離婚慰謝料を請求できる条件や方法について

離婚慰謝料を請求できる条件や方法について

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

夫婦関係が悪化し、離婚を決意したとき、「これだけ辛い目にあったのだから、慰謝料を沢山とらなければ気が済まない」と思われる方は多くいらっしゃると思います。
しかし、辛い思いをしたからといって、必ず慰謝料を請求できるわけではないのです。
離婚慰謝料を請求できるのは、相手に「有責行為」があった場合に限られます。
この記事では、相手に慰謝料を請求できる条件や請求方法などについて解説しますので、離婚慰謝料の請求を検討されている方は、ぜひ参考になさってください。

離婚慰謝料を請求できる条件

離婚慰謝料とは、配偶者の有責行為が原因となって離婚した場合に受けた、精神的苦痛に対する賠償金のことをいい、有責行為を行った配偶者(有責配偶者)から、もう一方の配偶者(無責配偶者)に支払われます。離婚慰謝料が発生する、配偶者の有責行為とは、不貞、DV、モラハラ、悪意の遺棄(正当な理由のない別居や生活費の無支給等)などが挙げられます。
離婚慰謝料は、もう少し詳しくみますと、「離婚すること自体による苦痛への慰謝料」と「婚姻関係を破綻させた原因による苦痛への慰謝料」に分けられますが、裁判など実務上では、個別に慰謝料を計算せず、2つまとめて「慰謝料〇〇円」という形で、計算されています。
ただし、夫婦双方に離婚の原因があったり、性格の不一致や価値観の違いがあるに過ぎない場合など、どちらの責任ともいえない場合は、慰謝料を請求することができないのが通常です。

性格の不一致でも慰謝料請求は可能?

単なる性格の不一致で離婚する場合、一方のみに婚姻生活を破綻させた責任があるとはいえず、相手に対して慰謝料請求はできません。
ただ、性格の不一致が原因で夫婦関係が悪化し、相手が不倫に走った等の理由があれば、慰謝料請求が認められる場合があります。

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離婚慰謝料を請求する前にすべきこと

離婚慰謝料を請求する前にするべきことを以下でご紹介しますので、ご確認ください。

時効が成立していないかを確認する

離婚慰謝料の請求は、離婚した日から3年以内に行う必要があります。この期間を超えると、基本的に、慰謝料を請求できなくなりますので、ご自身のケースで時効が成立していないか確認しておきましょう。
なお、不貞行為があった場合の時効は少し複雑で、「不貞の事実と不貞相手の氏名・住所を知った時から3年」か「不貞の事実を知らなかった場合は、不貞が始まった時から20年」のいずれかとなります。
ただし、不貞が原因で離婚した場合の慰謝料を、元配偶者に対して請求する場合の時効は3年となりますので、注意が必要です。

請求に必要な証拠を集める

離婚慰謝料を請求するためには、不法行為を証明する証拠を集めておく必要があります。
相手が不法行為を認めて、慰謝料請求に応じるなど、当事者間で解決できればいいですが、相手が不法行為を認めず、調停や裁判になった場合は、証拠の提出が不可欠になります。相手が証拠隠滅する前に、以下のような証拠を揃えておきましょう。

  • 不貞行為の証拠:不倫をうかがわせるメールやSNSなどの内容の記録、探偵による調査報告書など
  • モラハラ・DVの証拠:暴力や暴言の録音・録画・メモ、ケガをした際にかかった医師の診断書など
  • 悪意の遺棄の証拠:生活費の不支給を証明する、振込がなされていない通帳記録など

離婚慰謝料の相場を把握する

離婚慰謝料の相場は、以下の表のとおりです。
この金額は、過去の裁判例に基づいて集計した平均額で、個々のケースにより金額が異なりますので、あくまで目安と考えて下さい。
慰謝料の金額に決まりはなく、基本的には、夫婦間の話し合いによって決めることになりますが、裁判など実務上では、不法行為の内容・期間・頻度、精神的苦痛の重さ、婚姻期間の長さ、養育が必要な子供の有り無し、夫婦の年収などを総合的に判断したうえで、計算されています。

離婚原因 慰謝料の相場
浮気・不貞行為 100万円~500万円
悪意の遺棄 50万円~300万円
DV・モラハラ 50万円~500万円
セックスレス 0万円~100万円

離婚慰謝料を請求する方法

離婚慰謝料を、離婚をするのと同時に請求する場合は、まずは、夫婦間で離婚することと、慰謝料含めた離婚条件について話し合い、合意できなかった場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立て、調停委員を介して、話し合いを進めます。調停でも合意できなかった場合は、離婚裁判へと進み、裁判官の判断にゆだねることになります。詳細については、次項でご説明します。
なお、離婚後に慰謝料請求を行う場合は、相手に内容証明郵便を送り、示談交渉や慰謝料請求調停を行い、合意できなければ、地方裁判所に訴訟を提起するという流れになります。

話し合いによる協議離婚で請求

協議離婚とは、夫婦間の話し合いによって離婚する方法のことをいいます。
この方法では、慰謝料の金額など離婚条件について、自由に取り決めることが可能なため、お互いの合意さえあれば、他の請求方法に比べて高額な慰謝料を受け取れる可能性があります。

離婚協議書の作成

夫婦間の話し合いで慰謝料の金額が決まったら、その他の離婚条件と併せて、取り決めた内容を離婚協議書などの書面に残しておきましょう。口約束だけで条件を決めてしまうと、後ほどトラブルになる可能性があるからです。
なお、離婚協議書を作成する場合は、執行認諾文言付公正証書にしておくことをおすすめします。相手が慰謝料を支払わない場合に、この公正証書があれば、裁判を行うことなく、直接強制執行をかけることが可能です。
また、協議書に慰謝料について記載する際は、「誰が誰に慰謝料を支払うのか」「慰謝料の支払金額」「支払期日や支払方法」「振込手数料の負担者」「振込口座」などを明記しておくことが必要です。

話し合いで決まらない場合は離婚調停で請求

協議をしても決まらない場合、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。調停では、調停委員が間に入り、双方の言い分を聴き取り、離婚の合意や慰謝料等の離婚条件について、調整を行います。そして夫婦双方が合意した場合は離婚が成立することになります。

調停の延長で裁判所が審判を出すケースもある

審判離婚とは、離婚をすること自体は夫婦間で合意しているが、慰謝料の金額や養育費などについて、わずかな意見の相違があって、調停を成立させられないときに、裁判官の判断で離婚の審判を下し、慰謝料の金額などの離婚条件を決定する方法のことをいいます。2週間以内に双方から異議申し立てがなければ、審判離婚が成立します。裁判官によって、公平な審判を下してもらうことができ、また、離婚裁判をする必要がなくなるため、手間や費用がかからなくなるというメリットがあります。

それでも解決しなければ離婚裁判へ

調停が不成立となった場合は、裁判所に対して、訴訟を提起することになります。
離婚裁判となった場合、裁判所が離婚成立と離婚慰謝料の請求を認めるのは、法律で定められている「法定離婚原因」にあてはまる場合のみです。そのため、法定離婚原因を証拠によって立証できなければ、離婚も、慰謝料請求も認められないということになります。

(法定離婚原因)
①配偶者の不貞行為(不倫など)
②配偶者からの悪意の遺棄(正当な理由なく生活費を渡さない、正当な理由のない別居など)
③配偶者の生死が3年以上不明
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復困難
⑤その他、婚姻を継続しにくい重大な事由がある(DVやモラハラ、セックスレス、長期間の別居など)

内容証明郵便での請求について

内容証明郵便に法的な拘束力はありませんが、送付日時や請求内容が公的に記録されるため、慰謝料請求をした事実を証拠として残すためには有効な方法といえます。また、相手に対して、不法行為に対し責任をとってもらうという心理的プレッシャーを与えることもできます。特に別居などで配偶者と直接会うことが難しい場合や、口頭で伝えにくい場合などに有効です。
ただし、デメリットとして、文書を作成する手間がかかりますので、内容証明の作成に困った場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

内容証明郵便に記載する内容

内容証明郵便に記載する内容は、主に以下のとおりとなります。
なお、内容証明郵便には文字数や行数などに制限があり、規定通りに書かないと、郵便局で受付けてもらえませんので、注意が必要です。

  • 不法行為の事実(不倫やDVなど。いつ、どこで、誰と不法行為を行ったのか)
  • 不法行為の違法性(民法709条違反)
  • 慰謝料を請求すること
  • 慰謝料の請求金額、支払方法、支払期日、振込先など
  • 慰謝料が期限内に支払われなかった場合の法的措置

相手が離婚慰謝料を支払わないときの対処法

夫婦間での協議や調停、裁判などにより、慰謝料の支払いを合意したにもかかわらず、相手から支払われない場合は、強制執行により慰謝料を回収することが可能です。
強制執行認諾文言付公正証書、調停調書、和解調書、判決正本など、慰謝料請求権を公的に証明する文書(債務名義)があれば、裁判を省いて、直接強制執行をかけ、相手の財産を差し押さえることが可能です。差し押さえの対象は相手の給与や預貯金、自動車、不動産などが挙げられます。
ただし、強制執行の手続き自体、手間や時間がかかるため、相手の支払能力を考慮したうえで、分割での支払いや、支払可能な金額で折り合いをつけることも検討するべきでしょう。

よくある質問

離婚慰謝料について、よくある質問をご紹介します。

子供がいた場合、離婚慰謝料の相場より多く請求することはできますか?

子供の有り無しや人数は、離婚慰謝料の金額を増減させる要素の一つとなります。
ケースにより異なりますが、基本的には、子供がいないよりもいた方が、また、養育の必要な子供の数が多い方が、さらに子供の年齢がより小さい方が、離婚による精神的ショックは大きくなると考えられるため、離婚慰謝料の金額が高くなる傾向にあります。

不倫の慰謝料は離婚しないと配偶者に請求できませんか?

不倫の慰謝料は、離婚せずに婚姻関係を継続した場合であっても、配偶者に請求可能です。
不倫慰謝料の請求自体、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)にあたるため、離婚するか否かに関わらず、請求可能です。ただし、離婚という損害が発生していないので、不倫で離婚した場合よりも、慰謝料の金額が低額になる傾向にあります。

モラハラを理由に離婚した場合、慰謝料の相場より高く請求する方法はありますか?

モラハラの場合、モラハラの内容・回数・期間、モラハラを受けた者の落ち度、精神的苦痛の重さ、夫婦の年収、子供の有り無しなどを総合的に判断したうえで、悪質性が高いとなれば、高額な慰謝料が認められる可能性があります。
なお、慰謝料を請求する前提として、上記の事実を証明する証拠(モラハラの録音・録画・メモ、医師の診断書など)を取り揃えておくことが必要です。

離婚の慰謝料請求の時効が迫っているのですが、時効を止める方法はありますか?

離婚慰謝料は、基本的には、離婚成立後3年以内に請求しなければいけません。
何らかの理由で手続きが遅れ、時効が迫っている場合は、以下のような方法で、時効を止める必要があります。これ以外にもいくつか方法があり、個々の事情によりとるべき方法が異なりますので、時効を止めたい場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

(時効を止める方法)
相手に直接、慰謝料の支払いを請求する。
3年の時効が近づいたら、相手に連絡し、慰謝料を支払うよう請求しましょう。相手が「慰謝料を支払います」と言ったなら、債務の承認があったとされ、時効が更新され、時効が3年延長します。債務の承認は口約束だけでも成立しますが、後日のトラブルを防ぐためにも、署名、押印付きの書面に残しておきましょう。

裁判を起こす
裁判所に慰謝料請求訴訟を提起すれば、その時点で時効の完成が猶予されます。その後判決が出て確定すると、その時点から、さらに時効期間が10年延長されることになります。
なお、すぐに裁判を起こせない場合、相手に内容証明郵便を送れば、6ヶ月間、時効の完成が猶予されますので、裁判までの時間稼ぎを行うことが可能です。

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離婚時の慰謝料請求についてわからないことがあれば弁護士に相談しましょう。

離婚慰謝料を請求する場合、そもそも、配偶者の行為が、慰謝料請求の発生原因となる「有責行為」にあたるのか?あてはまるとして、慰謝料の金額はいくらになるのか?を判断する必要がありますが、これはかなり難しい作業です。また、慰謝料の交渉は、当事者同士だと感情的になるため、話し合いが進みにくいのが一般的です。

当事者間で解決できない場合は、弁護士にご相談ください。
弁護士であれば、過去の裁判例や経験的知識に基づき、適切な慰謝料額を判断できますし、離婚協議書や内容証明などの文書作成から、相手との交渉まで代行して行いますので、依頼者の負担が軽くなるというメリットもあります。
弁護士法人ALGは、離婚案件に豊富な相談実績を有しております。離婚慰謝料の請求についてお悩みの場合は、弊所にご相談ください。

交通事故の怪我により、後遺症として、手にしびれが残ってしまう場合があります。
細かい動きを必要とする手にしびれが残ると、日常生活が不自由になるため、被害者の方にとっては、大変辛いことだと思います。その分の補償をしっかり受けたいと思うのは当然のことです。
手のしびれが、自賠責保険の定める後遺障害として認定されれば、後遺障害慰謝料や逸失利益が発生し、損害賠償額が増額する可能性があります。
ここでは、手のしびれの原因と考えられる傷病、手のしびれがある場合の後遺障害等級と慰謝料の相場などについて、ご紹介します。

交通事故後に手のしびれが起こる原因

交通事故によって、手にしびれなどの症状が出てくる場合があります。これは、事故の衝撃や怪我により、末梢神経が損傷したり、圧迫を受けたりしたことが主な原因であると考えられます。
事故ごとに損傷部分が異なりますので、手のしびれが続く場合は、なるべく早めに医師による診察や検査を受け、損傷部分を特定し、最適な治療を受けることが必要となります。
以下では、手のしびれの原因となる傷病について、いくつかご紹介します。

むちうち

むちうち症とは、事故などの衝撃で首がむちのようにしなった結果、頚椎(首の骨)、頚部の筋肉、神経、血管などが損傷を受けることで生じる症状の総称です。医師の診断を受けると、「頚椎捻挫」「外傷性頚部症候群」などといった傷病名が診断書に記載されます。
首の痛みやだるさはもちろんのこと、手のしびれなどの症状も一緒に出ている場合は、神経根症状型のむちうちになっている可能性があります。
むちうちにより、頚部の脊髄から枝分かれする神経根(末梢神経の一部)が損傷、もしくは、周辺が腫れて神経根を圧迫し、神経根が伸びている手の支配領域において知覚障害などが生じ、手のしびれや握力の低下などの症状が引き起こされると考えられます。

胸郭出口症候群

胸郭出口とは、鎖骨と第一肋骨の間にある隙間のことで、その中に神経の束や血管が通っています。事故による衝撃で、胸郭出口にある手を司る神経や血管が、筋肉や骨により圧迫されたり、引っ張られたりすることで、手のしびれや握力の低下が生じます。特に、腕を上げる動作をしたときに、手にしびれが生じる場合は、胸郭出口症候群の可能性があります。
ただし、胸郭出口症候群はなで肩や筋肉質などの体格的素因や、ストレスなどが原因で生じる可能性もあり、症状の医学的な証明や説明が難しい類型であるため、胸郭出口症候群という病名での後遺障害等級認定は下りにくいという現状があります。

椎間板ヘルニア

頚椎は、ブロックの形をした7つの椎骨が積み重なってできています。椎間板ヘルニアとは、椎骨と椎骨の間にあって、クッション材の役割を担っている椎間板の一部が外に飛び出してしまった状態のことです。事故による衝撃で頚椎の椎間板が突出すると、その周辺にある、手を司る神経を圧迫するため、手のしびれなどの症状が現れるようになります。
ただし、椎間板ヘルニアは、交通事故を原因とするものであれば、かなりの強い衝撃が必要とされ、加齢によっても発症する可能性があるため、事故との因果関係で争いになるケースが多いです。

脊髄損傷

脊髄とは、脳から背中、腰にかけて通っている神経の束のことをいいます。
人が体を動かそうと思ったとき、脳からの指示が、脊髄→末梢神経→手足へと伝わります。物が触れた感覚も、末梢神経→脊髄→脳へと伝わりますので、脊髄は我々が生きていくうえで大変重要な組織であるといえます。
脊髄は頚椎の脊柱管の中を通っていて、事故による衝撃で脊髄が損傷すると、様々な症状が引き起こされます。手のしびれについては、頚部にある手を司る神経が損傷した結果、生じたものであると考えられます。脊髄の損傷がひどい場合は、半身や全身麻痺、呼吸障害、歩行障害などの重篤な症状が残ります。

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手のしびれがある場合の後遺障害等級と慰謝料

事故により、手にしびれが残ってしまった場合、後遺障害等級認定を受けると、後遺障害慰謝料や逸失利益などが発生し、損害賠償額が増額する可能性があります。
目安として、6ヶ月間治療を尽くしても、手のしびれが残っている場合は、後遺障害等級認定の申請を検討するべきでしょう。
手にしびれが残った場合に認定されやすい後遺障害等級は12級13号と、14級9号です。それぞれの級について説明します。

①12級13号 「局部に頑固な神経症状を残すもの」
手のしびれについて、MRI検査等の画像により神経の圧迫が認められたり、筋電図検査等で陽性が出たりするなど、他覚的所見があり、「局部に頑固な神経症状」が残っていることが医学的に証明された場合に、12級13号に認定されます。

②14級9号 「局部に神経症状を残すもの」
手のしびれについて、MRI検査等の画像で症状が確認できなくても、事故状況や治療の経過などから、「局部に神経症状」が残っていることが医学的に説明可能であると判断されれば、14級9号に認定されます。
例えば、事故直後から一貫して手のしびれの症状の訴えがあり、6ヶ月以上治療しても、手にしびれが残っているような場合に、認定される可能性があります。

下記表のとおり、後遺障害等級に応じ、後遺障害慰謝料の金額が定められていますが、自賠責基準よりも、弁護士基準の方が高額になることが確認できます。

後遺障害等級 自賠責基準 弁護士基準
12級13号 93万円 290万円
14級9号 32万円 110万円

手のしびれで後遺障害が認められた裁判例

手のしびれが後遺障害として認められた裁判例をご紹介したいと思います。
下記判決において、事故により負った手のしびれは、後遺障害等級14級9号に該当するとの判断が下されています。
特に、裁判所が画像所見等の客観的資料ではなく、事故直後からの症状の一貫性などに基づき、後遺障害を認定したという点に着目するべきでしょう。

【東京地方裁判所 令和2年2月28日判決】
(事案)加害者の運転する車両が、信号待ちで停止中の被害者の車両に後方から追突。被害者は頚椎捻挫等の傷害を負い、約10ヶ月の通院治療を受けたが、症状固定後も、右手のしびれが残っている。

(争点)本件事故により負った後遺症(手のしびれ)は、後遺障害として認定できるか。

(結論)被害者の頚椎捻挫に関しては、神経圧迫などの画像所見がなく、目立った神経学的所見もないため、他覚的所見があるとはいえない。しかし、被害者は首の痛みや手のしびれを受傷時より一貫して訴えており、約10ヶ月の治療を経ても、いまだ手のしびれが残存していることから、本件事故により負った頚椎捻挫により、手のしびれが残ったことは医学的に説明可能である。よって、被害者の手のしびれは、局部に神経症状を残すものとして、後遺障害14級9号に該当するものと認められる。

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交通事故後の手のしびれは弁護士にご相談ください

事故による手のしびれは、明らかな外傷がないケースがほとんどです。また、レントゲンやMRIなどの画像所見が出ないことも多く、後遺障害等級認定を受けるのが難しい類型になります。
そのため、適正な後遺障害等級認定や慰謝料などの賠償金を得るためには、交通事故および医学的知識に精通した弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に依頼すれば、症状に見合った後遺障害等級に認定されやすくするための、適切な治療や検査の受け方などのアドバイスを受けることが可能です。また、後遺障害等級認定の申請や保険会社との示談交渉も代行して行いますので、被害者の方の負担も軽くなります。

「手のしびれが残っているが、今後どのように対応すればよいのかわからない」
「後遺障害等級認定の申請を専門家にお任せしたい」と思われるような場合は、ぜひ弁護士法人ALGにご相談ください。

相続に関する手続きの中には、期限内に行う必要があるものがあります。期限内に必要な手続きを行っておかないと、後になって損害を被ったり、予定通りの相続相続を行うことができない場合もあるので注意が必要です。

相続手続きの期限について

期限のある手続き 相続の単純承認・限定承認・相続放棄(民法915条1項本文)
相続の承認・放棄の取り消し(民法919条3項)
相続財産の財産分離(民法941条1項)
遺留分侵害額の請求(民法1048条)
相続分の取戻権(民法905条2項)
相続回復請求権(民法884条)
準確定申告
相続税の申告・納税・還付請求
生命保険金の請求
期限のない手続き 遺産分割
相続分の譲渡

相続放棄は3ヶ月以内に手続きが必要

相続放棄とは、被相続人の財産や負債について、相続することを放棄するための手続です。申立てが受理されれば、初めから相続人ではなかったことになります。
相続放棄は、『自己のために相続の開始があったことを知った時』から3か月以内に、家庭裁判所での手続をしなければなりません。ただし、家庭裁判所に申し立てることで、期間を延長することもできます。また、期間を過ぎた後に想定外の負債が見つかった場合など、例外的な場合には、3か月の期間を過ぎていても相続放棄が認められることもあります。

相続放棄の手続き方法と注意点

準確定申告は4ヶ月以内

準確定申告とは、亡くなった被相続人が行うはずだった生前の所得についての確定申告を、相続人全員(包括受遺者を含みます)が共同で行うものです。
準確定申告の期限は相続の開始を知った日の翌日から4か月以内となっています。準確定申告が必要であるにもかかわらず期限内に行わなかった場合、延滞税や加算税などのペナルティが発生することがあります。

相続税の申告・納税期限は10か月以内

相続税の申告及び納税は、相続人が、被相続人の死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。
もっとも、10カ月の期限内に遺産分割が完了できないことも少なくありません。そのような場合、法定相続分で申告・納税したうえで、遺産分割完了後に更正の請求(税額が減少する場合)又は修正申告(税額が増加する場合)することで対応することになります。
相続税には、死亡保険金の非課税控除、小規模宅地等の特例、配偶者、未成年者の税額免除等の各種の特例があることから、期限内に適切な相続税の申告をするために税理士に依頼することをお勧めします。

土地の遺産相続登記の期限

現時点では、相続登記に期限はなく、なるべく早く行う方が望ましいという運用になっています。
しかし、令和3年の法改正により、相続登記の申請が義務化されることになり、所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、その相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記の申請をしなければなりません。この法改正は、令和6年4月1日から施行されることになりますので注意が必要です。

遺留分減殺請求の期限は1年以内

法定相続人(被相続人の兄弟姉妹は含みません)には、法律上、最低限保障された遺産の取り分というものがあり、これを遺留分と呼んでいます。遺言に沿った相続分の指定や贈与、遺贈がこの遺留分を侵害する場合、その侵害額相当分の金銭の支払いを請求できることになっています。
遺留分侵害額請求には、相続の発生と贈与や遺贈などがあったことを知ったときから1年、または相続開始の時から10年という期間制限があり、特に、相続の開始、贈与、遺贈を知った時から1年という短い期間制限となっている点、注意が必要です。

生命保険金は3年以内に請求

保険金請求権は、保険金の支払事由が発生したときから3年間という期間制限があります。この期間制限は、保険法95条1項で定められた消滅時効であって、民法上の消滅時効期間(5年)の例外となっています。
もっとも、期間内に保険金を請求できなかった事情次第では、保険会社が支払いに対応してくれるケースもあることから、期間が過ぎたからといってすぐに諦めずに保険会社に連絡してみるとよいでしょう。

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遺産分割協議は10年経過していても行うことができる

現時点では遺産分割に期間制限はなく、いつでも行うことができますが、相続税の申告の期限があることなどからすれば、なるべく早く行うのが望ましいといえます。
そして、令和3年の法改正により、具体的相続分(特別受益や寄与分を考慮した相続分)による遺産分割は、原則として、相続開始後10年を経過した後はすることができないという制限が設けられることとなりました。この法改正は、令和5年4月1日から施行されることになりますので注意が必要です。

遺産分割のやり直し期限

一度遺産分割を行った以上は、当然、原則としてやり直すことができません。もっとも、当事者全員の合意がある場合には遺産分割をやり直すことは可能であって、当事者全員の合意によってやり直しをすることについて期間制限はありません。
一方で、遺産分割における意思表示の瑕疵(錯誤や強迫等)があることを理由として遺産分割の取り消しをしたことによる遺産分割のやり直しの場合、取消権について5年間の消滅時効という期間制限があります。

遺産分割のやり直しに期限や時効はあるのか?

遺産分割の期限について詳しくは弁護士にご相談ください

相続手続きは、被相続人との別れという被相続人にとって大きな出来事となりますが、そのような中でも期間制限に従って必要な手続きを行わないと、不利益を被ったり、ペナルティーを受けることになりかねません。
期間制限の中で、適切な選択を行い、最適な相続を実現するためには、自分だけで対応するのではなく、相続手続きの専門知識を持った弁護士に依頼することが有用です。
是非一度弁護士に相談することをご検討ください。

一度遺産分割を行った後、何かしらの事情で、遺産分割をやり直したいと考えることがあります。
では、遺産分割のやり直しをすることはできるのでしょうか。できるとしたら、いつまでやり直すことができるのでしょうか。 今回は、遺産分割のやり直しについて、説明していきます。

遺産分割はやり直しができるのか

遺産分割を一度行っている以上、基本的には、遺産分割のやり直しができません。
その上で、いくつかの場合には、遺産分割をやり直すということが認められています。以下、再度の遺産分割協議ができる場合を記載します。
ただし、以下の記載があるものでも、必ず遺産分割協議のやり直しができるということではなく、再協議できる可能性があるに過ぎないということは注意しましょう。

  • 分割協議の意思表示に瑕疵がある場合(心裡留保、虚偽表示、錯誤、詐欺・強迫等)
  • 一部の相続人が参加していない場合
  • 相続人でない者が参加している場合
  • 遺産の一部が脱漏していた場合
  • 相続人全員が既に行った遺産分割を合意解除し、遺産分割のやり直しを希望する場合

遺産分割後に他の財産が見つかった場合

遺産分割後に、新たに遺産が見つかる場合があります。
この場合には、基本的に、新たに見つかった遺産のみを対象とする遺産分割を行えばよく、既に行っていた遺産分割を無効とする必要はないと考えられています。
もっとも、漏れていた財産が非常に重要なものであり、その財産があることが分かっていれば、先のような遺産分割はしなかったというような場合には、先の遺産分割も無効となる可能性があります。その場合には、再度全体で遺産分割協議をすることになります。

遺産分割のやり直しを行う場合に期限や時効はある?

民法上、遺産分割自体には期限や時効はありません。したがって、遺産分割をやり直すというような場合でも、期限や時効はありません。何年後でも、遺産分割のやり直しをすることは可能です。ただし、以下に記載するような注意点があります。

取消権には時効があるので注意が必要

例えば、民法上の詐欺(96条1項)に該当する行為によって遺産分割を取り消すというような場合、いつまでも取り消しができるということはありません。取消権には消滅時効が定められており、追認できるときから5年間行為のときから20年が経過したときには、取消権が時効により消滅してしまいますので注意が必要です。

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遺産分割をやり直した場合の注意点

遺産分割をやり直す場合でも、既に一旦遺産分割をしてしまっていることから、いくつか注意が必要な点があります。遺産分割のやり直しを考えるときには、事前に、以下の点について確認しておくことをお勧めいたします。

やり直し前に第三者へ譲渡していた場合

例えば、民法上の詐欺により遺産分割が成立し、Aが不動産を取得したとします。Aは、第三者にその不動産を譲渡していたとします。この遺産分割が取り消された場合、不動産は遺産共有状態に戻るべきですが、第三者が既に不動産を取得しているため、不動産を遺産共有状態に戻すということは、基本的にはできません。ただし、上記第三者が、詐欺により遺産分割が成立していること等について認識している場合には、遺産共有状態に戻すことができる可能性があります(民法96条3項)。

不動産の名義が変わった場合

例えば、一度成立した遺産分割で、Aが不動産を取得した場合、Aは不動産の所有権移転登記をすることになります。その後、遺産分割をやり直し、不動産をBが取得した場合、Bは不動産の名義をAからBに変更する必要があります。
その場合には、Aの所有権移転登記を抹消し、Bが相続により取得したという登記をすることになります。
抹消登記及び新たな相続登記の際は、登録免許税がかかりますので、注意が必要です。

課税対象となる場合がある

遺産分割をやり直した場合、1度目の遺産分割のみならず、2度目の遺産分割にも課税されることがあります。これは、1度目の遺産分割が、法律上無効なものではないというような場合に、2度目の遺産分割について、新たに贈与、譲渡、交換があったものと捉えるためです。1度目の遺産分割が当初から無効であったかどうかについては、民法の規律により判断することになりますが、課税段階では、税務署が判断することになります。

遺産分割をやり直す際の期限について弁護士にご相談ください

遺産分割をやり直したいという場合にも、事実上期限があるというようには考えた方がよいです。当時の相続人全員が存命である方がよいですし、第三者に遺産が渡っている可能性もあります。取消権の消滅時効もありますので、なるべく早い段階で遺産分割のやり直しを進める必要があります。遺産分割から長期間経過してしまったような場合でも、遺産分割のやり直しが可能な場合もありますので、遺産分割のやり直しを希望される場合には、一度、弁護士に相談されることをお勧めします。

配偶者から心無い暴言を吐かれる、無視される、過度に束縛される・・・これらの行為は全て、家庭内におけるモラハラ(モラル・ハラスメント)の可能性があります。
モラハラは精神的暴力とも言われており、立派な離婚原因となり得ます。モラハラを原因として裁判で離婚を認めてもらったり、慰謝料を請求したりするためには、モラハラの事実を客観的に証明しなければなりません。しかしモラハラは目に見えない分、証拠を揃えるのが難しいのです。
本記事では、モラハラの証拠集めの方法や注意点などについて、詳しく解説いたします。モラハラ被害に悩む方の解決の一助となれば幸いです。

モラハラが原因で離婚する場合は証拠が重要

日本で離婚するためには、以下の3つの方法があります。

①協議離婚(夫婦の話し合い)
②離婚調停(家庭裁判所での調停)
③離婚裁判

このうち、①協議離婚と②離婚調停は「夫婦の話し合い」であり、夫婦の合意さえあれば離婚が成立するため、モラハラの証拠は、必ずしも必要になるわけではありません。
しかし、③離婚裁判は、裁判官が、「この夫婦の離婚を認めても良いか、認めるべきではないか」を判断します。モラハラは「目に見えない」言動であることがほとんどですが、モラハラを原因として裁判で離婚を争う場合、モラハラ行為が法定離婚事由である「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し、夫婦関係が破綻したことを、「誰が見てもわかるように」客観的に証明しなければなりません。
いくら酷いモラハラを受けていても、もし裁判で主張立証が不十分だった場合は、離婚が認められない可能性が高くなります。

モラハラの証拠になるもの

例えば、以下のものが、モラハラを裏付ける証拠となり得ます。

  • モラハラの内容を記録した日記やメモ
  • モラハラ現場の録音・録画データ
  • メールやLINE、SNSの内容
  • 医療機関への通院履歴や診断書
  • 第三者からの証言
  • 警察や公的機関への相談歴

これらの証拠は、普段から意識してなるべくたくさん集めておきましょう。
以下、それぞれの内容について、詳しく説明していきます。

モラハラの内容を記載した日記やメモ

モラハラの内容を具体的に記録した日記やメモは、モラハラの証拠となり得るため、意識して残しておくようにしましょう。
日記は、手書き以外でも、パソコンやスマホ、アプリなどで残しておくこともできます。しかし、これらのデータは後から書き直しやすいという点で、どうしても手書きの日記よりは証拠としての信用度は落ちてしまいます。できれば、改ざんの疑いの余地をなくすためにも、消えないボールペンを使用し、手書きで記録しておくことをお勧めします。

書き方に気を付けるべきことはある?

日記をつける際は、モラハラ被害を受けた都度、日にちと時間、言われたことやされたこと、相手の態度を具体的に記録しておきましょう。そのときのシチュエーションや、モラハラ以外にその日にあった出来事も添えておくと、証拠としての信憑性がより高まります。また、相手に日記が見つかった時に備えて、日記の画像をデータとして保存しておくなどすると、より安心です。
なお、後から日記の内容を修正したりすると、証拠としての価値が下がることは言うまでもありませんので、加筆修正は控えましょう。

モラハラの現場を録音・録画したデータ

モラハラの現場を録音・録画したデータは、モラハラの事実を証明するとても有効な証拠となります。
録画データで、角度の問題などで暴言を吐いている本人が映っていなくても、会話の内容次第では、十分証拠となり得ます。
また、録音する際、瞬間的なワンフレーズだけを切り取った音声データでは、相手に前後の事実を捻じ曲げられたり、「自分の不利な内容に編集されている」など、言い逃れされたりしかねません。どのような流れで暴言を吐かれたのか、そのとき被害者はどのような反応をしたのかなど、一部始終の会話の内容が分かるように、時間をかけて録音しておきましょう。
なお、モラハラの証拠を掴むための無断録音・録画は、その方法が相手の権利を侵害するようなものではなく常識的なものであれば、基本的にはプライバシーの侵害や盗聴・盗撮の問題は生じず、裁判でも有効な証拠として取り扱われます。

モラハラ夫(妻)から届いたメールやSNS

人格を否定する、独自のルール・こだわりを強要する、行動を制限する、親族や友人をバカにするなど、配偶者から送られてきたモラハラな内容のメールやLINE、SNSの投稿も、証拠となります。メールは保存し、LINEやSNSは送信歴や投稿が取り消される前に、日時が分かる状態でスクリーンショットし、データを残しておきましょう。
また、1日のスケジュールを細かく決めその通りの行動を強要する、何かを命令するなど、過度に相手の行動を強制・束縛する内容のメモや指示書なども、同様にモラハラの証拠となります。現物は捨てずに保管し、念のため画像も保存しておくと良いです。
さらに、例えば「毎日1時間ごとに電話しろ」「自分から着信があったら●分以内に掛け直せ」など、被害者の行動を制限・監視・確認する目的で行われた頻繁な電話連絡も、モラハラとなり得ます。発着信履歴の画面をスクリーンショットで残しておきましょう。

精神科への通院履歴や医師の診断書

モラハラは、ときに、不眠症やパニック障害、うつ病などの様々な精神疾患を引き起こす原因となります。
心の不調を感じたら、なるべく早めに医療機関の精神科や心療内科を受診してください。医師による診断書や通院履歴は立派なモラハラの証拠となります。なお、通院の際は、必ず配偶者からモラハラを受けてるいことを医師に伝え、診断書やカルテにもモラハラが原因であることを記載してもらってください。
この点、過去に受けた診断書で、精神疾患の原因がモラハラである旨の明記がない場合でも、日記や音声データなど、その他の証拠を組み合わせることで、モラハラを裏付ける証拠となる可能性があります。

子供や友人などによるモラハラの証言

実際にモラハラを受けている現場に居合わせたり、モラハラの悩みを相談したりした親族や友人がいる場合は、これらの人物の証言や陳述書も、証拠として役に立ちます。協力してもらえないか打診しておきましょう。
夫婦にある程度の年齢に達している子供がいる場合は、子供からの証言も証拠になり得ます。しかし、子供の年齢が幼いと、どうしてもその分証言の信用性は低くなってしまいます。また、子供にも大きな精神的負担をかけてしまう可能性があるため、注意が必要です。

警察・公的機関への相談履歴

警察や公的な相談機関へモラハラの相談をしていた場合、これらの相談履歴も、モラハラがあったことを裏付ける証拠となり得ます。警察や公的な相談機関では、相談のあった日時や内容が記録されており、裁判などで必要となった場合には、書面で取り寄せることができます。
これらの相談内容の記録を、日記や録音・録画データなど、他の証拠と組み合わせることで、よりモラハラがあった事実や、行われた内容の信憑性を高めることができます。

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モラハラの証拠が集めにくい理由

モラハラは、目に見えない言葉や態度により行われる「精神的暴力」であり、受ける被害も、目に見えない「心の傷」です。そのため、どうしても、身体的暴力を受けたときの傷やアザ、浮気現場の写真のように、直接目に見える証拠は残りにくいのです。
また、モラハラ被害者自身が、モラハラを受けているという自覚がなく、被害を自覚するまでに時間がかかり、証拠を掴む機会を逃してしまうこともあります。さらに、モラハラをしているという自覚がなく、「自分が正しい」と信じて疑わない加害者が、証拠を破棄したり、証拠集めを妨害したりするケースも、珍しくありません。

証拠を集める上での注意点

モラハラの加害者は、思わぬタイミングや何気ない言動で急に怒りのスイッチが入ったり、前触れがなく突然怒り出したりします。証拠となる怒号やモラハラ発言を録音するタイミングを見計らうのは、非常に難しいものです。
普段からボイスレコーダーをポケットに忍ばせておくスマホの録音アプリを起動しておくなど、いつその瞬間がきても対応できるよう、意識して準備しておきましょう。最も酷い発言自体が録音できてなくても、会話の途中からでも証拠となり得ます。
なお、相手に録音していることがバレたり、スマホが壊れたりしたときに備え、証拠となるデータは随時クラウド上に保存したり、バックアップを取っておくなどしておきましょう。

モラハラの証拠がない場合の対処法

モラハラの加害者の中には、外面が良くしたたかで、証拠が残らない巧妙なやり方でモラハラを行うタイプもいます。また、怒鳴ったり、長時間説教したりして自分の気が済んだ後は、急に優しくなり、被害者に、「これはモラハラじゃなくて一時的に機嫌が悪かっただけ」などと思わせ、被害者をマインドコントロールするタイプも少なくありません。このようなタイプが相手だと、モラハラの客観的な証拠を集めるのは難しいでしょう。

確かに協議や調停で合意できれば、モラハラの証拠がなくても離婚は成立します。しかし、モラハラの加害者は、世間体を気にしたり、自分の行為が愛情表現であると本気で思い込んでいたりするタイプが多く見受けられます。そのような相手が、話し合いですんなりと離婚を受容れる可能性は低いでしょう。やはり、裁判に発展したときを見据え、ときには弁護士やプロの探偵など第三者の力を借りて有力な証拠を収集しておくべきです。

モラハラの証拠があれば、慰謝料も請求できるのか

慰謝料は、相手の行為により受けた、精神的な苦痛に対する賠償金です。モラハラが原因で精神的苦痛を受けていれば、もちろん、加害者に対して慰謝料を請求することができます。しかし、そのためにはモラハラを受けた事実とその内容を具体的・客観的に証明しなくてはなりません。
モラハラの慰謝料の一般的な相場は数十万円程度といわれていますが、婚姻期間の長さやモラハラの内容、被害者の精神疾患の発症状況等に応じて、より高額な慰謝料が認められる可能性があります。

モラハラ離婚の証拠に関するQ&A

子供が配偶者からモラハラを受けていた場合、離婚するには証拠が必要ですか?

親から受ける理不尽なモラハラは子供にとって心理的虐待であり、子供の人格形成や健全な情緒の発達にとても大きく影響します。モラハラが原因でうつ病を発症したり非行に走ったりなど、子供の人生にとって非常に有害な行為であることは、いうまでもありません。
子供に対するモラハラが原因で離婚する場合も、当然、裁判ではモラハラ行為の客観的な証拠が必要になります。しかし、証拠集めに時間がかかり過ぎる場合や話し合いで解決できそうにない場合は、なるべく早めに子供を連れて、配偶者との別居を検討しましょう。子供を護るために、子供をモラハラ加害者から物理的に引き離し、子供が心身ともに安心して過ごせる環境を確保してあげてください。モラハラから子供を護るためにした別居には正当な理由があるため、裁判で不利になることはありません。また、数年間の別居の実績を作ることで、裁判でも離婚が認められやすくなるというメリットもあります。

配偶者とのLINEの内容が削除されていても、友人などにモラハラの内容が書かれたLINEを転送していた場合はモラハラの証拠になりますか?

LINEは、「送信取消」という機能によって、24時間以内に送信したメッセージであれば、自分と相手双方のトークルームから削除することができます。モラハラ加害者の中には、モラハラな内容を含むメッセージを送っても、適宜、送信取消をしていき、自分の保身のために証拠隠滅を図ろうとするタイプもいます。
この点、相手が送信取消をする前に、相手とのトーク履歴を友人や親族などの第三者に転送し、モラハラの相談をしている場合、その転送されたトーク履歴もモラハラの証拠となります。
しかし、日常的にLINEのトーク履歴を転送する行為は、転送される相手の迷惑にもなりかねません。トーク履歴をモラハラの証拠として確保するという目的であれば、自分のメールアドレスに送信したりクラウドサービスに保存したりすることも可能ですので、これらの手段も検討しましょう。

日記や録音データなどの証拠は、長期間集めるべきですか?

日記や録音データなどの証拠は、なるべく長期間にわたり、数もたくさん集めておくことが望ましいです。
そうすることで、モラハラ行為の継続性や頻度などの悪質性を、より具体的・客観的に示すことができます。
この点、短期間の日記や録音データが証拠とならないわけではありません。しかし、長期間にわたる証拠と比べると、やはり、「こんなのただの夫婦喧嘩だ」など、相手の反論の余地が生まれてしまいます。
短期間の証拠の場合は、「頻度」を意識して、数を多く集めるよう意識しましょう。例えば、毎日のように「バカ」「死ね」など、同じような言葉で、侮辱したり人格を否定したりするような言葉を浴びせられている場合は、同じ言葉でも毎日のように相手の発言を録音する、記録するなどして、証拠の数を積み重ねるとよいでしょう。

離婚の際に必要なモラハラの証拠について、経験豊富な弁護士がアドバイスいたします。

モラハラは目に見えない精神的な暴力である分、目に見える証拠を集めるのは難しいものです。また、モラハラ被害者の方の多くは、家庭内で弱い立場に置かれており、加害者と直接対峙して話し合うことは難しいことかと思います。
ですが、裁判に発展した場合、誰が見てもわかるようなモラハラの証拠を揃え、十分な主張立証を尽くさなければ、慰謝料を請求できなかったり、離婚自体が認められなかったりする可能性があります。
自分で頑張ってもなかなか証拠が集められない、離婚したいのにどうしたら良いのかわからない・・・などお悩みの方は、ぜひお気軽に弁護士法人ALGにご相談ください。経験豊富な弁護士が、依頼者の身の安全を第一に考え、心に寄り添いつつ、裁判で有効な証拠の集め方や離婚に向けた戦略など総合的にアドバイスいたします。

「信号待ちしていたら、後ろの車から追突された。事故以後、首の痛みに悩まされている。」このような方はいらっしゃいませんか?

自動車の追突事故などにあった際、首を痛めるケースは非常に多いです。
また、事故直後は異常がなくても、しばらく経ってから痛みが発生したり、首の痛みが発端となり、頭痛やめまいなどの全身症状が現れたりするような場合もあります。
このように、首を負傷し、後遺症に悩まされている方は、後遺障害等級認定を受ける必要があります。等級認定を受ければ、後遺障害慰謝料や逸失利益などの賠償金を加害者側に請求することが可能になります。
ただし、後遺障害等級認定を受けるためには、単に首が痛いだけでは足りず、等級認定の要件を充たす必要があります。
ここでは、事故による首の痛みが後遺障害として認められるための要件、首の痛みに関連する後遺障害、首の痛みへの対処方法などについて、説明していきたいと思います。

首が痛いだけでは後遺障害とは認められない

単に首が痛いというだけでは、交通事故で残った後遺障害として認定されませんので注意が必要です。首の痛みが後遺障害として認定されるためには、主に下記の要件を充たすことが必要です。

①事故状況や治療状況等により、交通事故が原因で負った後遺症であることを証明できること
②将来においても回復困難である(症状固定)と医師が判断したこと
③MRIやレントゲンの画像、各種検査により、後遺症の存在や程度を医学的に説明もしくは証明できること
④通院が途切れず、適切な通院頻度を保つなど、負傷した後から症状固定に至るまで、症状が一貫して継続的に続いていることが証明できること
⑤後遺症の症状が自賠責保険の定める後遺障害等級に該当すること

加害者側の自賠責保険会社を通じて、審査機関(損害保険料算出機構)に対し、後遺障害診断書や必要資料を提出し、上記要件を充たすと判断されれば、後遺障害等級認定が受けられます。そして、認定された等級に応じた後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益などの賠償金を得ることが可能になります。

後遺障害と認められるには検査が必要

首の痛みが後遺障害として認められるためには、症状を客観的に示す検査結果が必要になります。首の痛みは画像に現れない可能性がありますので、MRIやレントゲンの画像検査だけでなく、体をたたいて反射を見る深部腱反射テスト、患部に刺激を与えることで痛みやしびれの症状を調べるジャクソンテストやスパーリングテストなどの神経学的検査を医師より受け、その結果を後遺障害診断書に記載してもらいましょう。何らかの異常所見が後遺障害診断書に記載されれば、後遺障害として認定される可能性が高まります。

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首の痛みの原因と関係のある後遺障害

交通事故によって首を負傷した場合、どのような疾患になる可能性があるのでしょうか。
以下、考えられる疾患について、説明していきたいと思います。

むちうち

交通事故によって首を負傷した場合、むちうちになることが最も多いとされています。

むちうちとは、交通事故などによる衝撃で、首の骨の頸椎がむちのようにしなる動きをすることで、首の筋肉、靭帯、椎間板、神経などに起こる損傷のことを言います。
事故直後は痛みがなくても、しばらく経ってから、痛みが発生する場合もあります。 頸椎がむちのようにしなるため、一般的に、むちうちと呼ばれていますが、これは正式の傷病名ではありません。医師の診断を受けると、「頸椎捻挫」「頸椎椎間関節症」「頸部挫傷」「外傷性頸部症候群」「脊柱管狭窄症」などの傷病名が診断書に記載されます。

脳脊髄液減少症

脳脊髄液減少症とは、事故による頭部への強い衝撃などにより、脳脊髄腔に穴が開き、脳脊髄液が漏れ続け、首の痛みなど様々な症状を引き起こす疾患のことをいいます。
脳脊髄液減少症の症状は首の痛み以外にも、起立性頭痛、めまい、吐き気、耳鳴りなど人によって様々です。一見関係のないような症状でも、脳脊髄液減少症が原因でなっている可能性があります。
もし、事故後、上記の症状、特に寝起きすると頭痛が悪化するような症状が出ている場合は、脳脊髄液減少症の疑いがありますので、医師の診断を受け、MRIやCT検査を受けることが必要です。
脳脊髄液減少症は立証が難しい症状のため、後遺障害等級認定を受けることが難しく、認められたとしても14級というケースが殆どです。適正な等級認定を得るためには、医学的知見のある弁護士に相談することをおすすめします。

交通事故後に首が痛い(首の痛みが続く)ときにやるべきこと

事故後に首が痛くなった場合は、まずは整形外科に行き、医師の診察を受けましょう。自動車のエネルギーは想像以上に大きいため、事故直後は軽傷だと思っていても次第に症状が悪化することがあります。

事故直後の急性期は、炎症をおさえるために湿布やアイシングなどで患部を冷やしたり、コルセットなどで首を固定し、患部になるべく負担がかからないようにしたりすると良いようです。その後、炎症が治まり痛みが軽減されてきたら、首を温める温熱療法や、首のストレッチやマッサージなどのリハビリが行われることが多いでしょう。

治療方法や治療期間、整骨院への通院の必要性などに関しては、自己判断ではなく、医師の指示に基づき、判断するようにしてください。なお、むちうちの場合、医師の指示にもよりますが、週2~3回、1ヶ月に10日程度、6ヶ月以上通院するのが望ましいでしょう。

首が痛い場合にやってはいけないこと

首が痛い場合は、つい首を動かして音をぽきぽき鳴らしたくなってしまうかと思いますが、事故後はなるべく首を安静にしておくことが必要です。
無駄な動きをしたり、無理に刺激を与えたりすると、症状が悪化する可能性があります。座っているときも、立ち上がるときも、なるべくまっすぐ前を向き、首が体幹に対してねじれないような姿勢を保ち、激しい運動も控えましょう。

首の痛みと交通事故の因果関係が認められた裁判例

首の痛みと交通事故との因果関係が認められた裁判例をご紹介します。
以下の裁判例では、追突被害事故により負った首の損傷による痛みと交通事故との因果関係が認められ、後遺障害等級14級に該当するとの判断が下されています。

【京都地方裁判所 令和2年12月9日判決】
(事案)
赤信号で停車中の原告車に被告車が後方から追突。原告は頸部に傷害を負い、通院治療を受けた(通院期間7ヶ月、通院実日数123日)が、症状固定後も首の鈍痛が続いている。

(争点)
本件事故によって負った後遺症(頸部の鈍痛)は後遺障害として認定できるか。

(結論)
原告は、本件事故により首に傷害(頸椎椎間関節症等)を負い、約7ヶ月にわたり通院治療を受けたものの、症状固定後も頸部に鈍痛があり、週1回程度の神経ブロック注射及び鎮痛剤の内服による治療を受けており、本件事故によって生じた傷害の後遺障害として、頸部の鈍痛が残存しているものと認められる。よって、原告の後遺症は、後遺障害等級14級9号に該当するとものと認められる。

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交通事故後の首の痛みに困りなら弁護士にご相談ください

交通事故に遭い、首の痛みにお困りの場合は、交通事故に精通した弁護士に相談することをおすすめします。
特にむちうちに関しては、明らかな外傷が見えず、レントゲンやMRIなどの画像所見が出ないことも多く、後遺障害等級認定を受けるのが難しい類型になります。
そのため、適正な後遺障害等級認定や慰謝料などの賠償金を得るためには、医学的知識や交通事故に関する法的知識が必要となります。

弁護士法人ALGでは、医学博士弁護士が在籍する医療事故チームと交通事故チームが連携し、事件解決にあたっているため、適正な賠償金を求めて専門性の高い主張、立証をすることが可能です。
「事故により首の痛みに悩まされているが、今後どのように対応すればいいのかわからない」「後遺障害等級認定の申請をしたい」と思われるような場合は、ぜひ、一人で悩まず弁護士法人ALGにご相談ください。

「財産を受け取ってしまったら、相続放棄はできない」と言われることがあります。
しかし、これは不正確な内容で、財産を受け取ったとしても、相続放棄ができる場合があります。

抽象的な説明だけでは分かりにくいところですので、どのような場合には相続放棄ができて、どのような場合には相続放棄ができないのか、個別のケースごとに、以下説明して行きます。

相続財産にならないものなら受け取っていても相続放棄できる

まず、「相続財産」でない財産は、受け取ったとしても、相続放棄ができます。
また、相続放棄をした後でも、そのような財産は受け取ることができます。
そもそも相続放棄は、「相続財産」を受け取ることができなくなるという制度であり、「相続財産」以外の財産を受け取ったかどうかは、相続放棄には関係ないためです。
では、実務上よく見られる「相続財産」ではない財産とは、どういったものでしょうか。以下で説明します。

受け取っても相続放棄に影響しないもの

ここでは、「相続財産」ではない財産であるため、受け取っても相続放棄ができる(相続放棄と関係ない)ものについて、説明をしていきます。以下に記載のあるものは、受け取っても問題なく、相続放棄が可能です。

香典・御霊前

受け取っても相続放棄に影響しない財産として、香典・ご霊前があります。 香典・ご霊前は、一般に、故人への供養の意味合いがありますが、法的には、「故人の受け取った金銭」とは扱いません。あくまで、葬儀等を主宰する「喪主」に対する「贈与」であると考えられています。
したがって、香典・ご霊前はそもそも、被相続人が死亡時に有していた「相続財産」ではありません。
そのため、香典・ご霊前を受け取ったとしても、相続放棄には影響しません。

仏壇やお墓

仏壇やお墓等の受け取りも、原則として、相続放棄に影響せず、相続放棄は可能です。 これらは、祭祀財産といいます。民法は、祭祀財産と、相続によって承継される相続財産とを切り離して規定しています。 そのため、祭祀財産は、相続財産ではないため、祭祀財産を受け取っても、相続放棄には影響しないということになります。 祭祀財産と相続財産を切り離して規定しているのは、祖先の祭祀を尊重する習俗や国民感情に配慮した法の建付けになっているためです。

生命保険金(元相続人が受取人に指定されている場合)

生命保険金は、一般に、被保険者(被相続人)の死亡により生じる、受取人固有の権利だと理解されています。すなわち、被相続人が死亡した時点で有していた財産ではなく、自身が受取人として指定されている生命保険金を受け取ったとしても、相続放棄には影響しません。
他方、相続税との関係では注意が必要です。生命保険金は、相続税との関係では、相続財産であると考えます。そして、相続人が生命保険金を受け取った場合には、非課税枠(相続税の優遇措置)が使用できますが、相続放棄をした人は、非課税枠は適用されません。

遺族年金

遺族年金は、世帯の生計の担い手が死亡した場合に、その者によって生計を維持されていた遺族の生活が困難にならないようにするという趣旨の制度です。また、受給権者の範囲・順位が規定によって決まっており、相続人の順位等に関する民法の規定と必ずしも一致しません。
そのため、遺族年金は相続により承継される相続財産とは扱わず、受給者固有の権利だと考えるのが通例です。
遺族年金を受給しても、相続放棄には影響せず、相続放棄は可能と考えられています。

未支給年金

未支給年金についても、相続放棄には影響せず、受け取っても相続放棄が可能であると考えられています。
未支給年金は、被相続人が死亡するまでの間にもらうべきであった年金のうち、支払日の関係で未支給になっていたものですので、被相続人が死亡時に有していた財産とも考えられそうです。
他方、未支給年金については、生計を一にしていた人の生活保障に役立てるべきとの考えから、被相続人と生計を一にしていた人に請求権が認められています。この点を重視して、実務上は、未支給年金は請求権者固有の権利だと考えています。

受け取りが相続放棄に影響するもの

以上で、財産の受け取りが相続放棄に影響しないものを説明してきましたが、受け取りが相続放棄に影響するものも整理しておく必要があります。
現金や預金、家、車、株式等を相続したら、法定単純承認に該当し、相続放棄ができなくなるというのは、わかりやすいと思います。
他方、受け取っても問題ないという誤解の生じやすいものもありますので、以下説明します。

受取人が被相続人本人になっている生命保険

受取人が、被相続人本人と指定されている生命保険金については、「相続財産」に含まれると考えられています(最高裁の判例はなく、学説上の争いはあるところですが、実務上はそのように処理されていると考えられます。)。
受取人が被相続人である以上、生命保険金は被相続人の財産であり、それを取得するのは、相続財産の取得に他ならないためです。したがって、このような生命保険金を取得してしまうと、相続放棄できなくなる可能性があります。
生命保険金であれば受け取っても問題ないと早合点しないようにしましょう。

所得税等の還付金

所得税等の還付金が、相続発生後に支払われることがあります。しかし、これは、支払われたのが相続発生後というだけであり、生死に関係なく、本来還付されるべき金銭です。したがって、被相続人が、死亡時に、還付金を受ける権利を有していたのであり、還付金は相続財産に含まれます。
したがって、還付金を取得してしまうと、法定単純承認となり、相続放棄できなくなる可能性があります。

未払いの給与

被相続人が死亡直前まで稼働していたような場合、未払いの給与があることがあります。これも、還付金と同様、生死にかかわらず、本来払われるべきものです。したがって、被相続人は、死亡時、給与を請求できる権利を有しており、未払い給与は相続財産に含まれます。 したがって、未払い給与を取得してしまうと、法定単純承認となり、相続放棄できなくなる可能性があります。

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相続放棄できるかどうか、判断が分かれるもの

財産の中には、相続放棄できる・できないという判断が分かれるものがあります。
基本的には、そういった財産の受け取りの前に、専門家に相談すべきですが、以下、一例を紹介します。

死亡退職金

死亡退職金を受け取った場合、相続放棄できる場合と、できない場合があります。
死亡退職金の支給に関して、民法の規律とは異なる範囲や順位を定める法令や内部規律がある場合には、受給権者固有の権利だと考えられており、受け取ったとしても、相続放棄は可能と考えられます。
死亡退職金の規定に「遺族」に支払うとだけ定められている場合も、当該死亡退職金が遺族の生活保障を目的としていると考えられることから、受給権者固有の権利であると判断された事例もあります。
他方、遺族の生活保障の目的ではなく、もっぱら、民法の規律を潜脱するためのものであると判断された場合には、死亡退職金が相続財産に含まれ、受け取ることにより相続放棄できなくなる可能性はあります。

高額療養費の還付金

高額療養費の還付金についても、受け取ったことにより想像放棄できなくなる場合と、相続放棄ができる場合があります。
高額療養費の制度は、同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻されるというものです。
還付金は、世帯主や被保険者に支払われるものであるため、これらの人が被相続人の場合には、被相続人が死亡時に有していた相続財産ということになります。したがって、受け取ってしまうと、相続放棄ができなくなる可能性があります。
他方、世帯主や被保険者以外の人が被相続人であれば、被相続人の相続財産ではないため、受け取っても相続放棄は可能です。

受け取っただけならまだ大丈夫、相続放棄したいなら保管しましょう

以上では、受け取りによって相続放棄に影響する・しないという話をしてきました。
その上で、既に相続放棄ができなくなる財産を受け取ってしまったという場合でも、「保管」しているだけであれば、未だ自己のものとして取得しているわけではないので、相続放棄できる可能性があります。
例えば、未払い給与や自宅の現金、預金を、現金で自己の財産と完全に分離して保管しているのであれば、未だ自己のものとして取得したわけではありません。裁判所に丁寧に事情を説明すれば、相続放棄の申述が受理される可能はあります。

財産を受け取ってしまった場合の相続放棄に関するQ&A

受け取った保険金で被相続人の借金を返済しました。あとからもっと多くの借金が判明したのですが、相続放棄できますか?

一度相続の単純承認をしてしまうと、後日、相続放棄をするということは、原則できません。
その保険金が、被相続人を受取人とする生命保険金の場合、相続財産ですから、同生命保険金を受け取り、その金員で相続債務の弁済をしてしまうと単純承認となり、後日の相続放棄はできないと思われます。
他方、相続人が受取人と指定されている保険金を受け取り、相続債務の弁済をすることは、相続人自身の財産から代わりに債務を弁済しただけですので、相続放棄は可能と考えられます。

衛星放送の受信料を払いすぎていたので返金したいと連絡がありました。相続放棄するつもりなのですが、受け取っても問題ないでしょうか?

受信料過払による返還金は、被相続人の生死にかかわらず、払われるべきものです。そのため、被相続人は、死亡時において、過払いの返還金を請求できる権利があり、返還金は相続財産に含まれると考えられます。したがって、返還金を「保管」しておくだけならまだしも、受領し、費消してしまうと、法定単純承認に該当し、相続放棄はできなくなると考えられます。

相続放棄したいのに財産を受け取ってしまった場合は弁護士にご相談ください

受領しても相続放棄ができる財産かどうかは、個々の財産事に個別に判断をしていくことになります。ものによっては、相当程度専門的な知識が要求される財産も有ります。そのため、受領する前に、必ず、専門家に相談されることをお勧めします。
仮に、一般的には受領すると相続放棄できなくなるという財産を受領してしまった場合でも、あきらめるのではなく、ぜひ専門家にご相談ください。
そのような場合でも、適切に事情を裁判所に説明し、説得力のある主張を行うことで、相続放棄の申述が受理される可能性があります。
相続放棄の申述事件を多数扱ってきた弁護士法人ALG&Associatesであれば、お悩みの事実関係と類似する過去の実績も見つかる可能性があります。ぜひご相談ください。

故人に多額の債務があった場合、視野に入れなければならない制度ですが、いつでもできるというわけではなく期間に制限があります。

相続放棄の期限はいつから3ヶ月?期間の数え方

相続放棄の期限は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月間(これを、熟慮期間といいます。)とされ、この期間内に家庭裁判所に対して相続放棄の申し立てをする必要があります。

そして、相続は、被相続人が亡くなった日から開始しますので、熟慮期間の起算点となる、自己のために相続の開始があったことを知ったときとは、具体的には自身が相続人となったことを知った時=被相続人の死亡を知ったときになります。

期限が迫っているからと、焦って手続をすると後悔する場合も…

相続放棄とは、被相続人の財産を全て放棄することを言います。この財産には、プラスの財産もマイナスの財産も含まれます。そして、相続放棄は、一度申述を受理されると取り消すことができません。
そのため、熟慮期間の期限が迫っているからといって、きちんと被相続人の財産を調査せずに相続放棄をしてしまうと、のちのち被相続人に多額の財産があることが判明してもその財産を相続することができなくなり、損をしてしまう可能性があります。

理由があれば相続放棄の期限は延長可能、ただし必ず認められるわけではありません

相続の開始を知ってから3か月の熟慮期間内に、相続放棄をすべきか否かを判断する必要がありますが、その判断をするためには、被相続人の財産がどのくらいあるのか、債務があるのかなど相続財産の調査をする必要があります。しかし、この3か月以内に調査が完了できないなど、相続放棄をすべきか判断できない場合には、例外的に熟慮期間の延長を求めることができます。
そして、熟慮期間の延長は、裁判所が各相続人の事情を踏まえて判断するので一概にはいえませんが、基本的には一度限りで、大体1か月から3か月程度延長することが多いです。

相続放棄の期限を延長する方法

相続放棄の熟慮期間は、家庭裁判所が判断するので、まず、熟慮期間内に、相続人が、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立書類を送付します。
申立てに必要な書類は、申立書と戸籍等です。また、印紙代800円(相続人一人につき)や裁判所からの連絡のための郵便切手が必要となります。
具体的な申立書類や費用は、家庭裁判所のホームページに記載されているので、申立てをする前に確認が必要です。
そして、熟慮期間の延長が必要か否かは、相続人ごとに判断されるので、期限を延ばしたいと考える相続人の一人一人が申請をする必要があります。

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3ヶ月の期限を過ぎてしまったらどうなる?

相続放棄は、3か月の熟慮期間内に申述する必要がありますので、熟慮期間が徒過した場合には相続放棄はできず、全部相続(単純承認)をするのが原則です。つまり故人の借金は無制限に引き継ぐこととなります。

3ヶ月が過ぎても相続放棄が認められるケース

相続放棄は熟慮期間内に申述をしなければならないのが原則です。
しかし、熟慮期間中に遺産は存在しないと信じていて、その信じていたことについてやむを得ない事情があるなど、熟慮期間内に相続放棄をしなかったことに関し特段の理由がある場合には、その旨の説明をきちんとすることで相続放棄が認められる可能性があります。

相続放棄が認められないケース

熟慮期間を徒過した後でも、相続放棄の申述が認められるケースは存在します。
しかし、相続放棄という制度自体について知らなかった(例えば、相続放棄という手続き自体を知らなかったとか、相続放棄という手続きは知っていても熟慮期間があることを知らなかったなど)場合は熟慮期間内に相続放棄の申述をしなかったことについて相当な理由はないと判断され、相続放棄は認められません。
また、被相続人の預貯金の払い戻しをしていたり、不動産の名義変更をしていたりするなど、相続人として行動している場合(法定単純承認)には、相続放棄は認められません。

3ヶ月経過していたら弁護士にご相談ください

熟慮期間を徒過した後でも例外的に相続放棄が認められる可能性はあります。
しかし、裁判所への説明の仕方、証拠の提出の仕方などについて専門的な判断が必要となってきます。熟慮期間が徒過した後でも相続放棄ができないかお悩みの方は、弁護士に一刻も早く相談をしてみてください。

相続放棄の期限に関するQ&A

相続放棄の期限内に手続き完了(裁判所の判断を得る)までいかないといけないのでしょうか?

相続放棄は、熟慮期間内に裁判所に申立て書類を提出する必要がありますが、熟慮期間内に相続放棄の申述の申立てに対する判断を得る必要はありません。

相続後に借金が判明しました。まだ3ヶ月経っていないのですが、相続放棄可能ですか?

熟慮期間内に相続をしている場合には、熟慮期間内に債務が判明したとしても、相続放棄をすることはできません。

亡くなってから4か月後に借金の督促が来ました。借金を知らなかったのですが、相続放棄できないでしょうか?

単純承認(法定単純承認を含む)をしていない場合で、借金の存在を知らなかったことに相当な理由がある場合には、相続放棄ができる可能性があります。

先日相続人であることが判明したのですが、知った日の証明なんてどうしたらいいんでしょうか?相続放棄したいのですが、すでに半年経過しているんです…。

役所からの通知書や税金の督促状などの資料で知った日を証明していきます。
ほかにも様々な情報を駆使して証明可能か試みますので、一度弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

相続放棄の3ヶ月まで、残り10日ほどしかありません。消印が3ヶ月以内なら間に合うでしょうか?それともその日までに裁判所に到着していなければならないでしょうか。

管轄の家庭裁判所が遠方の場合に、郵送での申立てをすることもできます。
この場合、安全性を優先して裁判所での受付を基準として考えるべきでしょう。
相続放棄をする場合には、余裕をもって申立てをすることをお勧めします。

相続放棄の期限は3ヶ月と聞きましたが、第2順位の人の期限は、第1順位の人が放棄後3ヶ月で合っていますか?

第2順位の人の熟慮期間は、相続人となったことを知った日から進行しますので、第1順位の人の相続放棄の申述が家庭裁判所でみとめられたことを【第2順位の人が】知った日から3か月間となります。

相続放棄の期限に関するお悩みは弁護士にご相談ください

相続放棄は、熟慮期間という期間制限がありますし、相続放棄を後から撤回することができないので、相続放棄の申述をすべきか否かは慎重に判断する必要があります。
また、熟慮期間を徒過した場合でも、相当な理由があれば相続放棄の申述が認められることもありますが、その際には、裁判所への説明の仕方も重要となります。
弁護士には、相続放棄についてのこれまでの裁判所の判断情報やこれまでの経験から、アドバイスやサポートをすることができますので、相続放棄をするべきか否か、熟慮期間を徒過してしまったが相続放棄できるのか否かなど、相続放棄の期限に関して悩みがある場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。

離婚問題について、夫婦の話し合いや、裁判所を仲介した話し合いである調停の手続きを経ても解決に至らない場合、最終的には、裁判で争うことになります。
離婚裁判では、協議や調停とは異なり、離婚を求める理由が法律で定めた事由(法定離婚事由)に該当していることを証明しないと、裁判所から離婚を認めてもらえません。

裁判で「離婚を認めてもらう/相手の訴えを退ける」ためには、高度な法的知識を駆使した主張・立証が必要不可欠なため、弁護士に代理人を依頼するのが一般的です。
今回は、離婚裁判についての基礎知識や、全体の流れ、注意点などについて、詳しく解説していきます。

離婚裁判の流れ

一般的に、離婚裁判から離婚の成立までは、

①離婚調停の不成立
②離婚裁判の提起
③口頭弁論
④尋問
⑤口頭弁論終結、判決言い渡し
⑥離婚届の提出

という流れで進行します。
次の項目で、各段階の内容について詳しく解説していきます。

離婚裁判を提起する前に

離婚裁判を提起する前に、理解しておくべきポイントを解説します。

【調停前置主義】
離婚問題をいきなり裁判で争うことはできません。
離婚問題は、特段の理由がない限り、まずは裁判所を介した話し合いの場である離婚調停の手続きを行った後でないと、裁判を起こすことができないという決まりがあります。これを調停前置主義といいます。

【法定離婚事由】
協議離婚や調停離婚では、当事者の合意さえあれば離婚は成立し、離婚の理由が問われることはありません。しかし、離婚裁判で離婚が認められるためには、離婚したい理由が、民法で定める“法定離婚事由”に該当していることを証明しなければなりません。

【有責配偶者からの離婚請求】
不倫をした側やDV加害者側など、離婚の原因を作った当事者のことを“有責配偶者”といいます。有責配偶者から離婚を請求することは、基本的には認められていません。例外的に認められるかどうかは、別居期間、未成熟子の有無、相手方配偶者が置かれる状態等の具体的な事情を総合的に考慮して判断されます。

家庭裁判所に訴状を提出する

離婚裁判を起こすためには、まず管轄の家庭裁判所に対し、訴状等を提出します。訴状等の提出先は、基本的には夫婦どちらかの住所地を受け持つ家庭裁判所です。別居して相手方が遠方に住んでいる場合でも、自分の住所地を受け持つ裁判所に提起して構いません。そのほか、調停を行った家庭裁判所が引き続き裁判を担当する場合もあります。
訴状と一緒に提出が必要な書類や費用については、次の項で解説します。

訴状提出の際に必要な書類と費用

訴訟提起の際に提出が必要な書類や費用については、以下のとおりです。

  • 訴状(裁判所用と相手方に送る用の計2通)
    (自分用の控えも、別途用意しておきましょう)
  • 夫婦の戸籍謄本(原本と写しの計2通)
  • 収入印紙(訴えの内容により金額が異なるため、管轄の裁判所に確認しましょう)
  • 郵便切手(裁判所により金額や内訳が異なるため、管轄の裁判所に確認しましょう)

その他、個別の内容によって、証拠書類や証拠説明書、年金分割のための情報通知書、源泉徴収票などの各種資料が必要になります。
訴状の定型書式は、裁判所のホームページから入手可能です。以下のリンクをご参照ください。

離婚訴訟事件の訴状(裁判所)

第1回口頭弁論期日の通知が届く

原告(訴訟を提起した側)または原告の代理人弁護士が訴状を提出すると、裁判所によって訴状審査がなされ、内容や形式に不備がないか、補正が必要かといった点について判断されます。不備がなければ正式に事件が受理され、事件番号が付けられます。その後、原告と日程を調整したうえで、裁判所により、第1回目の口頭弁論期日が決定されます。
第1回目の口頭弁論期日が決定したら、裁判所から被告(訴訟を提起された側)に対し、裁判期日への通知(呼出状)と一緒に、原告が提出した訴状や証拠等が届けられます。

被告が答弁書を提出

訴状等を受け取った被告側は、訴状等に書いてある原告の主張に対する反論や自分の言い分を「答弁書」という書面にまとめ、呼出状に書いてある期限までに裁判所に提出します。

口頭弁論を行う

口頭弁論とは、裁判官の面前で、訴訟の当事者又はその代理人が、自分の主張の正しさを論じ合い、証拠を出して事実を証明し、裁判官が事実関係を審理していく手続きです。多くの方は「裁判」と聞くと、この口頭弁論をイメージされるのではないでしょうか。
1回目の口頭弁論は、訴状が受理されてから1ヶ月~1ヶ月半後くらいに設定されることが多いようです。その後、必要に応じ、2回目以降の期日が1ヶ月に1度程度の間隔で開催されます。
具体的な審理の流れは次項で解説いたします。

審理の流れ

離婚裁判では、まず、裁判官が、原告と被告両者の主張・立証内容から、裁判中でどのようなことを争っているのか、その核の部分を絞り込みます。そして、その争点となっている事柄の真偽を証明するためには、誰からどのような証拠を出してもらう必要があるのか、どのような方法で調べるのが適当かなどを、裁判官や原告・被告及びその代理人弁護士が一体となって検証していきます。これを「争点整理」といいます。
そして、裁判官は、原告・被告から出された証拠や主張内容を総合的に考慮し、最終的な法的判断(判決)を下すために必要な事実の認定を行っていきます。
この「事実の認定」の詳細については、次項で解説いたします。

離婚裁判における事実の認定

離婚裁判で離婚が認められるためには、「離婚原因が法定離婚事由に該当していること」が必要です。
例えば、「被告が不倫をしたから離婚をしたい」という内容の離婚裁判であれば、原告側は、被告が不倫をしたという証拠(ラブホテルへ出入りする写真や探偵会社からの報告書など)を提出し、不倫をしたという事実を裁判官に認めてもらわなければなりません。
裁判官は、これらの証拠や主張を元に、「被告が不倫をした事実があったか/なかったか」を判断し、最終的な判決の内容を決定していきます。
この事実関係の主張立証が不十分だと、原告の主張は認められず、最終的には裁判で離婚が認められないという可能性もあります。

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証拠調べ

離婚裁判において、口頭弁論で和解に至らなかった場合、証拠調べの手続きが行われます。
離婚裁判における証拠調べでは、裁判官が、当事者から出された物的証拠を検証するほか、当事者本人や本人以外の証人から事実関係を問い尋ね、質問に答えさせる方法(尋問)で、事実関係を認定していきます。
「尋問」の流れについては、次項で解説いたします。

本人尋問や証人尋問

【本人尋問】…訴訟の当事者(原告及び被告)に対する尋問。
① 原告本人尋問
主尋問(原告代理人弁護士から原告に対する質問)

反対尋問(被告代理人弁護士から原告に対する質問)

裁判官から原告に対する質問

② 被告本人尋問
主尋問(被告代理人弁護士から被告に対する質問)

反対尋問(原告代理人弁護士から被告に対する質問)

裁判官から被告に対する質問

【証人尋問】…事件の証人に対する尋問。
主尋問(証人を呼んだ側の弁護士による質問)

反対尋問(証人を呼んでいない側の弁護士による質問)

裁判官からの質問

※証人の方は、本人尋問を法廷でみることは基本的にできません。

離婚裁判の判決

裁判官が事実を認定するために必要な原告・被告からの「主張」「立証」及び「証拠調べ」が尽くされたら、口頭弁論は終結し、判決が言い渡されます。
口頭弁論が終結してから判決が言い渡されるまでには、およそ1ヶ月~2ヶ月ほどかかります。
判決書は、裁判所から原告・被告の双方に郵送されますが、希望すれば裁判所の窓口で受領することも可能です。
離婚裁判が終了するパターンとしては、この「判決言い渡し」の他にも、「和解」「取下げ」があります。それぞれのパターンについては、以下で解説していきます。

和解を提案されることもある

離婚裁判では、裁判官から、和解による解決を勧められることがあります。裁判官からの和解勧告は、必ずしも受け入れる必要はなく、拒否することも可能です。しかし、両者が歩み寄り、話し合いがまとまり、和解案の内容に合意できれば、その時点で和解が成立し、「和解離婚」となります。
裁判に発展するほど拗れた事案であっても、実際は、離婚裁判の半分以上が和解により終了しています(人口動態調査 10-4 統計コード00450011)。和解で解決するケースは多いのです。
なお、一度和解勧告を拒否したとしても、裁判の期日中であれば、両者が合意する限り、いつでも和解することができます。

訴えの取下げにより裁判終了

裁判を提起した原告は、その訴えを取下げることにより、裁判を終了させることができます。被告が取下げることはできません。
また、一度口頭弁論期日が開かれた裁判を取下げるためには、原告は、被告から取下げることについて同意を得なければなりません。

判決に対して控訴できる

原告・被告ともに、裁判所から出された判決の内容に納得できない場合は、上級の裁判所に不服を申し立て、さらなる審理を求めることができます。これを「控訴」といいます。
控訴は、判決書が送達された日の翌日から数えて14日以内に行わなければなりません。

判決後の流れ

裁判所から離婚を認める判決が出され、被告が期限内に控訴しなかった場合、その判決は確定します。判決の確定日をもって、晴れて離婚成立です。
なお、離婚が成立したことを戸籍に反映させる必要があるため、判決確定日を含めて10日以内に、離婚届に判決書の謄本と確定証明書を添えて、役所で手続きを行う必要があります。

離婚裁判にかかる期間

離婚裁判にかかる期間は、事案の内容によって大きく異なるため、一概には言えません。強いて言うなら、短くて半年、長くて2年以上かかる可能性があると見積もっておくと良いでしょう。

よくある質問

離婚届を提出した後に必要な手続きにはどのようなものがありますか?

離婚が成立したら離婚届を提出する必要がありますが、場合によっては戸籍の手続きも行わなければなりません。

【自分の戸籍について】
婚姻時に戸籍の筆頭者でなかった方は、離婚後に婚姻前の戸籍に戻るか(復籍)、新しい戸籍を作るかを選択し、必要に応じて手続きをしなければなりません。

【子供の戸籍と氏について】 離婚後に夫の戸籍から抜ける妻が子供を引き取り親権者となる場合でも、何もしなければ、子供は夫の戸籍に入ったままです。親権者だからといって、自動的に子供の戸籍が妻の方に移り、妻の氏に変更されるわけではありません。
そのため、妻としては、離婚により婚姻前の姓(旧姓)に戻り、子供の氏も自分と同じ旧姓にしたい場合は、

  • 自分が筆頭者となる新しい戸籍を作る
  • 裁判所に「子の氏の変更許可」を申し立てる
  • 子供の氏の変更が認められたら、役所で、子供の戸籍を夫から自分の戸籍に変更する

という一連の手続きが必要になります。

離婚に合意しており養育費のみ争う場合はどのような流れで離婚裁判は進みますか?

原告と被告双方が、それぞれの収入状況を証明できるもの(源泉徴収票や給与明細、確定申告書など)や、養育費の請求額の根拠となる書類(生活費や学費、医療費に関するもの)を証拠として提出し、互いに主張立証を尽くします。その上で、最終的には、裁判所が養育費の額を判断することになります。
なお、養育費には相場の金額が存在するというのが実情です。裁判実務では、養育費の金額は、裁判所が公表する【標準算定方式】という計算方式で計算されます。その計算を簡略化した【養育費算定表】に基づいて、夫婦の収入状況や子供の数、年齢に応じて、機械的に決められるパターンも多いです。

離婚裁判が不成立になってしまったら離婚は諦めるしかありませんか?

必ずしも諦める必要はありません。
基本的には、一度「離婚は認めない」という判決の内容が確定してしまうと、全く同じ内容の裁判を、再び蒸し返して争うことはできません。
しかし、判決確定後に、前回の裁判の時と比べて夫婦を取り巻く状況に変化があった場合は、前回の裁判とは異なる「新たな離婚事件」として、離婚を求めて争うことができます。例えば、

  • 配偶者が新たな不倫をした
  • 配偶者がモラハラやDVを行うようになった
  • 離婚裁判終了後に、5~10年程度の別居の実績ができた

このような事情の変化があれば、前回とは違う新たな係争として、再び離婚を求めることが可能であると考えます。

離婚裁判の流れをケース別で知りたい場合は弁護士にご相談ください

率直に申し上げて、離婚裁判を一般の方が自力で行うのはあまり得策ではないでしょう。
離婚裁判で提出する書面の体裁や内容、期限、それぞれの手続きの流れなどは、全て厳格なルールのもと執り行われています。また、離婚裁判では、感情的に訴えるのではなく、法的な根拠に基づく主張・立証をしなければなりません。
一般の方が、付け焼刃の知識でこれらの離婚裁判の流れを全て理解し、自分の力だけで裁判を有利に進めるのは、現実的には難しいと考えます。
離婚裁判は、「離婚できるか/できないか」また、離婚の条件を決める、最後のチャンスでもあります。
後悔しないためにも、離婚裁判に発展した場合は、お早めに専門家である弁護士にご相談ください。

交通事故に遭い、損害を受けた被害者は、その損害を賠償してもらうために、加害者側の保険会社と示談交渉を行うことになります。

「保険会社からそろそろ治療を打ち切りましょうと言われたが、聞き入れた方がいいの?」「保険会社から示談書が送られてきたが、このままサインしてもいいの?」と疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。

基本的には、一度示談が成立すると、示談で定めた額以上の賠償金を請求できなくなってしまいます。よって、保険会社より提示された示談案に簡単にサインをしてはいけません。

ここでは、交通事故発生から示談成立までの流れ、示談交渉の具体的内容や注意点などについて、説明していきたいと思います。

交通事故後から示談までの流れ

交通事故発生後から示談成立までの一連の流れは下記のとおりとなります。

①交通事故発生
②警察への通報
③加害者の身元、事故状況の確認
④被害者、加害者双方の保険会社への報告
⑤ケガの治療、通院、入院開始
⑥治療終了または後遺障害等級の認定(損害額確定)
⑦示談交渉開始
⑧示談交渉成立(交渉決裂の場合は、民事調停または訴訟へ)

交通事故発生直後にすべきことは?

交通事故発生直後にするべきことは、主に下記のとおりとなります。

①救護措置、危険防止措置|
ケガ人がいるなら、救急車を呼び、ケガ人の救護を行います。また、後続車に事故を知らせるなどして危険防止措置をとります。

②警察への通報
人身事故・物損事故いずれの場合でも、警察への交通事故の報告は道路交通法上の義務となっています。警察に通報しないと、賠償金請求に必要な交通事故証明書を入手することができません。
また、どんなに軽傷でもケガをしているなら、必ず人身事故として警察に届け出てください。人身事故として報告しないと、過失割合などの重要な証拠となる実況見分調書が作成されないため、示談交渉で不利になる場合があります。当日は異常がなくても、後日体に痛みが現れるケースもあります。その時に、保険会社に治療費などを請求したとしても、人身事故での届け出が無いと支払えないと対応されるおそれがあります。

③加害者の身元、事故状況の確認
加害者の氏名、連絡先、車のナンバー、保険会社名などを確認し、控えておきます。また、車の破損状況や事故現場も撮影しておきます。目撃者がいる場合は、名前と連絡先を確認しておいてください。
また、加害者から「ここで口頭で示談してしまいましょう」と言われても、応じるべきではないでしょう。口頭でも示談は成立しますので、適正な賠償金が請求できなくなる可能性があるからです。

④病院での診察
事故が起こったとき少しでも違和感があれば病院に行き、医師の診察を受けるようにしてください。
当日に明らかな異常がなかったとしても、後日痛みが現れる場合があります。しばらく経った後に病院を受診し、「やはりケガをしていた」と主張しても、事故とケガとの因果関係は薄いと判断され、賠償金が請求できなくなるおそれがあるので注意が必要です。

⑤保険会社への報告
警察への報告など、事故現場での措置が一通り終了したら、自分の加入している保険会社に連絡し、事故報告を行います。

治療、通院(入院)開始 ~ 加害者側の保険会社とのやりとり

交通事故に遭ったら、事故後すみやかに、医師のいる外科または整形外科病院の診察を受けてください。整骨院のみの通院となると、医師しか診断書を作成することができないため、賠償金の請求時にケガの内容や程度を説明できず、加害者側の保険会社から十分な補償を得られなくなるおそれがあります。

また、当日に外傷や痛みがなかったとしても、後日痛みが出てくる場合もあります。特に、むちうちの場合は、怪我をしたこと自体が分かりにくく、通院を後回しにしがちです。体に違和感が生じた場合は、すぐに病院に行き、医師に診察してもらうようにしましょう。事故日から受診日までの期間があまりに離れてしまうと、「やはりケガをしていた」と主張しても、事故とケガとの因果関係は薄いと判断され、賠償金が請求できなくなる可能性があるためです。なお、事故から1週間を経過して初めて通院する場合には、治療費について争いになることがよくあります。

保険会社とのやりとりの流れ

事故により負ったケガの治療費は、基本的には、加害者側の任意保険会社が病院に直接支払ってくれます。これを「任意一括対応」といいます。ただし、保険会社や事故状況によっては、任意一括対応してくれない場合がありますので、その際は、被害者がいったん治療費を立て替え、後日、立て替えた分を保険会社に請求することになります。
なお、加害者が任意保険に入っていなかった場合は、加害者側の自賠責保険会社に治療費を請求することが可能です。ただし、金額の上限が定められており、治療費や休業損害、入通院慰謝料などを合計して120万円までとされています。

症状固定

交通事故によってケガを負い、治療を続けた結果、これ以上改善の見込みのない状態になることを「症状固定」といいます。ケガの治療開始時から症状固定時までは、治療費、休業損害、入通院慰謝料などが支払われますが、症状固定になった段階でこれらの支払いは打ち切られます。そして、症状固定時に残った後遺症については、後遺障害等級認定を受ければ、後遺障害慰謝料、逸失利益を請求することができるようになります。

ただ、治療を受けている段階で、加害者側の任意保険会社から「もうそろそろ症状固定なので、治療を打ち切りませんか?」と連絡が入ることがあります。治療が長引くと、それだけ治療費や入通院慰謝料などの金額が上がりますので、保険会社は治療の打ち切りを迫ってきます。しかし、症状固定を決めるのは保険会社ではなくあくまで医師ですので、治療が必要であれば医師と相談のうえ、治療を続けることが望ましいでしょう。

後遺障害等級認定

ケガの治療が終わり、医師から「症状固定=これ以上治療しても改善の見込みのない状態」と判断された時点で、通常のケガ⇒後遺障害の損害賠償のステージに移ります。
「症状固定」と言われたら、まずは、医師に後遺障害診断書を作成してもらい、必要書類を準備し、加害者側の保険会社に提出し、後遺障害等級認定を受けることになります。
後遺障害等級認定を受けなければ、基本的には、後遺障害慰謝料や逸失利益などの賠償金を加害者側に対して請求することができません。
等級認定の審査は後遺障害診断書をもとに行われますので、その内容に記入漏れがないかどうか弁護士などに確認してもらうことをおすすめします。
等級認定申請後、審査機関より認定結果通知書が届きます。通知書と審査に使用した書類は、後遺障害慰謝料や逸失利益などの賠償金の請求の際に必要となるため、保管するようにしてください。

後遺障害の等級が認定されなかったら?

後遺障害等級認定の申請後、審査機関(損害保険料算出機構)より認定結果の通知書が届きます。
その際、例えば、「むちうちで首の痛みが今も治らないのに後遺障害等級に非該当だった」「自分の後遺症は12級だと思っていたのに14級だった」など、目標とする等級が得られない場合があります。

このように、等級認定結果に不服がある場合は、審査機関に対して異議申し立てをすることが可能です。
認定結果をくつがえすためには、改善した後遺障害診断書や主治医の意見書など、初回の申請時に提出した資料より有利なものを提出する必要があります。
なお、異議申し立ての結果が返ってくるまでの期間はおよそ2~6ヶ月程度で内容により幅があります。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします

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示談交渉開始

加害者側の保険会社との示談交渉は、交通事故による損害額が確定した時点で開始することが可能になります。
損害が確定するのは、「ケガが完治した時点」もしくは「後遺障害等級認定申請をした場合には、後遺障害等級認定の結果が出た時点」となります。
早く解決したいというお気持ちは理解できますが、損害が確定しない段階では、保険会社も対応しきれないため、示談交渉が進みません。
ただ、後遺障害等級認定の申請をする場合には、ケガの傷害部分だけ先行して示談を行うということも中にはあります。
また、交通事故で被害者が死亡してしまった場合は、49日法要後に示談交渉がスタートするのが一般的です。

示談の期間はどれぐらいかかる?

交通事故の場合、示談交渉から示談成立までの期間は1~3ヶ月程度になるのが一般的です。
ただ、事案によっては、示談交渉が長期化することがあります。示談交渉が長引く原因としては、「被害者の治療期間が長引く場合」「後遺障害等級認定自体が遅れたり、異議申し立てをしたりした場合」「過失割合や賠償金額などに関して被害者と加害者で意見が対立する場合」が考えられます。
早期に示談成立をさせたい場合は、交渉の専門家である弁護士に依頼することをおすすめします。

示談書が届くまでの期間

被害者が加害者側の保険会社に対して、ケガが完治または症状固定になったことを報告すると、約1ヶ月程度で保険会社より示談案(損害賠償案)が届きます。
被害者が示談案(損害賠償案)に同意すれば、保険会社から示談書や免責証書(被害者が無過失の場合)が届きます。
ただし、後遺障害等級認定を申請中でまだ認定結果が出ていない場合や、加害者が示談案の内容に納得していないなどの場合は、示談書の到着までにさらに時間がかかることが想定されます。
示談案や示談書の到着があまりに遅い場合は、保険会社に連絡をし、問い合わせをしてみましょう。

交通事故の示談交渉で何が請求できるか?

示談交渉開始後、基本的には、まず、加害者側の保険会社から損害賠償金額の提示がなされます。
提示された損害賠償金の費目や金額、過失割合、既払い金(すでに保険会社から支払いを受けている治療費など)などに間違いがないか、確認することが必要です。
交通事故でケガをしたときに請求できる損害賠償金の費目は主に下記のとおりです。

(通常請求できる損害賠償金)
①治療関係費:治療費、入院費、接骨院などの施術代など
②入通院交通費:通院や入院の際に必要となった交通費
③付添看護費:通院や入院の際に付き添い看護をした人に対する日当
④入院雑費:入院で必要となった日用品雑貨費や通信費など
⑤入通院慰謝料:事故のケガによって入通院を強いられた精神的苦痛に対する慰謝料
⑥休業損害:事故のケガによって仕事を休んだ間の収入の減少分。無収入の主婦や子供なども請求できる場合があります。
⑦物損に関する賠償金:事故により壊れた車や所持品などに対する賠償金

(後遺障害認定を受けた場合に請求できる損害賠償金)
①後遺障害慰謝料:事故で後遺障害が残ってしまった精神的苦痛に対する慰謝料
②後遺障害逸失利益:事故によって後遺障害が残ってしまったことにより失われた将来の収入分

(死亡した場合に請求できる損害賠償金)
①死亡慰謝料:交通事故により死亡させられた精神的苦痛に対する慰謝料。
②葬祭関係費:葬儀や法要、仏具購入などにかかった費用
③死亡逸失利益:事故によって死亡したことにより失われた将来の収入分

損害賠償金の計算は複雑な判断を必要としますので、一人で示談書の内容を確認するのは難しいと思われる方は、弁護士に相談することをおすすめいたします。

死亡事故の示談交渉について

死亡事故の場合は、被害者が亡くなられたと同時に損害額がほぼ確定しますが、死亡事故の示談交渉は、49日法要の終了後に開始されるのが一般的です。
また、被害者が亡くなられた場合は、ご遺族が保険会社と交渉することになりますので、ご遺族の方のお気持ちや体調を優先し、準備ができた段階で示談交渉を開始するというケースもあります。

示談交渉を自分で(被害者が)行う場合の注意点

示談交渉を行う際に必要なことは、加害者側の保険会社の提示を鵜呑みにしないということです。
保険会社は賠償金を支払う立場です。支払いを抑えるため様々な説明をして賠償金の減額をはかってくるはずです。保険会社の意見に惑わされず、常に冷静に「保険会社の言うことは正しいのか?」「賠.償金の項目や計算はあっているのか?」と検討することが必要です。 基本的には、一度示談が成立すると、示談で決めた金額以上の賠償金を請求できなくなってしまいます。よって、提示された示談案に不満がある場合は、決して署名をしてはいけません。

保険会社より提示された示談金額が正しいか検討するには、賠償金に関する専門的知識が必要ですので、被害者が一人で判断するのは難しいと思われます。
示談交渉を行うことに不安があるという方は、弁護士に相談することをおすすめします。

示談交渉成立

一度示談が成立すると、基本的には、示談の内容を覆すことはできず、示談で定めた額以上の損害賠償金を請求できません。
よって、加害者側の保険会社より提示された示談案に納得がいかない場合は、署名せず、専門家にご相談ください。「勘違いしていた」「無理やり示談させられた」等の主張は、実務上ほぼ認められません。示談内容に納得してから、示談書に署名するようしてください。

示談から支払いまでの期間

示談交渉成立から示談金が支払われるまでの期間は、およそ1か月程度と言われています。
示談成立後は下記のようなスケジュールで進行します。

①示談成立
②保険会社から示談書が送付される。
③示談書に署名、捺印して、返送する。
④示談金が振り込まれる。

示談金が1か月経っても振り込まれない場合は、保険会社に連絡して問い合わせをしてみましょう。

交通事故の示談交渉についてお困りの方は弁護士にご相談ください

交通事故の被害に遭い、怪我を負った場合は、事故後なるべく早い段階で、弁護士に相談することをおすすめします。

治療中の段階で弁護士に依頼すれば、慰謝料等の請求に必要な通院頻度、後遺障害等級認定申請に必要な検査や資料などのアドバイスが受けられるため、安心して治療に専念できるというメリットがあります。
また、弁護士が介入すれば、示談に必要な書類の作成や資料収集などを代行して行いますので、被害者の負担が軽減されます。何より、交渉のプロである弁護士が示談交渉しますので、賠償金の増額が認められる可能性も高まります。

「今後の治療や保険会社との示談交渉について不安がある」「保険会社から提示された示談金額に納得がいかない」というような場合は、ぜひ、交通事故に精通した弁護士が所属する弁護士法人ALGにご相談ください。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。