代襲相続とは|代襲相続人になれる人と相続割合

代襲相続とは|代襲相続人になれる人と相続割合

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

人が死亡したときには、相続が発生します。しかし、相続が発生した場合に、誰が相続人となるのか、正確には理解していない人もたくさんいるのが現状です。誰が相続人となるのか正確に理解しておかないと、遺産分割協議もできません。今回は、よくあることである一方、正確には理解されていない代襲相続について、詳しく説明していきます。

代襲相続とは

代襲相続とは、被相続人(今回死亡した人)が死亡する前に、本来相続人(財産を受け継ぐ人)となるはずだった人が死亡する等の理由で相続できなくなったときに、その相続人の子供がかわりに相続人となることをいいます。そして、被相続人の死亡前に死亡した本来の相続人の子供のことを、代襲相続人といいます。代襲相続人は、他の相続人と同様に、相続人として扱われることになります。

代襲相続が起きるのはどんな時?

相続人が先に亡くなった場合

代襲相続が発生する代表的なケースは、被相続人が死亡する前に、相続人が死亡し、その相続人の子が代襲相続人となるケースです。
例えば、親が死亡する前に子がなくなった場合、孫が代襲相続人となります。
兄弟姉妹が相続人の場合(被相続人に子や尊属がいない場合)であれば、相続人である兄弟姉妹の子(被相続人からすれば甥や姪にあたります)が代襲相続人となります。

相続人の資格を失った場合

代襲相続が発生する他のケースとしては、相続人が「廃除」された場合と、相続人が「相続欠格」に該当し、相続権を喪失した場合の2種類があります(相続放棄の場合は代襲相続は発生しません。)。これらの場合、廃除された相続人の子や、相続欠格と判断された相続人の子は、代襲相続人となります。

相続人廃除

相続人の廃除とは、相続人が被相続人を虐待していたというような一定の場合において、家庭裁判所に申し立てをすることで、その相続人の相続権を剥奪するというものです。
被相続人は存命中に、自ら家庭裁判所に相続人廃除を申し立てることになります。また、遺言書に、相続人廃除を記載することもできます(この場合も家庭裁判所が相続人廃除を認める必要があります)。

相続欠格

相続欠格とは、利益を得る目的で、被相続人を死亡させようとしたり、被相続人を脅迫して遺言書を作成させたりしたような場合等、一定の要件に該当すると、自動的に相続権を失うというものです。一定の場合に該当すれば、自動的に相続権を喪失するという点で、相続人の廃除とは異なります。
また、被相続人が殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しないような場合にも、相続欠格事由に該当します。

代襲相続人になるのは誰?

代襲相続人となれる人について説明します。
被相続人の子が、被相続人よりも先に死亡していた場合、孫が代襲相続人となります。さらに、その孫が被相続人よりも先に死亡している場合には、ひ孫も代襲相続人となります。このように、直系卑属については、再代襲相続、再々代襲相続とどこまでも続きます。
一方、相続人が兄弟姉妹の場合、その兄弟姉妹の子(甥、姪)は代襲相続人となることはできますが、その甥や姪の子が、再代襲相続人となることはできません。

代襲相続するために必要な手続きはあるの?

代襲相続には、特別な手続きは必要ではなく、法律上当然に効果が生じます。もっとも、代襲相続人が、実際に金融機関で預金を相続する場合や、不動産の登記を行う場合には、自身が代襲相続人であることを公的文書で証明する必要があります。つまり、戸籍を取得し、被相続人、相続人、及び代襲相続人の身分関係にあること、また、相続人が被相続人よりも先に死亡していることを証明しなければなりません。

代襲相続人の相続割合(法定相続分)

代襲相続では、相続人の相続分を、そのまま代襲相続人が引き継ぎます。代襲相続人だからといって相続分が少ないといったようなことはありません。もっとも、相続人が一人で、その相続分を引き継ぐ代襲相続人が複数いる場合、引き継ぐ相続分が、代襲相続人らに平等に割り当てられます。具体的なケースにおける処理は、以下のようになります。

孫が代襲相続する場合

孫が代襲相続する場合

上記の例で、被相続人の相続人は、①配偶者、②子A、③子Bの3人です。もっとも、③の子Bは、被相続人が死亡する前に死亡しているため、④孫B1と⑤孫B2が、代襲相続人となります(嫁Bは③子Bの子ではなく、代襲相続人にはなりません。)。
結果的に、上記例における相続人は、①配偶者、②子A、④孫B1、⑤孫B2となります。
法定相続分ですが、もともと、①配偶者が2分の1、②子Aが4分の1、③子Bが4分の1でした。③子Bの相続分については、そのまま④孫B1と⑤孫B2が引き継ぎ、平等に割り振られるため、④孫B1が8分の1,⑤孫B2が8分の1となります。

甥姪が代襲相続する場合

甥姪が代襲相続する場合

上記の例では、被相続人には、子がおらず、直系尊属である父母も死亡しているため、兄弟姉妹が相続人となります。つまり、①兄、②姉が相続人です。②姉は、被相続人よりも先に死亡しているため、③甥、④姪が代襲相続人となります(姉夫は②姉の子ではなく、代襲相続人とはなりません。)。
もともとの法定相続分は、①兄が2分の1,②姉が2分の1です。②姉の相続分を代襲相続人は引き継ぎ、平等に分配されるため、③甥が4分の1,④姪が4分の1となります。

養子の子の場合

相続人が養子縁組をした場合、代襲相続は少し複雑になります。
代襲相続が生じるには、相続人の直系卑属(子)であることだけでなく、被相続人の直系卑属(孫)であることが必要です。
さて、被相続人が養子縁組をして、養子を設けたとします。養子は被相続人の子としての身分を取得するため、相続人になります。
被相続人が死亡する前に相続人である養子が死亡したとします。
このとき、養子に子がいたとして、その子は、代襲相続人に当たるでしょうか。
①養子縁組をした後に、養子の子が出生した場合、その子は、法的に、被相続人の孫にあたります。そのため、代襲相続人になることができます。
②養子縁組をする前に、養子の子が出生していた場合、その子は、法的に、被相続人の孫にはあたりません。そのため、代襲相続人になることができません。

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代襲相続の代襲相続もある(再代襲)

孫が代襲相続人の場合、その孫が被相続人の死亡前に死亡したり、相続人廃除、相続欠格によって相続権を失った場合、その孫の子(ひ孫)が再代襲相続人となることができます。これを再代襲相続といいます。これは更に、再々代襲相続、再々々代襲相続と続くことができます。
代襲相続人が複数人いて、そのうち一人が相続発生前に死亡して再代襲相続が発生する場合、再代襲相続人は、親である代襲相続人の相続分を引き継ぐごとになります。

甥・姪の子は再代襲しない

孫、ひ孫、玄孫というように、代襲相続は続くことがありますが、一方、兄弟が相続人の場合に代襲相続が発生し、甥や姪が代襲相続人となった場合、甥や姪の子は、再代襲相続人とはなりません。
これは、甥や姪の子、更にその子らまで代襲相続が続いていくとすると、どんどん被相続人から縁遠くなってしまい、財産が散逸してしまうからです。

代襲相続で税金が安くなることも

相続税には、基礎控除額というものがあります。基礎控除額が高くなるほど、税金が安く済みます。
基礎控除額は、まず3000万円あり、加えて、相続人1人につき600万円加算されます。例えば、相続人が3人であれば、3000万円+600万円×3人=4800万円が基礎控除額となります。
ここで、相続人のうち一人が、相続発生前に死亡し、その子2人が代襲相続人となったとします。この場合、相続人が1人増えることになります。そのため、3000万円+600万円×4人=5400円が基礎控除額となり、代襲相続が生じたことで税金が安くなったといえます。

税金の2割加算について

被相続人の一親等の血族(両親、子)、代襲相続人となる孫及び配偶者以外の者が、相続、遺贈等により財産を取得した場合、その人の相続税額が2割加算されます。
孫が代襲相続する場合には、相続税額が2割加算されることはありません。一方、姪や甥が代襲相続人の場合には、「被相続人の一親等の血族(両親、子)、代襲相続人となる孫及び配偶者」以外の者が相続したことになるので、2割加算されます。

相続放棄後の代襲相続に注意

次のような場合は注意が必要です。
例えば、あなたの父親が死亡したとします。あなたは父親の相続について、相続放棄をしました。そのため、父親が残した借金をあなたは相続せずに済みました。
ところが、被相続人である父親の父親(祖父。第二順位の相続人)は、相続放棄をしませんでした。そのため、祖父は、父親の残した借金を背負うことになりました。
祖父が死亡したとき、あなたの父親は既に死亡しているため、あなたが祖父の代襲相続人となりました。ここであなたが相続を承認してしまった場合には、父親から祖父に相続されていた父親の借金を、あなたが代襲相続することになります。
父親の借金を免れるために相続放棄したにもかかわらず、最終的に父親の借金を背負うことになってしまいました。このようなことにならないよう、注意が必要です。

代襲相続人に遺留分は認められているか

相続には遺留分という制度があります。遺留分というのは、一定の相続人に認められる、最低限相続で獲得できる価値というイメージです。
この「一定の相続人」というのは、配偶者、子、両親を指します。そして、子に遺留分が認められる以上、その子が相続発生前に死亡する等して孫が代襲相続人となった場合、孫にも遺留分は認められます。
一方、甥や姪が代襲相続人の場合、そもそも相続人である兄弟姉妹には遺留分は認められていないため、それを引き継ぐ甥や姪にも遺留分は認めらません。

代襲相続と数次相続の違い

数次相続とは、被相続人が死亡して、相続人らは遺産分割をしなければならないところ、その遺産分割が未了のまま、相続人のうち一人が死亡してしまい、複数の相続状態が生じている場合を指します。
代襲相続と異なり、被相続人が死亡した後に、相続人が死亡します。
また、代襲相続は、相続人の子が代襲相続人として被相続人の遺産分割に参加しますが、数次相続の場合、相続人の法定相続人(子だけではなく、配偶者も)が被相続人の遺産分割に参加することになります。

代襲相続でお困りでしたらご相談ください

代襲相続は比較的起こりやすい事象であるといえます。もっとも、代襲相続や数次相続について正確な理解がなされているとは言い難く、遺産分割においても様々なトラブルが生じてしまいます。手続面でも、代襲相続は発生すると戸籍の取得が複雑になり、代襲の範囲が広がるほどに、戸籍収集の難易度も上がります。
代襲相続が発生したような場合には、正しく遺産分割協議をし、手続きを進めるためにも、一度、弁護士に相談をしてみた方が良いでしょう。

寄与分とは

寄与分とは、被相続人の財産や維持に貢献した相続人がいる場合に、その相続人に対して特別に与えられる相続財産への持ち分のことです。寄与分が認められる場合には、法定相続分とは別に遺産の一部を受け取ることができます。

寄与分請求の要件

寄与分が認められるためには、以下の4つの条件を満たす必要があります。
どれか一つでも書けると、認められませんのでご注意ください。

共同相続人であること

寄与分自体、相続人の中で、被相続人の財産や維持に貢献した者がいる場合に初めて考慮されるものです。相続人でない者がどれだけ被相続人に対して献身的な協力をしていたとしても、その者が寄与分を受け取ることはできません。

財産が維持・増加していること

寄与分は、被相続人の財産を維持・増加させるために貢献したと認められる場合にのみ、認められます。そのため、被相続人に対する何かしらの貢献があると主張したとしても、被相続人の財産関係に何ら影響を及ぼさないのであれば、寄与分が認められません。

期待を超える貢献があること

財産を維持・増加させる貢献があるだけでは足りません。
寄与分が認められる貢献は、その相続人が通常期待される程度を超える特別な貢献に限られます。
例えば、子どもが足の悪い親の家に定期的に見舞いに行って、身の回りの簡単な世話をする程度では、特別な貢献とまでは言えないでしょう。

財産の維持・増加と因果関係があること

最後に、相続人の貢献が、財産の維持・増加につながったことが認められる必要があります。
ここで求められるのは、法的な意味での因果関係ですので、結果的に財産が維持・増加したかだけで判断されるものではありません。

寄与分の種類

他人の財産の維持・貢献をするにはいろいろな方法がありますが、大抵は、以下の5類型のいずれかに分類できます。
各類型によって、寄与分額の計算方法も変わってきますので、ここで確認しましょう。

家事従事型

家事従事型と呼ばれる類型がありますが、料理や洗濯のような日常家事を行うことで寄与分が認められる、という意味ではありません。
家族の行う事業について、一定の貢献を無償(もしくは少額の対価)で行った場合に寄与分が認められるのです。
そのため、家業従事型と呼ぶ方が正確でしょう。
この類型で注意が必要なのは、専従性が求められること、つまり、片手間で家業を手伝っている程度では認められない点です。

金銭出資型

金銭出資型は、被相続人の事業や生活のために、一定の財産上の給付を行った場合のことを指します。金銭的援助を行った場合以外にも、不動産や動産を貸した場合も含まれます。
ただ、あくまでも被相続人への給付である必要があるので、被相続人の会社に出資しただけである場合には認められません。

扶養型

被相続人との関係性から通常期待されるような扶養義務の範囲を超えて、日常生活に関する支援をしていた場合が、扶養型となります。
例えば、兄弟の中で長男だけが、長期間、親の住居費や生活費の一切を仕送りし続けた場合であれば扶養型の寄与分を認められやすいでしょう。

療養看護型

療養看護型は、相続人が療養看護を行ったために被相続人が看護や介護の費用を支出せずに済んだ場合にあたります。
日常生活の合間に定期的に看護や介護を子なっている場合は含められず、仕事を辞める等して付きっ切りで被相続人の看護や介護をした場合に初めて認められます。

財形管理型

財産管理型は、その名前のとおりで、相続人が被相続人の財産を管理したことによって、被相続人の財産が維持・増加した場合に認められます。
ただ、財産管理にあたる行為をしていても、無償かつ継続的に行われていなければなりません。
そのため、財産管理行為に対して、相続人が手間賃をもらっていたり、一時的に行われたに過ぎない場合には、寄与分が認められません。

寄与分を主張する相続人が複数いる場合はどうなる?

被相続人の財産維持・増加に対する貢献をした相続人が複数人いる場合があります。
その場合、いずれの相続人も寄与分を主張することができます。
また、どのような貢献をしたかによって優先順位をつけられることもありません。
各相続人は、自己の貢献に応じた寄与分を平等に受け取ることができます。

寄与分決定までの流れ

寄与分は自動的に分配されるものではなく、寄与分があると考える相続人が主張する必要があります。
そして、寄与分が遺産を分ける際に問題となる事項ですので、次のように、遺産に関する手続きと同時もしくは先行して決めることになります。

遺産分割協議で寄与分を決める

寄与分は、遺産の分け方の問題ですので、まずは当事者の協議によって分けられないかを模索することになります。そして、相続人全員の同意の下、一部の相続人に対して寄与分を認めることができます。
もっとも、寄与分を認めれば、自己の取り分が減ってしまう相続人は納得しないことが多いですので、遺産分割協議の段階で寄与分を認めてもらうのは難しいでしょう。

協議で決まらない時は調停へ

遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所の調停にて解決を目指すことになります。
遺産分割の話とまとめて、遺産分割調停の中で寄与分について協議をすることもできますし、寄与分を定める処分調停という手続きを用いることもできます。
同時に両方の手続を申し立てることも可能です。

それでも決まらない場合は裁判(審判)・即時拮抗へ

調停手続きの中で合意に至ることができない場合もあります。
遺産分割調停が不成立となった場合には、自動的に審判手続きに移行します。
もっとも、寄与分を定める処分調停については、遺産分割に関する調停や審判が裁判所に係属していない場合に開始できません。
なお、審判手続の結果に不満がある場合には、即時抗告という手続きによって争うことも考えられます。

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寄与分の計算方法

寄与分については、複数の類型があることは既に説明しましたが、その類型毎に計算方法の傾向が異なります。
ここでは、一つの計算方法を示しますが、被相続人に対する貢献も多種多様であるので、以下の計算方法によらずに寄与分を計算することもあります。

家事従事型(事業従事型)の計算方法

被相続人の家業を手伝うにあたり、本来もらえたはずの給与・報酬額が寄与分として認められます。
ただ、家事従事型の場合、適正な報酬を受け取っていないとしても、被相続人と家計を同一にしている等、一定の生活費相当の負担を免れていることが多いです。
そのため、具体的な計算式としては、
相続人が受け取るべき報酬額×(1-生活費控除割合)×貢献があった年数
となります。

金銭出資型の計算方法

一般的には、被相続人に与えた利益がどの程度であったかを算出することになります。
ただ、金銭の価値も不動産の価値も時の経過とともに変わりますので、相続開始時の価値に引き直す必要があります。
金銭を贈与した場合であれば、
贈与額×貨幣価値変動率(現在の価値に引き直すための係数)×裁量的割合
という計算式によって求められます。
なお、寄与分の計算には「裁量的割合」という概念が現れますが、これは、公平の観点から裁判所が決める割合です。

扶養型の計算方法

扶養型の場合、その相続人に期待されている程度を超えて扶養義務を果たしています。
そのため、その相続人が通常果たすべき程度を超えて行った貢献の分だけ、寄与分として認められるべきです。
計算式としては、
被相続人のために負担した扶養額×(1-相続人の法定相続分割合)
という式が立てられるでしょう。

療養看護型の計算方法

本来であれば、被相続人がお金を支払い、療養介護を行ってくれる人を雇えます。
ただ、相続人が療養介護を行ったことでその費用の支払いをしていない場合、その費用を寄与分の計算上考慮します。
具体的には、
本来相続人に支払われるべき日当×療養介護を行った日数×裁量的割合
という計算式によって寄与分額を計算できます。

財産管理型の計算方法

この類型も、療養看護型と同じように、相続人でない第三者に財産管理をお願いする場合の費用を、寄与分額の計算上考慮します。
計算式としては、
本来であれば相続人に支払われるべき報酬×裁量的割合

寄与分が認められやすいケース

以下のケースでは、寄与分が認められやすい要素があります。

夫の個人事業のヒット商品の開発に貢献した場合

夫の会社の発展につながるような貢献をし、夫の財産の増加に貢献をしたと認められる場合、寄与分を得られる可能性が高くなります。
もっとも、夫の会社でヒット商品を開発したとしても、その売り上げ全額を寄与分として認められる訳ではありません。
あくまでも、ヒット商品開発によって、被相続人である夫の財産の維持・増加につながった割合に応じた寄与分が認められることになるでしょう。

兄弟で出資をしていた場合

兄弟で共同出資して、親である被相続人の住む家を購入した場合、その貢献が通常、子どもとして期待される程度を超えている場合には寄与分が認められやすいです。
この場合、不動産を購入した際の価額に対して、兄弟それぞれがどの程度出資をしたが寄与分の計算上重要となります。

介護費用を全額出した場合

被相続人である親の介護費用を全額出した場合、それが相続人となった子どもとして期待される程度を超える範囲の貢献と評価できる場合には寄与分が認められます。ただ、介護サービスも様々であり、低額のものから非常に高額なサービスもあります。
実際に支出された介護費用の金額が、寄与分を認めるかどうかの分水嶺となるでしょう。

寄与分が認められにくいケース

以下のケースですと、寄与分が認められにくい要素があります。

夫の仕事を無償で手伝っていたが離婚した場合

寄与分が認められるためには、被相続人が亡くなった時点で相続人である必要があります。
しかし、離婚済みの場合、そもそも元配偶者の相続人となることはできません。
したがって、残念ながら、どれだけ財産の維持・増加に貢献が認められるとしても、この場合には寄与分は認められません。

父の会社に従業員として勤めて経営を支えていた場合

この場合、会社が法人である場合には、寄与分が認められにくい傾向があります。
原則として、法律上の手続では法人と被相続人を区別して扱います。
そのため、会社の発展に貢献がどれほど大きい場合であっても、被相続人の財産の維持・形成に貢献してないと評価されることもあります。
ただ、会社が法人であっても、父親の個人事業であれば、会社も父親個人の財産と認定できる場合もあり、寄与分が認められる可能性が生まれます。

義両親を介護していた場合

世間では、義理の両親を介護している方も珍しくなく、その負担も決して軽いものではありません。
しかし、義両親が亡くなった場合、法定相続人でない者は寄与分を受け取ることはできません。
法律上、被相続人の子どもは法定相続人になり得ますが、被相続人の子どもの配偶者は法定相続人として想定されていません(義両親の養子となれば、養子という立場に基づいて法定相続人となることはできます)。
そして、法定相続人とならない場合、寄与分が認められることもありません。

仕送りをしていた場合

被相続人に対して定期的な仕送りをしていた場合、仕送り額や頻度が通常、親族の扶養義務として期待される程度を超える限り、寄与分が認められる可能性があります。
そのため、親に仕送りを送っていたが、微々たる金額であったため親の財産が減るばかりであった場合には、寄与分が認められにくいです。

寄与分を認めてもらうのは難しいため、弁護士にご相談ください

被相続人の生前、被相続人の生活等に貢献してきたにもかかわらず、寄与分として認められないことがあります。
裁判所に寄与分を認めてもらうハードルが非常に高いため、相続人が十分な主張・立証を行ったと考えていても、実は不十分であったケースも少なくありません。
そのため、ご自身に寄与分が認めてもらえる余地があるか、認めてもらうにはどうすればよいのか、是非一度弁護士にご相談ください。

離婚する際に決めるべきことはいろいろありますが、なかでも「親権」についてはしっかりと決めておく必要があります。取り決めの内容によっては、離婚後、子供と一緒に暮らせなくなってしまう可能性がありますし、親権者が決まらないままでは、そもそも離婚することもできないからです。

ところで、親権とはどのような権利なのか、きちんと理解できていますか?
「親権について決める」といっても、具体的にどういった内容をどのように決めるべきなのか、疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
今回は親権に関する基礎知識について、親権を獲得するためのポイントや取り決める際の注意点などを中心に解説していきます。

親権とは

親権とは、子供の身のまわりの世話や教育、財産の管理などをする親の権利・義務をいいます。親子関係は生涯変わりありませんが、親権者が必要となるのは“未成年の子供”に限られます。
日本では、結婚している間、父母である夫婦は共同で親権を行使します(民法818条3項)。これを「共同親権」といいます。しかし、離婚後は「単独親権」となるので、親権者となった父母のどちらかしか親権を行使できなくなります(同法819条1項、2項)。
親権は子供の成長に関わる重大な権利・義務なので、離婚時に必ず「親権者をどちらにするか」を決めなければなりません。

なお、親権の内容は、財産管理権身上監護権に分けられます。以降、詳しくみていきましょう。

親権の種類

財産管理権

財産管理権とは、子供の財産に関する権利です。
具体的には、子供の財産を管理する権利と、財産に関する子供の法律行為を代理する権利を指します。
財産管理権によって、親権者は、例えば子供の預貯金口座の通帳を預かったり、出入金記録を把握したりすることができます。また、アパートの賃貸借契約やスマートフォンの利用契約を子供に代わって締結すること、または本人が契約する旨に同意することなども、財産管理権の一環として行うことができます。

なお、財産管理権を行使する親権者は、同時に子供の財産を守り、子供を保護する義務も負うと考えられています。

身上監護権

身上監護権とは、子供の心身の成長のために、身の回りの世話や教育をする権利です。単に「監護権」と呼ばれることもあります。
身上監護権の内容は、次のように分けることができます。

  • 監護教育権…子供を健やかに成長させるために必要な措置をとる権利
  • 居所指定権…子供の住む場所を指定する権利
  • 懲戒権…監護や教育に必要な範囲で子供にしつけをする権利
  • 職業許可権…子供にアルバイト等をすることを認める権利
  • 身分行為の代理権…子供が結婚や養子縁組等をする際に同意する権利、または代わりに契約を締結する権利

監護権を持つ親は、この権利に基づいて子供を保護し、成長を助ける義務も負うことになります。

親権と監護権について

監護権は親権の一部に含まれるので、基本的に「親権者(親権を持つ人)=監護権者(監護権を持つ人)」となります。
しかし、親権から監護権を切り離して、それぞれの権利を父母で分けて持つことも可能です。この場合、親権者は財産管理権を、監護権者は身上監護権をそれぞれ持つことになります。

ただし、親権と監護権の切り離しは、子供にとって本当にメリットがあるのか、混乱や葛藤を生まないかをよく考えたうえで、子供の利益を第一に行うべきだと考えられています。
例えば、子供の面倒をみるのは母親の方が適しているものの、浪費癖があるなど財産管理能力に大きな問題があるケースなどでは、監護権者を母親・親権者を父親といったように権利を切り離すメリットがあるでしょう。

親権が有効なのはいつまでか

親権は、基本的に子供が成人するまで行使することができます。
つまり、2021年7月時点では、子供が満20歳になるまでということになります。

ただし、2022年4月からは成年年齢が18歳に引き下げられるので、親権の有効期間は、子供が満18歳になるまでに短縮されます。

離婚の際に親権を決める流れ

親権をどちらが持つか決めるにあたっては、まずは夫婦で話し合います。
話し合いで決着がつかない場合は、離婚調停を申し立て、中立的な立場の調停委員を介して親権について話し合います。調停の中では、父母のどちらがより親権者として適任なのかを判断するために、必要に応じて、家庭裁判所調査官による調査が行われることもあります。
しかし、調停でも親権について合意できず不成立に終わった場合は、離婚裁判を提起して、最終的な判断を裁判所に委ねることになります。

親権獲得のためのポイント

親権獲得に向けて有利に事を進めるためにも、次のポイントをアピールすることをおすすめします。

・十分な監護能力があること
子供を養育できるだけの十分な監護能力があると認めてもらうためにも、心身ともに健康であること、家事ができ、経済観念にも問題がないことなどをアピールすると良いでしょう。

・監護実績があること

これまで子供の世話を適切にしてきた実績があれば、今後もしっかりと監護できる可能性が高いと判断されるため、親権を獲得するうえで有利になります。

・離婚後も子供を適切に養育できる環境を用意できること
子供と一緒に過ごす時間を長くとれるか、仕事などで忙しい場合には代わりに面倒をみてくれる監護補助者がいるかといった点も重視されます。有利な事情がある場合はアピールしましょう。

・子供との関係性が良好であること
日頃から子供と十分なコミュニケーションをとっており、適切な親子関係が築けていることも、親権を決める際に有利な事情となります。また、子供がある程度の年齢であれば、子供自身の意向も尊重されます。

父親が親権を取得することは可能?

父親でも親権を獲得することは可能です。 とはいえ、特に幼い子供は母性を感じさせる存在と暮らした方が健やかな成長につながると考える「母性優先の原則」があるため、一般的に、母親と比べて父親は親権を獲得しにくいといわれています。

しかし、親権者は「父親」か「母親」かではなく、より子供の福祉に適うのはどちらかという観点で決めるべきです。
したがって、母親より父親を親権者とした方が子供の健全な成長につながるとアピールできれば、親権を獲得できる可能性が高まるでしょう。
例えば、以下のような主張が効果的といえます。

  • 現在まで主に父親が子供の世話をしてきたこと
  • 子供が父親の方によりなついていること
  • 離婚後の監護能力や意欲も十分にあること 等

無職でも親権を獲得したい場合

専業主婦(主夫)だった方など、無職の方も親権を獲得できます。

そもそも親権者は、父母のうち、より子供にとって利益になる方を選ぶべきだと考えられています。 具体的には、これまでの監護実績や子供との関係性などが判断材料となりますが、父母の経済力はあまり重視されません。なぜなら、子供が自立するまでにかかる費用は父母で分担するべきだと考えられているので、無職の方が親権を獲得した場合、もう一方から養育費を支払ってもらえるからです。
このように、無職の方の経済面でのマイナスは、養育費を受け取ることである程度は補うことができます。

また、一人親家庭には複数の公的な扶助制度があります。こうした制度による補助金と養育費を合わせれば、子供を養育しながら暮らしていくことは十分にできると考えられるため、無職の方でも親権を獲得できる可能性は十分にあります。

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親権を決める際に注意すべきこと

安易に決めると後々の変更は困難です

一度決めた親権者を変更するには、家庭裁判所による親権者変更調停・審判の手続きを取らなければなりません。つまり、父母の話し合いだけで変更することはできなくなりますので、離婚時に、親権者について安易に決めることは避けるべきです。

また、親権者変更調停を申し立てたとしても、親権者の変更が必ず認められるとは限りません。
親権者の決定と同様、親権者の変更は子供の利益を第一に考えて行われるべきなので、子供の現在の生活環境を変えてでも親権者を変更すべき理由や必要性がなければ認められません。

したがって、下記のようなケースでなければ親権者の変更は難しいでしょう。

  • 子供が親権者から虐待や育児放棄などを受けているケース
  • 親権者が亡くなった、行方不明になった、または重病にかかったケース
  • 子供自身が親権者の変更を希望しているケース
  • 養育状況が大きく変わったケース

親権獲得後の養育環境で、親権停止・喪失する場合も

親権について決めた後であっても、子供の養育状況によっては、親権を一時停止したり(親権の停止)、喪失させたり(親権の喪失)することができます。それぞれの概要は以下のとおりです。

親権の停止
2年を超えない範囲で期限を設けて、親権を行使できないようにすることをいいます。
親権者が子供の進学や自立を邪魔しているなど、親権の行使が困難・不適当で、子供の利益を害しているときに「親権停止の審判」を申し立てることで、認められる可能性があります。

親権の喪失
親権者から親権を失わせることをいいます。
親権者が育児放棄や虐待をしているなど、親権の行使が著しく困難・不適当で、子供の利益が著しく害されているときに「親権喪失の審判」を申し立てることで、認められる可能性があります。

なお、親権の停止・喪失を請求できるのは、子供本人、子供の親族、検察官、児童相談所長などです(平成23年民法改正により)。

子を連れた勝手な別居は不利になる場合も

親権者を決める際には監護実績が重視されるので、“子供と一緒に暮らしている”という事実は、親権を獲得するうえで基本的に有利な判断材料となります。 しかし、夫婦で話し合いもせずに勝手に子供を連れて別居したような場合、「違法な連れ去り」と判断され、かえって不利な立場になってしまう危険があります。

例えば、別居している子供を通学路で待ち伏せして連れ去る、別居中に行った面会交流の際に子供を帰さないといった強引な方法での連れ去りは、違法と判断される可能性が高いでしょう。

一方、自分や子供を配偶者の暴力から守るために子供を連れて別居する行為は、子どもの利益を守る正当な理由があるとして、親権者の決定にあたって不利に働くことはないと考えられます。

親権を獲得できなかった場合の養育費について

親権者でなくとも、子供が自立するまでの養育にかかる費用は負担する必要があります。これを「養育費」といいます。
養育費には、子供の衣食住にかかる費用のほか、学費、習い事の費用、病院代、お小遣いなど、子供が生活するうえで必要になる費用全般が含まれます。

養育費を支払う義務は、親権のように、子供が成人したら当然に消えるわけではありません。あくまで“子供が自立するまで”は支払い続ける必要があります。
例えば、子供が高校卒業後に就職するようなケースでは、20歳未満でも自立したと考えられる一方、大学進学するケースでは、少なくとも大学を卒業するまでは自立していないと考えられるでしょう。
このように、養育費について取り決める際には、子供の進学の可能性等を考慮する必要があります。

親権が取れなかった側の面会交流について

離婚後に親権者ではなくなったとしても、「面会交流」によって、子供と交流することはできます。
面会交流とは、離れて暮らす親子が交流することをいいます。交流の手段はさまざまで、直接会ったり、時には宿泊をしたりするケースもあれば、手紙やメールのやりとり、電話やオンライン通話などで交流を図るケースもあります。

ただし、離婚時に面会交流のルールを細かく取り決めておかなければ、後々トラブルになって子供と会えなくなってしまうおそれがあります。親権を獲得できなかった場合を想定して、面会交流についてもきちんと話し合っておくことが大切です。

親権問題は弁護士に相談して入念な準備をしましょう

父母がどちらも親権者になることを希望する場合、激しい争いになってしまうことも珍しくありません。だからといって、離婚をすることに重点をおいて安易に妥協して親権者を決めることは避けるべきです。なぜなら、一度決めた親権者は簡単には変更できないからです。

親権を獲得されたい方は、ぜひ親権問題に強い弁護士にご相談ください。
弁護士は、ご相談者様の事情を丁寧に聴き取ったうえで、親権を獲得するために最良な方法を提案することができます。また、弁護士が代理人となって協議に臨むことで、冷静にお互いの主張を伝えられるようになるので、話し合いがスムーズに進む可能性があります。

特に弁護士法人ALGには、親権問題をはじめ、多数の離婚問題を取り扱った弁護士が在籍しています。親権問題でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。経験豊富な弁護士とスタッフが対応させていただきます。

離婚をする方法にはいくつか種類がありますが、そのなかでも一番手軽なものは「協議離婚」でしょう。時間や費用をかけずに離婚することができます。
しかし、一時の感情に流されて離婚してしまうと、のちのち後悔したりトラブルに発展したりしかねません。
そこで今回は「協議離婚」について、その概要やメリット・デメリット、全体の流れ、成立させるうえで決めておくべきこと、成立させられない場合の対処法などを解説していきます。
後悔のない選択をするためにも、ぜひ本記事で理解を深めてください。

協議離婚とは

協議離婚とは、夫婦の話し合いによって成立する離婚をいいます。夫婦が離婚することに合意し、必要事項を記入した離婚届を管轄の市区町村役場に提出すれば成立します。
調停離婚のように第三者に家庭の事情を知られる心配がなく、審判離婚や裁判離婚のように「離婚する法的な理由」も必要とされないので、最も簡単な離婚方法だといえます。そのため、日本で行われる離婚のうちの約90%をこの協議離婚が占めているといわれています。

協議離婚のメリット、デメリット

メリットについて

協議離婚には、次のようなメリットがあります。

・手続が簡単ですぐ離婚できる
協議離婚は、夫婦双方が離婚することに納得して離婚届を提出すれば、手続に不備がない限り成立します。離婚を認めるべき法的な理由があるかどうかは問われませんし、必ずしも離婚条件を細かく取り決めたり、取り決めた内容を書類にまとめたりしなければならないわけでもありません。そのため、夫婦が、離婚をすることや離婚条件に合意すれば、離婚をするのに時間もかかりません。

・費用がかからない
裁判所を介した離婚方法とは違い、夫婦の話し合いだけで離婚を成立させられるので、基本的に費用はかかりません。

・夫婦間のプライバシーが守られる
他の離婚方法のように裁判所などの第三者が介入しないので、夫婦間のデリケートな問題を他人に知られてしまう可能性が低いです。

デメリットについて

一方、次のようなデメリットもあるので注意しましょう。

・夫婦の関係性によっては、不利な離婚条件になってしまう可能性がある
モラハラを受けているなど、夫婦が対等に話し合える関係にない場合、一方が不利な条件を呑まされてしまう可能性があります。後になって離婚を撤回したり合意内容を変更したりすることは難しいので、離婚を切り出す前に、対等・冷静に話し合えるかどうかを一度考えてみましょう。

・のちのちトラブルになる可能性がある
協議離婚では、離婚時に未成年の子供の親権者を決めなければなりませんが、それ以外の離婚条件については必ずしも取り決める必要はありません。 そのため、子供のことやお金に関する問題をあやふやにしたまま離婚してしまい、将来的にトラブルに発展する事例も少なくありません。

協議離婚の流れや進め方

続いて、協議離婚の大まかな流れと具体的な進め方について確認しましょう。次項以下をご覧ください。

離婚を切り出し合意を得る

まずは配偶者に離婚したい旨を伝えます。このとき、感情的にならずに冷静に自分の考えを伝えることが重要です。離婚したい理由や求める離婚条件をメモにまとめておくなど、事前に準備しておくことをおすすめします。
また、配偶者の不貞などが理由で離婚を求めるときは、その証拠を集めて言い逃れができないように準備しておく必要もあります。

離婚条件についての話し合い

離婚する・しないだけでなく、離婚に伴う子供やお金の問題をどのように解決するのか、離婚の条件についても話し合っておくことをおすすめします。子どもの親権者については、離婚をするときに必ず決めなければならないので、夫婦で話し合いをしなければなりません。
他にも、次のような条件について話し合い、取り決めておくと良いでしょう。

  • 親権者をどちらにするか
    (未成年の子供がいる場合、離婚するには離婚後の親権者を決めておく必要があります)
  • 養育費の金額や支払方法
  • 面会交流のルール
  • 財産分与の金額や方法

親権者に関する取り決め以外は、離婚後に決めることもできます。
しかし、離婚後に元配偶者と話し合おうとしても、連絡先がわからなかったり、連絡はついても話し合いに応じてもらえなかったりすることが少なくありません。そのため、できるだけ離婚時に話し合って決めておいた方が良いです。

メールで済ませることは可能?

メールやSNSのメッセージのやりとりで離婚条件の話し合いをすることも可能です。相手からDVやモラハラを受けているなど、対面では落ち着いて話し合いができない場合や、別居していて顔を合わせることが難しい場合などに有用な方法といえるでしょう。
ただし、メールで離婚の意思を伝えても相手が真剣に受け取らず、無視されてしまう可能性があります。また、合意の証拠としては不十分なこともあるので、取り決めた内容は離婚協議書等の書面に残すことをおすすめします。

離婚協議書の作成

協議離婚では、離婚する旨や離婚条件についての合意を口約束で済ませることができてしまいます。しかし、後で言った・言わないのトラブルになることを防ぐためにも、合意内容を書面に残しておくことをおすすめします。
離婚に関する合意内容を記載した書面を「離婚協議書」といいます。離婚協議書を作成しておけば、離婚条件が守られなかったときに、協議書を証拠として裁判を起こすことができます。

また、強制執行認諾文言を盛り込んだ公正証書の形で作成しておけば、裁判をすることなく強制執行ができるようになります。つまり、離婚協議書(公正証書)を根拠に、相手の財産を差し押さえてお金を回収できるようになります。

離婚届の提出

離婚について夫婦で合意できたら、夫婦の本籍地またはどちらかの所在地の市区町村役場に離婚届を提出します。(どちらかの所在地の市区町村役場に提出する場合には、夫婦の戸籍謄本も併せて提出しなければなりません。)
協議離婚で提出する離婚届には、夫婦と証人2人の署名・押印が必要です。また、未成年の子供がいる場合は、親権者を指定して記入しなければなりません。
なお、夫婦が揃って離婚届を提出する必要はなく、どちらか1人だけ、あるいは代理人が提出することにしても問題ありません。

協議離婚の証人になれる人

協議離婚では、夫婦それぞれが自分の意思で離婚届に署名・押印したことを証明する証人が2人必要です。
証人は、20歳以上で夫婦が離婚する事実を知っていれば、夫婦とどんな関係性にある人でもなることができます。また、夫側の証人・妻側の証人というような区分もないので、夫婦のどちらかが2人まとめて証人を選ぶことも可能です。

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協議離婚で決めておいた方が良いこと

離婚後トラブルになることを避けるためにも、お金と子供に関する問題について話し合って取り決めておくことをおすすめします。具体的には、次項以下で説明する事項を取り決めると良いでしょう。

なお、協議離婚では、夫婦の合意さえあれば離婚条件について自由に決めることができます。そのため、相手方が応じるのであるならば、相場から外れた内容を離婚条件にすることも可能です。

財産分与

財産分与とは、結婚生活を送るうえで夫婦が協力して作り上げた財産を、それぞれの貢献度に応じて分け合うことです。
とはいえ、財産形成への貢献度を実際に数値にすることは難しいので、2分の1ずつ分けることになるケースが多いです。しかし、協議離婚の場合、夫婦で合意さえできれば分与の割合を自由に変えることができます。

子供がいる場合

親権

子供がいる夫婦が離婚する際には、夫婦のうちどちらがその子の親権者となるかについて“必ず”決める必要があります。離婚届には親権者について記入する欄があり、この記載がないと届出したところで受理してもらえません。
親権とは、子供を育てたり、その財産を管理したりする権利のことで、この親権を持つ人が「親権者」となります。なお、対象となる子供は婚姻していない未成年に限られます。
協議離婚の場合は、話し合いで親権者を決めた後、離婚届の親権者の欄に名前を記入して役場に提出することになります。

養育費

養育費とは、子供が一人立ちするまでにかかる監護や教育のための費用です。例えば、学費・習い事の費用、医療費、衣食住に必要な費用などが挙げられます。
養育費は、子供の面倒をみている親に対して、そうでない方の親が定期的に支払います。金額には相場がありますが、協議離婚の場合、夫婦で合意できれば相場以上又は相場以下の金額に設定することも可能です。
また、特に協議離婚の場合は、支払方法や支払期間、支払日などのルールがあいまいになりがちなので、明確に決めておくことが重要です。

面会交流

面会交流とは、離婚や別居が理由で離れて暮らしている親子が交流することをいいます。対面で話をするといった方法はもちろん、手紙やプレゼントをやりとりする、テレビ電話などで通話するといった交流方法も面会交流にあたります。
安心して面会交流を行うためには、面会交流の頻度や時間・場所・方法などのルールを具体的に決めておく必要があります。特に協議離婚では、離婚後にトラブルに発展することも少なくないので、詳細について話し合っておくと良いでしょう。

離婚慰謝料は請求できるのか

離婚の方法によって慰謝料が請求できなくなるということはないので、協議離婚であっても慰謝料を支払ってもらえる根拠があれば離婚慰謝料を請求できます。
慰謝料とは、精神的な苦痛を受けたときに支払ってもらえる賠償金であり、特に離婚に関連して受けた精神的苦痛に対して支払われるものを「離婚慰謝料」といいます。例えば、配偶者の浮気やDVといった不法行為が原因で離婚することになり、精神的な苦痛を受けたようなときには慰謝料を請求できます。

ただし、協議離婚をする理由の多くは「性格の不一致」など、夫婦のどちらが悪いとはいえないものなので、離婚慰謝料を請求できるケースは限られているでしょう。

協議離婚にかかる期間

協議離婚は一般的に数ヶ月程度で成立することが多いです。とはいえ、揉める問題がなければ話し合いを始めたその日にでも離婚を成立させられますし、逆に問題が多ければ離婚成立まで数年かかることもあります。
夫婦の事情によって最適な離婚方法は異なるので、まずはご自身のケースで協議離婚が適しているかどうかを確認することをおすすめします。

協議離婚が成立しない場合

協議離婚は夫婦の合意によって成立するので、相手が離婚に応じなければ成立しません。
例えば、夫婦の一方がどうしても離婚したくない場合や、親権や財産分与・養育費・面会交流などの離婚条件についてどちらも主張を譲らない場合には、協議離婚を成立させることはできません。

では、このような場合にはどういった対応をすれば良いのでしょうか?以下、ご説明します。

別居する

まずは別居してみることをおすすめします。
離れて暮らすことで冷静に話し合えるようになったり、離婚を頑なに拒んでいた配偶者が話し合いに前向きになったりすることがあるので、離婚への道筋が見えてくる可能性があります。
また、別居期間がある程度長くなり婚姻関係が破綻したと認められると、裁判などで法的に離婚が認められるようになります。

離婚調停へ

別居をしても離婚の話し合いがうまくいかなければ、離婚調停を申し立てて調停での離婚を目指してみると良いでしょう。
離婚調停とは、裁判所の調停委員が夫婦の話し合いを仲介・調整し、離婚問題の解決を図る裁判所の手続をいいます。協議離婚と同じく夫婦の合意で離婚が成立しますが、第三者が話し合いに介入する点で異なります。
話し合いが円滑に進みやすくなるほか、離婚条件などの争点が整理されるので離婚後のトラブルが起こりにくくなる一方、協議離婚よりも離婚成立までに時間がかかるケースが多いです。

夫婦だけでのやりとりとなる協議離婚は難航する場合が多くあります。不安なことがあれば弁護士に依頼してみましょう

協議離婚では、基本的に夫婦の合意だけで離婚が成立します。しかし、どれだけ話し合いを重ねても、夫も妻も主張を譲らなければいつまでたっても離婚は成立しません。
また、離婚後のトラブルを回避するためには、離婚条件を細かく決めておくことが大切ですが、当事者である夫婦だけで漏れのないように取り決めていくのは難しいものです。
この点、交渉のプロである弁護士なら、争点を整理し、ご依頼者様の主張をより効果的な形で相手に提示することができます。そのため、話し合いがスムーズに進む可能性が高まりますし、ご依頼者様にとってより有利な離婚条件になるよう手を尽くします。 弁護士に依頼することで得られるメリットはいろいろあるので、協議離婚を考えている方は、ぜひ弁護士への相談をご検討ください。

過失割合とは、発生した交通事故に対する当事者の責任の大きさを割合にしたものです。そのため、9対1、8対2、7対3のように、加害者と被害者の過失割合を合わせると10割になるのが基本です。しかし、過失割合が9対0のケースなど、それぞれの過失割合を合計しても10割にならないことがあります。
今回は、過失割合9対0という例外的なケースについて詳しく解説していきます。
この考え方を理解することで、受け取れる賠償金を増額させたり、示談交渉を早期に終わらせたりできる可能性があるので、ぜひご確認ください。

交通事故の過失割合9対0ってどういうこと?

【過失割合9対0】と目にすると、一見、「加害者の過失が9割、被害者の過失がない」と受け取れますが、決してそうではありません。過失割合は、お互いの過失を合わせて【10割】となるのが基本ですので、加害者の責任はあくまでも9割であり、残りの1割は、被害者に課せられた過失です。
そのため、加害者に対する賠償請求は、被害者の損害の9割に留まります。
ただし、ここでポイントとなるのが、9対0の場合、本来加害者に対して支払わなければならない損害賠償金が免除されるという点です。このため、1割の賠償金を支払わなければならない9対1のケースと比べて、受け取れる損害賠償金は増額することとなります。

このように、事故の当事者双方に過失がある場合でも一方だけが賠償金を支払うことを「片側賠償」といいます。片側賠償には、9対0のケースだけでなく、8対0や7対0といったケースもあります。

9対0(片側賠償)になる仕組み

片側賠償は、過失割合について被害者と加害者がなかなか合意できないときに妥協策として提案されることがあります。
例えば、被害者が10対0を主張しているところ、加害者が9対1や8対2の主張を譲らず交渉が進まないような場合に、それぞれの折り合いをつけるための案として9対0の過失割合が提案されます。
この場合、被害者は過失割合で支払う賠償金がない分、受け取ることのできる損害賠償金が増えますし、加害者も支払わなければならない損害賠償金を減らすことができるというメリットがあるので、お互いに譲歩しやすくなります。

交通事故の過失割合9対0の計算例

片側賠償について、文字で説明するだけではなかなかイメージがつかないと思うので、実際に、過失割合が9対0の場合に被害者が受け取れる賠償金を計算してみましょう。

【例】損害額:加害者500万円、被害者800万円の場合

被害者には1割の過失があるので、損害額から1割を差し引いた残額が、損害賠償金として請求できる金額となります
「請求できる金額=800万円×(10割-1割)=720万円」

一方、被害者は加害者への賠償金の支払いが免除されるので、
「支払う金額=0円」

したがって、最終的な請求金額は720万円となります。

これを加害者が支払うべき賠償金と併せてまとめると、下記の表のようになります。

加害者 被害者
過失割合 9 0
損害額 500万円 800万円
請求できる金額 0円 720万円
支払う金額 720万円 0円
最終的な請求金額 0円 720万円

また、過失割合が10対0のケース・9対1のケースとも比較してみましょう。

【10対0のケース】

被害者に過失がありませんので、被害者は損害額の満額を賠償金として請求できますし、加害者に対して賠償金を支払う必要がありません。
最終的な被害者の請求金額は800万円となります。

9対0のケースと比べて、損害賠償金が80万円増額することになります。

【9対1のケース】

9対0のケースと同様に被害者の過失は1割なので、被害者が請求できる金額は次のとおりです。
「請求できる金額=720万円」

しかし、賠償金の支払義務は免除されないため、加害者の損害額の1割を支払わなければなりません。
「支払う金額=50万円」

したがって、最終的に請求できる金額は、
「720万円-50万円=670万円
となるので、9対0のケースと比べて50万円減額してしまうことになります。

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過失割合9対0のメリット・デメリット

メリット

過失割合を9対0にするメリットには、下記のとおり様々なものがあります。

  • 最終的にもらえる賠償金が増える
    過失相殺(過失割合に相当する金額を損害賠償金から差し引くこと)はされてしまいますが、加害者に損害賠償金を支払う義務がないので、最終的にもらえる損害賠償金は増額します。
  • 保険の等級が下がらない
    また、加害者の損害を賠償しなくて済むので、基本的に自分の保険を使用する必要がありません。そのため翌年度の保険等級が下がりません。
  • 早期解決しやすくなる
    被害者と加害者の主張の折衷案にあたるので、お互いの譲歩を引き出しやすく、裁判で争う場合と比べて早期に解決できる可能性が高いです。
  • 保険会社に示談内容の調整をお願いすることができる
    被害者に完全に過失がない10対0の場合、被害者側の保険会社は保険金を支払う義務がありません。つまり、その事故について利害関係がないので、保険会社は被害者に代わって示談交渉を行うことができません。
    一方、被害者に過失がある9対0のケースでは保険会社は利害関係があるので、被害者は保険会社に相手方との示談内容の調整を依頼することができます。

デメリット

9対1のケースと比べてもらえる金額が増えるといっても、請求できる損害賠償金は満額ではなくそのうちの9割です。つまり、完全に過失のない10対0のケースでもらえる損害賠償金よりは、どうしても低額になってしまいます。この点はデメリットといえるでしょう。

交通事故の過失割合を9対0に修正できた解決事例

弁護士法人ALGの介入により、過失割合を9対0に修正できた実際の事例を2件ほどご紹介します。

粘り強い交渉によって8対2から9対0に修正することができた事例

一時停止を無視した加害車両が、優先道路を走行していた依頼者に衝突してきた交通事故で、過失割合は8対2だと主張して譲らない保険会社と争った事例です。
交渉は難航しましたが、弁護士が過去の裁判例を引き合いに、事故の態様からみて相手方の過失が大きく、保険会社の主張は不当であることを粘り強く主張した結果、過失割合を9対0に修正することに成功しました。
加えて、車両価値の低下に対する賠償として修理費の1割相当の金額を支払ってもらうほか、慰謝料も引き上げる内容で示談を成立させることができました。

過失割合5対5の駐車場内の事故を9対0へ修正することができた事例

スーパーの駐車場内で、前方からバックしてきた加害車両が依頼者の乗っている車に衝突してきた交通事故の事例です。加害者が車の損害調査を拒否し、加害者側の保険会社も過失割合を5対5と主張するばかりで交渉を拒んだため、個人での交渉に限界を感じて弊所にご相談くださることになりました。
受任後すぐに、ドライブレコーダーの映像や依頼者側の保険会社から提供された資料を調査したところ、過失割合は9.5対0.5が妥当だと思われたため、その旨を主張して交渉を開始しました。
長期に渡る交渉の後、加害者側保険会社から、「合意書を作成しないなら95対5で合意する」という条件が提示されました。しかし、この条件は依頼者にとってかなりのリスクが高く受け入れられないものでした。そこで保険会社の担当者の上席と交渉したところ、上席名義の示談書面を作成したうえで過失割合を9対0とすることに成功しました。

弁護士が介入することで、依頼者の負担を軽減しつつ、納得できる過失割合での示談を導くことができた事例です。

交通事故の過失割合を9対0にするためには弁護士にご相談ください

少しでも過失割合があると、過失相殺により、こちらから請求できる金額が減るだけでなく相手の損害も賠償しなければならなくなるので、もらえる賠償金が減ってしまいます。また、相手方の損害額によっては、こちらの過失割合の方が小さくても、支払わなければならない賠償金がもらえる賠償金を上回ってしまうこともあります。納得できる賠償を受けるためにも、過失割合で妥協しないことが重要です。

とはいえ、相手方や保険会社の主張に対抗するためには、対等以上に交渉する必要があります。
この点、交通事故事案を数多く取り扱った経験のある弁護士なら、事故状況を正確に把握して交渉に臨めるので、片側賠償の主張を認めさせられる可能性が高まります。さらに、妥協案である9対0ではなく、10対0で着地できる可能性も大幅に高まります。
今後の交渉の方針等についてアドバイスさせていただきますので、ぜひ弁護士への相談をご検討ください。

交通事故に関する争いの解決を目指す方法としては、協議や調停、訴訟手続など、様々なものが挙げられます。そのうちのひとつに「交通事故紛争処理センター」を利用する方法があります。しかし、これがどのような機関なのか、よく知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで今回は、交通事故に関する争いを公平に解決することを目的としている「交通事故紛争処理センター」について、その概要や利用する際の流れなどを解説していきます。

交通事故紛争処理センターとは

交通事故紛争処理センターとは、ADRを専門的に行う機関のひとつで、交通事故の被害者と加害者(または加害者が加入する保険会社)の争いを解決するために公正・中立な立場からサポートを行っています。具体的には、交通事故問題に関する法律相談、和解あっせん、審査などを無料で行っています。
本部は東京に置かれていますが、さらに7つの支部と3つの相談室が全国に展開されています。

なお、ADR(裁判外紛争解決手続)とは、公正な第三者に介入してもらうことによって、裁判手続に頼らずに争いを解決しようとする手続をいいます。
交通事故紛争処理センターの業務のうち、和解・あっせん業務がADRにあたります。

交通事故紛争処理センターでできること

交通事故紛争処理センターで受けられるサポートについて、簡単にみてみましょう。

和解あっせん

交通事故紛争処理センターが行う和解あっせんとは、センターでの相談を担当している公正・中立な立場にある弁護士が、事故の当事者双方から事情を聴き取ったうえで、和解するためのあっせん案(解決方法)を提示するものです。資料が揃っていれば、3~5回程度の和解あっせんで9割以上は和解が成立します。

審査

和解あっせんが成立しなかった場合、当事者は法律の専門家による審査を申し立てることができます。
審査を行うのは、法学者・裁判官経験者・弁護士などで構成される審査会です。審査では、審査会が当事者からそれぞれの主張や事情を聴き取った後、事故の状況や争いとなっている問題点について、過去の裁判例などを参考に検討し、最終的な損害額を決定します。そして、決定した内容を裁定という形で当事者に告知します。

弁護士の無料紹介

交通事故紛争処理センターでは、法律相談やその後の和解あっせんなどの業務を、センターから委託されている弁護士が行います。そのため、初回の法律相談の際に、相談を担当する弁護士(相談担当弁護士)を無料で紹介してもらえます。
なお、紹介された相談担当弁護士を途中で変更することは基本的にできないので、注意が必要です。

交通事故の示談交渉についての無料相談

交通事故紛争処理センターを利用する場合、まずは、和解あっせんに進むことを前提とした法律相談を受けることになります。
法律相談では、センターから紹介された相談担当弁護士が事情を聴き取り、申立人が提出した資料を確認したうえで、問題点を整理したり解決に向けたアドバイスを行ったりします。
なお、センターは交通事故の示談に関する争いを解決する機関なので、示談交渉を始められない段階での相談は受け付けていません。つまり、事故直後や治療途中、後遺障害等級認定申請中は、センターを利用することはできないので気をつけましょう。

交通事故紛争処理センター利用のメリット・デメリット

交通事故紛争処理センターの利用を検討するにあたって、メリットとデメリットを比較する必要があります。そこで、次項以下でメリットとデメリットについて、それぞれ説明していきます。

メリット

申立費用が無料

交通事故紛争処理センターで受けられる、弁護士の法律相談や和解あっせん、審査手続などはすべて無料です。裁判所の手続のように申立費用がかかることはありません。
加害者側に通知を出すための通信費用やセンターへ出向くのにかかる交通費、各種資料や証明書の取得料金などの費用はかかりますが、こうした最低限の費用を支払うだけで、交通事故の専門家のサポートを受けることができます。

期間が短い

交通事故紛争処理センターの手続は、申立てから大体2~3ヶ月で終了するのが一般的で、センターに出向く回数も数回程度で済むことが多いです。これに対して、裁判手続は短くとも1年程度はかかるので、その分出向く手間も増えます。
このように、センターを利用する場合は裁判を申し立てる場合と比べて、少ない労力で早期解決を図ることができます。

公平公正な機関で信頼性が高い

交通事故紛争処理センターで当事者双方の仲裁をするのは、交通事故問題に精通し、豊富な実績を持つ弁護士です。専門家である弁護士のサポートを受けながら和解を進めることができるので、公平な解決をすることができる可能性が高いです。

弁護士基準ベースの高額の賠償額が見込める

交通事故紛争処理センターを利用すると、一般的な保険会社との示談交渉で提示される賠償金と比べて、高額の賠償金を獲得できる可能性が高いです。なぜなら、通常弁護士や裁判所が損害賠償金を計算する際に利用する算定基準を利用できるようになるからです。
交通事故の損害賠償額は、計算に利用する算定基準によって大幅に変わります。保険会社との示談交渉では、通常最も低額の基準かそれに少し上乗せした基準で計算した賠償金を提示されることが多いです。
しかし、交通事故紛争処理センターでは知識の豊富な弁護士の力を借りられるため、高額の賠償金を計算できる算定基準を利用することができます。

デメリット

依頼できるケースが限られる

交通事故のケースによっては、交通事故紛争処理センターを利用できないことがあります。
下記にセンターを利用できないケースを挙げたので、ご自身があてはまらないかどうか、ぜひ一度ご確認ください。

  • 自転車対歩行者、または自転車同士の交通事故のケース
  • 被害者が自分の加入する保険会社と争っているケース
  • 後遺障害等級認定について争っているケース
  • (和解あっせんを予約する時点で)既に裁判や調停が行われているケース
  • 既に他のADR手続などを進めているケース
  • 怪我の治療、後遺障害等級認定の申請、異議申立てがまだ終わっていないケース
  • 加害者が任意保険に加入していないケース(加害者が同意した場合には、利用できる可能性があります)

遅延損害金を請求できない

交通事故紛争処理センターで示談する場合、遅延損害賠償金を請求できないこともデメリットのひとつといえます。
裁判で損害賠償を請求する場合には、事故日から賠償金が支払われるまでの遅延損害金も併せて請求できるのが通常です。しかし、センターが行う和解あっせんや審査は裁判手続の一環ではないので、遅延損害金は請求できません。
そのため、裁判を行う場合と比べて、もらえる賠償金の総額が少なくなってしまう可能性があります。

弁護士を変えることができない

交通事故紛争処理センターでは、相談を担当してくれる弁護士を自分で選ぶことはできません。また、相性が悪い、知識や経験が不足していると感じたとしても、手続の途中で変更することはできません。
加えて、個人で依頼する弁護士とは違い相談担当弁護士は公平中立の立場であるので、必ずしも被害者の利益を最優先に考えて対応してくれるわけではない点にも注意が必要です。

何回も出向く必要がある

交通事故紛争処理センターで法律相談や和解あっせんを受ける際には、基本的に被害者自身が期日に出席する必要があります。しかし、センターは本部・支部・相談室を合わせて全国に11箇所しかなく、また、平日の午前9時から午後5時までしか受け付けていないので、人によっては交通費の負担が重かったり、仕事を休まなければならなかったりします。
すべての手続が終了するまでに何回も出向かなければならないので、その点はデメリットといえるでしょう。

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交通事故紛争処理センターを利用した解決までの流れ

交通事故紛争処理センターを利用して示談を目指す場合、以下のような流れで手続を進めることになります。

➀和解あっせんの申込書提出

交通事故紛争処理センターを利用する場合には、必ず事前に電話などで予約をする必要があります。
電話で初回の法律相談の日程を決めたら、センターでの法律相談や和解あっせんの申込みに必要な書類に関する説明資料が送られてくるので、当日に備えて提出書類を準備します。
そして、相談日当日になったらセンターへ出向き、受付窓口に利用申込書や関係資料等を提出することで、センターの利用手続を完了します。

➁初回相談

交通事故紛争処理センターの法律相談は、基本的に和解あっせんすることを前提として行われます。そのため、相談担当弁護士は、まずセンターの利用を申し込んだ申立人の主張を聴き取ったり、提出資料を確認したりして、和解あっせんの可否を判断したうえで、問題点の整理や解決に向けたアドバイスなどを行います。
相談内容によっては、裁判所の手続の利用を提案したり、センター以外の相談機関を紹介したりすることがあるので、相談だけで手続が終了することもあります。

➂相談担当弁護士による和解あっせん

申立人が和解あっせんを希望し、相談担当弁護士も和解あっせんの必要性を認めた場合に、和解あっせん手続が始まります。
和解あっせんは、1回あたり1時間以内を目安に、大体2週間~1ヶ月程度の間隔で繰り返し行われます。相談担当弁護士は、期日ごとに、当事者にとって公正な損害額となるように調整して解決策(あっせん案)を提示します。

➃あっせん案合意

相談担当弁護士から提示されたあっせん案について、当事者双方が同意すると、あっせん案の内容で和解が成立することになります。一般的に、3回目までの和解あっせんで7割、5回目までで9割以上は和解が成立します。
なお、あっせん案には「本事故について、今回請求した損害以外には何も請求しません」という約束(清算条項)が含まれており、同意すると、改めて裁判等で争うことができなくなるので注意が必要です。

あっせんが不合意になった場合は審査申立

あっせん案で合意できず、和解あっせんが不調に終わった場合には、当事者双方に対してその旨が通知されます。
通知を受けた当事者は、14日以内に交通事故紛争処理センターに申し立てることで、第三者である審査会の判断を仰ぐ審査を受けることができます。

審査会による審査

審査会による審査では、和解あっせんの際に当事者から提出された証拠・資料に基づき、改めて当事者それぞれの主張の聴き取りが行われます。そして、最終的な損害額について、裁定という形で判断が下されます。つまり、審査は和解あっせんなどとは異なり、当事者が協議を行う場ではありません。
裁定が告知されたら、申立人は、同意するかしないかを14日以内に交通事故紛争処理センターに回答します。期間内に回答しなければ同意しなかったものとみなされ、センターでの手続はすべて終了することになります。
なお、保険会社は裁定を拒否することができないので、必ず同意したものとして扱われます。

裁定でも決まらない場合は

審査会の裁定によっても示談できなかった場合は、交通事故紛争処理センターでの手続がすべて終了するため、裁判などの他の手段で問題を解決することになります。
センターでの手続が終了した後、同じ交通事故について再びセンターを利用することはできないので注意が必要です。

物損事故の場合にも交通事故紛争処理センター(ADR)は使えるのか?

交通事故紛争処理センターの利用は人身事故に限りません。物損事故でも利用可能です。
物損事故の場合、和解あっせん手続の取り扱いは、2回で終了するのが通常です。
また、審査会による審査も申し立てることができますが、一定の条件を満たさない場合には審査が行われないこともあります。

紛争処理センターを利用し、過失割合や賠償額共に有利にすすめられた解決事例

ここで、弁護士法人ALGがご依頼を受け、紛争処理センターを活用して有利な結果へと導くことができた実際の事例をご紹介します。

依頼者が車で優先道路を走行中、一時停止せずに交差道路から進入してきた加害者の車に衝突されて車両ごと横転し、左手首の関節に後遺障害が残ってしまった事例です。
当初、保険会社は依頼者に不利な過失割合を主張していたので、弊所は現地調査や刑事記録の精査を重ねたうえで、各種証拠を交通事故紛争処理センターに提出して適正な過失割合を主張しました。
また、保険会社から提示されていた損害賠償額も最低限の金額だったため、弊所で計算し直して改めてセンターに提示しました。
こうした活動の結果、損害賠償金を当初の提示額である約275万円から約725万円増額させることに成功し、最終的に約1000万円を支払ってもらう内容で示談を成立させることができました。

交通事故紛争処理センターを利用するときでも弁護士にご相談ください

交通事故紛争処理センターを利用すると様々なメリットを受けられますが、利用できるケースは限られています。また、センターは当事者のどちらにも味方しない公正・中立の機関であるため、センターから紹介される相談担当弁護士も、被害者の完全な味方になってくれるわけではありません。
そのため、弁護士に自分と同じ立場になって一緒に戦ってもらいたいという方は、ご自身で弁護士に依頼したうえでセンターを利用することをおすすめします。
弁護士に依頼したからといってセンターを利用できなくなるということはありませんし、頼もしい味方とともに手続を進めることができるので、むしろメリットになります。弁護士費用特約という保険の特約に加入していれば、自己負担なく弁護士に相談・依頼できるので、まずはお気軽にお電話ください。

ある財産が、被相続人の相続財産に含まれるかどうかは、相続人にとっては、自身の相続財産の取り分に影響を及ぼすことがあります。そのため、相続財産にどの財産が含まれるのかは非常に重要な問題であり、相続財産の範囲が争いになることは少なくありません。
相続財産の範囲を決めるうえでは、相続人間で協議をするのが基本になってきますが、協議だけでは解決できないこともあり、遺産確認の訴えを提起して、裁判所の判断で解決することも一つの選択肢となります。

遺産確認の訴えとは(遺産確認訴訟)

遺産確認の訴えとは、遺産確認訴訟と呼ばれることもあります。遺産確認の訴えは、被相続人の財産のうち、相続財産に含まれるものがどれであるかを判断し、相続財産の範囲、つまり、遺産の範囲を確定させるために行うものです。
訴訟の結果には、事後の裁判において、当該訴訟の判決と矛盾する判断してはならないという裁判所への拘束力である既判力という効力が認められます。そのため、遺産確認の訴えにおいて、遺産の範囲を確定させておけば、後々になって遺産の範囲で揉める心配はなくなることになります。

遺産確認の訴えで認められた財産は誰のもの?

遺産確認の訴えは、あくまでも、ある財産が被相続人の相続財産に含まれることを判断するだけであることから、遺産確認の訴えで勝訴しても、ある財産について、訴えを提起した者の財産であると認められるわけではないということには注意が必要です。
ある財産が相続財産に含まれることが確定した時点では、誰のものとも決まってはいませんので、相続人間で遺産分割協議を行う必要があります。

どんな時に遺産確認の訴えを利用すると良い?

遺産の範囲に争いがある場合・相続財産に含まれるかどうか曖昧な場合

遺産確認の訴えの提起を検討する場面として、相続財産の範囲に争いのある場合があります。具体的には、被相続人が亡くなる直前に、被相続人から特定の相続人に名義変更された不動産、あるいは、被相続人が特定の相続人名義で積み立てていた預貯金などがあるときには、形式的には、被相続人以外の所有となっている財産について、実質的には被相続人の財産と判断できるのかが問題となり、相続財産の範囲が争いになることが多いといえます。また、被相続人と口約束で財産を受け取ることを約束していた相続人がいるときにも、口約束の内容の証明は容易ではなく、相続財産の範囲が争いになることは少なくなりません。

相続財産がどれくらいあるか不明な場合

遺産確認の訴えの提起を検討する場面として、相続財産の全体像は不明確な場合があります。ある相続人からすると、別の相続人が、被相続人の財産を隠している疑いを持っているケース、被相続人の財産のうち、発見されていないものがまだあるはずと考えているケースなどでは、自分以外の相続人を相手方として、遺産確認の訴えを提起し、裁判所を通じて、被相続人の財産の全体像を確定させていくことになります。

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遺産確認の訴えを起こす方法

遺産確認の訴えを提起するために、自身の主張を記載した訴状を作成し、裁判所に提出する必要があります。訴状を作成するうえでは、相続関係を証明するための戸籍謄本や住民票、相続財産の中身を証明するための不動産登記簿、通帳、被相続人が遺言書を作成している場合には遺言書など、相続財産の範囲を判断するうえで必要となる証拠を一緒に提出する必要があります。
遺産確認の訴えは、固有必要的共同訴訟と呼ばれる類型の訴訟になるため、相続財産の範囲を争っている相続人だけでなく、相続人全員を相手方として訴えを提起する必要があります。訴えを提起する先の裁判所は、被相続人の最後の住所を管轄する裁判所とすることが多いと思われますが、法律上、管轄が認められる裁判所であれば(例:被告の住所地)、どこにでも訴えを提起することができます。

遺産確認の訴えにかかる費用

遺産確認の訴えを提起する場合、確認の対象となる被相続人の財産の価額に応じて、裁判所に手数料を支払う必要があります。手数料は、印紙で支払うことになるところ、相続財産の規模が小さい場合、印紙代は数万円程度にとどまりますが、1億円を超えるような規模の相続財産がある場合、遺産確認の訴えを提起するだけでも印紙代が数十万円かかります。
遺産確認の訴えの提起を検討するでは、訴訟をすることの手間だけでなく、裁判所に支払う手数料のことも念頭に入れる必要があります。

遺産分割訴訟でも財産は確定できる

遺産の範囲を確定させたい場合、遺産確認の訴えを提起する以外に、遺産分割訴訟を提起するという方法もあります。
遺産分割という言葉から混乱が生じるかもしれませんが、遺産分割自体は、調停及び審判という裁判所の手続で解決することになるため、遺産分割自体を争う訴訟はありません。
ここでいう遺産分割訴訟というのは、①ある財産が、自身の固有の財産であることの判断を求める所有権確認訴訟、②ある財産は、相続人からの共有財産であることの判断を求める共有持分確認訴訟であり、遺産分割の前提となる相続財産の範囲を争うことになる点では、遺産確認の訴えを類似する点もあります。
遺産確認の訴えと異なるのは、遺産分割訴訟で勝訴した場合、①の訴訟であれば、特定の財産が特定の人の所有であることが確定しますし、②の訴訟であれば、特定の財産が特定の人たちの共有であることが確定する点で、相続財産の範囲を確定するのにとどまらないということです。

遺産確認の訴えに関する判例

遺産確認の訴えは、遺産の範囲を争いたい意向があれば、誰でも提起できるものではなく、法律上、遺産確認の訴えを提起することができると認められる当事者適格が必要となります。
当事者適格に関する判例として、平成2月14日最高裁第二小法廷判決があります。この判例は、被相続人の死後、かなり長期間が経過した後に遺産の範囲が問題となった事案において、ある相続人が、被相続人の死亡後、遺産の確認の訴えまでの間に自らの相続分を他の相続人に譲渡した場合、相続分を譲渡した相続人は、遺産確認の訴えの当事者適格を有しないと判断したものです。
つまり、かつては相続人であっても、相続分を譲渡した場合には、遺産確認の訴えの当事者となることはできないということになります。

遺産確認でお困りなら弁護士にご相談ください

相続財産の範囲に関する争いは、相続において頻繁に起こる争いですが、相続財産の範囲を決めないことには遺産分割協議を進めることはできず、いつまでも相続の問題を解決することはできません。ある財産が相続財産に含まれるかどうかは、遺言書の解釈や証拠の分析など法的な視点からの検討を要することも多いといえます。相続財産の範囲をきちんと整理し、適切な遺産分割協議に臨むためにも、相続財産の範囲でお悩みを抱えている方は、ぜひ一度弁護士に相談されてみてください。

通常、被相続人が死亡時に有していた財産が、遺産分割をする際の対象となります。もっとも、税法上は、民法上の相続財産の他にも相続財産としてみなされ、課税の対象となることがあります。相続において、この相続財産(いわば「本来の相続財産」)と「みなし相続財産」の違いを知ることは重要となります。

みなし相続財産とは

民法上は、被相続人が生前有していた財産ではないため相続財産にはあたらないものの、被相続人の死亡をきっかけとして得る点で、民法上の相続財産と性質が類似していることから、その財産も相続財産としてみなされる財産があります。この税法上、相続財産として課税の対象となる財産を、みなし相続財産といいます。

みなし相続財産になるのはどんなものか

では、どのような財産がみなし相続財産となるのか、以下で解説します。

生命保険金

生命保険金は、保険会社との保険契約において、受取人と指定された人が受領するものです。被相続人が保険会社と締結していた保険契約の内容に基づいて、保険金の受取人の立場で受領しているものですので、民法上の相続財産には含まれません。しかし、被相続人の死亡によって財産を受領する点で、相続財産と類似しているため、税法上は、相続財産としてみなし、課税の対象となります。

死亡退職金

死亡退職金は、退職金規定により、被相続人の死亡によって受領するものですので、退職金規定に基づいて、退職金の受領権利者の立場で受領するものですので、民法上の相続財産には含まれません。なお、退職金規定がない場合であっても、死亡退職金が、遺族の生活保障という目的で支払われる点は同一なので、退職金規定がある場合と同様相続財産にはなりません。もっとも、被相続人の死亡をきっかけとして退職金を受領できる点で、相続財産と類似しているため、税法上はみなし相続財産として対象となります。

借金の返済が免除、または減額された場合(債務免除益)

相続人が被相続人から1000万円を借りていたとします。そして遺言により、その返済が免除された場合、相続人は1000万円の「債務免除益」を得ることとなり、遺贈により取得したものとみなされ相続税の課税対象となります。

特別縁故者への分与財産

特別縁故者とは、被相続人の生前に、被相続人と特別な関係にあった人であり、かつ、家庭裁判所から認定を受けた人をいいます。典型例としては内縁の妻や内縁の夫が家庭裁判所に対し、特別縁故者の申立てをした結果、認められたというケースが挙げられます。このような特別縁故者に対する相続財産の分与は、遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります。

定期金に関する権利

定期金に関する権利は、
①相続開始の時までに定期金給付事由が発生していない定期金給付契約(生命保険契約を除く。)に基づくものであり、
②被相続人が掛金の全部又は一部を負担し、かつ、
③被相続人以外の者が契約者である場合に

相続開始によってその契約者は、契約に関する権利のうち、被相続人が負担した掛金の額に対応する部分を、相続又は遺贈により取得したものとみなされ、課税がなされます。

信託受益権

適正な対価の負担なく、信託の効力の発生や終了、受益者の変更、受益者の不存在等で利益を受けた場合、みなし相続財産として課税されます。

公益法人等から受ける利益

公益法人に対し、遺言で寄付がなされた場合で、当該法人から特別の利益を受けるとき、当該利益はみなし相続財産として課税がなされます。

遺言による経済的利益

遺言により著しく低い価格で財産を譲り受けた場合や、さらに遺言でその他経済的利益を得た場合も、みなし相続財産として課税されます。

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相続放棄してもみなし相続財産は受取可能

みなし相続財産は、民法上の相続財産ではありませんので、相続放棄をしても、受け取ることが可能です。

契約内容次第で受け取れなくなるもの

生命保険金

次の場合には、相続放棄した相続人は受け取れなくなります。
①被保険者が相続人 かつ
②保険金の受取人が被相続人である場合

死亡退職金

死亡時の受取人が被相続人本人であると決められている場合は、通常の相続財産となり、相続放棄した相続人は受け取ることができせん。

みなし相続財産は課税対象になる

みなし相続財産は、本来であれば相続財産ではないものを相続財産とみなし、課税の対象とする財産ですので、相続税の課税の対象となります。

非課税枠について

みなし相続財産が課税の対象となるものの、遺族の生活保障という観点から一定の額までは非課税となることがあります。具体的には、500万円×法定相続人の人数の金額です。
もっとも、相続放棄をした場合には、相続人ではなくなるため、非課税枠の適用はありません。

申告し忘れてしまった場合のリスク

みなし相続財産を入れずに納税申告書を提出した等の場合には、納付すべき税額に不足額があることとなりますので、修正申告書の提出が必要となることがあります。
また、法定申告期限を経過する場合には、申告納税方式による国税に対する加算税が発生することがあります。

みなし相続財産についての不安は弁護士にご相談ください

みなし相続財産は難解かつ税務リスクのある危険な問題ですので、弁護士または税理士に相談ください。

結婚生活を送るなか、ローンを組んで家や車を購入することもあるでしょう。離婚する際に、夫婦は「財産分与」によって共有財産を分け合いますが、住宅ローンや自動車ローンが残っている場合にはどのように対応すれば良いのでしょうか?
今回は、財産分与上のローンの扱い方やローンが残っている場合にとるべき対応等について、わかりやすく解説していきます。

ローンは財産分与の対象になる?

財産分与は、夫婦で協力して作り上げた財産をそれぞれの貢献度に応じて分け合うことです。そうなると、マイナスの財産を財産分与の対象にすることはできません。
そして、住宅ローンや自動車ローンはマイナスの財産にあたる以上、財産分与の対象になりません。
ただし、夫婦の生活のために組んだローンであれば、財産分与を行ううえで考慮することができます。詳しくは次項以下をご確認ください。

ローンが残っている家や車を財産分与する方法

ローン自体は財産分与の対象にならなくとも、ローンで購入した家や車は財産分与の対象になります。ただし、財産分与をする際に、残っているローンについて考慮する必要があります。
具体的にどのように考えるのかは、ローンと財産の価値を比べて赤字になっているか(オーバーローン)、いないか(アンダーローン)で異なります。

アンダーローン:財産の評価額のほうが高い場合

アンダーローンとは、残ったローンよりも家や車などの財産の価値のほうが高く、財産を売った代金でローンを返しても赤字にならない状態のことをいいます。
アンダーローンの場合には、財産の評価額からローン残額を引いた残りの金額が財産分与の対象となります。
そのため、家や車を売った代金でローンを完済し、残った現金を分け合うのが一般的です。アンダーローンのケースで財産を売って分け合う場合、特に問題が起こることはないでしょう。

オーバーローン:ローン残高のほうが高い場合

オーバーローンとは、残ったローンのほうが財産の価値よりも高額で、財産を売ってローンを返すと赤字になってしまう状態のことをいいます。
オーバーローンの場合、財産を売って返済する方法はあまりとられません。売るにはローンを組んでいる金融機関の許可を得なければなりませんし、売った代金ではローンを完済できないので、財産を手放した後もローン名義人は返済を続けなければならないからです。
不動産会社が買い手を探し、債権者の同意を得て売却する「任意売却」という方法がとられることもあります。ただし、どちらの場合でも、基本的にローン名義人がローンの残額を支払い続けなければならない点に注意が必要です。

ローンの残高や財産の評価額を知る方法

財産分与について考えるうえで、ローンの残高(残額)と財産の評価額を知る必要があります。
ローン残額については、借り入れ先の金融機関などに問い合わせることで確認することができます。
また、財産の評価額を調べる方法はいろいろあります。例えば、

〇家の場合

  • 固定資産税の納税通知書を確認する
  • 不動産業者に見積もりを出してもらう
  • 不動産鑑定士に査定を依頼する

〇車の場合

  • 買取業者や中古車販売店に見積もりを出してもらう
  • ウェブの一括査定サイトを利用する
  • オークションサイトをチェックする
  • オートガイド自動車価格月報(通称レッドブック)を参考にする

といったことが考えられます。

住宅ローンが残っている家の名義変更について

住宅ローンが残っている場合、家やローンが「夫名義」「妻名義」「夫婦共有名義」のどれかになっているケースが多いです。 離婚後、単独で名義人になっている配偶者がそのまま家に住み続ける場合は問題ありませんが、名義人である配偶者(または共有名義人の片方)が引っ越して別の場所に住む場合、名義をそのままにしているとトラブルになりかねません。後々のトラブルを回避するためにも、名義変更することをおすすめします。

所有名義人の変更

所有名義人とは、登記簿にその物の持ち主だと登録されている人のことです。 ローンが残っている家の所有名義人を変更するには、住宅ローンを組んでいる金融機関の許可が必要です。住宅ローンは基本的にローンの対象である家を担保にしているため、家の所有名義が勝手に変えられてしまっては、返済が滞ったときに差し押さえができなくなってしまうからです。 なお、所有名義人を変更する許可をとる際に、残りのローンを一括で返済するよう請求される可能性もあるので注意しましょう。

金融機関の許可が得られたら、登記申請書や登記識別情報、印鑑証明書、住民票といった必要書類を法務局に提出し、夫婦で財産分与登記を申請することで所有名義人を変更します。

ローン名義人の変更

ローン名義人とは、ローンを組む際に名義欄に名前を記載した本人のことで、ローンの返済義務を負う人を指します。 ローン名義人を変更するには、ローンを組んでいる金融機関の審査を受け、許可を得なければなりません。しかし、新たに名義人となる配偶者に十分な返済能力がなければ、基本的に名義変更の許可が出ません。
もし名義変更が許可されないようでしたら、次の手段を講じることをご検討ください。

・住宅ローンの借り換え
名義変更の代わりに、既存のローンを一括返済できるだけのローンを配偶者名義で組み直せば、既存のローンを名義変更したのと同じ効果が得られます。これを住宅ローンの借り換えといいます。

・連帯債務者や連帯保証人の交代
金融機関がローン名義人の変更を許可しないのは、返済能力の低下をおそれるからです。しかし、資力のある人に連帯債務者や連帯保証人になってもらえれば、金融機関が「返済能力は低下しない」と判断し、名義変更を許可する可能性が高まります。

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自動車ローンが残っている車も名義変更できるのか?

ローンが残っている車の名義変更をするには、まずは車検証の所有者欄を見て、現在の所有者(所有名義人)が誰なのかを確認する必要があります。車の所有者によって、名義変更に必要な手続が変わってくるからです。

車の所有者が配偶者の場合

車の所有者が配偶者の場合でも、名義変更を行うためには、ローンを組んでいる金融機関の許可が必要です
なぜなら、一般的に、金融機関は「ローンが残っている間は名義変更しない」ことを条件にローンを組んでおり、このような場合に勝手に名義を変更すると、契約に違反したとしてローンの一括返済を求められてしまう可能性があるからです。

金融機関の許可が得られたら、管轄の運輸支局に出向いて名義変更の申請手続をします。具体的には、必要書類と手数料を窓口に提出し、車検証の交付を受けた後に自動車税等の申告を行います。
なお、軽自動車の名義変更をするケースでも基本的な流れは変わりません。手続をする場所が軽自動車検査協会になるだけです。

車の所有者がディーラーやローン会社の場合

ディーラーが車の所有者である場合車の名義を変更するためには原則としてローンを完済しなければなりません。

オーバーローンの状態の場合、相手にローンを負担してもらうことは可能か

オーバーローンの状態で、たとえローン名義人に相手の名前がなくても、“①相手方の同意を得ること、②ローン債権者(貸し付けている側)が許可すること”の2点を満たせば、相手にローンを負担してもらうことも可能です。ただし、現実的とはいえないでしょう。
そもそもマイナスの財産は財産分与の対象ではないので、ローン名義人でない相手はローンを負担する必要がありません。夫婦の生活のために組んだローンでも、基本的にローン名義人だけが返済義務を負います。加えて、ローンを負担する人間の変更には、債権者の許可が必要です。金員を貸し付ける者は、通常、債務者の支払い能力を審査した上で金員の貸付をしているからです。
したがって、話し合いによってローン残額の一部を負担してもらうことはできますが、同意が得られない場合にまで負担させることは難しいでしょう。

連帯債務者、または連帯保証人だった場合は?

ローンの連帯債務者または連帯保証人だった場合、離婚したからといって、それらの義務を負わなくなるわけではありません。
相手がローンの連帯債務者である場合、2人でローンを返済する義務を負っていることになります。そのため、当然ローンを負担するよう求めることができますし、相手は、ローンを組んでいる金融機関からも返済を求められることになります。
また、連帯保証人である場合には、ローン名義人が支払えなくなったときに代わりに返済する義務を負っているということです。したがって、ご自身の返済能力がなくなった、返済が滞っているといった事情があれば、ローンの負担を求めることができます。

お互いに資金不足でローンを完済できない場合にはローンに紐づいている物件が債権者に引き上げられる可能性がでてきます。

ローンの財産分与は弁護士にご相談ください

財産分与の対象となる財産にローンが残っている場合、財産分与の考え方が複雑になります。また、ローンの名義人やローンで購入した財産の名義人は誰なのか、ローンはいくら残っているのか、財産の価値はどのくらいかなど、調べることも多いです。
とはいえ、ローン名義人でない配偶者は基本的に返済義務を負いません。しかし、ローン名義人となっている配偶者としては、返済に協力してもらいたいのが本音でしょう。話し合いで財産分与やローンの負担について合意できれば良いのですが、できなければ裁判を起こす必要もあるかもしれません。
ローンが残っている財産があり財産分与で揉めている方は、ぜひ弁護士にご相談ください。財産分与を請求できる期間には限りがありますし、離婚が決まったら早いうちにローンの扱いについて決めることが重要です。
納得のいく財産分与ができるようにお手伝いしますので、ぜひ弁護士への相談をご検討ください。

離婚の際に揉めやすい問題のひとつに、子供に関する決め事があります。特に面会交流は、親権や養育費と並んで特に争いになることが多い問題でしょう。後々大きなトラブルに発展することを避けるためにも、面会交流についてはあらかじめしっかり取り決めておくことが重要です。
そこで今回は、離婚するにあたって決めておくべき面会交流のルールについて、取り決める際の流れやルールが守られなかった場合の対処法、取り決め後に事情が変わった場合の対応など、詳しく解説していきます。

面会交流とは

面会交流とは、別居・離婚などを理由に子供と離れて暮らしている親が子供と交流することをいいます。直接会って話をしたり遊んだりすることはもちろん、電話や手紙のやりとりなどで交流する方法もあります。
面会交流は、子供が両親から愛情を受けて健やかに成長できるようにすることを目的としているので、基本的に子供のための制度といえます。そこで、面会交流を行う際には、子供の気持ちやスケジュール、生活リズムを尊重するなど、子供の利益を一番に考える必要があります。
そのため、子供が面会交流で身体的に暴力を受ける危険や、精神的な虐待がなされる可能性が高い場合など、面会交流が子供の利益にならない場合には行うべきではありません。

面会交流ができるのは何歳まで?

面会交流は、一般的に、親の監護権が及んでいる間、つまり成人する20歳(成人年齢が引き下がる2022年4月以降は18歳)まで行うことができます。
ただし、子供が大体10歳以上になると、家庭裁判所は子供の意思を重視して面会交流の可否を決定するようになる傾向にあるので、親の一存では面会交流が実現しない可能性があります。また、親の影響を受けずに自分の意見をしっかりと表せる年齢(大体15歳以上)になったときに、子供がはっきりと拒否している場合には、面会交流が認められない可能性が高いでしょう。

別居中でも面会交流はできるのか

面会交流は、離れて暮らしている親子が交流するものであり、離婚しているかどうかは問いません。そのため、離婚調停中など、夫婦が別居しておりどちらかが子供と一緒に暮らしていない状態であれば行うことができます。
ただし、離婚後の面会交流と同様に子供の利益を第一に考えなければならないので、ある程度以上の年齢の子供が明らかに拒否しているケースや、面会交流を行うことで子供に危害がおよぶケースなどでは面会交流はできません。

面会交流について決めるべきルールとは

面会交流を安心して行うためにも、離婚時に細かいルールを取り決めておくことが重要です。具体的には、以下の事項について取り決めておくと良いでしょう。

面会頻度

文字どおり、面会交流を行う頻度です。確実に面会交流を行うためにも、しっかりと決めておきましょう。
月に1回、2週に1回など自由に決められますが、子供の年齢や成長度合いを考慮して、負担にならない間隔にすることが大切です。

面会時間

スムーズに面会交流を行うためにも、一回あたりの面会交流の長さや、面会交流の開始・終了時刻を取り決めると良いでしょう。

面会場所

必ずしも面会交流の場所を決める必要はありませんが、トラブルを防ぐためにも、事前に面会場所を決めておいたり、場所の決め方を取り決めておいたりすると良いでしょう。
一般的に、公園やレストラン、遊園地、自宅などが面会場所とされるケースが多いです。

当日の待ち合わせ方法

面会交流の当日に子供と合流する方法は、必ず取り決めましょう。離れて暮らす親が直接家まで迎えに来る、時間を決めて面会場所の最寄り駅などで待ち合わせる、子供を監護している親(監護親)に面会場所まで送ってもらうなど、いろいろな方法が考えられます。

連絡方法

面会交流の日程調整や詳細について打ち合わせができるように、SNSやメール、電話など、面会交流に関する連絡をとるための方法を決めておくことも大切です。
なお、面会交流に関する連絡は、基本的に父母でやりとりすることが想定されています。とはいえ感情的になってしまうなど、父母同士ではやりとりが難しい場合は、親族や弁護士といった第三者に仲介してもらうことをおすすめします。

学校行事への参加

入学式や授業参観、運動会、文化祭といった子供の学校行事に参加できるかどうか、参加できる場合には詳細なルールについて決めておくことで、後々のトラブルを回避できます。

プレゼントやお小遣い

プレゼントやお小遣いを渡して良いか、渡す時期や金額の目安などについて決めておくことも重要です。
高額なプレゼントを頻繁に受け取るのは、子供の成長にとってプラスになるとは言い切れません。そこで、通常の面会交流ではプレゼントやお小遣いを渡すことを禁止するものの、誕生日やクリスマスなどの節目の時期には認めるなど、ルールを設けておくべきでしょう。

対面以外の交流方法

直接会って交流することが難しい場合には、SNSのメッセージや手紙、写真のやりとり、電話やテレビ電話での通話といった間接的な方法で交流するよう取り決めることもできます。

宿泊について

「子供と離れられない」といった理由で、面会交流中に突然子供を宿泊させたりすると、監護親の心情を害して大きなトラブルに発展しかねません。
こうしたトラブルを回避するためにも、宿泊を伴う面会交流の可否やその時期、日程や宿泊場所の調整方法などのルールについて、しっかりと取り決めておく必要があります。

祖父母の面会交流

面会交流を行う権利は基本的に子供のものですし、面会交流の相手は離れて暮らす親に限られています。つまり、祖父母には面会交流をする権利は認められていません。
しかし、祖父母が面会交流の場に立ち会うことや、面会交流の際に子供と一緒に祖父母の家に行くことはできるので、面会交流の機会に祖父母も子供(孫)と交流を図ることは可能です。
とはいえ、監護親に知らせずに子供を祖父母に会わせると、トラブルになってしまう可能性もあるので、あらかじめ祖父母の立ち会いについて話し合っておくと良いでしょう。

面会交流を決める際の流れ

面会交流について取り決める際には、まず夫婦で話し合って合意を目指します。
話し合いで解決できそうになければ、家庭裁判所に面会交流調停を申し立て、裁判所の助言を受けながらさらに話し合います。
それでもまとまらず、調停が不成立になったら自動的に面会交流審判に移行し、裁判所が面会交流の可否やルールについて取り決めることになります。
面会交流のルールが取り決められたら、子供との関係性などによっては支援団体の仲介を受けつつ、面会交流が行われます。

まずは夫婦間での話し合い(協議)

面会交流のルールは、離婚時に夫婦間での話し合い(協議)によって決めるのが基本です。
二人の間で面会交流のルールを自由に決められる代わりに、客観的な第三者がいないので、揉め始めるとなかなか合意するのが難しいという問題があります。
また、口約束しただけ、合意内容をメモに書き留めただけでは、後で「言った・言わない」のトラブルになる可能性があります。
話し合いで面会交流のルールが決まったら、夫婦で公証役場へ行き、合意内容を公正証書に残しておくことをおすすめします。

話し合いで決まらない場合は面会交流調停へ

夫婦間の話し合いでは合意できず、面会交流のルールが決まらない場合は、家庭裁判所の面会交流調停を利用しましょう。なお、調停は離婚前でも離婚後でも利用することができます。
面会交流調停は、家庭裁判所の調停委員が話し合いを仲介して、面会交流の詳細について夫婦が合意できるように調整していきます。場合によっては、心理学・社会学などの人文諸科学の専門家である家庭裁判所調査官が両親や子供と面談したり、試験的な面会交流に立ち会ったりすることもあります。
調停委員は一般的に調査官の調査報告を重視するので、調査官作成の報告書に基づく内容で調停が成立することが多いです。
とはいえあくまで調停は合意で成否が決まるので、どうしても夫婦で合意できない場合は、面会交流審判に移行して裁判所の判断に委ねることになります。

面会交流を拒否する正当な理由がないのに取り決めどおりに面会交流が行われない場合には、履行勧告の申出や間接強制の申立てをして、約束の遵守を相手に求めることになります。
なお、面会交流を拒否する正当な理由としては、次のようなものがあります。

  • 面会交流によって、子供が精神的な虐待や暴力にさらされる危険がかなり高い。
  • ある程度以上の年齢の子供(10歳以上)がはっきりと拒否しており、拒否の理由に寄り添った十二分な配慮をしても拒否が維持されている。

※履行勧告…調停や審判で取り決めた内容を守らない相手に対して、取り決めを守るように家庭裁判所から相手方に働きかけてもらう制度

家庭裁判所に申し出ることで、家庭裁判所の担当者が面会交流を拒否する相手方に書面や電話で連絡し、事情を聴き取ったうえで面会交流が実施できるように調整してくれます。ただし、法的な強制力はありません。

※間接強制…調停や審判で取り決めた内容を守らない相手に対して、取り決めを守るまで一定額を支払うよう命じて心理的なプレッシャーを与え、取り決めを実行するように促す制度
面会交流に関する調停調書や審判書など、法的な強制力がある書類で面会交流について取り決めている場合、裁判所に間接強制を申し立てることができます。ただし、面会交流のルールについて、かなり詳細に取り決めている必要があります。

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取り決めた面会交流を拒否したい場合

面会交流は子供の健やかな成長のために欠かせないものですし、子供の権利なので、親が一方的に拒否することはできません。ただし、面会交流をすることで逆に子供の健やかな成長が害される場合には、例外的に面会交流を拒否することができます。 具体的には、以下のようなケースです。

  • ある程度以上の年齢の子供が、自分の意思ではっきりと面会交流を拒否している
    ※このパターンの場合は、単に「子供が嫌といっている」とだけ伝えれば面会交流を拒絶できるというものではありません。「なぜその子が面会交流を嫌がっているのか」の理由部分に踏み込み、子が面会交流に前向きになれるように同居親の方で、配慮と対応をすることが求められます。
  • 面会交流時に虐待される危険が相当程度ある
  • 面会交流の際に子供が連れ去られる危険がかなり高い

なお、上記のようなケースでも、相手からの連絡を無視するなど一方的に面会交流を拒否するべきではありません。まずは相手ときちんと話し合い、面会交流を実施しない旨の同意を得るようにしましょう。
夫婦同士の話し合いでは解決が難しいようなら、弁護士に話し合いに立ち会ってもらったり、家庭裁判所の面会交流調停(審判)を利用したりといった対応をご検討ください。

面会交流と養育費の関係

面会交流と養育費は、法的な根拠や制度の目的がまったく異なるものです。そのため、「養育費が支払われないなら面会交流は行わない」「面会交流が行われないなら養育費は支払わない」というように、それぞれを交換材料とすることは認められません。
面会交流は、基本的に子供のための制度ですから、親の一存で実施する・しないを決めるべきではありません。当然のことながら、「養育費を支払いたくないから面会交流を実施しなくていい」といった主張も通りません。

再婚した場合の面会交流

親が再婚しても、親子という関係は変わりません。また、子供の健やかな成長のためには、両親との愛情ある交流が必要なことにも変わりありません。したがって、監護親や離れて暮らす親(非監護親)が再婚した後も、再婚を理由に面会交流を止める必要はありません。
たとえ再婚相手が面会交流に反対したとしても、子供のためを考えて面会交流を続けるべきでしょう。
ただし、子供の意思を何より尊重すべきなので、子供が本心から面会交流を拒んでいる場合は面会交流を止めるべきです。
再婚相手が面会交流に同席することを希望した場合も、まずは子供の意思を確認することが重要でしょう。
再婚後の面会交流については、面会交流が本来誰のための制度であるのかを忘れずに、冷静に対応する必要があります。

面会交流で不安なことがあれば弁護士に依頼してみましょう

面会交流は子供の大切な権利であり、子供の利益を第一に考えてルールを決めるべきですが、夫婦の感情と完全に切り離して考えることも難しい問題です。
離婚や別居することになった事情によっては、「面会交流させたくない」と思うこともあるでしょう。また、逆に「どうしても子供に会いたい」と思う方もいらっしゃるでしょう。
しかし、自分の感情だけに流されずに、「何が子供にとって最善なのか」を考えて冷静に話し合うことが重要です。
面会交流について少しでもご不安がある方は、ぜひ弁護士にご相談ください。お子様とご相談者様にとって、最善の未来へと続く道を探すお手伝いをさせていただきます。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。