監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
「愛するパートナー(配偶者)が自分を裏切って浮気をしていた……」
そんな事実がわかってしまったら、大変なショックを受けられると思います。傷ついた心をお金で癒すことはできませんが、せめて満足のいく慰謝料を支払ってもらいたいと思うのは自然な感情でしょう。
本記事では、配偶者が浮気・不倫をしていた場合に請求できる慰謝料について説明していきます。請求するうえで重要な証拠やよく受ける質問についても解説しますので、参考になれば幸いです。
浮気・不倫が原因の慰謝料について
浮気(不倫)の慰謝料は、配偶者が浮気(不倫)相手と不貞行為をしていた場合に請求することができます。
不貞行為をした事実があれば、基本的に、浮気が原因で離婚したかどうかに関係なく慰謝料を請求できます。ただし、必ず請求が認められるとは限りません。
詳しくは次項以下で説明します。
浮気の慰謝料が請求できるのはどこからか
浮気の慰謝料請求が認められるのは、配偶者と浮気相手が不貞行為をした事実がある場合です。
不貞行為とは、配偶者以外の人とする、性交行為やそれに類似する行為をいいます。つまり、配偶者が自分以外といわゆる肉体関係を結んでいる場合に、浮気の慰謝料を請求することができます。
ただし、次項で説明するように、不貞行為の事実があっても慰謝料請求できないケースがあります。
慰謝料が発生しないケースもある
次のような事情があるケースでは、たとえ不貞行為をした事実があったとしても、慰謝料の請求が認められない可能性があります。
不貞行為が行われる前に夫婦関係が破綻していた
不貞行為によって夫婦関係が壊されたとはいえないので、浮気の慰謝料は発生しません。
浮気相手が不貞行為をした事実を認識していない
配偶者が浮気相手に既婚であることを隠していて、浮気相手が落ち度なく未婚だと信じていたようなケースでは、浮気相手は不貞行為について法律上責任を負いません。そのため、浮気相手に対する慰謝料は発生しません。
請求した時点で時効が成立していた
浮気の慰謝料を請求できる権利は、下記の期間が経過すると消えてしまいます。これを「消滅時効の成立」といいます。
- 不貞行為があった事実や浮気相手を知った時から3年
- 最初の不貞行為から20年
不貞行為に対する慰謝料の相場
浮気の慰謝料、特に、不貞をした配偶者が裁判の結果負う慰謝料の相場は、次のようにいわれています。
- 離婚はしない場合:50万~100万円程度
- 離婚した場合:200万~300万円程度
なお、相場よりも高額・低額になることもあります。
例えば下記のような事情があるケースでは、相場よりも低額になる可能性が高いでしょう。
- 自分も浮気やモラハラ、DVをしていた等、過失がある
- 浮気をした配偶者や浮気相手の収入や財産が少ない
- 不貞行為の期間が短い、回数が少ない、真摯に反省している等、悪質度が低い
浮気の慰謝料が高額になるケース
低額になるケースとは反対に、次のような事情があるケースでは浮気の慰謝料が増額する傾向にあります。
- 婚姻期間が長い
- 夫婦の間に未成年の子供がいる
- 浮気相手が妊娠、出産した
- 不貞行為の内容が悪質(何度も浮気を繰り返した、長期間浮気相手との関係を続けていたなど)
- 浮気をしたことが明らかなのに否定する
- もう二度と浮気をしないと約束したのに破った
- 浮気をした配偶者、浮気相手に資力がある
浮気の慰謝料について争う場合は証拠が重要
浮気の慰謝料を支払わせるためには、言い逃れできないように、不貞行為があった事実を証明することが重要です。不貞行為の事実は、一般的に、次項以下で挙げる証拠を揃えて証明します。
なお、証拠によって推測される事実が異なりますし、信頼性や説得力も違います。証拠を集めれば集めるほど、「不貞行為があった事実」の信用力を高められるので、有利な立場になるでしょう。
写真・動画
性交行為やそれに似た行為をしている状況を収めた写真・動画は、決定的な証拠といえます。また、2人で布団やベッドにいる状況を撮影したものも、不貞行為を強く推測できるのでかなり有力な証拠となるでしょう。
さらに、ラブホテルに2人で出入りしたり、浮気相手の家で宿泊していたりする写真・動画も証拠となり得ます。
メール・SNS
メールやSNS(DM、LINEのメッセージなど)で不貞行為の内容について言及していたり、肉体関係を匂わせるやりとりがあったりする場合、証拠となり得ます。
なお、スクリーンショットを撮る方法だと改ざんが疑われやすいので、メッセージの画面を写真や動画で記録して証拠に残すことをおすすめします。その際には、やりとりをしていた日時がわかるように工夫すると良いでしょう。
領収書
ラブホテルの利用料金の領収書、2人旅をしたことがわかる旅行先の領収書、異性用の高価なアクセサリーや衣服を購入したクレジットカード明細などがある場合も、証拠となる可能性があります。
しかし、誰と一緒に利用したのか、誰にプレゼントしたのかといった事実はわからないので、直接不貞行為の事実を証明することはできません。別の証拠の説得力を高める証拠として使われる場合が多いです。
配偶者本人が自白した音声
配偶者本人が浮気をした事実を認めている(自白している)音声データも、証拠となり得ます。
ただし、脅すなどして強制的に自白させた場合には証拠として認められないため注意が必要です。
また、自白内容を書き起こした書面や自白しているところを撮影したデータと併せると、より有力な証拠になります。
SuicaやPASMO、ETCなどの利用履歴
SuicaやPASMO、ETCなどのICカードの利用履歴は、浮気を直接証明する証拠としては弱いでしょう。しかし、浮気の疑いを深めることはできますし、有力な証拠を押さえるために使える可能性があります。
例えば、休日出勤と言っていた日にICカードの利用履歴がなかったり、残業と言っていた日に職場や最寄り駅以外で乗り降りしている記録があったりすれば、「嘘をついていた事実」がわかります。
また、不審な乗り降りをしている駅に目星をつければ、浮気相手とのデートの様子を押さえることができるかもしれません。
なお、ICカードの利用履歴は次の方法で確認できます。
- 駅の券売機で履歴を表示・印刷する
- アプリでデータを読み取る
- ICカードリーダーを購入してデータを確認する
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浮気の慰謝料は誰に請求できるのか
浮気の慰謝料は、基本的に不貞行為をした配偶者と浮気相手に請求できます。具体的には、
①配偶者と浮気相手両方に請求する
②配偶者にだけ請求する
③浮気相手にだけ請求する
という3つのパターンのどれかを選択して請求することになります。
ただし、離婚しないで浮気相手にだけ慰謝料を請求するパターンでは注意が必要です。
この場合、浮気相手は一緒に不貞行為をした配偶者の分の慰謝料も支払うことになりますが、本来自分が負担するべき分を超えて支払った慰謝料は、一緒に不貞行為をした配偶者に返金するよう求めることができます(求償権といいます)。つまり、慰謝料の請求額によっては、夫婦の共有財産を減らすことになってしまう可能性があります。
浮気に対する慰謝料を決める方法と流れ
浮気に対する慰謝料は、まずは書面や口頭(電話など)で交渉して請求します。
交渉がまとまらなければ裁判を起こして請求することになります。
一般的には、交渉では裁判所を関与させないため、不貞行為の有無や、慰謝料の支払い方法(分割)等について当事者間で話がどんどん進む傾向にあります。しかし、どちらか一方が合意を拒絶すれば、結論は得られません。
一方、裁判では月に1回程度の「期日」を中心に事件が進行していくため、交渉と比べて解決に時間を要する一方、不貞行為の有無や、慰謝料の支払いについては、最終的には裁判所が判断をくだすことになるため、何らかの結論は原則として得られることとなります。
なお、交渉で慰謝料を請求する場合には、慰謝料を確実に受け取るために事前に対策を講じておくことが重要です。具体的には、
- 和解内容をまとめた示談書を公正証書の形で作成する
- 示談書に強制執行認諾文言の記載をする
- 公証人役場に当事者を呼び出し、公正証書作成と同時に送達を完了させておく
ことをおすすめします。
こうした対策を講じておけば、和解した内容について後で揉める可能性が低くなりますし、相手が慰謝料を支払わない場合に強制執行を申し立てることができるようになります。
浮気に対する慰謝料請求の時効について
浮気(不貞行為)そのものに対する慰謝料を請求できる期間は限られており、一定の期間(時効期間)を過ぎると、慰謝料を請求しても認められなくなってしまいます。
浮気そのものに対する慰謝料の場合、時効期間は次のとおりに定められています。
- 不貞行為があった事実と浮気相手、両方を知った時から3年
- 最初の不貞行為から20年
よくある質問
結婚前の浮気は慰謝料が発生しますか?
基本的に、結婚前に浮気をされても慰謝料を請求できません。
ただし、
・婚約中にされた浮気
・内縁関係にある間にされた浮気
については、婚約していたことや内縁関係(夫婦同然の関係)にあったことを証明できれば、慰謝料請求が認められる可能性があります。
一般的に、次のような事実や証拠があれば、2人の関係性を証明するにあたって有利になります。
【婚約していた場合】
・プロポーズの言葉や結婚を約束する旨が書かれたメッセージカードがある
・結婚式場を予約している
・両家の顔合わせが済んでいる
・婚約指輪を交換している
・周囲に結婚する意志を伝えている
【内縁関係にあった場合】
・内縁関係にあることを役所に届け出ている(住民票の続柄に「未届けの夫(妻)」と記載されます)
・それぞれの親族の冠婚葬祭に2人で出席している
・周囲から夫婦として認識されている
相手の自白は浮気の証拠になりますか?
なり得ます。ただし、自白するように強制した結果なされた自白は証拠として認められません。
また、口頭で浮気を認める発言をしたとしても、後になって白を切られてしまう可能性があります。
そこで、自白の内容を物的証拠に残しておくことをおすすめします。例えば、次のような方法をとれば、自白の事実を客観的な証拠として残すことができます。
・自白内容を書面に書き起こし、本人に署名させる
・自白している様子を録音・録画する
ちなみに書面と録音・録画データの両方を残すとより信頼性が増しますし、破損や紛失などのリスクにも対応できます。
パートナーから浮気の濡れ衣を着せられ、慰謝料請求された場合は支払う必要はありますか?
結論からいうと、支払う必要はありません。
たとえ配偶者から浮気の濡れ衣を着せられても、相手と肉体関係がなければ法律上慰謝料は発生しません。また、そもそもパートナーと結婚・婚約していない、内縁関係にない場合には、慰謝料が発生することはないので支払う必要はありません。
とはいえ、請求を無視したり感情的に対応したりすると状況が悪化してしまいかねません。混乱してしまうお気持ちもわかりますが、まずは落ち着いて浮気を疑われた原因を探り、誤解を解くように努めましょう。
不貞(浮気)慰謝料と離婚慰謝料の違いは何ですか?
不貞(浮気の)慰謝料と離婚慰謝料は、賠償の対象とする精神的苦痛の種類が違います。
・不貞慰謝料:配偶者の不貞行為そのものから受けた精神的苦痛に対する賠償
・離婚慰謝料:配偶者の不貞行為が原因で離婚しなければならなくなったことで受けた精神的苦痛に対する賠償
つまり、不貞慰謝料は「不貞行為そのもの」、離婚慰謝料は「離婚したこと」に対する慰謝料といえます。
そのため、金額の相場に差があるほか、時効が成立するまでの期間を数え始めるタイミングも異なります。
3年前の浮気に対して慰謝料請求することはできますか?
できる可能性があります。
浮気の慰謝料は、不貞行為をしていた事実と浮気相手を知ってから3年以内に請求しないと、時効が成立して請求できなくなってしまう可能性があります。そのため、これらの事実を知ってから何の手も打たずに3年が過ぎてしまった場合、慰謝料の請求は困難です。
ただし、下記に挙げるとおり例外的なケースもあります。
・浮気相手が誰なのかわからなかったケース
このケースでは、3年ではなく20年の時効が適用されます。つまり、最初の不貞行為から20年間は慰謝料を請求する権利がなくなりません。
・時効の進行を停止、または期間を更新する対策をとったケース
裁判を起こす、内容証明郵便で慰謝料を請求する(催告する)、財産の仮差押え・仮処分・差し押さえ等をすることにより、3年という時効期間を延ばすことができます。
なお、3年が過ぎても慰謝料を請求できなくなるわけではありません。請求された人に支払う意思があれば、慰謝料を受け取ることができるでしょう。
浮気による慰謝料について悩んだら弁護士に相談してみましょう
配偶者の浮気による心の傷は、お金で癒せるものではないでしょう。しかし、慰謝料を請求すれば、ご相談者様が浮気によって傷ついた事実を配偶者や浮気相手に実感させ、反省を促すことにつながります。
とはいえ、場合によっては誠意のない対応をされ、その言動でさらに傷つけられてしまう可能性もあります。そこで、弁護士に代わりに対応してもらうことを検討されてはいかがでしょうか。
夫婦間の問題を取り扱った経験が豊富な弁護士なら、丁寧に事情を伺いお気持ちをしっかりと汲み取ったうえで、よりご相談者様に負担のかからない解決方法を提案することができます。
ご相談者様にとって最良の結果となるよう尽力いたしますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
離婚せずに別居だけする場合、子供も連れて行った方が親権争いで有利になるのではないかと考えて、一緒に別居しようとされる方がいらっしゃいます。
確かに、裁判所が親権者を決める際には、これまでに主に父母のどちらが子供の面倒を看てきたのか、どちらが親権者となる方がより子供のためになるかといった点が重視されます。そのため、子供を連れて別居し監護実績を積んでいくと、親権争いで有利になる可能性があります。しかし、別居の理由や方法によっては、逆に悪い心証を与えてしまい不利な立場になるリスクもあります。
子供を連れて別居する場合には、様々な事柄を考慮する必要があるので、以下説明していきます。
離婚しないで子供を連れて別居をするときの注意点
離婚せずに子供を連れて別居する場合、子供のためにも、十分な養育環境を整える必要があります。
別居の際に考慮しなければならないことはいろいろありますが、子供を連れて行く場合には、特に次項以下のポイントに注意するべきでしょう。
別居後の養育環境
相手方配偶者が常に出て行ってくれるわけではないため、子供を連れて別居しなければならない場合があります。その場合は、引っ越さなければならず、子供の保育園や幼稚園、学校の区域が変わることもあります。
そのため、転園・転校等の手続きのため、住民票の移動をはじめとする事務手続きを忘れずに行う必要があります。
また、子供の心のケアも重要です。両親の別居によって大きなストレスを受けているなか、新しい環境にも慣れていかなければならず、心理的にかなりの負荷がかかるからです。
婚姻費用や養育費
子供の養育環境を整えるうえで、「婚姻費用」や「養育費」について考えることは欠かせません。
「婚姻費用」とは、収入の多い配偶者から少ない配偶者へ支払う、一般的な生活を送るために必要な生活費です。子供を連れて別居している場合には、ご自身の分の生活費に加えて、子供を育てていくうえで必要な費用(養育費)も婚姻費用として受け取ることができます。
とはいえ、ただ婚姻費用を請求しても支払ってもらえない可能性が高いので、弁護士に依頼して調停の申立てをすること等も視野に入れることをおすすめします。
児童手当、児童扶養手当
「児童手当」の受給者の変更手続や、「児童扶養手当」の請求を検討する必要もあります。
「児童手当」とは、中学生までの子供を育てている人に対して、4ヶ月に1度、子供の年齢や人数に応じて支払われる給付金です。夫婦の収入を比べて多い方に支給されるものなので、受給者を変更する手続きを行わないと、実際に子供を育てている方の親が受け取れなくなってしまうケースがあります。
「児童扶養手当」とは、1年以上別居を続けている等、父母の一方とは異なる家計で暮らしている子供(18歳未満、または18歳の誕生日以降3月31日を迎えていない子供のみ)を育てている人に対して、毎月、子どもの年齢や人数に応じて支払われる給付金です。ただし、受給条件もあるので、受給されたい方は役所に相談してみると良いでしょう。
面会交流
別居している親子の交流の場である、「面会交流」のルールを取り決めることも必要です。
夫婦仲が悪いと、「別居中の配偶者と子供を会わせたくない」という気持ちが出てくるかもしれません。しかし、面会交流は何といっても“子供の権利”なので、親が一方的に許否することは認められません。
とはいえ、別居中の配偶者が子供を虐待していた場合等、面会交流を実施することが子供のためにならない事情があるケースでは、子供の幸せを考えて、面会交流を行わなくとも良いと判断される可能性があります。
別居と子供の連れ去り
子供を連れて別居を始めた場合、「違法な連れ去り別居にあたらないかどうか」が問題になります。
「連れ去り別居」とは、夫または妻が配偶者に黙って子供を連れて別居してしまうことを指します。
別居を始めた理由やその方法、別居前の話し合いの状況等によっては、“違法な連れ去り別居”だと判断され、子供を配偶者に引き渡さなければならなくなったり、配偶者に対して慰謝料を支払わなければならなくなったりしてしまうので、注意が必要です。
違法な連れ去り別居と判断されないための注意点
一般的に、身勝手な理由で子供を連れて別居すると、 “違法な”連れ去り別居だと判断されてしまう可能性が高いといえます。例えば、次のようなケースです。
- 子供の親権について激しく争っていて解決の目途が立たないなか、子供を連れて別居に踏み切った
- 保育園や幼稚園、学校等で子供を待ち伏せた上で子をそのまま連れて別居に踏み切った
- 面会交流の後、そのまま子供を帰さなくなった
これに対して、子供の身の安全を守る必要があるケースであれば、一方的にした連れ去り別居でも“正当”だと判断されると可能性があります。具体例としては、次のようなケースが挙げられます。
- 相手方配偶者から子供が虐待を受けていた
- 夫婦間でDVがあり、子供にも影響が及ぶ危険があった
別居中に子供を連れ去られた場合
子供を連れて別居していたところ、離れて暮らしていた配偶者に子供を連れ去られてしまったケースでは、まず、子供の住所地を管轄する家庭裁判所に「監護者指定審判」と「子の引渡しの審判」請求を申し立て、子供を取り戻すことを目指します。
子の生命が危うい場合等、緊急性の高い案件の場合、「審判前の保全処分」も併せて申し立て、暫定的に子供を引き渡すべきかどうかを審判に先立って判断してもらうことが必要なケースもあります。
審判前の保全処分や子の引渡し審判が認められれば、子の引渡しの強制執行手続を行うことができるようになります。それでも引き渡しが実現しなければ、最終的に「人身保護請求」を利用して、子供の引渡しを目指すことになります。
なお、こうした手続きに頼ることなく、自力で子供を連れ戻そうとするのは控えるべきです。なぜなら、違法な連れ去りだと判断されて不利な立場になってしまうリスクがあるからです。
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DV、モラハラ加害者との別居
子供が配偶者から虐待(モラハラ、DV等)を受けている場合には、すぐに子供を連れて別居を始めるべきです。
このようなケースでは、別居した後、下記のような対応をして子どもやご自身の身の安全の確保を図る必要があります。
- 子への接近禁止命令を出してもらう
裁判所に対して、DV加害者である親から子供へのさらなる暴力を防ぐために、加害者である親が子供に近づくのを禁止する決定(保護命令)を出すよう求めることができます。 - 弁護士に依頼して離婚の交渉を開始する
「子供が幼いうちは両親が揃っている方が良いから離婚は避けたい」と考えられる方もいらっしゃいますが、本当に子供の幸せを想うのであれば、虐待が行われている家庭環境を改善するべきです。その手段のひとつとして、離婚が挙げられます。 - 面会交流のルールを決める
子供が虐待を受けているケースでは、面会交流が子供の健全な成長に悪影響となる可能性が高いので、子供の幸せを第一に考えたルールを作る必要があります。
別居後の子供とのかかわり方
一方の親と離れて暮らすことは、子どもにとって大きなストレスとなります。別居の原因が自分にあるのではないか自身を責めたり、親から見放されることを過度に恐れたりする結果、精神的なトラブルを抱えてしまうこともあります。
このような問題を防ぐためには、親による心のケア、特に一緒に暮らしている親の配慮がとても重要です。
例えば、子供に対する愛情を言葉や抱きしめることで伝えたり、別居は両親の事情によるものであって子供には責任がない旨を説明して安心感を与えてあげたりすると良いでしょう。そのためにも、子供との時間をこれまで以上に多く確保することが必要になります。
よくある質問
家庭内別居する際に子供に対して注意することはありますか?
たとえ幼い子供であっても、家庭内別居中の夫婦の不穏な空気を感じ取ります。そのため、精神的なストレスから体調不良を起こしやすくなったり、子供によっては親の顔色を窺う自己主張のできない性格になってしまったり、コミュニケーションが苦手になったり、非行に走ったりする等、いろいろな悪影響が及ぶ可能性があります。 本来、家庭は子供が安心して過ごすことができる場所であるはずです。夫婦仲が悪く、家庭内別居という選択肢が避けられないとしても、子供に対しては惜しみなく愛情を伝え、安心して成長していけるように配慮するべきでしょう。
別居中から自分の扶養に子供を入れておいたほうがいいですか?
扶養に入れておくことをおすすめします。別居する段階で子供を自分の扶養に入れておくと、経済的にいろいろなメリットを受けられるからです。
例えば、次のようなメリットを受けられる可能性があります。
・住民税や所得税が安くなる
・児童扶養手当の支給額が上がる
・家族手当を受給できる
・保育料や公営住宅の家賃の計算上有利になる
配偶者に黙って子供を連れて別居をした場合は慰謝料請求されますか?
夫婦の同居義務に違反した、または悪意の遺棄(配偶者を見捨てる行為)に該当するとして、慰謝料を請求される可能性があります。
相手方配偶者のDVやモラハラから自分や子供を守るために別居したいといった事情がある場合には、別居に正当な理由があると考えられるので、慰謝料を請求される可能性は低いでしょう。
しかし、特に理由がないのに勝手に子供を連れて家を出ていくような場合には、「夫婦の同居義務違反」や「悪意の遺棄」に該当すると判断され、婚姻関係を破綻させる原因を作った「有責配偶者」だとみなされてしまうおそれがあります。
有責配偶者は、基本的に自分から離婚請求することができないほか、相応の慰謝料を支払う責任も負います。相手の合意がないのに、安易に子供を連れて別居することは避けるべきでしょう。
子供を連れての別居が違法とならないためにまずは弁護士にご相談ください
基本的に、子供のためにならない身勝手な連れ去り別居は違法とされるので、離婚の話し合いや親権争いで不利に働く可能性が高いです。しかし、子供を連れて別居することが本当に子供のためになるのか、事前に見極めることは難しいですし、実際に別居してみなければわからないところもあります。
そこで、子供を連れて別居することを検討されている方は、別居によって子供がどのような影響を受ける可能性があるのか、どうすればその影響を最小限に抑えられるのかといった点を、一度弁護士にご相談されてみることをおすすめします。
難しい問題ではありますが、ご相談者様とお子様にとってより良い未来となるよう、誠心誠意対応させていただきます。まずは専任のスタッフがお電話にて対応させていただきますので、お気軽にご連絡ください。
離婚するにあたって、それまで夫婦一緒に住んでいた家や共同で使ってきた車、生活費を入れていた預貯金口座などをどのように処理すれば良いのか、迷われる方もいらっしゃるかもしれません。この点、こうした家や車、預貯金口座が夫婦の共有財産だといえれば、夫婦2人で財産を分け合う「財産分与」を行うことになります。
では、具体的にどのように行えば良いのでしょうか?
今回は、対象となる財産や実行する際の注意点、実際の手続きの方法など、財産分与の詳細について解説していきます。
財産分与とは
「財産分与」とは、結婚している間に夫婦で協力して作り上げた財産を、夫と妻それぞれの貢献度に応じて、離婚の際に分配することです。なお、夫婦の貢献度は、それぞれ2分の1ずつとなるのが一般的です。
夫婦として共同生活を送る間に手に入れた財産であれば、名義が誰のものになっていても、原則的に財産分与の対象となります。例えば、結婚後に夫と妻がそれぞれ稼いだお金を貯めて夫名義の家を購入したケースでは、その家は財産分与の対象になります。
財産分与の種類
財産分与には、次の3つの種類があります。
清算的財産分与
結婚生活を送るうえで夫婦が協力して作り上げてきた財産を“共有財産”だと考え、各々の貢献度に応じて財産を分け合うために行う財産分与です。
あくまで夫婦の財産を2人で分け合うことが目的なので、離婚原因を作った配偶者(有責配偶者)からの請求も認められます。
単純に“財産分与”というときは、これを指しているケースが多いです。
扶養的財産分与
離婚すると一方の配偶者が生活に困ってしまう場合に、その配偶者を経済的に支えるために行う財産分与です。
離婚する時点で一方の配偶者が病気にかかっていたり、専業主婦(主夫)で経済力に乏しかったり、高齢で働くことが難しかったりといった事情がある場合に、認められる傾向があります。
一般的に、経済力のある配偶者からもう一方に対して、ある程度の期間、一定の金額を定期的に支払うという方法がとられます。
慰謝料的財産分与
離婚することになった原因が一方の配偶者の行為にあり、離婚を強いられたことによる精神的な苦痛に対する慰謝料を請求できる場合に、財産分与の金額や分配方法等に慰謝料の内容を反映して行う財産分与です。
例えば、離婚の原因が相手方配偶者の不貞行為やDVにある場合、慰謝料を請求できますが、慰謝料を請求しない代わりに財産分与の増額を求めたり、欲しい財産を手に入れるための交渉材料に慰謝料の請求権を使ったりすることもできます。こういった形で行う財産分与が、慰謝料的財産分与にあたります。
財産分与の対象となる資産
財産分与の対象になるのは、結婚している間に夫婦で協力して作り上げた財産である「共有財産」です。共有財産だといえれば、誰の名義であっても、財産分与の対象にできます。
そのため、夫婦の共有名義で購入した資産はもちろん、どちらか一方の名義になっている資産も、夫婦の協力によって得られたといえれば財産分与の対象となります。
なお、結婚後同居している間に手に入れた資産は、財産分与の対象とならない「特有財産」にあたらない限り、「共有財産」とみなされます。
では、具体的にどういった資産が共有財産となるのでしょうか?分与の方法も併せて説明していきます。
預貯金
共働きの夫婦がそれぞれの収入からお金を出し合って貯めた預貯金は、もちろん共有財産になります。
また、一方が専業主婦(主夫)の夫婦で、家計を支えているもう一方の配偶者の収入だけを貯めた預貯金も共有財産になります。なぜなら、専業主婦(主夫)である配偶者は家事や育児によってもう一方の配偶者の仕事を支えているので、夫婦の協力で収入が得られたと考えられるからです。
家やマンションなどの不動産
結婚後に購入した家やマンション、土地等の不動産は、基本的に共有財産にあたるので財産分与の対象となります。
とはいえ、不動産は物理的に分けることができないので、次のような方法で財産分与することになります。
- 不動産を売り、売却代金を半分ずつ分け合う
- 片方の配偶者が、不動産の評価額の半分を支払って住み続ける
- 片方の配偶者が、不動産の評価額の半分に相当する財産を渡して住み続ける
自動車
自動車も共有財産となり得るので、財産分与の対象となる場合があります。
自動車も、不動産と同じく物理的に分けられないので、財産分与は次のような方法で行うことになります。
- 自動車を売り、売却代金を半分ずつ分け合う
- 片方の配偶者が、評価額の半分を支払って自動車をもらう
- 片方の配偶者が、評価額の半分に相当する財産を渡して自動車をもらう
子供の財産分与について(学資保険、貯金)
夫婦に子供がいる場合、子供の名前で学資保険に加入していたり、子供を名義人とする預貯金口座にお金を貯めていたりすることがあるでしょう。この点、財産分与は夫婦の共有財産を分配するものなので、たとえ子供名義であっても共有財産にあたれば財産分与の対象となります。
例えば、親が自分の収入を少しずつ子供名義の口座に貯めてきた場合や、学資保険の資金に夫婦の収入を充てていた場合等には、子供名義の財産も財産分与の対象になると考えられます。
へそくり
配偶者に内緒で、夫婦の生活費から少しずつお金を差し引いてへそくりを作っていた場合、夫婦の共同生活に充てられるはずだった共有財産を貯めたものだといえるので、共有財産として財産分与の対象となります。
これに対して、親からもらったお金等を貯めてへそくりにしていた場合には、共有財産にはあたらないので財産分与の対象外となります。
株
株が共有財産にあたるかどうかは、手に入れた時期・方法・名義から判断します。
次のような株は、共有財産として財産分与の対象となる可能性が高いでしょう。
- 婚姻後に手に入れたもの
- もう一方の配偶者の協力で手に入れたもの
- 会社名義ではなく個人名義であるもの
財産分与の対象にならない資産
財産分与の対象にならない資産を「特有財産」といいます。
具体的には、
- 結婚前から一方の配偶者が持っていた財産
例:独身時代に貯めた預貯金、結婚後に独身時代に貯めたお金を資金として購入した車など - 結婚後、夫婦の協力とは関係なく手に入れた財産
例:親から相続した不動産や車など
が特有財産にあたります。
しかし、特有財産でも「夫婦が協力して価値を維持・増加した」と考えられるものは、価値の維持・増加に対する貢献度に応じて、財産分与されることがあります。例えば、独身時代に夫が買った車のメンテナンス費用や改造費用を夫婦の収入から出していたケースでは、財産分与の際に車の評価額の一部が考慮される可能性があります。
また、独身時代に使っていた預貯金口座を結婚後も引き続き使っているケースでは、共有財産と特有財産の区別が困難で、全額が共有財産だと判断されてしまう可能性があるので注意が必要です。
マイナスの資産(住宅ローン、借金)も財産分与の対象とならない
マイナスの資産は財産分与の対象となりません。
もっとも、マイナスの資産については、交渉において、負担を求めたり、裁判所の判断において考慮される場合があります。
実際に下記の具体例を見ていただくとわかりやすいでしょう。
【財産分与の対象となる借金の例】
- 家族の生活費のための借金
- 家族で使う車のローン
- 家族で住むための不動産の住宅ローン
【財産分与の対象とならない借金の例】
- ギャンブルや浪費のための借金
- 個人的な借金
- 結婚前にした借金
なお、借金等のマイナスの資産がある場合、夫婦の共有財産であるプラスの財産からマイナスの資産を引いた残額を財産分与するのが一般的です。
他方、マイナスの資産がプラスの資産を上回っている場合(いわゆる債務超過の場合)には、財産分与の制度上、当然ながら財産分与は行われません。
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熟年離婚をするときの財産分与
熟年離婚をする場合、結婚期間が長い分、財産分与の対象となる財産の種類も増えますし、金額も大きくなるケースが多いです。例えば、配偶者が定年退職を迎えるタイミングで離婚する場合、高額な退職金の財産分与を受けられる可能性が高いので、その分財産分与の金額も大きくなるでしょう。
しかし、熟年離婚をする世代の方は、若い世代以上に離婚後の生活費の確保が難しいことが多いので、ご自身が財産分与でどれくらいの財産を受け取ることができるのか、事前にしっかりと把握し、離婚後の生活設計を立てておくことをおすすめします。
退職金
退職金は「給与の後払い」的な性質を持っているので、給与と同じように、共有財産として財産分与の対象となる可能性があります。
ただし、財産分与の対象となるのは、婚姻期間に相当する退職金だけです。つまり、結婚する前や離婚後に働いた期間に相当する退職金については、財産分与を受けることはできません。
なお、退職金は会社の業績等によっては支払われない可能性もあるので、離婚の時点で支払われているかどうかで考え方が変わってきます。以下をご覧ください。
退職金が既に支払われている場合
退職金が既に支払われている場合、退職金は財産分与の対象になるので、婚姻期間に相当する分の退職金の財産分与を受けられます。
ただし、もう退職金を使ってしまっていて残っていないケースでは、そもそも分けることができる退職金がないため、財産分与の対象にはなりません。とはいえ、一方の配偶者がギャンブル等に退職金をつぎ込んでしまったというような事情があれば、他の財産を分配する割合などで考慮してもらえる可能性があります。
退職金がまだ支払われていない場合
離婚の時点で退職金がまだ支払われていない場合には、「ほぼ確実に支払われると認められるとき」に限って、退職金は財産分与の対象になります。
一般的に、
- 就業規則や賃金規定に退職金に関する規定の有無
- 退職金の算定方法の明示性
- 会社の規模
- 定年退職を迎えるまでの期間
- 勤務成績
といった事情を考慮して、退職金がほぼ確実に支払われると認められるかどうかが判断されます。
年金
財産分与とは違う制度ですが、年金については、結婚していた間に納めた厚生年金の記録を夫婦で分割できる「年金分割」という制度もあります。
なお、年金分割の対象となるのは、結婚していた間の厚生年金(元共済年金も含みます)の納付記録だけなので、企業年金等を対象にすることはできません。また、あくまでも“納付記録を分割する制度”なので、配偶者の年金の一部を受け取れるようになるわけではありません。
離婚したときの財産分与の割合
財産分与の割合は、夫と妻それぞれがどれだけ夫婦の共有財産の維持・形成に貢献したのかによって決められますが、2分の1ずつとされるのが一般的です。
ただし、一方の配偶者の特別な努力や能力によって高額な財産を築けたというような特殊な事情がある場合には、その努力等を考慮して、財産分与の割合が修正されることがあります。例えば、片方が医師やスポーツ選手等、専門的かつ高い技能が必要とされる職業に就いている場合には、財産分与の割合が修正される可能性があるでしょう。
専業主婦、専業主夫
片方が収入のない専業主婦(主夫)である場合も、財産分与の割合は通常どおり2分の1となるのが基本です。
なぜなら、専業主婦(主夫)は家事や育児を担うことで配偶者の仕事をサポートしているので、配偶者が仕事から得た収入は、夫婦が協力して手に入れた財産だといえるからです。
共働き
共働きの夫婦の場合も、財産分与の割合は基本的に2分の1のままです。
ただし、どちらも同じくらいの収入を得ている夫婦のケースで、片方の配偶者が家事のほとんどを行っているような場合には、家事の負担分、共有財産に対する貢献度に偏りがあります。こうしたケースでは、財産分与の割合が修正され、2分の1以上の割合で財産を受け取れるようになる可能性があります。
財産分与をする前にやっておくこと
財産分与の請求を検討されている方は、あらかじめ夫婦の共有財産がどれくらいあるのか調べておき、しっかりと財産の状況を把握してから請求することをおすすめします。
相手方配偶者が内緒でへそくりをしている場合や、財産分与の金額を減らしたいと考えている場合、こちらが財産分与を請求しようとしていることがわかると、財産を隠されてしまう危険があるからです。
適正な金額で財産分与を行うためにも、「隠し資産(へそくり)の有無」「配偶者の預貯金口座」について十分に調べておくと良いでしょう。
隠し資産(へそくり)がないか調べる
夫婦の生活費を少しずつ差し引いてへそくりを貯めていた場合等、夫婦の共有財産を資金源にしたへそくりは、現金や預貯金、電子マネーといった形態に関係なく財産分与の対象になります。
なお、財産分与を行った時点では見つけられなかったものの、後日へそくりが見つかったような場合には、改めてへそくりを半分ずつ分けることになります。
相手の預貯金を知っておく
夫婦の共有財産を正確に把握するためには、相手方配偶者の預貯金についても知っておくことが重要です。
とはいえ、相手方が隠そうとしている口座の存在を知ることや、どの口座の預貯金がどれだけ財産分与の対象になるのかを理解することは、専門的な知識がないと難しいでしょう。相手方の預貯金口座の調べ方に悩まれている方は、弁護士に相談されることを検討してみると良いかもしれません。
財産分与の方法と手続き
財産分与は、離婚と同時に請求することも、離婚した後に請求することもできます。どちらの場合でも、まずは相手方配偶者と話し合って、対象とする財産と分与の割合について合意を目指します。
夫婦で話し合うだけでは合意できないのであれば、管轄の家庭裁判所に「財産分与請求調停」を申し立て、調停員等の第三者の視点を入れて話し合いを進めます。それでも合意できずに調停が不成立になると、申立てを取り下げない限り審判に移行し、裁判官が財産分与の内容を判断することになります。
離婚と同時に財産分与を請求する場合には、離婚に関連するその他の請求と併せて、離婚裁判内で請求することもできます。この場合には、裁判所が当事者の主張や立証に基づいて財産分与の内容を決定します。
話し合いや裁判所の判断で財産分与の内容が決定したら、決定した内容に従って財産の引渡しや名義変更、金銭の支払い等を行い、財産分与を完了することになります。
財産分与の支払い方法
財産分与の主な目的は、離婚の時点で夫婦が持っている共有財産の清算なので、財産の受け渡しは離婚時に一括で行うのが望ましいです。しかし、夫婦の合意があれば、離婚後に分割して支払うことも可能です。
財産分与の支払方法には、主に以下のものがあります。
現物払い
財産をそのままの形で譲渡する方法です。現金や預貯金等とは違い、物理的に分けることができない不動産や株式等を分与する際によく使われる方法です。
一括支払い
分与する財産に相当する金額を、一度にまとめて金銭で支払う方法です。財産分与は基本的に一括支払いするものとされています。
分割支払いよりも不払いになるリスクが小さいといったメリットがありますが、そもそも一括して払うことができない場合、解決ができなくなるというリスクがあります。
分割支払い
分与する財産に相当する金額を、複数回に分けて金銭で支払う方法です。分与する財産が高額になるほど選択される傾向にありますが、途中で支払いが止まってしまうと結果的に満額を受け取れなくなってしまうので、不安がある方法といえますが、まとまった金銭の用意ができない場合等には有効な選択肢となるでしょう。
財産分与は請求期限が決まっているのでできるだけ早く手続しましょう
財産分与は、財産を渡す側にとっても受け取る側にとっても、離婚後の生活水準に影響してくる重要なものです。特に、財産分与の対象となる財産の見極めを間違えると、大きく損してしまうことにもなりかねません。
また、財産分与は、離婚してから2年以内に請求しないと認められなくなってしまいますし、離婚後は元配偶者と疎遠になってしまうケースも多いです。
財産分与について不安や悩みを抱えていらっしゃる場合や、離婚から日が経ってしまい元配偶者と財産分与について話し合うことが難しくなってしまった場合、財産分与の請求期限まで時間がないような場合には、離婚問題に詳しい弁護士にアドバイスを求めてみてはいかがでしょうか。こうした問題の解決のほか、諸々の交渉や手続の代理もお任せいただけますので、ぜひ弁護士への依頼も併せてご検討ください。
ひとたび交通事故に遭ってしまうと、怪我の治療費、通院のための交通費など、何かとお金がかかってきます。仕事に支障が出るような怪我であれば、収入が減ってしまうことも考えられます。
収入というと、まず“給与”が頭に浮かぶかもしれませんが、損害賠償請求において見逃されやすいのが“ボーナス”の減額です。このページでは、事故の影響でボーナスがカットされた場合の損害賠償請求について、解説していきます。
交通事故の影響でボーナスがカットされたら慰謝料請求は可能?
交通事故が原因で仕事を休んだり、十分な働きができなかったりして、ボーナス(賞与)がカットされてしまった場合、カットされてしまった分の補償は、【慰謝料】としてではなく、【休業損害】として加害者に請求していくことになります。
次項より、具体的な請求の方法を見ていきましょう。
ボーナスの減額を立証する方法
ボーナスの減額について、交通事故の加害者に損害賠償請求をするためには、①被害者が交通事故の影響で仕事を休んだり、十分な働きができなかったりしたことがボーナスカットの原因であり、②そのためにいくらの減額があったのかを証明する“証拠”が必要になります。
このとき有益な証拠となるのが、ボーナスの査定方法について記載がある就業規則や賞与規程、そして「賞与減額証明書」です。
賞与減額証明書の記載内容
《記載内容》
- 賞与支給年月日
- 賞与支給対象期間
- 欠勤期間
- 正常に勤務していた場合の支給金額および支給計算式
- 欠勤により減額した額および減額計算式
- 差引支給額
- 賞与減額の根拠
交通事故の影響でボーナスの減額があった場合には、給与の減額があった場合に必要な「休業損害証明書」とは別に、ボーナスの減額を証明する「賞与減額証明書」を会社に作成してもらいます。
なお、「賞与減額証明書」の書式は加害者側の任意保険会社から取り寄せる運用が一般的ですが、加害者側が自発的に送付してくれるとは限りません。その場合は、被害者からアクションを起こす必要があります。
また、書式の送付に応じてくれない場合には、上記1~7の記載内容を満たした書面をウェブ上からダウンロードするなどして対応するというのも一つの手段です。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
ボーナスの減額分を請求する際の注意点
ボーナスカットの要因が“交通事故による被害者の休業”であるという根拠を示すことができなければ、減額分の請求は認められないおそれがあります。なぜなら、ボーナスカットの要因は交通事故以外にも考えられるからです。
例えば、被害者だけでなくほかの従業員のボーナスも平均的に減額されているといった場合、ボーナスカットの要因は、“交通事故による被害者の休業”だけでなく、“会社全体の業績悪化”である可能性も考えられます。
そのため、就業規則や賞与規程上にボーナスの計算方法が明確に記載されておらず、使用者の裁量によって都度支給額が決められているといった運用である場合、“交通事故による被害者の休業”の影響でいくら減額されたのか証明することは難しいと言わざるを得ません。
「賞与減額証明書」を作成するのは被害者が勤める会社ですから、担当者に詳しい事情を説明し、協力を仰ぐことが望ましいでしょう。
交通事故慰謝料の他にボーナスの休業損害が認められた裁判例
【大阪地方裁判所 令和2年3月10日判決】
<事案の概要>
丁字路交差点を直進中の原告(自転車)に、本件交差を左折した被告(原動機付自転車)が衝突した事故により、第1・第2腰椎の圧迫骨折を負った原告が、被告に対して損害賠償を請求した事案です。
<裁判所の判断>
裁判所は、通院期間等に対する傷害慰謝料(135万円)、後遺障害等級8級相当の後遺障害慰謝料(830万円)、休業損害(197万5851円)など、合計3732万4847円の損害を認め、そこから過失相殺及び既払金を差し引いた金額の支払いを被告に命じています。
なお、本件は、提出した証拠から、ボーナスの支給対象期間や減額分が明らかであったため、休業損害(197万5851円)のうち、ボーナスの減額分として46万2500円が認められています。
【名古屋地方裁判所 令和2年2月12日判決】
<事案の概要>
交差点において原告(大型自動二輪車)と被告(普通乗用自動車)が衝突した事故について、原告の損害や後遺障害の程度が争点となった事案です。原告は、2年近く入通院を続けるほどの怪我(左大腿骨転子部骨折、左示指末節骨骨折、左示指背側割創)を負いました。
原告は、この事故のために休業を余儀なくされたこと、また、勤め先の業務委託契約が更新されなかったことを理由に、本来ボーナスの支給対象期間(1年間)中に無欠勤であれば、あるいは順調に契約更新がなされていれば支払われていたはずのボーナス相当額(37万274円)も請求の対象と主張しました。
<裁判所の判断>
裁判所は、被告が負担するボーナスの減額分について、支給基準が明らかでないことを理由に、休業等の程度に照らして相当な範囲(10万541円)で休業損害と認めました。
また、原告が負った怪我の後遺症である左股関節痛等の症状・下肢の短縮について、それぞれ12級13号に該当する後遺障害と認めたうえで、通院頻度や後遺障害の内容、程度に照らして傷害慰謝料を180万円、後遺障害慰謝料を250万円としました。また、休業損害(250万6031円)その他の損害項目を含めて合計1278万円4142円の損害を認め、過失相殺及び既払金を控除した残額の支払いを被告に命じています。
交通事故でボーナスが減額された場合は弁護士にご相談ください
会社によって支払時期や金額は異なるものの、働くためのモチベーションにもなる“ボーナス”。ボーナスの支給を期待して、大きな買い物の予定を組んでいる、将来のための積立資金にしているといった方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
交通事故で怪我をして、思うような生活ができないストレスの中で、楽しみにしていたボーナスまで取り上げられてしまったら、やりきれない気持ちでいっぱいでしょう。
交通事故で発生した損害は、加害者側にしっかり請求し、補償を受けるべきです。
もっとも、あくまでも請求できるのは交通事故を原因とした減額分のみです。適正な賠償額を算定できる“根拠”がなければ、加害者側に請求を認めてもらうことが難しくなってしまいます。
そこで、交通事故事案に精通した弁護士への相談をご検討ください。
弁護士法人ALGでは、まずはご相談いただき、弁護士への依頼によってどんなことが実現する可能性があるか知っていただくことが大切と考えています。
なお、弁護士にご相談いただく前に、交通事故事案専門の受付スタッフがお客様のご状況をお伺いする段階を踏みますので、ご不明点等も気軽にお話しいただければと思います。
ご依頼者様に発生した損害について、とりこぼしなく加害者側に請求できるよう事案を精査し、必要なサポートを提供できる環境が整っていますので、ぜひ一度お電話にてお問合せください。
交通事故の怪我で仕事ができず減収した分は、休業損害として相手方に請求できます。休業損害は会社員だけでなく、働いておらず収入がない主婦の方や無職の方も受け取れる可能性があるのがポイントです。
ただし、職業や立場によって計算方法や必要な書類が異なるため注意が必要です。
本記事で、適切な休業損害の請求方法をしっかり確認しておきましょう。
休業損害とは
休業損害とは、交通事故の怪我で仕事を休んだことによる減収分の補償をするものです。
なお、休業損害と混同されやすいものに「休業補償」があります。どちらも事故による減収分を補償するものですが、以下のような違いがあります。
休業損害:相手の自賠責保険や任意保険に請求
休業補償:業務中や通勤中の事故について、労災保険に請求
ただし、この2つを二重取りすることはできません。どちらに請求すべきかは過失割合や賠償金額によりケースバイケースのため、弁護士に相談されると良いでしょう。
休業損害の計算方法
休業損害には3つの算定基準(自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準)があります。どれを使うかで金額が変わり、弁護士基準が最も高くなるのが基本です。
それぞれの基準の計算方法について、以下で詳しくみていきましょう。なお、任意保険基準は非公開のため省略しますが、自賠責基準に少し上乗せした程度とお考えください。
また、以下でいう収入とは、「手取り」ではなく「総支給額」でお考えください。
自賠責基準での計算
自賠責基準の休業損害は、以下の計算式で求めます。
【日額6,100円※×休業日数】
なお、実収入の日額が6,100円を超えると証明できれば、その金額にもとづいて請求できる場合があります。ただし、その場合も日額の上限は1万9,000円となるため注意が必要です。
また、怪我の治療のために有給を使った場合、その日は休業日数にカウントできるのが基本です。
弁護士(裁判)基準での計算
次に、弁護士基準での計算式をご覧ください。
【1日あたりの基礎収入×休業日数】
弁護士基準の特徴は、決められた日額ではなく、自身の収入をもとに休業損害を請求できることです。
この「1日あたりの基礎収入」の求め方について、以下で詳しくご説明します。
1日あたりの基礎収入について
弁護士基準で休業損害を請求する際は、「1日あたりの基礎収入」をきちんと定めることが重要です。
例えば、給与所得者であれば「休業損害証明書」等をもとに計算します。休業損害証明書とは、被害者の給与や事故による欠勤日数を記入する書類で、会社に作成してもらいます。
もっとも、1日あたりの基礎収入は被害者の職業や立場によって計算方法が異なるため、以下でそれぞれ解説します。
給与所得者
継続して完全休業する場合の給与所得者の1日あたりの基礎収入は、
「事故前3ヶ月の給与÷90日」という式で求めます。
例として、事故前3ヶ月の給与が75万円だったケースでは、
「75万円÷90日=8,333円」が1日あたりの基礎収入になります。
ただし、歩合制など給与の変動が大きい場合、事故前6ヶ月または1年の給与をベースに計算することがあります。
自営業者
自営業者の1日あたりの基礎収入は、
「事故前年の所得額÷365日」という式で求めます。事故前年の所得は、基本的に確定申告書をもとにします。
例えば、事故前年の所得が500万円だった場合、
「500万円÷365日=1万3,698円」が1日あたりの基礎収入となります。
とはいえ、確定申告をしていない方や、過少申告した方もいらっしゃるでしょう。その場合、帳簿・領収書・預金通帳等によって実際の所得を証明できれば、休業損害が請求できることがあります。
専業主婦(夫)と兼業主婦
専業主婦(夫)の1日あたりの基礎収入は、「賃金センサス」という平均賃金の統計から求めます。
一般的に、事故年の賃金センサスをもとに「女性の学歴計・全年齢平均賃金÷365日」という式で求めます(毎年約1万円前後となっています)。
一方、兼業主婦の場合、
賃金センサスから求めた「女性の学歴計・全年齢平均賃金÷365日」の金額と、「実収入の日額」を比べて、どちらか高い方を1日あたりの基礎収入とするのが基本です。もっとも、パート勤務であれば、賃金センサスから求めた日額の方が高くなることが多いでしょう。
なお、令和元年の賃金センサスのデータは、以下のページで確認できます。
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003084009
会社役員
会社役員の場合、1日あたりの基礎収入は、「役員報酬のうち労務提供の対価分」となります。つまり、利益配当ではなく実際に働いて得た金額ということです。
労務提供の対価分がいくらになるかは、役員(被害者)の地位・給与・業務内容や、会社の規模等を考慮して判断されます。なお、労務提供の対価分が多くなるケースは、「会社の規模が小さく、役員が現場仕事をしていたケース」「役員の専門性が高く、売上げに多大な貢献していたケース」等が挙げられます。
無職(失業中)
無職や失業中の方も、場合によっては休業損害を請求できます。
まず、内定先が決まっていた場合です。その場合、1日あたりの基礎収入は、就職先の給与や賃金センサスをもとにします。
また、就職活動中など、働く意欲があると認められた場合も請求が可能です。このとき、1日あたりの基礎収入は、前職の給与や賃金センサスをもとにすることが多いです。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
休業損害の計算時に用いる稼働日数とは?
稼働日数とは、「実際に労働した日数」のことです。ポイントは、1日あたりの基礎収入の金額にかかわるということです。
1日あたりの基礎収入を計算するとき、事故前3ヶ月の給与を「暦90日」ではなくこの「稼働日数」で割ることがあります。給与所得者が就労しながら一定の頻度で通院を行っている場合に正確に休業損害を計算するためです。稼働日数で割る場合は、実際に休業した日数を掛け合わせて休業損害を計算します。
なお、有給を取得した日は、働いていなくても給与は発生しているため、稼働日数に含むとされています。
また、遅刻・早退した日も、出勤しているため稼働日数に含むのが基本です。
休業日数の算定
休業日数とは、交通事故による怪我の治療のために仕事を休んだ日数です。ただし、怪我の内容や程度・治療期間によっては、相手方保険会社と争いになることがあります。
そこで、適切な休業日数を認めてもらうためのポイントを以下で確認しましょう。
休業日数を証明するためには
休業日数を証明するには、「休業損害証明書」と提出します。基本的に、休業損害証明書の欠勤・有給・遅刻早退日数が休業日数のベースになるためです。
ただし、必ず全日が休業日数として認められるわけではありません。自宅療養をした日や、自営業の方が休業した日は、通院していないため休業損害が否定される可能性があります。その場合、自宅療養や休業が必要だとする「医師の診断書」等を提出する必要があるでしょう。
土日に通院した場合
休業初日より連続して通院した土日・祝日は、休業日数にカウントできることがあります。一方、事故後に出勤してから土日・祝日に通院しても休業日数に含まれないため、会社の理解が得られるのであれば、しっかり通院してから出勤した方が良いでしょう。
しかし、このルールを適用できるのは任意保険基準のみです。弁護士基準では、たとえ休業初日より連続して通院した土日・祝日でも、休業日数にカウントできないため注意しましょう。
有給を使用した場合
有給を使って通院した日は、基本的に休業日数にカウントできます。有給を使えば減収はしませんが、自由に使えるはずだった有給を事故のせいで失うことになるからです。
一方、「代休」を使って通院した場合、そもそも休日に通院したことになり休業日数にはカウントできませんので、ご注意ください。
休業損害の計算例
ここで、実際にいくつかの例で休業損害を計算してみましょう。業種や収入別に解説しますので、参考になさってください。
給与所得者
【例1:事故前3ヶ月の給与合計120万円、休業日数30日】
〈自賠責基準〉 休業損害額:日額6,100円×30日=18万3,000円
〈弁護士基準〉 1日あたりの基礎収入額:120万円÷90日※1=1万3,333円 休業損害額:1万3,333円×30日=39万9,990円
【例2:給与にバラつきがある場合(事故1ヶ月前=25万円、事故2ヶ月前=20万円、事故3ヶ月前=23万5,000円、休業日数45日】
〈自賠責基準〉
休業損害額:日額6,100円×45日=27万4,500円
〈弁護士基準〉
1日あたりの基礎収入額:(25万円+20万円+23万5,000円)※2÷90日※1=7,611円
休業損害額:7,611円×45日=34万2,495円
※1:就労しながら一定の頻度で通院する場合は暦90日ではなく、稼働日数を用い、実際に休業した日数を乗じて計算する場合があります。
※2:給与の変動が大きいと判断された場合、事故前6ヶ月または1年の給与を平均する場合があります。
自営業者の休業損害の計算例
【例1:前年度所得(固定費込み)※1415万円、休業日数50日】
〈自賠責基準〉
休業損害額:日額6,100円×50日=30万5,000円
〈弁護士基準〉
1日あたりの基礎収入額:415万円÷365日=1万1,369円
休業損害額:1万1,369円×50日=56万8,450円
【例2:前年度所得(固定費込み)※11,500万円、休業日数90日ただし、節税のため所得を1,000万円で確定申告していた場合】
〈自賠責基準〉
休業損害額:日額6,100円×90日=54万9,000円
〈弁護士基準〉
1日あたりの基礎収入額:1,000万円※2÷365日=2万7,397円
休業損害額:2万7,397円×90日=246万5,730円
※1:固定費は、事業を維持・存続するために必要なものであれば請求できます。
※2:過少に確定申告していても、帳簿・領収書・預金通帳等によって実収入を証明できれば、実収入(1,500万円)にもとづいて請求できる可能性がありますが、保険会社側が交渉に応じるケースは少なく、裁判所も実収入の認定にあたってはかなり厳しい取扱をします。
主婦の休業損害の計算例
【例1:兼業主婦、パート収入月8万円、週4日勤務、通院日数50日】
〈自賠責基準〉
休業損害額:日額6,100円×50日=30万5,000円
〈弁護士基準〉
1日あたりの基礎収入額:①賃金センサス:388万100円※÷365日=1万630円
②パート収入:(8万円×12ヶ月)÷365日=2,630円
①>②のため、①が基礎収入となります。
休業損害額:1万630円×50日=53万1,500円
【例2:専業主婦、通院日数60日】
〈自賠責基準〉
休業損害額:日額6,100円×60日=36万6,000円
〈弁護士基準〉
1日あたりの基礎収入額:388万100円※÷365日=1万630円
休業損害額:1万630円×60日=63万7,800円
※令和元年の賃金センサスにおける「女性の学歴計・全年齢平均賃金」をもとにしています。
アルバイトの休業損害の計算例
【例:事故前3ヶ月のアルバイト収入合計36万円、休業日数20日】
〈自賠責基準〉
休業損害額:日額6,100円×20日=12万2,000円
〈弁護士基準〉
1日あたりの基礎収入額:36万円÷90日※=4,000円
休業損害額:4,000円×20日=8万円
※就労しながら一定の頻度で通院する場合は暦90日ではなく、稼働日数を用い、実際に休業した日数を乗じて計算する場合があります。
休業損害の計算についてわからないことがあれば弁護士にご相談ください
交通事故後の生活をきちんと送るためにも、休業損害をしっかり請求する必要があります。しかし、相手方保険会社は最低限の金額しか提示してこないことがほとんどですので、安易に応じるのは危険です。
弁護士であれば、弁護士基準でより高額な休業損害を請求することができます。また、休業日数で争いになったときも、弁護士は豊富な知識と経験を活かして効果的な主張ができますので、被害者個人で交渉するよりも適切な補償を受けられるでしょう。
「休業損害はいくらもらえるのか」「相手方保険会社の提示額は妥当なのか」といったご不安がある方は、ぜひお気軽に弁護士法人ALG&Associatesへご相談ください。
交通事故に遭い人目につく部位に大きな傷跡が残ってしまったら、身体だけではなく心も深く傷ついてしまうことでしょう。また、人前に出る職業や外見が重視される職業の方の場合、仕事にも影響が出てしまいます。
こうした問題をお金で解決することはできませんが、だからといって適正な賠償を受けられなくて良いというわけではありません。適切な後遺障害等級の認定を受け、後遺症に見合った損害賠償金を受け取りましょう。
そこで今回は、後遺障害のひとつである「外貌醜状」について、特に後遺障害等級認定を受けるための条件を中心に解説していきます。
外貌醜状とは
外貌醜状とは、衣服で隠れない手足以外の部位に、人目につく傷痕が残ってしまった場合に認定される後遺障害です。
衣服で隠れない手足以外の部位というのは、顔・頭・首など、普段の生活や仕事をするうえで人目に触れる部位です。「外貌」と呼ばれることもあります。
そして、人目につく傷痕とは、一定以上の大きさや見た目のあざ、切傷の痕、手術痕、欠損、ケロイド、皮膚の変色などです。
では、具体的にどのような傷痕が外貌醜状として認められるのでしょうか?
以下、みていきましょう。
後遺障害等級認定を受けられる?
顔・頭・首などに残った傷痕がある程度人目につくものであれば、外貌醜状として後遺障害等級認定が受けられます。
しかし、傷痕の大きさ・長さの測り方や、人目につくといえるかどうかは主観に左右されてしまうので、「ここに、この程度の傷が残れば外貌醜状として認められる」と言い切るのは難しいところがあります。
とはいえ、外貌醜状として後遺障害が認められる一定の条件は設けられています。
外貌醜状の後遺障害等級が認められる条件
等級 | 障害の部位 | 傷跡の詳細 |
---|---|---|
7級12号 | 頭(頭部) | 頭部に残った手のひら大以上の瘢痕または頭蓋骨の手のひら大以上の欠損 |
顔(顔面部) | 顔面部に残った鶏卵大面以上の瘢痕または10円硬貨大以上の組織陥没 | |
首(頚部) | 頚部に残った手のひら大以上の瘢痕 | |
9級16号 | 顔(顔面部) | 顔面部に残った長さ5cm以上の線状痕 |
12級14号 | 頭(頭部) | 頭部に残った鶏卵大以上の瘢痕または頭蓋骨の鶏卵大以上の欠損 |
顔(顔面部) | 顔面部に残った10円硬貨以上の瘢痕または長さ3cm以上の線状痕 | |
首(頚部) | 頚部に残った鶏卵大以上の瘢痕 | |
14級4号 | 腕(上肢) | 上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの |
14級5号 | 足(下肢) | 下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの |
隠れる部分は醜状として認められない
外貌醜状は、「人目につく程度以上のもの」であることが後遺障害として認められる要件のひとつとされています。そのため、眉毛や髪の毛等で隠れる部分に残った傷痕や、メイクでごまかせる程度の傷痕は、外貌醜状として後遺障害等級の認定を受けられない可能性が高いです。
手のひら大は被害者の手が判断基準
外貌醜状は、「人目につく部分に残った傷痕が手のひら大以上かどうか」が認定基準のひとつとなります。
手のひら大とは、指の部分を除いた、被害者の手のひらの面積を意味しています。つまり、被害者の年齢や体格によって、後遺障害等級の基準を満たす傷痕の大きさが変わることになります。
なお、手のひら大以上かどうかはあくまで傷痕の面積で判断するので、傷痕の長さが手のひらより長い場合でも後遺障害等級は認定されません。
また、複数の傷痕が残っている場合は、すべての傷痕の大きさを合計した面積が手のひら大以上かどうかを確認します。
鶏卵大の大きさはどれくらい?
鶏卵大とは、鶏の卵の大きさを指します。一般的に、傷痕の面積の合計が直径5.4センチメートル(長さは6センチメートル程度、幅は4センチメートル程度)を上回る場合に、鶏卵大以上の傷痕があると判断されます。
線状痕とは
線状痕とは、切り傷の痕や手術の縫合痕など、線状に残った傷痕をいいます。一般的に、傷痕の長さが一定以上かどうかという基準で後遺障害にあたるかどうかを判断します。
なお、近い位置に複数の線状痕が残っている場合には、面積や長さ等を合計して後遺障害等級の基準を満たすかどうか確認することになります。
欠損とは
欠損とは、身体の一部が欠けてしまっている状態のことです。
外貌醜状では、頭蓋骨の一部が失われており、その大きさが手のひら大以上の場合に、後遺障害等級が認定されます。
また、鼻の骨や耳が失われた場合には、欠損障害・機能障害として等級認定されるのが通常ですが、外貌醜状として認定される等級の方が重いときは外貌醜状の後遺障害等級が認定されます。
組織陥没とは
組織陥没とは、身体の一部がくぼんでしまっている状態をいいます。
外貌醜状の場合には、顔に10円硬貨の大きさ以上のくぼみが残ってしまったときに、後遺障害として認められます。
瘢痕とは
瘢痕とは、いわゆる傷痕のことです。あざや火傷の痕(ケロイド)といった傷痕も含まれます。
後遺障害として認められる瘢痕は、手のひらや鶏の卵、10円硬貨の大きさと比較して判断されます。
なお、近い位置に2つ以上の瘢痕が残っているケースでは、それぞれの面積を合計した大きさが基準の面積を上回るかどうかを確認します。
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等級認定には後遺障害診断書が必須です
後遺障害等級認定を申請する際には、必ず後遺障害診断書を提出しなければなりません。
後遺障害診断書とは、医師が作成する、後遺症の内容について詳しく記載した書面です。外貌醜状の場合には、主に傷痕の長さ・大きさ・状態などを記載します。
後遺障害診断書は、書面審査だけでなく、次項で説明する審査面接でも参考にされます。症状に見合った等級認定を受けるためにとても重要な書類なので、医師に作成してもらったら、誤りや不足する情報がないことをしっかり確認しましょう。
自賠責損害調査事務所の審査面接について
後遺障害等級認定は書面審査のみで行うのが基本ですが、外貌醜状に関しては、対面の面接で傷痕の大きさの計測、形状・色・状態の確認などが行われます。そのため、等級認定を申請した被害者は、後遺障害等級認定の審査を行う自賠責損害調査事務所に出向き、審査担当者の面接を受ける必要があります。
審査面接では、申請時に提出した後遺障害診断書や傷痕の画像、カルテの写しといった資料を参考に、本当に後遺障害にあたるのかが確認されます。しかし、傷痕の測り方や人目につくといえるかどうかといった判断には、どうしても審査担当者の主観が入ってしまいます。
審査担当者によっては不利な状況に陥ってしまうことがあるので、審査面接を受けるときは弁護士に同行してもらうことをおすすめします。
外貌醜状は逸失利益が問題となることが多い
外貌醜状は、基本的に運動能力などの身体機能そのものには影響しないため、逸失利益の有無が争われがちです。逸失利益とは、後遺障害の影響で減ってしまった収入・利益のことです。
この点、モデル・俳優といった人前に出る仕事やホステス等の接客業に就いている人は、外見が仕事に大きく影響するので、逸失利益が認められる可能性が高いでしょう。
一方、外見が仕事に直接影響する職業でない場合、保険会社は逸失利益を認めなかったり、認めても通常よりも少ない金額しか支払わなかったりすることがあります。
しかし、逸失利益の有無や金額は、被害者の職業だけでなく、傷痕の程度・残った部位、被害者の年齢などの様々な事情を考慮して判断されるべきです。適正な賠償を受けたいのであれば、保険会社の主張を鵜呑みにせず、資料や証拠をしっかりと準備して交渉に臨みましょう。
傷跡が残ってしまったら弁護士にご相談ください
外貌醜状が認められるか、認められた場合にどのような賠償をどれくらい受けられるのかは、判断する人の主観に大きく影響されます。さらに、医学的・法的な知識も必要なので、被害者の方おひとりでどういった賠償を受けられるのかを知ることは困難でしょう。顔や頭部などの目立つ部分に傷痕が残ってしまいお困りの方は、一度弁護士にご相談ください。
「どんな重さの後遺障害が認定され」、「どれだけの逸失利益が認められるか」は、弁護士の考えや裁量にも大きく左右されます。そのため、交通事故問題に強く、医学的知識を備えていることはもちろん「信頼できる」弁護士を選ぶことが大切です。弁護士との相性をご確認いただくためにも、まずは専任のスタッフに事情をお聞かせください。問題が解決できるまで、お心に寄り添った対応をさせていただきます。
遺留分とは
遺留分とは、簡単に言ってしまえば、一定の立場の相続人に保障される遺産の取得分のことです。
本来、遺産を誰にどの程度渡すかは亡くなった方(被相続人)の自由ですので、仲の良かった友人に渡すこともできますし、愛人にも渡すこともできます。
その一方で、遺産の処分を自由に認めると、被相続人の収入に頼って生活していた家族が困ることもあります。
そのため、被相続人の配偶者や子どもなどに遺留分を認め、遺産の一部が渡るように法律上、定められています。
遺留分の請求が認められている人
遺留分は、被相続人の財産をあてにして生活していた立場の相続人のための制度です。
そのため、被相続人の配偶者や子ども、子どもがいない場合には被相続人の父母に遺留分が認められます。
遺留分の請求が認められていない人
被相続人の財産をあてにして生活をしているとしても、遺留分が認められない場合があります。
兄弟・姉妹
法律上、被相続人の兄弟姉妹には遺留分が認められません。
これは、一般的に被相続人の兄弟や姉妹が、被相続人とは別に生計を立てていることが多く、遺留分を認めずとも生活が困窮するとは考えにくいからであるとされています。
相続放棄した人
相続放棄は、プラス・マイナスを問わず、被相続人の遺産の一切を放棄する行為です。
そのため、一度相続放棄をした者は、それ以降、初めから「相続人」ではなかった者として扱われます。
そして、初めに申し上げたように、遺留分は、一定の立場の相続人に保障されるものです。
「相続人」ではない以上、遺留分は保障されません。
相続欠格者にあたる人
被相続人を騙したり、脅したりして遺言を作成させた者や、故意に被相続人を殺して刑罰を受けた者を含め、相続権を当然に失う場合があります。
そのように、法定の事由があるため当然に相続権を失う者のことを相続欠格者といいます。
相続欠格者に当たった人は、相続権を失う以上、遺留分を受け取ることも認められません。
もっとも、遺留分が認められる相続人の子どもに相続権がある場合、代襲相続によってその者に遺留分が認められます。
相続廃除された人
相続人の廃除とは、相続人となりそうな者(推定相続人)から虐待や侮辱を受けたり、著しい非行があったりする場合に、被相続人の意思で相続資格を失わせる手続のことです。
廃除の結果、その者は相続人ではなくなるので、遺留分が認められることはありません。
もっとも、相続欠格者の場合と同様に、代襲相続が発生した場合、代襲相続人に遺留分が認められます。
遺留分を放棄した人
遺留分の放棄とは、相続を放棄する場合と異なり、遺産を受け取る権利をすべて失うのではなく、遺留分のみを放棄することをいいます。
遺留分を放棄した場合、その者は遺留分に基づく権利行使をすることができなくなりますが、遺産の分割に参加したりすることは可能です。
もっとも、遺留分を被相続人が亡くなる前に放棄したい場合、家庭裁判所の許可が必要とされています。
このような許可が必要とされるのは、遺留分制度を潜脱するために、被相続人や他の相続人となる者が遺留分の放棄を強要することを防ぐためです。
遺留分侵害額請求権と代襲相続
上述したように、代襲相続によって、遺留分を取得できる場合があります。
そもそも、代襲相続とは、相続人となるべき者が相続の時点で何かしらの事情で相続ができない場合に起きる相続のことを言います。
相続欠格者や廃除を受けた者の相続人は、代襲相続によって遺留分を取得する場合がありますが、相続放棄をした者の相続人は代襲相続によって遺留分を取得できません。
遺留分の割合
遺留分を取得したものが、その程度遺産を受け取れるかは、その者の遺留分割合によって決まります。
例えば、被相続人に配偶者がいて、子どもが二人いた場合を例に考えてみましょう。
まず、被相続人の遺産のうち、1/2が相続人全員の遺留分となります。
そして、その上で、その1/2にあたる遺産の1/4が配偶者によって取得される遺留分割合となります。
さらに、残った子どもたち2人それぞれが取得できる遺留分を求めるには、配偶者が取得した遺留分を除いた1/4を人数で割る必要があります。
すると、子どもたちは、それぞれ、1/8ずつの遺産について遺留分を持っていることになります。
相続人 | 全員の遺留分の合計割合 | 配偶者 | 子供 | 父母 | 兄弟 |
---|---|---|---|---|---|
配偶者のみ | 1/2 | 1/2 | × | × | × |
配偶者と子供 | 1/2 | 1/4 | 1/4÷人数 | × | × |
配偶者と父母 | 1/2 | 2/6 | × | 1/6÷人数 | × |
配偶者と兄弟 | 1/2 | 1/2 | × | × | × |
子供のみ | 1/2 | × | 1/2÷人数 | × | × |
父母のみ | 1/3 | × | × | 1/3÷人数 | × |
兄弟のみ | × | × | × | × | × |
遺留分の計算方法
実際に遺留分額を計算する場合、非常に複雑な計算が求められます。
例えば、上述の例で、以下のような事情があったとしましょう。
- 被相続人のプラスの財産は預貯金200万円のみ
- 被相続人の借金が60万円あった
- 被相続人が配偶者に生前贈与として20万渡していた
この場合、まず、基礎財産を求める必要があります。
これは、「基礎財産=積極財産+贈与財産(特別受益)の価額―消極財産」によって求められますので、
基礎財産=200万円+20万円-60万円=160万円となります。
また、各相続人の遺留分額は、「遺留分額=基礎財産×個別的遺留分」で求められます。
すると、配偶者と
配偶者の遺留分額=160万円×1/4=40万円
子ども一人の遺留分額=160万円×1/8=20万円
となります。
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遺留分を貰うには、遺留分侵害額請求を行う
相続の結果、遺留分が侵害されている場合、遺留分侵害請求を行うことにより、自身の遺留分を渡すよう求めることができます。
ただ、遺留分侵害請求権は、相続開始および減殺すべき遺贈等があったことを知ったときから1年間しか行使しないと、時効によって消滅する性質をもった権利です。
そのため、被相続人の財産が相続人でない者の下に渡っていると気づいた段階で早期に専門家に相談することが重要となります。
遺留分を渡したくない場合にできること
相続人の遺留分を侵害してしまった場合、その相続人が遺留分侵害請求を行わない場合には、遺留分を渡す必要はありません。
もっとも、もし遺留分侵害請求をされた場合には、その相続人の主張する遺留分額を精査する必要があります。
よく見てみると、遺留分侵害請求を行っている相続人が、被相続人の財産を生前受け取っている場合があり、渡す金額を減らしたり、0にしたりできることがあります。
他にも、相続人が相続財産にある不動産等の財産の価値を高く見積もっていることもあり、その場合には鑑定書等の資料をもって不動産の適切な価値を算出することにより、支払う額を小さくできる可能性があります。
遺留分の権利者が亡くなった場合はどうなる?
遺留分の権利者が亡くなった場合、その者の相続人が遺留分権利者の地位を受け継いで遺留分侵害請求を行うことができます。
ただ、亡くなった権利者の相続人が複数人いる場合、相続の方法によって各相続人が取得する遺留分の割合が変動し、ひいては行使できる遺留分侵害請求の金額も変動することがあります。
遺留分に関するお悩みは弁護士にご相談ください
遺留分は非常に強力な権利である一方で、認知度が高くないためか、相続時に頻出するトラブルの原因です。
実際、遺留分を意識して講じた対策が、実は有効な対策となっておらず、逆に大きなトラブルを招いてしまったケースもあります。
また、遺留分の計算が非常に煩雑であるため、遺留分侵害請求に関する紛争は非常に複雑な主張が展開されることがあります。
そういった場合に、ご自身で対応すると、法的に全く意味のない主張を展開してしまう場合があるのみならず、かえってご自身に有害な主張を行ってしまう場合もあります。
そういった問題を避けるためにも、生前の相続の対策も、そして相続開始後のもめごとも、一度、弁護士にご相談ください。
ご相談の結果、ご自身では気づけなかった解決が見つかるかもしれません。
相続が始まれば、遺産分割協議をして、財産を相続人で分ける必要があります。相続人が一人ならもめることはありませんが、複数いれば、誰がどの財産を相続するかでもめることは必至でしょう。以下では、家族同士でもめやすい最大の場面と言える遺産分割について解説しますので、ぜひ参考になさってください。
遺産分割協議開始前に確認しておくこと
遺産分割前に、確認しておくことがあります。確認すべきことを確認せずに遺産分割協議を進めても、無効になる場合がありますので、確認すべきことは慎重に確認をとってから進めましょう。
相続人全員がそろっていることを確認する
遺産分割協議をする前に、相続人全員が遺産分割協議に参加していることを確認しましょう。相続人の一部を忘れたまま、遺産分割協議をすすめても、遺産分割協議が無効になりますので、相続人全員の参加を、戸籍謄本をとって確認しましょう。
相続する財産を把握できているか確認する
相続財産に何が含まれているかを確認することも必要です。相続財産は、プラスの財産だけでなく、負債などのマイナスの財産も把握しておかないと、後々莫大な借金があったときに取り返しがつかなくなる恐れがあります。また、あとでプラスの財産がたくさん出てくると、遺産分割協議をやり直す必要が出てくるかもしれません。
そこで、何が相続財産に含まれるのか、財産目録を作成して、相続財産を把握してから遺産分割協議を開始することをおすすめします。
遺産分割協議の流れ
まず、戸籍謄本等を取り寄せて、相続人を確定します。
次に、相続財産を調査して、相続財産に何が含まれ、何が含まれないかを明確にします。その際、財産目録を作成すると、その後の話し合いがスムーズに行われます。
そして、相続人全員で、遺産分割の話し合いを行います。
話合いがまとまった場合、遺産分割協議書を作成して、遺産分割を終了します。
以上のような流れで、遺産分割協議は行われていきます。
遺言書がある場合の遺産分割協議
遺言書がある場合、遺産分割協議はどのようになるでしょうか。以下では、遺言書のある場合の遺産分割協議の進行を解説していきます。
遺言書が詳細に書かれており、内容に不満がなかった場合
遺言書が詳細で、どの遺産を誰に分ければいいかが明白になっている場合、不満がなければ、遺言書の通りに分割して終了させてもよいでしょう。
遺言書の内容に不満がある場合
遺言書の内容に不満がある場合、相続人同士で話し合いを行う必要があります。
遺言書の内容は絶対に順守する必要はなく、相続人全員の合意があれば、遺言の内容と異なった遺産分割をすることもできます。
したがって、遺言の有効性を争うと言った場合以外は、基本的に話し合いで、遺言の内容を変更するようにお願いすることになります。
割合のみで具体的な内容が書かれていなかった場合
「妻に遺産の半分、子にはそれぞれ4分の1を渡す」という遺言がされたとき、どの遺産を誰に渡せばいいのかわかりません。そのため、誰が何を相続するのかについて、相続人の間で協議する必要があります。
したがって、遺言の内容に争いがなくとも、このような場合は、別途遺産分割協議をする必要があります。
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遺産分割協議で話し合う内容
遺産分割協議では、遺産分割に関して話し合います。
例えば、前述のように誰が何を相続するのかを決める必要があるため、その点に関して遺産分割協議で詰めていきます。
また、誰に何を相続するのかを決めた後も、相続の方法について、現物をそのまま譲渡するのか、あるいは、売却して現金を相続するのか、又は、現物を共有するのか、現金にして分けるのかなど、分け方についても話し合う必要があります。
話し合いは電話やメールでも構わない
話し合いをすることは必要ですが、話し合いには直接会って話し合う方法だけでなく、電話やメール等を駆使することも可能です。
したがって、密にならないように遠隔地からZOOMなどを使って遺産分割協議をすることも可能です。
話し合いがまとまったら遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議について、相続人全員での話合いがまとまった場合、遺産分割協議書を作成しましょう。遺産分割協議書は、法律上作成が義務付けられているわけではありません。
しかし、いざ遺産分割をしようとしたとき、前言を撤回されたり、やっぱりあれはなしと言われてしまうと困ってしまいます。
そのため、遺産分割協議書を作成して遺産分割後のトラブルを防止しましょう。
遺産分割協議証明書でもOK
遺産分割協議書とは別に、遺産分割協議証明書というものがあります。
これは、遺産分割協議が整ったことと遺産分割協議の内容を証明するものです。
遺産分割協議書との違いは、署名押印する相続人が一人でいいことです。遺産分割協議書では、相続人全員の署名押印がなければ、無効となるので大きな違いと言えるでしょう。もっとも、相続登記など全員分の証明が必要な場合もありますので、その場合は、相続人全員の署名押印が必要になります。また、遺産の内容すべてを記載する必要がある遺産分割協議書とは異なり、遺産分割協議証明書は、署名押印する相続人の相続する財産のみ記載すれば有効になる点が異なります。
遺産分割協議証明書も遺産分割協議書も効力はほぼ同じです。しかし、相続登記などで全員分の署名押印が必要な場合、一人分の遺産分割協議証明書では遺産分割協議書と同じ効力が得られないので、注意が必要です。
遺産分割協議がまとまらなかった場合
遺産分割協議がまとまらない場合、そのまま協議を続けても、埒が明きません。そのため、裁判所などの調停機関に入ってもらい、協議を続けることになります。これを、遺産分割調停と言います。
また、遺言の無効確認など、遺産分割における法的な論点に関しては、裁判によって決着をつけてから、調停をすることもあります。
遺産分割協議で揉めないために、弁護士にご相談ください
遺産分割協議は、遺言の取り扱いなど、極めて法的に繊細な部分を含みます。また、遺産分割協議は、遺言があってももめることが多い場面でもあります。相続人同士によるお話合いで決着をつけることも可能ですが、後々法的に考えると不利な遺産分割協議であると気づいて、もめることも考えられます。そのため、遺産分割協議を専門家である弁護士にご依頼された方がよろしいかと存じます。
面会交流は、離れて暮らす親子の大切な交流の場です。子供の健やかな成長のためにも、離れて暮らす親から愛情を受け取れる機会を確保することは大切です。しかし、子供のことを想うからこそ、面会交流をさせたくないと考える親心もあるでしょう。
このように、面会交流について、父母の意見が対立してまとまらない場合には、「面会交流調停」を申し立てるという選択肢があります。
ここでは、面会交流調停を申し立てることをおすすめするケースや、面会交流調停の概要、手続の流れ、申立ての方法等について解説していきます。
面会交流調停とは
「面会交流調停」は、名前のとおり、面会交流(離婚した、あるいは別居しているため一緒に暮らしていない親子が交流すること)について取り決める調停手続です。そもそも面会交流を実施するかどうか、実施する場合にはいつ、どこで、どのように行うのか、日程変更の連絡はどうやって取り合うのか等、面会交流の細かい条件について、調停委員を介して親同士で話し合って取り決めます。
特に次のようなケースでは、面会交流調停を行うことをおすすめします。
- 別居中、子供と会わせてもらえない
- 離婚後に子供と暮らすことになった親が面会交流を拒否するため、子供と会えない
- 子供が虐待を受けていないか、養育環境に不安がある
- 事情が変わったため、面会交流の条件を変更したい
面会交流調停の流れ
面会交流調停は、以下のような流れで行われます。
①裁判所への申立て
まず、管轄の裁判所(相手方の住所地のある家庭裁判所、またはお互いに合意して決めた家庭裁判所)に申し立てることで、調停が始まります。
②調停期日の指定
申立て後、裁判所が日程を調整して調停を行う日時(調停期日)を指定するので、この期日に裁判所に出向いて話し合いを行います。
③-1 調停の成立
話し合いの結果、父母が合意すれば調停が成立し、合意内容に従って面会交流が実施されます(実施しないことに決まった場合は実施されません)。
③-2 調停の不成立
話し合いがうまくまとまらなかった場合、調停は不成立となって調停は自動的に審判に移行し、裁判所が面会交流に関する判断を下すことになります。
申立てに必要な書類や費用について
面会交流を申し立てるためには、下記の書類が必要です。
- 面会交流調停の申立書 3通
- 事情説明書(申立書に付随しています)1通
- 調停に関する進行照会書(申立書に付随しています)1通
- 連絡先等の届出書 1通
- 未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)1通
また、必要な費用は次のとおりです。
- 収入印紙代:子供1人について1200円
- 郵便切手代:1000円程度(裁判所によって異なります)
申立書の書き方と書式
面会交流調停の申立書の書式は、下記の裁判所のホームページからダウンロードできます。
https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazityoutei/syosiki_01_30/index.html
書式に従って記入すれば良いので、特に書き方に迷うことはないでしょう。
ただし、申立書は相手方にも送られるため、現在の住所等を知られてしまいます。相手方のDVやモラハラから逃げてきたケース等、相手方に知られたくない情報がある場合は、
- 非開示の希望に関する申出書を提出する
- 代理人である弁護士の事務所所在地を記入する
といった方法をとる必要があります。
家庭裁判所調査官の調査
調停では、裁判所が必要だと判断する場合、家庭裁判所調査官(以下、「調査官」)による調査が行われます。
家庭問題や児童問題のエキスパートである調査官は、面会交流を実施することが子供の幸せにつながるかを見極め、子供にとってより良い面会交流の方法を探るために、心理学等の知識を活用して調査を行います。具体的には、父母それぞれの収入や生活リズム等を確認するほか、子供の暮らしている家庭を訪問して、親子のコミュニケーションの様子や関係性、実際の生活環境等をチェックします。
また、家庭訪問の際に、実際に子供とコミュニケーションをとって発達具合や精神状態を確認したり、子供の年齢によっては、直接本人から両親の別居や離婚、面会交流に関する心情等を聞き取ったりします。なお、子供が同居している親の顔色をうかがって本心を隠すことを防ぐため、調査官が子供の面接を行う場に親が立ち会うことは認められないのが基本です。
面会交流調停で決められる内容
面会交流調停では、面会交流が子供の健全な成長を助けるものとなるように、子供の年齢や性別、性格、生活環境、生活リズム、子供本人の希望などを考慮したうえで、下記の内容について取り決めます。
- 面会交流を実施するかどうか
- 面会交流の具体的な方法
実施する日時、頻度、場所、時間、日時変更をする際の連絡方法、子供の送り迎えの方法など
面会交流調停を拒否したり欠席したりするとどうなるのか
面会交流調停を拒否して、調停期日に欠席することはできますが、理由を説明しないまま欠席を続け、裁判所からの連絡も無視していると、調停は不成立となり、審判に移行することになります。
審判では、当事者の主張や調査官の調査結果などを考慮したうえで、裁判所が面会交流の可否や具体的な方法について判断します。そのため、無断欠席を続けると、ご自身の意見がまったく反映されない結果になってしまいます。
また、正当な理由がないにもかかわらず欠席した場合には、5万円以下の過料が科されるリスクもあるので、調停を無断で欠席することはお勧めしません。どうしても欠席するときは、必ず理由を説明するようにしましょう。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
調停不成立の場合と不服申立てについて
調停が不成立になると、基本的に自動で審判に移行し、裁判所による判断が下されます。もしこの判断に不満があれば、“即時抗告”によって上級の裁判所に不服を申し立てることができます。
即時抗告は、審判書が届いた日の翌日から2週間以内に、審判を行った家庭裁判所に申し立てる必要があります。期限を過ぎてしまわないように気をつけましょう。
面会交流調停の取り下げ
面会交流調停は、申し立てた側が取り下げれば、いつでも終了させることができます。このとき、基本的に相手方の同意を得る必要はありません。所定の取下書を提出するか、調停期日に取り下げたい旨を伝えるだけで取り下げられます。ただし、電話で取り下げの連絡をしても取り下げはできません。
また、一度取り下げたからといって、再び調停を申し立てられなくなるわけではありません。
とはいえ、取下げ後、数日もたたないうちに再び申立てをするような場合、裁判所に不当な申立てだと判断されてしまい、受け付けてもらえない可能性があるので慎重に判断しましょう。
面会交流調停(審判)に関するQ&A
離婚調停と面会交流調停を同時に行うことは可能でしょうか?
可能です。同じ当事者間で、同時期に複数の調停が申し立てられている場合、併合(複数の手続をひとつにまとめること)したり、それぞれの調停期日を同じ日時に指定したりして、同時に進められるようにするのが一般的です。
ただし、離婚調停と面会交流調停が別々の裁判所で行われている場合には、どちらの裁判所で手続を進めるのか揉める可能性があります。
また、それぞれが別々の事件であることに変わりはないので、離婚調停だけが先に終了したり、面会交流調停だけが審判に移行したりする等して、同時に手続を行えなくなるケースもあります。
面会交流調停の成立にかかる回数と1回の時間はどのくらいですか?
面会交流調停は、1ヶ月~1ヶ月半に1回ほどの頻度で、1回あたり2時間程度をかけて行われます。調停は平均的に3~5回ほどで終了するので、成立するまでには半年程度かかるのが一般的です。
ただし、両親の対立が激しく、お互いに主張を譲らないような場合には、1年以上かかる場合もかなりあります。
面会交流について取り決めたルールを変更したい場合や守られなかった場合はどうしたらいいですか?
相手方が頑なにルールの変更に応じない、ルールを守らない場合には、面会交流調停を申し立て、第三者の力を借りてあらためて話し合うことをおすすめします。
子供が成長する等して、面会交流のルールを変更したくなった場合には、改めて父母で話し合う必要があります。しかし、離婚後は話し合いの場を持つことが難しくなるケースが多いですし、相手方にとってルールの変更が不利益なケースも少なくないので、なかなか合意に至らない可能性があります。
また、面会交流を実施することを約束したにもかかわらず子供に会わせてもらえない等、取り決めが守られない場合には、履行勧告(取り決めを守るよう、家庭裁判所に促してもらうこと)を申し出たり、間接強制(取り決めた内容を実行するまで一定額を支払うよう裁判所に命じてもらうこと)を申し立てたりといった対応をすることが考えられます。しかし、履行勧告に強制力はありませんし、間接強制をするためには、面会交流について相当に具体的に取り決められている必要があります。
このように、当事者だけでは問題の解決が難しい場合、面会交流調停を申し立てることで、解決の道筋が見える可能性があります。
面会交流調停について悩んだら弁護士に相談してみましょう。
「子供ともっと面会交流したい」「子供にとって悪影響なので面会交流させたくない」など、面会交流をめぐって、両親が対立することは珍しくありません。話し合いに決着がつかない場合には、調停手続を利用することをご検討ください。適切な解決が図れる可能性があります。
ご自身だけで面会交流調停に臨むことに不安や悩みがある方は、弁護士に相談されることをおすすめします。調停は、調停委員や調査官の心証に大きく左右されるので、調停委員等を味方につけられるかが重要なポイントとなります。この点、弁護士のアドバイスを受け、必要な事実を適切なタイミングで主張できるようになれば、調停委員や調査官を味方につけられる可能性が高まるでしょう。
ご相談者様のご希望を最大限叶えられるように尽力いたしますので、面会交流調停をはじめ、離婚問題に関するお悩みがある方は、ぜひ弁護士にご相談ください。
「主婦は収入がないので慰謝料も減額されるのか」とご不安な方もいらっしゃるでしょう。しかし、主婦でも他の方と同じく慰謝料を請求できますし、慰謝料以外にもさまざまな賠償金を受け取ることができます。
しかし、相手方保険会社は、被害者が主婦であることを理由に賠償金の支払いを拒否してきたり、適切な金額より低く見積もってきたりすることがあるため、注意が必要です。
本記事では、交通事故に遭われた主婦の方に向け、受け取れる賠償金の種類や相場等を解説します。示談する前に、ぜひご覧ください。
交通事故の慰謝料は主婦だと金額がかわる?
「主婦だから交通事故の慰謝料が減る」ということは基本的にありません。
そもそも慰謝料とは、交通事故で怪我をした精神的苦痛の補償として支払われるものです。その金額は、主に怪我の程度・治療期間・後遺症の重さによって決まるため、実際の収入に関係なく請求することができます。よって、専業主婦でも兼業主婦でも、同じ金額の慰謝料が支払われるのが基本です。
なお、慰謝料といってもいくつか種類がありますので、以下でご説明します。
主婦が受け取れる慰謝料の種類
主婦は、3つの慰謝料を受け取れる可能性があります。
まず、怪我で入通院したことによる「入通院慰謝料」と、怪我が完治せず後遺障害が残ったことによる「後遺障害慰謝料」です。これらは入通院期間や後遺障害等級の大きさによって金額が決まるため、主婦も他の方と同じ金額の慰謝料を請求できます。
一方、被害者が死亡したことによる「死亡慰謝料」は、主婦であることが金額に影響してきます。というのも、死亡慰謝料は「被害者の家庭での立場」によって相場が決まっているからです。
基本的に、主婦の死亡慰謝料の金額は「一家の支柱」より低く、「子供」より高くなります。
慰謝料以外に主婦が請求できるもの
主婦は、慰謝料以外にも休業損害・逸失利益・治療費・通院交通費・車の修理費等を請求できます。
このうち「休業損害」と「逸失利益」は、主婦という立場が金額に影響してくるため重要です。それぞれの概要や計算方法について、以下で確認しましょう。
主婦手当(休業損害)
休業損害は、交通事故の怪我で仕事を休んだ減収分を補償するものです。主婦に収入はありませんが、家事も本来お金をもらって行うべき「労働」といえるため、休業損害が認められています。
休業損害は、「基礎収入の日額×休業日数」という式で求めます。主婦の場合、この「基礎収入の日額」がポイントです。専業主婦は基礎収入がないため、賃金センサスという統計の「女性の学歴計・全年齢平均賃金」から求めた日額を適用します。また、兼業主婦は、「女性の学歴計・全年齢平均賃金」と「実際の収入」から求めた日額のうち、どちらか高い方を適用します。
なお、「女性の学歴計・全年齢平均賃金」は毎年変わりますが、日額は約1万円前後となるのが一般的です。
また休業日数は、専業主婦・兼業主婦ともに実際の通院日数をあてはめるのが基本です。
家事代行を頼んだ場合
交通事故の怪我で家事ができず、家事代行を頼むこともあるでしょう。その場合、家事代行業者に支払った実費を休業損害として請求できます。ただし、必ず実費全額がもらえるわけではなく、必要かつ妥当な金額のみ認められます。そのため、怪我が軽かったり完治していたりするのに家事代行を頼むと、補償されない可能性があるため注意しましょう。
また、家事代行を頼んだ日は、「ご自身の休業損害」と「家事代行の利用料」のどちらかしか受け取れないことにも注意が必要です。この2つを比べて高い方を請求するのが一般的です。
逸失利益
逸失利益は、交通事故に遭わなければ将来受け取っていたであろう収入や利益のことで、後遺障害が残った場合や被害者が死亡した場合に支払われます。主婦も事故によって家事に支障が出るため、逸失利益が認められます。
逸失利益は、「基礎収入×労働能力喪失率×中間利息控除係数」という式で求めます。
基礎収入は、専業主婦であれば「女性の学歴計・全年齢平均賃金」を、兼業主婦であれば「女性の学歴計・全年齢平均賃金」と「実際の収入」のうち高い方を適用します。
なお、基礎収入以外の項目は後遺障害等級・怪我の程度・年齢等によって決まりますが、争いになりやすいため、適切な金額の検討にあたっては弁護士に相談されることをおすすめします。
主婦の交通事故慰謝料の計算
交通事故の慰謝料は、怪我の程度・治療期間・後遺障害の重さによって決まるため、職業や年齢は基本的に関係ありません。よって、主婦でも会社員でも、慰謝料の計算方法は同じです。
ただし、「どの算定基準を使って計算するか」によって金額が大きく変わることに注意が必要です。そこで、算定基準にはどんなものがあるのか、それぞれどんな違いがあるのかについて、以下でみていきましょう。
慰謝料を請求する前に知っておくべき3つの基準
慰謝料の算定基準は、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準 の3つです。
自賠責基準は、交通事故の被害者を最低限補償すべく定められた基準です。支払い金額に上限があること・増額ができないことが注意点です。
任意保険基準は各保険会社が定めた基準で、自賠責基準に少し上乗せした程度というのがほとんどです。
一方、弁護士基準は、過去の裁判例から作られた基準です。3つの基準で最も高額になるのが通常で、自賠責基準の数倍になることもあります。
ただし、弁護士基準で請求できるのは基本的に弁護士だけです。また弁護士基準で請求すれば、慰謝料だけでなく休業損害や逸失利益の増額も見込めるため、増額交渉は弁護士にお任せください。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
治療より家事・育児を優先させると慰謝料が減額する?
家事や育児に追われる主婦の方は、つい治療を疎かにしてしまうこともあるでしょう。特に「むちうち」のような軽症だと、痛みを我慢して家事や育児をする主婦の方が多いです。
しかし、慰謝料の金額は治療期間や治療日数によって決まるため、通院が不十分だと、怪我に見合った適切な慰謝料が受け取れない可能性があります。
例えば、「むちうち」を負った場合の通院慰謝料の相場をご覧ください。
通院期間 | 自賠責基準※ | 弁護士基準 |
---|---|---|
1ヶ月 | 12.9万円 | 19万円 |
3ヶ月 | 38.7万円 | 53万円 |
6ヶ月 | 77.4万円 | 89万円 |
通院期間が長くなるほど慰謝料が増額することがわかります。
なお、通院期間が少ない(月15日未満)と慰謝料の対象日数が減り、表の金額より減額する可能性があるため、通院期間だけでなく通院頻度もしっかり保つことが重要です。
※毎日通院するなどした場合には過剰な通院との評価がなされ、かえって賠償が認められにくくなる場合があります。
※※新基準の日額4300円を反映しています。令和2年4月1日より前に発生した事故の場合は、旧基準の日額4200円が適用されます。
主婦と交通事故の慰謝料に関する解決事例
ここで、弁護士法人ALG&Associatesが介入し、主婦の慰謝料や休業損害の増額に成功した数ある事例の中から2つだけご紹介します。
兼業主婦が交通事故に遭い、慰謝料の増額に成功した事例
依頼者が車で停車中、先行していた相手方の車が対向車を避けようとバックしてきて追突された交通事故です。依頼者は当時60代後半の女性・兼業主婦で、相手方保険会社と賠償金額について争いとなりました。
弊所の弁護士は、相手方保険会社が提示した慰謝料金額について、依頼者の怪我(腰椎椎体骨損傷)や通院頻度からみて低すぎると判断し、増額交渉をしました。
また、休業損害と逸失利益についても、依頼者の「基礎収入額」を賃金センサスで計算し直したり、休業日数を加算したりして、増額を主張しました。
このように粘り強く交渉した結果、慰謝料で約100万円、休業損害で約130万円の増額が認められ、全体で約238万円もの増額に成功しました。
家事や育児への影響を保険会社に丁寧に伝え、交通事故慰謝料の増額に成功した事例
依頼者が原付自転車で優先道路を走行中、わき道から飛び出してきた相手方の車と衝突した交通事故です。本事故で、依頼者は左尺骨遠位端骨折・左橈骨遠位端骨折を負い半年通院しましたが、その後の治療や示談にご不安があり、弊所に相談されました。
弊所の弁護士は、まず依頼者から自覚症状を丁寧に聞き取ったうえで相手方保険会社と交渉し、治療の延長・後遺障害等級の認定・過失割合の修正等に成功しました。
また、示談の段階では、主婦の休業損害や逸失利益、慰謝料が増額できると判断し、交渉を重ねました。その結果、休業損害・逸失利益・慰謝料それぞれで数十万円の増額が認められ、賠償金額は当初の約140万円から約260万円まで増額することに成功しました。
主婦でも交通事故の慰謝料を請求することができます。お困りのことがあれば弁護士にご相談ください
主婦の方も、交通事故で大きな苦痛を負うことに変わりありません。また、怪我で家事に支障があればご家族にも影響が出るため、しっかり補償を受けるべきです。しかし、相手方保険会社は強気に出てくることが多く、個人で交渉しても難しいのが現状です。
弁護士であれば、主婦の休業損害や逸失利益を法的根拠に基づいて請求できるため、適切な賠償金を取り逃す心配がありません。また、弁護士基準で請求するため大幅な増額が期待できる場合もあります。
さらに、保険会社との煩わしいやり取りもすべて弁護士が行いますので、家事や通院に専念することができるのもメリットです。
交通事故に遭われた主婦の方は、ストレスを減らし適切な賠償金をもらうためにも、お気軽に弊所にご相談ください。
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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)