけではありません。

加害者が損害賠償を払えない場合

加害者が損害賠償金を支払えないといっても、その理由によってとるべき対応が異なります。
まず、加害者に支払う意思があるものの十分な収入や財産がなく支払えない場合には、「分割払い」や「支払いの猶予」を認め、加害者の経済的な負担を軽減してみることをおすすめします。
それでも支払いが難しい場合や、加害者側が提案した示談案を譲らず話し合いが難航する場合には、「裁判」や「ADR」といった制度を利用して解決を図ることができます。
また、加害者が任意保険や自賠責保険に未加入で賠償を受けられない場合には、政府保障事業やご自身の任意保険の利用を検討されてみても良いでしょう。

弁護士に依頼することによって適正な損害賠償を受け取れる可能性が高まります

交通事故問題を解決した実績が豊富な弁護士なら、どういった証拠・資料や主張が適正な損害賠償の獲得につながるのかを知っています。このような弁護士に相談すれば、示談交渉のポイントを教えてもらえる、請求項目に抜け漏れや誤りがないかを確認してもらえるなど、様々なメリットを得られます。
また、依頼すればさらに多くのメリットを受けられます。例えば、ご依頼者様に代わって弁護士が示談交渉を行えるようになるので、最も高額な算定基準である弁護士基準で損害賠償金を算定できるようになります。さらに、「裁判を起こすこともためらわない」という強い姿勢で交渉を進めるので、保険会社から妥協案を引き出しやすくなります。
弁護士に依頼すれば、適正な損害賠償を受け取れる可能性が高まりますので、ぜひお気軽にお電話ください。専任のスタッフが丁寧に対応させていただきます。

交通事故のパターンは「人身事故」だけではありません。「物損事故」が起こることもあります。
では、「物損事故」ときいて、具体的にイメージできるでしょうか?

ここでは、賠償の内容、人身事故との違い、物損事故として処理することのリスクなど、「物損事故」に着目して詳しく解説していきます。

物損事故とは

「物損事故」とは、交通事故のうち、物だけが被害を受けた事故をいいます。
例えば、乗っていた車やぶつかったガードレールは壊れてしまったものの、事故の当事者も周囲の人も誰一人怪我しなかったような事故です。
これに対して「人身事故」とは、交通事故のなかでも、人の生命や身体に被害が及んだ事故を指します。交通事故といって多くの方が想像するのは、こちらの人身事故かと思います。

物損事故は、人身事故と比べて被害の規模が小さいと考えられがちなので、加害者は比較的軽い責任しか負いません。また、被害者が受けられる賠償の種類や賠償金の総額が少なくなる傾向にあります。

物損事故で請求できる損害賠償

修理費

物損事故では、事故によって壊れた物の修理費を賠償するよう請求できます。
なお、請求が認められるのは、壊れた部分を修理するのにかかった費用のうち、必要かつ相当だと判断される金額だけです。
事故によって車の塗装の一部が剥げたため、全体を塗り直したケースを例に考えてみましょう。このケースでは、塗り直しにかかった費用のうち、剥げた部分の塗り直しにかかった費用に相当する金額しか修理費として認められないのが通常です。

格落ち損(評価損)

修理で壊れた車を元通りにできなかった場合、格落ち損(評価損)の賠償を請求できます。
事故によって壊れた車を修理しても、見た目や損なわれた機能が完全に元通りになるとは限りません。元通りにならなければ、事故前と比べて車の価値が下がってしまいます。この下がってしまった価値が「格落ち損(評価損)」です。
請求が認められれば、下がった価値に相当する金額を賠償してもらえます。

代車料

車の修理中に代車を利用した場合、利用にかかった費用として代車料を請求できる可能性があります。
そのためには、代車を利用したことに必要性と相当性が認められなければなりません
具体的には、

・事故で壊れた車を通勤や通学などの日常的に欠かせない用途で使っていて、代わりに使える交通手段がない(必要性) ・修理にかかる平均的な期間(1ヶ月程度)、修理中の車と同等のグレードの車を代車として利用した(相当性)

といった状況であれば代車料が認められるでしょう。

買替差額

車の損傷がひどく修理できる見込みがない、または修理費が高額すぎて修理できない場合を「全損」といいます。交通事故が原因で車が全損したときは、事故当時の時価と車の売却代金の差額(買替差額)を請求することができます。
なお、車が全損した場合、通常売却できません。そのため、事故当時の車の時価に相当する金額を請求するのが基本です。

登録手続関係費

交通事故が原因で全損した車を買い替える場合、購入した新車を使用できる状態にするためにいろいろな費用がかかります。これらの費用も事故による損害といえるので、登録手続関係費として賠償請求できます。
例えば、自動車取得税・消費税といった各種の税金や、全損した車を廃車するのにかかる費用、車の検査登録・車庫証明書の取得にかかる費用、新車の納車にかかる費用などをまとめて請求することが可能です。

休車損害

仕事で利用している車が交通事故で壊れ、修理や買い替えが済むまで仕事ができなくなった場合、得られなくなってしまった収入・利益(営業損害)の賠償として、休車損害を請求できます。
仕事で利用していることが条件なので、休車損害が認められるのは、外回りで使っている車や荷物を運搬するトラック、タクシー、バス等の営業車に限られます。
また、仕事をしない分、燃料費や有料道路の利用代金などの経費がかからないため、請求できる金額は「平均売上額-必要経費」となります。

その他

上記に挙げた損害以外にも請求できるものはあります。例えば、以下のような損害です。

  • 事故車を運搬した際のレッカー代
  • 事故車の保管料
  • 時価の査定・修理の見積もりにかかった料金
  • 事故により壊れた家屋や店舗の修理費、評価損
  • 身に着けていた衣服などの損害
  • ペットに関する損害

物損の場合は慰謝料が請求できない?

物損事故の場合、基本的に慰謝料を支払ってもらうことはできません
そもそも慰謝料とは、精神的・肉体的な苦痛を癒すために支払われるお金です。しかし、人の生命にも身体にも被害が及ばない物損事故では、肉体的な苦痛は発生しません。さらに、精神的な苦痛が発生するとしても、修理費や評価損などの財産的な損害を賠償することで癒される程度のものだと考えられるため、別途金銭が支払われることはないのが基本です。

例外的に物損でも慰謝料が認められる場合

物損事故では慰謝料が認められないと説明しましたが、例外的に慰謝料を支払ってもらえるケースもあります。被害者にとって特別な価値のある物が壊れてしまった場合や、住居が壊されて平穏な生活が害されたような場合です。
実際に慰謝料請求が認められた裁判例をご覧ください。

・大阪地方裁判所 平成12年10月12日判決
被告が霊園で車を運転していたところ、ブレーキとアクセルを間違えて原告一家の墓石などを壊してしまったため、原告が損害賠償を請求した事例です。
原告の慰謝料請求について、裁判所は、墓地や墓石等は故人が眠る場所であり、一般的に遺族等が強い敬愛や追慕の念を抱く対象となるものだと判断し、こうした特殊性を考慮して、墓石等を壊されたことで受ける精神的苦痛に対する慰謝料が損害賠償の対象になることを認めました。そして、被告に対して10万円の慰謝料の支払いを命じる判決を下しました。

物損事故の事故処理の流れ

物損事故は、下記のような流れで処理されます。

①事故の発生
物損事故が発生したら、まずは相手方の名前や住所、電話番号など連絡先を確認し、連絡がとれるようにしておきます。また、事故現場の写真や動画を撮影したり、目撃者を探したりして、事故の状況を証明できる証拠を集めます。

②警察や保険会社への連絡
証拠集めと並行して、警察に事故が発生した旨を報告します。ご自身が加入する保険会社への連絡も忘れないようにしましょう。

③示談交渉
車の修理などが終了し、その事故におけるすべての損害額が確定したら、示談交渉を始めます。まずは当事者の話し合いから始め、合意できないようなら、調停や訴訟などの裁判手続の利用を検討します。

④示談成立
過失割合の配分や損害賠償の金額・支払方法などについて合意できたら、示談が成立します。

⑤示談金の支払い
示談成立後、保険会社から送られてきた示談書を確認し、署名・押印して返送した後、示談金を受け取ります。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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少しでも人的損害があった場合は物損事故ではなく人身事故に切り替える

加害者側にとっては、物損事故として処理したほうが何かと都合がいいです。このため、ちょっとした怪我だと、「物損事故として対応したい」と主張されることがあります。
ですが、物損事故では賠償項目に限りがあるため、安易に物損事故として処理されると結果的に損してしまいかねません。
また、物損事故だと警察の取扱はかなり簡潔なものとなり、捜査もそこまでしっかりなされません。後日事故態様が争われた際、証拠がほぼないという事態が生じます。
少しでも怪我をしたら、物損事故ではなく人身事故に切り替えましょう。

人身事故を物損事故にしておくリスク

物損事故では、免許の減点や刑事罰を受けることはありません。そのため、加害者としては物損事故で処理することを希望する場合が多いのですが、被害者にとってはリスクが多いので注意が必要です。
例えば、治療費や慰謝料といった人身損害に対する賠償を受けられないので賠償金が低額になるほか、事故状況の証明に役立つ実況見分調書が作成されないため、過失割合等が争いになりやすいというリスクがあります。他にも、被害者側が損害を立証しなければならない、自賠責保険が適用されない、事故を起こした運転者にしか損害賠償請求できない、後から痛みが出てきた場合に交通事故との因果関係が疑われやすいといったリスクが考えられます。

物損事故から人身事故に切り替える方法

物損事故から人身事故に切り替えるためには、必要書類を集め、警察署で変更の手続を行う必要があります。具体的には、次のような手順で物損事故から人身事故に切り替えることになります。

①病院で医師の診察を受け、診断書を作成してもらう
人身事故に切り替えるためには、被害者が交通事故により怪我をしたことを証明する必要があります。

②事故現場を管轄する警察署に行き、必要書類を提出して人身事故への変更手続を行う
必要書類として、診断書のほか、車検証や運転免許証などの提出を求められる場合があります。

③人身事故として調査が行われる
当事者それぞれから事故の状況を聴き取る取り調べや、当事者が立ち会うなかで事故の状況を調べる実況見分などが行われます。

人身事故に切り替わったら、人身事故であることを証明する事故証明書を取得できるようになります。損害賠償金を請求するうえで大切な書類なので、請求前に取得しておくと良いでしょう。

物損事故の弁護士依頼は損?費用倒れにならないケースとは

物損事故の場合、業者の見積もりや市場価格、実際にかかった費用といった客観的な基準で損害額を計算するのが基本です。そのため、交渉によって増額できる余地が少ない場合も多く、弁護士に依頼しても、増額した金額より弁護士費用の方が高くなってしまう(費用倒れしてしまう)リスクがあります。
しかし、法的に問題になりやすい損害について交渉することで、費用倒れになることを防げる場合もあります。例えば、「過失割合を少なくする」「評価損を認めさせる」ことができるケースです。

過失割合が少ない

過失割合があると、割合に応じて、もらえる損害賠償金が減額されてしまいます。したがって、損害賠償金を増額するためには、過失割合をいかに少なくできるかが重要といえます。
一般的に、保険会社は過失割合を多めに見積もった示談案を提示してくるので、弁護士に依頼することで、適正な割合に修正して増額を図れる可能性があります。

評価損が認められた

過去の傾向からすると、評価損は修理費用の10~30%程度とされる場合が多いようです。しかし、明確な基準は決まっていませんし、被害者個人が交渉に臨んでも、保険会社は簡単には評価損を認めてくれません。
この点、専門知識のある弁護士に交渉を任せれば、保険会社に評価損を認めさせることができる可能性があります。

物損でも場合によっては弁護士の介入がプラスになることがあります。まずはご相談ください

物損事故では、賠償してもらえる損害が限られていますし、損害額も低い場合が多いため、いい加減な対応をしがちです。しかし、保険会社からの示談案をきちんと確認せずに合意してしまうと、適正な賠償を受けられなくなりかねません。
弁護士に相談すれば提示された示談案が適切か、他に請求できる損害項目はないか、増額できる余地はないかなど、被害者の方だけでは判断しにくい点をしっかりと確認してくれます。そのため、結果的に賠償金の増額につながる可能性があります。
物損事故の場合、事故車の修理の可否といった専門的な判断も必要になることもあるので、ぜひ交通事故事案に精通した弁護士への相談をご検討ください。

「法定相続人」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。法定相続人は、その名の通り、相続が発生したときに問題になります。では、法定相続人とは、何でしょうか。以下では、法定相続人について、解説していきます。

法定相続人とは

法定相続人とは、読んで字のごとく、法律で定められた相続人のことをいいます。民法では、886条以下に法定相続人について規定しています。誰が法定相続人に該当するかは、相続人調査を行い確定していきます。

法定相続人の範囲

法定相続人となりうるのは、被相続人の配偶者、子供、親兄弟、祖父母、孫、ひ孫、甥姪です。以上に挙げた人々は、法定相続人になりうる人であり、必ず相続人になるわけではありません。以下で、法定相続人となる場合をあげていきます。

配偶者は必ず相続人になる

被相続人が死亡した時点で配偶者がいれば、その配偶者は必ず法定相続人となります(民法890条)。配偶者については、他の法定相続人と異なり、特別な配慮がされています。

子供がいる場合

子どもがいる場合、配偶者と子どもが相続人となります。その際、配偶者が遺産の半分について権利を有し、子どもは、残り半分を、頭数で割ることになります。やはり、配偶者は、相続割合でも優遇されています。

子供がいない場合

子どもがいない場合、被相続人の両親か祖父母といった、直系尊属がご存命の場合、配偶者とご両親らが遺産を分けることになります。この場合、子どもがいる場合とは異なり、配偶者は遺産の3分の2について権利を有します。
一方、ご両親ら、直系尊属がご存命でない場合も、ご兄弟、又は、甥姪がいれば、配偶者と、ご兄弟又は甥姪が相続人となります。この場合、配偶者は、遺産の4分の3について、法定相続分を有します。

子供がいるが離婚している場合の法定相続人は?

離婚した場合、配偶者はいない扱いになります。そのため、子どもだけがいる状態と同じになります。子どもだけの場合、ご両親ら直系尊属や、ご兄弟らには、相続権はなく、子どもたちだけで相続します。

死別などで配偶者がいない場合の法定相続人は誰か

配偶者がいない場合、子どもや孫がいれば、子どもや孫が法定相続人となります。子どもや孫がいない場合、両親などの直系尊属が法定相続人となります。両親ら直系尊属が亡くなっている場合、兄弟や甥姪が法定相続人となります。

独身の場合の法定相続人は誰か

独身の場合、結婚はしなくともシングルマザーやシングルファーザーのような状況で、子どもがいる場合はありますので、結局は、配偶者がいない場合と同じとなります。

兄弟・姉妹は法定相続人になるか

上述しているように、兄弟姉妹は、被相続人に子どもや孫がいないか、既に全員死亡している場合で、かつ、直系尊属全員が死亡している場合です。そのため、法定相続人になりますが、なる確率は低いといえます。

甥・姪は法定相続人になるか

甥姪も、上述のように法定相続人になりえます。もっとも、これは、代襲相続が発生した場合です。代襲相続とは、法定相続人が相続前に死亡したり、相続欠格事由がある場合に、当該法定相続人の子どもに相続権が移る制度です。つまり、被相続人が死亡する前に、兄弟姉妹が死亡したり、相続欠格事由にあたる行為をしていたときは、甥姪に代襲相続が発生し、法定相続人になります。

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孫は法定相続人になるか

上述のように、代襲相続が発生した場合に孫も法定相続人になります。しかも、甥姪の場合と異なり、再代襲相続が発生しますので、ひ孫も法定相続人になりえます。

養子は法定相続人になるか

養子も、もちろん法定相続人になります。しかも、特別養子縁組でない場合、養子に出した親の子でもあるため、双方で法定相続人になります。
法定相続人かどうかは、血のつながりではなく、法律上のつながりで判断されるためです。

相続には順位があり、全員が相続できるわけではない

上述のように、全員が法定相続人となるわけではありません。すべてにおいて、配偶者が優先し、子どもがいれば、配偶者の次に優先して法定相続人となります。両親ら直系尊属は、子どもや孫、ひ孫がいないときに初めて法定相続人となります。そして、兄弟姉妹、甥姪は、被相続人の子どもら直系卑属、両親ら直系尊属がいないときに初めて相続人となります。

法定相続人がいない場合

では、上述した法定相続人がいないときはどうなるのでしょうか。
法定相続人がいない場合、まず、相続人の捜索の公告が出されます(958条)。それでも、法定相続人が発見できない場合、特別縁故者が請求すれば、財産の全部又は一部を受け取れる場合があります(958条の3)。そのような手続きを経て、なお、遺産が残った場合、その遺産は国庫に帰属し、国の物になります(959条)。

法定相続人についてお困りなら弁護士にご相談ください

誰が法定相続人となるのかについて、相続の場面では問題になることが多々あります。法定相続人となるかどうかは、相続できるかどうかに直結するからです。法定というだけあって、これらの問題には、高度な法的視点が必要になる場合があります。そのため、法定相続人について、ご質問があれば、弁護士にまずはご相談をした方がよいでしょう。

相続順位とは

法律上、相続人となるかについて、厳格なルールがあります。
そのルールの一つが、相続順位です。
基本的には、順位が高い者がいるうちは、順位の低い者は相続人となることができません。

配偶者は原則的に法定相続人(順位無し)

被相続人の配偶者は、相続順位のルールに関係なく、常に相続人となります。
もっとも、これは「法的に」婚姻関係にある配偶者の場合のみです。
いわゆる事実婚の場合や、内縁関係の場合には相続人となりません。

第1順位は子供

相続順位の1位は、被相続人の子どもです。
子どもが複数人いる場合には、その年齢関係なく、子ども全員、平等に第1順位となります。そして、原則として、一人一人の子どもが受け取る遺産の割合も平等です。

例えば、被相続人の配偶者1人と子ども2人が相続人の場合、配偶者の相続分は2分の1であり、残った相続分を子ども2人に平等に割り付けるので、子ども一人の相続分は4分の1となります。

胎児も相続人として認められる

民法886条において、胎児は相続の場面では生まれたものとして扱うことが定められています。
つまり、胎児が1人いれば、子どもが1人いるものと扱われます。

ただ、不幸にも死産であった場合、胎児が相続権を持っていなかったものと扱われます。
そのため、民法上、胎児を生まれたものと扱う条文がありますが、子どもが出産した後に遺産を分けることが多いです。

養子の相続順位

被相続人が、養子に迎え入れた子どもがいる場合、その養子も第1順位の相続件を有する子どもとして扱われます。
その一方で、実の子どものように接していたとしても、戸籍上、養子になっていない場合には、相続権を得ることができません。

隠し子や未婚の子がいた場合

実の父親が亡くなった隠し子や未婚の子どもであっても、認知をされていれば、第1順位の相続人となります。
ただ、実際には、父親が任意に認知をすることを拒んだ等、諸事情によって認知を受けられていない子どももいます。
その場合には、父親が生きている間、もしくはなくなってから3年以内に、子どもの方から認知の訴えを起こして裁判所から認知について判断をしてもらうことが考えられます。

第2順位は親

被相続人に第1順位の相続人がいない場合、第2順位の相続人が相続することになります。
そして、まずは親が第2順位の相続人となります。
ただ、法定相続分については配偶者がいる場合、子どもとは異なります。
具体的には、配偶者が3分の2、第2順位の相続人で合計3分の1もらえることになります。
つまり、両親ともに健在であれば、各親が6分の1ずつ、親が一人の場合には3分の1が親に渡ることになります。

第3順位は兄弟姉妹

被相続人に第1順位、第2順位の相続人がいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。
そして、配偶者がいる場合、配偶者の法定相続分は4分の3、兄弟姉妹全員の相続分合計が4分の1になります。
兄弟姉妹が複数いる場合の各々の相続分を求めるには、4分の1を頭割りします。

第4順位以降は存在しない

第1順位から第3順位の相続人が存在しない場合、配偶者がいるのであれば配偶者のみが相続人になります。
配偶者がいない場合、相続人が存在しないことになり、被相続人の遺産が国庫に帰属します。
もっとも、相続人が存在しない場合であっても、特に被相続人と密接に関与してきた者(例えば、内縁の夫や妻)から裁判所に対し、自身を特別縁故者として認めるよう求めることができます。
特別縁故者として認められたのであれば、遺産の一部を受けとることができる可能性があります。

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相続順位の特殊例 代襲相続とは

本来、相続人となるべき人が相続開始前に亡くなってしまうことがあります。
もっとも、その人の相続順位を受け継ぐ場合があります。
そのように、相続人となるべき人が相続権を失う場合、下の世代が相続権利を継承することを代襲相続といいます。
被相続人が亡くなる前に子どもが亡くなっているので、被相続人の孫がその相続権を受け継ぐ場合が典型例です。

ただ、相続人が亡くなっていない場合であっても代襲相続が発生することがあります。
例えば、故意に被相続人を死亡させた子どもは、相続欠格事由に該当するため、相続人としての資格がはく奪されます。
しかし、相続権をはく奪された子どもの子、つまり、被相続人の孫は代襲相続によって第1順位の相続人となります。
このように、相続人が亡くなっていない場合でも、代襲相続が起きる場合もあります。

再代襲相続は第1順位のみ

被相続人が亡くなり、代襲相続によって相続権を受け取るはずの者もなくなっている場合もあります。
その場合であっても、子どもから孫、孫からひ孫と下の世代がいる限り相続権は移り続けます。このことを再代襲相続と言います。
ただ、第3順位では再代襲相続が認められません。

相続順位が繰り上がるケース

相続人の中に相続放棄が発生した場合、代襲相続は起きません。
これは、相続放棄の結果、相続の初めから相続人ではなかった扱いとなるからです。
代襲相続が発生するには、相続をしない相続人であった必要はあるので、相続放棄をした者の下の世代はその条件を満たしません。

そのため、第1順位の者が全員相続放棄をすれば、第2順位に相続順位が移ります。

相続順位はトラブルも多いので弁護士にご相談ください

相続の争いがいったん起きると、本来相続権のない親族が口を出してきたり、相続割合を法律通り進めることを妨害するものが現れたりすることもあります。
また、相続順位について理解した上で、相続の話合いに臨んだとしても、代襲相続が発生していることを気づかないこともあります。
そのため、一度は弁護士に事情をご相談し、法律上、ご相談者様の相続において見落としがないか、各関係者の主張が法的に正しいものかどうか等、説明を受けることが有用です。

「愛するパートナー(配偶者)が自分を裏切って浮気をしていた……」
そんな事実がわかってしまったら、大変なショックを受けられると思います。傷ついた心をお金で癒すことはできませんが、せめて満足のいく慰謝料を支払ってもらいたいと思うのは自然な感情でしょう。
本記事では、配偶者が浮気・不倫をしていた場合に請求できる慰謝料について説明していきます。請求するうえで重要な証拠やよく受ける質問についても解説しますので、参考になれば幸いです。

浮気・不倫が原因の慰謝料について

浮気(不倫)の慰謝料は、配偶者が浮気(不倫)相手と不貞行為をしていた場合に請求することができます。
不貞行為をした事実があれば、基本的に、浮気が原因で離婚したかどうかに関係なく慰謝料を請求できます。ただし、必ず請求が認められるとは限りません。
詳しくは次項以下で説明します。

浮気の慰謝料が請求できるのはどこからか

浮気の慰謝料請求が認められるのは、配偶者と浮気相手が不貞行為をした事実がある場合です。
不貞行為とは、配偶者以外の人とする、性交行為やそれに類似する行為をいいます。つまり、配偶者が自分以外といわゆる肉体関係を結んでいる場合に、浮気の慰謝料を請求することができます。
ただし、次項で説明するように、不貞行為の事実があっても慰謝料請求できないケースがあります。

慰謝料が発生しないケースもある

次のような事情があるケースでは、たとえ不貞行為をした事実があったとしても、慰謝料の請求が認められない可能性があります。

不貞行為が行われる前に夫婦関係が破綻していた

不貞行為によって夫婦関係が壊されたとはいえないので、浮気の慰謝料は発生しません。

浮気相手が不貞行為をした事実を認識していない

配偶者が浮気相手に既婚であることを隠していて、浮気相手が落ち度なく未婚だと信じていたようなケースでは、浮気相手は不貞行為について法律上責任を負いません。そのため、浮気相手に対する慰謝料は発生しません。

請求した時点で時効が成立していた

浮気の慰謝料を請求できる権利は、下記の期間が経過すると消えてしまいます。これを「消滅時効の成立」といいます。

  • 不貞行為があった事実や浮気相手を知った時から3年
  • 最初の不貞行為から20年

不貞行為に対する慰謝料の相場

浮気の慰謝料、特に、不貞をした配偶者が裁判の結果負う慰謝料の相場は、次のようにいわれています。

  • 離婚はしない場合:50万~100万円程度
  • 離婚した場合:200万~300万円程度

なお、相場よりも高額・低額になることもあります。
例えば下記のような事情があるケースでは、相場よりも低額になる可能性が高いでしょう。

  • 自分も浮気やモラハラ、DVをしていた等、過失がある
  • 浮気をした配偶者や浮気相手の収入や財産が少ない
  • 不貞行為の期間が短い、回数が少ない、真摯に反省している等、悪質度が低い

浮気の慰謝料が高額になるケース

低額になるケースとは反対に、次のような事情があるケースでは浮気の慰謝料が増額する傾向にあります。

  • 婚姻期間が長い
  • 夫婦の間に未成年の子供がいる
  • 浮気相手が妊娠、出産した
  • 不貞行為の内容が悪質(何度も浮気を繰り返した、長期間浮気相手との関係を続けていたなど)
  • 浮気をしたことが明らかなのに否定する
  • もう二度と浮気をしないと約束したのに破った
  • 浮気をした配偶者、浮気相手に資力がある

浮気の慰謝料について争う場合は証拠が重要

浮気の慰謝料を支払わせるためには、言い逃れできないように、不貞行為があった事実を証明することが重要です。不貞行為の事実は、一般的に、次項以下で挙げる証拠を揃えて証明します。
なお、証拠によって推測される事実が異なりますし、信頼性や説得力も違います。証拠を集めれば集めるほど、「不貞行為があった事実」の信用力を高められるので、有利な立場になるでしょう。

写真・動画

性交行為やそれに似た行為をしている状況を収めた写真・動画は、決定的な証拠といえます。また、2人で布団やベッドにいる状況を撮影したものも、不貞行為を強く推測できるのでかなり有力な証拠となるでしょう。
さらに、ラブホテルに2人で出入りしたり、浮気相手の家で宿泊していたりする写真・動画も証拠となり得ます。

メール・SNS

メールやSNS(DM、LINEのメッセージなど)で不貞行為の内容について言及していたり、肉体関係を匂わせるやりとりがあったりする場合、証拠となり得ます。
なお、スクリーンショットを撮る方法だと改ざんが疑われやすいので、メッセージの画面を写真や動画で記録して証拠に残すことをおすすめします。その際には、やりとりをしていた日時がわかるように工夫すると良いでしょう。

領収書

ラブホテルの利用料金の領収書、2人旅をしたことがわかる旅行先の領収書、異性用の高価なアクセサリーや衣服を購入したクレジットカード明細などがある場合も、証拠となる可能性があります。
しかし、誰と一緒に利用したのか、誰にプレゼントしたのかといった事実はわからないので、直接不貞行為の事実を証明することはできません。別の証拠の説得力を高める証拠として使われる場合が多いです。

配偶者本人が自白した音声

配偶者本人が浮気をした事実を認めている(自白している)音声データも、証拠となり得ます。
ただし、脅すなどして強制的に自白させた場合には証拠として認められないため注意が必要です。
また、自白内容を書き起こした書面や自白しているところを撮影したデータと併せると、より有力な証拠になります。

SuicaやPASMO、ETCなどの利用履歴

SuicaやPASMO、ETCなどのICカードの利用履歴は、浮気を直接証明する証拠としては弱いでしょう。しかし、浮気の疑いを深めることはできますし、有力な証拠を押さえるために使える可能性があります。
例えば、休日出勤と言っていた日にICカードの利用履歴がなかったり、残業と言っていた日に職場や最寄り駅以外で乗り降りしている記録があったりすれば、「嘘をついていた事実」がわかります。
また、不審な乗り降りをしている駅に目星をつければ、浮気相手とのデートの様子を押さえることができるかもしれません。

なお、ICカードの利用履歴は次の方法で確認できます。

  • 駅の券売機で履歴を表示・印刷する
  • アプリでデータを読み取る
  • ICカードリーダーを購入してデータを確認する

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浮気の慰謝料は誰に請求できるのか

浮気の慰謝料は、基本的に不貞行為をした配偶者浮気相手に請求できます。具体的には、

①配偶者と浮気相手両方に請求する
②配偶者にだけ請求する
③浮気相手にだけ請求する

という3つのパターンのどれかを選択して請求することになります。

ただし、離婚しないで浮気相手にだけ慰謝料を請求するパターンでは注意が必要です。
この場合、浮気相手は一緒に不貞行為をした配偶者の分の慰謝料も支払うことになりますが、本来自分が負担するべき分を超えて支払った慰謝料は、一緒に不貞行為をした配偶者に返金するよう求めることができます(求償権といいます)。つまり、慰謝料の請求額によっては、夫婦の共有財産を減らすことになってしまう可能性があります。

浮気に対する慰謝料を決める方法と流れ

浮気に対する慰謝料は、まずは書面や口頭(電話など)で交渉して請求します。
交渉がまとまらなければ裁判を起こして請求することになります。
一般的には、交渉では裁判所を関与させないため、不貞行為の有無や、慰謝料の支払い方法(分割)等について当事者間で話がどんどん進む傾向にあります。しかし、どちらか一方が合意を拒絶すれば、結論は得られません。
一方、裁判では月に1回程度の「期日」を中心に事件が進行していくため、交渉と比べて解決に時間を要する一方、不貞行為の有無や、慰謝料の支払いについては、最終的には裁判所が判断をくだすことになるため、何らかの結論は原則として得られることとなります。

なお、交渉で慰謝料を請求する場合には、慰謝料を確実に受け取るために事前に対策を講じておくことが重要です。具体的には、

  • 和解内容をまとめた示談書を公正証書の形で作成する
  • 示談書に強制執行認諾文言の記載をする
  • 公証人役場に当事者を呼び出し、公正証書作成と同時に送達を完了させておく

ことをおすすめします。
こうした対策を講じておけば、和解した内容について後で揉める可能性が低くなりますし、相手が慰謝料を支払わない場合に強制執行を申し立てることができるようになります。

浮気に対する慰謝料請求の時効について

浮気(不貞行為)そのものに対する慰謝料を請求できる期間は限られており、一定の期間(時効期間)を過ぎると、慰謝料を請求しても認められなくなってしまいます。
浮気そのものに対する慰謝料の場合、時効期間は次のとおりに定められています。

  • 不貞行為があった事実と浮気相手、両方を知った時から3年
  • 最初の不貞行為から20年

よくある質問

結婚前の浮気は慰謝料が発生しますか?

基本的に、結婚前に浮気をされても慰謝料を請求できません。
ただし、
婚約中にされた浮気
内縁関係にある間にされた浮気
については、婚約していたことや内縁関係(夫婦同然の関係)にあったことを証明できれば、慰謝料請求が認められる可能性があります。

一般的に、次のような事実や証拠があれば、2人の関係性を証明するにあたって有利になります。
【婚約していた場合】
・プロポーズの言葉や結婚を約束する旨が書かれたメッセージカードがある
・結婚式場を予約している
・両家の顔合わせが済んでいる
・婚約指輪を交換している
・周囲に結婚する意志を伝えている

【内縁関係にあった場合】
・内縁関係にあることを役所に届け出ている(住民票の続柄に「未届けの夫(妻)」と記載されます)
・それぞれの親族の冠婚葬祭に2人で出席している
・周囲から夫婦として認識されている

相手の自白は浮気の証拠になりますか?

なり得ます。ただし、自白するように強制した結果なされた自白は証拠として認められません。
また、口頭で浮気を認める発言をしたとしても、後になって白を切られてしまう可能性があります。
そこで、自白の内容を物的証拠に残しておくことをおすすめします。例えば、次のような方法をとれば、自白の事実を客観的な証拠として残すことができます。

・自白内容を書面に書き起こし、本人に署名させる
・自白している様子を録音・録画する

ちなみに書面と録音・録画データの両方を残すとより信頼性が増しますし、破損や紛失などのリスクにも対応できます。

パートナーから浮気の濡れ衣を着せられ、慰謝料請求された場合は支払う必要はありますか?

結論からいうと、支払う必要はありません。
たとえ配偶者から浮気の濡れ衣を着せられても、相手と肉体関係がなければ法律上慰謝料は発生しません。また、そもそもパートナーと結婚・婚約していない、内縁関係にない場合には、慰謝料が発生することはないので支払う必要はありません。
とはいえ、請求を無視したり感情的に対応したりすると状況が悪化してしまいかねません。混乱してしまうお気持ちもわかりますが、まずは落ち着いて浮気を疑われた原因を探り、誤解を解くように努めましょう。

不貞(浮気)慰謝料と離婚慰謝料の違いは何ですか?

不貞(浮気の)慰謝料と離婚慰謝料は、賠償の対象とする精神的苦痛の種類が違います。
・不貞慰謝料:配偶者の不貞行為そのものから受けた精神的苦痛に対する賠償
・離婚慰謝料:配偶者の不貞行為が原因で離婚しなければならなくなったことで受けた精神的苦痛に対する賠償
つまり、不貞慰謝料は「不貞行為そのもの」、離婚慰謝料は「離婚したこと」に対する慰謝料といえます。
そのため、金額の相場に差があるほか、時効が成立するまでの期間を数え始めるタイミングも異なります。

3年前の浮気に対して慰謝料請求することはできますか?

できる可能性があります。
浮気の慰謝料は、不貞行為をしていた事実と浮気相手を知ってから3年以内に請求しないと、時効が成立して請求できなくなってしまう可能性があります。そのため、これらの事実を知ってから何の手も打たずに3年が過ぎてしまった場合、慰謝料の請求は困難です。
ただし、下記に挙げるとおり例外的なケースもあります。

・浮気相手が誰なのかわからなかったケース
このケースでは、3年ではなく20年の時効が適用されます。つまり、最初の不貞行為から20年間は慰謝料を請求する権利がなくなりません。

・時効の進行を停止、または期間を更新する対策をとったケース
裁判を起こす、内容証明郵便で慰謝料を請求する(催告する)、財産の仮差押え・仮処分・差し押さえ等をすることにより、3年という時効期間を延ばすことができます。

なお、3年が過ぎても慰謝料を請求できなくなるわけではありません。請求された人に支払う意思があれば、慰謝料を受け取ることができるでしょう。

浮気による慰謝料について悩んだら弁護士に相談してみましょう

配偶者の浮気による心の傷は、お金で癒せるものではないでしょう。しかし、慰謝料を請求すれば、ご相談者様が浮気によって傷ついた事実を配偶者や浮気相手に実感させ、反省を促すことにつながります。
とはいえ、場合によっては誠意のない対応をされ、その言動でさらに傷つけられてしまう可能性もあります。そこで、弁護士に代わりに対応してもらうことを検討されてはいかがでしょうか。
夫婦間の問題を取り扱った経験が豊富な弁護士なら、丁寧に事情を伺いお気持ちをしっかりと汲み取ったうえで、よりご相談者様に負担のかからない解決方法を提案することができます。
ご相談者様にとって最良の結果となるよう尽力いたしますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

離婚せずに別居だけする場合、子供も連れて行った方が親権争いで有利になるのではないかと考えて、一緒に別居しようとされる方がいらっしゃいます。
確かに、裁判所が親権者を決める際には、これまでに主に父母のどちらが子供の面倒を看てきたのか、どちらが親権者となる方がより子供のためになるかといった点が重視されます。そのため、子供を連れて別居し監護実績を積んでいくと、親権争いで有利になる可能性があります。しかし、別居の理由や方法によっては、逆に悪い心証を与えてしまい不利な立場になるリスクもあります。
子供を連れて別居する場合には、様々な事柄を考慮する必要があるので、以下説明していきます。

離婚しないで子供を連れて別居をするときの注意点

離婚せずに子供を連れて別居する場合、子供のためにも、十分な養育環境を整える必要があります。
別居の際に考慮しなければならないことはいろいろありますが、子供を連れて行く場合には、特に次項以下のポイントに注意するべきでしょう。

別居後の養育環境

相手方配偶者が常に出て行ってくれるわけではないため、子供を連れて別居しなければならない場合があります。その場合は、引っ越さなければならず、子供の保育園や幼稚園、学校の区域が変わることもあります。
そのため、転園・転校等の手続きのため、住民票の移動をはじめとする事務手続きを忘れずに行う必要があります。
また、子供の心のケアも重要です。両親の別居によって大きなストレスを受けているなか、新しい環境にも慣れていかなければならず、心理的にかなりの負荷がかかるからです。

婚姻費用や養育費

子供の養育環境を整えるうえで、「婚姻費用」や「養育費」について考えることは欠かせません。
「婚姻費用」とは、収入の多い配偶者から少ない配偶者へ支払う、一般的な生活を送るために必要な生活費です。子供を連れて別居している場合には、ご自身の分の生活費に加えて、子供を育てていくうえで必要な費用(養育費)も婚姻費用として受け取ることができます。
とはいえ、ただ婚姻費用を請求しても支払ってもらえない可能性が高いので、弁護士に依頼して調停の申立てをすること等も視野に入れることをおすすめします。

児童手当、児童扶養手当

「児童手当」の受給者の変更手続や、「児童扶養手当」の請求を検討する必要もあります。

「児童手当」とは、中学生までの子供を育てている人に対して、4ヶ月に1度、子供の年齢や人数に応じて支払われる給付金です。夫婦の収入を比べて多い方に支給されるものなので、受給者を変更する手続きを行わないと、実際に子供を育てている方の親が受け取れなくなってしまうケースがあります。

「児童扶養手当」とは、1年以上別居を続けている等、父母の一方とは異なる家計で暮らしている子供(18歳未満、または18歳の誕生日以降3月31日を迎えていない子供のみ)を育てている人に対して、毎月、子どもの年齢や人数に応じて支払われる給付金です。ただし、受給条件もあるので、受給されたい方は役所に相談してみると良いでしょう。

面会交流

別居している親子の交流の場である、「面会交流」のルールを取り決めることも必要です。
夫婦仲が悪いと、「別居中の配偶者と子供を会わせたくない」という気持ちが出てくるかもしれません。しかし、面会交流は何といっても“子供の権利”なので、親が一方的に許否することは認められません。
とはいえ、別居中の配偶者が子供を虐待していた場合等、面会交流を実施することが子供のためにならない事情があるケースでは、子供の幸せを考えて、面会交流を行わなくとも良いと判断される可能性があります。

別居と子供の連れ去り

子供を連れて別居を始めた場合、「違法な連れ去り別居にあたらないかどうか」が問題になります。
「連れ去り別居」とは、夫または妻が配偶者に黙って子供を連れて別居してしまうことを指します。
別居を始めた理由やその方法、別居前の話し合いの状況等によっては、“違法な連れ去り別居”だと判断され、子供を配偶者に引き渡さなければならなくなったり、配偶者に対して慰謝料を支払わなければならなくなったりしてしまうので、注意が必要です。

違法な連れ去り別居と判断されないための注意点

一般的に、身勝手な理由で子供を連れて別居すると、 “違法な”連れ去り別居だと判断されてしまう可能性が高いといえます。例えば、次のようなケースです。

  • 子供の親権について激しく争っていて解決の目途が立たないなか、子供を連れて別居に踏み切った
  • 保育園や幼稚園、学校等で子供を待ち伏せた上で子をそのまま連れて別居に踏み切った
  • 面会交流の後、そのまま子供を帰さなくなった

これに対して、子供の身の安全を守る必要があるケースであれば、一方的にした連れ去り別居でも“正当”だと判断されると可能性があります。具体例としては、次のようなケースが挙げられます。

  • 相手方配偶者から子供が虐待を受けていた
  • 夫婦間でDVがあり、子供にも影響が及ぶ危険があった

別居中に子供を連れ去られた場合

子供を連れて別居していたところ、離れて暮らしていた配偶者に子供を連れ去られてしまったケースでは、まず、子供の住所地を管轄する家庭裁判所に「監護者指定審判」と「子の引渡しの審判」請求を申し立て、子供を取り戻すことを目指します。
子の生命が危うい場合等、緊急性の高い案件の場合、「審判前の保全処分」も併せて申し立て、暫定的に子供を引き渡すべきかどうかを審判に先立って判断してもらうことが必要なケースもあります。
審判前の保全処分や子の引渡し審判が認められれば、子の引渡しの強制執行手続を行うことができるようになります。それでも引き渡しが実現しなければ、最終的に「人身保護請求」を利用して、子供の引渡しを目指すことになります。

なお、こうした手続きに頼ることなく、自力で子供を連れ戻そうとするのは控えるべきです。なぜなら、違法な連れ去りだと判断されて不利な立場になってしまうリスクがあるからです。

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DV、モラハラ加害者との別居

子供が配偶者から虐待(モラハラ、DV等)を受けている場合には、すぐに子供を連れて別居を始めるべきです。
このようなケースでは、別居した後、下記のような対応をして子どもやご自身の身の安全の確保を図る必要があります。

  • 子への接近禁止命令を出してもらう
    裁判所に対して、DV加害者である親から子供へのさらなる暴力を防ぐために、加害者である親が子供に近づくのを禁止する決定(保護命令)を出すよう求めることができます。
  • 弁護士に依頼して離婚の交渉を開始する
    「子供が幼いうちは両親が揃っている方が良いから離婚は避けたい」と考えられる方もいらっしゃいますが、本当に子供の幸せを想うのであれば、虐待が行われている家庭環境を改善するべきです。その手段のひとつとして、離婚が挙げられます。
  • 面会交流のルールを決める
    子供が虐待を受けているケースでは、面会交流が子供の健全な成長に悪影響となる可能性が高いので、子供の幸せを第一に考えたルールを作る必要があります。

別居後の子供とのかかわり方

一方の親と離れて暮らすことは、子どもにとって大きなストレスとなります。別居の原因が自分にあるのではないか自身を責めたり、親から見放されることを過度に恐れたりする結果、精神的なトラブルを抱えてしまうこともあります。
このような問題を防ぐためには、親による心のケア、特に一緒に暮らしている親の配慮がとても重要です。
例えば、子供に対する愛情を言葉や抱きしめることで伝えたり、別居は両親の事情によるものであって子供には責任がない旨を説明して安心感を与えてあげたりすると良いでしょう。そのためにも、子供との時間をこれまで以上に多く確保することが必要になります。

よくある質問

家庭内別居する際に子供に対して注意することはありますか?

たとえ幼い子供であっても、家庭内別居中の夫婦の不穏な空気を感じ取ります。そのため、精神的なストレスから体調不良を起こしやすくなったり、子供によっては親の顔色を窺う自己主張のできない性格になってしまったり、コミュニケーションが苦手になったり、非行に走ったりする等、いろいろな悪影響が及ぶ可能性があります。 本来、家庭は子供が安心して過ごすことができる場所であるはずです。夫婦仲が悪く、家庭内別居という選択肢が避けられないとしても、子供に対しては惜しみなく愛情を伝え、安心して成長していけるように配慮するべきでしょう。

別居中から自分の扶養に子供を入れておいたほうがいいですか?

扶養に入れておくことをおすすめします。別居する段階で子供を自分の扶養に入れておくと、経済的にいろいろなメリットを受けられるからです。
例えば、次のようなメリットを受けられる可能性があります。
・住民税や所得税が安くなる
・児童扶養手当の支給額が上がる
・家族手当を受給できる
・保育料や公営住宅の家賃の計算上有利になる

配偶者に黙って子供を連れて別居をした場合は慰謝料請求されますか?

夫婦の同居義務に違反した、または悪意の遺棄(配偶者を見捨てる行為)に該当するとして、慰謝料を請求される可能性があります。
相手方配偶者のDVやモラハラから自分や子供を守るために別居したいといった事情がある場合には、別居に正当な理由があると考えられるので、慰謝料を請求される可能性は低いでしょう。
しかし、特に理由がないのに勝手に子供を連れて家を出ていくような場合には、「夫婦の同居義務違反」や「悪意の遺棄」に該当すると判断され、婚姻関係を破綻させる原因を作った「有責配偶者」だとみなされてしまうおそれがあります。
有責配偶者は、基本的に自分から離婚請求することができないほか、相応の慰謝料を支払う責任も負います。相手の合意がないのに、安易に子供を連れて別居することは避けるべきでしょう。

子供を連れての別居が違法とならないためにまずは弁護士にご相談ください

基本的に、子供のためにならない身勝手な連れ去り別居は違法とされるので、離婚の話し合いや親権争いで不利に働く可能性が高いです。しかし、子供を連れて別居することが本当に子供のためになるのか、事前に見極めることは難しいですし、実際に別居してみなければわからないところもあります。
そこで、子供を連れて別居することを検討されている方は、別居によって子供がどのような影響を受ける可能性があるのか、どうすればその影響を最小限に抑えられるのかといった点を、一度弁護士にご相談されてみることをおすすめします。
難しい問題ではありますが、ご相談者様とお子様にとってより良い未来となるよう、誠心誠意対応させていただきます。まずは専任のスタッフがお電話にて対応させていただきますので、お気軽にご連絡ください。

離婚するにあたって、それまで夫婦一緒に住んでいた家や共同で使ってきた車、生活費を入れていた預貯金口座などをどのように処理すれば良いのか、迷われる方もいらっしゃるかもしれません。この点、こうした家や車、預貯金口座が夫婦の共有財産だといえれば、夫婦2人で財産を分け合う「財産分与」を行うことになります。
では、具体的にどのように行えば良いのでしょうか?
今回は、対象となる財産や実行する際の注意点、実際の手続きの方法など、財産分与の詳細について解説していきます。

財産分与とは

「財産分与」とは、結婚している間に夫婦で協力して作り上げた財産を、夫と妻それぞれの貢献度に応じて、離婚の際に分配することです。なお、夫婦の貢献度は、それぞれ2分の1ずつとなるのが一般的です。
夫婦として共同生活を送る間に手に入れた財産であれば、名義が誰のものになっていても、原則的に財産分与の対象となります。例えば、結婚後に夫と妻がそれぞれ稼いだお金を貯めて夫名義の家を購入したケースでは、その家は財産分与の対象になります。

財産分与の種類

財産分与には、次の3つの種類があります。

清算的財産分与

結婚生活を送るうえで夫婦が協力して作り上げてきた財産を“共有財産”だと考え、各々の貢献度に応じて財産を分け合うために行う財産分与です。
あくまで夫婦の財産を2人で分け合うことが目的なので、離婚原因を作った配偶者(有責配偶者)からの請求も認められます。
単純に“財産分与”というときは、これを指しているケースが多いです。

扶養的財産分与

離婚すると一方の配偶者が生活に困ってしまう場合に、その配偶者を経済的に支えるために行う財産分与です。
離婚する時点で一方の配偶者が病気にかかっていたり、専業主婦(主夫)で経済力に乏しかったり、高齢で働くことが難しかったりといった事情がある場合に、認められる傾向があります。
一般的に、経済力のある配偶者からもう一方に対して、ある程度の期間、一定の金額を定期的に支払うという方法がとられます。

慰謝料的財産分与

離婚することになった原因が一方の配偶者の行為にあり、離婚を強いられたことによる精神的な苦痛に対する慰謝料を請求できる場合に、財産分与の金額や分配方法等に慰謝料の内容を反映して行う財産分与です。
例えば、離婚の原因が相手方配偶者の不貞行為やDVにある場合、慰謝料を請求できますが、慰謝料を請求しない代わりに財産分与の増額を求めたり、欲しい財産を手に入れるための交渉材料に慰謝料の請求権を使ったりすることもできます。こういった形で行う財産分与が、慰謝料的財産分与にあたります。

財産分与の対象となる資産

財産分与の対象になるのは、結婚している間に夫婦で協力して作り上げた財産である「共有財産」です。共有財産だといえれば、誰の名義であっても、財産分与の対象にできます。
そのため、夫婦の共有名義で購入した資産はもちろん、どちらか一方の名義になっている資産も、夫婦の協力によって得られたといえれば財産分与の対象となります。
なお、結婚後同居している間に手に入れた資産は、財産分与の対象とならない「特有財産」にあたらない限り、「共有財産」とみなされます。

では、具体的にどういった資産が共有財産となるのでしょうか?分与の方法も併せて説明していきます。

預貯金

共働きの夫婦がそれぞれの収入からお金を出し合って貯めた預貯金は、もちろん共有財産になります。
また、一方が専業主婦(主夫)の夫婦で、家計を支えているもう一方の配偶者の収入だけを貯めた預貯金も共有財産になります。なぜなら、専業主婦(主夫)である配偶者は家事や育児によってもう一方の配偶者の仕事を支えているので、夫婦の協力で収入が得られたと考えられるからです。

家やマンションなどの不動産

結婚後に購入した家やマンション、土地等の不動産は、基本的に共有財産にあたるので財産分与の対象となります。
とはいえ、不動産は物理的に分けることができないので、次のような方法で財産分与することになります。

  • 不動産を売り、売却代金を半分ずつ分け合う
  • 片方の配偶者が、不動産の評価額の半分を支払って住み続ける
  • 片方の配偶者が、不動産の評価額の半分に相当する財産を渡して住み続ける

自動車

自動車も共有財産となり得るので、財産分与の対象となる場合があります。
自動車も、不動産と同じく物理的に分けられないので、財産分与は次のような方法で行うことになります。

  • 自動車を売り、売却代金を半分ずつ分け合う
  • 片方の配偶者が、評価額の半分を支払って自動車をもらう
  • 片方の配偶者が、評価額の半分に相当する財産を渡して自動車をもらう

子供の財産分与について(学資保険、貯金)

夫婦に子供がいる場合、子供の名前で学資保険に加入していたり、子供を名義人とする預貯金口座にお金を貯めていたりすることがあるでしょう。この点、財産分与は夫婦の共有財産を分配するものなので、たとえ子供名義であっても共有財産にあたれば財産分与の対象となります。
例えば、親が自分の収入を少しずつ子供名義の口座に貯めてきた場合や、学資保険の資金に夫婦の収入を充てていた場合等には、子供名義の財産も財産分与の対象になると考えられます。

へそくり

配偶者に内緒で、夫婦の生活費から少しずつお金を差し引いてへそくりを作っていた場合、夫婦の共同生活に充てられるはずだった共有財産を貯めたものだといえるので、共有財産として財産分与の対象となります。
これに対して、親からもらったお金等を貯めてへそくりにしていた場合には、共有財産にはあたらないので財産分与の対象外となります。

株が共有財産にあたるかどうかは、手に入れた時期・方法・名義から判断します。
次のような株は、共有財産として財産分与の対象となる可能性が高いでしょう。

  • 婚姻後に手に入れたもの
  • もう一方の配偶者の協力で手に入れたもの
  • 会社名義ではなく個人名義であるもの

財産分与の対象にならない資産

財産分与の対象にならない資産を「特有財産」といいます。
具体的には、

  • 結婚前から一方の配偶者が持っていた財産
    例:独身時代に貯めた預貯金、結婚後に独身時代に貯めたお金を資金として購入した車など
  • 結婚後、夫婦の協力とは関係なく手に入れた財産
    例:親から相続した不動産や車など

が特有財産にあたります。

しかし、特有財産でも「夫婦が協力して価値を維持・増加した」と考えられるものは、価値の維持・増加に対する貢献度に応じて、財産分与されることがあります。例えば、独身時代に夫が買った車のメンテナンス費用や改造費用を夫婦の収入から出していたケースでは、財産分与の際に車の評価額の一部が考慮される可能性があります。

また、独身時代に使っていた預貯金口座を結婚後も引き続き使っているケースでは、共有財産と特有財産の区別が困難で、全額が共有財産だと判断されてしまう可能性があるので注意が必要です。

マイナスの資産(住宅ローン、借金)も財産分与の対象とならない

マイナスの資産は財産分与の対象となりません。
もっとも、マイナスの資産については、交渉において、負担を求めたり、裁判所の判断において考慮される場合があります。
実際に下記の具体例を見ていただくとわかりやすいでしょう。

【財産分与の対象となる借金の例】

  • 家族の生活費のための借金
  • 家族で使う車のローン
  • 家族で住むための不動産の住宅ローン

【財産分与の対象とならない借金の例】

  • ギャンブルや浪費のための借金
  • 個人的な借金
  • 結婚前にした借金

なお、借金等のマイナスの資産がある場合、夫婦の共有財産であるプラスの財産からマイナスの資産を引いた残額を財産分与するのが一般的です。
他方、マイナスの資産がプラスの資産を上回っている場合(いわゆる債務超過の場合)には、財産分与の制度上、当然ながら財産分与は行われません。

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熟年離婚をするときの財産分与

熟年離婚をする場合、結婚期間が長い分、財産分与の対象となる財産の種類も増えますし、金額も大きくなるケースが多いです。例えば、配偶者が定年退職を迎えるタイミングで離婚する場合、高額な退職金の財産分与を受けられる可能性が高いので、その分財産分与の金額も大きくなるでしょう。
しかし、熟年離婚をする世代の方は、若い世代以上に離婚後の生活費の確保が難しいことが多いので、ご自身が財産分与でどれくらいの財産を受け取ることができるのか、事前にしっかりと把握し、離婚後の生活設計を立てておくことをおすすめします。

退職金

退職金は「給与の後払い」的な性質を持っているので、給与と同じように、共有財産として財産分与の対象となる可能性があります。
ただし、財産分与の対象となるのは、婚姻期間に相当する退職金だけです。つまり、結婚する前や離婚後に働いた期間に相当する退職金については、財産分与を受けることはできません。

なお、退職金は会社の業績等によっては支払われない可能性もあるので、離婚の時点で支払われているかどうかで考え方が変わってきます。以下をご覧ください。

退職金が既に支払われている場合

退職金が既に支払われている場合、退職金は財産分与の対象になるので、婚姻期間に相当する分の退職金の財産分与を受けられます。
ただし、もう退職金を使ってしまっていて残っていないケースでは、そもそも分けることができる退職金がないため、財産分与の対象にはなりません。とはいえ、一方の配偶者がギャンブル等に退職金をつぎ込んでしまったというような事情があれば、他の財産を分配する割合などで考慮してもらえる可能性があります。

退職金がまだ支払われていない場合

離婚の時点で退職金がまだ支払われていない場合には、「ほぼ確実に支払われると認められるとき」に限って、退職金は財産分与の対象になります。
一般的に、

  • 就業規則や賃金規定に退職金に関する規定の有無
  • 退職金の算定方法の明示性
  • 会社の規模
  • 定年退職を迎えるまでの期間
  • 勤務成績

といった事情を考慮して、退職金がほぼ確実に支払われると認められるかどうかが判断されます。

年金

財産分与とは違う制度ですが、年金については、結婚していた間に納めた厚生年金の記録を夫婦で分割できる「年金分割」という制度もあります。
なお、年金分割の対象となるのは、結婚していた間の厚生年金(元共済年金も含みます)の納付記録だけなので、企業年金等を対象にすることはできません。また、あくまでも“納付記録を分割する制度”なので、配偶者の年金の一部を受け取れるようになるわけではありません。

離婚したときの財産分与の割合

財産分与の割合は、夫と妻それぞれがどれだけ夫婦の共有財産の維持・形成に貢献したのかによって決められますが、2分の1ずつとされるのが一般的です。
ただし、一方の配偶者の特別な努力や能力によって高額な財産を築けたというような特殊な事情がある場合には、その努力等を考慮して、財産分与の割合が修正されることがあります。例えば、片方が医師やスポーツ選手等、専門的かつ高い技能が必要とされる職業に就いている場合には、財産分与の割合が修正される可能性があるでしょう。

専業主婦、専業主夫

片方が収入のない専業主婦(主夫)である場合も、財産分与の割合は通常どおり2分の1となるのが基本です。
なぜなら、専業主婦(主夫)は家事や育児を担うことで配偶者の仕事をサポートしているので、配偶者が仕事から得た収入は、夫婦が協力して手に入れた財産だといえるからです。

共働き

共働きの夫婦の場合も、財産分与の割合は基本的に2分の1のままです。
ただし、どちらも同じくらいの収入を得ている夫婦のケースで、片方の配偶者が家事のほとんどを行っているような場合には、家事の負担分、共有財産に対する貢献度に偏りがあります。こうしたケースでは、財産分与の割合が修正され、2分の1以上の割合で財産を受け取れるようになる可能性があります。

財産分与をする前にやっておくこと

財産分与の請求を検討されている方は、あらかじめ夫婦の共有財産がどれくらいあるのか調べておき、しっかりと財産の状況を把握してから請求することをおすすめします。
相手方配偶者が内緒でへそくりをしている場合や、財産分与の金額を減らしたいと考えている場合、こちらが財産分与を請求しようとしていることがわかると、財産を隠されてしまう危険があるからです。
適正な金額で財産分与を行うためにも、「隠し資産(へそくり)の有無」「配偶者の預貯金口座」について十分に調べておくと良いでしょう。

隠し資産(へそくり)がないか調べる

夫婦の生活費を少しずつ差し引いてへそくりを貯めていた場合等、夫婦の共有財産を資金源にしたへそくりは、現金や預貯金、電子マネーといった形態に関係なく財産分与の対象になります。
なお、財産分与を行った時点では見つけられなかったものの、後日へそくりが見つかったような場合には、改めてへそくりを半分ずつ分けることになります。

相手の預貯金を知っておく

夫婦の共有財産を正確に把握するためには、相手方配偶者の預貯金についても知っておくことが重要です。
とはいえ、相手方が隠そうとしている口座の存在を知ることや、どの口座の預貯金がどれだけ財産分与の対象になるのかを理解することは、専門的な知識がないと難しいでしょう。相手方の預貯金口座の調べ方に悩まれている方は、弁護士に相談されることを検討してみると良いかもしれません。

財産分与の方法と手続き

財産分与は、離婚と同時に請求することも、離婚した後に請求することもできます。どちらの場合でも、まずは相手方配偶者と話し合って、対象とする財産と分与の割合について合意を目指します。
夫婦で話し合うだけでは合意できないのであれば、管轄の家庭裁判所に「財産分与請求調停」を申し立て、調停員等の第三者の視点を入れて話し合いを進めます。それでも合意できずに調停が不成立になると、申立てを取り下げない限り審判に移行し、裁判官が財産分与の内容を判断することになります。
離婚と同時に財産分与を請求する場合には、離婚に関連するその他の請求と併せて、離婚裁判内で請求することもできます。この場合には、裁判所が当事者の主張や立証に基づいて財産分与の内容を決定します。

話し合いや裁判所の判断で財産分与の内容が決定したら、決定した内容に従って財産の引渡しや名義変更、金銭の支払い等を行い、財産分与を完了することになります。

財産分与の支払い方法

財産分与の主な目的は、離婚の時点で夫婦が持っている共有財産の清算なので、財産の受け渡しは離婚時に一括で行うのが望ましいです。しかし、夫婦の合意があれば、離婚後に分割して支払うことも可能です。
財産分与の支払方法には、主に以下のものがあります。

現物払い

財産をそのままの形で譲渡する方法です。現金や預貯金等とは違い、物理的に分けることができない不動産や株式等を分与する際によく使われる方法です。

一括支払い

分与する財産に相当する金額を、一度にまとめて金銭で支払う方法です。財産分与は基本的に一括支払いするものとされています。
分割支払いよりも不払いになるリスクが小さいといったメリットがありますが、そもそも一括して払うことができない場合、解決ができなくなるというリスクがあります。

分割支払い

分与する財産に相当する金額を、複数回に分けて金銭で支払う方法です。分与する財産が高額になるほど選択される傾向にありますが、途中で支払いが止まってしまうと結果的に満額を受け取れなくなってしまうので、不安がある方法といえますが、まとまった金銭の用意ができない場合等には有効な選択肢となるでしょう。

財産分与は請求期限が決まっているのでできるだけ早く手続しましょう

財産分与は、財産を渡す側にとっても受け取る側にとっても、離婚後の生活水準に影響してくる重要なものです。特に、財産分与の対象となる財産の見極めを間違えると、大きく損してしまうことにもなりかねません。
また、財産分与は、離婚してから2年以内に請求しないと認められなくなってしまいますし、離婚後は元配偶者と疎遠になってしまうケースも多いです。
財産分与について不安や悩みを抱えていらっしゃる場合や、離婚から日が経ってしまい元配偶者と財産分与について話し合うことが難しくなってしまった場合、財産分与の請求期限まで時間がないような場合には、離婚問題に詳しい弁護士にアドバイスを求めてみてはいかがでしょうか。こうした問題の解決のほか、諸々の交渉や手続の代理もお任せいただけますので、ぜひ弁護士への依頼も併せてご検討ください。

ひとたび交通事故に遭ってしまうと、怪我の治療費、通院のための交通費など、何かとお金がかかってきます。仕事に支障が出るような怪我であれば、収入が減ってしまうことも考えられます。

収入というと、まず“給与”が頭に浮かぶかもしれませんが、損害賠償請求において見逃されやすいのが“ボーナス”の減額です。このページでは、事故の影響でボーナスがカットされた場合の損害賠償請求について、解説していきます。

交通事故の影響でボーナスがカットされたら慰謝料請求は可能?

交通事故が原因で仕事を休んだり、十分な働きができなかったりして、ボーナス(賞与)がカットされてしまった場合、カットされてしまった分の補償は、【慰謝料】としてではなく、【休業損害】として加害者に請求していくことになります。
次項より、具体的な請求の方法を見ていきましょう。

ボーナスの減額を立証する方法

ボーナスの減額について、交通事故の加害者に損害賠償請求をするためには、①被害者が交通事故の影響で仕事を休んだり、十分な働きができなかったりしたことがボーナスカットの原因であり、②そのためにいくらの減額があったのかを証明する“証拠”が必要になります。
このとき有益な証拠となるのが、ボーナスの査定方法について記載がある就業規則や賞与規程、そして「賞与減額証明書」です。

賞与減額証明書の記載内容

《記載内容》

  1. 賞与支給年月日
  2. 賞与支給対象期間
  3. 欠勤期間
  4. 正常に勤務していた場合の支給金額および支給計算式
  5. 欠勤により減額した額および減額計算式
  6. 差引支給額
  7. 賞与減額の根拠

交通事故の影響でボーナスの減額があった場合には、給与の減額があった場合に必要な「休業損害証明書」とは別に、ボーナスの減額を証明する「賞与減額証明書」会社に作成してもらいます。

なお、「賞与減額証明書」の書式は加害者側の任意保険会社から取り寄せる運用が一般的ですが、加害者側が自発的に送付してくれるとは限りません。その場合は、被害者からアクションを起こす必要があります。
また、書式の送付に応じてくれない場合には、上記1~7の記載内容を満たした書面をウェブ上からダウンロードするなどして対応するというのも一つの手段です。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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ボーナスの減額分を請求する際の注意点

ボーナスカットの要因が“交通事故による被害者の休業”であるという根拠を示すことができなければ、減額分の請求は認められないおそれがあります。なぜなら、ボーナスカットの要因は交通事故以外にも考えられるからです。

例えば、被害者だけでなくほかの従業員のボーナスも平均的に減額されているといった場合、ボーナスカットの要因は、“交通事故による被害者の休業”だけでなく、“会社全体の業績悪化”である可能性も考えられます。
そのため、就業規則や賞与規程上にボーナスの計算方法が明確に記載されておらず、使用者の裁量によって都度支給額が決められているといった運用である場合、“交通事故による被害者の休業”の影響でいくら減額されたのか証明することは難しいと言わざるを得ません。

「賞与減額証明書」を作成するのは被害者が勤める会社ですから、担当者に詳しい事情を説明し、協力を仰ぐことが望ましいでしょう。

交通事故慰謝料の他にボーナスの休業損害が認められた裁判例

【大阪地方裁判所 令和2年3月10日判決】

<事案の概要>
丁字路交差点を直進中の原告(自転車)に、本件交差を左折した被告(原動機付自転車)が衝突した事故により、第1・第2腰椎の圧迫骨折を負った原告が、被告に対して損害賠償を請求した事案です。

<裁判所の判断>
裁判所は、通院期間等に対する傷害慰謝料(135万円)、後遺障害等級8級相当の後遺障害慰謝料(830万円)、休業損害(197万5851円)など、合計3732万4847円の損害を認め、そこから過失相殺及び既払金を差し引いた金額の支払いを被告に命じています。

なお、本件は、提出した証拠から、ボーナスの支給対象期間や減額分が明らかであったため、休業損害(197万5851円)のうち、ボーナスの減額分として46万2500円が認められています。

【名古屋地方裁判所 令和2年2月12日判決】

<事案の概要>
交差点において原告(大型自動二輪車)と被告(普通乗用自動車)が衝突した事故について、原告の損害や後遺障害の程度が争点となった事案です。原告は、2年近く入通院を続けるほどの怪我(左大腿骨転子部骨折、左示指末節骨骨折、左示指背側割創)を負いました。

原告は、この事故のために休業を余儀なくされたこと、また、勤め先の業務委託契約が更新されなかったことを理由に、本来ボーナスの支給対象期間(1年間)中に無欠勤であれば、あるいは順調に契約更新がなされていれば支払われていたはずのボーナス相当額(37万274円)も請求の対象と主張しました。

<裁判所の判断>
裁判所は、被告が負担するボーナスの減額分について、支給基準が明らかでないことを理由に、休業等の程度に照らして相当な範囲(10万541円)で休業損害と認めました。

また、原告が負った怪我の後遺症である左股関節痛等の症状・下肢の短縮について、それぞれ12級13号に該当する後遺障害と認めたうえで、通院頻度や後遺障害の内容、程度に照らして傷害慰謝料を180万円、後遺障害慰謝料を250万円としました。また、休業損害(250万6031円)その他の損害項目を含めて合計1278万円4142円の損害を認め、過失相殺及び既払金を控除した残額の支払いを被告に命じています。

交通事故でボーナスが減額された場合は弁護士にご相談ください

会社によって支払時期や金額は異なるものの、働くためのモチベーションにもなる“ボーナス”。ボーナスの支給を期待して、大きな買い物の予定を組んでいる、将来のための積立資金にしているといった方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
交通事故で怪我をして、思うような生活ができないストレスの中で、楽しみにしていたボーナスまで取り上げられてしまったら、やりきれない気持ちでいっぱいでしょう。
交通事故で発生した損害は、加害者側にしっかり請求し、補償を受けるべきです。

もっとも、あくまでも請求できるのは交通事故を原因とした減額分のみです。適正な賠償額を算定できる“根拠”がなければ、加害者側に請求を認めてもらうことが難しくなってしまいます。

そこで、交通事故事案に精通した弁護士への相談をご検討ください。

弁護士法人ALGでは、まずはご相談いただき、弁護士への依頼によってどんなことが実現する可能性があるか知っていただくことが大切と考えています。
なお、弁護士にご相談いただく前に、交通事故事案専門の受付スタッフがお客様のご状況をお伺いする段階を踏みますので、ご不明点等も気軽にお話しいただければと思います。

ご依頼者様に発生した損害について、とりこぼしなく加害者側に請求できるよう事案を精査し、必要なサポートを提供できる環境が整っていますので、ぜひ一度お電話にてお問合せください。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。