残業代は休業損害に含まれるのか

残業代は休業損害に含まれるのか

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

交通事故による怪我が原因で仕事を休み、収入が減ってしまった場合、減収分に対する賠償金として「休業損害」を受け取ることができます。
しかし、例えば会社員の場合、一口に収入といっても「基本給」や「通勤手当」、「残業代」、「ボーナス」など、様々なものが含まれます。特に「残業代」については、交通事故による減収に含めて考えて良いのか、どのように計算するべきかをめぐって争いになることが多いです。

そこで今回は、「休業損害として残業代も請求できるのか?」など、休業損害をめぐる残業代の問題について解説していきます。

休業損害に残業代は含まれる?

前提として、休業損害を計算するにあたっては残業代も考慮されます
休業損害は、事故前の被害者が実際に得ていた収入を目安に計算するため、基本給だけではなく、残業代などの付加給も含めたうえで1日あたりの基礎収入を考える必要があるからです。

労災や自賠責保険における休損の計算では、事故に遭う前の直近3ヶ月間の給与(住民税や社会保険料が控除される前の額面上の金額を指すので、残業代なども含まれます)を稼働日で割って算出した1日あたりの基礎収入に、実際に休業した日数をかけて、休業損害の金額を計算します。

つまり、休業損害には、基本的に、交通事故に遭う前3ヶ月間に支払われた残業代の平均額が含まれると考えられるでしょう。

付加給とは

付加給とは、残業代や通勤手当、皆勤手当、住宅手当など、金額や支払いの有無が月によって変動する可能性のある、基本給に加算して支払われる各種手当をいいます。

残業代などの法律で支払わなければならないと定められている手当を除いて、“どのような手当を、いくら付加給として支払うか” は会社が自由に決めることができます。
したがって、会社によっては付加給の内容や名称が異なることがあるので、休業損害を請求する際にはご自身の給与明細をしっかり確認するようにしましょう。

残業代を請求するためには証明が必要

「終業時間後に通院しなければならず、残業ができなかった」「交通事故による怪我の影響で残業に耐えられなくなった」といった場合、事故がなければもらえたはずの残業代を休業損害として請求したいと考える方も多いでしょう。

しかし、残業代は業務量などに応じて月ごとに変動するものなので、事故により残業代が減ったと主張しても、簡単には休業損害として認めてもらえません。
“交通事故に遭わなければ残業代が得られるはずだった“という因果関係を証明する必要があります。

具体的には、下記のポイントを押さえて主張・立証することになるでしょう。

  • 普段から残業することが当たり前の職場環境で、事故に遭う前は被害者も残業していたこと
  • 事故後の減収の原因が明らかに残業代の減少であること
  • 減った残業代の金額が明確なこと
  • 事故による怪我の治療のため、実際に残業できなかったこと

休業損害証明書で証明する方法

休業損害の請求にあたっては、「休業損害証明書」を提出する必要があります。
休業損害証明書には、仕事を休んだ期間や日数、休んだ期間に支払われた給与、社会保険・労災保険からの給付金の有無などが記載され、休業損害を支払う妥当性や適正な金額を判断するための資料として使われます。

この休業損害証明書は、相手方の保険会社から送ってもらったフォーマットに、勤務先が必要事項を記載することで作成されます。
そこで、勤務先に休業損害証明書への記載を依頼する際に、「休んだ期間に支払われた給与」の欄や補足事項に、事故が原因で得られなかった残業代の金額・内訳・計算の根拠といった詳細まで記載してもらえるように頼んでおくと良いでしょう。

第三者である勤務先が作成する休業損害証明書は信頼性が高いので、事故により残業代が減った事実や減った金額を証明する有力な証拠となります。

休業損害証明書は自分で記入してもいい?

休業損害証明書は、第三者である勤務先に休業の事実や状況を証明してもらうための書類なので、自分で記入することはできません。

頼みにくい雰囲気がある、記入を断られてしまったというようなケースもあるかもしれませんが、ご自分で休業損害証明書に記載しても証拠として認められません。 休業損害が認められなくなってしまうリスクがあるので、ご自分で記入することは避けてください。

繁忙期は考慮される?

繁忙期と閑散期がある職種では、時期によって残業時間が変わる場合があります。
このような場合、通常どおりに事故に遭う前の直近3ヶ月間の給与に基づいて残業代を含む休業損害を計算すると、本来受け取るはずだった金額より少ない金額しかもらえなくなる可能性があります。

通常は、過去3ヶ月の平均額となりますが、繁忙期と閑散期が極端に異なる場合は、以下の内容を立証することは一つの方法となり得ます。

前年度や前々年度の状況を参考に、今年度に想定される残業時間を算出する

①で算出した残業時間に相当する残業代を含めて休業損害を請求する

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通院のために残業できなかった場合でも休業損害は請求できる?

交通事故による怪我の治療のために通院する必要があり、半休を取得したり早退したりしたケースでも、休業損害として残業代を請求できる可能性があります。
また、就業時間後でないと通院できないため、定時で上がって残業ができなかったようなケースも、状況によっては休業損害を残業代に含めて請求できるでしょう。

これらの請求を認めてもらうためには、交通事故による通院と残業代が減った事実に因果関係があること、つまり、 “交通事故に遭わなければ残業代が得られるはずだった“という事実を証明する必要があります

具体的には、

  • 就業時間内または時間外に通院治療を行う必要性があったこと
  • 事故前から残業が日常的に行われていたこと
  • 事故により実際に減った残業代の金額

といったポイントを証明することになります。

残業代と休業損害についての裁判例

ここで、残業代が交通事故による減収分として認められ、休業損害を受け取ることができた裁判例を2つご紹介します。

大阪地方裁判所 平成27年2月17日判決

<事案の概要>
Aの運転する普通乗用自動車がセンターラインを越えて対向車線に侵入した結果、対向車線を走行していたBの運転する普通乗用自動車に衝突しました。この事故により、Aは死亡し、Bの運転する車両に同乗していた原告らも負傷しました。
そこで原告らは、Aの相続人らを被告として損害賠償請求を行いました。

<裁判所の判断>
裁判所は、残業代は年度や勤務場所によって変動するほか、前年に得た残業代と同じ金額を得られるとは限らないとしつつも、原告の残業代が減少した時期から考えると、残業代が減少した原因のひとつに事故による怪我の治療があることが明らかだと判断しました。
そして、事故前の残業時間や残業代を考慮すると、事故から症状固定に至るまでの28ヶ月間に、少なくとも1ヶ月につき平均1万5000円の残業代が減少したとして、総額42万円の残業代を休業損害として認めました。

そして、その他の減収(欠勤による損害、有給休暇の取得による損害、遅刻による減給、賞与の減額分)も加えて、合計197万2280円の休業損害を認めました。

東京地方裁判所 平成17年6月21日判決

<事案の概要>
自動二輪車を運転していた原告が信号のある交差点を直進しようとしたところ、右折してきた被告の運転するタクシーに衝突されて怪我を負ったため、損害賠償を請求した事案です。

<裁判所の判断>
原告は、事故の前後6ヶ月間で1日あたり平均905円の残業代をもらっていました。
そこで裁判所は、休業していなければ1日あたり905円の残業代が得られたはずだと考え、これに休業した日数である236日をかけた金額(21万3580円)を休業損害として認めました。

残業代を休業損害として請求するためにも弁護士にご相談ください

交通事故により減った残業代は、休業損害に含めて請求することができます。ただし、そのためには、交通事故が原因で残業代が減ったことや、交通事故により減った残業代の正確な金額などをしっかりと証明しなければなりません。

しかし、こうした証明は簡単ではありません。休業損害における残業代の問題でお困りの方は、弁護士への相談を検討されることをおすすめします。

交通事故問題に強い弁護士なら、有力な証拠を揃えたうえで、休業損害に残業代を含めるべき理由を論理的に主張できます。また、最も高額な賠償金を計算できる「弁護士基準」で休業損害を計算できるようになるので、実際にもらえる休業損害の金額も増える可能性があります。さらに、その他の手続きもすべて任せることができるので、仕事や治療に専念することができます。

まずは専任のスタッフがご状況をお伺いしますので、ぜひお気軽にお電話ください。

交通事故で残ってしまう可能性がある後遺障害のひとつに「運動障害」があります。
今回は、運動障害とは具体的にどのような症状をいうのか、症状の出る部位やその原因、もらえる慰謝料の相場などについて解説していきます。

後遺障害における運動障害とは?

運動障害とは、交通事故による怪我が原因で身体を思うように動かせなくなる後遺障害です。

運動障害が残る可能性のある身体の部位はいくつかありますが、関節を曲げにくくなったなど、特に関節部分に運動障害の症状が現れた場合には「可動域制限」と呼ばれます。

治療が終了した後も症状が続くなど、運動障害が残ったことが疑われる場合は、後遺障害等級認定を申請しましょう。
そのためにも、病院で検査を受けて後遺障害診断書を作成してもらう必要があります。
今回は、関節の可動域制限を除く、他の運動障害についてお話しします。

病院での治療について

医師が症状固定を診断した後も症状が残るようなら、病院で適切なリハビリ治療を受けるとともに、下記の検査を受けましょう。
なお、症状のある部位によって、必要な検査が異なることもあるので医師の指示に従ってください。

  • X線やCTによる画像検査
  • 可動域検査

運動障害になる可能性がある部位と原因

関節の可動域制限以外の部位で運動障害が残る可能性のある身体の部位は、「脊柱」、「目(眼球)」、「目(まぶた)」の3箇所に分けられます。

交通事故で負った怪我により神経や筋肉が傷ついたり、骨が変形したりすることによって、眼球の運動やまぶたの開閉、脊柱の可動域に不都合が生じ、運動障害が発生します。

脊柱

脊柱の運動障害は、程度に応じて下記の2等級に分類できます。
なお、脊柱の複数の箇所に運動障害が認められる場合、最も程度が重い部分を対象として後遺障害等級を認定します。

後遺障害等級 障害の程度
6級5号 脊柱に著しい運動障害を残すもの
8級2号 脊柱に運動障害を残すもの

こうした運動障害は、主に脊柱の骨折や、骨折後の治療(脊椎固定術など)が原因で発生します。
また、脊柱には多くの神経が通っているため、運動障害が残る場合には神経症状も併発しているケースが多いです。

後遺障害等級6級5号

6級5号に該当する「脊柱の著しい運動障害」とは、下記のいずれかが原因で、頚部および胸腰部の関節が完全に強直※しているか、それに近い状態にあることをいいます。
※強直とは、関節を完全に曲げ伸ばしできなくなるか、主要運動の可動域が平均の10%程度以下に制限されている状態を指します。

①X線写真などで確認できる、頚椎および胸腰椎それぞれの圧迫骨折、破裂骨折、または脱臼 ②頚椎および胸腰椎それぞれに行われた脊椎固定術
③項背腰部軟部組織の明らかな器質的変化

後遺障害等級8級2号

8級2号に該当する「脊柱の運動障害」とは、次のどちらかにあてはまるものをいいます。

下記のいずれかが原因で、頚部および胸腰部の可動域が平均の2分の1以下に制限されている状態

  • X線写真などで確認できる、頚椎および胸腰椎それぞれの圧迫骨折、破裂骨折、または脱臼
  • 頚椎および胸腰椎それぞれに行われた脊椎固定術
  • 項背腰部軟部組織の明らかな器質的変化

頭蓋から上位頚椎の間の可動域が明らかに異常な状態

目(眼球)

交通事故によって、眼球を正常な位置に保っている6本の筋肉のどれかに麻痺などが起こると、眼球を思うように動かせなくなり、運動障害が発生します。 目(眼球)に起こる運動障害は、一般的に「斜視」と呼ばれます。

目(眼球)の運動障害は、下記の2等級に分類できます。

後遺障害等級 障害の程度
11級1号 両目の眼球に著しい運動障害を残すもの
12級1号 1眼の眼球に著しい運動障害を残すもの

「眼球の著しい運動障害」とは、眼球の注視野が2分の1以下に狭まってしまった状態をいいます。
注視野とは、頭を固定して眼球を動かしたときに直視できる範囲です。注視野の広さの平均は、片目で見たときには各方面について約50度、両目で見たときには各方面について約45度とされています。

目(まぶた)

交通事故によってまぶたを怪我したり、神経の麻痺が起こったりした場合、まぶたの開閉やまばたきに不都合が生じる運動障害が残る可能性があります。

目(まぶた)の運動障害には、下記の2等級があります。

後遺障害等級 障害の程度
11級2号 両目のまぶたに著しい運動障害を残すもの
12級2号 1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

「まぶたの著しい運動障害」とは、

  • まぶたを閉じたとき:まぶたで角膜を完全に覆うことができない状態
  • まぶたを開いたとき:まぶたが完全に瞳孔を覆ってしまう状態

を指します。

運動障害の後遺障害慰謝料について

運動障害が残った場合、認定された後遺障害等級に応じて後遺障害慰謝料を請求できます。
等級ごとに認められる慰謝料の相場は、下表のとおりです。

後遺障害等級 自賠責基準 弁護士基準
6級5号 512万円 1180万円
8級2号 331万円 830万円
11級1号 136万円 420万円
11級2号 136万円 420万円
12級1号 94万円 290万円
12級2号 94万円 290万円

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後遺障害に関する解決事例

脊柱の運動障害として8級2号が認められた解決事例

本事例は、依頼者が車両運転中に相手方車両に衝突され、以下の怪我を負い、約1年間の入通院治療が必要になった事例です。

  • 胸椎破裂骨折
  • 多発肋骨骨折など

治療終了後も、背部痛・胸腰椎部の可動域制限といった後遺症が残っていたため、適切な等級認定を受けたいと望まれ、弁護士法人ALGにご依頼くださいました。

受任後、依頼者からこれまでの治療経過の細かい聴き取りを行いました。
そのうえで作成済の後遺障害診断書を精査したところ、等級認定を獲得するためには十分とは言えない後遺障害診断書となっていました。

そこで、まず、依頼者に対して胸腰椎部の可動域を測定する正しい方法などをレクチャーしました。
担当医に相談してきちんと可動域を測定してもらったうえで、その結果を後遺障害診断書に追記してもらうよう助言しました。
その結果、想定どおり、脊柱の運動障害について8級2号の等級認定が得られました。

この結果を受け、弁護士基準に照らして算出した賠償金額を提示のうえ相手方と交渉したところ、約4250万円の賠償金を支払ってもらう内容の示談を成立させることができました。等級認定の通知を受けてから約1ヶ月で解決でき、依頼者にも大変ご満足いただけた事例です。

腰椎圧迫骨折の後遺障害等級認定と過失割合の修正に成功した解決事例

続いて、横断歩道ではない箇所を歩いて道路を横断していた依頼者が、相手方車両に衝突され、腰椎圧迫骨折の怪我を負った事例をご紹介します。依頼者は約6ヶ月間の入通院治療を受けましたが、腰背部に痛みなどの症状が残ってしまいました。

依頼者は、事故後に退職して収入が途絶えていたため、経済的に厳しい状況でした。そこで、弊所が主導で後遺障害等級認定申請を行うことで、取り急ぎ自賠責保険金を回収することにしました。
申請の結果、依頼者には後遺障害等級11級7号が認定され、自賠責保険金として331万円を回収することができました。

その後、相手方から賠償案が提示されましたが、逸失利益や過失割合について依頼者に不利な内容が含まれていました。そこで弊所は、離職票などの客観的な資料を集めたうえで、法的な根拠をもって主張を重ねたところ、当初の提示額から約420万円増額した約758万円を支払ってもらう内容で示談を成立させることに成功しました。

運動障害の後遺障害が残ってしまったらまずは弁護士にご相談ください

運動障害をはじめ後遺障害が残ってしまった場合には、賠償金として慰謝料を請求することができます。しかし、適正な慰謝料を受け取るためには、症状に見合った適切な後遺障害等級の認定を受ける必要があります。
後遺障害等級認定では、後遺症の程度や治療経過などについて医師が記載した、後遺障害診断書の内容が特に重視されます。そこで、医師に正しい後遺障害診断書を作成してもらうためにも、交通事故問題に精通した弁護士にアドバイスを受けることをおすすめします。
その際には、医療分野にも特化した弁護士を選びましょう。後遺障害等級認定には医療に関する知識も欠かせないからです。

弁護士に相談・依頼するメリットは、後遺障害診断書の作成に関するアドバイスをもらえること以外にもたくさんあります。
運動障害の後遺障害が残ったことが疑われる場合には、まずは弁護士にご相談ください。

夫婦の話し合いでは離婚について合意できない場合は、一般的に、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、調停委員を間に挟んで改めて話し合いをすることになります。
離婚調停は主に調停委員が進行させます。その際、調停委員は夫婦にいくつか質問をして、調停の進行に必要な情報を聴き取ります。

では、具体的にどのような質問をされるのでしょうか?
ここでは、離婚調停の申立てを検討されている方や実際に期日を間近に控えている方へ向けて、離婚調停で質問されることが多い事項について解説します。

申立人が離婚調停で聞かれること

まず、離婚調停を申し立てた人が聞かれる事柄を説明します。次項以下をご覧ください。

結婚した経緯

離婚調停を行うことになった理由や過程を把握するため、結婚した経緯については特によく聞かれます。
具体的には、どのようにして夫婦が知り合ったのか、元々の関係性や出会い・結婚に至ったきっかけなど、結婚するまでの一連の経緯を説明することになります。

なお、あくまで離婚へ向けた話し合いに必要な事情を聴き取るための質問なので、それまでの思い出を長く語る必要はありません。

離婚を決意した理由

離婚調停の核心となる、“離婚を決意した理由”も必ず聞かれます。
これは離婚調停の申立書にも記載しておく事項ですが、夫婦間の問題を解決するために、今回の離婚調停をどのように進めていくべきか、調停委員が判断する際にかなり重要視するポイントとなります。そのため、詳しい聴き取りが行われることが多いです。

答えるときは、冷静に、要点を押さえて話すことを心がけ、事情をよく理解してもらえるように努めましょう。

現在の夫婦関係の状況について

夫婦が同居中なのか、既に別居しているのか、生活費は誰がどのように負担しているのかなど、現在夫婦が送っている具体的な生活の状況についても聞かれます。
このときに大切なのは、要点を押さえたうえで、嘘をつくことなく、事実をそのまま伝えることです。恥ずかしいからといって嘘をつくと、その後の離婚調停が見当違いな方向に向かってしまいかねませんし、嘘がばれた時に調停委員に悪い印象を与えることになります。

なお、過去に別居していたものの現在は同居しているといった事情がある場合なども、伝え忘れないように注意しましょう。

子供に関すること

子供に関する様々なことも調停で聞かれます。子供が未成年である場合は、どちらが親権者となるかを決めなければなりませんし、“親権”や“面会交流”、“養育費”などの子供に関する考えを聞かれる可能性も高いでしょう。
特に離婚後の親権について争いがあるときは、現在子供の面倒を、誰が、どのようにみているのか、養育費はどちらがどれだけ負担しているのか、これまで夫婦それぞれがどのように子育てに関わってきたかといった詳しい事情を細かく質問されることになると考えられます。

夫婦関係が修復できる可能性について

離婚調停では、夫婦の関係を修復できる可能性についても質問されることがあります。離婚調停はあくまで夫婦の関係を調整する話し合いであって、必ずしも離婚だけを前提に進めるわけではないので、調停委員は夫婦双方の意向を確認する必要があるからです。

この質問への回答によっては、離婚を望む感情は一時のものだと判断されてしまい、夫婦関係を修復する方向で離婚調停を進められてしまう可能性があるので注意しましょう。
本当に離婚したいと考えているのであれば、“夫婦関係を修復しようとする努力はしたものの、これ以上結婚生活を続けることはできないと思った”ことをはっきりと伝え、離婚に対する強い決意を見せることが大切です。

離婚条件について(養育費、財産分与、慰謝料)

離婚調停では、離婚をするかどうかだけではなく、離婚に伴う様々な条件についても話し合って決めることが可能です。
特にお金に関わる離婚条件は揉めることが多いので、調停委員からも、養育費や財産分与、慰謝料といった離婚に伴う条件に関する考えを尋ねられることが多いです。

なお、相手方に請求することを考えている場合は、具体的にいくら請求したいのか、どのような請求の根拠があるのかをはっきり説明できるようにしておく必要があります。

離婚後の生活について

離婚後の生活設計についてもよく質問されます。
例えば、専業主婦(主夫)の方の場合には、離婚後どこに住むのか、どのような仕事で生計を立てていくのかといった質問をされることが予想できます。

離婚後の生活についてしっかりと考え、準備していることを伝えられれば、真剣に離婚を望んでいることを調停委員に印象づけられるので、その後の調停が有利に進む可能性があります。

相手方が聞かれること

離婚調停を申し立てられた相手は、まずは「離婚に応じる気があるかどうか」が聞かれます。
相手方が離婚に応じる気はないと答えた場合、結婚生活を続けたい理由などを聞かれる可能性が高いでしょう。また、離婚に応じない意思が固く、話し合いを行う余地がなければ、その時点で離婚調停は不成立となります。

一方、相手方に離婚に応じる気があれば、主に離婚の条件を中心に話し合いが進むことになるので、相手方が希望する離婚条件に関する質問が行われます。

1回あたりの所要時間の目安と調停の流れ

一般的に、離婚調停は何回か期日を設けて進められます。期日1回あたりにかかる時間の目安は、2時間程度です。

離婚調停は、調停委員が待機している調停室に夫婦が交互に入り、調停委員の進行に従って相手方に対する主張や反論を行うことを繰り返します。そのため、基本的に当事者が顔を合わせることはありません。
なお、一方の当事者が調停室で調停委員と話す時間は1回につき大体30分程度で、これをそれぞれが2回ずつ行うのが通常です。

また、一方が調停室に入っている時間、もう一方は裁判所内の待合室で待機します。短時間であれば待合室から出ても問題ありませんが、ある程度の時間待合室を離れる場合は、裁判所の担当職員に伝えてからにするべきでしょう。

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離婚調停で落ち着いて答えるための事前準備

余裕をもって到着できるよう、裁判所へのアクセスを確認

落ち着いて離婚調停に臨むためにも、開始時刻ぎりぎりに到着するようなことは避けるべきです。
また、裁判所によっては手荷物検査を実施しているところもあります。時間に余裕をもって到着できるよう、事前に裁判所の最寄り駅やルートなど、アクセス方法をよく確認しておくことが大切です。

聞かれる内容を予想し、話す内容をまとめる

調停委員からの質問や、離婚調停でポイントとなる論点はだいたい予想できるので、事前に回答の中身や話す内容をまとめておくことをおすすめします。

相手の出方を予想し、対処法を考えておく

直接話し合うことはないものの、離婚調停は、相手方配偶者と自分の意見を調整して合意を目指す場です。したがって、離婚調停を円滑に進めるためにも、相手の出方や反論を予想し、自分がどう対応するかをシミュレーションしておくことが重要です。
また、相手の出方などを予想するのと同時に、最終的にどういった条件で折り合いをつけられそうか目安をつけておくことで、離婚調停を乗り切る道筋が見えてくる可能性があります。

調停委員からの質問に答える際の注意点

離婚調停は、調停委員が進行しますので、調停委員に悪い印象を与えると不利な立場になってしまうおそれがあります。
常識的に接していれば不利になることはありませんが、できれば良い印象を与えたいものです。そのためにも、調停委員との質疑応答の際には、次項以下で挙げるようなポイントに注意する必要があります。

落ち着いて端的に話しましょう

離婚調停に発展している以上、相手に対して少なからず不満を感じている場合が多いでしょう。しかし、相手に対するマイナスの感情を爆発させてしまうと、調停委員の心証を損なって不利な立場になりかねません。
感情的になりすぎないように落ち着いて、離婚調停を解決するために必要な事実や要望を簡潔に伝えるように努めましょう。

調停委員との価値観の違いに注意

調停委員といっても違う人生を送ってきた人ですし、ご自身と世代が違う場合も少なくありませんから、価値観が違ったり意見が合わなかったりすることがあって当然です。
しかし、調停委員にこちらの訴えを理解してもらい、味方になってもらうに越したことはありません。価値観や意見の合わない人にも理解してもらいやすい主張の仕方を考えるようにしましょう。

嘘はつかず誠実に答える

離婚という夫婦間の問題の話し合いに関わる以上、調停委員からプライベートに切り込む質問をされることもあります。
しかし、恥ずかしいから、自分に不利な内容だからといって嘘をつくことは避けましょう。後になって嘘をついたことが発覚した時に、調停委員の心証が悪くなってしまうからです。

聞かれていないことを自ら話さない

離婚調停では、聞かれたことだけに答えるようにしましょう。
相手に対する不満や愚痴などを話したくなるお気持ちはわかりますが、聞かれていないことまで話すと、話が脱線してかえって主張が伝わりにくくなったり、調停の進行を妨げてしまい調停委員に悪い印象を与えてしまったりする可能性があるからです。

長文の陳述書は書かない

陳述書は、主張やその根拠が伝わりやすいように簡潔にはっきりと書くことが大切です。したがって、必要以上に長文にするべきではありません。
陳述書があまりに長文だと、何を一番に主張したいのかがわかりにくくなり、調停委員にこちらの意見をきちんと伝えられない可能性があります。また、陳述書は基本的に相手に開示されるので、相手に対する不平や不満を書きすぎるとさらなる感情的な対立を招くことになり、解決までの期間が長引いてしまうリスクもあります。

離婚条件にこだわり過ぎない

離婚条件にこだわりすぎると、うまい落とし所を見つけられず、離婚が成立するまでに時間がかかってしまったり、より時間と費用がかかる離婚裁判に発展してしまったりしかねません。
離婚調停という話し合いによる解決を目指す以上、相手の主張や提案に妥協しすぎる必要はありませんが、ある程度の譲歩は必要です。

そこで、自分がどのような条件に対してどこまで妥協できるのかを掘り下げ、どうしても譲れない条件が何なのか、あらかじめ確認しておきましょう。

調停で話し合ったことはメモしておく

離婚調停は、基本的に1回の期日で成立することはないので、次回期日へ向けた準備が必要になります。そのためにも、その期日に話し合った内容をメモしておくことは大切です。
また、調停委員から、次回期日までに検討しておくべき事項や、用意しておくべき書類・資料などを指示されるので、これらについても忘れないようにメモを取っておくと良いでしょう。

離婚調停2回目以降に聞かれること

2回目以降の離婚調停の期日では、前回の期日で話し合った内容を踏まえて、調停委員がアドバイスや解決案を提示するので、当事者はそれに対する意見を述べていくことになります。
調停委員を介して当事者双方がお互いの意見を伝え合ったら、調停委員はさらに意見の調整を図り、合意が成立する見込みがあれば、また次回期日で話し合いが行われます。
3回目以降の期日も、基本的に同じ流れで進められます。

期日を繰り返していき、調停委員が「これ以上続けても合意が成立する見込みはない」と判断した段階で、離婚調停は不成立となり終了します。

離婚調停のお悩みは弁護士にご相談ください

離婚調停で調停委員から聞かれることは大体決まっています。調停を有利に進めるためにも、事前に自分の主張や要望をまとめておき、しっかり伝えられるように準備しておくことが重要です。
とはいえ、実際にどのように話せば調停委員や相手を納得させられるのか、なかなかわからないのではないでしょうか?誰かにアドバイスしてほしいものの、友人や親戚にはプライベートな事情を話したくないという方もいらっしゃるでしょう。

このように離婚調停に関してお悩みのある方は、弁護士に相談されてはいかがでしょうか。
質問への答え方や自分の意見の伝え方について、具体的なアドバイスをさせていただきます。また、弁護士は調停に同席し、ご依頼者様に代わって主張を伝えることもできます。
弁護士に相談・依頼することでいろいろなメリットを得られますので、ぜひ弁護士への相談をご検討ください。

日本では、夫婦の合意があれば離婚することができます。 しかし、配偶者が離婚に同意してくれず、また配偶者の不貞行為やDVといった法律上の離婚原因もない場合には、粘り強く交渉を続けるか、裁判所に“婚姻関係が破綻していること”を認めてもらって裁判で離婚を成立させる必要があります。

婚姻関係が破綻しているかどうかは様々な要素を考慮して判断されますが、特に「別居期間」が重視されます。
ここでは、どれくらいの別居期間があれば離婚が認められやすくなるのかなど、離婚するにあたって必要とされる別居期間の目安に焦点を当てて解説していきます。

婚姻期間の破綻が認められる別居期間の目安は3~5年

一般的に、別居期間が3~5年程度あると“婚姻関係が破綻している”と判断される傾向にあります。
「婚姻関係の破綻」は、法律上の離婚原因のひとつである「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当します。
そして、こうした法律上の離婚原因があれば、夫婦双方が離婚に合意していなくとも裁判で離婚を成立させることができます。

したがって、別居の理由や同居していた期間などにもよりますが、3~5年ほど別居が続いていれば、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」があることを主張して裁判で離婚を成立させられる可能性があります

相手が有責配偶者であれば、より短い別居期間で離婚できる可能性も

別居期間が3年未満でも、離婚を拒んでいる相手が有責配偶者である場合には、裁判で離婚が成立する可能性があります。

有責配偶者とは、離婚原因を作った側の配偶者を指します。イメージとしては民法で定められている、不貞行為や悪意の遺棄、またはDVを行い離婚のきっかけを作った配偶者のことです。
相手が有責配偶者の場合、既に法律上の離婚原因があるので、裁判でしっかり主張・立証できれば別居の有無や期間に関係なく裁判で離婚が認められるでしょう。

また、不貞行為の決定的な証拠を掴みきれないなど、裁判で相手が有責配偶者であることを立証するのが難しいケースもあります。
しかし、例えば、配偶者が家庭を顧みずに異性と親密な交際をしていたことが原因で別居したなど、相手に離婚に関する責任があると判断できる事情があれば、別居期間が短くとも「婚姻関係の破綻」を理由に離婚を成立させられる可能性があります。

実態としては別居期間1年未満の離婚が多い

そもそも夫婦の合意があれば、その日のうちに離婚を成立させることができます。つまり、離婚するために必ずしも別居する必要はありませんし、別居期間が短くとも問題ありません。
厚生労働省の「離婚に関する統計(平成21年度)」を見ても、離婚した夫婦の82.5%が別居してから1年未満に離婚しています。

それにもかかわらず別居期間が3~5年ほど続くのは、

  • 相手が離婚に同意してくれない
  • 相手が話し合いを拒み続けている
  • 離婚条件についてなかなか合意できない

など、そもそも話し合いができなかったり、話し合いがこじれてしまったりして決着がつかないケースです。

離婚に関する話し合いがスムーズに進むようなら、無理して別居期間を引き延ばす必要はありません。

離婚までの別居期間が長期に及ぶケース

ただの夫婦喧嘩の場合(性格の不一致)

性格の不一致からくる夫婦喧嘩の場合には、3~5年程度の別居期間が目安となります。
繰り返されるケースや、一度きりのとんでもない大きいケースなど、夫婦喧嘩の程度の差こそありますが、「婚姻関係の破綻」を認めてもらうには、相応期間の別居が必要です。
性格の不一致からくる夫婦喧嘩は、どちらかに原因があるといった有責性がないためです。

ただし、婚姻関係が破綻しているかどうかは、単純な別居期間だけではなくそれぞれの夫婦の状況も考慮します。場合によっては、必要とされる別居期間が異なることもあります。

自身が有責配偶者の場合

有責配偶者から離婚を切り出す場合には、婚姻関係の破綻が認められるために大体目安として10年程度別居期間が必要とされています。
なぜ通常よりも長い別居期間が求められるのかというと、別居や離婚の原因を作り出した有責配偶者からの離婚請求が安易に認められるとなると、もう一方の配偶者にとってあまりに酷だからです。

しかし、別居期間が相当長期間に及んでいて夫婦間の交流もまったくなく、明らかに婚姻関係が破綻していると判断できる場合は、例外的に有責配偶者からの離婚請求が認められる可能性があります。

そもそも相手が離婚に同意していない

相手が離婚に同意してくれず、夫婦の話し合いも進まない場合は、「離婚調停」や「離婚裁判」といった裁判所の手続きで離婚を目指すことになります。
なお、離婚調停や離婚裁判を申し立てる際に、必ず別居しなければならないわけではありません。しかし、別居しているという客観的な事実がある方が、離婚に対する強い意思を持っていることが調停委員や裁判官に伝わりやすいでしょう。

また、どのような手続きを利用するのか、話し合いはどこまで進んでいるのか、具体的にどのような点に合意できないのかといった個別の状況によって、手続きの終了までにかかる期間は異なります。一般的に、

  • 離婚調停が終わるまで:4~6ヶ月程度
  • 離婚裁判が終わるまで:1年以上

がかかると想定しておいた方が良いでしょう。

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別居は相手の同意を得てから

別居するときは、基本的に相手の同意を得てからにしましょう
夫婦には同居する義務があるので、勝手に家を出ていくと同居義務に違反してしまう恐れがあるため、できれば別居するまでに話し合いをして同意を得るのがよいでしょう。

相手からDVやモラハラを受けている、子供が虐待されているなど、自分や子供の心身が危険にさらされているようなケースでなければ、

  • 別居する理由(離婚の前段階なのか、お互いに冷却期間を置いてやり直すためなのかなど)
  • 生活費の負担方法や割合
  • どちらが子供の世話をするのか

などについて話し合い、お互いに合意したうえで別居を始めましょう。

相手が聞く耳をもってくれないような場合は、メールや手紙など、後に残る方法で気持ちを伝えるようにしましょう。

別居期間が長い場合、親権はどうなる?

夫婦が別居している場合、子供と同居して実際に面倒をみている親の方が親権を獲得しやすい傾向にあります。裁判所で親権について争う場合、裁判所は、「これまで夫婦のどちらがより子供の面倒をみてきたか」という監護実績を重視して判断を行うことが多いからです。

また、実際に子供が置かれている状況や子供の年齢、性別、離婚後に想定される監護体制などにもよりますが、一般的に裁判所は「子供の生活環境はできるだけそのまま維持するべき」と考えます。この点でも、子供と同居している親の方が親権を獲得しやすいといえます。

しかし、勝手に子供を連れて別居してしまうと、“違法な子の連れ去り”と評価されて逆に親権争いで不利になってしまう可能性があります。
子供を虐待から守るためなど、合理的な理由がない限りは、どちらが子供と暮らすかはきちんと夫婦で話し合ったうえで決めるべきでしょう。

単身赴任は別居期間に含まれる?

単身赴任期間は、基本的に別居期間に含まれません。
仕事の都合上にすぎず、婚姻関係が悪化したことを原因とする、あるいは離婚を前提とする別居ではないからです。

ただし、下記のようなケースでは単身赴任期間中も別居期間に含まれる可能性があります。

  • 妻が夫との同居を拒否し、夫の転勤先へ転居しなかったため単身赴任になったケース
  • 離婚調停など、離婚について話し合っている最中に単身赴任が始まったケース
  • 単身赴任期間中に離婚についての話し合いを始めたケース

離婚に必要な別居期間を知りたい方は弁護士にご相談ください

相手が離婚に同意してくれず、法律上の離婚原因もない場合、長期間の別居を理由に離婚するためには一般的に3~5年程度の別居期間が必要です。
しかし、むやみに別居を始めると離婚において不利な立場になってしまう場合がありますので、専門家である弁護士に事前に相談して入念に準備をしてから別居することをおすすめします。

離婚問題に強い弁護士にご相談・ご依頼いただければ、配偶者の方への説明の仕方や話し合うべき事項、話し合いの進め方などに対するアドバイスをもらえるだけでなく、離婚に関連する各種手続きの全般的なサポートも受けることができます。
ご相談者様にとって最良の結果となるよう、全力でサポートさせていただきますので、ぜひ弁護士への相談をご検討ください。

一般的に知られている離婚の形式は、協議離婚・調停離婚・審判離婚・裁判離婚の4種類でしょう。
このうち協議離婚と調停離婚は、話し合いによって離婚問題の解決を目指すものですが、審判離婚と裁判離婚は、問題に対する最終的な判断を裁判所に委ねるものです。

では、裁判で離婚をするには、具体的にどのような流れで進むのでしょうか。
今回は、離婚裁判の流れや必要な費用・時間、メリット・デメリットといった概要について、詳しく解説します。

離婚裁判とは

離婚裁判とは、離婚の可否やその条件に関する争いの解決を求めて行う裁判のことです。
離婚するかしないかという問題はもちろん、財産分与や年金分割、親権、養育費、面会交流といった離婚条件をどう取り決めるかといった問題についても、裁判所に判断してもらうことができます。

しかし、離婚裁判については「調停前置主義」という考え方がとられているので、裁判所に離婚裁判を申し立てる前に、まずは離婚調停を行わなければなりません。つまり、離婚調停を行っても問題を解決できず、不成立になって初めて家庭裁判所に訴えを起こせるようになるということです。

離婚裁判以外の離婚方法

離婚裁判の結果、成立する離婚が「裁判離婚」です。
裁判離婚以外にも、日本では下記の形式の離婚が認められています。

  • 協議離婚・・・
    当事者である夫婦で話し合った末、離婚することに合意した場合に成立する離婚です。
    日本で行われる離婚のうちのほとんどを占めています。
  • 調停離婚・・・
    家庭裁判所の調停委員を介して夫婦で話し合い、離婚することに合意した場合に成立する離婚です。
    協議離婚の成立が難しいときに、夫婦の片方が家庭裁判所に離婚調停を申し立て、成立を目指します。
  • 審判離婚・・・
    家庭裁判所の離婚審判の結果、裁判所の判断によって成立する離婚です。
    離婚審判は、離婚すること自体には合意しているものの、細かい離婚条件に折り合いがつかず調停が不成立になったような場合に限って行われるので、実際に成立する件数は多くありません。

離婚裁判で争われること

離婚裁判では、主に下記に挙げるような問題について争われることが多いです。

離婚が認められるか否か

離婚裁判の主軸となる問題です。離婚が認められると、付帯請求をしていれば親権、養育費、財産分与などについても判断されます。

親権

離婚するにあたって、夫婦のどちらが子供の親権者になるのかを必ず決めなければなりません。夫婦両方が親権を希望する場合に、特に揉めやすい問題のひとつです。

慰謝料

夫婦の一方が不貞行為(不倫)やDVなどをして、もう一方に精神的な苦痛を与えた場合、賠償金として慰謝料を請求される可能性があります。支払義務の有無や金額を巡って争いになることが多いです。

財産分与

離婚の際、結婚している間に夫婦が協力して作り上げた財産を分け合う必要があります。共有財産の範囲や具体的な分与の割合・分け方について争いとなります。

年金分割

結婚している間に納付した年金の記録を一方に分け与えることを「年金分割」といいます。分割の可否や割合を巡って揉め事になることがあります。

養育費や面会交流

子供と別居している親には、子供が自立するまでにかかる費用(養育費)を支払う義務があります。また、子供の健全な成長のためにも、別居している親と子供が交流(面会交流)できるようにすることは重要です。
そのため、養育費や面会交流に関するルールを巡って争いになることが多いです。

裁判で離婚が認められる条件

離婚裁判では、民法770条で定める条件を満たしていることを証明できなければ、裁判所に離婚を認めてもらえません、この条件を「法定離婚事由」といいます。
法定離婚事由には、以下のようなものがあります。

①配偶者が不貞行為をした
②配偶者から悪意の遺棄をされた
③配偶者が3年以上生死不明である
④配偶者が強い精神病にかかり、回復の見込みがない
⑤その他、婚姻を継続し難い重大な事由がある

ただし、法定離婚事由があれば必ず離婚が認められるわけではありません。裁判所が“結婚を続けることが相当”だと判断する場合、離婚を認めないこともあります。

離婚裁判の流れ

離婚裁判は、下記のような流れで行われます。

①管轄の家庭裁判所に訴状を提出する
②家庭裁判所が第1回口頭弁論の期日を指定し、夫婦それぞれへ呼出状を送付する
③被告が反論を記載した答弁書を提出する
④第1回口頭弁論期日に、夫婦がそれぞれ主張や立証を行う
⑤第2回、第3回…と口頭弁論期日を繰り返す
⑥離婚を認めるかどうか、裁判所が判決を下す

離婚裁判にかかる費用について

離婚裁判にかかる費用は、おおまかに「離婚裁判自体にかかる費用」と「弁護士への依頼にかかる費用」の2種類に分けられます。

離婚裁判自体にかかる費用

  • 収入印紙代:1万3000円(離婚の成否だけの場合)
    ※他の請求も併せて行う場合、請求1件につき1200円の追加費用が発生します
  • 郵便切手代:6000~7000円前後(管轄の家庭裁判所によって異なります)

弁護士への依頼にかかる費用

  • 相談料:~1万円程度
  • 着手金:20万~50万円程度
  • 成功報酬30万~ (事案に応じて)
  • その他(裁判所への交通費、日当など):実費

費用はどちらが負担するのか

離婚裁判自体にかかる費用は、裁判を起こす段階では原告(裁判を起こす人)が負担します。
しかし、裁判所は判決の内容に応じて費用の負担割合を決めるので、最終的にどちらがどれだけ費用を負担することになるのかは判決が下るまでわかりません。
なお、原告の主張が全面的に認められた場合は、被告(裁判を起こされた人)が全額を負担することになります。

これに対して、弁護士への依頼にかかる費用は、基本的に依頼した人が全額を負担することになります。

離婚裁判に要する期間

離婚裁判は、一般的に1~2年程度で終了するケースが多いです。
ただし、争っている内容や状況によっては半年ほどで終了したり、逆に2年以上かかったりすることもあるので、一概にいうことはできません。

最短で終わらせるためにできること

離婚裁判が長引いても、結論が先延ばしになるだけで良いことはありません。短期間で終わらせられるように、次のポイントを押さえて裁判に臨むと良いでしょう。

和解することを視野に入れる

裁判官は、離婚裁判で聴き取った夫婦の主張や反論を踏まえて、和解案を提示してくることがあります。和解案に納得できるなら、受け入れることで裁判の長期化を防ぐことができます。

必要最小限の争点に絞る

離婚協議、離婚調停で合意できた点を事前に確認しておき、離婚裁判で争うポイントを最小限にしておくことで、裁判にかかる時間を短くすることができます。
また、必要な証拠や資料を事前に集めておくことも大切です。

離婚問題に強い弁護士に依頼する

離婚分野に精通している弁護士なら、裁判を有利に進めるためのアドバイスをしたり、依頼者に代わって裁判で主張・立証したりすることも可能です。
効率的かつ有利に裁判を進めるためにも、離婚問題に強い弁護士への依頼を検討すると良いでしょう。

長引くケース

次のようなケースでは、離婚裁判が長引く傾向にあります。

請求するものが多い(争点が多い)

離婚するかしないかだけを争うケースと比べて、財産分与や慰謝料といった離婚条件もまとめて争うケースは主張・立証すべきことが多いため、裁判に必要な時間もその分増えます。

事情が複雑である

例えば、妻が夫のDVを原因として離婚と慰謝料を請求している一方、夫は妻の不倫による慰謝料を請求しているものの、離婚に応じる意思はないような場合、裁判官が判断しなければならない事柄はかなり多くなってしまいます。
当事者が主張・立証する事柄も多くなるため、離婚裁判も長期化します。

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離婚裁判で認められる別居期間

一般的に、別居が3~5年程度続いていると、離婚が認められやすくなる傾向にあります。何も事情がないのに別居が相当期間続くことは常識的に考えにくく、婚姻関係が破綻していると判断されるためです。
また、単に「別居期間が長い」というのではなく、「同居期間と比較して長いといえるかどうか」も判断において重要です。
なお、離婚の原因が相手方にある場合は、別居期間が多少短くとも、婚姻関係が破綻したとして離婚が認められることもあります。

なお、外からは夫婦関係がうまくいっているように見える「家庭内別居」と、仕事の都合でやむを得ずする「単身赴任」は、「別居」とみなされない可能性が高いのでご注意ください。

離婚裁判の欠席について

当事者の一方が離婚裁判に欠席しても、手続きは進められます。そのため、欠席すると自分に不利な形で裁判が進んでしまう可能性があるので、なるべく日程を調整して出席できるように心がけましょう。

なお、被告(裁判による請求を受けた人)の場合、第1回口頭弁論期日に限って、「答弁書」を提出しておけば被告本人が出席のうえ意見を述べたとみなしてもらえます。これを「擬制陳述」といいます。
しかし、二回目以降は、「欠席した=争う意思がない」とみなされてしまう可能性があります。

原告(裁判を起こした人)も被告も、一度や二度の欠席で不利になることはありません。とはいえ、正当な理由のない欠席を繰り返すと、裁判官に悪い印象を与えて判決に影響が及ぶこともあるので気をつけましょう。

離婚裁判で負けた場合

離婚裁判で負けてしまったとしても、判決に不満がある場合は、判決後2週間以内に「控訴」することができます。
控訴とは、裁判の判決に不服を申し立て、より上級の裁判所の判断を求める手続きです。日本では三審制が取り入れられているので、控訴で負けた場合には最高裁判所に不服を申し立てることになります。

また、離婚の場合は、裁判に負けたからといって、二度と離婚裁判を提起できないというわけではありません。別居期間が継続して伸びてることを捉え、再度、離婚裁判を提起することは可能です。
裁判に勝つ可能性を高めるためにも、離婚問題に強い弁護士に相談し、主張・立証の方法を改善することをおすすめします。

離婚裁判のメリット、デメリット

メリット

離婚裁判は、裁判所が離婚を認めることで成立するので、「相手の同意がなくとも離婚することが可能」です。
また、裁判所の下す判決には法的な強制力があるので、「判決書を根拠に強制執行することが可能」になるというメリットもあります。

デメリット

離婚裁判で得られるメリットは大きい一方、デメリットもそれなりにあります。
まず、後で相手方に支払ってもらえる可能性はあるものの、離婚裁判には時間、費用、労力がかかるのはデメリットでしょう。
また、「不利な判決が下された場合に受けるダメージが大きい」こと、「有力な証拠がないと勝つのが難しい」ことといったデメリットもあります。
ただ、離婚することを後回しにしてズルズルいってしまうと、ご自身だけではなくお子様や親族などにとっても精神的ストレスになることが多々あるので、一歩でも前に進むためにも、弁護士に相談することをお勧めします。

離婚裁判についてQ&A

裁判の申立てを拒否することは可能なのでしょうか?

離婚裁判の申立てを拒否することはできません。面倒だから、離婚を拒否したいからといって裁判所の呼び出しを無視して裁判を欠席し続けていると、原告(裁判を起こした人)の主張どおりの判決が下ってしまう可能性があります。
したがって、離婚裁判を申し立てられてしまったら、自分の言い分を主張するためにも、裁判に出席する必要があります。そして、法定離婚事由など、原告が請求の根拠としている事実がないことを立証して、原告の主張を退ける判決を獲得しなければなりません。

他人が離婚裁判を傍聴することはできますか?

裁判が公正に行われるようにするため、離婚裁判を含めて、裁判は公開されるのが基本です。したがって、誰でも傍聴することができます。
しかし、ほとんどの離婚裁判では、初回の口頭弁論期日や尋問期日以外の手続きは「弁論準備手続」という非公開の場で行っています。
こうした非公開の手続きは、裁判所の許可がない限り第三者は傍聴できないので、実際に他人が離婚裁判を傍聴するのは難しいといえるでしょう。

配偶者が行方不明でも離婚裁判を行うことはできますか?

できます。 配偶者が行方不明の場合、「配偶者が3年以上生死不明」、「配偶者から悪意で遺棄された」、または「結婚生活を継続することが難しい重大な事由がある」といった法定離婚事由があると認められる可能性があります。また、行方不明になり連絡が取れないことをもって「婚姻を継続し難い重大な事由」と認められることもあるでしょう。その場合には、行方不明の配偶者を被告として離婚裁判を起こすことができます。
被告が行方不明の場合は、住所がわからないので、呼出状などの必要書類は「公示送達」することになります。具体的には、原告が離婚を希望する旨などを、裁判所の掲示板に掲示したり、官報に掲載したりします。
その後は被告が不在のまま裁判を行い、法定離婚事由があると認められれば、離婚を認める判決が下されます。

離婚裁判で敗訴した場合、すぐに調停を申し立てられますか?

離婚裁判で敗訴した直後に、離婚調停の申し立てをすることは可能です。
ただし、相手方が離婚裁判に勝訴しているため、話し合いをしたり、相手方の譲歩を引き出すことは難しいでしょう。
ただ、相手方も離婚の紛争に疲れている場合もあり、こちらが様々な譲歩をすることを前提に離婚調停で協議を行い、調停が成立することもあります。

離婚後すぐに再婚することはできますか?

すぐに再婚できるかどうかは、性別によって異なります。
まず、男性は離婚した翌日にでも再婚することが可能です。
一方、女性には「再婚禁止期間」が設けられているため、離婚した日から100日経過しなければ基本的に再婚できません。
なぜ女性にだけこのような決まりがあるのかというと、民法上、

  • 離婚後300日以内に生まれた子供は前の夫との子供
  • 再婚後200日より後に生まれた子供は再婚相手との子供

と推定されるからです。
万が一離婚後100日経過しないうちに再婚して子供が生まれた場合、子供の父親がどちらとの子供なのかを判別できなくなってしまう可能性があります。このような不都合を回避するため、女性は離婚後すぐに再婚することはできないとされています。

相手が離婚を拒否し続けたら裁判でも離婚することはできませんか?

どんな場合であっても、裁判所が「離婚を認める」と判断すれば、裁判離婚が成立します。
そもそも離婚裁判は、夫婦の話し合いでは問題を解決できないため、裁判所に解決を委ねる手続きです。相手が離婚を強く拒んでいたとしても、離婚が相当だと判断すれば、裁判所は離婚を認める判決を下します。
また、裁判所の判決には法的な強制力があるので、判決後に離婚を拒否することは当然できません。
役所での離婚手続きも、判決書があれば相手方の同意を必要とせず一方当事者のみで可能です。

離婚裁判を考えている場合は弁護士にご相談ください

離婚裁判のメリットは大きいですが、その分デメリットも多いという難点があります。しかし、弁護士に相談・依頼することで、離婚裁判のデメリットを少なくすることができます。

例えば、弁護士に訴状や証拠の準備を任せれば時間や労力を削減できるので、普段のお仕事や育児に専念していただけます。また、離婚裁判では、法的な主張と主張を裏づける証拠の提出が必要ですが、弁護士には法律の専門知識があります。また、交渉のプロでもあるので、裁判官にこちらの主張の正当性を印象づけて、有利な判決の獲得につなげることも期待できます。

離婚裁判を起こすことを検討されている方は、ぜひお気軽に弁護士にご相談ください。

「すぐにでも交通事故の損害賠償金を支払ってもらいたいのに、示談交渉がうまく進まず支払いの目途が立たない……」など、示談交渉に関するお悩みを抱えていらっしゃる方は少なくないでしょう。

では、なぜ交通事故の示談交渉はスムーズに進まなくなってしまうことがあるのでしょうか?また、示談交渉がスムーズに進まない場合、どのように対処すれば良いのでしょうか?

今回は、交通事故の示談交渉がうまく進まない原因とその対処法について解説します。

示談交渉が進まない原因

示談交渉が進まない原因は、主に次の2種類に分けられます。
「加害者本人に原因がある場合」と「保険会社に原因がある場合」です。
原因が違えば適切な対処法も変わってくるので、ご自身のケースはどちらなのかをしっかりと見極める必要があります。

そのためにも、次項以下では、示談交渉が進まない原因別の具体的なケースについて説明していきます。

加害者に資力がない場合

加害者が保険に加入していない場合、被害者は加害者と直接示談交渉をしなければなりませんし、損害賠償金も加害者本人から受け取ることになります。
しかし、お金のないところから取り立てることはできないので、加害者に損害賠償できるだけの資力がなければ、支払いを巡って争いになり、示談交渉がうまく進まなくなる可能性が高いでしょう。

ただし、このように加害者からの損害賠償が期待できない場合には、「政府保障事業」による補償を受けられることがあります。
「政府保障事業」とは、交通事故の被害者が保険会社や加害者からの補償を受けられないときに、最終手段として政府が損害をてん補してくれる制度です。なお、てん補してもらえる金額や限度額は、自賠責保険による補償と同等です。

加害者としての意識が低く賠償保険を利用してくれない場合

特に軽微な事故のケースで多いのですが、「交通事故を引き起こした加害者である」という認識が薄い加害者もいます。
このようなケースでは、そもそも加害者に示談する気がない、または自分が加害者として扱われることに抵抗を感じていることが多く、こちらから示談交渉の連絡をしても無視されたりして、交渉がスムーズに進まない場合があります。
また、対人保険や対物保険を利用すると保険の等級が下がり、保険料が高くなることを嫌って、保険を利用しない加害者もいます。このような場合には、話し合いが難航することが予想されます。

加害者との示談が進まない場合にできること

では、加害者との示談交渉がうまく進まない場合、どういった対処をすれば良いのでしょうか?
以下、加害者との示談交渉が進まない場合に行うことができる対処法について説明していきます。

連絡を無視される場合は内容証明郵便を送る

こちらからの連絡を何度も無視される場合は、「内容証明郵便」というサービスを利用して、損害賠償を請求する書面を送りましょう。

「内容証明郵便」とは、“誰が”、“誰に”、“いつ”、“どのような内容”の書面を送ったのかを郵便局 が証明してくれる、郵便の送付方法のことです。
内容証明郵便を利用すれば、損害賠償請求をした証拠が残るので、時効の成立によって損害賠償を請求する権利が消滅してしまうといった事態を防ぐことができます。また、加害者に心理的なプレッシャーを与えられるので、示談交渉の場につかせることができる可能性もあります。

ADRを利用する

「ADR(裁判外紛争解決手続)」を利用して解決を目指すのもひとつの手です。
「ADR」とは、裁判所の手続きを利用せずに、話し合いによって紛争の解決を図る方法をいいます。ADRの種類には、あっ旋・調停、仲裁がありますが、どれも裁判所の手続きと比べて簡単に利用でき、短期間で決着するというメリットがあります。

交通事故の場合は、「交通事故紛争処理センター」や「日弁連交通事故相談センター」などの交通事故問題に強いADR機関の利用を検討することをおすすめします。

裁判(訴訟)を起こす

内容証明郵便を送付し、ADRを利用しても問題が解決しない場合は、最終手段として裁判(訴訟)を起こすことを検討しても良いでしょう。
裁判は、裁判官の判断(判決)に問題の解決を委ねる、裁判所の手続きです。したがって、当事者の話し合いが円滑に進んでいなくとも、裁判官が判断を下すことによって結論が出て決着します。
ただし、裁判官がこちらに有利な判断をしてくれるとは限らないので、他の手続きと比べてリスクが高く、費用もかさむといったデメリットがあります。

しかし、請求する損害賠償金が60万円以下の場合には、より簡単かつ迅速に決着する「少額訴訟」という手続きを選択できるので、デメリットは少なくなります。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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相手方保険会社と連絡が取れない・担当者の態度が悪い場合

相手方保険会社とスムーズに連絡が取れなかったり、担当者の態度が悪かったりするなど、相手方保険会社に原因があって示談交渉が思うように進まないこともあります。

例えば、

  • こちらから連絡を入れても担当者から折り返しがない
  • 仕事をしている平日の日中しか担当者と連絡がとれない
  • 治療中なのに無理やり治療費を打ち切ろうとしてくる
  • 事故状況などについて、こちらの言い分をまったく聞いてくれない

といった場合には、相手方保険会社に対する不信感が募るなどして、円滑な話し合いが難しくなってしまうでしょう。

過失割合や示談金額で揉めて進まない場合

最終的な示談金額(損害賠償金額)はもちろん、示談金額に大きく影響する過失割合について揉めていて交渉が進まないというケースも多いです。

例えば、過失割合は事故の態様によっておおまかな目安が決まっていますが、個別の事故状況に応じて細かく修正され、最終的な割合が決定します。しかし、事故の状況に関する被害者・加害者の意見が食い違って話が平行線になってしまえば、いつまでたっても過失割合が決まらず、示談交渉も止まってしまいます。

弁護士への依頼で態度が変わる場合も

交通事故の被害者の方は、交通事故や法律に詳しくない方がほとんどなので、加害者や加害者側の保険会社が強気な対応をしてくることも少なくありません。
しかし、法律の専門家である弁護士には小手先のごまかしは効かないので、弁護士に依頼することで加害者側の態度が改まる可能性があります。
例えば、保険会社にとって厄介なことに、弁護士は裁判を行うことも視野に入れて手続きを進めるため、弁護士に依頼することで、裁判を嫌う保険会社が早期かつ適切な内容で示談に応じる可能性が高まります。

示談が進まずお困りの方は弁護士にご相談ください

今回ご説明したとおり、示談が思うように進まない原因には様々なものがあります。しかし、弁護士は、交通事故問題を解決するうえで欠かせない法律に関する知識を備えています。そのため、いずれの原因で示談交渉が進まない場合でも、弁護士に相談・依頼することで解決への道筋が見えてくる可能性が高いといえます。

その際には、特に交通事故問題を取り扱った実績が豊富な弁護士を選ぶことをおすすめします。弁護士にはそれぞれ得意分野があるので、離婚分野や相続分野に詳しい弁護士より、交通事故分野に精通している弁護士に相談・依頼する方が、よりしっかりとしたサポートを受けられるからです。

示談交渉が進まずお困りの方は、ぜひ交通事故問題に詳しい弁護士に相談・依頼されることをご検討ください。

休業損害とは、交通事故による怪我で仕事を休まざるを得ず、収入が減ってしまった分を「損害」として補償してくれるものです。
ところで、“怪我の治療のために休む”には、欠勤のほかに有給休暇を使用する方もいらっしゃいます。この場合、確かに給料は支払われますので減収はありませんが、本来使用する予定のなかった有給休暇を消化しなければならなくなってしまったのですから、何かしらの補償は受けたいところです。この補償に当てられるのが休業損害となります。
今回は、有給休暇を使用した場合の休業損害の取り扱いについて解説していきます。

有給休暇を使っても休業損害は支払われる

交通事故による怪我の通院のため、有給休暇を使って仕事を休んだ場合でも、休業損害は支払われます。なぜなら、交通事故がなければ自由に有給休暇を取得することができたと考えられるので、有給休暇を使ったこと自体が「損害」となるからです。

そもそも有給休暇は、労働者が自由に時期を決めて使うことができる権利です。しかし、交通事故が原因で使ってしまうと、本来自由に使えたはずの権利が使えなくなってしまいます。
つまり、交通事故による怪我の治療などのために有給休暇を使うこと自体が、交通事故による「損害」ということができるので、休業損害の請求が可能となります。

半日だけ有給休暇を使った場合も休業損害は請求可能

有給休暇は、午前休、午後休といった半日単位でも取得することができます。
怪我の治療のため半日だけ有給を使って通院したような場合も、事故で怪我をしなければ使用することのなかった半休であり、「損害」として扱われます。そのため、休業損害として賠償請求できます。

ただし、損害と認められるのはあくまで有給休暇を使った半日だけなので、休業損害は半日分しか請求できない点に注意しましょう。

休業損害が認められないケース

休暇日に休業損害が認められるのは、交通事故による治療のために有給休暇を使った場合だけです。
例えば、夏季休暇や冬期休暇、忌引休暇などを利用して怪我の治療をした場合でも、休業損害は認められません。なぜなら、これらの休暇は、有給休暇とは違って使用時期や使用理由が制限されているので、交通事故を原因に取得したものとはいえないからです。

また、代休を使って交通事故による治療をしても問題ありませんが、休業損害は請求できません。代休は休日に働いた代わりに与えられる「休日」なので、代休を使って治療すると、そもそも給料の発生しない休日に治療したことになるからです。

有給休暇を使った場合に支払われる休業損害はいくら?

有給休暇を使った場合でも、1日あたりに支払われる休業損害の金額は変わりません。
利用する算定基準によって休業損害の金額や計算方法は異なりますが、具体的には下記のようになります。
(なお、任意保険基準は、各保険会社が独自に設定しており公表されていないため、ここでは説明を省略しています。)

・自賠責基準
「1日あたり6100円×休業日数」
ただし、1日あたりの損害額が6100円を超えており、その金額を証明できる場合は、1万9000円を上限にその金額を損害額として計算できます。

・弁護士基準
「1日あたりの基礎収入×休業日数」

ここで、具体例を使って実際に計算してみましょう。
【例:事故前3ヶ月間の給料90万円、休業日数25日(うち有給休暇10日)】のケース

・自賠責基準
「6100円×休業日数25日=15万2500円

・弁護士基準
事故前3ヶ月間の給料が90万円なので、その間に労働した日数が1ヶ月あたり22日だと仮定すると、1日あたりの基礎収入は、
「90万円÷22日×3ヶ月=1万3636円(切捨)」
となります。
したがって、休業損害は、
「1万3636円×25日=34万900円
ということになります。

休業損害の請求方法

会社員や公務員が休業損害を請求するためには、勤務先に「休業損害証明書」を作成してもらい、前年度の源泉徴収票を添付したうえで、相手方の保険会社に提出する必要があります。

休業損害証明書とは、勤務先が作成する、労働者の勤務日数や欠勤日数、遅刻・早退の記録などを証明する書類です。休業損害には、主に下記の事項を記載してもらいます。

  • 欠勤、遅刻、早退した旨とその時間帯
    ※なお、基本的に有給休暇を使った日は欠勤(全休)扱いとして記入します
  • 作成日付
  • 勤務先の代表者の氏名
  • 勤務先の印証
  • (パートやアルバイトの場合)所定労働時間の時間数と時間給

休業損害が支払われるか、いくら認められるかは休業損害証明書の記載内容にかかってくるので、しっかりと作成してもらい、ミスがないか確認してから提出するようにしましょう。

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有給休暇の取得と欠勤どちらが得か

金銭的な面だけからみると、有給休暇を取得する方が得です。有給休暇を取得して治療を受ければ、会社からの給料と保険会社からの休業損害のどちらも受け取ることができるからです。

とはいえ、有給休暇を残しておきたい事情があるため欠勤したい、欠勤すると皆勤手当がもらえないため有給休暇を使いたいなど、人によって状況は様々です。
一般的には有給休暇を取得する方が得ですが、ご自身にとってはどちらを選択する方が良いのか、状況に応じてしっかりと判断されることをおすすめします。

有給休暇を取得するタイミングに注意

休業損害は、交通事故が原因で減ってしまった収入を補償するものです。つまり、交通事故と因果関係のある減収に対してしか支払われません。
この点、有給休暇を不定期に使って通院したり、交通事故後かなり時間が経ってから有給休暇を使って通院したりした場合には、交通事故と有給休暇の取得との因果関係に疑いがかかってしまいます。その結果、有給休暇を取得したことが交通事故による損害とは認められず、休業損害を支払ってもらえない可能性があるので注意が必要です。

休業損害と有給休暇に関する裁判例

有給休暇を休業損害として全額支給された裁判例

ここで、有給休暇を取得したすべての日に対して休業損害が認められた裁判例をご紹介します。

・大阪地方裁判所 令和3年1月29日判決
原告が自動車を運転して交差点に入ったところ、交差道路から交差点に入ってきた被告の自動車と衝突した交通事故の事例です。

原告が、この事故を原因として4日と13時間分の有給休暇を取得したところ、裁判所は以下のように休業損害を認めました。

  • 原告が事故前3ヶ月間に働いた日数:63日
  • 1日あたりの稼働時間:7時間45分
  • 総支給額:106万4263円
  • 1日あたりの支給額:1万6893円(1時間あたり2180円)

したがって、休業損害は「1万6893円×4日+2180円×13時間=9万5912円」

有給休暇を休業損害として認めなかった裁判例

反対に、有給休暇を取得した日数のうち、一部に対してしか休業損害が認められなかった裁判例をご紹介しましょう。

・大阪地方裁判所 令和2年1月30日判決
原告が運転する原動機付自転車と、被告が運転する自動車が衝突した交通事故の事例です。

原告は、症状固定するまでの間に、有給休暇を合計15.5日取得しました。しかし、これらの有給休暇は、「1ヶ月に1~2回は半日有休休暇の申請をするように」という会社の指導のもとで取得されたものでした。
そのため、裁判所は、必ずしもすべての有給休暇が事故と因果関係があるとはいえないと判断し、合計5.5日のみを事故と因果関係のある有給休暇だと認めました。

そして、以下のとおりに休業損害を認めました。
「1日あたりの基礎収入1万5073円×休業日数5.5日=8万2901円」

有給休暇を取得した時の休業損害は弁護士にご相談ください

交通事故により怪我をし、治療などのために仕事を休まなければならなくなった場合、休業損害を支払ってもらえます。これは有給休暇を使って仕事を休んだ日も同じですから、交通事故による怪我の治療のために仕事を休む際には、有給休暇を利用することも検討してみても良いでしょう。

とはいえ、「個人的な目的で有給休暇を取得した」と判断され、交通事故との因果関係がないとみなされてしまうと休業損害は支払ってもらえません。
そのため、交通事故による治療のために有給休暇を取得したものの、休業損害の請求が認められるか不安のある方や、その他休業損害をはじめとする交通事故問題についてお困りごとのある方は、ぜひ弁護士にご相談ください。ご相談者様の疑問や不安を解消できるよう、しっかりと対応させていただきます。

「交通事故に遭ったとき、弁護士に相談すると良いと聞くけれど実際どうなのだろう?」「弁護士に交通事故被害について依頼すると、具体的に何をしてもらえるの?」など、交通事故に関するトラブルを弁護士に相談・依頼するメリットについて、疑問に思われている方もいらっしゃるでしょう。

そこで今回は、このような疑問にお答えするべく、交通事故に関するトラブルを弁護士に相談・依頼するメリットについて詳しくご紹介していきます。

メリット1:弁護士に依頼すると慰謝料が増額する可能性が高くなる

弁護士に依頼すると、3種類ある慰謝料の算定基準の中で、基本的に最も高い金額を算定できる「弁護士基準」で交渉を進められるため、慰謝料が増額する可能性が高くなります。

そもそも弁護士基準は、通常、裁判所や弁護士以外が使用することはできません。余程のことがない限り、被害者の方が弁護士基準で計算した慰謝料額をもって交渉を試みても、保険会社に受け入れられることはほぼないでしょう。
弁護士に依頼することで、弁護士基準で算定した最も高額かつ適正な慰謝料を請求してもらうことができます。また、併せて、その他の細かい増額ポイントも押さえて計算し直してくれるので、当初保険会社から提示を受けた金額より増額した慰謝料を請求できる可能性が高いでしょう。

メリット2:ストレスになる相手保険会社とのやり取りを任せられる

弁護士に依頼することで、損害賠償請求などに伴う相手方保険会社とのやり取りを一括して任せることができるので、ストレスを大幅に軽減できます。
また、各種の請求に必要な書類や資料の作成・収集も任せられるので、手続きにかかる時間や手間も最小限にすることができます。

このように、弁護士に依頼すると、精神的な負担を軽減できるうえに時間も確保できるので、安心して治療に専念することが可能になります。

メリット3:適切な通院の仕方・診察のアドバイスを受けられる

弁護士に依頼すると、適正額の慰謝料、治療費といった損害賠償を受けるために必要な、【適切な通院方法や診察ポイント】についてアドバイスを受けることができます。このアドバイスに従って治療を進めていくことで、被害に見合った損害賠償を受けられる可能性が高まります。

交通事故問題に詳しい弁護士は、慰謝料や治療費を計算する際のポイントを知っていますので、適正な損害賠償を受けるためにはどのように通院すれば良いのか、どういった診察・治療を受ければ良いのかといったアドバイスを受けることができます。

メリット4:保険会社からの治療費打ち切りに対応し、治療延長の交渉をしてもらえる

保険会社は、なるべく早く治療費の支払いを打ち切りたいので、ある程度治療が長引くと「そろそろ治療を終わらせる時期ではありませんか」と治療を終了するように促してきます。
しかし、保険会社の言いなりになって治療を終了させることはありません。医学的な根拠を示して治療の必要性を訴えれば、保険会社に治療費の支払いの継続を認めさせられる可能性があります。

その際に弁護士に相談すれば、治療の必要性を訴える効果的な方法についてアドバイスを受けることができます。
さらに、早い段階で治療費の打ち切りについて相談しておくことで、万が一治療費を打ち切られてしまった場合にとるべき対応を事前に確認することもできます。

メリット5:後遺障害等級認定・異議申立てを行ってくれる

交通事故によって後遺症が残ってしまった場合、適正な慰謝料を受け取るためには、後遺障害等級認定を申請して正しい後遺障害等級を認定してもらう必要があります。
後遺障害等級認定の申請には、法的な知識に加えて医学的な知識も必要になるので、等級認定の手続きに詳しい弁護士のアドバイスはとても役に立ちます。

また、弁護士は、被害者の代わりに後遺障害等級認定の申請をすることもできます。
さらに、納得のいかない等級が認定された、または等級認定が受けられなかった場合に行うことができる、異議申立ての手続きの代行も可能です。

このように、弁護士に任せれば正しい後遺障害等級認定を受けられる可能性が高まります。

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メリット6:適正な休業損害がもらえるよう、アドバイスしてもらえる

弁護士に相談することで、休業損害の増額が期待できるケースも多いです。
慰謝料と同じく、休業損害を計算する基準にもいくつかあります。その中で最も高額で適正な金額を算定できることが多いのは、弁護士や裁判所が使う弁護士基準です。そのため、弁護士に相談・依頼し、弁護士基準で計算した休業損害を請求できるようにすることで、結果的にもらえる休業損害が増額する可能性があります。

また、特に主婦(主夫)の方が被害者である場合、そもそも保険会社が休業損害の発生を認めていないことがあります。このような場合も、弁護士に相談・依頼すれば、主婦(主夫)にも休業損害が発生することを法的な根拠をもって主張できるので、休業損害を獲得できる可能性が高まります。

弁護士依頼のデメリットはない?

弁護士に依頼する際に一番気がかりなのは、やはり費用ではないでしょうか。
確かに、弁護士に依頼する場合、増額できた金額に対して費用の方が高額になってしまう、いわゆる「費用倒れ」になるリスクはあります。
また、一口に弁護士といってもそれぞれ得意分野があるので、交通事故分野に不慣れな弁護士に依頼した場合、満足できる結果を得られない可能性があります。

しかし、弁護士法人ALGなら、こうしたデメリットの心配なく安心してご依頼いただけます。
弊所では、費用倒れのリスクがある場合にはご依頼いただく前に必ずご説明いたしますし、交通事故問題に特化したチームがあるので、様々な交通事故の事例に対応可能です。

交通事故に遭ったら、弁護士に相談すべき。迷ったらまずは無料相談を

一般的に、「弁護士に依頼すると高額な費用がかかる」というイメージがあるため、弁護士に相談されることをためらってしまう方もいらっしゃるでしょう。
しかし、たいていのケースでは、弁護士に相談・依頼することで得られるメリットはデメリットを上回っています。

特に弁護士法人ALGの場合、丁寧な事前説明を行うため費用倒れのリスクを回避できますし、交通事故問題に精通した弁護士が数多く所属しているので、専門的な知見を持った弁護士による充実したサポートを受けられます。
また、弁護士費用特約に加入している方は、この特約を利用することで、弁護士費用の補償を多くの場合で300万円まで受けることができます。

交通事故の被害に遭われた方は、ぜひ弁護士法人ALGにご相談ください。まずは無料相談にて、詳しい事故の状況をお伺いします。

損害賠償は「受けた損害を補填する」制度なので、実際に受けた損害の金額以上に賠償金を受け取ることは認められません。しかし、交通事故の被害者は、場合によっては相手方の保険会社以外から金銭を受け取ることもあります。 このような場合、“損害を公平に負担させるため”に「損益相殺」が行われます。

今回は、損益相殺とは具体的にどのような制度なのか、その概要について解説していきます。
耳慣れない言葉かもしれませんが、適正な賠償金を受け取るためにも正しく理解しておく必要がありますので、ぜひ最後までご覧ください。

損益相殺とは

損益相殺とは、交通事故の被害者が損害賠償金を余分に受け取らないようにするための制度です。
具体的には、被害者が交通事故をきっかけに何らかの利益を得た場合に、損害賠償金からその利益分を差し引くことで、損害賠償金の二重取りを防ぎます。

例えば、交通事故によって総額400万円の損害を受けた被害者が、自分の加入している保険から100万円の保険金を受け取ったような場合、損益相殺が行われます。
そのため、この場合に被害者が加害者から受け取ることができる損害賠償金は、
「400万円-100万円=300万円
となります。

受け取っていると損益相殺により減額されるもの

では、何を受け取っていると損益相殺により減額されてしまうのでしょうか?
一般的に、下記のような金銭を受け取っていると損益相殺の対象になります。

  • 自賠責保険金や政府保障事業のてん補金
  • 支給が確定した各種社会保険の給付金
  • 所得補償保険金
  • 国民健康保険法・健康保険法に基づく給付金
  • 人身傷害保険金
  • 加害者による弁済
  • (被害者が亡くなった場合)生活費相当額

以降、それぞれどのような金銭でどういった状況のときに受け取れるのか、簡単に見ていきましょう。

自賠責保険金・政府保障事業のてん補金

自賠責保険から受け取った保険金(自賠責保険金)のほか、加害者が自賠責保険に未加入の場合などに受け取れる政府保障事業のてん補金は、損益相殺の対象となります。

政府保障事業とは、交通事故の被害者を救済する最終手段として、政府が損害をてん補する制度です。損害額の算定やてん補金の限度額については、自賠責基準と同様の基準を採用しているので、同じくらいの金額を受け取ることができます。

支給が確定した各種社会保険の給付金

交通事故により怪我をした、障害が残った、または亡くなった場合、下記のような各種社会保険が給付されることがあります。
これらによる給付が行われる場合、通常、実際の支給額または支給を受けることが確定した金額を上限として、損益相殺により減額されます。

  • 労働災害補償保険法に基づく療養補償給付、障害補償年金
  • 厚生年金法(または国民年金法)に基づく障害厚生年金
  • 国家公務員(または地方公務員)共済組合法に基づく障害年金、遺族共済年金
  • 介護保険法に基づく給付金

所得補償保険金

所得補償保険金とは、所得補償保険の加入者が怪我や病気が原因で働けなくなった場合に、収入を補うために支払われる保険金です。
交通事故の影響で被害者が働けない状態になり、所得補償保険金を受け取った場合、損害賠償金のうち休業損害に相当する金額から、この保険金相当額が差し引かれることになります。

健康保険法に基づく給付金

治療の際に保険証を提示すると、加入している健康保険から治療費の一部が支払われるため、被害者の治療費の自己負担分が減額します。健康保険法に基づく給付金とは、このときに支払われる治療費の一部を指します。
このように、健康保険を利用すると治療費の負担が軽くなるため、支払われた治療費相当額が損益相殺の対象となります。

人身傷害保険金

人身傷害保険金とは、交通事故により受傷・死亡したときに、被害者の加入している保険会社から支払われる保険金です。受け取るためには、あらかじめ人身傷害保険に加入している必要がありますが、一般的に自動車保険に付帯して加入していることが多いので、加入状況について一度保険会社に問い合わせておくと良いでしょう。

なお、人身傷害保険を利用しても、翌年の保険料の等級に影響することはありません。

加害者による弁済

相手方の保険会社を通さず、加害者から直接受け取った金銭も、賠償金と同様に交通事故の損害を補うものです。そのため、損益相殺により、受け取った金額分が賠償金から差し引かれます。
しかし、加害者から直接金銭を受け取る場合、加害者から受け取った金銭が何に対する賠償であるのかが明確ではないことが多いですし、後々トラブルに発展してしまう可能性も高いです。香典や見舞金など、一般常識的でやり取りされる金銭を除いて、加害者から直接金銭を受け取ることは避けるべきでしょう。

(亡くなった場合)生活費相当額

被害者が亡くなった場合、その後必要になるはずだった生活費が不要になります。
つまり、生活費に相当する金額分、被害者の負担が減ることになるので、損益相殺によって賠償金から生活費相当額が減額されます。

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損益相殺により減額されないもの

交通事故をきっかけに支払われる金銭であっても、その事故による損害を補う目的で支払われるものでなければ、損益相殺の対象になりません。
例えば、次のような金銭は損益相殺の対象とならないので、受け取っても減額されません。

  • 生命保険金
  • 搭乗者傷害保険金
  • 自損事故保険金
  • 傷害保険金
  • 労働者災害補償保険法に基づく特別支給金

また、上記は、損益相殺の対象とならない金銭の代表的な例ですが、他にも損益相殺により減額されない金銭があります。次項以下でみていきましょう。

税金

交通事故に対する損害賠償金は、あくまで損害を補填するものであり利益ではありません。したがって、基本的に非課税となります。
そのため、支払わずに済んだ所得税等の税金が損益相殺の対象となりそうですが、裁判例によると、損益相殺を行う必要はないと判断されています。したがって、損害賠償金から税金に相当する金額が差し引かれることはありません。

加害者が支払った香典・見舞金

香典や見舞金は、一般的にお詫びの気持ちを示すために支払われるものです。つまり、交通事故による損害を補填するものではないので、基本的に損益相殺の対象にはなりません。
ただし、香典や見舞金の金額が常識的にみてかなり高額な場合には、損害賠償金の一部とみなされてしまう可能性があります。そうなると、常識的な範囲を超えると判断された金額分について、損益相殺が行われることになるので注意が必要です。

子供が死亡してしまった場合の養育費

交通事故により亡くなった被害者が子供だった場合、その後、保護者は養育費を支払う必要がなくなりますが、将来かかったはずの養育費が損益相殺の対象になることはありません。
なぜなら、養育費は子供本人ではなく保護者が支払うべきものなので、事故によって、子供本人が養育費の負担を免れるという利益を得たとは考えられないからです。
つまり、交通事故により損害を受ける人と利益を受ける人が違うため、被害者にかかるはずだった養育費は損益相殺されません。

持病により治療期間が長くなった場合は賠償金が減額される

損益相殺の対象にならない場合でも、被害者に持病があり、その影響で治療が長引いたようなときは、損害賠償金が減額される可能性が高いです。これを「素因減額」といいます。
素因減額は、元々被害者が患っていた持病などの疾患により損害が発生・拡大したときに、疾患による影響の分だけ損害賠償金を減額するというルールです。被害者の抱えている疾患が損害賠償金に影響を与えた場合に、加害者だけに損害を負担させるのは不公平だと考えられるからです。

とはいえ、どのような持病でも必ず素因減額の対象になるというわけではありません。素因減額は示談交渉や裁判などでも争いになりやすい問題なので、被害者に持病等があることが疑われる場合は、専門家のアドバイスを受けると良いでしょう。

損益相殺について不明点があれば弁護士にご相談ください

損益相殺について正しく理解することは、適正な損害賠償金を獲得するうえでとても重要です。もし誤った理解に基づいて損害賠償請求をしたり、提示された賠償案に承諾してしまったりしたら、損害額に見合った賠償金を獲得することは難しくなります。
しかし、損益相殺の対象となるか、いくら減額されるのかなどを判断するためには、金銭の性質や法律の規定をしっかりと確認する必要があるので、専門家の助けがないと難しいケースが多いでしょう。

そこで、弁護士に相談してアドバイスを受けることをご検討ください。弁護士は、単にアドバイスをするだけでなく、依頼を受ければ加害者側との示談交渉を代行することもできます。
最小限の労力で迅速に損害賠償金を受け取るためにも、まずは弁護士に相談されることをおすすめします。

離婚するにあたって、父母のどちらが親権者になるかを決めなければなりませんが、後になって、この時に決めた親権者の変更を望まれる方は少なくありません。しかし、一度決定した親権者を変更することはなかなか難しいのが現実です。

とはいえ、絶対に変更できないというわけではありません。
ここでは、具体的にどのような場合に親権者の変更が認められるのか、変更するための手続きの方法や流れ、手続きを行ううえでのポイントなど、親権者の変更をお考えの方に役立つ情報をご紹介します。ぜひご一読ください。

離婚後に親権者を変更することはできる?

離婚する際に決めた親権者を離婚後に変更することは可能です。しかし、決して容易ではありません。

離婚時にどちらが親権者となるかは、夫婦の話し合いでも決めることができますが、これを変更するとなると、夫婦の合意だけでは認められません。
離婚後に親権者を変更するには、裁判所で所定の手続きを行う必要があります。具体的には、家庭裁判所に「親権者変更調停の申立て」を行うこととなります。

親権変更が可能な場合とは

親権変更は、次の2点の条件を満たす場合に認められます。

  • 親権者を変更することに合理的な理由がある
  • 親権者を変更することで、子供がより利益(幸せ)を得られる可能性が高い

つまり、親権者変更により子供の養育環境が改善し、より子供の利益につながると裁判所が認める場合に、親権者を変更することができます。
以下、親権変更が認められる具体例をいくつかご紹介します。

  • 親権者が子供を虐待、育児放棄している
  • 子供が親権者の変更を希望している
  • 親権者を変更しないと子供の養育環境が大きく変化してしまう(例:親権者の海外転勤)
  • 親権者の心身の健康状態が悪化した、または親権者が亡くなった

親権を変更する方法

子供の健やかな成長のためにも、安定した生活環境のもとで育てることは重要です。そこで、子供の利益を守るべく、一度決まった親権者を変更するためには、家庭裁判所で親権者変更調停または審判を行い、定められた手続きを行わなければならないとされています。

つまり、夫婦がお互いに親権者の変更に合意したとしても、それだけでは親権変更することはできません。

親権者変更調停とは

親権者変更調停とは、離婚後に父母が親権について話し合うために設けられた、家庭裁判所で行われる調停手続のひとつです。
通常、親権を希望する父母のどちらかが家庭裁判所に申し立てて手続きを開始します。

調停では、「親権者を変更することが子供の健全な成長につながるか」という観点から、調停委員を介して父母が話し合い、親権変更すべきかどうかを検討します。

親権者変更調停の手続方法

親権者変更調停の手続きは、親権者である父または母の住所地の家庭裁判所に対して申し立て、開始するのが基本です。
申し立てる際にどのような書類が必要で、何に対する費用がいくらかかるのか、次項以下で簡単に確認しましょう。

申立てに必要な書類

親権者変更調停を申し立てるにあたっては、次の書類を揃えて提出しなければなりません。なお、必要に応じてその他の書類の提出が必要になる場合もあります。

  • 申立書とそのコピー
  • 事情説明書
  • 進行に関する照会回答書
  • 申立人、相手方、子供の戸籍謄本(全部事項証明書)

申立書や事情説明書、進行に関する照会回答書には所定の書式があるので、書式に従って記入することで作成できます。
所定の書式は、家庭裁判所に直接出向いて取得するほか、家庭裁判所のホームページからもダウンロードすることができます。

※申込書と当事者目録の書式は、下記のリンク先からダウンロード可能です。

親権者変更の申立書(裁判所)

申立てに必要な費用

調停の申立てにかかる費用は、次のとおりです。

  • 収入印紙:子供ひとりあたり1200円分
  • 連絡用の郵便切手: 1000円程度(申立先の家庭裁判所によって異なるため、正確な金額を知りたい方は各裁判所にお問い合わせください)

書類を提出したら調停期日の案内が届くのを待つ

必要書類と費用を用意したら、
・相手方(親権者)の住所地を管轄する家庭裁判所
または
・当事者が合意で決めた家庭裁判所
のどちらかに提出し、親権者変更調停を申し立てます。

提出した書類に不備がなければ、申立てが受理されて調停手続が開始されます。
調停を行う日時は裁判所が決定します。

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親権者変更調停の流れ

親権者変更調停は、申立てが受理された後、次のような流れで進められます。

家庭裁判所が初回の調停期日を決定する
裁判所の予定や裁判官・調停委員の都合などに合わせて、家庭裁判所が初回の調停期日を設定します。指定された期日に出席することが難しい場合は、家庭裁判所に変更を申し出ることができますが応じてもらえない場合があります。

第一回目の調停の実施
調停期日に家庭裁判所に出向き、調停委員を介して話し合います。

③(必要があれば)第二回目以降の調停の実施
第一回目の調停で合意できなかった場合には、第二回目以降の調停を実施し、引き続き話し合いを続けます。

調停の終了
調停が成立する、または不成立になることによって、手続きが終了します。

調停成立後の手続き

調停が成立したら、成立日から10日以内に市区町村役場に親権者変更の届出をする必要があります。

届出には、主に次のような書類が必要になります。裁判所によっては、この他の書類の提出が求められることもあるので、詳しくは各裁判所に事前にご確認ください。

  • 調停調書謄本
  • 父母それぞれの戸籍謄本

調停が不成立になった場合

話し合いが合意に至らず、調停が不成立になった場合には、自動的に「親権者変更審判」という手続きに移行します。
審判では、家庭裁判所の調査官による調査結果のほか、子供の意思や養育環境の現状といった一切の事情を考慮したうえで、親権者の変更の可否について裁判官が判断します。

万が一調査官や裁判官の心証が相手方に傾いており、自分にとって不利な判断がなされる可能性が高いときは、親権を諦め、確実に子供と交流できる機会を確保する方針に切り替えるのもひとつの手です。例えば、親権を諦める交換条件として、自分に有利な面会交流のルールを提示するといった方法が考えられます。

親権者変更調停の申立て~成立にかかる期間

元々父母が親権者の変更について合意しており、変更することが子供の利益につながると判断される場合は、第一回目の調停期日で調停が成立するケースが多いです。この場合、申立てから調停が成立するまでの期間は大体1ヶ月程度でしょう。
これに対して、父母の主張が対立している場合は、調停が成立するまでの期間が長期化する傾向にあります。

具体的にどのくらいの期間がかかるのかは、個別の事情によって変わってきますが、調停が成立するまでにはある程度の時間がかかると考えておくべきでしょう。

親権者変更にあたって裁判所が重視していること

親権者の変更について検討する際、裁判所は、親権者を変更する場合としない場合を比べて、「どちらが子供にとってより利益になるか」を考えます。つまり、「子供の利益」を重視して判断しています。

子供にとって利益になるかどうかは、子供側の事情(子供の年齢、性格、心身の健康状態、現在の生活環境、意思など)に加えて、親側の事情(父母の経済状況、心身の健康状態、現在の養育状況、親権変更を希望する理由など)も考慮して、総合的に判断します。

例えば子供が乳幼児の場合には、育児に重要な役割を果たす母親が親権者とされることが多いですが、本質的には親の性別というより子への監護の程度で決せられます。子供が15歳以上である程度自分の意思を伝えられる場合には、子供の意見が尊重される傾向にあります。

とはいえ、裁判所は基本的に親権者の変更に対して慎重なので、子供の現在の生活環境が安定しているときは、わざわざ親権者を変更する必要はないと判断される可能性が高いです。

親権者の再婚相手と子供が養子縁組した後でも親権変更できる?

基本的にできません。
法律上、親権者の変更は「単独親権から単独親権へ」という形の変更しか想定されていませんが、ご質問のケースは「共同親権から単独親権へ」という形の変更にあたるからです。

親権者の再婚相手と子供が養子縁組をすると、親権者が単独で親権を持っている状態(単独親権)から、親権者と再婚相手が共同で親権を持つ状態(共同親権)に変わってしまいます。そのため、親権者の変更は基本的に認められないと考えられます。

離婚後に親権者が死亡した場合、親権はどうなる?

離婚後に親権者が死亡した場合は、子供本人や親族などが家庭裁判所に「未成年後見人」の選任を申し立て、子供の法定代理人となる人を選任してもらうのが原則です。つまり、生存しているもう一方の親が自動的に親権を取得し、親権者になるという仕組みはとられていません。

しかし、生存している親が親権の取得を希望する場合は、家庭裁判所に親権者の変更を申し立てることができます。この場合、家庭裁判所の審判で親権の変更が認められれば、親権を取得して親権者となることができます。

親権者を祖父母に変更したい場合は?

親権者になれるのは父母(親)だけなので、親権者を祖父母に変更することはできません。
しかし、祖父母が養子縁組をして養“親”となることで、親権者になることは可能です。

親権者の変更を希望するなら弁護士に依頼したほうがスムーズに進みます

家庭裁判所は、子供の健全な成長のためにも生活環境を安定させるべきだと考えています。そのため、親権者変更の調停や審判を申し立てても、簡単に親権変更が認められることはありません。
家庭裁判所に親権変更を認めさせるためには、親権者の変更が子供にとって大きな利益になることを証明する必要がありますが、専門知識がなければ効果的な主張・立証をすることは難しいでしょう。

この点、離婚問題に強い弁護士なら、親権者の変更を主張するうえで重要なポイントを把握しているので、調停や審判手続を任せることで、親権者の変更が認められる可能性を高めることができます。また、自分ですべての手続きを行う場合と比べて時間を節約できますし、精神的な負担の軽減にもつながります。

親権者の変更をご希望の方は、まずは弁護士にご相談ください。一人ひとり異なるご相談者様のご状況に応じて、適切なサポートをさせていただきます。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。