監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
交通事故の慰謝料請求は、弁護士に依頼して弁護士基準で行うべきでしょう。
おそらくほとんどの方が、この結論に至るはずです。
なぜ弁護士基準で行うべきなのか、弁護士基準で交渉するにはなぜ弁護士に依頼しなければならないのか、そもそも弁護士基準とは何なのか、といった疑問が生まれてくるかと思いますので、このページで一緒に解消していきましょう。
ここでは、数ある損害賠償項目の中でもみなさんが気になる“慰謝料”に着目しつつ、弁護士基準について解説していきます。
弁護士基準とは
弁護士基準とは、慰謝料をはじめとする賠償額を算定するために用いられる基準であり、自賠責基準、任意保険基準と並ぶ3つの算定基準のひとつで、別名で裁判基準ともいわれます。
過去の裁判例をもとに設けられた基準で、実際に示談交渉や裁判などで弁護士が用いるのはこの基準となっています。
以下では、慰謝料の視点から弁護士基準の解説をしていきます。慰謝料には、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料といった3つの種類がありますので、順を追ってみていきます。
弁護士基準の入通院慰謝料相場は2種類ある
まずは、怪我を負ったことや治療の負担に対する精神的苦痛に対する入通院慰謝料について掘り下げていきます。
弁護士基準の入通院慰謝料の計算方法は大きく分けて2種類あります。事故で受傷した怪我の大きさで区別されており、骨折や脱臼といった「通常の怪我の場合」と捻挫や打撲といった「比較的軽傷の場合」に分けられます。
それぞれに見合った慰謝料を算出するために2種類の算定表※が用意されており、1ヶ月を30日と換算して、自身の入院期間と通院期間に該当する箇所を見ていくと慰謝料額が算出できます。
治療期間が1ヶ月に満たなかったり、端数が出たりした場合には、日割り計算をして算定することになります。
※別表Ⅰ:通常の怪我の場合、別表Ⅱ:比較的軽傷の場合
通常の怪我の場合
より具体性をもつために、例を用いて実際に計算してみましょう。
【例:骨折の症状で、入院1ヶ月、通院4ヶ月、実通院日数60日のケース】
入院 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 13月 | 14月 | 15月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
通院 | AB | 53 | 101 | 145 | 184 | 217 | 244 | 266 | 284 | 297 | 306 | 314 | 321 | 328 | 334 | 340 |
1月 | 28 | 77 | 122 | 162 | 199 | 228 | 252 | 274 | 291 | 303 | 311 | 318 | 325 | 332 | 336 | 342 |
2月 | 52 | 98 | 139 | 177 | 210 | 236 | 260 | 281 | 297 | 308 | 315 | 322 | 329 | 334 | 338 | 344 |
3月 | 73 | 115 | 154 | 188 | 218 | 244 | 267 | 287 | 302 | 312 | 319 | 326 | 331 | 336 | 340 | 346 |
4月 | 90 | 130 | 165 | 196 | 226 | 251 | 273 | 292 | 306 | 316 | 323 | 328 | 333 | 338 | 342 | 348 |
5月 | 105 | 141 | 173 | 204 | 233 | 257 | 278 | 296 | 310 | 320 | 325 | 330 | 335 | 340 | 344 | 350 |
6月 | 116 | 149 | 181 | 211 | 239 | 262 | 282 | 300 | 314 | 322 | 327 | 332 | 337 | 342 | 346 | |
7月 | 124 | 157 | 188 | 217 | 244 | 266 | 286 | 304 | 316 | 324 | 329 | 334 | 339 | 344 | ||
8月 | 132 | 164 | 194 | 222 | 248 | 270 | 290 | 306 | 318 | 326 | 331 | 336 | 341 | |||
9月 | 139 | 170 | 199 | 226 | 252 | 274 | 292 | 308 | 320 | 328 | 333 | 338 | ||||
10月 | 145 | 175 | 203 | 230 | 256 | 276 | 294 | 310 | 322 | 330 | 335 | |||||
11月 | 150 | 179 | 207 | 234 | 258 | 278 | 296 | 312 | 324 | 332 | ||||||
12月 | 154 | 183 | 211 | 236 | 260 | 280 | 298 | 314 | 326 | |||||||
13月 | 158 | 187 | 213 | 238 | 262 | 282 | 300 | 316 | ||||||||
14月 | 162 | 189 | 215 | 240 | 264 | 284 | 302 | |||||||||
15月 | 164 | 191 | 217 | 242 | 266 | 286 |
表に照らし合わせると、慰謝料の金額は「130万円」となります。
ちなみに、自賠責基準で計算すると「51万6000円」ですので、弁護士基準で算出すると自賠責基準の2倍以上の慰謝料を受け取れることになります。
もっとも、通院状況によっては慰謝料の額が調整されることがある点には注意が必要です。通院期間は長期にわたっている場合(おおむね1年以上)で通院実日数が少ない時には、「実通院日数×3.5」で計算される数字を慰謝料の算定期間として採用することがあり、結果的に減額されてしまう可能性もあります。
他覚所見のないむちうち等、比較的軽傷の場合
では、同じ条件で、受傷した怪我が“むちうち”、つまり比較的軽傷であったケースで比較してみます。
【例:むちうちの症状で、入院1ヶ月、通院4ヶ月、実通院日数60日のケース】
入院 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 13月 | 14月 | 15月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
通院 | A’B’ | 35 | 66 | 92 | 116 | 135 | 152 | 165 | 176 | 186 | 195 | 204 | 211 | 218 | 223 | 228 |
1月 | 19 | 52 | 83 | 106 | 128 | 145 | 160 | 171 | 182 | 190 | 199 | 206 | 212 | 219 | 224 | 229 |
2月 | 36 | 69 | 97 | 118 | 138 | 153 | 166 | 177 | 186 | 194 | 201 | 207 | 213 | 220 | 225 | 230 |
3月 | 53 | 83 | 109 | 128 | 146 | 159 | 172 | 181 | 190 | 196 | 202 | 208 | 214 | 221 | 226 | 231 |
4月 | 67 | 95 | 119 | 136 | 152 | 165 | 176 | 185 | 192 | 197 | 203 | 209 | 215 | 222 | 227 | 232 |
5月 | 79 | 105 | 127 | 142 | 158 | 169 | 180 | 187 | 193 | 198 | 204 | 210 | 216 | 223 | 228 | 233 |
6月 | 89 | 113 | 133 | 148 | 162 | 173 | 182 | 188 | 194 | 199 | 205 | 211 | 217 | 224 | 229 | |
7月 | 97 | 119 | 139 | 152 | 166 | 175 | 183 | 189 | 195 | 200 | 206 | 212 | 218 | 225 | ||
8月 | 103 | 125 | 143 | 156 | 168 | 176 | 184 | 190 | 196 | 201 | 207 | 213 | 219 | |||
9月 | 109 | 129 | 147 | 158 | 169 | 177 | 185 | 191 | 197 | 202 | 208 | 214 | ||||
10月 | 113 | 133 | 149 | 159 | 170 | 178 | 186 | 192 | 198 | 203 | 209 | |||||
11月 | 117 | 135 | 150 | 160 | 171 | 179 | 187 | 193 | 199 | 204 | ||||||
12月 | 119 | 136 | 151 | 161 | 172 | 180 | 188 | 194 | 200 | |||||||
13月 | 120 | 137 | 152 | 162 | 173 | 181 | 189 | 195 | ||||||||
14月 | 121 | 138 | 153 | 163 | 174 | 182 | 190 | |||||||||
15月 | 122 | 139 | 154 | 164 | 175 | 183 |
上表で確認すると、「95万円」となることがわかります。
通常の怪我の場合(別表Ⅰ)と比べると金額は低くなりますが、自賠責基準よりは増額されることが見て取れるでしょう。
事故で負わされた怪我を“軽傷”といわれてしまうのは腑に落ちない部分もありますが、損害賠償を請求していくうえでは、「目に見える証拠」が非常に重要です。むちうちや打撲といった症状は、MRIやレントゲンの画像など他覚的な所見で確認できないことが多いため、通常の怪我以外の“軽傷”に区分されます。
また、通院頻度が極端に少ない場合には、「実通院日数×3」を通院期間とされてしまうおそれがありますので、通院の仕方には注意が必要です。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
弁護士基準の後遺障害慰謝料
ここからは、受傷した怪我が治りきらず、後遺障害として残存してしまった場合の精神的苦痛に対する後遺障害慰謝料についてみていきましょう。
症状の内容や部位ごとに後遺障害等級が設けられており、等級ごとに後遺障害慰謝料が定められています。弁護士基準では下表のように等級ごとの慰謝料が受け取れることになります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
---|---|
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
弁護士基準の死亡慰謝料
最後に、最も重大な結果である死亡事故となった場合の精神的苦痛に対する死亡慰謝料についてです。
弁護士基準では、下表のとおり、亡くなった被害者の属性ごとに死亡慰謝料の相場が設けられています。あくまでも“相場”ですので、事情によっては変動することもあり得ます。
なお、自賠責基準の死亡慰謝料の性質とは異なる点に注意が必要です。自賠責基準では、本人分と遺族分に分けて考えますが、弁護士基準では分けずに一括したものとなります。
亡くなった被害者の属性 | 死亡慰謝料 |
---|---|
一家の支柱 | 2800万円 |
母親、配偶者 | 2500万円 |
その他(独身の男女、子供、幼児等) | 2000万~2500万円 |
自力で弁護士基準による交渉をするのは難しい
少しでも多くの慰謝料を受け取るためにも、弁護士基準で交渉を進めたいという思いは、被害者側に共通することかと思います。しかし、保険会社は弁護士に依頼していない事案で弁護士基準による賠償額を提示してくれることはありません。弁護士が被害者の事故でさえ、別の弁護士に依頼をしないと弁護士基準は採用しないと主張されるくらいです。
それだけでなく、交渉相手となる保険会社には多くの事故の処理してきた経験があり、被害者が一人で立ち向かうのは非常に苦労が多いです。
弁護士に依頼することにより、被害者の方にとっては、自分で交渉する負担が軽減するとともに、弁護士基準で賠償額を算定できるという2つのメリットがあるわけです。
弁護士基準の慰謝料請求はお任せください
弁護士基準で慰謝料請求をしたいと思われた際は、ぜひ弁護士にご相談ください。
弁護士法人ALGは、交通事故の案件数を着実に増やしています。さまざまな態様を経験していますので、その圧倒的な経験値を存分に活かすことができます。
なかには、弁護士費用をネックに感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、ほとんどの方は弁護士費用特約により自己負担なくご依頼いただけます。万が一、費用倒れのおそれがある場合には、弊所ではご依頼いただく前にその事実をきちんとお伝えしていますのでご安心ください。
まずは、問い合わせてみるというアクションから起こしてみましょう。万全の体制でお待ちしています。
自賠責基準。
なんとなく、目にしたり耳にしたりして、言葉は知っている方も多いと思います。しかし、その概要を正しく理解していらっしゃいますか?
交通事故の示談交渉では、なかなかの頻度で登場します。任意保険基準、弁護士基準と並んで算定基準のひとつとされる自賠責基準は、その仕組みを知っているのと知らないのとでは、結果的に受け取れる損害賠償金で差が生じてしまう可能性もあるのです。
ぜひこのページで自賠責基準について理解を深めていきましょう。
自賠責基準とは
自賠責基準とは、被害者救済を目的としている自賠責保険における損害賠償金の支払い基準をいいます。
強制加入である自賠責保険は、よく“最低限度の補償を受ける保険“と表現されます。この表現からもわかるように、慰謝料についての3つの基準である、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の中で最も低い補償額に留まることが多いです。
ただし、過失割合が一定程度大きいケースなどでは、他の算定基準を上回り、自賠責基準で算出した金額が最も高額となることもあります。
自賠責基準の入通院慰謝料は120万円までしか支払われない
怪我をした事故被害者の方は、その精神的苦痛の賠償として入通院慰謝料を受け取ることができます。しかし、自賠責基準だと保険の上限額が決まっているため、どんなに大きな怪我を負ったとしても【120万円まで】しか補償を受けられません。
治療費や交通費を含む額であることに注意が必要
自賠責基準の【120万円まで】という限度額は、入通院慰謝料のほか、治療費や交通費、付添費、雑費、診断書作成費、休業損害など、さまざまな費目分が含めた金額となっています。慰謝料分として別枠で設けられているわけではないので、例えば大怪我をして治療費だけで120万を超える場合などには、自賠責保険から入通院慰謝料が受け取れなくなってしまうこともあり得るのです。
120万円を超えたら任意保険に請求を行う
では、治療費などが120万円を超えたらそれ以上の補償は受けられないのでしょうか?
この点、120万円を超える部分は、任意保険会社が補償するのが一般的です。任意保険会社は自賠責の限度額を超える部分を保証してくれる点で被害者にはありがたい存在であり、対人賠償が無制限となっていれば、大怪我をして治療費が高額になっても安心といえます。
もっとも、任意保険会社は自賠責の限度額の範囲で賠償額を抑えれば、事後的に自賠責に任意保険会社が負担した分の償還を求めることによって、任意保険会社の実質的な負担額をゼロに済ますことができるという点には注意が必要です。そのため、任意保険会社側からは賠償金額の合計が120万円を超えそうなケースでは、頃合いを見計らって、被害者に対して治療費の打ち切りなどの連絡をしてくることも多いです。
加害者が任意保険に入っていない場合
加害者が任意保険に加入していなかったとすれば、話が変わってきます。
任意保険がない場合でも、自賠責分の賠償を求めることは可能ですが、損害賠償額が自賠責の上限である120万円を超えてしまうけけースも少なくありません。その場合、自賠責分では足りない部分については加害者に直接請求しなければなりません。
ここで注意したいのが、加害者は任意保険に加入できないくらいお金に余裕がない可能性があり、請求したところで受け取れない場合があることです。
泣き寝入りする事態とならないよう、労災保険の適用や、被害者自身の任意保険の特約、加害者が運転していた車の所有者に請求できないかなどについて確認してみましょう。
入通院慰謝料の計算方法
自賠責基準の入通院慰謝料は、1日ごとに4300円受け取れますので、【4300円×対象日数】で求めることができます。
対象日数は、以下の2通りのうち数の少ないほうを採用することになります。基本的には、通院した期間を基にして算定するということなるわけですが、短い通院期間の中でたくさん通院した場合には①の方法、通院期間が長いにもかかわらず、通院実日数が少ないケースでは②の方法を採用していくというイメージです。
①総治療期間(初診から症状固定までの日数)
②(入院期間+実際通院した日数)×2
7日加算とは
自賠責基準で出てくる「7日加算」とは、“ある条件”を満たすと、実際の治療期間よりも7日長くみなしてもらえることをいいます。
“ある条件”というのが、診断書の治療終了日欄に以下の記載がある場合です。以下のような記載がある場合には、通院最終日から一定期間は治療期間が継続していたとみなすべきという判断となり、実際の最終通院日に7日を加算して慰謝料を算定するわけです。
- 治癒見込…診断書作成時点では治癒していないものの、今後治癒することが見込まれる
- 中止…治癒していないものの、事情により治療を中止する
- 転医…医師や病院自体を変える
- 継続…今後も長期的・計画的な治療を要される
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
自賠責基準の後遺障害慰謝料
事故で負った症状が、治療の甲斐なく残存してしまった場合、自賠責の調査事務所によって後遺障害として認められると、後遺障害慰謝料を請求できるようになります。具体的には、症状の重さによって1~14級の等級に区分されます。
自賠責基準では、下表のように認定された後遺障害等級ごとに慰謝料金額が決まっています。なお、別表第1と第2としてそれぞれに1、2級の枠が設けられていますが、この違いの目安は、「介護を必要とするかどうか」です。要介護の場合は別表1に、それ以外の症状の場合は別表2に分類されることになります。
後遺障害等級 | 自賠責基準での後遺障害慰謝料 ※()内の金額は2020(令和2)年3月31日以前に 発生した交通事故の場合です | |
---|---|---|
別表第1 | 1級 | 1650万円(1600万円) |
2級 | 1203万円(1163万円) | |
別表第2 | 1級 | 1150万円(1100万円) |
2級 | 998万円(958万円) | |
3級 | 861万円(829万円) | |
4級 | 737万円(712万円) | |
5級 | 618万円(599万円) | |
6級 | 512万円(498万円) | |
7級 | 419万円(409万円) | |
8級 | 331万円(324万円) | |
9級 | 249万円(245万円) | |
10級 | 190万円(187万円) | |
11級 | 136万円(135万円) | |
12級 | 94万円(93万円) | |
13級 | 57万円(57万円) | |
14級 | 32万円(32万円) |
自賠責基準の死亡慰謝料
不運にも被害者が死亡してしまった場合、突然命を奪われた本人にとっても、その家族にとっても、計り知れない苦痛が生じます。この苦痛を慰謝するために請求できるのが「死亡慰謝料」となります。
自賠責基準の死亡慰謝料は、被害者本人分と遺族分それぞれに認められているのが特徴といえます。詳細をみていきましょう。
本人の慰謝料
自賠責基準の本人分の死亡慰謝料は、老若男女問わず、一律400万円※と決まっています。
亡くなった方が、著名人であろうが、サラリーマンであろうが、主婦であろうが、この金額は変わりません。
※2020(令和2)年3月31日以前に発生した交通事故の場合は、350万円です
遺族の慰謝料
“遺族”ときくと、幅広い親類が想像されますが、自賠責基準でいう遺族分の死亡慰謝料を請求できる人は、被害者の配偶者、子供、父母に限られます。なお、養子や養父母、認知した子供、胎児なども含みます。
具体的な金額については、下表のように請求できる遺族の人数で変わってきます。家族構成によって変わるほか、亡くなった被害者が扶養していた人数によっても変動し得るのが特徴といえるでしょう。
請求権者 | 近親者固有の死亡慰謝料 |
---|---|
1人 | 550万円 |
2人 | 650万円 |
3人以上 | 750万円 |
被扶養者がいる場合 | 上記+200万円 |
自賠責基準と過失割合
自賠責保険の過失相殺の扱いは特殊なので、無過失でない限り、ぜひ押さえておいてください。
自賠責保険では、過失割合が7割未満の場合は、過失相殺されず過失割合分の減額がなされません。7割以上のケースでも、下表のとおり減額が一部に留まる程度で済みます。
なぜ、このような扱いがなされるかというと、自賠責保険の目的が「被害者保護」にあるからです。
過失割合が大きい場合には、他の算定基準(任意保険基準、弁護士基準)よりも高い金額の賠償を受けられる可能性もあります。
自身の過失割合 | 傷害 | 後遺傷害・死亡 |
---|---|---|
7割未満 | 過失相殺なし | 過失相殺なし |
7割~8割未満 | 2割減額 | 2割減額 |
8割~9割未満 | 2割減額 | 3割減額 |
9割~10割未満 | 2割減額 | 5割減額 |
自賠責基準の慰謝料が提示されていないか不安になったらご相談ください
例外を除き、自賠責基準で算定した損害賠償額は、“最低限度の補償額”に留まっていることがほとんどです。自賠責保険は被害者保護のための重要な制度ですが、被害者の適切な賠償額には足らないことがほとんどです。
適切な賠償額が本来どのくらいであるかを確認するために一度弁護士に相談してみることをおすすめします。
交通事故事案の経験が豊富な弁護士は、適正な算定のもと相手方と交渉することも可能ですし、もっと早い段階でご相談いただければ、適切な通院方法のアドバイスなどからサポートすることもできます。
望まない事故に遭ったことに加えて、損害賠償を受けるうえでも損をしたり、泣き寝入りしたりする事態は避けましょう。弁護士法人ALGは、あなたからのご相談を心よりお待ちしています。
「養育費について取り決めをしたのに、相手からの支払いが滞ってしまった……」
残念ながら、こうした事態は決して珍しいことではなく、統計的にも頻発しているデータがあります。しかし、大切な我が子を育てていくために、このまま泣き寝入りすべきではないのは明らかです。
そこで、今回は、養育費が未払いになってしまったときの対応策について、【調停で取り決めをした場合】と【口約束で取り決めをした場合】といったケース別に紹介していきます。請求していくうえで重要になってくる“時効”に関しても交えつつわかりやすく解説していきますので、ぜひ参考になさってください。
調停で決められた養育費が不払いになった場合
調停で取り決めをした養育費が不払いとなってしまった場合、「調停をした」事実を強みとして催促や督促を行うことができます。
対策として、3つのステップがありますので、順を追ってみていきましょう。
対策1.履行勧告
まずは、裁判所から“履行勧告”をしてもらいましょう。
履行勧告とは、家庭裁判所から「約束を守るように」といった通達や説得をしてもらえる制度です。裁判所から、電話や書類などで連絡が行くことになるので、届いた相手も焦りを感じ支払いに応じるきっかけになる可能性があります。
手続き自体は無料かつとても簡単で、養育費を取り決めた家庭裁判所の窓口で履行勧告の申出をすることでできます。電話で応じてもらえる場合もありますので、一度問い合わせてみるとよいでしょう。
ただし、履行勧告は、家庭裁判所の調停や審判、裁判などを経て、調停調書や審判調書、判決といった債務名義がないと利用できないことに注意が必要です。同じ債務名義でも、離婚協議などで作成した公正証書は、家庭裁判所の手続きを経ていませんので利用できないことにご注意ください。
また、あくまでも通達に限られるものですので、支払いを強制するような強制力までは持ち合わせていないことも理解しておく必要があります。
対策2.履行命令
履行勧告でもなお、支払いに応じてもらえない場合は、次のステップとして“履行命令”が考えられます。
履行命令とは、管轄の家庭裁判所が必要と認めた場合に、「●●までに支払いなさい」といったように期限を決めて支払いを命令してもらえる制度です。これに従わないと、10万円以下の過料が科せられるという点で、勧告よりも強い強制力を持ちます。
履行命令の手続き方法は履行勧告と同様で、特別の費用もかかりません。
なお、金銭罰に処せられる意味で反応する人もいれば、刑事罰でもなければ過料も10万円以下と低額なので、応じない人がいるのも事実です。
対策3.強制執行
履行勧告や履行命令を行っても応じてもらえない場合は、最終的な手段として“強制執行”が考えられます。
強制執行とは、相手の財産を差し押さえるといったイメージをお持ちの方も多いと思いますが、具体的には、給与や預貯金、不動産といった財産を強制的に差し押さえて、約束している養育費の支払いを実現させるといった強い強制力のある手続きをいいます。
なかでも給与の差押えは、最大2分の1に限られますが、一度手続きをしてしまえば将来分も継続して差し押さえることができますので、今後も安心して過ごすことができるでしょう。
勧告や命令と異なる点は、強制執行の申立てには手続きが必要で、別途費用がかかるところです。しかし、相手の財産を差し押さえて、今後の支払いも確保できるといった強制力を考慮するのであれば、検討する余地は十分にあるといえます。
申立てには調停調書や判決といった債務名義が必要で、強制執行の場合は執行を認諾する文言が付いている公正証書も有効となりますので、一度ご確認ください。
民法改正で未払い養育費に対応しやすくなりました
民事執行法が2019年に改正、2020年に施行となりました。
これにより、強制執行が行いやすくなり、養育費の未払いにも対応しやすくなったのです。背景を交えつつ少しだけ詳細を紹介させてください。
改正前は、強制執行をするには、相手の財産を明確にしたうえで申立てをする必要がありました。このため、相手が転職してしまったり、相手の口座番号がわからなかったりすると、財産を明確にできず申立てをすること自体できなかったのです。
この点、改正後は、裁判所に対して「第三者からの情報取得手続」を申し立てれば、裁判所を通じて市区町村や、日本年金機構、厚生年金保険の実施機関、金融機関といった関係各所に調査することが可能になりました。
つまり、相手の財産がわからなくても強制執行の申立てができ、養育費の支払いを実現できる可能性が高まったことを意味しています。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
口約束で決めた養育費が突然支払われなくなった場合
続いて、裁判所の手続きを介しておらず、口約束で養育費の取り決めをして、支払いが滞ってしまっているケースをみていきます。
この場合どう対応すればいいのか、順を追ってみていきましょう。
まず、相手に連絡を取る
まずは、相手に支払いが滞っている旨、連絡をしてみましょう。
プライベートや仕事などが立て込んで、単純に忘れてしまっていることも考えられるためです。
連絡手段は、相手が確認できれば何でも構いません。
電話をはじめ、メールやLINEなど、普段から確認しやすいツールを使うことをおすすめします。
なお、コンタクトとして、手紙は推奨しません。忙しい状況で目を通すことは考えにくいですし、相手が読んでそのままにしてしまう可能性も考えられるからです。
内容証明郵便を出すのも1つの手
コンタクトとして手紙はおすすめしませんが、内容証明郵便ともなると話は変わってきます。支払いが滞っている際や相手と連絡が取れない場合などに、内容証明郵便を送っておくのは、一つの有効的な手段といえます。
内容証明郵便とは、文字どおり郵便局が内容を証明してくれる郵便で、相手にきちんと届いたという送達記録が残るものです。「未払いの養育費を支払ってほしい」といった意思が、きちんと相手に届いたことを郵便局が証明してくれるような文書になります。
後々、有用な証拠となったり、時効を延ばすことになったり、相手にプレッシャーを与えたりと、メリットが大きい手段といえますのでぜひご活用ください。
内容証明郵便の利用方法については、郵便局のホームページで紹介していますので、こちらをご確認ください。
交渉・調停で養育費を請求する
コンタクトがとれたら、養育費について支払ってもらえるよう交渉を試みます。
交渉により相手が応じたり、合意できたりした場合は、今度こそ口約束では済ませず、文書に残すようにしましょう。その際、公証役場で執行認諾文言付きの公正証書を作成しておくと、強制執行時の債務名義となりますので、再度養育費が滞った際の対応策も練られることになります。
交渉がむずかしいようであれば、裁判所に対して「養育費請求調停」を申し立てましょう。
調停では、交渉の場を裁判所に移して、調停委員を間に交えて双方の折り合いを探っていきます。合意できれば債務名義である調停調書が作成されますので、履行勧告や履行命令、強制執行といった手続きができるという、お守りも手に入れられることになります。
養育費の未払い分はどこまで遡って請求できる?
養育費に不払いが発生し、継続してしまっている場合は、時効についても気にしておかなければなりません。
養育費の取り決めをしている場合、裁判所を介しているかいないかで時効が異なります。
- 裁判所を介している場合(調停、審判、裁判)・・・支払期日から10年(※)
- 裁判所を介していない場合(話し合い、公正証書を作成した場合を含む)・・・支払期日から5年
※調停や判決後の将来の養育費は時効が5年となります。
いずれの場合も、未払い分をさかのぼって請求できるのは、時効が成立しない分に限られます。また、この間に子供が成人に達してしまった場合でも、時効が成立していなければ該当期間の未払い分はさかのぼって請求できます。
なお、養育費について取り決めていなかった場合は、基本的にさかのぼって請求することはできないのが実情です。さかのぼれても、“内容証明郵便が送達された日”や“養育費請求調停を申し立てた日”などとされるケースが多いでしょう。
養育費未払いの理由が環境の変化によるものだった場合
時が経つにつれ、お互いの事情や環境が変化していくのは通常のことです。なかには、再婚したり、再婚相手との間に子供が生まれたり、転職や昇級などで給与の増減が生じたりするケースも出てくるでしょう。
だからといって、すぐさま養育費を支払わなくていいといったことにはなりません。
ただし、相手が環境などの変化を理由に「養育費減額調停」を申し立ててきた場合には、状況が変わってくる可能性があります。
調停や審判、裁判などで養育費の減額が認められるとなると、“養育費減額調停を申し立てられた日”や“個別の事情の変化が発生した日”などを境に養育費の金額が減ってしまうことになります。
未払い養育費にお困りなら弁護士にお任せください
子供がのびのび成長していくには、経済的な余裕があることに越したことはありません。
養育費を受け取れないから、無理に仕事を詰め込んで子供との時間を削ってしまったり、子供に我慢をさせてしまったりするのは決して望ましいことではないでしょう。
養育費が滞っていてお困りでしたら、ぜひ弁護士にご相談ください。
なかでも弁護士法人ALGは、離婚問題に特化したチームがあり、養育費の未払い問題についてもさまざまなケースを解決に導いてきました。
ご依頼者さまお一人お一人の状況に寄り添って、ベストな道筋を見つけるサポートを全力で行いますので、お悩みの方はぜひ無料相談からご検討ください。
離婚を決意する原因には様々なものがありますが、高齢化社会が進む昨今では、家族の介護のストレスがきっかけになることも多いです。これを「介護離婚」といいます。
介護離婚をする際には、誰を介護しているかによって、夫婦で話し合うべき問題も変わってきます。
そこで今回は、義両親、実親、配偶者本人、障害のある子供など、介護の対象となる人ごとにケースを分けて、それぞれをめぐる問題について解説します。
介護離婚とは
介護離婚とは、家族の介護のストレスが原因で離婚することをいいます。
特に、義両親の介護をひとりで担うことに耐え切れなくなった妻が介護離婚を切り出す場合が多いです。また、実親や障害のある子供の介護をめぐって配偶者と諍(いさか)いになり、介護離婚を決意するといった場合もあります。
介護は心身ともに大きな負担となるものですが、どうして離婚にまで発展してしまうのでしょうか?
次項より、介護離婚のケース別に、離婚に発展してしまう要因や、離婚するにあたって話し合うべき問題点などを説明していきます。
義両親の介護を理由に離婚するケース
ただでさえ介護は心身への負担が大きいものですが、自分とは血のつながりのない義両親の介護によるストレスは特に大きくなりがちです。
また、介護を受けている高齢世代の方の中には「義両親の介護は嫁がするもの」といった価値観を強く持っている方も多く、義両親の介護の負担が妻ひとりに集中してしまっているご家庭も少なくありません。
しかし、通常、義両親の介護は妻の義務ではありません。介護を受けている義両親や夫、その他の親族などが妻への感謝の気持ちを持たず、当たり前のこととして受け止めていれば、いつか妻が我慢の限界を迎えた時に離婚を決意してしまうことも何ら不思議ではないでしょう。
介護した義両親の遺産は離婚時にもらえるのか
たとえ妻が献身的に介護していても、配偶者が相続した義両親の遺産を財産分与などでもらうことはできません。
介護してきた義両親の遺産を妻がもらうためには、事前に下記のような対応をしておく必要があります。
- 実子の配偶者(ここでいう妻)に遺産を遺す旨の遺言を遺してもらう
- 義両親と養子縁組する
- 生命保険金の受取人となる
- 生前贈与してもらう
また、実子の配偶者には相続権がないため、義両親が亡くなった場合にも、特別な手続きをしていない限り遺産を受け取ることはできません。
ただし、妻が介護することでヘルパー代などが浮き、義両親の財産が減らなかったと認められるような場合には、介護に貢献した分のお金を相続の際にもらえる可能性があります。この時にもらえるお金を「特別寄与料」といいます。
義両親の介護をしなければならないのは誰?
法律上、介護義務があるのは、血のつながった子供や孫、兄弟姉妹です。つまり、実子の配偶者には、義両親の介護をしなければならない義務は基本的にありません。
とはいえ、家父長制が長年続いてきた日本では、「義両親の介護は長男の妻の役目」という価値観が強く根づいていました。現在でも、夫自身がするべき親孝行の役割を強いられている妻も少なくないでしょう。
確かに夫婦には互いに助け合う義務があるので、実子の妻(あるいは夫)は、実子が行う義両親の介護をある程度サポートする義務があると考えられます。
しかし、義両親の介護を主体的に行うべきなのは、実子や孫など、あくまでも血のつながった親族です。
介護の方法や費用の負担などについて親族間でよく話し合ったうえで、親族が中心となって協力し合いながら介護を行うべきでしょう。
実親の介護を理由に離婚するケース
血のつながった親に介護が必要になった場合、これまでの愛情や恩から、できる限りのことをしたいと考える方も多いかと思います。
しかし、配偶者が理解や配慮をしなかったり、無神経な言葉をかけてきたりするなど、「親孝行をしたい」という気持ちを尊重してくれなければ、配偶者に対する愛情が冷めてしまうこともあるでしょう。そして、離婚という選択につながるケースも珍しくありません。
夫(妻)の介護を理由に離婚するケース
事故や病気が原因で、夫婦の一方が介護の必要な状態になってしまうこともあります。
介護は負担の大きいものですから、たとえ元々は仲の良かった夫婦でも、ストレスから些細なことで喧嘩を繰り返すようになったり、うつ病や認知症などが原因で攻撃的になった配偶者の言動に傷つけられて精神的なダメージを受けたりすれば、離婚を視野に入れることもあるでしょう。
配偶者に介護が必要になる前から夫婦仲が悪かった場合はなおさらです。
介護を放棄した場合の財産分与はどうなる?
配偶者の介護を理由に離婚しても、財産分与が受けられなくなるということはありません。
財産分与は、それまで夫婦が協力して作り上げてきた財産を分け合う制度なので、“財産を築くのに協力した”という事実がある限りは、離婚の理由に関係なく行われるべきだからです。
ただし、介護を放棄した理由、放棄するまでの経緯、それまでしてきた介護の内容などを考慮した結果、介護の放棄が不法な行為だと判断された場合は、慰謝料を請求されるか、慰謝料の代わりに財産分与の割合などが修正される可能性があります。
夫(妻)が認知症の場合
認知症の夫(妻)と離婚する場合、夫(妻)に離婚について正常に判断できるだけの判断能力があるかどうかで、必要な手続きが変わってきます。
認知症を患っていても、離婚の意味や効果を理解して判断ができるのであれば、通常どおりの手続きで離婚することが可能です。
一方、夫(妻)の認知症が重度で判断能力がないときは、夫(妻)は「離婚」という重大な決定をすることができないので、そのままでは離婚手続きを進めることはできません。
このようなケースでは、家庭裁判所に後見開始の審判を申し立てて「成年後見人」を選任してもらい、成年後見人を相手に裁判での離婚を目指すことになります。なお、ご自身が既に認知症の夫(妻)の成年後見人になっている場合は、家庭裁判所に成年後見監督人を選任してもらい、この成年後見監督人を相手に手続きを進める必要があります。
離婚裁判で、「夫(妻)の認知症は婚姻を継続し難い重大な事由にあたる」など、法律上の離婚原因があると判断されれば、離婚の成立が認められます。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
障害児の介護を理由に離婚するケース
子供に障害があって介護が必要な場合、周囲の理解や十分なサポートを得られず、夫婦それぞれが大きなストレスを抱えてしまうことがあります。その結果、些細なきっかけで夫婦喧嘩を繰り返すようになったり、子育てや介護の方針で対立したりして、お互いに対する愛情が冷めてしまうこともあるでしょう。
また、夫婦の一方が子供の介護に専念していたところ、夫婦間のコミュニケーション不足に不満を抱いたもう一方が不倫に走ってしまうといったケースもあります。
このように、子供の介護がきっかけで夫婦関係にヒビが入ってしまい、離婚につながる可能性があります。
養育費は増額される?
養育費は、基本的に夫婦それぞれの収入を基準に決められます。そのため、子供に障害があるからといって無条件で相場よりも増額されるわけではありません。
養育費を相場よりも増額してもらうには、子供の介護のために相場以上の養育費が必要であることを、客観的な証拠を用意して主張・立証する必要があります。
具体的には、下記のようなポイントから証明していくことになるでしょう。
- 特別な医療費や生活費、教育費などがかかる
- 専門のヘルパーを雇う必要がある
- 介護の負担が大きく働くことが不可能である
親権はどちらになる?
親権は、親である夫婦の希望に加えて、“夫婦のどちらが親権を持つ方が子供の健全な成長にとって良いか”という「子供の福祉」を考慮して決める必要があります。
つまり、個別の状況によって判断が異なるので、夫婦のどちらが親権者となるかを言い切ることはできません。
介護が必要な子供の親権者は、下記のような事情を考慮して決めるべきでしょう。
〇親側の事情
- 子育てに対する意欲
- 虐待の有無
- 子供の介護のために十分な時間を作れるか
- ヘルパーなど、外部の支援を受けられるだけの経済力があるか
- 外部からの支援体制が充実しているか
(住居近くに支援施設がどれだけあるか、親族から援助を受けられる可能性はあるかなど)
〇子供側の事情
- 年齢
- 性別
- 必要な介護の程度
- 引っ越しなど、環境の変化に適応できるかどうか
介護離婚のときに慰謝料はもらえるのか
介護を受けている人や配偶者、その他の親族などの言動が不法行為と認められる程度のモラハラに該当する場合、慰謝料を請求できる可能性があります。
慰謝料の請求を認めてもらうためには、モラハラを受けていた事実やその実態を証明しなければなりません。そこで、介護離婚の際にモラハラを理由に慰謝料請求することを検討されている方は、次のような点を日記に記録するなどして証拠を残しておくことをおすすめします。
- モラハラにあたる言動が行われた日時
- 具体的な言動の内容
- 言動によって受けた精神的なダメージの詳細
(モラハラによってうつ病などを発症した場合)
- 具体的な症状
- 通院した日時
※その他、医師の診断書なども用意できると良いでしょう。
介護離婚を考えたら弁護士にご相談ください
介護によるストレスで心身ともに追い詰められてしまったとき、おひとりで正常な判断を行うのは難しいものです。
介護によるストレスが原因で離婚したいと考えられている方は、どのような選択肢があるのかを確認するためにも、一度立ち止まって弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか。ご相談いただければ、弁護士が後悔のない選択ができるようにお手伝いさせていただきます。
弁護士に依頼すれば、介護離婚に伴う各種手続きを一括して任せることができますし、余計なストレスを受けることがありません。
お辛い状況から抜け出すうえで必要な手段や具体的な方法を模索するためにも、ぜひ一度弁護士にご状況をお聞かせください。
交通事故による怪我が原因で仕事を休み、収入が減ってしまった場合、減収分に対する賠償金として「休業損害」を受け取ることができます。
しかし、例えば会社員の場合、一口に収入といっても「基本給」や「通勤手当」、「残業代」、「ボーナス」など、様々なものが含まれます。特に「残業代」については、交通事故による減収に含めて考えて良いのか、どのように計算するべきかをめぐって争いになることが多いです。
そこで今回は、「休業損害として残業代も請求できるのか?」など、休業損害をめぐる残業代の問題について解説していきます。
休業損害に残業代は含まれる?
前提として、休業損害を計算するにあたっては残業代も考慮されます。
休業損害は、事故前の被害者が実際に得ていた収入を目安に計算するため、基本給だけではなく、残業代などの付加給も含めたうえで1日あたりの基礎収入を考える必要があるからです。
労災や自賠責保険における休損の計算では、事故に遭う前の直近3ヶ月間の給与(住民税や社会保険料が控除される前の額面上の金額を指すので、残業代なども含まれます)を稼働日で割って算出した1日あたりの基礎収入に、実際に休業した日数をかけて、休業損害の金額を計算します。
つまり、休業損害には、基本的に、交通事故に遭う前3ヶ月間に支払われた残業代の平均額が含まれると考えられるでしょう。
付加給とは
付加給とは、残業代や通勤手当、皆勤手当、住宅手当など、金額や支払いの有無が月によって変動する可能性のある、基本給に加算して支払われる各種手当をいいます。
残業代などの法律で支払わなければならないと定められている手当を除いて、“どのような手当を、いくら付加給として支払うか” は会社が自由に決めることができます。
したがって、会社によっては付加給の内容や名称が異なることがあるので、休業損害を請求する際にはご自身の給与明細をしっかり確認するようにしましょう。
残業代を請求するためには証明が必要
「終業時間後に通院しなければならず、残業ができなかった」「交通事故による怪我の影響で残業に耐えられなくなった」といった場合、事故がなければもらえたはずの残業代を休業損害として請求したいと考える方も多いでしょう。
しかし、残業代は業務量などに応じて月ごとに変動するものなので、事故により残業代が減ったと主張しても、簡単には休業損害として認めてもらえません。
“交通事故に遭わなければ残業代が得られるはずだった“という因果関係を証明する必要があります。
具体的には、下記のポイントを押さえて主張・立証することになるでしょう。
- 普段から残業することが当たり前の職場環境で、事故に遭う前は被害者も残業していたこと
- 事故後の減収の原因が明らかに残業代の減少であること
- 減った残業代の金額が明確なこと
- 事故による怪我の治療のため、実際に残業できなかったこと
休業損害証明書で証明する方法
休業損害の請求にあたっては、「休業損害証明書」を提出する必要があります。
休業損害証明書には、仕事を休んだ期間や日数、休んだ期間に支払われた給与、社会保険・労災保険からの給付金の有無などが記載され、休業損害を支払う妥当性や適正な金額を判断するための資料として使われます。
この休業損害証明書は、相手方の保険会社から送ってもらったフォーマットに、勤務先が必要事項を記載することで作成されます。
そこで、勤務先に休業損害証明書への記載を依頼する際に、「休んだ期間に支払われた給与」の欄や補足事項に、事故が原因で得られなかった残業代の金額・内訳・計算の根拠といった詳細まで記載してもらえるように頼んでおくと良いでしょう。
第三者である勤務先が作成する休業損害証明書は信頼性が高いので、事故により残業代が減った事実や減った金額を証明する有力な証拠となります。
休業損害証明書は自分で記入してもいい?
休業損害証明書は、第三者である勤務先に休業の事実や状況を証明してもらうための書類なので、自分で記入することはできません。
頼みにくい雰囲気がある、記入を断られてしまったというようなケースもあるかもしれませんが、ご自分で休業損害証明書に記載しても証拠として認められません。 休業損害が認められなくなってしまうリスクがあるので、ご自分で記入することは避けてください。
繁忙期は考慮される?
繁忙期と閑散期がある職種では、時期によって残業時間が変わる場合があります。
このような場合、通常どおりに事故に遭う前の直近3ヶ月間の給与に基づいて残業代を含む休業損害を計算すると、本来受け取るはずだった金額より少ない金額しかもらえなくなる可能性があります。
通常は、過去3ヶ月の平均額となりますが、繁忙期と閑散期が極端に異なる場合は、以下の内容を立証することは一つの方法となり得ます。
①前年度や前々年度の状況を参考に、今年度に想定される残業時間を算出する
②①で算出した残業時間に相当する残業代を含めて休業損害を請求する
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
通院のために残業できなかった場合でも休業損害は請求できる?
交通事故による怪我の治療のために通院する必要があり、半休を取得したり早退したりしたケースでも、休業損害として残業代を請求できる可能性があります。
また、就業時間後でないと通院できないため、定時で上がって残業ができなかったようなケースも、状況によっては休業損害を残業代に含めて請求できるでしょう。
これらの請求を認めてもらうためには、交通事故による通院と残業代が減った事実に因果関係があること、つまり、 “交通事故に遭わなければ残業代が得られるはずだった“という事実を証明する必要があります。
具体的には、
- 就業時間内または時間外に通院治療を行う必要性があったこと
- 事故前から残業が日常的に行われていたこと
- 事故により実際に減った残業代の金額
といったポイントを証明することになります。
残業代と休業損害についての裁判例
ここで、残業代が交通事故による減収分として認められ、休業損害を受け取ることができた裁判例を2つご紹介します。
大阪地方裁判所 平成27年2月17日判決
<事案の概要>
Aの運転する普通乗用自動車がセンターラインを越えて対向車線に侵入した結果、対向車線を走行していたBの運転する普通乗用自動車に衝突しました。この事故により、Aは死亡し、Bの運転する車両に同乗していた原告らも負傷しました。
そこで原告らは、Aの相続人らを被告として損害賠償請求を行いました。
<裁判所の判断>
裁判所は、残業代は年度や勤務場所によって変動するほか、前年に得た残業代と同じ金額を得られるとは限らないとしつつも、原告の残業代が減少した時期から考えると、残業代が減少した原因のひとつに事故による怪我の治療があることが明らかだと判断しました。
そして、事故前の残業時間や残業代を考慮すると、事故から症状固定に至るまでの28ヶ月間に、少なくとも1ヶ月につき平均1万5000円の残業代が減少したとして、総額42万円の残業代を休業損害として認めました。
そして、その他の減収(欠勤による損害、有給休暇の取得による損害、遅刻による減給、賞与の減額分)も加えて、合計197万2280円の休業損害を認めました。
東京地方裁判所 平成17年6月21日判決
<事案の概要>
自動二輪車を運転していた原告が信号のある交差点を直進しようとしたところ、右折してきた被告の運転するタクシーに衝突されて怪我を負ったため、損害賠償を請求した事案です。
<裁判所の判断>
原告は、事故の前後6ヶ月間で1日あたり平均905円の残業代をもらっていました。
そこで裁判所は、休業していなければ1日あたり905円の残業代が得られたはずだと考え、これに休業した日数である236日をかけた金額(21万3580円)を休業損害として認めました。
残業代を休業損害として請求するためにも弁護士にご相談ください
交通事故により減った残業代は、休業損害に含めて請求することができます。ただし、そのためには、交通事故が原因で残業代が減ったことや、交通事故により減った残業代の正確な金額などをしっかりと証明しなければなりません。
しかし、こうした証明は簡単ではありません。休業損害における残業代の問題でお困りの方は、弁護士への相談を検討されることをおすすめします。
交通事故問題に強い弁護士なら、有力な証拠を揃えたうえで、休業損害に残業代を含めるべき理由を論理的に主張できます。また、最も高額な賠償金を計算できる「弁護士基準」で休業損害を計算できるようになるので、実際にもらえる休業損害の金額も増える可能性があります。さらに、その他の手続きもすべて任せることができるので、仕事や治療に専念することができます。
まずは専任のスタッフがご状況をお伺いしますので、ぜひお気軽にお電話ください。
交通事故で残ってしまう可能性がある後遺障害のひとつに「運動障害」があります。
今回は、運動障害とは具体的にどのような症状をいうのか、症状の出る部位やその原因、もらえる慰謝料の相場などについて解説していきます。
後遺障害における運動障害とは?
運動障害とは、交通事故による怪我が原因で身体を思うように動かせなくなる後遺障害です。
運動障害が残る可能性のある身体の部位はいくつかありますが、関節を曲げにくくなったなど、特に関節部分に運動障害の症状が現れた場合には「可動域制限」と呼ばれます。
治療が終了した後も症状が続くなど、運動障害が残ったことが疑われる場合は、後遺障害等級認定を申請しましょう。
そのためにも、病院で検査を受けて後遺障害診断書を作成してもらう必要があります。
今回は、関節の可動域制限を除く、他の運動障害についてお話しします。
病院での治療について
医師が症状固定を診断した後も症状が残るようなら、病院で適切なリハビリ治療を受けるとともに、下記の検査を受けましょう。
なお、症状のある部位によって、必要な検査が異なることもあるので医師の指示に従ってください。
- X線やCTによる画像検査
- 可動域検査
運動障害になる可能性がある部位と原因
関節の可動域制限以外の部位で運動障害が残る可能性のある身体の部位は、「脊柱」、「目(眼球)」、「目(まぶた)」の3箇所に分けられます。
交通事故で負った怪我により神経や筋肉が傷ついたり、骨が変形したりすることによって、眼球の運動やまぶたの開閉、脊柱の可動域に不都合が生じ、運動障害が発生します。
脊柱
脊柱の運動障害は、程度に応じて下記の2等級に分類できます。
なお、脊柱の複数の箇所に運動障害が認められる場合、最も程度が重い部分を対象として後遺障害等級を認定します。
後遺障害等級 | 障害の程度 |
---|---|
6級5号 | 脊柱に著しい運動障害を残すもの |
8級2号 | 脊柱に運動障害を残すもの |
こうした運動障害は、主に脊柱の骨折や、骨折後の治療(脊椎固定術など)が原因で発生します。
また、脊柱には多くの神経が通っているため、運動障害が残る場合には神経症状も併発しているケースが多いです。
後遺障害等級6級5号
6級5号に該当する「脊柱の著しい運動障害」とは、下記のいずれかが原因で、頚部および胸腰部の関節が完全に強直※しているか、それに近い状態にあることをいいます。
※強直とは、関節を完全に曲げ伸ばしできなくなるか、主要運動の可動域が平均の10%程度以下に制限されている状態を指します。
①X線写真などで確認できる、頚椎および胸腰椎それぞれの圧迫骨折、破裂骨折、または脱臼
②頚椎および胸腰椎それぞれに行われた脊椎固定術
③項背腰部軟部組織の明らかな器質的変化
後遺障害等級8級2号
8級2号に該当する「脊柱の運動障害」とは、次のどちらかにあてはまるものをいいます。
①下記のいずれかが原因で、頚部および胸腰部の可動域が平均の2分の1以下に制限されている状態
- X線写真などで確認できる、頚椎および胸腰椎それぞれの圧迫骨折、破裂骨折、または脱臼
- 頚椎および胸腰椎それぞれに行われた脊椎固定術
- 項背腰部軟部組織の明らかな器質的変化
②頭蓋から上位頚椎の間の可動域が明らかに異常な状態
目(眼球)
交通事故によって、眼球を正常な位置に保っている6本の筋肉のどれかに麻痺などが起こると、眼球を思うように動かせなくなり、運動障害が発生します。 目(眼球)に起こる運動障害は、一般的に「斜視」と呼ばれます。
目(眼球)の運動障害は、下記の2等級に分類できます。
後遺障害等級 | 障害の程度 |
---|---|
11級1号 | 両目の眼球に著しい運動障害を残すもの |
12級1号 | 1眼の眼球に著しい運動障害を残すもの |
「眼球の著しい運動障害」とは、眼球の注視野が2分の1以下に狭まってしまった状態をいいます。
注視野とは、頭を固定して眼球を動かしたときに直視できる範囲です。注視野の広さの平均は、片目で見たときには各方面について約50度、両目で見たときには各方面について約45度とされています。
目(まぶた)
交通事故によってまぶたを怪我したり、神経の麻痺が起こったりした場合、まぶたの開閉やまばたきに不都合が生じる運動障害が残る可能性があります。
目(まぶた)の運動障害には、下記の2等級があります。
後遺障害等級 | 障害の程度 |
---|---|
11級2号 | 両目のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
12級2号 | 1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
「まぶたの著しい運動障害」とは、
- まぶたを閉じたとき:まぶたで角膜を完全に覆うことができない状態
- まぶたを開いたとき:まぶたが完全に瞳孔を覆ってしまう状態
を指します。
運動障害の後遺障害慰謝料について
運動障害が残った場合、認定された後遺障害等級に応じて後遺障害慰謝料を請求できます。
等級ごとに認められる慰謝料の相場は、下表のとおりです。
後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
6級5号 | 512万円 | 1180万円 |
8級2号 | 331万円 | 830万円 |
11級1号 | 136万円 | 420万円 |
11級2号 | 136万円 | 420万円 |
12級1号 | 94万円 | 290万円 |
12級2号 | 94万円 | 290万円 |
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
後遺障害に関する解決事例
脊柱の運動障害として8級2号が認められた解決事例
本事例は、依頼者が車両運転中に相手方車両に衝突され、以下の怪我を負い、約1年間の入通院治療が必要になった事例です。
- 胸椎破裂骨折
- 多発肋骨骨折など
治療終了後も、背部痛・胸腰椎部の可動域制限といった後遺症が残っていたため、適切な等級認定を受けたいと望まれ、弁護士法人ALGにご依頼くださいました。
受任後、依頼者からこれまでの治療経過の細かい聴き取りを行いました。
そのうえで作成済の後遺障害診断書を精査したところ、等級認定を獲得するためには十分とは言えない後遺障害診断書となっていました。
そこで、まず、依頼者に対して胸腰椎部の可動域を測定する正しい方法などをレクチャーしました。
担当医に相談してきちんと可動域を測定してもらったうえで、その結果を後遺障害診断書に追記してもらうよう助言しました。
その結果、想定どおり、脊柱の運動障害について8級2号の等級認定が得られました。
この結果を受け、弁護士基準に照らして算出した賠償金額を提示のうえ相手方と交渉したところ、約4250万円の賠償金を支払ってもらう内容の示談を成立させることができました。等級認定の通知を受けてから約1ヶ月で解決でき、依頼者にも大変ご満足いただけた事例です。
腰椎圧迫骨折の後遺障害等級認定と過失割合の修正に成功した解決事例
続いて、横断歩道ではない箇所を歩いて道路を横断していた依頼者が、相手方車両に衝突され、腰椎圧迫骨折の怪我を負った事例をご紹介します。依頼者は約6ヶ月間の入通院治療を受けましたが、腰背部に痛みなどの症状が残ってしまいました。
依頼者は、事故後に退職して収入が途絶えていたため、経済的に厳しい状況でした。そこで、弊所が主導で後遺障害等級認定申請を行うことで、取り急ぎ自賠責保険金を回収することにしました。
申請の結果、依頼者には後遺障害等級11級7号が認定され、自賠責保険金として331万円を回収することができました。
その後、相手方から賠償案が提示されましたが、逸失利益や過失割合について依頼者に不利な内容が含まれていました。そこで弊所は、離職票などの客観的な資料を集めたうえで、法的な根拠をもって主張を重ねたところ、当初の提示額から約420万円増額した約758万円を支払ってもらう内容で示談を成立させることに成功しました。
運動障害の後遺障害が残ってしまったらまずは弁護士にご相談ください
運動障害をはじめ後遺障害が残ってしまった場合には、賠償金として慰謝料を請求することができます。しかし、適正な慰謝料を受け取るためには、症状に見合った適切な後遺障害等級の認定を受ける必要があります。
後遺障害等級認定では、後遺症の程度や治療経過などについて医師が記載した、後遺障害診断書の内容が特に重視されます。そこで、医師に正しい後遺障害診断書を作成してもらうためにも、交通事故問題に精通した弁護士にアドバイスを受けることをおすすめします。
その際には、医療分野にも特化した弁護士を選びましょう。後遺障害等級認定には医療に関する知識も欠かせないからです。
弁護士に相談・依頼するメリットは、後遺障害診断書の作成に関するアドバイスをもらえること以外にもたくさんあります。
運動障害の後遺障害が残ったことが疑われる場合には、まずは弁護士にご相談ください。
夫婦の話し合いでは離婚について合意できない場合は、一般的に、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、調停委員を間に挟んで改めて話し合いをすることになります。
離婚調停は主に調停委員が進行させます。その際、調停委員は夫婦にいくつか質問をして、調停の進行に必要な情報を聴き取ります。
では、具体的にどのような質問をされるのでしょうか?
ここでは、離婚調停の申立てを検討されている方や実際に期日を間近に控えている方へ向けて、離婚調停で質問されることが多い事項について解説します。
申立人が離婚調停で聞かれること
まず、離婚調停を申し立てた人が聞かれる事柄を説明します。次項以下をご覧ください。
結婚した経緯
離婚調停を行うことになった理由や過程を把握するため、結婚した経緯については特によく聞かれます。
具体的には、どのようにして夫婦が知り合ったのか、元々の関係性や出会い・結婚に至ったきっかけなど、結婚するまでの一連の経緯を説明することになります。
なお、あくまで離婚へ向けた話し合いに必要な事情を聴き取るための質問なので、それまでの思い出を長く語る必要はありません。
離婚を決意した理由
離婚調停の核心となる、“離婚を決意した理由”も必ず聞かれます。
これは離婚調停の申立書にも記載しておく事項ですが、夫婦間の問題を解決するために、今回の離婚調停をどのように進めていくべきか、調停委員が判断する際にかなり重要視するポイントとなります。そのため、詳しい聴き取りが行われることが多いです。
答えるときは、冷静に、要点を押さえて話すことを心がけ、事情をよく理解してもらえるように努めましょう。
現在の夫婦関係の状況について
夫婦が同居中なのか、既に別居しているのか、生活費は誰がどのように負担しているのかなど、現在夫婦が送っている具体的な生活の状況についても聞かれます。
このときに大切なのは、要点を押さえたうえで、嘘をつくことなく、事実をそのまま伝えることです。恥ずかしいからといって嘘をつくと、その後の離婚調停が見当違いな方向に向かってしまいかねませんし、嘘がばれた時に調停委員に悪い印象を与えることになります。
なお、過去に別居していたものの現在は同居しているといった事情がある場合なども、伝え忘れないように注意しましょう。
子供に関すること
子供に関する様々なことも調停で聞かれます。子供が未成年である場合は、どちらが親権者となるかを決めなければなりませんし、“親権”や“面会交流”、“養育費”などの子供に関する考えを聞かれる可能性も高いでしょう。
特に離婚後の親権について争いがあるときは、現在子供の面倒を、誰が、どのようにみているのか、養育費はどちらがどれだけ負担しているのか、これまで夫婦それぞれがどのように子育てに関わってきたかといった詳しい事情を細かく質問されることになると考えられます。
夫婦関係が修復できる可能性について
離婚調停では、夫婦の関係を修復できる可能性についても質問されることがあります。離婚調停はあくまで夫婦の関係を調整する話し合いであって、必ずしも離婚だけを前提に進めるわけではないので、調停委員は夫婦双方の意向を確認する必要があるからです。
この質問への回答によっては、離婚を望む感情は一時のものだと判断されてしまい、夫婦関係を修復する方向で離婚調停を進められてしまう可能性があるので注意しましょう。
本当に離婚したいと考えているのであれば、“夫婦関係を修復しようとする努力はしたものの、これ以上結婚生活を続けることはできないと思った”ことをはっきりと伝え、離婚に対する強い決意を見せることが大切です。
離婚条件について(養育費、財産分与、慰謝料)
離婚調停では、離婚をするかどうかだけではなく、離婚に伴う様々な条件についても話し合って決めることが可能です。
特にお金に関わる離婚条件は揉めることが多いので、調停委員からも、養育費や財産分与、慰謝料といった離婚に伴う条件に関する考えを尋ねられることが多いです。
なお、相手方に請求することを考えている場合は、具体的にいくら請求したいのか、どのような請求の根拠があるのかをはっきり説明できるようにしておく必要があります。
離婚後の生活について
離婚後の生活設計についてもよく質問されます。
例えば、専業主婦(主夫)の方の場合には、離婚後どこに住むのか、どのような仕事で生計を立てていくのかといった質問をされることが予想できます。
離婚後の生活についてしっかりと考え、準備していることを伝えられれば、真剣に離婚を望んでいることを調停委員に印象づけられるので、その後の調停が有利に進む可能性があります。
相手方が聞かれること
離婚調停を申し立てられた相手は、まずは「離婚に応じる気があるかどうか」が聞かれます。
相手方が離婚に応じる気はないと答えた場合、結婚生活を続けたい理由などを聞かれる可能性が高いでしょう。また、離婚に応じない意思が固く、話し合いを行う余地がなければ、その時点で離婚調停は不成立となります。
一方、相手方に離婚に応じる気があれば、主に離婚の条件を中心に話し合いが進むことになるので、相手方が希望する離婚条件に関する質問が行われます。
1回あたりの所要時間の目安と調停の流れ
一般的に、離婚調停は何回か期日を設けて進められます。期日1回あたりにかかる時間の目安は、2時間程度です。
離婚調停は、調停委員が待機している調停室に夫婦が交互に入り、調停委員の進行に従って相手方に対する主張や反論を行うことを繰り返します。そのため、基本的に当事者が顔を合わせることはありません。
なお、一方の当事者が調停室で調停委員と話す時間は1回につき大体30分程度で、これをそれぞれが2回ずつ行うのが通常です。
また、一方が調停室に入っている時間、もう一方は裁判所内の待合室で待機します。短時間であれば待合室から出ても問題ありませんが、ある程度の時間待合室を離れる場合は、裁判所の担当職員に伝えてからにするべきでしょう。
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離婚調停で落ち着いて答えるための事前準備
余裕をもって到着できるよう、裁判所へのアクセスを確認
落ち着いて離婚調停に臨むためにも、開始時刻ぎりぎりに到着するようなことは避けるべきです。
また、裁判所によっては手荷物検査を実施しているところもあります。時間に余裕をもって到着できるよう、事前に裁判所の最寄り駅やルートなど、アクセス方法をよく確認しておくことが大切です。
聞かれる内容を予想し、話す内容をまとめる
調停委員からの質問や、離婚調停でポイントとなる論点はだいたい予想できるので、事前に回答の中身や話す内容をまとめておくことをおすすめします。
相手の出方を予想し、対処法を考えておく
直接話し合うことはないものの、離婚調停は、相手方配偶者と自分の意見を調整して合意を目指す場です。したがって、離婚調停を円滑に進めるためにも、相手の出方や反論を予想し、自分がどう対応するかをシミュレーションしておくことが重要です。
また、相手の出方などを予想するのと同時に、最終的にどういった条件で折り合いをつけられそうか目安をつけておくことで、離婚調停を乗り切る道筋が見えてくる可能性があります。
調停委員からの質問に答える際の注意点
離婚調停は、調停委員が進行しますので、調停委員に悪い印象を与えると不利な立場になってしまうおそれがあります。
常識的に接していれば不利になることはありませんが、できれば良い印象を与えたいものです。そのためにも、調停委員との質疑応答の際には、次項以下で挙げるようなポイントに注意する必要があります。
落ち着いて端的に話しましょう
離婚調停に発展している以上、相手に対して少なからず不満を感じている場合が多いでしょう。しかし、相手に対するマイナスの感情を爆発させてしまうと、調停委員の心証を損なって不利な立場になりかねません。
感情的になりすぎないように落ち着いて、離婚調停を解決するために必要な事実や要望を簡潔に伝えるように努めましょう。
調停委員との価値観の違いに注意
調停委員といっても違う人生を送ってきた人ですし、ご自身と世代が違う場合も少なくありませんから、価値観が違ったり意見が合わなかったりすることがあって当然です。
しかし、調停委員にこちらの訴えを理解してもらい、味方になってもらうに越したことはありません。価値観や意見の合わない人にも理解してもらいやすい主張の仕方を考えるようにしましょう。
嘘はつかず誠実に答える
離婚という夫婦間の問題の話し合いに関わる以上、調停委員からプライベートに切り込む質問をされることもあります。
しかし、恥ずかしいから、自分に不利な内容だからといって嘘をつくことは避けましょう。後になって嘘をついたことが発覚した時に、調停委員の心証が悪くなってしまうからです。
聞かれていないことを自ら話さない
離婚調停では、聞かれたことだけに答えるようにしましょう。
相手に対する不満や愚痴などを話したくなるお気持ちはわかりますが、聞かれていないことまで話すと、話が脱線してかえって主張が伝わりにくくなったり、調停の進行を妨げてしまい調停委員に悪い印象を与えてしまったりする可能性があるからです。
長文の陳述書は書かない
陳述書は、主張やその根拠が伝わりやすいように簡潔にはっきりと書くことが大切です。したがって、必要以上に長文にするべきではありません。
陳述書があまりに長文だと、何を一番に主張したいのかがわかりにくくなり、調停委員にこちらの意見をきちんと伝えられない可能性があります。また、陳述書は基本的に相手に開示されるので、相手に対する不平や不満を書きすぎるとさらなる感情的な対立を招くことになり、解決までの期間が長引いてしまうリスクもあります。
離婚条件にこだわり過ぎない
離婚条件にこだわりすぎると、うまい落とし所を見つけられず、離婚が成立するまでに時間がかかってしまったり、より時間と費用がかかる離婚裁判に発展してしまったりしかねません。
離婚調停という話し合いによる解決を目指す以上、相手の主張や提案に妥協しすぎる必要はありませんが、ある程度の譲歩は必要です。
そこで、自分がどのような条件に対してどこまで妥協できるのかを掘り下げ、どうしても譲れない条件が何なのか、あらかじめ確認しておきましょう。
調停で話し合ったことはメモしておく
離婚調停は、基本的に1回の期日で成立することはないので、次回期日へ向けた準備が必要になります。そのためにも、その期日に話し合った内容をメモしておくことは大切です。
また、調停委員から、次回期日までに検討しておくべき事項や、用意しておくべき書類・資料などを指示されるので、これらについても忘れないようにメモを取っておくと良いでしょう。
離婚調停2回目以降に聞かれること
2回目以降の離婚調停の期日では、前回の期日で話し合った内容を踏まえて、調停委員がアドバイスや解決案を提示するので、当事者はそれに対する意見を述べていくことになります。
調停委員を介して当事者双方がお互いの意見を伝え合ったら、調停委員はさらに意見の調整を図り、合意が成立する見込みがあれば、また次回期日で話し合いが行われます。
3回目以降の期日も、基本的に同じ流れで進められます。
期日を繰り返していき、調停委員が「これ以上続けても合意が成立する見込みはない」と判断した段階で、離婚調停は不成立となり終了します。
離婚調停のお悩みは弁護士にご相談ください
離婚調停で調停委員から聞かれることは大体決まっています。調停を有利に進めるためにも、事前に自分の主張や要望をまとめておき、しっかり伝えられるように準備しておくことが重要です。
とはいえ、実際にどのように話せば調停委員や相手を納得させられるのか、なかなかわからないのではないでしょうか?誰かにアドバイスしてほしいものの、友人や親戚にはプライベートな事情を話したくないという方もいらっしゃるでしょう。
このように離婚調停に関してお悩みのある方は、弁護士に相談されてはいかがでしょうか。
質問への答え方や自分の意見の伝え方について、具体的なアドバイスをさせていただきます。また、弁護士は調停に同席し、ご依頼者様に代わって主張を伝えることもできます。
弁護士に相談・依頼することでいろいろなメリットを得られますので、ぜひ弁護士への相談をご検討ください。
日本では、夫婦の合意があれば離婚することができます。 しかし、配偶者が離婚に同意してくれず、また配偶者の不貞行為やDVといった法律上の離婚原因もない場合には、粘り強く交渉を続けるか、裁判所に“婚姻関係が破綻していること”を認めてもらって裁判で離婚を成立させる必要があります。
婚姻関係が破綻しているかどうかは様々な要素を考慮して判断されますが、特に「別居期間」が重視されます。
ここでは、どれくらいの別居期間があれば離婚が認められやすくなるのかなど、離婚するにあたって必要とされる別居期間の目安に焦点を当てて解説していきます。
婚姻期間の破綻が認められる別居期間の目安は3~5年
一般的に、別居期間が3~5年程度あると“婚姻関係が破綻している”と判断される傾向にあります。
「婚姻関係の破綻」は、法律上の離婚原因のひとつである「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当します。
そして、こうした法律上の離婚原因があれば、夫婦双方が離婚に合意していなくとも裁判で離婚を成立させることができます。
したがって、別居の理由や同居していた期間などにもよりますが、3~5年ほど別居が続いていれば、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」があることを主張して裁判で離婚を成立させられる可能性があります。
相手が有責配偶者であれば、より短い別居期間で離婚できる可能性も
別居期間が3年未満でも、離婚を拒んでいる相手が有責配偶者である場合には、裁判で離婚が成立する可能性があります。
有責配偶者とは、離婚原因を作った側の配偶者を指します。イメージとしては民法で定められている、不貞行為や悪意の遺棄、またはDVを行い離婚のきっかけを作った配偶者のことです。
相手が有責配偶者の場合、既に法律上の離婚原因があるので、裁判でしっかり主張・立証できれば別居の有無や期間に関係なく裁判で離婚が認められるでしょう。
また、不貞行為の決定的な証拠を掴みきれないなど、裁判で相手が有責配偶者であることを立証するのが難しいケースもあります。
しかし、例えば、配偶者が家庭を顧みずに異性と親密な交際をしていたことが原因で別居したなど、相手に離婚に関する責任があると判断できる事情があれば、別居期間が短くとも「婚姻関係の破綻」を理由に離婚を成立させられる可能性があります。
実態としては別居期間1年未満の離婚が多い
そもそも夫婦の合意があれば、その日のうちに離婚を成立させることができます。つまり、離婚するために必ずしも別居する必要はありませんし、別居期間が短くとも問題ありません。
厚生労働省の「離婚に関する統計(平成21年度)」を見ても、離婚した夫婦の82.5%が別居してから1年未満に離婚しています。
それにもかかわらず別居期間が3~5年ほど続くのは、
- 相手が離婚に同意してくれない
- 相手が話し合いを拒み続けている
- 離婚条件についてなかなか合意できない
など、そもそも話し合いができなかったり、話し合いがこじれてしまったりして決着がつかないケースです。
離婚に関する話し合いがスムーズに進むようなら、無理して別居期間を引き延ばす必要はありません。
離婚までの別居期間が長期に及ぶケース
ただの夫婦喧嘩の場合(性格の不一致)
性格の不一致からくる夫婦喧嘩の場合には、3~5年程度の別居期間が目安となります。
繰り返されるケースや、一度きりのとんでもない大きいケースなど、夫婦喧嘩の程度の差こそありますが、「婚姻関係の破綻」を認めてもらうには、相応期間の別居が必要です。
性格の不一致からくる夫婦喧嘩は、どちらかに原因があるといった有責性がないためです。
ただし、婚姻関係が破綻しているかどうかは、単純な別居期間だけではなくそれぞれの夫婦の状況も考慮します。場合によっては、必要とされる別居期間が異なることもあります。
自身が有責配偶者の場合
有責配偶者から離婚を切り出す場合には、婚姻関係の破綻が認められるために大体目安として10年程度別居期間が必要とされています。
なぜ通常よりも長い別居期間が求められるのかというと、別居や離婚の原因を作り出した有責配偶者からの離婚請求が安易に認められるとなると、もう一方の配偶者にとってあまりに酷だからです。
しかし、別居期間が相当長期間に及んでいて夫婦間の交流もまったくなく、明らかに婚姻関係が破綻していると判断できる場合は、例外的に有責配偶者からの離婚請求が認められる可能性があります。
そもそも相手が離婚に同意していない
相手が離婚に同意してくれず、夫婦の話し合いも進まない場合は、「離婚調停」や「離婚裁判」といった裁判所の手続きで離婚を目指すことになります。
なお、離婚調停や離婚裁判を申し立てる際に、必ず別居しなければならないわけではありません。しかし、別居しているという客観的な事実がある方が、離婚に対する強い意思を持っていることが調停委員や裁判官に伝わりやすいでしょう。
また、どのような手続きを利用するのか、話し合いはどこまで進んでいるのか、具体的にどのような点に合意できないのかといった個別の状況によって、手続きの終了までにかかる期間は異なります。一般的に、
- 離婚調停が終わるまで:4~6ヶ月程度
- 離婚裁判が終わるまで:1年以上
がかかると想定しておいた方が良いでしょう。
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別居は相手の同意を得てから
別居するときは、基本的に相手の同意を得てからにしましょう。
夫婦には同居する義務があるので、勝手に家を出ていくと同居義務に違反してしまう恐れがあるため、できれば別居するまでに話し合いをして同意を得るのがよいでしょう。
相手からDVやモラハラを受けている、子供が虐待されているなど、自分や子供の心身が危険にさらされているようなケースでなければ、
- 別居する理由(離婚の前段階なのか、お互いに冷却期間を置いてやり直すためなのかなど)
- 生活費の負担方法や割合
- どちらが子供の世話をするのか
などについて話し合い、お互いに合意したうえで別居を始めましょう。
相手が聞く耳をもってくれないような場合は、メールや手紙など、後に残る方法で気持ちを伝えるようにしましょう。
別居期間が長い場合、親権はどうなる?
夫婦が別居している場合、子供と同居して実際に面倒をみている親の方が親権を獲得しやすい傾向にあります。裁判所で親権について争う場合、裁判所は、「これまで夫婦のどちらがより子供の面倒をみてきたか」という監護実績を重視して判断を行うことが多いからです。
また、実際に子供が置かれている状況や子供の年齢、性別、離婚後に想定される監護体制などにもよりますが、一般的に裁判所は「子供の生活環境はできるだけそのまま維持するべき」と考えます。この点でも、子供と同居している親の方が親権を獲得しやすいといえます。
しかし、勝手に子供を連れて別居してしまうと、“違法な子の連れ去り”と評価されて逆に親権争いで不利になってしまう可能性があります。
子供を虐待から守るためなど、合理的な理由がない限りは、どちらが子供と暮らすかはきちんと夫婦で話し合ったうえで決めるべきでしょう。
単身赴任は別居期間に含まれる?
単身赴任期間は、基本的に別居期間に含まれません。
仕事の都合上にすぎず、婚姻関係が悪化したことを原因とする、あるいは離婚を前提とする別居ではないからです。
ただし、下記のようなケースでは単身赴任期間中も別居期間に含まれる可能性があります。
- 妻が夫との同居を拒否し、夫の転勤先へ転居しなかったため単身赴任になったケース
- 離婚調停など、離婚について話し合っている最中に単身赴任が始まったケース
- 単身赴任期間中に離婚についての話し合いを始めたケース
離婚に必要な別居期間を知りたい方は弁護士にご相談ください
相手が離婚に同意してくれず、法律上の離婚原因もない場合、長期間の別居を理由に離婚するためには一般的に3~5年程度の別居期間が必要です。
しかし、むやみに別居を始めると離婚において不利な立場になってしまう場合がありますので、専門家である弁護士に事前に相談して入念に準備をしてから別居することをおすすめします。
離婚問題に強い弁護士にご相談・ご依頼いただければ、配偶者の方への説明の仕方や話し合うべき事項、話し合いの進め方などに対するアドバイスをもらえるだけでなく、離婚に関連する各種手続きの全般的なサポートも受けることができます。
ご相談者様にとって最良の結果となるよう、全力でサポートさせていただきますので、ぜひ弁護士への相談をご検討ください。
一般的に知られている離婚の形式は、協議離婚・調停離婚・審判離婚・裁判離婚の4種類でしょう。
このうち協議離婚と調停離婚は、話し合いによって離婚問題の解決を目指すものですが、審判離婚と裁判離婚は、問題に対する最終的な判断を裁判所に委ねるものです。
では、裁判で離婚をするには、具体的にどのような流れで進むのでしょうか。
今回は、離婚裁判の流れや必要な費用・時間、メリット・デメリットといった概要について、詳しく解説します。
離婚裁判とは
離婚裁判とは、離婚の可否やその条件に関する争いの解決を求めて行う裁判のことです。
離婚するかしないかという問題はもちろん、財産分与や年金分割、親権、養育費、面会交流といった離婚条件をどう取り決めるかといった問題についても、裁判所に判断してもらうことができます。
しかし、離婚裁判については「調停前置主義」という考え方がとられているので、裁判所に離婚裁判を申し立てる前に、まずは離婚調停を行わなければなりません。つまり、離婚調停を行っても問題を解決できず、不成立になって初めて家庭裁判所に訴えを起こせるようになるということです。
離婚裁判以外の離婚方法
離婚裁判の結果、成立する離婚が「裁判離婚」です。
裁判離婚以外にも、日本では下記の形式の離婚が認められています。
- 協議離婚・・・
当事者である夫婦で話し合った末、離婚することに合意した場合に成立する離婚です。
日本で行われる離婚のうちのほとんどを占めています。 - 調停離婚・・・
家庭裁判所の調停委員を介して夫婦で話し合い、離婚することに合意した場合に成立する離婚です。
協議離婚の成立が難しいときに、夫婦の片方が家庭裁判所に離婚調停を申し立て、成立を目指します。 - 審判離婚・・・
家庭裁判所の離婚審判の結果、裁判所の判断によって成立する離婚です。
離婚審判は、離婚すること自体には合意しているものの、細かい離婚条件に折り合いがつかず調停が不成立になったような場合に限って行われるので、実際に成立する件数は多くありません。
離婚裁判で争われること
離婚裁判では、主に下記に挙げるような問題について争われることが多いです。
離婚が認められるか否か
離婚裁判の主軸となる問題です。離婚が認められると、付帯請求をしていれば親権、養育費、財産分与などについても判断されます。
親権
離婚するにあたって、夫婦のどちらが子供の親権者になるのかを必ず決めなければなりません。夫婦両方が親権を希望する場合に、特に揉めやすい問題のひとつです。
慰謝料
夫婦の一方が不貞行為(不倫)やDVなどをして、もう一方に精神的な苦痛を与えた場合、賠償金として慰謝料を請求される可能性があります。支払義務の有無や金額を巡って争いになることが多いです。
財産分与
離婚の際、結婚している間に夫婦が協力して作り上げた財産を分け合う必要があります。共有財産の範囲や具体的な分与の割合・分け方について争いとなります。
年金分割
結婚している間に納付した年金の記録を一方に分け与えることを「年金分割」といいます。分割の可否や割合を巡って揉め事になることがあります。
養育費や面会交流
子供と別居している親には、子供が自立するまでにかかる費用(養育費)を支払う義務があります。また、子供の健全な成長のためにも、別居している親と子供が交流(面会交流)できるようにすることは重要です。
そのため、養育費や面会交流に関するルールを巡って争いになることが多いです。
裁判で離婚が認められる条件
離婚裁判では、民法770条で定める条件を満たしていることを証明できなければ、裁判所に離婚を認めてもらえません、この条件を「法定離婚事由」といいます。
法定離婚事由には、以下のようなものがあります。
①配偶者が不貞行為をした
②配偶者から悪意の遺棄をされた
③配偶者が3年以上生死不明である
④配偶者が強い精神病にかかり、回復の見込みがない
⑤その他、婚姻を継続し難い重大な事由がある
ただし、法定離婚事由があれば必ず離婚が認められるわけではありません。裁判所が“結婚を続けることが相当”だと判断する場合、離婚を認めないこともあります。
離婚裁判の流れ
離婚裁判は、下記のような流れで行われます。
①管轄の家庭裁判所に訴状を提出する
②家庭裁判所が第1回口頭弁論の期日を指定し、夫婦それぞれへ呼出状を送付する
③被告が反論を記載した答弁書を提出する
④第1回口頭弁論期日に、夫婦がそれぞれ主張や立証を行う
⑤第2回、第3回…と口頭弁論期日を繰り返す
⑥離婚を認めるかどうか、裁判所が判決を下す
離婚裁判にかかる費用について
離婚裁判にかかる費用は、おおまかに「離婚裁判自体にかかる費用」と「弁護士への依頼にかかる費用」の2種類に分けられます。
離婚裁判自体にかかる費用
- 収入印紙代:1万3000円(離婚の成否だけの場合)
※他の請求も併せて行う場合、請求1件につき1200円の追加費用が発生します - 郵便切手代:6000~7000円前後(管轄の家庭裁判所によって異なります)
弁護士への依頼にかかる費用
- 相談料:~1万円程度
- 着手金:20万~50万円程度
- 成功報酬30万~ (事案に応じて)
- その他(裁判所への交通費、日当など):実費
費用はどちらが負担するのか
離婚裁判自体にかかる費用は、裁判を起こす段階では原告(裁判を起こす人)が負担します。
しかし、裁判所は判決の内容に応じて費用の負担割合を決めるので、最終的にどちらがどれだけ費用を負担することになるのかは判決が下るまでわかりません。
なお、原告の主張が全面的に認められた場合は、被告(裁判を起こされた人)が全額を負担することになります。
これに対して、弁護士への依頼にかかる費用は、基本的に依頼した人が全額を負担することになります。
離婚裁判に要する期間
離婚裁判は、一般的に1~2年程度で終了するケースが多いです。
ただし、争っている内容や状況によっては半年ほどで終了したり、逆に2年以上かかったりすることもあるので、一概にいうことはできません。
最短で終わらせるためにできること
離婚裁判が長引いても、結論が先延ばしになるだけで良いことはありません。短期間で終わらせられるように、次のポイントを押さえて裁判に臨むと良いでしょう。
和解することを視野に入れる
裁判官は、離婚裁判で聴き取った夫婦の主張や反論を踏まえて、和解案を提示してくることがあります。和解案に納得できるなら、受け入れることで裁判の長期化を防ぐことができます。
必要最小限の争点に絞る
離婚協議、離婚調停で合意できた点を事前に確認しておき、離婚裁判で争うポイントを最小限にしておくことで、裁判にかかる時間を短くすることができます。
また、必要な証拠や資料を事前に集めておくことも大切です。
離婚問題に強い弁護士に依頼する
離婚分野に精通している弁護士なら、裁判を有利に進めるためのアドバイスをしたり、依頼者に代わって裁判で主張・立証したりすることも可能です。
効率的かつ有利に裁判を進めるためにも、離婚問題に強い弁護士への依頼を検討すると良いでしょう。
長引くケース
次のようなケースでは、離婚裁判が長引く傾向にあります。
請求するものが多い(争点が多い)
離婚するかしないかだけを争うケースと比べて、財産分与や慰謝料といった離婚条件もまとめて争うケースは主張・立証すべきことが多いため、裁判に必要な時間もその分増えます。
事情が複雑である
例えば、妻が夫のDVを原因として離婚と慰謝料を請求している一方、夫は妻の不倫による慰謝料を請求しているものの、離婚に応じる意思はないような場合、裁判官が判断しなければならない事柄はかなり多くなってしまいます。
当事者が主張・立証する事柄も多くなるため、離婚裁判も長期化します。
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離婚裁判で認められる別居期間
一般的に、別居が3~5年程度続いていると、離婚が認められやすくなる傾向にあります。何も事情がないのに別居が相当期間続くことは常識的に考えにくく、婚姻関係が破綻していると判断されるためです。
また、単に「別居期間が長い」というのではなく、「同居期間と比較して長いといえるかどうか」も判断において重要です。
なお、離婚の原因が相手方にある場合は、別居期間が多少短くとも、婚姻関係が破綻したとして離婚が認められることもあります。
なお、外からは夫婦関係がうまくいっているように見える「家庭内別居」と、仕事の都合でやむを得ずする「単身赴任」は、「別居」とみなされない可能性が高いのでご注意ください。
離婚裁判の欠席について
当事者の一方が離婚裁判に欠席しても、手続きは進められます。そのため、欠席すると自分に不利な形で裁判が進んでしまう可能性があるので、なるべく日程を調整して出席できるように心がけましょう。
なお、被告(裁判による請求を受けた人)の場合、第1回口頭弁論期日に限って、「答弁書」を提出しておけば被告本人が出席のうえ意見を述べたとみなしてもらえます。これを「擬制陳述」といいます。
しかし、二回目以降は、「欠席した=争う意思がない」とみなされてしまう可能性があります。
原告(裁判を起こした人)も被告も、一度や二度の欠席で不利になることはありません。とはいえ、正当な理由のない欠席を繰り返すと、裁判官に悪い印象を与えて判決に影響が及ぶこともあるので気をつけましょう。
離婚裁判で負けた場合
離婚裁判で負けてしまったとしても、判決に不満がある場合は、判決後2週間以内に「控訴」することができます。
控訴とは、裁判の判決に不服を申し立て、より上級の裁判所の判断を求める手続きです。日本では三審制が取り入れられているので、控訴で負けた場合には最高裁判所に不服を申し立てることになります。
また、離婚の場合は、裁判に負けたからといって、二度と離婚裁判を提起できないというわけではありません。別居期間が継続して伸びてることを捉え、再度、離婚裁判を提起することは可能です。
裁判に勝つ可能性を高めるためにも、離婚問題に強い弁護士に相談し、主張・立証の方法を改善することをおすすめします。
離婚裁判のメリット、デメリット
メリット
離婚裁判は、裁判所が離婚を認めることで成立するので、「相手の同意がなくとも離婚することが可能」です。
また、裁判所の下す判決には法的な強制力があるので、「判決書を根拠に強制執行することが可能」になるというメリットもあります。
デメリット
離婚裁判で得られるメリットは大きい一方、デメリットもそれなりにあります。
まず、後で相手方に支払ってもらえる可能性はあるものの、離婚裁判には時間、費用、労力がかかるのはデメリットでしょう。
また、「不利な判決が下された場合に受けるダメージが大きい」こと、「有力な証拠がないと勝つのが難しい」ことといったデメリットもあります。
ただ、離婚することを後回しにしてズルズルいってしまうと、ご自身だけではなくお子様や親族などにとっても精神的ストレスになることが多々あるので、一歩でも前に進むためにも、弁護士に相談することをお勧めします。
離婚裁判についてQ&A
裁判の申立てを拒否することは可能なのでしょうか?
離婚裁判の申立てを拒否することはできません。面倒だから、離婚を拒否したいからといって裁判所の呼び出しを無視して裁判を欠席し続けていると、原告(裁判を起こした人)の主張どおりの判決が下ってしまう可能性があります。
したがって、離婚裁判を申し立てられてしまったら、自分の言い分を主張するためにも、裁判に出席する必要があります。そして、法定離婚事由など、原告が請求の根拠としている事実がないことを立証して、原告の主張を退ける判決を獲得しなければなりません。
他人が離婚裁判を傍聴することはできますか?
裁判が公正に行われるようにするため、離婚裁判を含めて、裁判は公開されるのが基本です。したがって、誰でも傍聴することができます。
しかし、ほとんどの離婚裁判では、初回の口頭弁論期日や尋問期日以外の手続きは「弁論準備手続」という非公開の場で行っています。
こうした非公開の手続きは、裁判所の許可がない限り第三者は傍聴できないので、実際に他人が離婚裁判を傍聴するのは難しいといえるでしょう。
配偶者が行方不明でも離婚裁判を行うことはできますか?
できます。
配偶者が行方不明の場合、「配偶者が3年以上生死不明」、「配偶者から悪意で遺棄された」、または「結婚生活を継続することが難しい重大な事由がある」といった法定離婚事由があると認められる可能性があります。また、行方不明になり連絡が取れないことをもって「婚姻を継続し難い重大な事由」と認められることもあるでしょう。その場合には、行方不明の配偶者を被告として離婚裁判を起こすことができます。
被告が行方不明の場合は、住所がわからないので、呼出状などの必要書類は「公示送達」することになります。具体的には、原告が離婚を希望する旨などを、裁判所の掲示板に掲示したり、官報に掲載したりします。
その後は被告が不在のまま裁判を行い、法定離婚事由があると認められれば、離婚を認める判決が下されます。
離婚裁判で敗訴した場合、すぐに調停を申し立てられますか?
離婚裁判で敗訴した直後に、離婚調停の申し立てをすることは可能です。
ただし、相手方が離婚裁判に勝訴しているため、話し合いをしたり、相手方の譲歩を引き出すことは難しいでしょう。
ただ、相手方も離婚の紛争に疲れている場合もあり、こちらが様々な譲歩をすることを前提に離婚調停で協議を行い、調停が成立することもあります。
離婚後すぐに再婚することはできますか?
すぐに再婚できるかどうかは、性別によって異なります。
まず、男性は離婚した翌日にでも再婚することが可能です。
一方、女性には「再婚禁止期間」が設けられているため、離婚した日から100日経過しなければ基本的に再婚できません。
なぜ女性にだけこのような決まりがあるのかというと、民法上、
- 離婚後300日以内に生まれた子供は前の夫との子供
- 再婚後200日より後に生まれた子供は再婚相手との子供
と推定されるからです。
万が一離婚後100日経過しないうちに再婚して子供が生まれた場合、子供の父親がどちらとの子供なのかを判別できなくなってしまう可能性があります。このような不都合を回避するため、女性は離婚後すぐに再婚することはできないとされています。
相手が離婚を拒否し続けたら裁判でも離婚することはできませんか?
どんな場合であっても、裁判所が「離婚を認める」と判断すれば、裁判離婚が成立します。
そもそも離婚裁判は、夫婦の話し合いでは問題を解決できないため、裁判所に解決を委ねる手続きです。相手が離婚を強く拒んでいたとしても、離婚が相当だと判断すれば、裁判所は離婚を認める判決を下します。
また、裁判所の判決には法的な強制力があるので、判決後に離婚を拒否することは当然できません。
役所での離婚手続きも、判決書があれば相手方の同意を必要とせず一方当事者のみで可能です。
離婚裁判を考えている場合は弁護士にご相談ください
離婚裁判のメリットは大きいですが、その分デメリットも多いという難点があります。しかし、弁護士に相談・依頼することで、離婚裁判のデメリットを少なくすることができます。
例えば、弁護士に訴状や証拠の準備を任せれば時間や労力を削減できるので、普段のお仕事や育児に専念していただけます。また、離婚裁判では、法的な主張と主張を裏づける証拠の提出が必要ですが、弁護士には法律の専門知識があります。また、交渉のプロでもあるので、裁判官にこちらの主張の正当性を印象づけて、有利な判決の獲得につなげることも期待できます。
離婚裁判を起こすことを検討されている方は、ぜひお気軽に弁護士にご相談ください。
「すぐにでも交通事故の損害賠償金を支払ってもらいたいのに、示談交渉がうまく進まず支払いの目途が立たない……」など、示談交渉に関するお悩みを抱えていらっしゃる方は少なくないでしょう。
では、なぜ交通事故の示談交渉はスムーズに進まなくなってしまうことがあるのでしょうか?また、示談交渉がスムーズに進まない場合、どのように対処すれば良いのでしょうか?
今回は、交通事故の示談交渉がうまく進まない原因とその対処法について解説します。
示談交渉が進まない原因
示談交渉が進まない原因は、主に次の2種類に分けられます。
「加害者本人に原因がある場合」と「保険会社に原因がある場合」です。
原因が違えば適切な対処法も変わってくるので、ご自身のケースはどちらなのかをしっかりと見極める必要があります。
そのためにも、次項以下では、示談交渉が進まない原因別の具体的なケースについて説明していきます。
加害者に資力がない場合
加害者が保険に加入していない場合、被害者は加害者と直接示談交渉をしなければなりませんし、損害賠償金も加害者本人から受け取ることになります。
しかし、お金のないところから取り立てることはできないので、加害者に損害賠償できるだけの資力がなければ、支払いを巡って争いになり、示談交渉がうまく進まなくなる可能性が高いでしょう。
ただし、このように加害者からの損害賠償が期待できない場合には、「政府保障事業」による補償を受けられることがあります。
「政府保障事業」とは、交通事故の被害者が保険会社や加害者からの補償を受けられないときに、最終手段として政府が損害をてん補してくれる制度です。なお、てん補してもらえる金額や限度額は、自賠責保険による補償と同等です。
加害者としての意識が低く賠償保険を利用してくれない場合
特に軽微な事故のケースで多いのですが、「交通事故を引き起こした加害者である」という認識が薄い加害者もいます。
このようなケースでは、そもそも加害者に示談する気がない、または自分が加害者として扱われることに抵抗を感じていることが多く、こちらから示談交渉の連絡をしても無視されたりして、交渉がスムーズに進まない場合があります。
また、対人保険や対物保険を利用すると保険の等級が下がり、保険料が高くなることを嫌って、保険を利用しない加害者もいます。このような場合には、話し合いが難航することが予想されます。
加害者との示談が進まない場合にできること
では、加害者との示談交渉がうまく進まない場合、どういった対処をすれば良いのでしょうか?
以下、加害者との示談交渉が進まない場合に行うことができる対処法について説明していきます。
連絡を無視される場合は内容証明郵便を送る
こちらからの連絡を何度も無視される場合は、「内容証明郵便」というサービスを利用して、損害賠償を請求する書面を送りましょう。
「内容証明郵便」とは、“誰が”、“誰に”、“いつ”、“どのような内容”の書面を送ったのかを郵便局 が証明してくれる、郵便の送付方法のことです。
内容証明郵便を利用すれば、損害賠償請求をした証拠が残るので、時効の成立によって損害賠償を請求する権利が消滅してしまうといった事態を防ぐことができます。また、加害者に心理的なプレッシャーを与えられるので、示談交渉の場につかせることができる可能性もあります。
ADRを利用する
「ADR(裁判外紛争解決手続)」を利用して解決を目指すのもひとつの手です。
「ADR」とは、裁判所の手続きを利用せずに、話し合いによって紛争の解決を図る方法をいいます。ADRの種類には、あっ旋・調停、仲裁がありますが、どれも裁判所の手続きと比べて簡単に利用でき、短期間で決着するというメリットがあります。
交通事故の場合は、「交通事故紛争処理センター」や「日弁連交通事故相談センター」などの交通事故問題に強いADR機関の利用を検討することをおすすめします。
裁判(訴訟)を起こす
内容証明郵便を送付し、ADRを利用しても問題が解決しない場合は、最終手段として裁判(訴訟)を起こすことを検討しても良いでしょう。
裁判は、裁判官の判断(判決)に問題の解決を委ねる、裁判所の手続きです。したがって、当事者の話し合いが円滑に進んでいなくとも、裁判官が判断を下すことによって結論が出て決着します。
ただし、裁判官がこちらに有利な判断をしてくれるとは限らないので、他の手続きと比べてリスクが高く、費用もかさむといったデメリットがあります。
しかし、請求する損害賠償金が60万円以下の場合には、より簡単かつ迅速に決着する「少額訴訟」という手続きを選択できるので、デメリットは少なくなります。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
相手方保険会社と連絡が取れない・担当者の態度が悪い場合
相手方保険会社とスムーズに連絡が取れなかったり、担当者の態度が悪かったりするなど、相手方保険会社に原因があって示談交渉が思うように進まないこともあります。
例えば、
- こちらから連絡を入れても担当者から折り返しがない
- 仕事をしている平日の日中しか担当者と連絡がとれない
- 治療中なのに無理やり治療費を打ち切ろうとしてくる
- 事故状況などについて、こちらの言い分をまったく聞いてくれない
といった場合には、相手方保険会社に対する不信感が募るなどして、円滑な話し合いが難しくなってしまうでしょう。
過失割合や示談金額で揉めて進まない場合
最終的な示談金額(損害賠償金額)はもちろん、示談金額に大きく影響する過失割合について揉めていて交渉が進まないというケースも多いです。
例えば、過失割合は事故の態様によっておおまかな目安が決まっていますが、個別の事故状況に応じて細かく修正され、最終的な割合が決定します。しかし、事故の状況に関する被害者・加害者の意見が食い違って話が平行線になってしまえば、いつまでたっても過失割合が決まらず、示談交渉も止まってしまいます。
弁護士への依頼で態度が変わる場合も
交通事故の被害者の方は、交通事故や法律に詳しくない方がほとんどなので、加害者や加害者側の保険会社が強気な対応をしてくることも少なくありません。
しかし、法律の専門家である弁護士には小手先のごまかしは効かないので、弁護士に依頼することで加害者側の態度が改まる可能性があります。
例えば、保険会社にとって厄介なことに、弁護士は裁判を行うことも視野に入れて手続きを進めるため、弁護士に依頼することで、裁判を嫌う保険会社が早期かつ適切な内容で示談に応じる可能性が高まります。
示談が進まずお困りの方は弁護士にご相談ください
今回ご説明したとおり、示談が思うように進まない原因には様々なものがあります。しかし、弁護士は、交通事故問題を解決するうえで欠かせない法律に関する知識を備えています。そのため、いずれの原因で示談交渉が進まない場合でも、弁護士に相談・依頼することで解決への道筋が見えてくる可能性が高いといえます。
その際には、特に交通事故問題を取り扱った実績が豊富な弁護士を選ぶことをおすすめします。弁護士にはそれぞれ得意分野があるので、離婚分野や相続分野に詳しい弁護士より、交通事故分野に精通している弁護士に相談・依頼する方が、よりしっかりとしたサポートを受けられるからです。
示談交渉が進まずお困りの方は、ぜひ交通事故問題に詳しい弁護士に相談・依頼されることをご検討ください。
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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)