交通事故における示談の注意点

交通事故における示談の注意点

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

交通事故で被害がでたら、賠償を受けるために示談交渉(話し合い)を行うことになります。示談交渉は、加害者が加入している保険会社の担当者と行うのが一般的です。
しかし、保険会社の担当者は示談交渉のプロです。十分な知識がない状態で交渉に臨むと、保険会社にとって都合のいいように進められてしまう可能性があります。損することなく納得できる示談を成立させるためには、どのように交渉を進めれば良いのかしっかりと理解しておかなければなりません。
そこで今回は、示談交渉を進めるうえでの注意点を詳しく解説します。

その場で示談は行わない

保険会社から提示された示談案を安易に受け入れ、示談を成立させてしまうことは避けましょう。
一度成立した示談は、基本的に撤回できません。つまり、「請求し忘れ」や損害があることや示談金(損害賠償金)の計算間違いがあることなど、後になって気づいたとしても、示談交渉をやり直すことはほぼできません。示談を成立させるかどうかは、慎重に検討するべきです。

事故状況や加害者の連絡先を控えておく

事故に遭ったら、まずは加害者の連絡先を確認するとともに、現場や車の状態を撮影して動画や写真などに残します。
加害者の連絡先がわからなければ、示談交渉を進めることは困難ですし、事故の責任を逃れる隙を与えかねません。
また、事故状況は過失割合を決める際などに争いになりやすいので、証拠となり得る写真や動画を残しておくことが大切です。

交通事故の処理は人身事故にする

交通事故に遭い、少しでも怪我をしたり痛みがみられたりする場合は、人身事故として届け出るべきです。
物損事故として届け出てしまうと、過失割合の認定などに役立つ実況見分調書(事故状況に関する調査結果をまとめた警察の書類)が作成されません。また、人損(人の生命や身体に関する損害)が発生していないものと扱われるため、慰謝料や治療費を受け取れません。
一方、人身事故では実況見分調書が作成されますし、慰謝料や治療費といった人損に対する賠償金も受け取ることができます。

通院頻度を確認する

適切な示談金を受け取るためには、適切な頻度・期間の通院を心がける必要があります。通院の状況は、慰謝料の金額に大きく影響するからです。
一般的に、通院期間が長引けばその分慰謝料も高額になる傾向にありますが、通院頻度が過剰あるいは少なすぎると、治療の妥当性や必要性を疑われて慰謝料が減額されてしまう可能性があります。

痛みがある場合は医師に必ず伝える

後遺障害慰謝料は、認定された後遺障害等級に応じて金額が決まります。そして、後遺障害等級認定は医師が作成する後遺障害診断書の内容を重視して行われるのが基本です。つまり、後遺障害診断書の内容に誤りがあると、適正な等級認定が受けられない可能性があります。
そこで、正確な後遺障害診断書を作成してもらうためにも、痛みなどがある場合は、必ず医師に自覚症状について具体的に伝えなければなりません。

もし治療費を打ち切られても通院をやめないこと

治療を続けていると、保険会社から治療費の打ち切りを打診されたり、実際に打ち切られてしまったりすることもあります。しかし、そもそも治療費は治療の必要性が認められる間は支払ってもらえるものですし、治療の必要性の有無を判断するのは保険会社ではなく医師です。症状が残っていて、医師も治療の必要性があると判断している間は、たとえ治療費を打ち切られても通院を続けましょう。
健康保険などを利用して通院を続ければ、通院中の経済的な負担を軽減できますし、打ち切り後に立て替えた治療費は示談交渉でまとめて請求でき、回収できる可能性もあります。

領収書などはすべて保管しておく

示談交渉で損害の賠償を請求するためには、損害額、つまり事故による怪我の治療、車の修理、通院、診断書の作成などにいくらかかったのかを証明できなければなりません。そのためにも、領収書やレシートなどはきちんとすべて保管しておきましょう。

症状固定の時期は医師に見極めてもらう

治療費の打ち切りとも重なりますが、保険会社は自社の出費を最小限にするために、治療の途中で「そろそろ症状固定としませんか」と打診してくることがあります。症状固定とは、それ以上治療を続けても症状に悪化・改善といった変化がみられない状態のことです。
しかし、症状固定に至ったのか、それともまだ治療の必要性があるのかは医師が判断するものであって、保険会社が決定できるものではありません。
症状固定の時期について保険会社から提案されたとしても、医師に相談せずに安易に返事をすることは避けましょう。

後遺障害診断書の内容を確認する

後遺障害等級認定の審査では、後遺障害診断書の内容がかなり重視されるので、医師に作成してもらったら、内容に誤りがないか、記載事項に抜け漏れがないかなどをしっかりと確認しましょう。後遺障害診断書が適切に書かれていないと、誤った情報や不足した情報のまま審査されてしまうので、適正な等級が認定されない可能性が高いからです。
特に自覚症状の欄は、医師と認識が食い違っていると正確に記載されないので、注意が必要です。

示談交渉を焦らない・相手任せにしない

基本的に示談交渉が終わらないと示談金はもらえないので、経済的な不安などから示談交渉を早く終わらせたいと焦ってしまう方もいらっしゃるかと思います。
また、やりとりが手間だからと相手任せにしたくなるお気持ちもわかります。
しかし、一度した示談は撤回できないのが基本です。焦って交渉したり、相手任せにしたりして言われるがままに示談を成立させてしまうと、後で損をしたことに気づいても取り返しがつかなくなってしまう場合があるので気をつけましょう。

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過失割合をきちんと決めること

過失割合(事故に対する責任の割合を数値にしたもの)が1割でもあると、その責任の重さに応じて示談金が減額されてしまいます。例えば、2割の過失割合があると判断された場合、本来であればもらえたはずの示談金100万円から20万円が減額され、80万円しかもらえなくなってしまうことになります。
このように、過失割合によって、受け取れる示談金は大きく変わってきます。適正な示談金を獲得するためにも、実態に見合った過失割合を決めることが重要です。

交渉が長引くようなら時効についても気にしておく

交通事故による示談金は、いつまでも請求できるわけではありません。通常、以下のとおりの期間で時効が成立し、損害賠償金(いわゆる示談金)を請求できる権利はなくなります。

  • 物損事故:事故の翌日から3年
  • 人身事故:事故の翌日から5年

時効が成立して権利がなくなった後でも損害賠償金を請求することはできますが、相手が支払ってくれる可能性は限りなく低くなってしまうので、なるべく時効が成立する前に請求しておきましょう。
また、裁判などで損害賠償金を請求すると、時効が成立するまでの期間を延ばすことができます。他にも時効期間を延長できる手続があるので、交渉が長引くことが予想されるようなら、こうした手続の利用を検討すると良いでしょう。

弁護士に依頼する場合は、交通事故に詳しい弁護士へ依頼する

弁護士が取り扱う分野は幅広いので、人によって分野の得意不得意があります。例えば、離婚問題を中心に扱っている弁護士に交通事故の示談交渉を任せても、なかなかスムーズに進まないかもしれません。
交通事故問題についてサポートが欲しいときは、交通事故事案を取り扱った経験が豊富な弁護士にご相談することをおすすめします。また、後遺障害等級認定の申請などをお考えの方は、交通事故だけでなく医療分野にも詳しい弁護士を選ばれると良いでしょう。

示談金の計算は正しくされていますか?

示談金が正しく計算されているか、本来もらえるはずの金額より低く見積もられていないかを確認することも大切です。
示談金を計算する算定基準は3種類ありますが、保険会社は基本的に最も低額になる基準で計算してくるか、またはそれに少し上乗せした金額を提示してくることが多いです。
弁護士に依頼すれば、最も高額になる基準で計算した金額での主張をしますので、示談金を増額できる可能性が高まります。そのためにも、提示された金額をしっかりとチェックすることが重要です。

示談書は正しく書けていますか?

示談書には、示談内容(示談金の額、内訳、支払方法、期限など)をすべてまとめます。そのため、万が一示談書の内容の誤りに気づかずに示談を成立させてしまうと、損してしまう可能性があります。
そこで、示談書に署名・押印して加害者側に返送する前に、請求項目や条件といった示談書の内容に誤りや漏れがないことを十分に確認しましょう。

示談条件が不利になっていないか確認する

示談書の内容を確認する際には、特に示談条件が不利なものになっていないかを確認しましょう。
例えば、示談条件に「示談書に記載のない損害の賠償は一切請求しない」といった文言がある場合、示談後に請求漏れに気づいたとしても新たに請求することはできません。
逆に、「示談後に後遺症が発覚した場合には改めて請求できる」といった先を見越した文言を入れておくなど、ご自身に有利な内容になるように示談書の内容をよく検討することが大切です。

公正証書だとなお良い

相手方が保険会社でなく一個人といった場合には、示談書は「公正証書」で作成すると良いでしょう。
公正証書とは、公証役場で公証人によって作成される公文書です。示談書を公正証書で作成すると、示談内容について明確な証拠を残すことができます。また、加害者に後から改ざんされる心配もありませんし、裁判でも有力な証拠として扱われます。
示談書を公正証書にする一番のメリットは、強制執行認諾文言(支払いが滞った場合に強制執行されることを認める文言)を入れておけば、加害者が支払わなかったときにすぐに財産を差し押さえて回収できることです。
少し手間と費用がかかるというデメリットはありますが、メリットの方が大きいでしょう。

すべての注意点に気をつけて示談を成立させるのは難しい

ここまで示談交渉の注意点について説明してきましたが、いざご自身でこれらのポイントに気をつけながら交渉を進めようとしても、仕事をしながら片手間に交渉することは実際には難しいのではないでしょうか。ご自身がどれだけ気をつけて交渉に臨んでも、相手が示談交渉のプロである場合には限界があります。
そこで、交通事故や示談交渉に精通した弁護士の手を借りることをぜひご検討ください。

納得のいく示談成立を目指すなら、弁護士へご相談ください

被害者の方だけで交通事故の示談交渉を進める場合、どうしても交渉に慣れている保険会社の方が優位になりがちです。しかし、適正な示談金を獲得するためには、対等以上にやりとりができなければなりません。
この点、法律の専門家で交渉のプロでもある弁護士が介入すれば、保険会社も強気な態度をとりにくくなるので、対等以上の交渉が期待できます。また、最も高額になる算定基準で計算した示談金を主張したり、適切な過失割合を調べて主張したりすることもできるので、示談金を増額できる可能性があります。さらに、示談交渉を代理してもらえば、保険会社などとのやりとりで生じるストレスを大幅に減らすことができます。
納得できる示談を目指したい方は、ぜひ弁護士にご相談ください。

交通事故の損害賠償金を減額する要素としては、過失割合が有名ですが、それ以外にも「素因減額」というものがあります。
「素因減額」とは一体どのようなもので、どういった事情がある場合に行われるのでしょうか?
このような疑問にお答えするために、今回は「素因減額」について詳しく解説します。

素因減額とは

素因減額とは、交通事故に遭う前から被害者が持っていた素因が影響して、損害が発生・拡大した場合に、素因による影響の大きさに見合う金額を損害賠償金から差し引くことをいいます。
素因とは、簡単にいうと、事故前から被害者にあった既往症や身体的な特徴・体質、心因的な要因などです。
大まかに「心因的要因」と「身体的要因」の2種類に分けられるので、次項以下で詳しくみていきます。

心因的要因について

心因的要因とは、性格、ストレス耐性、うつ病やPTSDなどの精神疾患といった、被害者の心理的・精神的な問題点をいいます。
誰でも、交通事故に遭ったことをきっかけに後ろ向きな心理的反応が現れる可能性があります。しかし、後ろ向きな反応が一般的に予想される範疇を超えており、そのために損害が発生・拡大したといえるときは、心因的要因を根拠として素因減額が行われる可能性があります。

例えば、事故により頭や腰を挫傷した被害者が、事故後に不眠症や失声症などを発症して自殺してしまった事案では、心因的要因を根拠に損害賠償金の7割が減額されました。

なお、性格やストレス耐性などは人によってかなり異なりますので、一般的に予想される心理的反応の幅も広いです。そのため、少し神経質な性格だからといって簡単に素因減額が認められることはないでしょう。

身体的要因について

身体的要因とは、既往症や体質的な疾患をいいます。ただし、事故前から持っていた持病がすべて素因となり減額されてしまうわけではありません。
例えば、事故前から椎間板ヘルニアの持病があったケースでも、年齢相応の症状に留まるような場合には身体的要因とは認められない可能性が高いでしょう。椎間板ヘルニアなどは、加齢によって発症・悪化していくことが多いからです。

また、少し平均的な体格・体質から外れた身体的特徴があっても、疾患といえない程度であれば素因減額すべきでないと考えられています。
例えば、平均より少し首が長く頚椎が不安定な人や、平均よりも肥満気味な人は、事故によって怪我を負いやすいかもしれませんが、疾患といえるほど平均から外れた特徴でない限り、身体的要因とは認められないでしょう。

保険会社から素因減額が主張されやすいケース

例えば、「うつ病やヘルニアなどの既往症がある場合」「事故の規模に見合わない、長期間の治療を続けている場合」「被害者が高齢で加齢による影響がみられる場合」などには、加害者や保険会社から素因減額を主張されるケースが多くなる傾向にあります。
しかし、主張のすべてを受け入れる必要はありません。特に高齢の方の場合、年齢相応の老化現象を根拠に素因減額を主張されることも多いので、しっかりと検査を受けて医学的根拠に基づいた反論ができるようにしましょう。

素因減額の立証について

立証するのは誰?

被害者に素因があり、素因減額できるという事実は、素因減額を主張する加害者や加害者側の保険会社が立証しなければなりません
なぜなら、素因減額をすることでメリットが得られるのは加害者側だからです。基本的に、証明することで利益を受ける側が立証責任を負うものとされています。

立証する内容は?

素因減額の主張が認められるには、

  • 被害者の素因が、単なる特徴や特性ではなく「疾患」といえること
  • 「交通事故」と「素因」が相まって損害が発生・拡大したこと
  • 素因減額をしなければ公平に反すること

を立証する必要があります。
さらに、素因減額の割合を決める際に検討すべき事情なども併せて主張します。

これに対して、被害者側は、こうした主張の信頼性を揺るがす事情を主張して争っていくことになります。

損害賠償請求時の素因減額を争う場合の判断基準

素因減額を含む損害賠償金について話し合いで合意できない場合には、調停や裁判といった、裁判手続を利用して解決を図ることになります。その際、裁判所は次のような事情を考慮して、素因減額の可否や減額の割合を決定します。

〇交通事故の態様・程度、事故による車両の損害状況
事故の規模が大きく、車両の損害がひどいほど、交通事故によって大きな衝撃や損害を受けたと判断されやすいです。

〇既往症の有無・内容・程度
特に事故による怪我への影響が大きいと考えられる既往症であれば、損害の発生・拡大に寄与したと判断され、素因減額の割合が大きくなる傾向にあります。

〇交通事故の態様と事故による怪我の治療にかかった期間が見合うか
事故による怪我の治療にかかる平均的な期間を超えるほど、素因が影響していると考えられる場合が多いです。

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素因減額と過失相殺の順序

素因減額と過失相殺の両方が適用される事案では、素因減額の後に過失相殺をするのが一般的です
しかし、素因が原因で事故の規模に見合わず治療が長引いたものの、後遺障害には影響していない場合には、「傷害部分の損害」だけが素因減額の対象となります。また、逆に素因が後遺障害にのみ影響した場合には、「後遺障害部分の傷害」だけを素因減額すべきことになりますが、こうした場合には例外的な対応がとられます。

素因減額と過失相殺の計算式

素因減額と過失相殺の両方が適用される場合には、以下のような計算を行い、最終的な損害賠償金を算出します。

例:損害額200万円、素因減額3割、過失割合2割
まずは素因減額から行います。損害額(=損害賠償金額)から素因の影響に相当する金額を差し引くために、次の計算をします。
「200万円×(10割-3割)=140万円

そして、素因減額後の金額から過失割合に相当する金額を差し引きます。
「140万円×(10割-2割)=112万円

したがって、例のケースでもらえる最終的な損害賠償金は112万円ということなります。

素因減額についての裁判例

ここで、実際に素因減額について争われた裁判例をみてみましょう。

【素因減額が認められた裁判例】
大阪地方裁判所 令和2年2月28日判決

自転車に乗っていた原告が信号待ちをしていたところ、他の車両と衝突事故を起こして滑ってきた被告の二輪車に跳ね飛ばされ、打撲の診断を受けた事案です。
事故による原告の怪我の主な症状は、右足を中心とした打撲や腫れで、長期間の治療の末に痛みや右肩の可動域制限などの後遺障害が残りました。
この点、裁判所は

  • 当初の症状に見合わず治療が長期化していること
  • 事故後の怪我や症状に、原告の既往症である骨挫傷が影響している可能性があること
  • 原告の心因的要因によって症状が長引いている可能性があること

から、3割の素因減額をすべきだと判断しました。

【素因減額が認められなかった裁判例】
東京地方裁判所 令和2年9月23日判決

信号待ちをしていた原告の車に被告の車が追突し、原告がむちうちや挫傷、後縦靭帯骨化症の悪化、右肩腱板断裂といった怪我を負った事案です。
こうした原告の怪我について、被告は、頚部脊柱管狭窄症や事故前からあった右肩腱板断裂が大きく影響していると主張し、素因減額するよう求めました。
しかし、裁判所は、

  • 事故前から本当に右肩腱板が断裂していたかわからないこと
  • 原告が事故前に首の痛みを訴えて通院した事実がないこと
  • 本件事故による車両の損害状況を見る限り、損傷は軽いものではなく、一定期間の治療が必要となり得ること

からすると、原告の脊柱管の狭窄が事故と相まって損害を発生させたとまでは認められないとして、被告の素因減額に関する主張を退けました。

素因減額についてお困りの場合は弁護士にご相談ください

加害者側の保険会社は、自社からの支払いを1円でも少なくするために、被害者に素因になりそうな事情があると強引に素因減額を主張してくることがあります。しかし、素因があれば必ず減額しなければならないわけではありません。しっかりと準備して反論すれば、素因減額を回避できる可能性があるケースも十分にあります。
とはいえ、加害者側の素因減額の主張が妥当か、妥当だとしてどれくらい減額されるべきなのかを判断するためには、医療と法律に関する専門的な知識が必要です。医学論争に発展することも多いので、素因減額について加害者や保険会社と争いたい場合は、法的知識と医学的知識を兼ね備えている弁護士のアドバイスを受けると良いでしょう。
ご相談者様に最善の結果となるよう、これまで培ってきた知識や経験を駆使して尽力しますので、ぜひ弁護士への相談をご検討ください。

相続というものは、奥が深く、いろいろな形の相続があります。そのうち、共同相続というものは、解消していないとトラブルのもとになるなど、厄介な状況を引き起こします。そこで、以下で、共同相続とは何か、そして共同相続となってしまった場合にどのように対処すべきかをご案内します。

共同相続とは

共同相続は、特殊な相続の形態ではありません。単に、複数の相続人が生じる相続の形態を指します。例えば、夫婦と子ども一人の家族で、夫が死亡した場合、妻と子どもで「共同相続」となります。

共有財産とは

共有財産とは、被相続人の財産で、遺産分割の対象になるものです。共同相続人の間で、共有になることから共有財産といいます。
共有ですので、民法の共有に関する規定が適用されます。具体的には共有されている財産は、勝手に処分できなくなるなど、さまざまな制限がかかります。

共同相続人と法定相続人の違い

共同相続人は、被相続人の遺産を共同で相続する者です。これには、相続放棄した者などは含まれません。法定相続人とは、法律で決まっている相続人をいいます。そのため、相続放棄した者であっても、相続分を譲渡した者であっても、法律で相続人となると決められている以上、法定相続人であることは変わりません。
例えば、夫婦と子ども二人の家族で、夫が死亡したときは、妻と子ども二人が法定相続人です。しかし、妻が相続放棄すれば、子ども二人だけで共同相続人になります。

共同相続人ができること

単独でできる行為

共同相続人は、相続財産を共有することになり、他の共同相続人の同意なく処分したりすることはできません。しかし、単独でできる行為もあります。
例えば、持ち分に応じた使用は、共有権限内の行為なので、単独で行えます。また、相続財産の価値を保つための保存行為も、他の共同相続人にとって不利益にはならないので、単独ですることができます。さらに、相続の持ち分に応じた登記もできます。

全員の同意書が必要な行為

遺産を共有しているということは、他の人の権利が混ざった状態ということになります。そのため、被相続人が所有していた不動産をまるごと売却することはできません。売却できるのは共有持分だけです。
また、原形をとどめない形にしてしまう、「変更」は、元の相続財産の価値を失わせる恐れがあるため、することができません。
さらに、勝手に預金の払い戻しを受けることもできません。他の共有者の権利もあるため、いわば他人の預金を引き出しているような状態になるためです。
もっとも、仮払い制度を利用して引き出すことができる場合があります。

共同相続人を辞退する方法

共同相続人を辞退する方法としては、相続放棄があります。これについては、家庭裁判所に必要な書類を提出し、家庭裁判所が相続放棄を認める手続きをして初めて認められます。この手続きをすると、財産も負債も受け継がれなくなります。なぜなら、初めから相続人でなかったことになるからです。しかし、一度してしまうと撤回はできませんので、よく考えた上でする必要があります。

遺産分割協議をしないと共同相続状態が解消できない

では、相続放棄以外で、共同相続状態を解消するにはどうすればいいのでしょうか。ここで、遺産分割協議という手段があります。遺産分割協議をして、遺産分割をすることで、共同相続人との共有状態は解除されます。
もっとも、遺産分割協議をするということは、読んで字のごとく、協議が必要になります。そのため、話合いがまとまらなければ、いつまでも協議することになったり、法的な手段に訴えることになったりします。
お早めに弁護士等の専門家に相談すべきでしょう。

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限定承認したい場合は共同相続人全員の同意が必要

限定承認とは、簡単に言えば、負の遺産の限度で、正の遺産を相続するという相続の方法です。
限定承認は、非常に厳格かつ困難な手続きです。
例えば、共同相続人のうち一人でも単純承認してしまうと、限定承認をすることはできません。
また手続自体、極めて煩雑です。
したがって、よほど限定承認をしなければならない事情がない限り、熟慮期間の延長申請をしつつ、相続財産の調査をして、単純承認か相続放棄をするのが無難でしょう。

共同相続した家に住み続けることはできるのか

共同相続した家は、共同相続人との共有になります。共有は、共有持ち分に応じた使用ができる状態です。ここで、共有持ち分に応じた使用とは、共有している家を、相続人で物理的に分割して使用するということではありません。家のすべてについて、持ち分に応じた利用ができます。そのため、住み続けることも不可能ではありません。しかし、それによって自分の所有になるわけではありません。いつまでも共有となるので、一部については借家のような状態になっています。そのため、早期の遺産分割をする必要があります。

共同相続人が不動産を売ってしまった場合

共同相続人が勝手に不動産を処分した場合、持ち分を超える部分については、無効となりますが、持ち分については有効となります。この場合、どのような手段があるでしょうか。
まず、相続分取戻権というものがあります。これは、取戻権を行使した時価を売却された相手方に支払うことで、不動産を取り戻すことができるものです。
これは、裁判手続きでする必要はありませんが、譲渡の時から1か月以内に行使する必要がありますので、行使する旨の内容証明郵便を早急に相手方に送る必要があります。

共同相続はトラブルになりやすい

共同相続は、必然的に複数の人間がかかわるため、意見が異なれば、当然もめることもあります。また、相続の場面自体大金が絡む可能性が高く、トラブルの度合いはしばしば深刻化します。さらに、共有財産は、先述のように、勝手に処分できないため、その処分方法でもめる可能性もあります。
このように、共同相続はトラブルになりやすいのです。

共同相続は早めに解消を。弁護士にご相談ください。

共同相続がトラブルになりやすい以上、専門家である弁護士等にお早めに依頼したほうが、早期解決につながります。弊所では、相続問題に詳しい弁護士が多数在籍しておりますので、共同相続でお悩みの場合、まずは弊所へご相談ください。

相続が発生した際には、様々な書類が必要となります。財産目録もそのうちの一つです。相続税の申告をするにも、遺産分割協議を行うにも、遺留分侵害額請求をするにも、基本的に財産目録が必要となります。そのため、税務署や裁判所からは財産目録の作成を求められます。ここでは、相続の際必ず必要となる財産目録について解説していきます。

財産目録とは

財産目録とは、被相続人の遺産を一覧にまとめたものです。現金、預金、有価証券、不動産、自動車等に分けて記載することになります。遺産目録においては、単にその存在を記載するだけではなく、その評価額を記載することも多いです。例えば、不動産でも、それを金銭的に評価して記載することがあるということです。また、財産目録では、プラスの財産のみならず、被相続人の負債についても記載することがあります。

財産目録を作成できるのは誰?

財産目録は様々な場面で作成されます。例えば、被相続人が生前に遺言書及び財産目録を作成する場合には、被相続人自身が財産目録を作成するでしょう。遺言の実現のために遺言執行者が選任された場合には、遺言執行者は財産目録を作成することになります。遺産分割協議を行う場合には、相続人が財産目録を作成することになります。作成場面に応じて、作成者は異なります。

財産目録を作成するメリット

生前贈与等の相続税対策ができる

相続対策といえば、相続税対策と、遺産分割等に備えた相続の対策があります。相続税対策については、税理士等の専門家に相談をしたうえで行うことをお勧めしますが、財産目録を作っておけば、相続税対策もスムーズに進めることができます。財産目録を作成したうえで税理士等に相談すれば、例えば、生前贈与をした方が相続税対策になる場合がある等、スムーズに案内してもらえるでしょう。

相続税申告の際に便利

実際に相続税の申告をする際は、財産目録を作成します。先に財産目録を作成しておけば、スムーズに相続税の申告を進めることができるでしょう。税理士に依頼するにしても、ある程度財産目録としてまとまっていると、速やかに相続税の申告をしてくれるはずです。また、財産目録を作成しておけば、相続税がいくらかかるかについて、予め試算をすることも可能となります。

遺産分割協議がスムーズになる

遺産分割を行う際、基本的にはどの相続人も、一回の遺産分割で全て解決したいと考えます。そのため、遺産を全て明らかにして、それを財産目録で一覧にしておけば、全ての相続人が安心して遺産分割協議に臨むことができます。何度も遺産分割を行う必要もなくなります。また、財産目録にしておけば、誰が、いくら分の価値を取得したか等もわかりやすくなるため、公平な遺産分割をしやすくなるでしょう。

相続トラブルを防げる

財産目録を作成せずに遺産分割協議等をするような場合は、きちんと遺産について調査されていないことが多いと考えられます。その結果、遺産分割等が終了してから、他にも遺産があることが判明したり、実は借金があるということが判明したりすることがあります。そのような場合、再度遺産分割等を行わなければならなかったり、既に行った遺産分割等とどのように調整を図るか等の複雑な問題が生じてしまったりします。こういった相続トラブルを防ぐためにも、財産目録の作成は有用です。

相続放棄の検討材料にもなる

相続が発生した際、一般的には、単純承認するか、相続放棄をするかを検討することになります。マイナスの財産が多いような場合には、相続放棄する場合も多いと考えられます。プラスの財産の方が多いのか、マイナスの財産の方が多いのか、財産目録を作れば整理しやすくなります。財産目録を作成するのにも資料の収集等で時間を要しますので、早めに作成に取り掛かることをお勧めします。

財産目録の作成方法

財産目録の書き方

財産目録に特定の書式はありません(裁判所等で勧められる書式はあります。)。手書きでもパソコンでも問題ありません。基本的には、財産を預貯金や不動産等の種類ごとに記載して作成します。それぞれ、その財産がきちんと特定できるように、特定の為の情報も記載します。具体的には次のとおりです。

記載する内容

預貯金

預貯金を財産目録に記載する場合、特定できるように、金融機関名、支店名、預金の種別、口座番号、相続発生時の残高等を記載します。相続人であれば、被相続人の口座情報を金融機関に照会をかけることができます。財産目録には、同じ金融機関の口座であっても、一つ一つの口座ごとに分けて記載することになります。残高は、相続発生時と、遺産目録作成時の残高の両方を調べておいた方が良いでしょう。

不動産

不動産がある場合、土地と建物に分けて記載することになります。土地であれば、所在、地番、地目、地積を記載することになります。建物であれば、所在、家屋番号、種類、構造、床面積を記載します。マンション等の場合には表記が若干複雑ですので、専門家等に確認するのがよいでしょう。評価額も記載することになりますが、評価方法には複数あります。

有価証券

投資信託や株式がある場合には、証券会社の名称、株式の銘柄等、種別、数量(口数、株数等)、評価額等を記載することになります。これも、銘柄や商品ごとに分けて記載することになります。他の財産についても、添付資料をつけることになりますが、有価証券の場合には、証券のコピーや取引明細書等を添付することになります。

自動車等の動産

抽象的には、被相続人の所有していた動産も全て遺産ではありますが、財産目録に全ての動産を記載することは不可能ですし、財産的価値がないものがほとんどですので、記載しても意味がありません。財産目録に記載するのは、財産的価値のあると思われる一部の動産のみです。例えば、高価な宝石や自動車等は財産目録に記載することになります。自動車であれば、登録番号や自動車の種別、車名、車台番号等で特定することになります。

借金やローン等の負債

財産目録には、プラスの財産だけではなく、マイナスの財産(負債)も記載します。負債も記載することで、財産全体でプラスかマイナスかを判断することができます。マイナスの財産の典型例は借金ですが、その他にも、病院の治療費の未払分や、税金の未納分等がよくでてきます。負債の欄には、債権者名(支払先・返済先)、種別、残額、借入金額等を記載することになります。

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財産目録はいつまでに作成すればいい?

財産目録の作成には、法律で定められた期限というものは存在しません。相続税の申告をするのであれば、それまでに作成する必要があるでしょうし、相続放棄するかどうかを検討するために財産目録を作成するのであれば、熟慮期間内に作成する必要があるでしょう。いずれにしても、相続財産の全体像は早めに把握しておくに越したことはありません。可能な限り早期に財産目録は作成するべきでしょう。

財産目録が信用できない・不安がある場合

例えば、遺産分割協議の際、相続人の一人が財産目録を作成してきたとします。正確なものなら問題ありませんが、財産の隠匿(現金や既に引き出してしまった預金等)がなされていたり、評価額について、不当な金額で計上されていたりする場合には、その財産目録をそのまま使用することはできません。その場合には、財産調査をしなおしたり、家庭裁判所の遺産分割調停の中できちんと修正したりすること考えられます。

円滑な相続は財産目録の作成が大切です。弁護士へご相談ください

財産目録の作成は、それぞれの手続きに必要となりますし、早期に作成しておくことで、相続問題全体をスムーズに進めていくことができます。もっとも、財産目録の作成のためには、金融機関への照会や、名寄帳の取得、特定情報の正確な記載、評価額の考え方等、必ずしも作成は容易ではありません。財産目録をきちんと作成するためにも、弁護士に一度相談されることをお勧めします。

結婚生活を送っている途中、夫婦が別々に暮らすこと(別居)を選択する場合もあるでしょう。
一口に別居といっても、これからの生活について冷静に考えるために距離を置くケースもあれば、すぐにでも離婚したくて別居に踏み切るケースもあります。しかし、どちらのケースでも、「別居した事実」は、離婚を進めるうえでかなり重要な意味を持ちます。
そこで、別居がもたらす離婚手続上の効果や別居に伴うメリット・デメリット、起こり得る問題への対応策などを詳しく解説していきます。

別居すると離婚しやすくなるのは本当か

別居している期間が長ければ長くなるほど、離婚を請求するうえで有利な事情になりますので、相手の同意がなくても離婚しやすくなります。「相手の同意がなくても」という点が大きいですが、これは、別居期間が長いほど、夫婦としての実態が失われており、夫婦関係が破綻していると判断される傾向にあるためです。
この判断により、法律上の離婚事由である「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)にあたるとして、実際に裁判をしても離婚が認められる可能性が高くなります。
また、不倫やDVといった離婚原因を作った“有責配偶者”からの離婚請求は基本的に認められないのですが、別居期間がそれなりに長いなどの事情がある場合には、有責配偶者から離婚を切り出しても認められることがあります。

どれくらいの別居期間があれば離婚できる?

「何年別居すれば離婚できる」と言い切ることは困難です。夫婦関係が破綻していると客観的に判断されるようになるまでの期間は、夫婦によって違うからです。
別居期間が相当長いといえるかどうかは、基本的に、夫婦の年齢、子供の有無、別居の理由などを考慮して、同居期間と比較しながら判断します。
なお、過去の事案からみて、裁判所は大体3~5年程度の別居を目安に離婚請求を認める傾向にあります。

ただし、これはあくまでも夫婦間にDVや不倫、浪費癖などの問題がない場合の目安です。離婚事由となり得る問題があれば、別居期間が短い、または別居していなくとも離婚が認められる可能性があります。

単身赴任や家庭内別居も別居として認められる?

単身赴任や家庭内別居は、婚姻関係の破綻を示す「別居」としては認められない可能性が高いです

単身赴任は、仕事の都合で別居するものであり、当事者の意思によるものではありません。したがって、婚姻関係の破綻を示す「別居」と認められないのが基本です。
とはいえ、例外的に別居と認められるケースもあります。例えば、単身赴任中に離婚にまつわる話し合いを始めたケースで、別居期間について“離婚の意思を伝えた時点から”数え始めた事案があります。

家庭内別居は、実態はともかく、はたから見る限り夫婦関係はうまくいっているように見えることが多いです。家庭内別居が、婚姻関係の破綻を示す「別居」にあたると主張して離婚を認めさせるためには、次のような事情を、離婚を求める側が、客観的に証明する必要があります。

  • 寝室が別である
  • それぞれの生活空間が違う
  • 家事を各自で行っている
  • 家計を別にしている

正当な理由なしに別居すると、離婚時に不利になる

夫婦には法律上同居義務がありますので、正当な理由なく別居すると、離婚手続を進めるうえで不利になりかねません。
例えば、悪意の遺棄をした有責配偶者だとみなされて、離婚請求が認められなくなったり、慰謝料を請求されてしまったりする可能性があります。

正当な理由とはどんなもの?

別居が認められる正当な理由とは、誰が聞いても共同生活を続けるのは難しいと思うような理由です。
具体的には、配偶者が、

  • 肉体関係を伴う浮気をした
  • 自分や子供にDVをしている
  • 収入があるのに生活費を支払わない
  • 健康なのに働こうとしない
  • 重度のアルコールやギャンブルの依存症である
  • 多額の借金を隠していた
  • ひどい浪費癖がある

といった問題を抱えている場合に、正当な理由があると認められる傾向にあります。

不利にならない別居の方法

では、いざ別居するにあたってどのような点に気をつければ良いのでしょうか?
離婚手続を行ううえで不利にならないようにするためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

相手に別居の同意を得る

別居したい場合、相手に別居を希望する理由を明かしたうえで同意を得ることで、有責配偶者だとみなされるリスクを避けることが望ましいです。
相手の同意なく一方的に別居すると、同居義務に違反したとして、「悪意の遺棄」を行った「有責配偶者」だと判断されてしまう可能性があります。そうなると、離婚請求が認められなくなる、慰謝料を支払う必要が出てくるといった不利益を受けてしまいます。
できれば別居に同意する旨を書面で記してもらうのが望ましいですが、難しければ、メールやSNSなどのメッセージのやり取りでも構いません。争われた際に証拠として提出することもできますので、きちんと保存しておきましょう。

親権を獲得したい場合は子供と一緒に別居することを検討する

裁判で親権者を決める際には、「父母のどちらを親権者にするとより子供の利益になるか」というポイントが重視されます。
この点、それまでの環境を維持することは子供の利益になると考えられているため、いままで子の面倒をよく見ていた(金銭面ではなく物理的な意味で)親の方が、親権者に決まりやすい傾向にあります。そのため、子供を連れて別居する場合には、自分が子供を連れていくことが、本当に子供の利益となるのか慎重に吟味する必要があります。

加えて、相手も子供の親権を望んでいる場合、勝手に子供を連れて別居すると「子供を連れ去った」と判断され、親権者を決めるうえで不利になってしまう可能性もあります。

相手が浮気していた場合は証拠を確保しておく

別居すると生活の場が別々になるので、離婚手続で役に立つ証拠を集めるのが難しくなります。なるべく同居している間に、浮気などの証拠を集めておくことが重要です。 特にスマートフォンやPCでのメッセージのやり取り、GPSの移動履歴などは、同居中でもないと目にする機会すらないでしょう。こうした証拠に偶然出くわした場合は必ず確保するという心構えが必要です。

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別居のメリットとデメリット

別居する場合、メリットが得られる一方でデメリットも受けます。詳しくみてみましょう。

〇メリット
・離婚事由になる
離婚事由となるような事情がなく、相手も離婚に同意していない場合、なかなか離婚できません。しかし、長期間別居することで「婚姻関係が破綻した」と判断されれば離婚事由になるので、離婚が認められる可能性が高まります。

・相手に離婚の意思が固いことを伝えられる
別居すれば、本気で離婚を望んでいることが相手に伝わります。また、離れて暮らすことで「離婚」が現実味を帯びてくるので、相手もまじめに向き合わざるを得なくなります。
相手が話し合いに真面目に応じない、または断固として離婚に応じないような場合には、別居することで離婚に一歩近づくかもしれません。

〇デメリット
・同居義務違反と判断される可能性がある
正当な理由なく一方的に別居すると、夫婦の同居義務に違反したとして、「悪意の遺棄」をした有責配偶者とみなされてしまう可能性があります。

・夫婦関係の修復が難しくなる
お互いに冷静になるために一旦別居したのだとしても、離れて暮らすことで愛情が冷めてしまい、夫婦としてやり直すことが難しくなる可能性もあります。

・証拠集めが難しくなる
離れて暮らす相手の持ち物や行動を把握するのは難しいものです。相手の浮気の事実や隠した財産などを十分に調べる前に別居すると、同居していた時と比べて証拠を集めるのが困難になってしまいます。

別居の際に持ち出すべきもの

別居の際には、次のような貴重品やしばらく生活できるだけの生活用品を持ち出すことは避けられないでしょう。

  • 財布
  • 通帳
  • クレジットカード
  • 運転免許証
  • スマートフォン
  • 充電器
  • 常備薬
  • 当面の衣服
  • 子供が学校で使う教材や道具

また、離婚に備えて、相手の浮気や隠し財産の証拠などの持ち出しも重要です。ただし、通帳やクレジットカードといった相手名義のものを勝手に持ち出すことは避けましょう。トラブルに発展する事態を避けるため、複製や写真におさめるなどして持ち出すことをおすすめします。

別居に伴う手続き

別居するにあたっては、次のような手続が必要になります。

・別居する旨の通知
これから離れて暮らすことを伝えます。

・配偶者の課税証明書の取得
婚姻費用を請求するうえで、所得の有無と金額を証明する「課税証明書」が必要になるので、住民票のある役所に発行請求します。
なお、同居の配偶者でないと代理取得できないので、住民票を異動する前に請求する必要があります。

・婚姻費用の請求
別居中でも夫婦である以上、生活費を分担しなければなりません。配偶者より収入が少なければ婚姻費用を支払ってもらえるので、忘れずに請求しましょう。

・住民票の異動
引っ越してから14日以内に、引っ越し先の役所に住民票の異動を届け出ます。配偶者からDV被害などを受けていて、引っ越し先の住所を知られたくないといった事情があれば、引っ越し先の役所に相談し、閲覧制限をかけてもらうと良いでしょう。

・児童手当の受取人の変更
児童手当は世帯の主たる生計者が受給しています。子供を連れて別居したものの、ご自身が受取人ではない場合には、転居先の役所に受取人の変更を届け出る必要があります。

別居後、荷物を取りに行きたくなった場合

たとえ自宅であっても、別居後、配偶者がひとりで管理している家に勝手に入ってはいけません。また、自分のものか配偶者のものか区別がつきにくい荷物も、勝手に持ち出すべきではありません。別居後にこうした行為をすると、住居侵入罪や窃盗罪に問われてしまう危険があります。
荷物を取りに自宅へ行きたい場合は、荷物の引き取りについて、配偶者ときちんと話し合わなければなりません。直接荷物を取りに行くことを了承してもらえない場合でも、郵送してもらったり、残してきた荷物分の金額を支払ってもらったりすることで、解決を図れる可能性があります。

別居後、生活が苦しくなってしまった場合

たとえ別居中でも、結婚している限り、収入の少ない配偶者は多い方の配偶者に対して生活費(婚姻費用)を請求できます。婚姻費用には、配偶者の生活費だけでなく子供の養育費も含まれています。
別居後、生活が苦しくなってしまったら、あるいは生活が苦しくなることが予想できる場合には、婚姻費用分担請求をすると良いでしょう。

また、生活保護や児童手当、児童扶養手当を受給できる場合もあります。ただし、それぞれ一定の条件を満たさなければならないので、まずは配偶者に対する婚姻費用の分担請求を検討するべきでしょう。

有利な結果と早期解決へ向けて、離婚に詳しい弁護士がアドバイスいたします

相手が離婚に乗り気ではない場合、別居することで良い方向に風向きが変わることがあります。ただし、デメリットを考えずに安易に別居すると、思わぬ不利益を受けてしまいます。
別居をお考えの方は、まずは弁護士に相談し、踏み切るタイミングや事前に準備するべきもの等について、アドバイスを受けることをおすすめします。
離婚したのに相手が応じてくれない、別居に踏み切る勇気が出ないなど、離婚や別居に関してお悩みを抱えている方は、ぜひ離婚問題に精通した弁護士への相談をご検討ください。

夫婦の間で離婚に関連する問題が起こった場合、慰謝料を請求できることがあります。こうした離婚慰謝料はケースに応じて相場が決まっています。
そこで今回は、離婚慰謝料の相場をケース別にご紹介します。慰謝料を請求する際や、請求された慰謝料が妥当かどうかを判断する際などに参考になさってください。

ケース別で見る離婚慰謝料の相場

離婚慰謝料は、一般的に100万~300万円程度に収まることが多いといわれています。
しかし、一口に離婚慰謝料といっても種類はさまざまです。例えば、不貞行為を原因とする離婚慰謝料や悪意の遺棄を原因とする離婚慰謝料、DV・モラハラを原因とする離婚慰謝料などが挙げられます。
では、それぞれの相場はどの程度なのでしょうか?以下、説明していきます。

不貞行為(肉体関係のある浮気、不倫)の離婚慰謝料の相場

こちらが不貞行為に対する離婚慰謝料の相場です。

不貞慰謝料の相場
離婚の有無慰謝料の相場
離婚しなかった場合50万~100万円
離婚した場合100万~300万円

不貞行為とは、既婚者が配偶者以外の人とする、性行為またはこれに類似する行為です。一般的な言葉では「肉体関係のある浮気」や「不倫」と言い換えることができます。
表をご覧いただくとわかるとおり、離婚しなかった場合と離婚した場合では、慰謝料の相場が大きく異なります。
これは、離婚しなかった場合と比べて離婚した方が、不貞行為を原因とする精神的な苦痛が大きいと考えられるためです。同じ理由で、離婚しなかったものの別居をした場合の慰謝料の方が、別居しなかった場合の慰謝料と比べて高額になります。

不貞相手への慰謝料請求について

不貞行為は2人ですることなので、不貞行為をした配偶者だけでなく、不貞相手にも慰謝料を請求できるのが基本です。
ただし、不貞相手に請求するためには、次の条件を満たさなければなりません。

  • 不貞相手が、既婚者との性行為やその類似行為だと知っていた、または注意すれば知ることができた
  • 不貞行為のせいで婚姻関係が壊れた(不貞行為の前に共同生活が破綻していなかった)

なお、前項の不貞慰謝料の相場は、不貞行為をした配偶者と不貞相手の両方に請求できる慰謝料の合計金額です。
つまり、不貞行為が原因で離婚した場合、配偶者と不貞相手それぞれに300万円(合計600万円)を請求できるわけではなく、不貞行為に関する2人の責任の度合いに応じて、合計300万円の範囲内でそれぞれに対して慰謝料を請求できるということです。

悪意の遺棄の離婚慰謝料の相場

悪意の遺棄をされた場合に請求できる慰謝料の相場は、下記のとおりです。

悪意の遺棄の慰謝料の相場
離婚原因慰謝料の相場
悪意の遺棄50万~300万円

悪意の遺棄とは、正当な理由がないにもかかわらず、夫婦の義務を果たさないことをいいます。
具体例を出すと、同居を拒否して勝手に家を出る、収入があるのに生活費を負担しない、健康上の問題がないのに働かないといったものです。
悪意の遺棄で請求できる慰謝料の相場には大きな幅があります。なぜかというと、悪意の遺棄にあたる行為からどれだけの精神的苦痛を受けたのかによって、慰謝料の金額は変わってくるからです。一般的に、婚姻中の同居期間に対する別居期間の長さ、未成年の子供の有無、悪意の遺棄にあたる行為の悪質度などを総合的に考慮して、慰謝料の金額が決定されます。

DV(家庭内暴力)・モラハラの離婚慰謝料の相場

DVやモラハラの被害を理由に請求できる慰謝料の相場は、下表のとおりです。

DV・モラハラの慰謝料の相場
離婚の有無慰謝料の相場
離婚しなかった場合50万~100万円
離婚した場合200万~300万円

DV(家庭内暴力)とは、家庭内で行われる暴力全般のことです。
DVには、殴る蹴るといった身体的暴力はもちろん、ひどい暴言を浴びせるといった精神的暴力、生活費を渡さないといった経済的暴力、性行為を強制する性的暴力なども含まれます。
そしてモラハラは、DVのうち、精神的暴力のひとつです。大声で露骨な暴言を浴びせるようなわかりやすい暴力ではなく、不機嫌な態度や冷たい言葉で心を傷つけて精神的に支配します。

DVの中でも身体的暴力は、暴力行為の事実やその程度を比較的証明しやすい部類です。
これに対して、身体的暴力以外は立証が難しい場合が多く、客観的な証拠がなければ慰謝料を請求できないこともあります。慰謝料請求を考えている方は、日頃から証拠となりそうなものを集めておくことをおすすめします。

性格の不一致で離婚した場合の慰謝料相場

性格の不一致が原因で離婚した場合、基本的に慰謝料はもらえません。
そもそも離婚慰謝料は、配偶者の違法な行為から受けた精神的苦痛に対する賠償です。夫婦の性格の不一致はどちらか一方が悪いといえるものではなく、違法な行為でもありません。
そのため慰謝料は発生しないので、一般的な相場もありません。

その他のケース

そのほかにも離婚慰謝料をもらえるケースがあります。どのケースも、配偶者の違法な行為から受けた精神的苦痛の程度によって、慰謝料の金額が変わってきます。

・一方的に離婚を切り出されたケース
配偶者に一方的に離婚を切り出され、理由も説明してもらえないケースでは、慰謝料が認められる可能性があります。相場としては、0~100万円程度といわれています。

・セックスレスになっているケース
正当な理由がないにもかかわらず性交渉を拒否され続けた場合、セックスレスを理由に慰謝料を支払ってもらえる可能性があります。金額は、セックスレスの期間や性交渉がなくなった原因などに応じて、0~100万円の範囲に収まることが多いです。

・中絶しなければならなくなったケース
脅されて中絶した、強姦された・避妊していると嘘をつかれた結果妊娠して中絶したといったケースでは、おおよそ100万~200万円の慰謝料が認められます。

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離婚の慰謝料に明確な算定基準はある?

離婚慰謝料には相場はありますが、金額を計算する明確な算定基準はありません。話し合いをして夫婦が合意できるなら、相場より高額あるいは低額な金額にするなど、自由に取り決めることができます。
このように話し合いで慰謝料について取り決める場合は、裁判で争う場合と比べて、夫婦それぞれの事情に応じた柔軟な解決を図ることができます。
話し合いで解決できなければ、調停や裁判などの裁判手続を利用することになります。しかし、裁判手続には時間と労力がかかりますし、話し合いのように自由に取り決めることはできないので留意しましょう。

離婚慰謝料の金額に影響を与える要素

慰謝料の金額を決める際には、それぞれの夫婦の事情が大きく影響します。そのため、場合によっては相場から外れた金額になることもあります。
では、具体的にどのような事情がどういった影響を及ぼすのでしょうか?以下、みていきましょう。

婚姻期間

婚姻期間が長いほど、夫婦の信頼関係が強くなると考えられるので、配偶者の違法な行為や離婚によって受ける精神的な苦痛が大きくなると一般的に考えられます。そのため、婚姻期間が長くなるにつれ、受け取れる慰謝料も高額になる場合が多いです。

当事者双方の年齢

高齢の夫婦の場合も、慰謝料が高額になりやすいといわれています。夫婦の年齢が上がるほど婚姻期間が長くなる傾向にあること、若い時に離婚するよりも高齢になってから離婚する方が精神的な苦痛が大きいと考えられることといった理由があるためです。

当事者双方の資産や収入状況

慰謝料を請求された配偶者の資産や収入が多い場合、相場どおりの慰謝料を請求すると、一般的な場合と比べて負担が軽くなってしまいます。そこで、資産や収入に見合った負担にするために慰謝料が高額になることがあります。
反対に、慰謝料を請求された配偶者に資力がない場合には、相場どおりの慰謝料では必要以上の負担になってしまうので、慰謝料が低額になる可能性があります。

不貞行為があった場合

不貞相手が妊娠/出産した場合

不貞相手が妊娠・出産した場合、妻が受ける精神的なショックは大きくなりますし、夫婦関係も大きく壊れることになるので、慰謝料が高額になりがちです。
なお、不貞相手が中絶した場合でも、不貞相手との間に子供ができた事実に変わりはないので、慰謝料は高額になるでしょう。

不貞行為によって婚姻関係が破綻したかどうか

不貞行為の前に婚姻関係が破綻していた場合、慰謝料を請求しても認められません。法律で守られるべき「平穏な夫婦生活」は既に壊れているので、配偶者の不貞行為が違法にならないからです。
一方、家庭が円満だった場合には、不貞行為によって壊される婚姻関係の程度が大きく、深刻な精神的苦痛を受けると考えられるので、慰謝料が高額になる可能性が高いでしょう。

不貞行為を知ったことによりうつ病等を発症した場合

配偶者が不貞行為をした事実を知ってうつ病などの精神病を発症した場合、それだけ大きな精神的苦痛を受けたと考えられるので、慰謝料が高額になる可能性があります。
なお、慰謝料を請求する際には、うつ病などを発症したことを証明するための証拠が必要です。一般的には医師の診断書や病院のカルテ、領収書等が証拠となるでしょう。

DV・モラハラの場合

DV・モラハラの期間・回数

DV・モラハラを受けていた期間が長かったり、日常的に行われていたなど回数が多かったりするほど、慰謝料は高額になります。被害を受けていた期間が短いまたは回数が少ない場合と比べて、精神的な苦痛が大きいと考えられるからです。

DVによる怪我の程度や後遺症の有無

配偶者から身体的な暴力を受けて重い怪我を負った場合、慰謝料が高額になる可能性が高いです。さらに、怪我が完治せずに後遺症が残ってしまったときは、慰謝料がより高額になるでしょう。

モラハラを受けたことによりうつ病等を発症した場合

うつ病などの精神病は強いストレスがかかった結果発症することが多いので、配偶者のモラハラが原因で発症した場合、かなり強い精神的苦痛を受けていたと推測できます。そのため、慰謝料が高額になる可能性が高いでしょう。
ただし、モラハラが原因で発病したという因果関係を立証する必要があります。例えば、配偶者から受けたモラハラの詳細を記録したメモ・日記や、発病の原因について触れた医師の診断書などが証拠となり得るでしょう。

離婚慰謝料の相場についてわからないことがあれば弁護士に相談しましょう

ここまで、離婚慰謝料の相場や、慰謝料の金額に影響を与える事情などについて解説してきました。しかし、そもそも配偶者の違法行為を証明できる証拠がなければ、慰謝料を支払わせることもできないでしょう。相手が言い逃れできないだけの客観的な証拠を集める必要があります。
離婚問題に詳しい弁護士に相談すれば、どのようなものが証拠になるのか、どういった方法で集めれば良いのかといったアドバイスを受けることができます。
また、反対に離婚慰謝料を請求されてお困りの方は、請求された慰謝料が適正なのか、減額の余地はあるのかといった点を確認されたいでしょう。この点についても、弁護士ならご夫婦の事情に応じた慰謝料の目安をつけられますし、減額のための糸口を見つけられる可能性もあります。
離婚慰謝料の相場について疑問やお悩みを抱えていらっしゃる方は、ぜひ弁護士への相談をご検討ください。

交通事故に遭ってしまったら、乗っていた車が壊れたり、ご自身や同乗者の方が怪我をしたり、時には亡くなってしまったりする等、様々な損害が発生します。しかし、泣き寝入りすることはありません。加害者に対して、こうした損害を埋め合わせるよう請求できます。
今回は交通事故における損害賠償について、その対象となるもの、一般的な相場、請求の流れ、減額される事情、加害者が支払えない場合の対処法など、請求するうえで欠かせない知識をご紹介します。

交通事故の損害賠償とは

交通事故における損害賠償とは、加害者にお金を支払わせることで、事故によって発生した損害を埋め合わせることをいいます。
例えば、車の修理費や怪我の治療費、通院にかかった交通費、働けなかったために得られなかった収入、将来の介護にかかる費用、事故による精神的・肉体的苦痛などが、事故によって発生した損害にあたります。このような損害を受けてしまったら、賠償を請求することができます。
損害賠償を適切に受けるためには、対象となる損害をしっかりと把握しなければなりません。

慰謝料との違い

慰謝料と混同されている方も多いですが、損害賠償金は慰謝料とイコールではありません。違いについてはこちらをご覧ください。

交通事故の慰謝料

損害賠償の対象になるもの

交通事故、特に人の生命・身体が害される人身事故で請求できる損害賠償の項目は、大まかに「精神的損害」と「財産的損害」に区別できます。そして、「財産的損害」はさらに「積極損害」と「消極損害」に分けられます。
それぞれが具体的にどのような損害を指すのか、以下、詳しくみていきましょう。

精神的損害

「精神的損害」とは、交通事故によって受けた精神的な苦痛のことです。例えば、怪我の痛みや後遺障害が残った苦しみ、被害者が亡くなってしまったことによる悲しみなどが考えられます。こうした精神的損害の賠償として支払われるお金が「慰謝料」です。
慰謝料には、次の3つの種類があります。

〇入通院慰謝料
交通事故を原因とする怪我の入通院に伴う、精神的な苦痛の賠償として支払われるお金です。

〇後遺障害慰謝料
事故により後遺障害が残ってしまったという、精神的な苦痛の賠償として支払われるお金です。

〇死亡慰謝料
事故に遭った被害者が亡くなってしまったことで生じた、精神的な苦痛の賠償として支払われるお金です。

財産的損害

「財産的損害」とは、交通事故により失われた財産上の利益のことです。「積極損害」と「消極損害」の2種類に分けることができます。
どちらも耳慣れない言葉なので、具体的にどのような損害かイメージがつきにくいのではないでしょうか。例えばどんなものが含まれるのか、細かくみていきましょう。

積極損害にあたる費目

財産的損害のうち「積極損害」とは、交通事故によって実際に支払うことになった、または将来的に支払わなければならないお金をいいます。次のような損害が積極損害にあたります。

〇治療関連費
交通事故が原因で負った怪我を治療するためにかかったもろもろのお金です。純粋な治療費のほか、入院費用、検査代、投薬料、付添看護費、診断書などの文書料、治療器具代、入院雑費、通院交通費といった、治療に関連してかかる費用もまとめて請求できます。

〇将来の介護費
事故の被害者に重い後遺障害が残ってしまい、将来にわたって介護が必要になってしまった場合に請求できる、介護をするうえで必要になるお金です。

〇家屋・車両改造費
事故により後遺障害が残ってしまい、日常生活を送るうえで家や車をバリアフリー化する際に必要になったお金です。

〇葬儀関係費
事故の被害者が亡くなってしまった場合に行う、葬儀にかかるもろもろのお金です。葬儀費用や仏壇・仏具の購入費、墓石積立費、お布施、お花代などが含まれます。

〇弁護士費用
交通事故による損害賠償を請求するにあたって、弁護士に相談・依頼した際にかかる費用です。かかった弁護士費用そのものが請求できるわけではなく、認容された損害賠償額の1割程度で計算されます。なお、弁護士費用が請求できるのは、裁判の判決で損害賠償請求が認められた場合だけなので注意しましょう。

消極損害にあたる費目

「消極損害」とは、財産的損害のうち、交通事故さえなければ得られたはずの収入や利益といったお金をいいます。
消極損害には「休業損害」と「逸失利益」があるので、次項以下で説明していきます。

休業損害

「休業損害」とは、交通事故が原因で働けなくなり、減ってしまった収入や利益のことです。
例えば、

  • 交通事故による治療のために仕事を休んだため、その日数分の賃金が一部または全部支払われなかったケース
  • 交通事故の影響で仕事を休んだ結果、ボーナスが減ったケース

などで、休業損害が認められる可能性が高いでしょう。

休業損害は、一般的に“1日あたりの損害額”に“仕事を休んだ日数”をかけて計算します。なお、職業や怪我の内容などによって、損害額や仕事を休んだ日数の考え方が変わることもあるので注意が必要です。

逸失利益

「逸失利益」とは、交通事故に遭わなければ得られていたはずの収入や利益といったお金のことです。収入・利益が減った原因によって、次の2種類に分けることができます。

〇後遺障害逸失利益
交通事故による後遺障害が残ってしまった影響で減ってしまったお金です。
「1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数」という計算式で求めることができます。

〇死亡逸失利益
交通事故により被害者が亡くなってしまった影響で減ってしまったお金です。
こちらは、「1年あたりの基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応したライプニッツ係数」という計算式で求められます。

休業損害と同様、被害者の職業や怪我の内容、性別、年齢、実際の収入額などの個別の事情によって、“基礎収入”や“ライプニッツ係数”の数値が変わるので気をつけましょう。

物損事故における損害賠償について

物損事故は、物にだけ被害が及ぶ事故なので、基本的に財産的損害しか認められません。
認められる損害の項目としては、

  • 壊れた物の修理費・格落ち損(評価損)
  • 代車料
  • 買替差額
  • 新車の登録手続き関係費
  • 休車損害

などがあります。

一方、精神的損害に対する賠償である、慰謝料は認められないのが通常です。なぜなら、誰も怪我をしない物損事故では肉体的苦痛は発生しませんし、精神的苦痛についても、財産損害を賠償すれば癒されるだろうと考えられているからです。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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損害賠償額に相場はある?

交通事故の損害賠償額について、一般的な相場を紹介するのは困難です。交通事故はひとつとして同じ状況のものはないので、それぞれの事案によって損害賠償額の求め方や金額が違ってくるからです。
ただし、損害賠償金の種類によっては相場があるので、損害賠償額の目安を示すことができる場合もあります。

使用する算定基準によっても損害賠償額は大きく変わる

損害賠償を計算する際には、3つある算定基準のうち、どれか1つを使います。使用する算定基準によって、損害賠償額は大きく変わります。
一般的に「自賠責基準 < 任意保険基準 < 弁護士基準」の順に、算定される金額が高額になる傾向にあります。それぞれの基準の特徴は次のとおりです。

〇自賠責基準
自動車を所有している人すべてが加入しなければならない、自賠責保険で使用されている基準です。

〇任意保険基準
自賠責保険で補償しきれない損害の賠償を目的としている、任意保険で使用されている基準です。
任意保険を提供する保険会社ごとに指標が異なるので、注意が必要です。

〇弁護士基準
過去の交通事故に関する裁判例を参考に作成された基準です。主に裁判所や弁護士が使用します。

損害賠償請求の流れ

交通事故で損害を受けたら、次のような流れで加害者に対して損害賠償を請求します。

①相手方本人と、相手方が加入する保険会社を確認する
②-1物損のみ:損害額確定後、示談交渉を開始する
②-2人身事故:完治または症状固定の診断がなされるまで治療を継続する
③-1完治した場合:示談交渉を開始する
③-2症状固定した場合:後遺障害等級認定を申請し、その結果をもって示談交渉を開始する

自賠責保険に請求する方法

自賠責保険に損害賠償を請求する方法は、“誰が”請求するかによって「被害者請求」と「加害者請求」の2通りに分けられます。

〇被害者請求
加害者側の自賠責保険会社に対して、被害者本人(または代理人の弁護士)が損害賠償金を支払うよう請求する方法です。つまり、被害者側が請求します。

〇加害者請求
加害者が被害者に損害賠償金を支払った後、支払った金額分の保険金を自分に支払うよう、加入している自賠責保険会社に請求する方法です。被害者請求とは違い、加害者側が自分の自賠責保険会社に請求することになります。

損害賠償請求に時効はある?

損害賠償を請求する権利も時効にかかるので、請求できる期間は限られています。ただし、事故の状況によって時効にかかるまでの期間が異なります。

【物損事故】
〇事故日から3年

【人身事故】
〇後遺症がないケース:事故日から5年
〇後遺症が残ったケース:症状固定日から5年
〇被害者が亡くなったケース:死亡日から5年

※加害者がわからないケース:事故日から20年
後になって加害者がわかった場合は、加害者がわかった日から3年(物損事故)または5年(人身事故)

損害賠償額の減額要素

損害賠償を請求しても、計算したとおりの金額を満額支払ってもらえるとは限りません。例えば、「過失相殺」や「素因減額」を行うべき事情があれば、損害賠償金は減額されてしまいます。

過失相殺

「過失相殺」とは、加害者だけでなく被害者も事故に関する責任を負う場合に、その責任の重さ(過失割合)に応じて、支払ってもらえる損害賠償金を減額することです。
加害者に追突されたケースやセンターラインをオーバーしてきた加害者に衝突されたケースなどのもらい事故でもない限り、基本的に被害者にも過失割合が認められるので、過失相殺によって損害賠償金が減額されることは珍しくありません。

素因減額

「素因減額」とは、被害者の特殊な体質や身体的・精神的な要因によって、事故による損害が発生した、または拡大したといえる場合に、その要因(素因)を考慮して損害賠償金を減額することです。
例えば、椎間板ヘルニアの持病を持っている被害者が、事故後痛みやしびれの悪化を訴えたような場合、事故後の痛みやしびれのすべてが事故の影響によるものとは考えにくいので、ある程度損害賠償金が減らされてしまう可能性があります。
これに対して、平均より首が長く頚椎に不安定なところがあった被害者がバレリュー症候群を発症したとしても、疾患といえる程度でない限り、素因減額すべきでないと判断した裁判例があります。つまり、平均的な体格・体質から多少外れていても、すぐに素因減額が行われるわけではありません。

加害者が損害賠償を払えない場合

加害者が損害賠償金を支払えないといっても、その理由によってとるべき対応が異なります。
まず、加害者に支払う意思があるものの十分な収入や財産がなく支払えない場合には、「分割払い」や「支払いの猶予」を認め、加害者の経済的な負担を軽減してみることをおすすめします。
それでも支払いが難しい場合や、加害者側が提案した示談案を譲らず話し合いが難航する場合には、「裁判」や「ADR」といった制度を利用して解決を図ることができます。
また、加害者が任意保険や自賠責保険に未加入で賠償を受けられない場合には、政府保障事業やご自身の任意保険の利用を検討されてみても良いでしょう。

弁護士に依頼することによって適正な損害賠償を受け取れる可能性が高まります

交通事故問題を解決した実績が豊富な弁護士なら、どういった証拠・資料や主張が適正な損害賠償の獲得につながるのかを知っています。このような弁護士に相談すれば、示談交渉のポイントを教えてもらえる、請求項目に抜け漏れや誤りがないかを確認してもらえるなど、様々なメリットを得られます。
また、依頼すればさらに多くのメリットを受けられます。例えば、ご依頼者様に代わって弁護士が示談交渉を行えるようになるので、最も高額な算定基準である弁護士基準で損害賠償金を算定できるようになります。さらに、「裁判を起こすこともためらわない」という強い姿勢で交渉を進めるので、保険会社から妥協案を引き出しやすくなります。
弁護士に依頼すれば、適正な損害賠償を受け取れる可能性が高まりますので、ぜひお気軽にお電話ください。専任のスタッフが丁寧に対応させていただきます。

交通事故のパターンは「人身事故」だけではありません。「物損事故」が起こることもあります。
では、「物損事故」ときいて、具体的にイメージできるでしょうか?

ここでは、賠償の内容、人身事故との違い、物損事故として処理することのリスクなど、「物損事故」に着目して詳しく解説していきます。

物損事故とは

「物損事故」とは、交通事故のうち、物だけが被害を受けた事故をいいます。
例えば、乗っていた車やぶつかったガードレールは壊れてしまったものの、事故の当事者も周囲の人も誰一人怪我しなかったような事故です。
これに対して「人身事故」とは、交通事故のなかでも、人の生命や身体に被害が及んだ事故を指します。交通事故といって多くの方が想像するのは、こちらの人身事故かと思います。

物損事故は、人身事故と比べて被害の規模が小さいと考えられがちなので、加害者は比較的軽い責任しか負いません。また、被害者が受けられる賠償の種類や賠償金の総額が少なくなる傾向にあります。

物損事故で請求できる損害賠償

修理費

物損事故では、事故によって壊れた物の修理費を賠償するよう請求できます。
なお、請求が認められるのは、壊れた部分を修理するのにかかった費用のうち、必要かつ相当だと判断される金額だけです。
事故によって車の塗装の一部が剥げたため、全体を塗り直したケースを例に考えてみましょう。このケースでは、塗り直しにかかった費用のうち、剥げた部分の塗り直しにかかった費用に相当する金額しか修理費として認められないのが通常です。

格落ち損(評価損)

修理で壊れた車を元通りにできなかった場合、格落ち損(評価損)の賠償を請求できます。
事故によって壊れた車を修理しても、見た目や損なわれた機能が完全に元通りになるとは限りません。元通りにならなければ、事故前と比べて車の価値が下がってしまいます。この下がってしまった価値が「格落ち損(評価損)」です。
請求が認められれば、下がった価値に相当する金額を賠償してもらえます。

代車料

車の修理中に代車を利用した場合、利用にかかった費用として代車料を請求できる可能性があります。
そのためには、代車を利用したことに必要性と相当性が認められなければなりません
具体的には、

・事故で壊れた車を通勤や通学などの日常的に欠かせない用途で使っていて、代わりに使える交通手段がない(必要性) ・修理にかかる平均的な期間(1ヶ月程度)、修理中の車と同等のグレードの車を代車として利用した(相当性)

といった状況であれば代車料が認められるでしょう。

買替差額

車の損傷がひどく修理できる見込みがない、または修理費が高額すぎて修理できない場合を「全損」といいます。交通事故が原因で車が全損したときは、事故当時の時価と車の売却代金の差額(買替差額)を請求することができます。
なお、車が全損した場合、通常売却できません。そのため、事故当時の車の時価に相当する金額を請求するのが基本です。

登録手続関係費

交通事故が原因で全損した車を買い替える場合、購入した新車を使用できる状態にするためにいろいろな費用がかかります。これらの費用も事故による損害といえるので、登録手続関係費として賠償請求できます。
例えば、自動車取得税・消費税といった各種の税金や、全損した車を廃車するのにかかる費用、車の検査登録・車庫証明書の取得にかかる費用、新車の納車にかかる費用などをまとめて請求することが可能です。

休車損害

仕事で利用している車が交通事故で壊れ、修理や買い替えが済むまで仕事ができなくなった場合、得られなくなってしまった収入・利益(営業損害)の賠償として、休車損害を請求できます。
仕事で利用していることが条件なので、休車損害が認められるのは、外回りで使っている車や荷物を運搬するトラック、タクシー、バス等の営業車に限られます。
また、仕事をしない分、燃料費や有料道路の利用代金などの経費がかからないため、請求できる金額は「平均売上額-必要経費」となります。

その他

上記に挙げた損害以外にも請求できるものはあります。例えば、以下のような損害です。

  • 事故車を運搬した際のレッカー代
  • 事故車の保管料
  • 時価の査定・修理の見積もりにかかった料金
  • 事故により壊れた家屋や店舗の修理費、評価損
  • 身に着けていた衣服などの損害
  • ペットに関する損害

物損の場合は慰謝料が請求できない?

物損事故の場合、基本的に慰謝料を支払ってもらうことはできません
そもそも慰謝料とは、精神的・肉体的な苦痛を癒すために支払われるお金です。しかし、人の生命にも身体にも被害が及ばない物損事故では、肉体的な苦痛は発生しません。さらに、精神的な苦痛が発生するとしても、修理費や評価損などの財産的な損害を賠償することで癒される程度のものだと考えられるため、別途金銭が支払われることはないのが基本です。

例外的に物損でも慰謝料が認められる場合

物損事故では慰謝料が認められないと説明しましたが、例外的に慰謝料を支払ってもらえるケースもあります。被害者にとって特別な価値のある物が壊れてしまった場合や、住居が壊されて平穏な生活が害されたような場合です。
実際に慰謝料請求が認められた裁判例をご覧ください。

・大阪地方裁判所 平成12年10月12日判決
被告が霊園で車を運転していたところ、ブレーキとアクセルを間違えて原告一家の墓石などを壊してしまったため、原告が損害賠償を請求した事例です。
原告の慰謝料請求について、裁判所は、墓地や墓石等は故人が眠る場所であり、一般的に遺族等が強い敬愛や追慕の念を抱く対象となるものだと判断し、こうした特殊性を考慮して、墓石等を壊されたことで受ける精神的苦痛に対する慰謝料が損害賠償の対象になることを認めました。そして、被告に対して10万円の慰謝料の支払いを命じる判決を下しました。

物損事故の事故処理の流れ

物損事故は、下記のような流れで処理されます。

①事故の発生
物損事故が発生したら、まずは相手方の名前や住所、電話番号など連絡先を確認し、連絡がとれるようにしておきます。また、事故現場の写真や動画を撮影したり、目撃者を探したりして、事故の状況を証明できる証拠を集めます。

②警察や保険会社への連絡
証拠集めと並行して、警察に事故が発生した旨を報告します。ご自身が加入する保険会社への連絡も忘れないようにしましょう。

③示談交渉
車の修理などが終了し、その事故におけるすべての損害額が確定したら、示談交渉を始めます。まずは当事者の話し合いから始め、合意できないようなら、調停や訴訟などの裁判手続の利用を検討します。

④示談成立
過失割合の配分や損害賠償の金額・支払方法などについて合意できたら、示談が成立します。

⑤示談金の支払い
示談成立後、保険会社から送られてきた示談書を確認し、署名・押印して返送した後、示談金を受け取ります。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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少しでも人的損害があった場合は物損事故ではなく人身事故に切り替える

加害者側にとっては、物損事故として処理したほうが何かと都合がいいです。このため、ちょっとした怪我だと、「物損事故として対応したい」と主張されることがあります。
ですが、物損事故では賠償項目に限りがあるため、安易に物損事故として処理されると結果的に損してしまいかねません。
また、物損事故だと警察の取扱はかなり簡潔なものとなり、捜査もそこまでしっかりなされません。後日事故態様が争われた際、証拠がほぼないという事態が生じます。
少しでも怪我をしたら、物損事故ではなく人身事故に切り替えましょう。

人身事故を物損事故にしておくリスク

物損事故では、免許の減点や刑事罰を受けることはありません。そのため、加害者としては物損事故で処理することを希望する場合が多いのですが、被害者にとってはリスクが多いので注意が必要です。
例えば、治療費や慰謝料といった人身損害に対する賠償を受けられないので賠償金が低額になるほか、事故状況の証明に役立つ実況見分調書が作成されないため、過失割合等が争いになりやすいというリスクがあります。他にも、被害者側が損害を立証しなければならない、自賠責保険が適用されない、事故を起こした運転者にしか損害賠償請求できない、後から痛みが出てきた場合に交通事故との因果関係が疑われやすいといったリスクが考えられます。

物損事故から人身事故に切り替える方法

物損事故から人身事故に切り替えるためには、必要書類を集め、警察署で変更の手続を行う必要があります。具体的には、次のような手順で物損事故から人身事故に切り替えることになります。

①病院で医師の診察を受け、診断書を作成してもらう
人身事故に切り替えるためには、被害者が交通事故により怪我をしたことを証明する必要があります。

②事故現場を管轄する警察署に行き、必要書類を提出して人身事故への変更手続を行う
必要書類として、診断書のほか、車検証や運転免許証などの提出を求められる場合があります。

③人身事故として調査が行われる
当事者それぞれから事故の状況を聴き取る取り調べや、当事者が立ち会うなかで事故の状況を調べる実況見分などが行われます。

人身事故に切り替わったら、人身事故であることを証明する事故証明書を取得できるようになります。損害賠償金を請求するうえで大切な書類なので、請求前に取得しておくと良いでしょう。

物損事故の弁護士依頼は損?費用倒れにならないケースとは

物損事故の場合、業者の見積もりや市場価格、実際にかかった費用といった客観的な基準で損害額を計算するのが基本です。そのため、交渉によって増額できる余地が少ない場合も多く、弁護士に依頼しても、増額した金額より弁護士費用の方が高くなってしまう(費用倒れしてしまう)リスクがあります。
しかし、法的に問題になりやすい損害について交渉することで、費用倒れになることを防げる場合もあります。例えば、「過失割合を少なくする」「評価損を認めさせる」ことができるケースです。

過失割合が少ない

過失割合があると、割合に応じて、もらえる損害賠償金が減額されてしまいます。したがって、損害賠償金を増額するためには、過失割合をいかに少なくできるかが重要といえます。
一般的に、保険会社は過失割合を多めに見積もった示談案を提示してくるので、弁護士に依頼することで、適正な割合に修正して増額を図れる可能性があります。

評価損が認められた

過去の傾向からすると、評価損は修理費用の10~30%程度とされる場合が多いようです。しかし、明確な基準は決まっていませんし、被害者個人が交渉に臨んでも、保険会社は簡単には評価損を認めてくれません。
この点、専門知識のある弁護士に交渉を任せれば、保険会社に評価損を認めさせることができる可能性があります。

物損でも場合によっては弁護士の介入がプラスになることがあります。まずはご相談ください

物損事故では、賠償してもらえる損害が限られていますし、損害額も低い場合が多いため、いい加減な対応をしがちです。しかし、保険会社からの示談案をきちんと確認せずに合意してしまうと、適正な賠償を受けられなくなりかねません。
弁護士に相談すれば提示された示談案が適切か、他に請求できる損害項目はないか、増額できる余地はないかなど、被害者の方だけでは判断しにくい点をしっかりと確認してくれます。そのため、結果的に賠償金の増額につながる可能性があります。
物損事故の場合、事故車の修理の可否といった専門的な判断も必要になることもあるので、ぜひ交通事故事案に精通した弁護士への相談をご検討ください。

「法定相続人」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。法定相続人は、その名の通り、相続が発生したときに問題になります。では、法定相続人とは、何でしょうか。以下では、法定相続人について、解説していきます。

法定相続人とは

法定相続人とは、読んで字のごとく、法律で定められた相続人のことをいいます。民法では、886条以下に法定相続人について規定しています。誰が法定相続人に該当するかは、相続人調査を行い確定していきます。

法定相続人の範囲

法定相続人となりうるのは、被相続人の配偶者、子供、親兄弟、祖父母、孫、ひ孫、甥姪です。以上に挙げた人々は、法定相続人になりうる人であり、必ず相続人になるわけではありません。以下で、法定相続人となる場合をあげていきます。

配偶者は必ず相続人になる

被相続人が死亡した時点で配偶者がいれば、その配偶者は必ず法定相続人となります(民法890条)。配偶者については、他の法定相続人と異なり、特別な配慮がされています。

子供がいる場合

子どもがいる場合、配偶者と子どもが相続人となります。その際、配偶者が遺産の半分について権利を有し、子どもは、残り半分を、頭数で割ることになります。やはり、配偶者は、相続割合でも優遇されています。

子供がいない場合

子どもがいない場合、被相続人の両親か祖父母といった、直系尊属がご存命の場合、配偶者とご両親らが遺産を分けることになります。この場合、子どもがいる場合とは異なり、配偶者は遺産の3分の2について権利を有します。
一方、ご両親ら、直系尊属がご存命でない場合も、ご兄弟、又は、甥姪がいれば、配偶者と、ご兄弟又は甥姪が相続人となります。この場合、配偶者は、遺産の4分の3について、法定相続分を有します。

子供がいるが離婚している場合の法定相続人は?

離婚した場合、配偶者はいない扱いになります。そのため、子どもだけがいる状態と同じになります。子どもだけの場合、ご両親ら直系尊属や、ご兄弟らには、相続権はなく、子どもたちだけで相続します。

死別などで配偶者がいない場合の法定相続人は誰か

配偶者がいない場合、子どもや孫がいれば、子どもや孫が法定相続人となります。子どもや孫がいない場合、両親などの直系尊属が法定相続人となります。両親ら直系尊属が亡くなっている場合、兄弟や甥姪が法定相続人となります。

独身の場合の法定相続人は誰か

独身の場合、結婚はしなくともシングルマザーやシングルファーザーのような状況で、子どもがいる場合はありますので、結局は、配偶者がいない場合と同じとなります。

兄弟・姉妹は法定相続人になるか

上述しているように、兄弟姉妹は、被相続人に子どもや孫がいないか、既に全員死亡している場合で、かつ、直系尊属全員が死亡している場合です。そのため、法定相続人になりますが、なる確率は低いといえます。

甥・姪は法定相続人になるか

甥姪も、上述のように法定相続人になりえます。もっとも、これは、代襲相続が発生した場合です。代襲相続とは、法定相続人が相続前に死亡したり、相続欠格事由がある場合に、当該法定相続人の子どもに相続権が移る制度です。つまり、被相続人が死亡する前に、兄弟姉妹が死亡したり、相続欠格事由にあたる行為をしていたときは、甥姪に代襲相続が発生し、法定相続人になります。

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孫は法定相続人になるか

上述のように、代襲相続が発生した場合に孫も法定相続人になります。しかも、甥姪の場合と異なり、再代襲相続が発生しますので、ひ孫も法定相続人になりえます。

養子は法定相続人になるか

養子も、もちろん法定相続人になります。しかも、特別養子縁組でない場合、養子に出した親の子でもあるため、双方で法定相続人になります。
法定相続人かどうかは、血のつながりではなく、法律上のつながりで判断されるためです。

相続には順位があり、全員が相続できるわけではない

上述のように、全員が法定相続人となるわけではありません。すべてにおいて、配偶者が優先し、子どもがいれば、配偶者の次に優先して法定相続人となります。両親ら直系尊属は、子どもや孫、ひ孫がいないときに初めて法定相続人となります。そして、兄弟姉妹、甥姪は、被相続人の子どもら直系卑属、両親ら直系尊属がいないときに初めて相続人となります。

法定相続人がいない場合

では、上述した法定相続人がいないときはどうなるのでしょうか。
法定相続人がいない場合、まず、相続人の捜索の公告が出されます(958条)。それでも、法定相続人が発見できない場合、特別縁故者が請求すれば、財産の全部又は一部を受け取れる場合があります(958条の3)。そのような手続きを経て、なお、遺産が残った場合、その遺産は国庫に帰属し、国の物になります(959条)。

法定相続人についてお困りなら弁護士にご相談ください

誰が法定相続人となるのかについて、相続の場面では問題になることが多々あります。法定相続人となるかどうかは、相続できるかどうかに直結するからです。法定というだけあって、これらの問題には、高度な法的視点が必要になる場合があります。そのため、法定相続人について、ご質問があれば、弁護士にまずはご相談をした方がよいでしょう。

相続順位とは

法律上、相続人となるかについて、厳格なルールがあります。
そのルールの一つが、相続順位です。
基本的には、順位が高い者がいるうちは、順位の低い者は相続人となることができません。

配偶者は原則的に法定相続人(順位無し)

被相続人の配偶者は、相続順位のルールに関係なく、常に相続人となります。
もっとも、これは「法的に」婚姻関係にある配偶者の場合のみです。
いわゆる事実婚の場合や、内縁関係の場合には相続人となりません。

第1順位は子供

相続順位の1位は、被相続人の子どもです。
子どもが複数人いる場合には、その年齢関係なく、子ども全員、平等に第1順位となります。そして、原則として、一人一人の子どもが受け取る遺産の割合も平等です。

例えば、被相続人の配偶者1人と子ども2人が相続人の場合、配偶者の相続分は2分の1であり、残った相続分を子ども2人に平等に割り付けるので、子ども一人の相続分は4分の1となります。

胎児も相続人として認められる

民法886条において、胎児は相続の場面では生まれたものとして扱うことが定められています。
つまり、胎児が1人いれば、子どもが1人いるものと扱われます。

ただ、不幸にも死産であった場合、胎児が相続権を持っていなかったものと扱われます。
そのため、民法上、胎児を生まれたものと扱う条文がありますが、子どもが出産した後に遺産を分けることが多いです。

養子の相続順位

被相続人が、養子に迎え入れた子どもがいる場合、その養子も第1順位の相続件を有する子どもとして扱われます。
その一方で、実の子どものように接していたとしても、戸籍上、養子になっていない場合には、相続権を得ることができません。

隠し子や未婚の子がいた場合

実の父親が亡くなった隠し子や未婚の子どもであっても、認知をされていれば、第1順位の相続人となります。
ただ、実際には、父親が任意に認知をすることを拒んだ等、諸事情によって認知を受けられていない子どももいます。
その場合には、父親が生きている間、もしくはなくなってから3年以内に、子どもの方から認知の訴えを起こして裁判所から認知について判断をしてもらうことが考えられます。

第2順位は親

被相続人に第1順位の相続人がいない場合、第2順位の相続人が相続することになります。
そして、まずは親が第2順位の相続人となります。
ただ、法定相続分については配偶者がいる場合、子どもとは異なります。
具体的には、配偶者が3分の2、第2順位の相続人で合計3分の1もらえることになります。
つまり、両親ともに健在であれば、各親が6分の1ずつ、親が一人の場合には3分の1が親に渡ることになります。

第3順位は兄弟姉妹

被相続人に第1順位、第2順位の相続人がいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。
そして、配偶者がいる場合、配偶者の法定相続分は4分の3、兄弟姉妹全員の相続分合計が4分の1になります。
兄弟姉妹が複数いる場合の各々の相続分を求めるには、4分の1を頭割りします。

第4順位以降は存在しない

第1順位から第3順位の相続人が存在しない場合、配偶者がいるのであれば配偶者のみが相続人になります。
配偶者がいない場合、相続人が存在しないことになり、被相続人の遺産が国庫に帰属します。
もっとも、相続人が存在しない場合であっても、特に被相続人と密接に関与してきた者(例えば、内縁の夫や妻)から裁判所に対し、自身を特別縁故者として認めるよう求めることができます。
特別縁故者として認められたのであれば、遺産の一部を受けとることができる可能性があります。

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相続順位の特殊例 代襲相続とは

本来、相続人となるべき人が相続開始前に亡くなってしまうことがあります。
もっとも、その人の相続順位を受け継ぐ場合があります。
そのように、相続人となるべき人が相続権を失う場合、下の世代が相続権利を継承することを代襲相続といいます。
被相続人が亡くなる前に子どもが亡くなっているので、被相続人の孫がその相続権を受け継ぐ場合が典型例です。

ただ、相続人が亡くなっていない場合であっても代襲相続が発生することがあります。
例えば、故意に被相続人を死亡させた子どもは、相続欠格事由に該当するため、相続人としての資格がはく奪されます。
しかし、相続権をはく奪された子どもの子、つまり、被相続人の孫は代襲相続によって第1順位の相続人となります。
このように、相続人が亡くなっていない場合でも、代襲相続が起きる場合もあります。

再代襲相続は第1順位のみ

被相続人が亡くなり、代襲相続によって相続権を受け取るはずの者もなくなっている場合もあります。
その場合であっても、子どもから孫、孫からひ孫と下の世代がいる限り相続権は移り続けます。このことを再代襲相続と言います。
ただ、第3順位では再代襲相続が認められません。

相続順位が繰り上がるケース

相続人の中に相続放棄が発生した場合、代襲相続は起きません。
これは、相続放棄の結果、相続の初めから相続人ではなかった扱いとなるからです。
代襲相続が発生するには、相続をしない相続人であった必要はあるので、相続放棄をした者の下の世代はその条件を満たしません。

そのため、第1順位の者が全員相続放棄をすれば、第2順位に相続順位が移ります。

相続順位はトラブルも多いので弁護士にご相談ください

相続の争いがいったん起きると、本来相続権のない親族が口を出してきたり、相続割合を法律通り進めることを妨害するものが現れたりすることもあります。
また、相続順位について理解した上で、相続の話合いに臨んだとしても、代襲相続が発生していることを気づかないこともあります。
そのため、一度は弁護士に事情をご相談し、法律上、ご相談者様の相続において見落としがないか、各関係者の主張が法的に正しいものかどうか等、説明を受けることが有用です。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。