過失割合10対0になる事故と示談交渉における注意点

過失割合10対0になる事故と示談交渉における注意点

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

“過失割合10対0” の交通事故は、被害者側に事故の責任が問われないため、損害賠償請求において過失相殺による減額がなく示談金を受け取ることができます。ただし、それと同時に盲点となりがちなのが、相手方保険会社から提示を受けるのは「必ずしも妥当・正当な金額ではない可能性がある」というところです。さらに、過失がないなりに苦労する部分が出てきます。
ここでは、 “過失割合10対0” のケースに焦点をあて、詳しい事故態様や注意すべき事項についてわかりやすく解説していきますので、ぜひ参考になさってください。

過失割合10対0の事故とは

過失割合10対0の事故とは、簡単にいうと「被害者側に防ぎようがなく、事故の全責任が加害者側にある事故」のことです。
極端な例を挙げると、センターラインを越えてきた加害者側と正面衝突した大事故や、加害者側の飲酒運転による死亡事故・ひき逃げ事故、停車中に猛スピードで加害者側が後ろから衝突してきた追突事故などをイメージするとわかりやすいです。一般的には、俗にいう“もらい事故”が多いでしょう。

過失割合の修正要素について

事故の責任度合いを表す過失割合には、“基本過失割合”と“修正要素”があります。
基本過失割合とは、過去の裁判例をもとにして決められた事故のパターンごとに設定されている過失割合のことで、すべての示談交渉において指標となるものです。ただし、大枠のパターンは同じでも、1件1件の交通事故は、道路事情や天候、時間帯のほか、スピード違反や信号無視、飲酒運転や居眠り運転など、細かな態様が異なってきます。こうしたそれぞれの事情を修正要素として考慮し、双方の過失割合を加算・減算しながら調整を図っていくことになります。
そのため、例えば基本過失割合が9対1でも、修正要素により10対0になることもありえます。

「動いている車同士で10対0はありえない」は本当?

「お互い動いている状態であれば、双方に何かしらの責任がある」と考えている方は多いですし、交渉相手の保険会社もこのように主張してくることもあります。
しかし、動いている車同士の事故であっても、過失割合が10対0になることはありえます。例えば、加害者側の危険運転(信号無視や飲酒運転など)が認められれば、修正要素が活きて10対0になるなどの場合です。
保険会社の提示を鵜呑みにしてしまうのではなく、冷静に事実関係を判断し、正しい主張・立証をしていくことが大切です。

車同士、または車とバイクの事故で過失割合10対0になる例

直進同士

道路事情は信号機のある交差点です。
一方が赤信号で直進し、もう一方が青信号で直進した状態で衝突した場合には、信号無視した側に過失10割が認められることがあります。

赤信号の直進と青信号の右折

道路事情は信号機のある交差点です。
一方が赤信号で直進し、もう一方が青信号で右折したときに衝突した場合には、信号無視した側に過失10割が認められることがあります。

直進とセンターラインオーバー

双方直進しているところ、一方がセンターラインを越えたために正面衝突した場合には、センターラインオーバーした側に過失10割が認められることがあります。

駐車・停車車両に追突

路肩に駐車、信号待ちで停車しているところに、後ろから追突された場合には、追突した側に過失10割が認められます。
これがいわゆる“もらい事故”にあたります。

自動車と自転車で過失割合10対0になる事故事例

左折自動車と直進自転車

態様はいわゆる“巻き込み事故”です。
直進していた自転車を追い越したうえで左折した自動車が、自転車を巻き込むかたちでぶつかった場合には、自動車側に過失10割が認められることがあります。

センターラインオーバーの自動車と自転車

双方直進していたところ、自動車がセンターラインオーバーして自転車と正面衝突した場合には、自動車側に過失10割が認められます。
ただし、ロードバイクなどでよく見受けられますが、自転車側もセンターラインぎりぎりを走行していたケースでは、修正要素がはたらき自転車側にも過失が認められる可能性があります。

自動車と歩行者で過失割合10対0になる事故事例

路肩を歩く歩行者と自動車

歩道横の路肩を歩いている歩行者に自動車が衝突した場合、自動車側に過失10割が認められます。 これは、歩行者が右側通行でも左側通行でも(車と同じ向きに歩いていても対向して歩いていても)同様の過失割合となります。

歩車道の区別がない道路の右側を歩く歩行者と自動車

路側帯など、歩車道の区別がない道路の“右側”を歩いている歩行者に自動車が衝突した場合、自動車側に過失10割が認められます。 一方、同じ状況で歩行者が“左側”を歩いていた場合には、歩行者にも0.5割(5%)程度の過失が認められる可能性があります。

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自転車と歩行者の事故

青信号、または信号のない横断歩道を歩く歩行者との衝突

歩行者が青信号や信号のない横断歩道をわたっている際、自転車と衝突した場合には、自転車側に過失10割が認められるのが基本です。
この過失割合に、横断中青信号から赤信号に変わってしまった歩行者側の事情や、直進していたか右左折していたかといった自転車側の事情は、基本的に影響しません。

歩道外・路側帯外から出てきた自転車との衝突

自転車が、歩道や路側帯の外側から侵入してくるかたちで、そこを歩く歩行者と衝突した場合には、自転車側に過失10割が認められます。

歩車道の区別がない道路の右側を歩く歩行者と自転車

歩道と車道の区別がつかない道路の“右側”を歩いている歩行者に、自転車が衝突した場合、自転車側に過失10割が認められます。
一転、歩行者が“左側”や“中央”を歩いていた場合には、歩行者側にも0.5~1割(5~10%)程度の過失が認められます。

過失割合10対0の場合、自身の保険会社が交渉してくれない点に注意

過失割合が10対0で自身に過失がない場合には、自ら示談交渉を行わなければならない点に注意が必要です。
というのも、自身が加入している保険会社の示談代行サービスを利用できるのは、自分に過失がある場合のみだからです。過失がないまま保険会社が対応することは、れっきとした違法行為(非弁行為)になってしまいます。
そのため、自力で相手方の保険会社との交渉を進めなければなりません。相手方保険会社は、幾度となく示談交渉を経験しているプロですから、自社の負担分を少しでも減らそうと巧妙な手口で交渉してくるでしょう。初めての事故の示談交渉で「正解がわからない」状態の被害者にとっては、不安に駆られるのも無理はありません。

弁護士なら代わりに示談交渉できる

違法行為(非弁行為)となる過失がない場合の示談代行も、弁護士なら代わりに交渉することができます。これは、弁護士法という法律で定められている弁護士の職権により適うものです。
ただし、相談・依頼する相手が弁護士であれば誰でもいいわけではありません。物理学の教授にフランス文学のことを尋ねても明確な回答が得られないのと同じで、弁護士業界でも「交通事故事案を得意としているか」という点が重要になってきます。弁護士選びのコツのひとつとして、交通事故事案の経験数などを参考にするとよいでしょう。

保険会社の提案をその場で受け入れないでください

保険会社を相手に交渉を進める場合には、必ず即答せずに持ち帰る・検討することを意識しましょう。だいたいのケースで被害者側が損をする結果となるからです。
「今回のようなケースではこのくらいの示談金額が妥当です」「一刻も早く示談金を受け取れるよう最短で進めましょう」など、さまざまな言いがかりをつけて巧妙に交渉してくるのが保険会社です。なぜならその背景には、“保険会社側の負担をできるだけ抑えて会社の損失をできる限り少なくする”という目的があるためです。
この点、交通事故事案を得意とする弁護士が介入することで、正当な金額を求めて交渉を進めてもらえます。結果的に慰謝料額や示談金額が大幅に上がる可能性が高まりますので、弁護士に依頼いただいた方がいいです。

過失割合を10対0に修正できた事例

ここで、横浜法律事務所で解決に導いた事例をご紹介します。

本件は、前の相手方車が停止したため依頼者も間隔を空けて停止したところ、相手方はさらにバックしてきたため避けきれず衝突したという事故態様でした。
ところが、相手方の保険会社は、
「(依頼者が)前方に突っ込んだ」
「(依頼者が)止まったとしても直近で止まったため停止したとまでは言えない」
として、依頼者にも5割の過失があると主張してきました。
こうした相手方保険会社の強引な主張があったため、困り果てた依頼者が弊所にご相談のうえご依頼くださいました。

受任後、依頼者本人から事故状況の詳細な聴き取りを進めていくと、事故の目撃者がいることが判明しました。我々は、この目撃者にたどり着き、当時の事故状況をヒアリングすることができたのです。
この事実をもとに相手方と交渉を続けたところ、過失5割とされたところを過失ゼロに修正することができました。損害賠償金を半分も減額されそうなところを満額受け取れるようになったため、依頼者にも大変ご満足いただける結果となりました。

過失0といわれても、一度は弁護士にご相談ください

過失0の交通事故は、過失相殺がなくすべての損害賠償金を受け取ることができるため、一見すると得をするような、きちんと賠償を受けられるような、そのような感覚になりやすいかもしれません。しかし、思わぬ落とし穴があるかもしれないのです。保険会社に言われるがまま示談をしてしまえば、その示談はやり直すことができず取り返しがつかなくなってしまいます。
そうなる前に、ぜひ弁護士にご相談ください。弁護士費用がネックに感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、ご加入の保険に“弁護士費用特約”が付いていれば、ほとんどのケースで実質依頼者の方の負担ゼロで相談・依頼いただけます。「よくわからない」という方にも、確認の仕方からお伝えできますので、まずはお気軽に弁護士法人ALGにお問い合わせください。

日々、さまざまな交通事故の発生が絶えませんが、そのなかには“バイク事故”も含まれています。バイクと車がぶつかったとき、バイク側は車側にかないっこないことは容易に想像がつくでしょう。すると必然と、怪我や物損といった“損害”が大きくなり、慰謝料も高額になりがちとなるのがバイク事故の特徴といえます。
本記事は、そのような“バイク事故の慰謝料 “に焦点をあて解説しています。「知らずに示談したため損をしてしまった……」といった事態とならないよう、ぜひ参考にご覧ください。

バイクが被害者の交通事故慰謝料は車同士と比べて高額になりやすい

バイク側が被害者の交通事故では、車同士の事故と比べて慰謝料が高額になりやすいです。なぜなら、「車と比べると大怪我を負いやすいから」という単純明快な理由があります。
もう少し紐解いていくと、交通事故の慰謝料は、重症で治療が長引けば長引くほど、また、後遺障害が残りそれが重い障害であればあるほど増額します。
バイクは、鉄で覆われている車と違って身体がむき出しの状態になっており、タイヤが4つの車と比べて2つしかないため不安定です。車と比べると、怪我を負いやすく、重症化しやすいといえます。すると、怪我が大きい分、精神的苦痛がより加わることになるため、その分慰謝料も高額になりやすいです。

基準による慰謝料の差について

3つある慰謝料の算定基準のうち、どの基準を適用するかは、正当な慰謝料を受け取るうえでキーポイントになります。

  • 自賠責基準…強制加入保険で、最低限度の補償を目的としている
  • 任意保険基準…各保険会社が独自に設定している基準で非公開だが、自賠責基準に少し上積みした程度の金額であることが多い
  • 弁護士基準…裁判を前提として弁護士が交渉時に使用する基準で、通常は最も高額な金額となる

同じ事故態様でも、それぞれの基準で算定すると、【自賠責基準<任意保険基準<弁護士基準】の順に金額が大きくなります。この差は、より長い治療を要したり、より重い後遺障害が残ったりすればするだけ広がっていきます。どの基準を使用するかは、受け取れる慰謝料額を大きく左右しますので、この点をしっかりと押さえておきましょう。

反面、バイクが加害者だった場合は慰謝料を回収しきれない場合も

【バイクと歩行者の事故】など、バイク側が加害者となれば話は一転します。被害者が歩行者側にシフトしますので、バイク側に慰謝料を含む損害賠償を請求することになります。

ここで注意しなければならないのが、バイク側は任意保険に未加入であるケースが多く、損害分の補償を受けきれないおそれがあるという点です。
どういうことかというと、強制加入保険の自賠責保険から受けられる補償は、“120万円まで”と上限が決まっています。120万円以上の損害分については、本来であれば任意保険会社が負担するところ、加害者が任意保険に未加入の場合は、“加害者本人”に請求することになります。誠意のある加害者であれば、分割払いをしてでも支払いに応じる人もいるかもしれませんが、そう多くないのが実情です。最悪の場合、泣き寝入りする事態となりかねませんので、被害者自身の人身傷害保険を使用したり、専門家である弁護士に相談したりするのが賢明です。

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バイク特有の過失割合と慰謝料への影響

バイクのすり抜けによる事故が過失割合に影響するケース

バイクは、その身軽さゆえに、渋滞中の車の横をすり抜けて走行することも多いです。いわゆる“追い越し”にあたりますが、これが左側からのすり抜けだったり、右側からでも黄色い車線をまたいでしまったりすれば、道路交通法違反となります。車両間を左右からすり抜けるジグザグ走行もまた違反行為となります。
こうした行為は、損害賠償の負担割合を決める過失割合に影響し、バイク側にも過失が認められ加算修正されてしまいます。おおむね2~3割の過失がつき、過失割合が大きくなればなるほど、受け取れる損害賠償金が減ってしまうことになります。

ドア開放車にぶつかった場合

停まっている車がドアを開けているところに、後ろを走行中のバイクがぶつかった場合の基本的な過失割合は「1(バイク側)対9(車側)」となります。これをベースに、その時の事故状況によって過失割合が修正されていきます。
バイク側に過失がプラスされる例としては、相手が支払中など合図を出しているタクシーであったり、事故の現場が駅のロータリーだったりと、ある程度“人の乗り降り、ドアの開閉が予測できる場合”です。おおよそ1割程度の過失が加算されます。
また、バイク側に速度違反が認められる場合には、程度により1~2割の加算修正がされるでしょう。

過失があると受け取れる慰謝料が減る

自分にも過失があれば、その分の事故発生の責任を負うことになりますので、最終的に受け取れる慰謝料を含む損害賠償金から自身の過失に相当する分が減額されることになります。これは、バイク事故に限ったことではなく、交通事故全般に共通することです。
イメージするために、バイク事故で【過失ゼロ】のケースと【過失あり】のケースで比較してみましょう。

【過失ゼロ】のケースでバイクのみ破損した場合

  • 青信号を直進していたバイクと赤信号無視した車が衝突した事故
  • 過失割合:0(バイク)対10(車)
  • 損害金:200万円
  • 受け取れる損害賠償金:200万円

【過失あり】のケースでバイクのみ破損した場合

  • 直進していたバイクが左折しようとした車に巻き込まれた事故
  • 過失割合:2(バイク)対8(車)
  • 損害金:200万円
  • 受け取れる損害賠償金:160万円 (減額分200万円×0.2=40万円)

同じ損害金が200万円の事故でも、過失が2割認められると「40万円」が減額されてしまうのが読み取れると思います。

弁護士の介入によって弁護士基準に近い慰謝料が認められたバイク事故の事例

ここで、横浜法律事務所が解決に導いたバイク事故の事例を紹介します。
本件は、事故後間もない状態でご相談くださったものです。依頼者は、三車線の追越車線をバイクで走行中に、急に車線変更してきた前方車と衝突し、愛車の破損とともに自身も怪我を負われました。なかなか進行しない保険会社とのやりとりに不安を感じたことから、弊所にご相談のうえ、ご依頼くださいました。

事故後すぐに受任したため、依頼者は通院中でしたので、先に物損や過失割合の交渉から始めました。緻密にカスタマイズされているなど、こだわりのある愛車をはじめ、ヘルメットや着ていた服にも損傷があったため、購入時価額などの立証資料をそろえて物損交渉を行いました。過失割合についても、事故状況から想定されるこちらの割合が通るように、同様の態様で認められた裁判例などを引き合いに出しつつ交渉を進めました。
また、人身部分についても、被害者が自営業であったことから実際の収入面の証明に苦戦しつつも、一つ一つ根拠資料をそろえて交渉に臨みました。

こうした積み重ねの結果、慰謝料の交渉においても弁護士基準で算定した金額にほぼ近い状態で示談が成立し、依頼者にも大変ご満足いただける解決に導くことができました。これもひとえに早い段階から弁護士が介入できたことによる結果といえます。

バイク事故の慰謝料は弁護士にご相談ください

車と比較すると、バイクは交通弱者にあたります。
車とバイクの事故は、大怪我を負うなどして交通弱者であるバイク側の損害が大きくなりがちです。意図せず事故に遭い、望まない怪我をして通院や後遺症に悩まされてしまうといった精神的苦痛への賠償金は、正当に受け取るべきでしょう。
保険会社が提示してくる慰謝料額は、あくまでも自賠責基準や任意保険基準で算定した最低限の補償に過ぎません。損害が大きくなりがちなバイク事故においては、弁護士基準での算定額と比べると、何十万円、何百万円もの差が生じることもあり得るのです。
“正当な慰謝料”といえる弁護士基準で請求するためにも、ぜひ弁護士にご相談ください。弁護士法人ALGは、一人一人のご相談者様に寄り添う姿勢を大切にしています。「後悔しない解決」をご一緒に目指しますので、ぜひ一度お問い合わせください。

未成年者であっても相続人になることはできます。一方で、いくら未成年者が相続人であっても、未成年者は単独では遺産分割協議を行うことはできませんので注意が必要です。

未成年者は原則、遺産分割協議ができない

未成年者は制限行為能力者と呼ばれ、遺産分割協議を単独で行うことができません。
共同相続人の中に未成年者がいる場合は、親権者や未成年後見人が、未成年相続人の法定代理人として遺産分割協議を行わなければなりません。

成年年齢の引き下げについて(2022年4月1日以降)

2022年4月1日から成年年齢の引き下げがなされます。
具体的には、
① 2002年4月2日生まれから2004年4月1日生まれまでの方
→2022年4月1日に成年
② 2004年4月2日生まれ以降の方
→18歳の誕生日に成年
となります。

成人になるのを待って遺産分割協議してもいい?

成人になるのを待って遺産分割協議を行うことも選択肢の一つですが、例えば相続税については、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から原則として10か月以内に申告をしなければならない等、手続上、期間制限があるものもあり、注意が必要です。

相続人に未成年者がいる場合は法定代理人が必要

相続人の中に未成年者がいる場合、どうすれば円滑に遺産分割協議ができるのでしょうか。

法定代理人になれるのは親権者(親)

未成年相続人の代わりに遺産分割協議ができる者としてまず挙げられるのは、法定代理人である親権者です。
両親が双方健在なら、両親双方が親権者です。

親も相続人の場合は特別代理人の選任が必要

注意しないといけないのは、未成年者とともに親も相続人となっている場合です。
この場合、親が未成年者の取り分を少なくして、自分の取り分を多くしようとすればできる状態ですので、未成年者を親が代理することはできません。
原則として、未成年者を代理する特別代理人という特殊な代理人を選任する必要があります。
もっとも法定相続分以上を未成年者に渡すというように、通常であれば、未成年者が損をするとはいいにくいようなケースでは、親が未成年者を法定代理することが許される場合があります。

親がいない場合は未成年後見人を選任する

未成年者に親権者である親がいない場合、未成年後見人を選任する必要があります。

未成年者の相続人が複数いる場合は、人数分の代理人が必要

未成年の相続人が複数いる場合は、まとめて1名の代理人が就任することはできません。
これを認めると、ある未成年者を犠牲にして、別の未成年者に多く分割することができてしまい、公平ではないからです。
この場合は、人数分の代理人が必要となります。

特別代理人の選任について

親権者と未成年者が共に共同相続人の場合は、親権者が未成年者を犠牲にして自分の利益を得ようとする可能性を否定できないため、未成年者のために特別代理人の選任が必要となる場合があります。

特別代理人とは

親権者とは別に、未成年者の代わりに遺産分割協議をする代理人を指します。

申立てに必要な費用

特別代理人のひとりあたり800円分の収入印紙が必要です。

必要な書類

  • 未成年者の戸籍謄本
  • 親権者の戸籍謄本
  • 特別代理人候補者の住民票

等です。
この他にも不動産の売却等を伴うのであれば、不動産登記簿が必要です。

申し立ての流れ

親権者が、子の住所地を管轄する家庭裁判所に、特別代理人の選任を請求します。
具体的には、特別代理人選任申立書を提出します。

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未成年後見人の選任について

未成年者に親権を行うものがいない場合には、家庭裁判所は申立てにより、未成年後見人を選任します。

未成年後見人とは

未成年者の法定代理人の一種で、未成年者の身の回りの世話や財産の管理、契約等を行う人をいいます。

申立てに必要な費用

未成年者1人につき、収入印紙800円分が必要となります。

必要な書類

  • 申立書
  • 申立事情説明書
  • 親族関係図
  • 財産目録
  • 相続財産目録
  • 収支予定表
  • 未成年後見人候補者事情説明書

などです。

申し立ての流れ

未成年者の住民票上の住所地を管轄する家庭裁判所に対して申立てを行います。

未成年後見人選任の申立書(裁判所)

未成年の相続人が既婚者の場合は代理人が不要

未成年者といっても、既に婚姻している場合には、基本的には成人として取り扱われるため、代理人が不要となります。

親が未成年の相続人の法定代理人になれるケース

以下のような例です。

親が相続放棄をした場合

親が相続放棄をする場合は、相続をめぐって子と利害が対立することはないと考えられるため、親が未成年者の法定代理人として遺産分割協議を行うことができます。

片方の親がすでに亡くなっており、未成年者が代襲相続人になった場合

代襲相続

両親の内の一方が既に亡くなっており、未成年者が代襲相続人となる場合、存命の片親は基本的には相続人になりませんので、子を代理して遺産分割協議を行うことができます。

未成年者を含む遺産分割協議を弁護士に依頼するメリット

未成年者を含む遺産分割協議にあたっては、留意すべき点が多数あり、場合によってはせっかくまとめた遺産分割協が無意味となってしまいかねません。
相続人に未成年者が含まれる場合には一度弁護士に相談ください。

人がお亡くなりになり、相続が発生したときに気を付けなければならないのは、遺産をどのようにわけるのかということです。以下では遺産を分ける話し合い(遺産分割協議)について解説していきます。

遺産分割協議とは

財産のある人がお亡くなりになった際、その財産は遺産となります。
この遺産について相続する人が複数いる場合、どの遺産を誰にどのように引き継がせるのかという話合いをする必要があります。これが遺産分割協議です。

遺産分割協議の注意点

遺産分割協議のやり直しは原則不可

一度遺産分割協議を纏めると、その内容にしたがって、財産が具体的に分配されていくこととなります。したがって、基本的には遺産分割協議をやり直すことはできません。

全員の合意がなければ成立しない

遺産は基本的には相続人全員の問題ですから、遺産分割協議をまとめるためには相続人全員の合意が必要です。もっとも、いくら相続人であっても、その人本人が協議に参加することが認められない事情もあります。

相続人に未成年がいる場合

未成年者は、単独で有効な法律関係の行為をすることができません(制限行為能力者といいます)。
遺産分割協議は法律関係の行為なので、相続人であっても未成年者は遺産分割協議に参加することができません。
原則として、未成年者の法定代理人(親)がいれば、その法定代理人が未成年者の代わりに参加します。法定代理人がいない場合は、未成年後見人を選任します。
法定代理人が存在するものの、未成年者と法定代理人との利害関係が対立する場合には特別代理人の選任が必要となります。

相続人に認知症の人がいる場合

認知症を患っておられる相続人の方が、遺産の価値を理解したり、分け方について他の相続人の方と交渉したりすることは一般的には難しいと考えられています。したがって、認知症の方は基本的には遺産分割協議に参加することはできません。
協議をするためには、家庭裁判所に法定後見人の選任申立てをする必要があります。法定後見人自体については、一般的には、親族が望ましいとされていますが、誰を選任するかは最終的には家庭裁判所の裁量に委ねられています。

遺産分割協議でよく揉めるケース

土地や不動産がある場合

土地・建物等の不動産は、基本的には高額であるため、誰が取得するか、その価値をいくらと見積もるのか、不動産そのものを取得する代わりに他の相続人にいくら支払うか(代償金といいます)等で紛争になりやすいです。

家業がある場合

家業や会社を相続する際には、そもそも家業や会社を誰が相続するのかが問題となります。また、家業等を継いだ兄弟が遺産の内容を開示しなかったり、家業を継いだ方が、「自分はこんなに苦労した」といい、等分なのは納得いかない等の主張をして揉める場合があります。

相続人以外が参加した場合

当事者でない人が参加すると揉めやすいです。
相続人の配偶者が参加して揉めるなどのケースが典型例です。

遺産の分割方法

遺産を分割するといっても、その分け方は様々です。

現物分割

遺産分割の原則的な方法です。個々の財産の形状や性質を変更することなく分割するものです。

代償分割

一部の相続人に法定相続分を超える財産を取得させた上で、他の相続人に対する債務を負担させる方法です。

換価分割

遺産を売却等して換金した後に、それを分配する方法です。

共有分割

遺産の一部や全部を共有とする方法です。

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遺産分割協議に期限はある?

現状、期限については存在しません。もっとも、相続発生から10か月以内に、相続税の申告や納税を済ませる必要がありますので、特段手当をしないのであれば、この期間が一応の目安となります。
なお、令和5年4月1日から、改正民法が施行され、特別受益と寄与分の主張について、相続開示の時から10年の期限が設定されることとなりました。

遺産分割協議をしないで放っておいたらどうなる?

借金がある場合には、利子の支払いが嵩んだりします。
さらには、相続人当事者が経年により死亡し、相続そのものがより複雑化する場合があります。

遺産分割協議が無効になるケース

遺産分割協議の参加者の中に、未成年者等の判断能力が十分でない方がいたりする場合には、協議そのものが無効となります。
また、遺産や遺産分割の内容に重大な誤解があった場合にも無効となることがあります。

遺産分割協議のやり直しが必要になるケース

せっかくまとめた遺産分割協議がやり直しとなってしまう場合は以下のとおりです。

・協議成立後に新たな遺産が見つかった
単純に未知の遺産が見つかったという場合には、遺産分割協議をやり直す必要はありません。しかし、その遺産をある相続人が隠していたり、遺産の価値が極めて高いといったりする場合には、遺産分割協議そのものをやり直さなければならなくなる可能性があります。

・協議成立後に遺言書が見つかった
相続人全員で、遺言書を問題としないとの合意ができれば、遺産分割協議は有効ですが、原則として遺言の内容が優先することとなります。

なお、遺産分割協議後に相続人が亡くなった場合には、亡相続人の地位について別の方が相続することとなりますので、遺産分割協議をやり直す必要はありません。

遺産分割協議に応じてもらえない場合にできること

遺産分割協議に応じてもらえない場合には、家庭裁判所へ遺産分割調停の申立てをすることができます。
遺産分割調停とは、家庭裁判所での話し合いです。この調停がまとまらない場合には、審判といって、裁判官が証拠に基づいて判断する手続きに移行します。

そもそも遺産分割協議が必要ない場合

ここまで、遺産分割協議について説明してきましたが、そもそも遺産分割協議を行う必要がないケースも存在します。

遺言書がある場合

遺言書の内容に、相続人全員が不満のない場合は、遺言書の内容にしたがって遺産分割をすればよいので、遺産分割協議は不要です。

法定相続人が一人しかいない場合

そもそも相続にあたって協議する必要がないため、遺産分割協議は不要です。

遺産分割協議のお悩みは弁護士にご相談ください

遺産分割協議にあたっては注意すべき点は多々ありますので、協議するにあたっては、是非一度弁護士にご相談ください。

「性格の不一致」を理由に離婚するご夫婦は、数多くいます。一緒に暮らしていくなかで、合わないと感じる場面が増えれば、次第にストレスが溜まってしまうでしょう。その結果、別れを決意する方もいるのです。
しかし、性格の不一致は、夫婦のどちらが悪いといえるものではありません。そのため、相手が離婚に応じてくれない場合、離婚理由として認められないこともありえます。
このページでは、【性格の不一致での離婚】をテーマに、離婚することはできるのか、離婚の進め方、慰謝料請求できるのか、といったことについてご説明していきます。

性格の不一致で離婚することはできるのか

夫婦間で話し合って合意できれば、性格の不一致を理由に離婚することができます。 また、夫婦同士の話し合いは難しくとも、家庭裁判所の「離婚調停」という手続きを利用し、調停委員会を通して話し合うことで合意に至り、離婚できるケースもあります。
一方で、夫婦間の話し合いでも調停でも合意できず、「裁判」に発展した場合、性格の不一致のみを理由とした離婚を認めてもらうことができない場合もあります。その理由は後ほどご紹介します。

性格の不一致とは

そもそも性格の不一致とは何なのかというと、性格やものの考え方、価値観などが合わないことを指します。具体例は次のとおりです。

  • 子供への教育方針の違い
  • マナーに対する考え方の違い
  • 金銭感覚のズレ
  • 両親や親族との付き合い方の違い

性格の不一致は、離婚理由として挙げられることの多いものです。裁判所の統計データ(※令和2年度)によれば、離婚調停を申し立てた理由の第1位が、「性格が合わない(性格の不一致)」となっています。
特にはっきりとした理由がない場合などに、「性格の不一致」はとても使いやすい言葉です。こうしたことも、多くの人が離婚理由に挙げる背景にはあるのでしょう。

法律が定める離婚原因とは?

裁判で離婚が認められるには、民法で定められた5つの離婚理由(法定離婚事由)のどれかに当てはまる事情が必要です。

①配偶者に不貞行為があったとき
②配偶者から悪意の遺棄をされたとき
③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

性格の不一致が原因で夫婦関係に不和が生じた結果、夫婦関係や破綻していたて修復不可能と判断できるような場合には、性格の不一致の存在が上記⑤である婚姻関係を継続し難い重大な事由に当てはまるとして、離婚が認められる可能性があります。

夫婦関係が破綻した証拠を集める

ただ単に主張するだけでは、夫婦関係の破綻を認めてもらうのは難しいでしょう。客観的に見てわかる証拠を集めて提示することが必要不可欠です。証拠になり得るものとしては、例えば次のようなものがあります。

  • 次第に夫婦仲が悪くなっていったことを記録した日記やメモ
  • 夫婦喧嘩の様子を録音・録画したデータ
  • 不仲であることがわかるメールやLINEのやりとり
  • 寝室が別であったり、家事や家計が別々になっていることを裏付ける写真や録画

なお、日記やメモは、スマホのアプリや手書きでも可能ですが、後から書き換えたと反論されないように作成した日がきちんと分かるようにしておくことが重要です。

長期間の別居

長期間の別居という事実によって、夫婦関係の破綻が認められる場合もあります。必要な別居期間は、一般的に3~5年程度といわれています。ただ、婚姻年数や同居期間の長さ、離婚理由として主張される性格の不一致の内容など、夫婦それぞれの事情に応じて判断されるので、あくまでも目安だと理解しておきましょう。
なお、別居の事実を証明するためには、次のようなものが証拠に使えます。

  • 別居先のアパートを借りたときの契約書
  • 別居にあたって異動した住民票
  • 別居先で支払っている公共料金の領収書

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性格の不一致での離婚の進め方

離婚理由が性格の不一致の場合も、離婚の進め方はほかの場合と変わらず、【当事者同士での話し合い(協議)→離婚調停→離婚裁判】という順序で進めていくのが一般的です。
ただ、離婚理由が性格の不一致というだけでは、裁判で離婚を認めてもらうことができない場合もありますので、話し合いで解決できるかどうかが重要になってきます。

離婚の切り出し方やタイミング

話し合いで離婚を成立させるためには、出だしが肝心です。離婚の切り出し方と、そのタイミングには十分に気をつけましょう。ここを見誤ると、交渉がスムーズに進まなくなるおそれもあります。
切り出すときは、「離婚したいこと」と「なぜ離婚したいと思うのか」を、落ち着いて伝えるようにしてください。これまでの不満から怒りが込み上げてきたとしても、相手を責め立てるような態度をとることは避けるべきです。言い争いになってしまい、相手の同意を得るのは難しくなることが予想されます。
また、切り出すタイミングは、家庭の状況や相手の様子を踏まえて、慎重に判断しましょう。性格の不一致を理由に離婚する場合、一般的には、子供が自立した時や配偶者が定年退職した時など、人生の節目といえるタイミングで切り出すことが多いようです。

性格の不一致と離婚後の子供の親権について

未成年の子供がいる場合は、離婚する際に親権について話し合い、どちらが離婚後の子供の面倒をみるのかを決める必要があります。話し合いで決まらないときは、最終的に裁判所の判断で決められますが、どちらが親権者となるべきかと離婚原因とは分けて検討されることになります。そのため、離婚原因が性格の不一致だからといって、親権の判断に直接影響を及ぼすとは限りませんが、性格の不一致の内容が子供に関するものである場合には、その内容が親権の判断に一定の影響を与える可能性もあります。
親権を望む方のなかには、子供を連れて別居しようと考える方もいるでしょう。子供を連れて別居をすることは、状況によっては「違法な子の連れ去り」だとして、かえって不利に働く可能性もありますので注意が必要です。DVを受けている、子供が虐待を受けているなどの場合を除いては、相手の承諾を得てから連れて行く方が望ましいです。

性格の不一致での慰謝料請求について

性格の不一致を理由にした離婚では、慰謝料を請求することは基本的にできません。離婚の慰謝料は、相手に離婚の責任がある場合に請求できるものです。性格が合わないのは、どの夫婦にでも起こることであり、どちらが悪いとはいえません。そのため、慰謝料請求したとしても、裁判所が認めることはほとんどないでしょう。
ただし、性格の不一致のほかに、相手が不貞行為やDVをしていたなどの離婚原因があった場合には、離婚の責任は相手にあるものとして、慰謝料請求が認められる可能性があります。
また、話し合って相手の同意が得られれば、離婚理由は何であれ、慰謝料をもらうことが可能です。その際、“解決金”という名目でなら支払ってもいい、と言ってくれる場合もあります。“慰謝料”だと、悪いことをした人物だと受け取られやすいからでしょう。

よくある質問

性格の不一致で離婚しても財産分与を受けることは可能ですか?

性格の不一致で離婚しても、財産分与を受けることは可能です。財産分与の中心となる目的は、婚姻中に夫婦が協力して築いた財産(共有財産)を公平に分け合って、清算することにあります。そのため、離婚原因は関係しません。仮に相手が浮気していたとしても、基本的に2分の1の割合で財産分与することになります。
ただ、夫婦間で合意できているのであれば、どのように財産分与しても構いません。一方に多く財産を渡すのでも、片方がすべての財産を受け取るのでも、分け方は自由です。

離婚裁判で相手が離婚を拒否し続けた場合、離婚は認められないのでしょうか?

離婚原因が性格の不一致のみである場合、離婚裁判で相手が離婚を拒否し続けているなら、離婚が認められないこともあります。
ただし、性格の不一致をきっかけに夫婦関係が破綻している状況にあるなら、法定離婚事由のうち「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして、離婚を認めてもらえる可能性があります。特に、別居が継続している場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」があると判断されやすいです。
また、相手が不貞行為をしている、相手から暴力を振るわれている、相手が生活費をまったく渡してくれない、といった性格の不一致以外のことも離婚の一因となっていた場合には、夫婦間の事情を総合的に考慮して離婚できる可能性がありますので、今一度ご自身の状況を振り返ってみましょう。

性格の不一致で離婚した場合のデメリットはありますか?

性格の不一致による離婚では、基本的に慰謝料はもらえないというデメリットがあります。なかでも専業主婦(主夫)の方やパートをしていた方の場合、慰謝料がもらえないことで離婚時に受け取れるお金が減ってしまい、離婚後の生活が苦しくなるおそれも考えられます。
また、性格の不一致というあいまいな理由では、相手がなかなか離婚に納得してくれず、話し合いが長引く可能性もあるでしょう。その場合、相手に離婚に応じてもらうための手段として、解決金を支払う必要が生じることもあります。

性格の不一致で離婚したい場合は弁護士にご相談ください

性格の不一致から離婚を考えたとき、話し合いで相手が同意してくれれば離婚できます。しかし、相手が離婚したくないと拒否したりして裁判にまで発展した場合、性格の不一致のみを理由に離婚を求めても、裁判所に認めてもらうことは簡単ではありません。
性格の不一致で離婚したい場合には、弁護士に相談してみてください。弁護士のアドバイスを受けることで、話し合いがスムーズに進む可能性があります。また、弁護士が代わりに交渉にあたることも可能ですし、裁判を行うことになった際は適切にサポートいたします。
弁護士法人ALGでは、離婚問題に詳しい弁護士がお待ちしています。性格の不一致での離婚についてお悩みのときは、おひとりで抱え込むのではなく、まずは弊所に相談してみてはいかがでしょうか。

離婚に向けて別居を考えても、生活費が心配でなかなか踏み切れない方もいるでしょう。そのような方に知っておいてほしいのが、「婚姻費用分担請求」です。
夫婦には、お互いの生活費や子供にかかる費用などを分担する義務があります。別居中でも夫婦には変わりないので、基本的に相手の方が多く稼いでいるなら、別居中の生活費は相手に請求して支払ってもらうことができます。本ページでは、「婚姻費用分担請求」について、具体的な請求の方法なども含めて詳しく解説していきます。

婚姻費用分担請求とは?

婚姻費用分担請求とは、家族が生活を送るうえで必要な費用(婚姻費用)を、配偶者に請求する手続き です。 法律上、夫婦は、お互いの収入等に応じて婚姻費用を分担する義務を負うものと定められています。そのため、相手が負担すべき婚姻費用が支払われないときには、別居中か同居中かにかかわらず、婚姻費用を請求することが可能です。通常は、収入の少ない方が多い方に対して請求します。

働いていても婚姻費用分担請求できる?

婚姻費用分担請求は、専業主婦(主夫)などのように、一方に収入がない場合だけにしか請求できないわけではありません。共働きの夫婦でも、相手より収入が少ないのであれば請求できます。
また、収入に差がなかったとしても、子供を連れて別居する場合などには請求可能です。この場合は、学費などの子供を育てるのに必要な費用を、婚姻費用として請求することになるでしょう。

婚姻費用分担請求を行うメリット

婚姻費用分担請求を行うことには、様々なメリットがあります。いくつか例を挙げてみましょう。

●別居中の生活費を確保できる
特に専業主婦(主夫)の方やパートをしている方などは、別居中の生活費に不安を覚えるでしょう。婚姻費用分担請求をすれば、相手に生活費を支払ってもらえますので、こうした不安は少なくなります。

●離婚に向けた話し合いや裁判等が長引いても、その間の生活費を気にせずに済む
離婚が成立するまでの間は、婚姻費用の請求が可能です。離婚の手続きを進めている最中で相手から生活費が支払われなくなったとしても、心配する必要はありません。

●離婚が成立しやすくなる可能性がある
離婚しない限り、婚姻費用の支払いは続きます。それを負担に感じた相手が、「婚姻費用を払い続けるくらいなら別れた方がいい」として、離婚に応じてくれる場合もあります。

離婚調停と同時に申し立てる場合のメリットは?

婚姻費用を請求したものの、相手が話し合いに応じてくれない場合などには、裁判所の調停手続きを利用することになります。そして、その際には離婚調停の申立てを同時に行うこともできます。
同時に申し立てれば、離婚が成立するまでの生活費を確保できるため、安心して調停に臨めるというメリットがあります。なお、通常は両方とも同じ期日で進められるので、余計に裁判所に行く回数が増えるといったことはありません。
離婚調停を申し立てる際にすでに別居をスタートさせている方などは、別居中の生活に困らないよう、同時に申し立てることも検討してみるといいでしょう。

こんな場合は婚姻費用分担請求が認められないことも……

相手より収入が低かったとしても、自身が有責配偶者だった場合には、婚姻費用分担請求は裁判所に認められないこともあります。 “有責配偶者”というのは、夫婦仲がうまくいかなくなった主な原因を作り出した者を指します。
したがって、自身の浮気やDVなどが原因で別居するに至ったケースなどでは、婚姻費用の請求は認められない可能性があることから注意が必要です。もっとも、子供には何の責任もないので、有責配偶者からの請求であっても、子供に関する費用(養育費に相当する金額)については、請求は認められる可能性が高いです。

婚姻費用分担請求の方法

婚姻費用分担請求をするときは、まずは夫婦間の話し合いをするのが基本です。話し合っても意見がまとまらない場合や、そもそも話し合いにすら応じてくれない場合には、家庭裁判所に「婚姻費用分担請求調停」を申し立てて話し合いを進めていきます。そして、調停でも決まらないときは審判の手続きに移り、裁判官によって判断されることになります。
なお、婚姻費用について話し合う際には、早めに内容証明郵便を送っておくなど請求の意思を明らかにしておくことをおすすめします。基本的に、婚姻費用は“請求した時”からの分しか認められません。この点、「内容証明郵便の送付時=請求した時」とみなされる可能性がありますので、なるべく多くの婚姻費用を支払ってもらえるよう、積極的に活用するといいでしょう。

婚姻費用分担請求調停の流れ

婚姻費用分担請求について、本人同士では決着がつかないときは、家庭裁判所の手続きを通して決めていく必要があります。その第一段階となるのが、「婚姻費用分担請求調停」です。調停を行うのに必要な書類や、手続きの具体的な流れなどを、以降より詳しくみていきましょう。

必要書類

婚姻費用分担請求調停を行う際に必要になる書類は、主に次のとおりです。

  • 申立書とその写し1通
  • 連絡先等の届出書
  • 事情説明書
  • 進行に関する照会回答書
  • 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 申立人の収入関係の資料 【例】源泉徴収票、給与明細、確定申告書などの写し

婚姻費用の判断により多くの情報が必要な場合などには、追加の書類の提出が求められることもあります。ご不安な方は、事前に申立先の家庭裁判所に問い合わせて確認しておくことをおすすめします。

申立て~調停終了までの流れ

①~⑤のように番号を振って簡潔に流れを書いてください。

調停の申立てをしてから終了するまでの大まかな流れを示すと、次のようになります。

①必要書類を家庭裁判所に提出し、調停を申し立てる
申立先は、【相手方の住所地を管轄する家庭裁判所】または【当事者間で合意して決めた家庭裁判所】になります。また、申し立てる際は次の費用が必要です。
 ●収入印紙1200円分
 ●連絡用の郵便切手(※金額は裁判所によって異なる)

②第1回調停期日を知らせる呼出状が届く
 通常は、申立てから2週間程度で届きます。

③第1回調停期日
 一般的な所要時間は、およそ2時間程度です。申立人と相手方が交互に話を聞かれます。

④必要に応じて、2回目以降の期日が設けられる

⑤調停の終了(成立・不成立など)

調停成立の場合

婚姻費用に関する条件について、夫婦双方が合意し、調停委員会がその合意に問題ないと判断した場合には、調停成立となります。
調停が成立すると、家庭裁判所によって「調停調書」が作成されます。この調停調書には、調停で合意した内容が記載されており、後になって当事者がこの内容に従わないときには、“強制執行”という手続きをとることができます。そのため、相手が婚姻費用を支払わないようであれば、直ちに強制執行を申し立て、相手の財産(主に預貯金、給料など)を差し押さえることも可能です。

調停不成立の場合

調停を行っても一向に話し合いがまとまらず、調停委員会が「このまま調停を続けても合意しそうにない」と判断したときには、調停は不成立となってしまいます。
調停不成立となった後は、自動的に「審判」の手続きが開始されます。審判では、裁判官が当事者双方から意見を聞き取り、その内容や調停で話し合った内容など、すべての事情が考慮されて裁判官が婚姻費用を決定します。

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婚姻費用の調停で質問される内容

婚姻費用分担請求調停では、調停委員会のうち“調停委員”(通常は男女1名ずつの計2名)から質問を受け、話をしていきます。よく聞かれる内容としては、例えば次のようなものがあります。

  • お互いの収入状況
  • 子供の有無と年齢
  • 調停を申し立てるに至った経緯
  • 現在の生活状況
  • 希望する婚姻費用の内容(金額・支払日・支払方法など)

調停委員と話すときは、感情的にならず冷静になることを心がけましょう。調停委員は、ただ単にお互いの意見を伝言ゲームのように伝えていくわけではありません。両者が合意できるようにと、解決案を提示したり助言をしたりして、話し合いを進めてくれます。そのため、調停を有利に進めやすくするためには、調停委員にあなたの主張を理解してもらい、共感してもらうことが重要なポイントになってくるのです。

婚姻費用分担請求調停に欠席するとどうなる?

事前に連絡を入れて初回の調停を欠席した場合、基本的には出席した当事者のみの意見が聞かれて、欠席した当事者の意見は次回の期日に聞かれることになります。また、場合によっては、初回の期日自体が延期されることもあります。
一方で、何の連絡もせずに欠席した場合には、出席した者のみの意見が聞かれ、欠席した者に対しては、裁判所から連絡が来たり、「出席するように」と勧告されたりすることがあります。その後も無断欠席を続ければ、裁判所に「調停に参加する気はない」と判断され、調停は不成立となるでしょう。
調停不成立となったら、最終的に裁判官によって婚姻費用が決められることになりますが、調停での無断欠席が判断に影響し、望まない結果になってしまうおそれもあります。調停にはきちんと出席し、自分の意見を伝えるようにしましょう。

今すぐにでも婚姻費用を支払ってほしいときは?

調停や審判の手続きが終了するまでには、ある程度時間がかかります。しかし、なかには結果を待っていられないほど、生活に困っている方もいるでしょう。
今すぐにでも婚姻費用を支払ってほしいときは、調停と併せて「調停前の仮処分」を申し立ててみてください。認められれば、調停が成立するのを待たずして、裁判所が相手に対し、婚姻費用を仮で支払うよう命令してくれます。ただし、強制執行力はありません。
また、審判手続きに進む際は、「審判前の保全処分」を申し立てるという手もあります。“審判前”とありますが、調停中でも申立て可能です。認められれば、審判の結果が出る前に、婚姻費用を仮で支払ってもらうことができ、相手が従わないときは強制執行することもできます。

婚姻費用分担請求で弁護士にできること

弁護士にご依頼いただければ、色々な角度から婚姻費用分担請求をサポートすることが可能です。具体的には、次のようなことができます。

  • 代わりに配偶者と交渉する
  • 内容証明郵便を作成・送付する
  • 合意内容をまとめた書面を作成する
  • 裁判所に提出する書類を作成する
  • 調停や審判の手続きで、代理人となってサポートする
     (やむを得ず欠席する際、事情によっては弁護士のみの出席が可能な場合もあります。)

婚姻費用分担請求でお困りなら弁護士にご相談ください

婚姻費用分担請求をしたいと考えているものの、どのように請求していった方がいいのか、調停委員にはどのように話していけばいいのか等、悩むこともあるでしょう。そのようなときは、弁護士に相談することをおすすめします。なかでも離婚問題に詳しい弁護士なら、豊富な経験に基づいた個別具体的なアドバイスができます。
過去に支払ってもらえなかった婚姻費用は、基本的に請求することはできませんので、婚姻費用分担請求はできる限り早く行うべきだといえます。お困りの際は、早急に弁護士にご相談ください。

交通事故の慰謝料請求は、弁護士に依頼して弁護士基準で行うべきでしょう。
おそらくほとんどの方が、この結論に至るはずです。
なぜ弁護士基準で行うべきなのか、弁護士基準で交渉するにはなぜ弁護士に依頼しなければならないのか、そもそも弁護士基準とは何なのか、といった疑問が生まれてくるかと思いますので、このページで一緒に解消していきましょう。
ここでは、数ある損害賠償項目の中でもみなさんが気になる“慰謝料”に着目しつつ、弁護士基準について解説していきます。

弁護士基準とは

弁護士基準とは、慰謝料をはじめとする賠償額を算定するために用いられる基準であり、自賠責基準、任意保険基準と並ぶ3つの算定基準のひとつで、別名で裁判基準ともいわれます。
過去の裁判例をもとに設けられた基準で、実際に示談交渉や裁判などで弁護士が用いるのはこの基準となっています。
以下では、慰謝料の視点から弁護士基準の解説をしていきます。慰謝料には、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料といった3つの種類がありますので、順を追ってみていきます。

弁護士基準の入通院慰謝料相場は2種類ある

まずは、怪我を負ったことや治療の負担に対する精神的苦痛に対する入通院慰謝料について掘り下げていきます。
弁護士基準の入通院慰謝料の計算方法は大きく分けて2種類あります。事故で受傷した怪我の大きさで区別されており、骨折や脱臼といった「通常の怪我の場合」と捻挫や打撲といった「比較的軽傷の場合」に分けられます。
それぞれに見合った慰謝料を算出するために2種類の算定表※が用意されており、1ヶ月を30日と換算して、自身の入院期間と通院期間に該当する箇所を見ていくと慰謝料額が算出できます。
治療期間が1ヶ月に満たなかったり、端数が出たりした場合には、日割り計算をして算定することになります。

※別表Ⅰ:通常の怪我の場合、別表Ⅱ:比較的軽傷の場合

通常の怪我の場合

より具体性をもつために、例を用いて実際に計算してみましょう。
【例:骨折の症状で、入院1ヶ月、通院4ヶ月、実通院日数60日のケース】

通常の怪我の場合【別表Ⅰ】
入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 AB 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306 314 321 328 334 340
1月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311 318 325 332 336 342
2月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315 322 329 334 338 344
3月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319 326 331 336 340 346
4月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323 328 333 338 342 348
5月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325 330 335 340 344 350
6月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327 332 337 342 346
7月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329 334 339 344
8月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331 336 341
9月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333 338
10月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335
11月 150 179 207 234 258 278 296 312 324 332
12月 154 183 211 236 260 280 298 314 326
13月 158 187 213 238 262 282 300 316
14月 162 189 215 240 264 284 302
15月 164 191 217 242 266 286

表に照らし合わせると、慰謝料の金額は「130万円」となります。
ちなみに、自賠責基準で計算すると「51万6000円」ですので、弁護士基準で算出すると自賠責基準の2倍以上の慰謝料を受け取れることになります。
もっとも、通院状況によっては慰謝料の額が調整されることがある点には注意が必要です。通院期間は長期にわたっている場合(おおむね1年以上)で通院実日数が少ない時には、「実通院日数×3.5」で計算される数字を慰謝料の算定期間として採用することがあり、結果的に減額されてしまう可能性もあります。

他覚所見のないむちうち等、比較的軽傷の場合

では、同じ条件で、受傷した怪我が“むちうち”、つまり比較的軽傷であったケースで比較してみます。
【例:むちうちの症状で、入院1ヶ月、通院4ヶ月、実通院日数60日のケース】

むちうち等他覚所見のない比較的軽傷の場合【別表Ⅱ】
入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 A’B’ 35 66 92 116 135 152 165 176 186 195 204 211 218 223 228
1月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199 206 212 219 224 229
2月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201 207 213 220 225 230
3月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202 208 214 221 226 231
4月 67 95 119 136 152 165 176 185 192 197 203 209 215 222 227 232
5月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204 210 216 223 228 233
6月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205 211 217 224 229
7月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206 212 218 225
8月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207 213 219
9月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208 214
10月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209
11月 117 135 150 160 171 179 187 193 199 204
12月 119 136 151 161 172 180 188 194 200
13月 120 137 152 162 173 181 189 195
14月 121 138 153 163 174 182 190
15月 122 139 154 164 175 183

上表で確認すると、「95万円」となることがわかります。
通常の怪我の場合(別表Ⅰ)と比べると金額は低くなりますが、自賠責基準よりは増額されることが見て取れるでしょう。
事故で負わされた怪我を“軽傷”といわれてしまうのは腑に落ちない部分もありますが、損害賠償を請求していくうえでは、「目に見える証拠」が非常に重要です。むちうちや打撲といった症状は、MRIやレントゲンの画像など他覚的な所見で確認できないことが多いため、通常の怪我以外の“軽傷”に区分されます。
また、通院頻度が極端に少ない場合には、「実通院日数×3」を通院期間とされてしまうおそれがありますので、通院の仕方には注意が必要です。

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弁護士基準の後遺障害慰謝料

ここからは、受傷した怪我が治りきらず、後遺障害として残存してしまった場合の精神的苦痛に対する後遺障害慰謝料についてみていきましょう。
症状の内容や部位ごとに後遺障害等級が設けられており、等級ごとに後遺障害慰謝料が定められています。弁護士基準では下表のように等級ごとの慰謝料が受け取れることになります。

後遺障害等級後遺障害慰謝料
1級2800万円
2級2370万円
3級1990万円
4級1670万円
5級1400万円
6級1180万円
7級1000万円
8級830万円
9級690万円
10級550万円
11級420万円
12級290万円
13級180万円
14級110万円

弁護士基準の死亡慰謝料

最後に、最も重大な結果である死亡事故となった場合の精神的苦痛に対する死亡慰謝料についてです。
弁護士基準では、下表のとおり、亡くなった被害者の属性ごとに死亡慰謝料の相場が設けられています。あくまでも“相場”ですので、事情によっては変動することもあり得ます。
なお、自賠責基準の死亡慰謝料の性質とは異なる点に注意が必要です。自賠責基準では、本人分と遺族分に分けて考えますが、弁護士基準では分けずに一括したものとなります。

亡くなった被害者の属性死亡慰謝料
一家の支柱2800万円
母親、配偶者2500万円
その他(独身の男女、子供、幼児等)2000万~2500万円

自力で弁護士基準による交渉をするのは難しい

少しでも多くの慰謝料を受け取るためにも、弁護士基準で交渉を進めたいという思いは、被害者側に共通することかと思います。しかし、保険会社は弁護士に依頼していない事案で弁護士基準による賠償額を提示してくれることはありません。弁護士が被害者の事故でさえ、別の弁護士に依頼をしないと弁護士基準は採用しないと主張されるくらいです。
それだけでなく、交渉相手となる保険会社には多くの事故の処理してきた経験があり、被害者が一人で立ち向かうのは非常に苦労が多いです。
弁護士に依頼することにより、被害者の方にとっては、自分で交渉する負担が軽減するとともに、弁護士基準で賠償額を算定できるという2つのメリットがあるわけです。

弁護士基準の慰謝料請求はお任せください

弁護士基準で慰謝料請求をしたいと思われた際は、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士法人ALGは、交通事故の案件数を着実に増やしています。さまざまな態様を経験していますので、その圧倒的な経験値を存分に活かすことができます。
なかには、弁護士費用をネックに感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、ほとんどの方は弁護士費用特約により自己負担なくご依頼いただけます。万が一、費用倒れのおそれがある場合には、弊所ではご依頼いただく前にその事実をきちんとお伝えしていますのでご安心ください。
まずは、問い合わせてみるというアクションから起こしてみましょう。万全の体制でお待ちしています。

自賠責基準。
なんとなく、目にしたり耳にしたりして、言葉は知っている方も多いと思います。しかし、その概要を正しく理解していらっしゃいますか?
交通事故の示談交渉では、なかなかの頻度で登場します。任意保険基準、弁護士基準と並んで算定基準のひとつとされる自賠責基準は、その仕組みを知っているのと知らないのとでは、結果的に受け取れる損害賠償金で差が生じてしまう可能性もあるのです。
ぜひこのページで自賠責基準について理解を深めていきましょう。

自賠責基準とは

自賠責基準とは、被害者救済を目的としている自賠責保険における損害賠償金の支払い基準をいいます。
強制加入である自賠責保険は、よく“最低限度の補償を受ける保険“と表現されます。この表現からもわかるように、慰謝料についての3つの基準である、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の中で最も低い補償額に留まることが多いです。
ただし、過失割合が一定程度大きいケースなどでは、他の算定基準を上回り、自賠責基準で算出した金額が最も高額となることもあります。

自賠責基準の入通院慰謝料は120万円までしか支払われない

怪我をした事故被害者の方は、その精神的苦痛の賠償として入通院慰謝料を受け取ることができます。しかし、自賠責基準だと保険の上限額が決まっているため、どんなに大きな怪我を負ったとしても【120万円まで】しか補償を受けられません。

治療費や交通費を含む額であることに注意が必要

自賠責基準の【120万円まで】という限度額は、入通院慰謝料のほか、治療費や交通費、付添費、雑費、診断書作成費、休業損害など、さまざまな費目分が含めた金額となっています。慰謝料分として別枠で設けられているわけではないので、例えば大怪我をして治療費だけで120万を超える場合などには、自賠責保険から入通院慰謝料が受け取れなくなってしまうこともあり得るのです。

120万円を超えたら任意保険に請求を行う

では、治療費などが120万円を超えたらそれ以上の補償は受けられないのでしょうか?
この点、120万円を超える部分は、任意保険会社が補償するのが一般的です。任意保険会社は自賠責の限度額を超える部分を保証してくれる点で被害者にはありがたい存在であり、対人賠償が無制限となっていれば、大怪我をして治療費が高額になっても安心といえます。
もっとも、任意保険会社は自賠責の限度額の範囲で賠償額を抑えれば、事後的に自賠責に任意保険会社が負担した分の償還を求めることによって、任意保険会社の実質的な負担額をゼロに済ますことができるという点には注意が必要です。そのため、任意保険会社側からは賠償金額の合計が120万円を超えそうなケースでは、頃合いを見計らって、被害者に対して治療費の打ち切りなどの連絡をしてくることも多いです。

加害者が任意保険に入っていない場合

加害者が任意保険に加入していなかったとすれば、話が変わってきます。
任意保険がない場合でも、自賠責分の賠償を求めることは可能ですが、損害賠償額が自賠責の上限である120万円を超えてしまうけけースも少なくありません。その場合、自賠責分では足りない部分については加害者に直接請求しなければなりません。
ここで注意したいのが、加害者は任意保険に加入できないくらいお金に余裕がない可能性があり、請求したところで受け取れない場合があることです。
泣き寝入りする事態とならないよう、労災保険の適用や、被害者自身の任意保険の特約、加害者が運転していた車の所有者に請求できないかなどについて確認してみましょう。

入通院慰謝料の計算方法

自賠責基準の入通院慰謝料は、1日ごとに4300円受け取れますので、【4300円×対象日数】で求めることができます。
対象日数は、以下の2通りのうち数の少ないほうを採用することになります。基本的には、通院した期間を基にして算定するということなるわけですが、短い通院期間の中でたくさん通院した場合には①の方法、通院期間が長いにもかかわらず、通院実日数が少ないケースでは②の方法を採用していくというイメージです。

①総治療期間(初診から症状固定までの日数)
②(入院期間+実際通院した日数)×2

7日加算とは

自賠責基準で出てくる「7日加算」とは、“ある条件”を満たすと、実際の治療期間よりも7日長くみなしてもらえることをいいます。
“ある条件”というのが、診断書の治療終了日欄に以下の記載がある場合です。以下のような記載がある場合には、通院最終日から一定期間は治療期間が継続していたとみなすべきという判断となり、実際の最終通院日に7日を加算して慰謝料を算定するわけです。

  • 治癒見込…診断書作成時点では治癒していないものの、今後治癒することが見込まれる
  • 中止…治癒していないものの、事情により治療を中止する
  • 転医…医師や病院自体を変える
  • 継続…今後も長期的・計画的な治療を要される

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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自賠責基準の後遺障害慰謝料

事故で負った症状が、治療の甲斐なく残存してしまった場合、自賠責の調査事務所によって後遺障害として認められると、後遺障害慰謝料を請求できるようになります。具体的には、症状の重さによって1~14級の等級に区分されます。
自賠責基準では、下表のように認定された後遺障害等級ごとに慰謝料金額が決まっています。なお、別表第1と第2としてそれぞれに1、2級の枠が設けられていますが、この違いの目安は、「介護を必要とするかどうか」です。要介護の場合は別表1に、それ以外の症状の場合は別表2に分類されることになります。

後遺障害等級自賠責基準での後遺障害慰謝料
※()内の金額は2020(令和2)年3月31日以前に
発生した交通事故の場合です
別表第11級1650万円(1600万円)
2級1203万円(1163万円)
別表第21級1150万円(1100万円)
2級998万円(958万円)
3級861万円(829万円)
4級737万円(712万円)
5級618万円(599万円)
6級512万円(498万円)
7級419万円(409万円)
8級331万円(324万円)
9級249万円(245万円)
10級190万円(187万円)
11級136万円(135万円)
12級94万円(93万円)
13級57万円(57万円)
14級32万円(32万円)

自賠責基準の死亡慰謝料

不運にも被害者が死亡してしまった場合、突然命を奪われた本人にとっても、その家族にとっても、計り知れない苦痛が生じます。この苦痛を慰謝するために請求できるのが「死亡慰謝料」となります。
自賠責基準の死亡慰謝料は、被害者本人分と遺族分それぞれに認められているのが特徴といえます。詳細をみていきましょう。

本人の慰謝料

自賠責基準の本人分の死亡慰謝料は、老若男女問わず、一律400万円※と決まっています。
亡くなった方が、著名人であろうが、サラリーマンであろうが、主婦であろうが、この金額は変わりません。
※2020(令和2)年3月31日以前に発生した交通事故の場合は、350万円です

遺族の慰謝料

“遺族”ときくと、幅広い親類が想像されますが、自賠責基準でいう遺族分の死亡慰謝料を請求できる人は、被害者の配偶者、子供、父母に限られます。なお、養子や養父母、認知した子供、胎児なども含みます。
具体的な金額については、下表のように請求できる遺族の人数で変わってきます。家族構成によって変わるほか、亡くなった被害者が扶養していた人数によっても変動し得るのが特徴といえるでしょう。

請求権者近親者固有の死亡慰謝料
1人550万円
2人650万円
3人以上750万円
被扶養者がいる場合上記+200万円

自賠責基準と過失割合

自賠責保険の過失相殺の扱いは特殊なので、無過失でない限り、ぜひ押さえておいてください。
自賠責保険では、過失割合が7割未満の場合は、過失相殺されず過失割合分の減額がなされません。7割以上のケースでも、下表のとおり減額が一部に留まる程度で済みます。
なぜ、このような扱いがなされるかというと、自賠責保険の目的が「被害者保護」にあるからです。
過失割合が大きい場合には、他の算定基準(任意保険基準、弁護士基準)よりも高い金額の賠償を受けられる可能性もあります。

自賠責における過失割合の取り扱い
自身の過失割合傷害後遺傷害・死亡
7割未満過失相殺なし 過失相殺なし
7割~8割未満 2割減額2割減額
8割~9割未満 2割減額3割減額
9割~10割未満2割減額5割減額

自賠責基準の慰謝料が提示されていないか不安になったらご相談ください

例外を除き、自賠責基準で算定した損害賠償額は、“最低限度の補償額”に留まっていることがほとんどです。自賠責保険は被害者保護のための重要な制度ですが、被害者の適切な賠償額には足らないことがほとんどです。
適切な賠償額が本来どのくらいであるかを確認するために一度弁護士に相談してみることをおすすめします。
交通事故事案の経験が豊富な弁護士は、適正な算定のもと相手方と交渉することも可能ですし、もっと早い段階でご相談いただければ、適切な通院方法のアドバイスなどからサポートすることもできます。
望まない事故に遭ったことに加えて、損害賠償を受けるうえでも損をしたり、泣き寝入りしたりする事態は避けましょう。弁護士法人ALGは、あなたからのご相談を心よりお待ちしています。

「養育費について取り決めをしたのに、相手からの支払いが滞ってしまった……」
残念ながら、こうした事態は決して珍しいことではなく、統計的にも頻発しているデータがあります。しかし、大切な我が子を育てていくために、このまま泣き寝入りすべきではないのは明らかです。
そこで、今回は、養育費が未払いになってしまったときの対応策について、【調停で取り決めをした場合】と【口約束で取り決めをした場合】といったケース別に紹介していきます。請求していくうえで重要になってくる“時効”に関しても交えつつわかりやすく解説していきますので、ぜひ参考になさってください。

調停で決められた養育費が不払いになった場合

調停で取り決めをした養育費が不払いとなってしまった場合、「調停をした」事実を強みとして催促や督促を行うことができます。
対策として、3つのステップがありますので、順を追ってみていきましょう。

対策1.履行勧告

まずは、裁判所から“履行勧告”をしてもらいましょう。
履行勧告とは、家庭裁判所から「約束を守るように」といった通達や説得をしてもらえる制度です。裁判所から、電話や書類などで連絡が行くことになるので、届いた相手も焦りを感じ支払いに応じるきっかけになる可能性があります。

手続き自体は無料かつとても簡単で、養育費を取り決めた家庭裁判所の窓口で履行勧告の申出をすることでできます。電話で応じてもらえる場合もありますので、一度問い合わせてみるとよいでしょう。

ただし、履行勧告は、家庭裁判所の調停や審判、裁判などを経て、調停調書や審判調書、判決といった債務名義がないと利用できないことに注意が必要です。同じ債務名義でも、離婚協議などで作成した公正証書は、家庭裁判所の手続きを経ていませんので利用できないことにご注意ください。
また、あくまでも通達に限られるものですので、支払いを強制するような強制力までは持ち合わせていないことも理解しておく必要があります。

対策2.履行命令

履行勧告でもなお、支払いに応じてもらえない場合は、次のステップとして“履行命令”が考えられます。
履行命令とは、管轄の家庭裁判所が必要と認めた場合に、「●●までに支払いなさい」といったように期限を決めて支払いを命令してもらえる制度です。これに従わないと、10万円以下の過料が科せられるという点で、勧告よりも強い強制力を持ちます。

履行命令の手続き方法は履行勧告と同様で、特別の費用もかかりません。
なお、金銭罰に処せられる意味で反応する人もいれば、刑事罰でもなければ過料も10万円以下と低額なので、応じない人がいるのも事実です。

対策3.強制執行

履行勧告や履行命令を行っても応じてもらえない場合は、最終的な手段として“強制執行”が考えられます。
強制執行とは、相手の財産を差し押さえるといったイメージをお持ちの方も多いと思いますが、具体的には、給与や預貯金、不動産といった財産を強制的に差し押さえて、約束している養育費の支払いを実現させるといった強い強制力のある手続きをいいます。
なかでも給与の差押えは、最大2分の1に限られますが、一度手続きをしてしまえば将来分も継続して差し押さえることができますので、今後も安心して過ごすことができるでしょう。

勧告や命令と異なる点は、強制執行の申立てには手続きが必要で、別途費用がかかるところです。しかし、相手の財産を差し押さえて、今後の支払いも確保できるといった強制力を考慮するのであれば、検討する余地は十分にあるといえます。

申立てには調停調書や判決といった債務名義が必要で、強制執行の場合は執行を認諾する文言が付いている公正証書も有効となりますので、一度ご確認ください。

民法改正で未払い養育費に対応しやすくなりました

民事執行法が2019年に改正、2020年に施行となりました。
これにより、強制執行が行いやすくなり、養育費の未払いにも対応しやすくなったのです。背景を交えつつ少しだけ詳細を紹介させてください。

改正前は、強制執行をするには、相手の財産を明確にしたうえで申立てをする必要がありました。このため、相手が転職してしまったり、相手の口座番号がわからなかったりすると、財産を明確にできず申立てをすること自体できなかったのです。

この点、改正後は、裁判所に対して「第三者からの情報取得手続」を申し立てれば、裁判所を通じて市区町村や、日本年金機構、厚生年金保険の実施機関、金融機関といった関係各所に調査することが可能になりました。
つまり、相手の財産がわからなくても強制執行の申立てができ、養育費の支払いを実現できる可能性が高まったことを意味しています。

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口約束で決めた養育費が突然支払われなくなった場合

続いて、裁判所の手続きを介しておらず、口約束で養育費の取り決めをして、支払いが滞ってしまっているケースをみていきます。
この場合どう対応すればいいのか、順を追ってみていきましょう。

まず、相手に連絡を取る

まずは、相手に支払いが滞っている旨、連絡をしてみましょう。
プライベートや仕事などが立て込んで、単純に忘れてしまっていることも考えられるためです。
連絡手段は、相手が確認できれば何でも構いません。
電話をはじめ、メールやLINEなど、普段から確認しやすいツールを使うことをおすすめします。
なお、コンタクトとして、手紙は推奨しません。忙しい状況で目を通すことは考えにくいですし、相手が読んでそのままにしてしまう可能性も考えられるからです。

内容証明郵便を出すのも1つの手

コンタクトとして手紙はおすすめしませんが、内容証明郵便ともなると話は変わってきます。支払いが滞っている際や相手と連絡が取れない場合などに、内容証明郵便を送っておくのは、一つの有効的な手段といえます。
内容証明郵便とは、文字どおり郵便局が内容を証明してくれる郵便で、相手にきちんと届いたという送達記録が残るものです。「未払いの養育費を支払ってほしい」といった意思が、きちんと相手に届いたことを郵便局が証明してくれるような文書になります。
後々、有用な証拠となったり、時効を延ばすことになったり、相手にプレッシャーを与えたりと、メリットが大きい手段といえますのでぜひご活用ください。
内容証明郵便の利用方法については、郵便局のホームページで紹介していますので、こちらをご確認ください。

内容証明 | 日本郵便株式会社 (japanpost.jp)

交渉・調停で養育費を請求する

コンタクトがとれたら、養育費について支払ってもらえるよう交渉を試みます。
交渉により相手が応じたり、合意できたりした場合は、今度こそ口約束では済ませず、文書に残すようにしましょう。その際、公証役場で執行認諾文言付きの公正証書を作成しておくと、強制執行時の債務名義となりますので、再度養育費が滞った際の対応策も練られることになります。

交渉がむずかしいようであれば、裁判所に対して「養育費請求調停」を申し立てましょう。
調停では、交渉の場を裁判所に移して、調停委員を間に交えて双方の折り合いを探っていきます。合意できれば債務名義である調停調書が作成されますので、履行勧告や履行命令、強制執行といった手続きができるという、お守りも手に入れられることになります。

養育費の未払い分はどこまで遡って請求できる?

養育費に不払いが発生し、継続してしまっている場合は、時効についても気にしておかなければなりません。
養育費の取り決めをしている場合、裁判所を介しているかいないかで時効が異なります。

  • 裁判所を介している場合(調停、審判、裁判)・・・支払期日から10年(※)
  • 裁判所を介していない場合(話し合い、公正証書を作成した場合を含む)・・・支払期日から5年

※調停や判決後の将来の養育費は時効が5年となります。

いずれの場合も、未払い分をさかのぼって請求できるのは、時効が成立しない分に限られます。また、この間に子供が成人に達してしまった場合でも、時効が成立していなければ該当期間の未払い分はさかのぼって請求できます。

なお、養育費について取り決めていなかった場合は、基本的にさかのぼって請求することはできないのが実情です。さかのぼれても、“内容証明郵便が送達された日”や“養育費請求調停を申し立てた日”などとされるケースが多いでしょう。

養育費未払いの理由が環境の変化によるものだった場合

時が経つにつれ、お互いの事情や環境が変化していくのは通常のことです。なかには、再婚したり、再婚相手との間に子供が生まれたり、転職や昇級などで給与の増減が生じたりするケースも出てくるでしょう。
だからといって、すぐさま養育費を支払わなくていいといったことにはなりません。

ただし、相手が環境などの変化を理由に「養育費減額調停」を申し立ててきた場合には、状況が変わってくる可能性があります。
調停や審判、裁判などで養育費の減額が認められるとなると、“養育費減額調停を申し立てられた日”や“個別の事情の変化が発生した日”などを境に養育費の金額が減ってしまうことになります。

未払い養育費にお困りなら弁護士にお任せください

子供がのびのび成長していくには、経済的な余裕があることに越したことはありません。
養育費を受け取れないから、無理に仕事を詰め込んで子供との時間を削ってしまったり、子供に我慢をさせてしまったりするのは決して望ましいことではないでしょう。

養育費が滞っていてお困りでしたら、ぜひ弁護士にご相談ください。
なかでも弁護士法人ALGは、離婚問題に特化したチームがあり、養育費の未払い問題についてもさまざまなケースを解決に導いてきました。
ご依頼者さまお一人お一人の状況に寄り添って、ベストな道筋を見つけるサポートを全力で行いますので、お悩みの方はぜひ無料相談からご検討ください。

離婚を決意する原因には様々なものがありますが、高齢化社会が進む昨今では、家族の介護のストレスがきっかけになることも多いです。これを「介護離婚」といいます。
介護離婚をする際には、誰を介護しているかによって、夫婦で話し合うべき問題も変わってきます。

そこで今回は、義両親、実親、配偶者本人、障害のある子供など、介護の対象となる人ごとにケースを分けて、それぞれをめぐる問題について解説します。

介護離婚とは

介護離婚とは、家族の介護のストレスが原因で離婚することをいいます。
特に、義両親の介護をひとりで担うことに耐え切れなくなった妻が介護離婚を切り出す場合が多いです。また、実親や障害のある子供の介護をめぐって配偶者と諍(いさか)いになり、介護離婚を決意するといった場合もあります。

介護は心身ともに大きな負担となるものですが、どうして離婚にまで発展してしまうのでしょうか?
次項より、介護離婚のケース別に、離婚に発展してしまう要因や、離婚するにあたって話し合うべき問題点などを説明していきます。

義両親の介護を理由に離婚するケース

ただでさえ介護は心身への負担が大きいものですが、自分とは血のつながりのない義両親の介護によるストレスは特に大きくなりがちです。
また、介護を受けている高齢世代の方の中には「義両親の介護は嫁がするもの」といった価値観を強く持っている方も多く、義両親の介護の負担が妻ひとりに集中してしまっているご家庭も少なくありません。
しかし、通常、義両親の介護は妻の義務ではありません。介護を受けている義両親や夫、その他の親族などが妻への感謝の気持ちを持たず、当たり前のこととして受け止めていれば、いつか妻が我慢の限界を迎えた時に離婚を決意してしまうことも何ら不思議ではないでしょう。

介護した義両親の遺産は離婚時にもらえるのか

たとえ妻が献身的に介護していても、配偶者が相続した義両親の遺産を財産分与などでもらうことはできません。
介護してきた義両親の遺産を妻がもらうためには、事前に下記のような対応をしておく必要があります。

  • 実子の配偶者(ここでいう妻)に遺産を遺す旨の遺言を遺してもらう
  • 義両親と養子縁組する
  • 生命保険金の受取人となる
  • 生前贈与してもらう

また、実子の配偶者には相続権がないため、義両親が亡くなった場合にも、特別な手続きをしていない限り遺産を受け取ることはできません。
ただし、妻が介護することでヘルパー代などが浮き、義両親の財産が減らなかったと認められるような場合には、介護に貢献した分のお金を相続の際にもらえる可能性があります。この時にもらえるお金を「特別寄与料」といいます。

義両親の介護をしなければならないのは誰?

法律上、介護義務があるのは、血のつながった子供や孫、兄弟姉妹です。つまり、実子の配偶者には、義両親の介護をしなければならない義務は基本的にありません。
とはいえ、家父長制が長年続いてきた日本では、「義両親の介護は長男の妻の役目」という価値観が強く根づいていました。現在でも、夫自身がするべき親孝行の役割を強いられている妻も少なくないでしょう。

確かに夫婦には互いに助け合う義務があるので、実子の妻(あるいは夫)は、実子が行う義両親の介護をある程度サポートする義務があると考えられます。
しかし、義両親の介護を主体的に行うべきなのは、実子や孫など、あくまでも血のつながった親族です。
介護の方法や費用の負担などについて親族間でよく話し合ったうえで、親族が中心となって協力し合いながら介護を行うべきでしょう。

実親の介護を理由に離婚するケース

血のつながった親に介護が必要になった場合、これまでの愛情や恩から、できる限りのことをしたいと考える方も多いかと思います。
しかし、配偶者が理解や配慮をしなかったり、無神経な言葉をかけてきたりするなど、「親孝行をしたい」という気持ちを尊重してくれなければ、配偶者に対する愛情が冷めてしまうこともあるでしょう。そして、離婚という選択につながるケースも珍しくありません。

夫(妻)の介護を理由に離婚するケース

事故や病気が原因で、夫婦の一方が介護の必要な状態になってしまうこともあります。

介護は負担の大きいものですから、たとえ元々は仲の良かった夫婦でも、ストレスから些細なことで喧嘩を繰り返すようになったり、うつ病や認知症などが原因で攻撃的になった配偶者の言動に傷つけられて精神的なダメージを受けたりすれば、離婚を視野に入れることもあるでしょう。
配偶者に介護が必要になる前から夫婦仲が悪かった場合はなおさらです。

介護を放棄した場合の財産分与はどうなる?

配偶者の介護を理由に離婚しても、財産分与が受けられなくなるということはありません。
財産分与は、それまで夫婦が協力して作り上げてきた財産を分け合う制度なので、“財産を築くのに協力した”という事実がある限りは、離婚の理由に関係なく行われるべきだからです。

ただし、介護を放棄した理由、放棄するまでの経緯、それまでしてきた介護の内容などを考慮した結果、介護の放棄が不法な行為だと判断された場合は、慰謝料を請求されるか、慰謝料の代わりに財産分与の割合などが修正される可能性があります。

夫(妻)が認知症の場合

認知症の夫(妻)と離婚する場合、夫(妻)に離婚について正常に判断できるだけの判断能力があるかどうかで、必要な手続きが変わってきます。

認知症を患っていても、離婚の意味や効果を理解して判断ができるのであれば、通常どおりの手続きで離婚することが可能です。

一方、夫(妻)の認知症が重度で判断能力がないときは、夫(妻)は「離婚」という重大な決定をすることができないので、そのままでは離婚手続きを進めることはできません。
このようなケースでは、家庭裁判所に後見開始の審判を申し立てて「成年後見人」を選任してもらい、成年後見人を相手に裁判での離婚を目指すことになります。なお、ご自身が既に認知症の夫(妻)の成年後見人になっている場合は、家庭裁判所に成年後見監督人を選任してもらい、この成年後見監督人を相手に手続きを進める必要があります。
離婚裁判で、「夫(妻)の認知症は婚姻を継続し難い重大な事由にあたる」など、法律上の離婚原因があると判断されれば、離婚の成立が認められます。

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障害児の介護を理由に離婚するケース

子供に障害があって介護が必要な場合、周囲の理解や十分なサポートを得られず、夫婦それぞれが大きなストレスを抱えてしまうことがあります。その結果、些細なきっかけで夫婦喧嘩を繰り返すようになったり、子育てや介護の方針で対立したりして、お互いに対する愛情が冷めてしまうこともあるでしょう。
また、夫婦の一方が子供の介護に専念していたところ、夫婦間のコミュニケーション不足に不満を抱いたもう一方が不倫に走ってしまうといったケースもあります。

このように、子供の介護がきっかけで夫婦関係にヒビが入ってしまい、離婚につながる可能性があります。

養育費は増額される?

養育費は、基本的に夫婦それぞれの収入を基準に決められます。そのため、子供に障害があるからといって無条件で相場よりも増額されるわけではありません。

養育費を相場よりも増額してもらうには、子供の介護のために相場以上の養育費が必要であることを、客観的な証拠を用意して主張・立証する必要があります。

具体的には、下記のようなポイントから証明していくことになるでしょう。

  • 特別な医療費や生活費、教育費などがかかる
  • 専門のヘルパーを雇う必要がある
  • 介護の負担が大きく働くことが不可能である

親権はどちらになる?

親権は、親である夫婦の希望に加えて、“夫婦のどちらが親権を持つ方が子供の健全な成長にとって良いか”という「子供の福祉」を考慮して決める必要があります。
つまり、個別の状況によって判断が異なるので、夫婦のどちらが親権者となるかを言い切ることはできません。

介護が必要な子供の親権者は、下記のような事情を考慮して決めるべきでしょう。

〇親側の事情

  • 子育てに対する意欲
  • 虐待の有無
  • 子供の介護のために十分な時間を作れるか
  • ヘルパーなど、外部の支援を受けられるだけの経済力があるか
  • 外部からの支援体制が充実しているか
    (住居近くに支援施設がどれだけあるか、親族から援助を受けられる可能性はあるかなど)

〇子供側の事情

  • 年齢
  • 性別
  • 必要な介護の程度
  • 引っ越しなど、環境の変化に適応できるかどうか

介護離婚のときに慰謝料はもらえるのか

介護を受けている人や配偶者、その他の親族などの言動が不法行為と認められる程度のモラハラに該当する場合、慰謝料を請求できる可能性があります。

慰謝料の請求を認めてもらうためには、モラハラを受けていた事実やその実態を証明しなければなりません。そこで、介護離婚の際にモラハラを理由に慰謝料請求することを検討されている方は、次のような点を日記に記録するなどして証拠を残しておくことをおすすめします。

  • モラハラにあたる言動が行われた日時
  • 具体的な言動の内容
  • 言動によって受けた精神的なダメージの詳細

(モラハラによってうつ病などを発症した場合)

  • 具体的な症状
  • 通院した日時
    ※その他、医師の診断書なども用意できると良いでしょう。

介護離婚を考えたら弁護士にご相談ください

介護によるストレスで心身ともに追い詰められてしまったとき、おひとりで正常な判断を行うのは難しいものです。
介護によるストレスが原因で離婚したいと考えられている方は、どのような選択肢があるのかを確認するためにも、一度立ち止まって弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか。ご相談いただければ、弁護士が後悔のない選択ができるようにお手伝いさせていただきます。

弁護士に依頼すれば、介護離婚に伴う各種手続きを一括して任せることができますし、余計なストレスを受けることがありません。
お辛い状況から抜け出すうえで必要な手段や具体的な方法を模索するためにも、ぜひ一度弁護士にご状況をお聞かせください。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。