
監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士
配偶者からの暴力や暴言、いわゆるDV(ドメスティックバイオレンス)を理由に離婚する場合、DVを行ってきた相手に慰謝料を請求できる可能性があります。相手が怖くて慰謝料なんて請求できない、とにかく早く縁を切りたい、と思っている場合でも、離婚後の生活を経済的に安定させるためには、しっかり慰謝料を請求するべきです。
この記事では、
- DVによる離婚の慰謝料の相場
- DVによる慰謝料を請求するために必要なもの
- DVによる離婚で慰謝料を請求する流れ
などについて、分かりやすく説明いたします。
DVで離婚する場合の慰謝料相場はいくら?
DVによる慰謝料の相場は、100万円前後となることが多いと言われています。ただし、DVがあれば必ず100万円の慰謝料が認められるわけではなく、DVの程度などによって、慰謝料が数十万円程度しか認められないこともあれば、300万円という高額の慰謝料が認められることもあります。
慰謝料が高額になる要素
DVの回数が多い、期間が長い、暴力による怪我や心的外傷(PTSD)など結果が重い、という場合は、慰謝料が高額になりえます。DVが日常的・継続的に行われ、長期間の入院が必要になった場合には、慰謝料が高額になることが多いです。
また、婚姻期間が長かったり、未成年の子どもが多かったりすると、離婚による影響が大きいということで、慰謝料が高くなる傾向にあります。
慰謝料を請求するにはDVの証拠が必要
慰謝料を請求するには、DVの証拠を集めておく必要があります。証拠がなければ、相手が「DVなんてしていない」と否定した場合に、相手や裁判官を説得することができないからです。DVの証拠としては、以下のようなものが有効と考えられています。
- DV中の音声や動画
- DVによるケガを撮影した写真
- ケガを負って治療したときの診断書
- 相手が壊した室内の壁や家具などの写真
- 警察など公的機関へ相談した記録
- DVを受けた日時や内容を詳細に記録したメモや日記
DVによる離婚で慰謝料を請求する流れ
①話し合いで請求する
まずは、当事者間で、直接慰謝料を請求することができます。ただし、暴力を振るってくる相手に、面と向かって話し合うのは危険です。安全な場所に別居したうえで、電話やメールなどで、慰謝料を請求する意思を伝えましょう。
また、過去に受けたDVを思い出し、相手に直接慰謝料を請求することに、恐怖感や拒否感を感じることもあります。そのため、弁護士に交渉の代理人を依頼することで、過度な負担なく、相手に慰謝料の請求をすることができます。
②離婚調停を申し立てる
相手への恐怖から直接交渉することはできない、また、交渉しても話合いが折り合わなかったという場合には、裁判所に離婚調停を申し立て、離婚調停の中で話し合うこともできます。
離婚調停では、調停委員をとおして相手と話合いを行うので、相手と顔を合わせる必要がありません。また、第三者である調停委員が、客観的な立場から、相手に慰謝料を支払う必要性を話してくれるので、相手が自分の非を認めて、慰謝料の支払いに応じる可能性があります。
③離婚裁判で請求する
離婚調停でも相手が慰謝料の支払いに応じない場合、慰謝料を請求するためには、裁判(離婚裁判)を起こす必要があります。離婚裁判では、裁判官がDVの事実を認めて、慰謝料の支払いを命じる判決を出せば、相手は慰謝料を支払わなければいけません。
離婚裁判で重要なのは、DVの証拠です。裁判官に慰謝料の請求を認めてもらうためには、相手がDVを行った証拠が必要です。慰謝料を請求したいと考えているなら、別居前からDVの証拠を集めておくとよいでしょう。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚後に慰謝料請求する場合は時効に注意
離婚をした後でも、相手に慰謝料を請求することはできます。相手から離れることを優先して、慰謝料を請求せずに離婚してしまった場合でも、後から慰謝料を請求することはできるので、一度、弁護士に相談することをお勧めします。
ただし、慰謝料の請求には期間制限があり、離婚から3年が経過すると、時効により、慰謝料を請求することができなくなります。時効の成立まで時間がない場合は、内容証明郵便を送ることで、時効の成立が6か月猶予されます。
相手がDVの慰謝料を支払わない場合の対処法
話合いや裁判で慰謝料の金額が決まった場合でも、相手が正当な理由なく慰謝料を支払わなくなることがあります。以下では、相手が決められた慰謝料を支払わない場合の対処法を説明します。
履行勧告・履行命令
裁判所に履行勧告、履行命令を求めることが考えられます。
履行勧告とは、家庭裁判所が慰謝料の支払いの有無を調査したうえで、債務者に、慰謝料を支払うように、電話や書面で催促してくれる制度です。あくまで、支払いをするよう勧めるだけなので、勧告に従わない場合のペナルティはありません。
履行命令は、期限までに慰謝料を支払うよう、家庭裁判所が命令を出すもので、正当な理由なく命令に従わない場合、10万以下の過料が課されることがあります。履行勧告と比べると、強制力はありますが、制裁が高額とは言えないので、履行命令に従わない人もいます。
強制執行
履行勧告や履行命令よりも強力な手続きとして、強制執行があります。
慰謝料の支払いを命じる内容の、裁判所で作成された調停調書、審判調書、和解調書、判決書がある場合、また、慰謝料を支払わないときには強制執行を受け入れることが書かれた公正証書が作成されている場合、相手方の給料や預金を強制的に差し押さえて、慰謝料の支払いにあてることができます。
DVを行う配偶者への慰謝料請求は弁護士への依頼がおすすめ
DVを行ってきた配偶者に、慰謝料を支払うように交渉することは、心理的な抵抗が大きいでしょう。弁護士に依頼をすれば、弁護士が代わりに相手と交渉してくれますし、調停や裁判などの複雑な手続きも任せることができます。
また、慰謝料を請求する前に相談すれば、慰謝料を請求するために有効な証拠についてアドバイスをして、その後の慰謝料請求を、より有利に進めることができます。
弁護士法人ALGの解決事例
相手が不貞行為(浮気)をしていたうえ、依頼者にDVを行っていました。交渉で受任したところ、相手は離婚を拒否し、慰謝料の減額まで要求してきました。そこで、弁護士が、相手には慰謝料を支払う法的義務があり、慰謝料を支払わないのであれば、調停や裁判まで行うことを主張しました。
弁護士が粘り強く交渉した結果、相手は離婚と慰謝料の支払いに応じました。裁判まで進めば、慰謝料を増額できる可能性はありましたが、ご依頼者様が早期解決を希望されたため、裁判で増額を求めることはせず、交渉で解決しました。
DVの慰謝料に関するQ&A
一度の暴力でも慰謝料請求できますか?
一度の暴力でも、慰謝料を請求することはできます。ただ、日常的に暴力が行われていない場合、十分な証拠が集められていないことが多く、証拠がなければ、慰謝料の請求が認められないか、慰謝料請求を認めたとしても金額は低くなってしまいます。
暴力が一度しか行われなかったのであれば、暴力が行われた経緯や、暴力の結果、怪我やトラウマでどのような精神的苦痛を受けたかについて、できる限り証拠を集めて、丁寧に主張と立証をする必要があります。
夫が物に当たることを理由に慰謝料を請求できますか?
身体に対する直接的な暴力がなくとも、物に当たる、暴言を吐くといった間接的な暴力も、慰謝料の原因になります。
ただ、身体に対する暴力と比較すると、怪我や精神的苦痛の程度が小さいと評価されるため、慰謝料の金額が低くなる又は慰謝料が認められない傾向にあります。そのため、直接的な暴力がない場合、どうすれば慰謝料を請求することができるのか、一度弁護士にご相談ください。
DVの慰謝料請求は弁護士にご相談下さい
DVを行う配偶者に、直接慰謝料を請求するのは、相手を刺激するおそれがあり、非常に危険です。
弁護士にご相談いただければ、必要な証拠の集め方、別居の時期や別居先に関するアドバイスを行いながら、安全に交渉することができます。また、交渉がまとまらず、調停や裁判を行う場合でも、経験豊富な弁護士が代わりに手続きを進めることで、負担を軽くすることができます。
早期に、離婚問題の経験豊富な弁護士にご相談いただければ、何ができるか、どうすればよいかということについて、適切なアドバイスを行うことができます。DVでお悩みの方は、まずは一度、弁護士法人ALGにご相談ください。
配偶者からDVの被害を受けている場合、離婚をする際に、離婚理由としてDVの存在を主張したり、DVに基づく慰謝料を請求することができる可能性があります。しかし、DV加害者が簡単に離婚や慰謝料請求に応じてくれるとは限りませんので、こちらの主張を認めてもらうために、DVに関する客観的な証拠を揃えていくことが必要になります。
本記事では、DV被害者の方に向けて、DVに関する必要な証拠や証拠を集める方法などについて解説していきます。
DVで離婚・慰謝料請求するには証拠が必要
DVは家庭内で起こることが多く、客観的証拠の用意は簡単ではないことは多いとはいえます。しかし、DV加害者が、DVを否定した場合に、こちらの主張を認めてもらうためには、DVに関する証拠を用意する必要が生じてきますので、どのような証拠が必要となるかをきちんと把握し、可能な限りで証拠集めをすることが重要といえます。
DVの証拠になるのはどんなもの?集める方法は?
DVの証拠になり得るものにはいろいろな種類があります。それぞれの詳細は、以下で解説していきます。
DVを認めてもらうための証拠は、証拠が1つだけでは決定的な証拠にはならないとしても、いくつかの証拠を合わせることでDVを証明することができることもありますので、DVの証拠はできるだけ多く残しておくべきだといえます。
- 怪我の写真
- DVを受けたときの診断書
- DVの様子を記録した音声・動画
- DVを受けたことが記載してある日記・メモ
- 警察や配偶者相談支援センター等への相談記録
- 荒れた部屋、壊れた物品など被害状況の写真
怪我の写真
相手方のDVでケガをした場合、携帯で撮影したものでよいので、怪我の状態を写真に残しておくべきです。怪我の写真を見ることで、裁判所もDVの程度や悪質性を判断しやすくなりますし、怪我の写真と診断書を合わせて提示すれば、証拠価値をより高める効果も期待できます。
怪我の状況を正確に記録するため、DVによってけがをしたあとはできるだけ早く写真を撮ると良いでしょう。
医師の診断書や受診歴
医師の診断書や受診歴は、DVの有力な証拠となるものです。そのため、些細な怪我でも放置せず、医師の診察を受けておくことが重要ですし、必要に応じて、継続的な通院をしておくことも重要です。また、DVで怪我をした場合だけでなく、DVが原因でうつ病やPTSD、不眠症などの精神疾患を発症した場合も、診断書の取得、継続的な通院をおすすめします。
通院をした際には、可能であれば、診断書やカルテなどにDVが原因であることを記載してもらうことで、証拠としての有効性が高まるといえます。
DVの様子を記録した音声・動画
DVを受けている場面を記録した音声・動画は、DVに関するもっとも有効な証拠になり得るものだといえます。例えば、配偶者から殴られたり蹴られたりしている様子、配偶者が暴言を吐いている様子が記録できると証拠として効果的です。
もっとも、いつDVがあるか分からない中で録音、録画を試みることは簡単ではなく、スマートフォンのカメラをオンにした状態で棚の隙間にセットしたり、ICレコーダーをポケットに忍ばせたりする方法がありますが、DV加害者に録音、録画をしようとしていることが知られると、より激しいDVにつながるおそれがありますので、証拠の準備は慎重に行う必要があります。
また、相手がDV行為を自白する様子や、DV行為を謝罪する発言なども、DVに関する証拠となり得ます。
DVを受けたことが記載してある日記やメモ
DVの状況を記したメモや日記も証拠の1つではありますが、メモや日記は主観的な認識を記すものであるため、客観的な証拠として不十分と言わざるを得ず、メモや日記以外の証拠も必要だと考えておく必要があります。
メモや日記の証拠価値を少しでも高めるうえでは、DV被害を時系列に沿ってその都度細かく記録しておくことがポイントであり、何もなかった日は何もなかったと記載しておくことを含めて、なるべく毎日継続的な記録を作っておくことも重要です。
警察や配偶者暴力相談支援センター等への相談記録
DV被害について、警察や相談機関に相談をしたことがある場合、当該相談機関での相談記録もDVの証拠になり得ます。相談先には、DVを受けた日時や内容が記録されており、第三者が作成した資料という意味で、こちらの主張を裏付けるのに役立つ可能性があります。
また、相談とは少し観点が異なりますが、裁判所での手続きで保護命令の発令を求める申し立てを行っている場合には、保護命令に関する事件記録も離婚をする際のDVに関する証拠になります。
荒れた部屋など被害状況の写真
配偶者の暴力が原因で荒れた部屋、破られた服、壊されたものなどの被害状況の写真もDVの証拠になり得るものです。DVについては、怪我の写真そのものだけではなく、怪我をした際の被害状況に関する写真も、DVの存在を複合的に立証していくことに役立ちます。
モラハラ(精神的DV)を受けている場合
DVには、いわゆるモラルハラスメントのような精神的な暴力(精神的DV)も含まれます。ただし、精神的DVは目に見てわかるものではないため、第三者からすると被害が分かりにくく、身体的DVを比較して証明しづらいのが難点です。
精神的DVの証拠になり得るものとして挙げられるのは、侮辱や人格否定をされている内容の手紙、メール、LINEのやりとりなどになります。
経済的DVを受けている場合
「生活費を入れてもらえない」、「生活費はもらえたが金額が明らかに足りない」などの状況は、経済的DVにあたることがあります。経済的DVの証拠としては、生活費を要求しても、断られたことがわかるメールやLINEの履歴などがあります。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
DVの証拠が不十分、または証拠がない場合は離婚できない?
DVに関する証拠がないからといって、離婚自体ができないわけではありません。相手と話し合って合意が得られれば、証拠の有無にかかわらず、離婚も可能ですし、慰謝料の請求も可能です。
一方、相手が離婚や慰謝料の請求に応じない場合には、やはりDVの証拠の有無が重要になってくることになり、離婚手続は、最終的に離婚裁判で争うことになりますので、裁判所が重視する客観的証拠があるかどうかが重要となります。
DVの証拠を集めるポイント
軽微な怪我でも病院に行く
DVで受けた怪我が軽微だからといって通院を控えるのは適切ではありません。怪我自体は放置しても治癒するようなものであったとしても、DVを受けたことの証拠を残す意味で、軽微な怪我でも通院をして、必要に応じて、診断書を取得しておくことが重要となります。
メールは消さずに残しておく
身体的DVにしても、精神的DVにしても、配偶者とのメールのやりとりは、DVを裏付けたり、推認させたりする証拠になることがあります。そのため、配偶者とのメールのやりとりは消さずに保存しておくべきであり、携帯電話の機種変更時にはきちんとバックアップの手続きを確認しておく必要があります。
LINE等のメッセージアプリはスクリーンショットを残しておく
近年ではスマートフォンを利用している当事者もかなり多く、配偶者とのやり取りにLINE等のアプリを利用していることも増えています。LINE等のアプリ内でのやりとりは、アプリの不具合などで消えてしまうおそれがありますので、DVの証拠になりそうなものについてはスクリーンショットでも残しておくべきだといえます。
DV加害者と離婚したいときは弁護士に相談してください
DVが原因で離婚するには、DVに関する証拠を十分揃えて、適切な流れで離婚の手続きを進めることが重要です。しかし、DVを行うような人と、簡単に話し合いがまとまるとは限りませんし、話し合いの最中に再度DVの被害が発生する危険もあります。
DV加害者と離婚をしたいとき、弁護士に依頼すれば、DVの証拠集めに関するアドバイスをもらうこともできますし、自らがDV加害者と関わらないで手続きを進めることもできます。弁護士法人ALGは、離婚問題の知識・経験豊富な弁護士が揃っていますので、DVから解放されたいとお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。
遺言書を作成しておくと、トラブルを防止できる可能性があります。しかし、遺言書の作成方法や内容によっては、トラブルを引き起こしてしまうおそれもあります。
この記事では、遺言書があった場合のトラブル事例や、遺言書を発見できないことによるトラブル、遺言執行者に関するトラブル、遺言書でトラブルにならないための対策等について解説します。
遺言書があった場合のトラブル事例
遺言書を勝手に開封した
遺言書を発見したときに、内容が気になったとしても、勝手に開封してしまうと5万円以下の過料に処せられるおそれがあります。また、他の相続人などから、遺言書の改ざん等を疑われてトラブルになるリスクもあります。そのため、遺言書を発見しても、勝手に開封してはいけません。開封する前に、家庭裁判所において検認を受けましょう。
なお、遺言書が公正証書遺言である場合には、被相続人の手元にあるのは原本ではないため、開封しても問題ありません。もしも遺言書を誤って開封してしまったら、その状態のままで、家庭裁判所の検認を受けましょう。開封した事実を隠そうとして破棄する等の行為は、相続する権利を失うおそれがあるため厳禁です。
遺言書の字が汚くて読めない
被相続人が自筆した遺言書は、癖が強かったり、字が汚かったりすると、誰にも読めないおそれがあります。また、あまりにも達筆であると、かえって字が読めなくなることもあります。それ以外にも、保管しているうちに汚れる等して、文字が読めなくなるおそれもあります。
文字が読めない場合には、筆跡鑑定や科学的鑑定によって判読を試みる必要があり、それでも読めない部分については、無効となる確率が高いでしょう。
日付が特定できない・誤った日付が記載されている
遺言書を有効なものとするためには、作成した日付を記載する必要があります。そのため、日付が記載されていない遺言書は無効となります。また、「吉日」等の文言を用いていると、作成した日付が特定できません。作成日を特定できない遺言書は無効となるため、必ず日付は明記しましょう。
なお、誤った日付が記載されている場合、その日付が明らかな誤字等であり、本当の作成日が特定できるのであれば有効となる可能性が高いです。しかし、遺言書の有効性を巡るトラブルを招くおそれがあるため、間違いのない日付を記載することは重要です。
遺言内容が曖昧
遺言書の表記が曖昧だと、その解釈を巡るトラブルが発生するおそれがあります。例えば、「自宅は息子に、別荘は娘に相続させる」等の記載はリスクが高いと考えられます。なぜなら、自宅とは家屋だけなのか、家屋が建っている土地も含むのかが分からないからです。
また、別荘が複数存在する場合に、娘に相続させるのが別荘のすべてなのか、一部なのかも分かりません。さらに、息子や娘が複数いると、息子や娘の人数によって等分するのか、特定の息子や娘をイメージして記載したのか等が分からなくなってしまいます。
以上のことから、家屋と土地は基本的にそれぞれ明記して、登記記録に記載されている所在や地番などを明記する等の対応が必要となります。
遺言書の内容に納得いかない
被相続人が遺言書を作成していた場合、相続財産の取り分が年齢順に多くなっている等、公平に感じられない内容となっていることがあり、納得できない相続人とトラブルになるおそれがあります。
また、遺言書による分配が均等になっている場合であっても、相続人の1人だけが被相続人と同居して面倒を見ていた等の事情があると、その相続人が納得しないことがあります。納得していない相続人が自分だけである場合には、遺言書の内容を覆す方法として、主に以下のようなものが考えられます。
- 遺言書が無効となる原因がないかを確認する
- 他の相続人や受遺者等に、遺産分割協議を持ちかける
- 遺留分が侵害されている場合には、遺留分侵害額請求を行う
遺言書を無理やり書かされた可能性がある
被相続人が生前に言っていたことと、相反する遺言書が作成されている等、無理やり書かされた可能性があるとトラブルになることがあります。脅迫されて作成した遺言書は無効となりますが、被相続人が脅迫されたことを客観的な証拠により証明する必要があります。
また、被相続人が遺言書を自分で書く能力を失っている場合に、相続人等の他人が手を添えて書くと、他人の意思が遺言書の内容に影響したかについて判断されることになります。なお、脅迫によって遺言書を作成させた者は相続欠格となり、相続権を自動的に失うことになります。
相続欠格について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
相続欠格になる5つの理由と欠格者が出た場合の相続順位想定してない相続人が現れた
遺言書によって、配偶者やその子等が存在を把握していなかった隠し子や、前妻の子がいたことが明らかになるケースがあります。配偶者等としては、遺言書をなかったことにしたくなるかもしれませんが、遺言書を破棄すると相続欠格となるため、相続する権利を失ってしまうおそれがあります。
想定外の相続人が現れた場合であっても、感情的にならず、冷静な対応を心がけましょう。直接の話し合いが難しければ、専門家に代理人になってもらうことも検討しましょう。
家族以外に財産を渡すと書かれていた
遺言書に、被相続人が世話になった人や介護施設等に相続財産を遺贈すると書かれていた場合、相続財産を渡したくないと考える相続人とトラブルになるおそれがあります。
このような場合には、遺贈の相手方と話し合い、放棄してもらう方法が考えられます。遺贈の相手方の同意がなければ、遺言書と異なる内容で遺産分割をすることはできないので注意しましょう。また、遺言書を破棄すると相続欠格になるため、遺言書の存在を隠蔽してはいけません。
寄与分を主張された
寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加について、特別の貢献をした相続人に認められる相続財産の取り分の増加です。遺言書による分配に納得せず、寄与分を主張する相続人がいるとトラブルに発展するおそれがあります。
遺言書による分配と寄与分では、基本的に遺言書の内容が優先されるため、相続財産のすべてを遺言書によって分配されてしまうと、寄与分を取得することはできなくなってしまいます。ただし、遺言書によって分配されていない相続財産があれば、寄与分を主張できる可能性があります。
寄与分について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
寄与分とは|請求の要件と計算方法遺産分割協議後に遺言書が見つかった
遺産分割協議の後で遺言書が発見されたケースであっても、基本的には遺言書に従って相続財産を分配する必要があるので、納得できない相続人等とトラブルになるおそれがあります。
なお、相続人の全員と受遺者、遺言執行者が同意している場合には、遺言書とは異なる方法で相続財産を分配することができます。そのため、すでに行った遺産分割協議に従って相続財産を分配することも可能です。
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遺言書が無かった場合のトラブル事例
被相続人が遺言書を作成したと言っていた場合に、その遺言書を発見できなければ、いつまでも相続手続きを進められないためトラブルになるおそれがあります。しかし、遺言書が後から発見されると、基本的にはその内容に従わなければなりません。そのため、なるべく遺言書を探す必要があります。
遺言書が保管されている可能性のある場所として、被相続人の自宅や銀行の貸金庫、親しい友人に預けている等が考えられます。また、自筆証書遺言であれば法務局に預けられている可能性もあり、公正証書遺言であれば公証役場に原本が保管されています。
なお、相続人が必死に遺言書を捜索することのないように、遺言書の所在は分かりやすくしておく必要があるでしょう。特に、相続手続きが終わらなければ、銀行の貸金庫を開けてもらうことは難しいので、遺言書を入れてはいけません。
遺言執行者に関するトラブル事例
遺言執行者が指定されていない
遺言執行者が指定されていないと、遺言書に記載されていたとしても、子の認知や相続人廃除等ができないため、家庭裁判所に申し立てて遺言執行者を選任してもらうことになります。
また、一部の手続きを除いて遺言執行者を選任する義務はありませんが、相続人全員で手続きを行う必要が生じて手間がかかったり、自身の取り分に納得していない相続人の協力を得られなかったりするおそれがあります。遺言執行者がいれば、手続きをスムーズに進めることが可能となります。
遺言執行者が任務を怠る
遺言執行者に選任された者が専門家ではない場合、相続のことがわからない、あるいは相続手続きが大変である等の理由で、ほとんど何もしないケース等があります。このようなケースでは、遺言執行者に相続手続きの履行を請求する方法や、家庭裁判所に遺言執行者の解任を申し立てる方法があります。
遺言書でトラブルにならないための対策
遺言書によってトラブルを引き起こさないようにするために、主に以下のようなことに注意しましょう。
- 元気なうちに作成しておく
- 法律上定められた様式を守り、あいまいな表現をしない
- 遺留分を侵害しないように相続財産を分配する
- 公正証書遺言を作成する
- 遺言執行者を指定しておく
- 弁護士などの専門家に作成のサポートを依頼する
- 作成した遺言書は専門家に預ける
遺言書に関するトラブルは弁護士にお任せください
遺言書が作成されていると、相続人の全員で相続財産の分配について話し合う必要がなくなるので、手間を減らし、財産の奪い合いを防止できる等のメリットがあります。
しかし、遺言書がトラブルの原因となる可能性もあるため、慎重に作成することが求められます。また、遺言書の内容に納得できない相続人等が、どうにかして自分の取り分を増やそうとすることも考えられます。
そこで、遺言書を作成したい方や、遺言書が原因となったトラブルを抱えている方は弁護士にご相談ください。特に、相続トラブルは当事者だけで話し合うと感情的になりやすく、解決が遠のいてしまうことがあるため、なるべく早期の相談が重要となります。
交通事故の示談交渉では過失割合で揉めやすく、示談交渉が難航してしまうことも少なくありません。被害者・加害者双方が自分の過失割合を主張するだけでは示談交渉はまとまらないため、過失割合で揉めた場合の対処法を知っておくことで、有利に示談交渉を進めることができるでしょう。
この記事では、交通事故の過失割合で揉める理由や、特に揉めやすい4つのパターンと対処法について解説していきます。ぜひご参考ください。
交通事故の過失割合で揉める理由とは?
交通事故の過失割合で揉める理由には、以下のようなものが考えられます。
- 損害賠償の金額に影響するため
- 警察は過失割合に関与しないため
- 事故状況の食い違いがあるため
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
損害賠償の金額に影響するため
過失割合で揉める大きな理由として、「被害者の過失分は損害賠償金が減額される(過失相殺)」という点が挙げられます。
【例】
・過失割合9(加害者)対1(被害者)の場合→10%損害賠償金から減額される
・過失割合8(加害者)対2(被害者)の場合→20%損害賠償金から減額される
このように、被害者の過失割合が大きくなれば過失相殺される割合も大きくなり、受け取れる損害賠償金が少なくなってしまいます。反対に、加害者側は被害者の過失割合が大きくなればなるほど、支払う損害賠償金を少なく済ますことができます。そのため、被害者・加害者双方にとって譲れない点となります。
警察は過失割合に関与しないため
「過失割合を決めるのは警察」と思われている方も少なくないでしょう。しかし、実際には被害者と加害者が事故の状況から話し合って過失割合を決定します。一般的には、双方の保険会社や代理人弁護士が示談交渉で話し合って決めていきます。
もっとも、事故の状況は被害者側、加害者側で認識が異なることも多く、双方の主張の食い違いが揉める原因となります。
事故状況の食い違いがあるため
事故の状況は、事故の両当事者間で大きく食い違うことがあります。交通事故では、警察が被害者と加害者に事故の話を聞き、「実況見分調書」が作成されます。しかし、大きな事故で被害者が意識不明であったり、救急車で運ばれたりすれば、加害者から聞いた話だけで実況見分調書が作成されてしまいます。
こうした事情から、被害者の思う事故状況とは異なる内容となってしまうケースもあるのです。入院や治療で実況見分などに立ち会えなかった場合は、後日警察が持ってくる実況見分調書をよく確認し、自分の意見をきちんと伝えるようにしましょう。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
過失割合について揉めやすい4つのパターン
過失割合について揉めやすい4つのパターンとその対処法について見ていきましょう。
①交通事故に関する証拠が不足している
過失割合は事故状況により決まるため、以下のようなものが重要な状況証拠となります。
【交通事故状況を示す証拠】
- ドライブレコーダーの記録
- 事故現場付近の監視カメラの記録
- 目撃者の証言
- 事故直後に撮影した事故現場、車などの写真
- 事故の実況見分調書
- 交通事故証明書
当事者であっても、事故の瞬間を正確に認識しているとはいえないため、このような証拠がないと双方の言い分に食い違いが生じ、過失割合について揉めやすくなります。
証拠が無い場合の対処法
証拠がない場合は、目撃者の証言や取得可能な書類をできる限りそろえることが重要です。また、自分の車にはドライブレコーダーを搭載していなくても、相手の車に搭載している場合もあるため、提出を求めましょう。
以下の書類はご自身で揃えることが可能なものです。ご確認ください。
〈実況見分調書〉
警察が事故現場で当事者立会いのもと、事故現場の状況や発生状況を調査して内容をまとめた刑事記録。
〈供述調書〉
警察が事故当事者から事故状況について聞き取った内容を記録したもの。
〈診断書〉
怪我の大きさや負傷した箇所から事故状況をある程度推測することが可能。
〈車両修理見積書〉
車両の損傷具合や損傷個所から事故状況をある程度推測できる。
②損害賠償額が大きい
交通事故の被害が大きいと、それだけ請求できる費目も多くなり、損害賠償額が大きくなる傾向にあります。例えば、過失割合9(加害者)対1(被害者)の事故だとしても、損害賠償額が100万円の事故と1000万円の事故では、以下のように被害者が受け取れる損害賠償金が大きく変動します。
- 損害賠償金が100万円の場合 ⇒被害者が受け取れる金額:90万円
- 損害賠償金が1000万円の場合 ⇒被害者が受け取れる金額:900万円
このように、損害が大きい事故では加害者側の支払金額も増えるため、少しでも自社の損失を減らそうと、相手方保険会社は被害者の過失割合を大きく主張してくる可能性があります。
損害賠償額が大きい場合の対処法
損害賠償額の大きい事故の場合は、以下の順に対応しましょう。
- 相手方保険会社に過失割合や損害賠償金の根拠を聞く
示談交渉では、一般的に相手方保険会社から過失割合や損害賠償額が記載された示談案が提示されます。その内容を確認し、以下の点について書面で回答を求めましょう。
・過失割合をどのように出したのか
・どのような過去の判例を参考にしたのか - 弁護士に確認する
相手方保険会社から書面で回答をもらったら、弁護士にそれが正しいのか確認してもらいましょう。交通事故に詳しい弁護士に確認してもらうことで、相手の根拠が適切であるかどうかの判断ができ、過失割合を修正できる可能性が高まります。
③どちらが悪いか判断がしにくい
当事者双方に過失がある場合は、どちらの過失が大きいか判断が難しいことがあります。例えば、以下のようなケースです。
- 同一方向に走行していた車同士が同時に車線変更しようとして衝突した事故
- 信号機もなく道路幅も同じ交差点での出会い頭の事故
- 双方が赤信号で交差点に進入し、衝突した事故
このように、過失割合が判断しにくい場合、話し合いが平行線となり過失割合について話し合いがまとまらないことも少なくありません。
判断がしにくい場合の対処法
過失割合について判断がしにくい場合には、少しでも証拠を集めることが大切です。具体的には、以下のように事故の状況が分かる証拠を集めましょう。
- ドライブレコーダーの映像
- 目撃者の証言
- 実況見分調書 など
それでも過失割合について双方で話が平行線の場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
④駐車場内での事故
駐車場内で起きた事故は、過失割合について揉めやすくなる傾向にあります。
なぜなら、過失割合を参考にする書籍である「別冊判例タイムズ38号」に記載されている事故の類型は道路上を想定しているからです。そのため、駐車場で起きた事故の過失割合を決める際に参考にする判例が不十分となり、揉めやすくなってしまいます。
駐車場内の事故の対処法
駐車場内で起きた事故では正確な過失割合の算定が難しいため、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。こうしたケースは、似たような事故における判例をいくつか探し、総合的に過失割合を判断していくことになります。
しかし、被害者の方が判例を探したり、総合的に過失割合を判断したりすることは難しいでしょうし、なにより相手方保険会社が受け入れないことも考えられます。交通事故に詳しい弁護士であれば、法的な観点から、「別冊判例タイムズ38号」に記載のない事故態様であっても、適切な過失割合を相手方に主張することができます。
交通事故の過失割合で揉めた場合はどうする?
これまで過失割合で揉めやすい4パターンの対処法についてみてきましたが、それでも解決できない場合、過失割合で揉めていたままでは示談交渉が前に進みません。そこで、その他の代表的な対処法について詳しく解説していきます。
保険会社へ苦情を申し入れる
加害者が任意保険に加入している場合、示談交渉の相手は保険会社の担当者となります。
保険会社は交通事故の対応を数多く行っていることから、強引に被害者の過失割合を多めに主張してくるケースもあります。あまりにも相手方保険会社が高圧的であったり、話し合いに応じないような場合には、相手方保険会社のカスタマーサービスセンターやそんぽADRに連絡しましょう。
また、相手方保険会社に不満があるからといって、加害者本人に連絡することは避けましょう。余計に話がこじれてしまい、深刻なトラブルに発展しかねません。
ADRを利用する
ADRとは、裁判外で交通事故の紛争について解決を図る機関のことで、あっせん、調停、仲裁などの手続きがあります。交通事故の代表的なADR機関は次のとおりです。
- 日弁連交通事故相談センター
- 交通事故紛争処理センター
- 自賠責保険・共済紛争機構
ADRは無料で利用することができ、担当の弁護士が当事者同士の紛争が解決するようサポートしてくれます。しかし、ADRはあくまでも第三者機関であり、必ずしも被害者だけの味方ではないことに注意しましょう。
調停や裁判で解決する
調停とは、調停委員を介し話し合いによって紛争の解決を図る手続きです。調停を行うメリットには、以下のようなものが挙げられます。
- 早期解決が見込める
- 第三者に間に入ってもらえる
- 公平な解決が期待できる
- 強制執行が可能
ADRや調停といった第三者機関を利用しても紛争が解決しない場合は裁判を提起する方法があります。裁判では、当事者が証拠をもとに事実の有無を確定させて裁判所が判決を下すことで紛争を解決させます。そのため、裁判では主張を裏付ける客観的な証拠が何より大切です。
妥協案として片側賠償を提案する
双方でどうしても過失割合について合意できない場合は、「片側賠償」とすることも考えられます。
【片側賠償とは?】
双方に過失があるものの、一方だけが損害賠償責任を負うという示談方法です。例えば、過失割合9(加害者)対1(被害者)と提示されていても、被害者が過失0を譲らない場合に、双方協議のうえで、過失割合を9(加害者)対0(被害者)とすることです。
実際に損害賠償額はどのように変動するのか、以下の例を用いて比較してみましょう。
【例.被害者の損害総額:300万円、加害者の損害総額:50万円】
〈過失割合10(加害者)対0(被害者)の場合〉
- 被害者が加害者から支払ってもらえる金額 ⇒300万円×100%=300万円
- 被害者が加害者に支払う金額 ⇒50万円×0%=0円
- 過失相殺の結果 ⇒被害者は加害者側から、300万円-0円=300万円を受け取れる
〈過失割合9(加害者)対1(被害者)の場合〉
- 被害者が加害者から支払ってもらえる金額 ⇒300万円×90%=270万円
- 被害者が加害者に支払う金額 ⇒50万円×10%=5万円
- 過失相殺の結果 ⇒被害者は加害者側から、270万円-5万円=265万円を受け取れる
〈過失割合9(加害者)対0(被害者)の場合〉
- 被害者が加害者から支払ってもらえる金額 ⇒300万円×90%=270万円
- 被害者が加害者に支払う金額 ⇒50万円×0%=0円
- 過失相殺の結果 ⇒被害者は加害者側から、270万円-0円=270万円を受け取れる
弁護士に相談・依頼する
過失割合で揉めている場合は、弁護士への相談をおすすめします。交通事故に詳しい弁護士に相談することで、以下のようなメリットを受けられるでしょう。
- 適正な過失割合を算定・主張できる
交通事故や法律の専門家である弁護士であれば、過去の判例や事故類型から適正な過失割合の算定・主張ができるため、相手方が提示する過失割合を変更できる可能性があります。
- 過失割合の根拠を十分に準備できる
過失割合について交渉する場合には、事故状況を示す証拠や類似事故の判例、専門書の記載などを提示する必要があります。弁護士であれば被害者の方が集めにくい証拠を集めることが可能です。
- 交渉を任せられる
過失割合の交渉では、適切な過失割合を把握していること、証拠を十分に揃えていることに加え、交渉力があることも重要です。その点、弁護士は交渉のプロであることから、過失割合について法的知識をもとに主張・立証していきます。
交通事故の過失割合について揉めた場合は、お早めに弁護士にご相談ください
交通事故の過失割合は示談交渉のなかでも争点になりやすく、被害者の方ご自身で相手方保険会社と交渉していくのは難しいでしょう。相手方保険会社は交渉のプロであり、自社の損失を少しでも減らしたいため、被害者側の過失を大きく見積もってくる場合もあります。
交通事故に詳しい弁護士であれば、相手方が提示する過失割合が正しいのか精査ができ、間違っている場合は法的な観点から適正な過失割合を主張・立証していくことが可能です。
私たち弁護士法人ALGは、交通事故に詳しい弁護士が多数在籍しております。ご相談者様の代理人として相手方保険会社と交渉し、適切な過失割合に修正できるよう尽力いたします。過失割合についてお悩みやお困り事がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
離婚をする際に、取り決める一つの条件として、養育費があります。養育費の取り決めをする際には、その金額が問題となることが多いですが、その支払い方法が問題となることがあります。
支払いを受ける側としては、月額の養育費の支払いをきちんとしてもらえるのかという不安があったり、支払いをする側としては、関係を完全に清算したいという思いがあったりなどした場合、将来の養育費の支払いを一括でしてもらいたいと考えることがあります。
本ページでは、養育費の一括払いを求める場合の注意点等について解説します。
養育費の一括払いや請求は認められる?
養育費は、日々の子の生活費を負担するものですから、月額の支払いをするのが原則です。
もっとも、当事者間で養育費の一括払いの合意がある場合には、将来分のよう養育費を含めて、離婚時に一括の支払いを求めることは可能です。
養育費の一括払いのメリット
養育費を離婚時に一括で支払ってもらえるため、将来的に養育費は不払いになる危険を回避することができます。
また、離婚した相手から、月額での支払いを受けることはないので、元配偶者との関係を一切断ち切ることができます。
月額の支払いとする場合、養育費の不払いが発生した場合には、相手に連絡を取って支払いを求めたり、強制執行手続きを採ったりしなければならないなど、負担がありますが、養育費を一括でもらえることからこのような負担から解放されることになります。
養育費の一括払いのデメリット
将来の養育費を一括で支払いを受けるということは、養育費支払終期までの養育費の支払いが完了しているということになります。
通常は、収入が上がったり、子が15歳以上になったりした場合など、養育費を増額すべき事情が発生した場合に、養育費の増額請求をすることができるのですが、養育費の一括払いを受けた場合には、その義務はすでに履行されていると判断され、このような養育費の増額が認められにくくなります。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
養育費一括の場合の計算方法
月額の合計を出す
養育費の一括払いの金額を算定するにあたっては、まず月額の養育費の金額を算出し、養育費の終期までの合計金額を算出します。
月額の養育費は、家庭裁判所が公表している算定表を参考に算出することが多いです。
その他、算定表の元となる計算式もありますので、双方の収入を前提に、計算することも可能です。
合計金額から減額する(中間利息の控除)
通常、一括払いをする場合の金額を算定するにあたり、月額の養育費の合計金額を支払ってもらうことはあまりありません。
なぜなら、養育費は毎月の支払いを受けるものであるところ、金銭は受領してから利息は発生するため、将来発生する利息を控除する必要があるからです(中間利息控除)。
中間利息控除する場合には、養育費を受領する期間に対応するライプニッツ係数を調べ、控除する金額を算出し、月額の養育費の総額から引きます。
養育費を一括請求する方法
養育費の一括払いをする方法としては、まず当事者間で話し合って合意ができるかを試みます。
当事者間での話し合いで養育費の一括払いの合意ができない場合には、裁判所の養育費請求調停の申し立てを来ない、裁判所で協議をすることになります。
もっとも、養育費は、月額で支払うことが原則ですので、調停において一括払いをすることの合意ができない場合には、月額の養育費の支払いをすることでの合意を進められたり、裁判官が取り決めるときには月額の支払いでの判断がされることになります。
養育費一括で請求する際の注意点
課税対象になる可能性がある
養育費は、通常必要と認める範囲の子の日々の生活や教育に充てるための費用ですので、贈与税や所得税はかからないのが原則です(相続税法21条)。
もっとも、養育費を一括で受け取った場合には、通常必要と認められる範囲を超えた支払いであるとして贈与税の課税対象となる危険があるので、注意が必要です。
贈与税はいくらから対象?
贈与税は、年間に受けた贈与の金額から110万円(基礎控除額)を引いた金額に課税されます。そのため、110万円以上の贈与である場合、贈与税がかかることになります。
贈与税がかからない方法はある?
110万円を超える養育費の一括払いを受ける場合、贈与税がかかる可能性がありますが、①子どもを委託者兼受益者とする信託契約もしくは②支払い義務者を委託者兼信託契約解除同意者、受益者を子どもとする信託契約を締結し、運用する方法をとることが考えられます。
追加請求が難しくなる可能性がある
通常、月額の養育費の支払いを受けていると、養育費の取り決めをしたときから支払い義務者の収入が増えた場合や子の年齢が15歳に達した場合など事情が変更した場合、養育費の増額請求をすることは可能です。
しかし、養育費の支払いを一括で受領した場合には、既に養育費の支払い義務を果たしているとして、増額が認められにくくなることがあります。
再婚で返金が必要となる場合がある
逆に、支払い義務者が再婚したり再婚相手との間に子ができたりした場合など養育費の減額事情が生じると、支払い義務者は養育費の減額請求をすることができます。
月額の養育費を受けている場合には、その後の養育費の金額が減額となるのですが、一括で支払いを受けている場合には、もらいすぎていると評価され、既に受領した養育費の返還を求められる場合があります。
養育費の一括払い・請求をお考えの方は弁護士にご相談ください
養育費の一括払いを求める場合には、メリット、デメリットがありますし、税金の問題が生じる可能性がありますので、一括払いを求めるかには専門的な検討、判断が必要となります。
そのため、養育費の支払いに関して、経験豊富な弁護士に相談して進めていくことをお勧めいたします。
未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合、養育費をいくらとすべきかが問題となります。子どもが健全に成長するために必要な養育費は、夫婦各々の経済力に応じて分担し、子どもと離れて暮らす親から、子どもを監護・養育する親に対して支払われます。こうした養育費の金額を決めるにあたって用いられるのが、「養育費算定表」です。
ここでは、養育費算定表の使い方等について解説していきます。
養育費算定表とは
養育費は、離婚後に、子どもと離れて暮らす親が払う、養育や教育、医療などにかかる費用の分担のことです。離婚して子どもと離れて暮らすことになったとしても、親は、子どもに対して負う扶養義務の一環として養育費を支払う必要があります。
養育費算定表とは、離婚に際して子どもの養育費の金額を決めるときに、父母の収入金額や子どもの数と年齢だけから、標準的な養育費の金額を簡易・迅速に算出できる早見表をいいます。
養育費は、子どもの生活のための金銭ですから、簡易・迅速に算出される必要があるため、実務で活用されています。
新養育費算定表について
従来の算定表は、2003年に公表されたもので、裁判所の実務では、この算定表を基に、養育費や婚姻費用の額を判断していました。しかし、時間の経過とともに社会情勢が変化し、「現在の生活実態にあっていない」などの指摘が出ていたことから、改訂が検討され、2019年に新養育費算定表が公表されました。
養育費算定表の使い方
養育費算定表は、以下の流れで使用します。
- 子どもの人数と年齢を確認する
- 裁判所のHPから該当の養育費算定表をダウンロードする
- 相手方の年収を確認する
- 自分の年収を確認する
- 相手方と自分の年収から、養育費の金額を確認する
具体的には、以下で解説します。
子どもの人数と年齢を確認する
養育費算定表は、子どもの人数(3人まで)や年齢(0~14歳/15歳以上)に応じて分けられています。何歳の子どもが何人いるかによって、該当する養育費算定表を確認することになります。
裁判所のHPから該当の算定表をダウンロードする
養育費算定表は裁判所のHPで公開されていて、誰でも閲覧し、ダウンロードすることができます。該当のページにある、表1~表9が養育費算定表です。この中から、子どもの人数や年齢に応じた算定表を用います。
義務者(支払う側)の年収を確認する
養育費を支払う側の年収を確認して、養育費算定表の縦軸から、該当する箇所を確認します。
なお、養育費を支払う側が、会社員などで給与を受け取って生活しているか自営業であるかによって、年収の軸が異なるため、ご注意ください。
権利者(もらう側)の年収を確認する
養育費を受け取る側(権利者)の年収を確認して、養育費算定表の横軸から、該当する箇所を確認します。
養育費を受け取る側についても、会社員などで給与を受け取っている場合と自営業である場合とで、年収の軸が異なります。
2つの年収を辿り、養育費の金額を決定する
養育費を支払う側と受け取る側の年収および「給与受給者か自営業者か」を確認したら、養育費算定表の交差する箇所が、いくらの養育費とされているかを確認します。
算定表では、養育費に1万~2万円ほどの幅が設けられているため、交差する箇所により近い金額を相場とするのが一般的です。
養育費算定表の結果はあくまでも相場
養育費算定表で算定される養育費は、あくまでも標準的な生活をすることを前提とした相場です。そのため、個々の状況によっては、必ずしも適切な金額であるとは限りません。
当事者双方が合意できれば、算定表に縛られることなく、自由な金額で取り決めることもできますので、算定表上の金額では納得できない場合は、算定表とは異なる金額にする必要性や合理性を伝えて、よく話し合いましょう。
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養育費算定表に関するQ&A
養育費算定表以上の金額をもらうにはどうしたらいいですか?
養育費算定表よりも高額の慰謝料を受け取るためには、まずは父母で話し合います。 話し合いに応じてもらえない、あるいは合意が得られない場合は、家庭裁判所の調停や審判手続を利用することになります。 その際には、相場以上の養育費が必要な理由や根拠を示し、相手や裁判官を納得させることが重要です。
古い算定表で金額を決めました。新養育費算定表の金額で支払ってほしいのですが、どうしたらいいですか?
養育費算定表が改定されたことだけを理由に、既に取り決めた養育費の増額を認めてもらうことはできません。 義務者が、養育費の改定をきっかけに任意で増額に応じてくれれば問題ありませんが、そうではない場合に増額を求めるには、算定表の改定以外に、義務者の収入が予想以上に増えたことや、権利者であるご自身の収入が想定外の事情で減ったこと等の事情が必要です。
子どもに障害があるため医療費がかかります。それでも算定表の額しか支払ってもらえないのでしょうか?
子どもに障害があることによって、特別に医療費が必要なケースでは、養育費算定表以上の養育費が認められる可能性があります。 算定表は、子どもに必要な費用について、標準的な費用を基準としており、特別に必要な医療費等までは考慮されていないことから、持病に関する医療費は、特別費用として加算することができると考えられます。その場合、月々の明細書・領収書などを証拠として、父母間の協議や、調停・審判手続の中で、養育費の増額を求めることになります。
新算定表の額が高すぎると調停を申し立てられました。減らさなければいけないのでしょうか?
新算定表の額が高すぎるという理由だけで養育費の減額を求められた場合は、必ずしも応じる必要はありません。 ただし、調停で、養育費算定表をもとに、父母それぞれの事情を勘案して、具体的な金額を取り決めるための話し合いが進められる中で、義務者のやむを得ない収入減少や、義務者に扶養家族が増えたなど、事情の変化があると判断された場合には、養育費の減額が認められる可能性があります。
再婚を理由に算定表の金額よりも養育費を減らしたいと言われました。受け入れなければいけないのでしょうか?
再婚を理由に養育費の減額が認められることはあり得ますが、必ずとは言い切れません。 例えば、調停・審判手続きとなった場合、養育費を支払っている側が再婚して扶養家族が増えた場合には、減額が認められる可能性が高いと考えられますが、再婚による扶養人数に変動がなければ減額が認められない場合もあります。 具体的には、次のような事情の変化がある場合に、養育費の減額や免除が認められる傾向にあるといえます。 【義務者側が再婚した場合】 再婚相手の連れ子と養子縁組をした。 再婚相手との間に子どもが生まれた。 【権利者側が再婚した場合】 十分な収入のある再婚相手と子どもが養子縁組をした。
子どもが4人以上いる場合の養育費算定表がありません。相場はどう調べればいいでしょうか?
子どもが4人以上いる場合には、養育費算定表では養育費の相場が調べられませんが、養育費算定表の基礎となる計算方法をもとに算出することができます。 具体的な計算方法は、以下のとおりです。 ① 義務者と権利者、それぞれの基礎収入を算出する。 基礎収入とは、年収から税金などを差し引いた金額のことで、「年収×基礎収入割合」で算出できます。 ② 子どもの生活費を算出する。 義務者の基礎収入と、親子それぞれの生活費指数を用いて、次のように算出します。 「義務者の基礎収入×子どもの生活費指数計÷(義務者の生活費指数+子どもの生活費指数計)」 ※生活費指数: 親=100、0~14歳の子ども=62、15歳以上の子ども=85 ③養育費の相場を算出する。 次のように算出します。 「子どもの生活費×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)」
上の子を夫が引き取り、下の子2人を私が引き取ることになりました。算定表はどう見たらいいのでしょうか?
養育費算定表は、1人の親が、子ども全員の世話をしている状況を想定して作成されているため、父母それぞれが子どもを引き取った場合、養育費算定表だけでは養育費の相場を求めることができません。 こうした場合の養育費の計算方法としては、様々な考え方がありますが、そのうちの1つとして、一方が全ての子どもを引き取ったと仮定して算定表から養育費を求めた上で、子どもの年齢による「生活費指数」を加味して差引きすることによって算出するものがあります。
算定表に書かれている年収は手取りですか?支払額ですか?
養育費算定表の年収は、手取りではなく「支払額」です。 なお、源泉徴収票では「支払金額」、課税証明書では「給与収入」、確定申告書では「課税される所得金額」に実際は支出されていない費用を加算したものが、年収に相当します。
養育費のことでお困りのことがあれば、弁護士への相談がおすすめ
養育費算定表は、簡易に養育費の相場を知ることのできるとても便利なツールですが、あくまでも目安に過ぎません。
多額の教育費がかかっている、子どもに高額の医療費がかかっている等といった個別事情がある場合や、子どもが4人以上いる、父母それぞれが子どもを引きとるといった算定表だけでは相場が調べられない場合などで、具体的な養育費の金額を取り決めるためには、離婚問題に精通した弁護士に相談することをお勧めします。
人が亡くなったときに、その人が生命保険の被保険者であった場合、受取人として指定されている者に対して死亡保険金が支払われます。
このとき、保険料の負担者や生命保険の金額によっては、受取人が税金を支払わなければならないケースがあります。税金の種類は、契約者と被保険者、受取人の関係によって変わります。
この記事では、死亡保険金の相続における扱いや、請求に必要な書類、受け取るための手続き、死亡保険金にかかる税金等について解説します。
生命保険金は相続の対象になる?
生命保険の死亡保険金は、基本的に相続財産として扱われないので、相続の対象になりません。そのため、受取人が相続人であっても、他の相続人と分ける必要のない財産として扱われます。
ただし、死亡保険金も被相続人の死亡をきっかけとして支給される金銭であるため、相続税の課税対象となることがあります。また、契約者、被保険者と受取人の関係によっては、所得税や贈与税が課されることもあります。
生命保険金を請求できるのは「受取人」として指定されている人
生命保険の死亡保険金を請求できるのは、受取人として指定されている者です。受取人は保険証書に記載されています。
ただし、受取人が被保険者よりも先に亡くなってしまうことがあります。このようなケースについて、次項より解説します。
受取人が既に亡くなっている場合
死亡保険金の受取人が被保険者よりも先に亡くなっている場合には、元の受取人の法定相続人が受取人とされます。そのため、受取人を配偶者にしておくと、配偶者の両親や兄弟姉妹等が死亡保険を受け取る可能性があります。
契約者自身は受取人の相続人が死亡保険金を受け取ることを望んでいなかった場合、受取人が亡くなった後で、受取人の変更手続きを行うようにしましょう。
受取人が指定なしの場合
死亡保険金の受取人が指定されていなかった場合、受取人は契約している保険の約款によって決まります。一般的には、被保険者の法定相続人となるケースが多いです。
ただし、死亡保険金の分配については、通常の相続における法定相続分が反映されないケースが多く、法定相続人の人数によって等分されることが多いです。
生命保険金の請求に必要な書類
死亡保険金の請求に必要な書類は、生命保険会社によって異なりますが、主に次のような書類が必要となります。
- 各社所定の請求書
- 被保険者の死亡を証明する書類(死亡診断書の写し等)
- 受取人の本人確認書類(運転免許証、パスポート等)
また、保険会社によっては、主に以下のような書類が追加で必要となることがあります。保険会社によっては、コピーではなく原本の提出を求められることがあるので、形式について、事前に保険会社に確認しておくとよいでしょう
- 被保険者の住民票の除票
- 受取人の印鑑証明書
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生命保険金を受け取るための手続き
被保険者が亡くなったときに、死亡保険金を受け取るための手続きは、主に以下のような流れで進めます。
- 生命保険会社に連絡を取る
- 死亡保険金の請求手続をする
- 生命保険会社の審査
- 生命保険金の受け取り
この流れについて、次項より解説します。
生命保険会社に連絡を取る
最初に、生命保険会社に対して、被保険者が亡くなったことを電話等で連絡します。そのときに、主に以下のような事項について、保険会社から確認されます。
- 保険証券番号
- 亡くなった方の氏名
- 亡くなった日
- 亡くなった原因
- 死亡保険金の受取人の氏名
- 死亡保険金の受取人の連絡先
これらの事項を質問されても困らないように、保険証券等を事前に用意しておきましょう。受取人の連絡先をすぐに思い出せない場合には、前もってメモしておく等すると良いでしょう。
請求手続をする
連絡した生命保険会社から受取人に対して、請求書の用紙や手続きの案内等が届きます。請求書に必要事項をすべて記入し、必要書類を取り寄せて、生命保険会社に請求を行いましょう。
生命保険会社の審査
請求を受けた生命保険会社は、死亡保険金の支払いについて、免責事項に抵触していないかを審査します。免責事項に抵触してしまうと、死亡保険金が支払われないおそれがあります。
免責事項は保険会社や契約等によって異なりますが、主に以下のような理由が定められています。
- 生命保険加入後、1年~3年以内に被保険者が自殺した
- 生命保険の契約者や受取人が、故意に被保険者を殺害する等した
- 被保険者が、飲酒運転等の法律に違反するような事故によって死亡した
- 地震や津波、噴火等の天災によって被保険者が死亡した
- 戦争やテロ等によって被保険者が死亡した
- 故意または重大な過失により、虚偽の告知を行って契約した
生命保険金の受け取り
無事に審査を通過すれば、指定した口座に死亡保険金が振り込まれます。複数の受取人が指定されている場合には、それぞれの口座に振り込みが行われます。
生命保険金は3年以内に請求しましょう
死亡保険金の消滅時効は3年とです。そのため、被保険者が亡くなって3年が経過すると、保険会社が消滅時効を援用して、保険金を請求できなくなるおそれがあります。
ただし、消滅時効が成立していても、保険会社が援用せず、請求に応じてくれる可能性があります。請求するのを忘れてしまい、被保険者の死亡から3年が経過してしまっても、保険会社に請求しましょう。
生命保険金は相続放棄しても受け取れる
死亡保険金が受取人の固有財産であることから、相続放棄をしても、受け取る権利を失いません。受取人として法定相続人が指定され、受取人が相続放棄をしたとしても、相続放棄は影響せず、保険金を受け取ることが可能です。
なお、生命保険会社が販売している保険商品の一部については、相続放棄をすると給付が受けられなくなるおそれがあるので注意しましょう。また、被相続人が契約者である場合の解約返戻金についても、受け取ることはできなくなります。
生命保険金の受け取りに税金はかかる?
死亡保険金を受け取る場合、契約者と被保険者、受取人の関係によって、かかる税金の種類が変わります。
なお、死亡保険金については、被保険者と受取人を同じにすることは認められません。これは、亡くなった被保険者が死亡保険金を受け取ることはできないからです。
死亡保険金にかかる税金について、次項より解説します。
契約者と被保険者が同じ人で、受取人は相続人
契約者と被保険者が同じ人で、受取人として相続人を指定している場合には、死亡保険金は相続税の課税対象となります。
ただし、死亡保険金には遺族等の生活を保障する役割があるため、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられています。
さらに、相続税には「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」の基礎控除が設けられています。相続財産や非課税枠を控除した死亡保険金等を合算した金額が基礎控除を上回らなければ、相続税は課税されません。
契約者が受取人
契約者と受取人が同じ人で、被保険者には他の人を指定している場合には、死亡保険金に所得税がかかります。
このとき、保険金は一時所得として課税対象となります。一時所得が保険金だけである場合には、「(死亡保険金-支払った保険料の累計額-50万円)×1/2」によって計算される金額が課税対象です。
反対に、保険金以外にも一時所得がある場合には、合計した金額が課税対象とされることに注意しましょう。ふるさと納税の返礼品や競馬の配当金等は一時所得になります。
契約者と被保険者と受取人がすべて違う人
契約者と被保険者、受取人がすべて違う人である場合には、死亡保険金に贈与税がかかります。贈与税の金額は、以下の式によって計算されます。
(死亡保険金-110万円)×税率-控除額
一般的に、贈与税は相続税よりも負担が重いため注意しましょう。
なお、贈与税は、保険金の受取人自身で申告する必要があります。申告は、保険金を受け取った年の翌年の、2月1日~3月15日の間で行わなければなりません。
相続の手続でお困りなら、弁護士への相談がおすすめ
生命保険の死亡保険金は、相続において争いの原因になることがあります。特に、相続財産がほとんどなく、一部の相続人が受け取った死亡保険金が高額であると、他の相続人が分配を要求してくるかもしれません。
また、死亡保険金には、契約内容によって相続税等がかかる場合があるので、節税について気になる方もいらっしゃるでしょう。
そこで、死亡保険金について気になる方は弁護士にご相談ください。保険金の有効な活用方法についてアドバイスいたします。
過失割合とは、交通事故を発生させた責任が当事者双方にどれぐらいあるかを割合で示したものです。被害者にも過失がある場合は、その過失分だけ受けとれる賠償金が減額されてしまいます。
したがって、過失割合がどれぐらいの割合になるかは、損害賠償額の算定において重要となりますが、過失割合は一体いつ、誰が決めるものなのでしょうか?
このページでは、交通事故の被害者の方に向けて、過失割合の決め方や、保険会社から提示された過失割合に納得いかない場合の対処法などについて解説していきますので、ぜひご一読ください。
交通事故の過失割合はいつ決まる?
過失割合は、交通事故の具体的な損害が分かった後に決まることが多いです。示談交渉が行われるタイミングは、以下のとおりとなります。
- 通常の人身事故:治療が終了した後
- 後遺症が残った人身事故:後遺障害等級認定を受けた後
- 物損事故:車の修理費などが確定した時点
ただし、停止中の追突事故のように、過失割合が明らかな場合は、事故直後に当事者同士で過失割合についての合意がされることもあります。ちなみに、停止中の追突事故であれば、被害者の過失は0です。
被害者に代理人弁護士がいない場合、まず加害者側の保険会社から、過失割合や示談金額が書かれた示談案が送付され、それをベースに示談交渉を行い、当事者いずれも合意すれば、示談成立となります。
ただし、過失割合などについて意見が対立している場合は、示談交渉では決められず、裁判や調停、ADR(裁判外手続き)などの場で過失割合が決められることもあります。
過失割合は誰がどうやって決めている?
交通事故の過失割合は、基本的には当事者同士の話し合いで決めます。
任意保険に加入するドライバーがほとんどであるため、実際には任意保険の担当者を通して協議することが一般的です。基本的には事故状況や過去の裁判例などを踏まえて、当事者の意向に配慮しつつ、担当者同士の協議で決めることになります。
なお、もらい事故など被害者に過失がない事故については、被害者から加害者に支払うべき賠償金がないため、被害者側の任意保険会社は、被害者の代理人として示談交渉を行えません。このような代理交渉は「非弁行為」といって、弁護士法で制限されているからです。
この場合は、被害者本人が相手方の保険会社と話し合って過失割合を決める必要があります。被害者本人で相手方の保険会社と交渉する自信がない場合は、弁護士に依頼することも可能です。
過失割合の決め方について詳しく知りたい方は、以下のページも併せてご覧ください。
交通事故の過失割合は誰が決めるの?まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
過失割合の連絡がこない場合はどうしたらいい?
治療終了後や後遺障害認定の結果が出た後、車の修理費などが確定した後からしばらく経っても過失割合や示談金について連絡がこない場合は、加害者側の保険会社または加害者本人に直接連絡してみましょう。連絡が遅れているということは、何らかのトラブルが起きている可能性があるためです。
過失割合の連絡が来ない理由として、以下が考えられます。
- 加害者が事故の発生を保険会社に連絡していない
- 加害者が自分自身の過失を否定しているため、保険会社が示談代行を行えないと判断している
- 加害者が任意保険に未加入であるため、示談を代行できる保険会社がない
- 加害者側の保険会社内での手続き・必要書類の収集に時間がかかっている
連絡して事情を確認すれば、解決する可能性もあるため、必ず連絡するようにしましょう。
保険会社から提示された過失割合に納得いかない時の対処法
保険会社から提示された過失割合に納得できない場合の対処法として、以下が挙げられます。
過失割合の変更を求める
事故状況を示す証拠(実況見分調書やドライブレコーダーなど)を提出したり、類似事故の過失割合を示す裁判例や書籍を提示したりして、過失割合の変更を求めることが必要です。証拠の収集や過失割合の検討には専門的知識が求められるため、弁護士に相談するのが望ましいでしょう。
弁護士に相談する
交通事故に精通する弁護士であれば、保険会社が参考にした裁判例よりも妥当な判例がないか調べたり、過失割合を修正する要素の見逃しがないか確認したりできるため、正しい過失割合を算定・主張することが可能です。
ADRを利用する
ADRとは、裁判以外の紛争を解決するための手続きのことで、交通事故紛争処理センター等の弁護士が仲介に入り、話し合いによってトラブル解決を図ることができます。費用は無料ですが、あくまで中立的な立場から判断されるため、必ずしも被害者に有利な結果が出るとは限りません。合意できなければ手続きが終わるというデメリットがあります。
調停を申し立てる
調停とは、裁判所の調停委員を介して話し合いによる解決を図る手続きです。調停が成立すると、その内容は裁判の判決と同等の強制力を持ちます。ただし、当事者が合意できなければ調停が成立しない点に注意が必要です。
裁判を起こす
裁判では、裁判所が当事者の主張や証拠を踏まえて、過失割合を算定します。判決が確定すれば、加害者は速やかに賠償金を支払わなければなりません。当事者間の合意がなくても解決可能ですが、費用や時間がかかり、裁判への対応には高度な法的知識が必要です。
過失割合の疑問点は弁護士にご相談ください
例えば、被害者と加害者の過失割合が1:9で、損害賠償額が400万円だとすると、400万円×90%=360万円が加害者に請求できる金額となります。これが2:8になると、400万円×80%=320万円となり、過失割合が1割増えるだけで40万円の差額が出ることになります。
過失割合は被害者が受けとれる賠償金に大きな影響をもたらすため、いかに適切過失割合を主張・立証するかが重要となります。ただし、過失割合の算定は複雑であり、専門知識がなければ、加害者や相手保険会社を納得させることは困難です。
過失割合について疑問点がある場合や、保険会社から提示された過失割合に納得がいかないような場合は、ぜひ交通事故に精通する弁護士法人ALGにご相談ください。事故状況に応じた厳密な過失割合を算定することが可能です。
モラハラを理由に配偶者から突然離婚を求められた場合、どのように対応すればよいか不安になるでしょう。
モラハラという言葉が広く認知されるようになったため、モラハラと言われたら離婚したくなくても離婚しなければいけない、慰謝料を払わなくてはいけないのかと、不安でどう対応すればいいのか分からなくなってしまいます。
今回は、モラハラを理由に離婚を請求された場合、離婚は避けられないのか、慰謝料を払わなければならないのか、という点について説明します。
モラハラを理由に離婚請求されたらどうしたらいい?
離婚を請求された場合、なぜ離婚をしたいのか、どのような条件で離婚をしたいのか、まずは冷静に話し合いましょう。話合いの結果、相手が離婚したいという気持ちを撤回するのであれば、離婚をする必要はありません
反対に、話合いの結果、相手の離婚したいという気持ちが変わらず、家庭裁判所で話合い(調停)をしても意見がまとまらない場合、裁判所にて、離婚を認めるかどうかを裁判官が判断することになります。
そもそもモラハラとはどのような行為?
モラハラとは、道徳や倫理に反した言動により、相手方に精神的靴を与える行為のことを言います。
モラハラ、つまりモラルハラスメントという言葉の指す行為が、具体的に定義されているわけではありませんが、下記のような言動がモラルハラスメントに該当すると言われています。
- 「無能」、「異常者」など、相手の人格を否定する発言をする
- 専業主婦(夫)である相手の収入がないことを非難する、相手の収入が低いと嘲笑する
- 相手を怒鳴る、体の近くに向けて物を投げる
離婚を拒否することは可能だけど、裁判になると…
当事者同士の話し合いや、家庭裁判所での調停では、離婚することや離婚に伴う条件について合意ができなければ離婚は成立しません。そのため、離婚を拒否し続ければ、離婚は成立しないことになります。
ただし、離婚調停が不成立となって、離婚裁判が提起されると、法律で定められた離婚理由に該当する場合は、他方が離婚したくないと思っていても、離婚請求が認められて、強制的に離婚させられることになります。
モラハラで離婚が認められるケースとは
モラハラが、民法上の離婚事由である「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)に該当すると判断された場合は、裁判で離婚が認められます。
モラハラを理由とした離婚が裁判で認められるためには、モラハラを録音した音声や動画などの客観的証拠が必要になります。音声や録音以外にも、メールやLINEでのメッセージが、日常的に長期間モラハラが行われていたことの証拠となることもあります。
離婚が認められないケース
客観的な証拠がない場合は、裁判官がモラハラの事実を認定できず、モラハラを理由に離婚を認めない可能性が高いです。
モラハラの内容が断片的に書かれたメモや、モラハラを受けたと当事者が主張するだけでは、モラハラの客観的な証拠とは評価されません。
また、言われた側からすればモラハラであると感じても、一般的に、夫婦ゲンカや性格の不一致に止まる程度の内容であれば、客観的な証拠があっても、離婚が認められないこともあります。
身に覚えのないモラハラ・冤罪をかけられたときの対処法
身に覚えのないモラハラを理由に離婚を請求された時は、具体的にどのような言動がモラハラに該当すると考えたのかを、相手に冷静に確認しましょう。相手に確認して言われた事実について、記憶にないのであれば記憶にない、明かに事実異なるのであれば、あいまいなことを言うのではなく事実ではないと説明したほうが良いです。
それでも相手が納得しないのであれば、当事者だけで話し合っていても、事態が進展する見込みは低いです。また、話合いの様子を相手が録音して、離婚を求められて感情的になっている様子をモラハラの証拠であると言われる可能性があります。
そのような場合は、弁護士に依頼して、自分の代わりに相手と交渉してもら方がよいでしょう。
モラハラの事実が認められた場合、慰謝料は発生するのか?
モラハラの事実が認められ、相手に精神的苦痛を与えたと判断された場合、慰謝料を支払う義務が発生します。
直接的な暴力がなく、重大な侮辱などを理由とした慰謝料の相場は、100万円前後とされることが多いです。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
モラハラで離婚したら親権はどちらがとる?
モラハラで離婚を請求された側の配偶者が、離婚後に、親権者となることもあり得ます。親権者を決める時は、どちらが子どもを育てる方が子どもの利益になるかという点が考慮されるので、配偶者にモラハラをしていても、育児は問題なく行っていれば、親権者としてふさわしいと判断する余地があるからです。
ただし、配偶者へのモラハラが認められた結果、離婚後は子どもへモラハラをする可能性が高いと判断されることも考えられ、モラハラをしたことが親権者を決めるうえで不利に判断されることはあります。
相手が別居することを選んだら
相手が別居しても、離婚が成立しているわけではないので、法律上の相互扶助義務や扶養義務がなくなりません。相手から婚姻費用を請求された場合、別居をした相手に婚姻費用を支払う必要があります。
一般的に、妻が夫のモラハラを理由に別居することが多いですが、夫が妻のモラハラに耐え兼ねて、家を出ていくこともあります。そのような状況で妻から婚姻費用が請求された場合、妻が夫婦関係を破綻させたと認定されると、婚姻費用の請求が認められないことがあります。
子供を連れて別居された場合
相手が子どもを連れて別居した場合、別居先を特定して、子どもを自分の力で連れて帰ってしまうと、親権者の判断において、不利に判断されることがあります。
連れていかれた子どもに帰ってきてほしい場合は、自力で子供を連れてくるのではなく、監護者指定・子の引渡し審判を家庭裁判所に申立てて、裁判所を利用した手続きで、子どもの引渡しを求めましょう。別居の方法が、子どもへの配慮に欠けていると判断されると、子どもの引渡しが認められる可能性があります。
モラハラによる離婚請求に関するQ&A
私の親族のモラハラが原因で、妻から離婚請求されました。親族のモラハラは、離婚理由になるのでしょうか?
離婚原因として考慮されるのは、原則として、夫婦間の事情なので、親族からのモラハラで直ちに離婚が認められるわけではありません。 ただし、親族からのモラハラを認識していたのに止めようとしなかった、または積極的にモラハラに加担したというような事情がある場合は、婚姻を継続し難い重大な事由があるとして、離婚が認められる可能性があります。
私からのモラハラを訴え別居した夫が不倫したようです。離婚が回避できないならせめて慰謝料をもらいたいのですが可能ですか?
別居していても、婚姻関係は解消されていないので、夫の不貞行為が原因で夫婦関係が破綻したと判断された場合は、夫に慰謝料を請求することができます。 ただし、本当に妻のモラハラが原因で別居に至っていた場合、夫の不貞行為の前に、すでに婚姻関係が破綻していたと判断され、夫に対する慰謝料請求が認められない可能性はあります。
モラハラを理由に離婚を請求されていますが、嫌なら都度言ってくれればいいのにいきなり離婚なんて納得いきません。離婚を拒否できませんか?
確かに、相手と話し合いができていれば、いきなり離婚という事態にはならなかったかもしれません。しかし、モラハラによる離婚は、日々の些細な言動の積み重ねであることが多く、我慢していたものがある日限界に達することもあります。また、夫婦間の力関係により、モラハラを指摘することが難しく、ある日突然別居に至ることもあるので、話合いをしていないことを理由に離婚を拒否することは難しいでしょう。
モラハラが原因で離婚請求をされたら、弁護士に相談することで解決に繋がる場合があります
身に覚えのないモラハラで離婚を請求された場合、弁護士に交渉を依頼することで、不利になることなく、話合いを進めることができます。
また、実際にモラハラをしてしまっても、弁護士が専門的な知識を駆使して交渉することで、一方的に不利な内容で離婚することを避けられる可能性があります。
弁護士法人ALG&Associatesは、モラハラに関する数多くのご相談をいただき、解決に導いてきた豊富な実績があります。
モラハラを理由に離婚を切り出され、どうすれば良いかお悩みの方は、まずは弁護士法人ALG&Associatesにご相談ください。
配偶者からモラハラ被害を受けている場合に、離婚を希望することもあると思います。離婚について話し合いで解決できる場合にはよいですが、話し合いでの解決が難しいケースも多くあるのが実情です。
話し合いでの解決が難しい場合には、裁判手続きを利用することになりますが、そういった場合に、モラハラによる離婚の慰謝料請求が認められるかどうか等について、以下、説明していきます。
モラハラを理由に離婚したら慰謝料を請求できる?
モラハラを理由に離婚する場合にも、相手方に慰謝料を請求することは出来ます。ただ、常に慰謝料が相手方から支払われるわけではありません。
まず、離婚について話し合いでの解決を目指している場合には、相手方が慰謝料として金銭を支払うことに同意している必要があります。
話し合いでの解決ができず、離婚訴訟となった場合には、モラハラの事実を客観的な証拠により立証し、加えて、それが慰謝料を生じさせるものであることを主張し、裁判官に認めてもらう必要があります。
慰謝料請求が認められるモラハラ行為とは
モラハラは、道徳や倫理から外れる暴言や嫌がらせ等の行為が該当するものとされています。例えば、繰り返し「最低」「バカ」「死ね」等といった暴言をすれば、モラハラに該当するものと考えられます。
また、配偶者の言動に不満がある場合に徹底的に批判し罵るというようなことをした場合にも、モラハラと認定されることがあります。このように、配偶者の人格を否定する言動がなされ、それが理由として婚姻関係が破綻したと認められる場合には、慰謝料の支払いを命じられる可能性があります。
モラハラの慰謝料請求が難しいとされる理由
一般的には、モラハラによる離婚の場合、慰謝料請求を裁判官に認めてもらうことは難しいとされています。これにはいくつか理由が考えられますが、まずは証拠収集が難しいということが挙げられます。
モラハラは日常生活の中でなされることが多く、咄嗟に録音や録画をすることが難しいことが多いです。
また、証拠を一定数集めることができたとしても、裁判上は、「その日時にそういった発言があったこと」は立証できますが、「長期間、毎日のようにこのような暴言が続いていた」ということまで立証できたことにはならないため、法的に慰謝料を発生させるほどのものと評価してもらうことは難しいことも多いです。このような理由から、モラハラの慰謝料は難しいとされています。
モラハラの証拠の集め方
モラハラは日常生活の中での発言等であることが多いです。証拠として最も明確に事実認定をすることができるのは、客観的な記録(録音や録画等)ですので、こういった証拠を、日常生活の中でなるべく集めるようにする方が良いです。
客観的な証拠が最善ですが、それが難しい場合もあると思います。そこで次に考えられるのが、日々の日記です。なるべく長期間、毎日書いてあれば、記載内容の信用性は高まっていくものと考えられます。
記録しておきたい発言等については、なるべく主観を交えず、発言内容をそのまま記録しておくようにしましょう。日記は、長期間高頻度でモラハラに苛まれていたということを立証するためには必須ともいえますので、客観的な証拠の有無にかかわらず作成した方がよいです。
モラハラで離婚した場合の慰謝料相場
モラハラで離婚した場合の慰謝料の相場はどの程度でしょうか。
まず、話し合いであれば双方の合意した金額になるため、金額設定は自由です。双方が合意した金額であればいくらでも良く、相場はないものと考えてよいでしょう。
裁判の場合には、そもそも慰謝料請求が認められない事案の方が多いと思われますが、仮に慰謝料が認められるとしたら、極端な場合を除き、数十万円~200万円程度の間に収まることが多いと思われます。
モラハラ慰謝料が高額になる要素とは?
モラハラの慰謝料が高額になる要素として重要なのは、具体的言動の悪質性と、モラハラを受けてきた期間、頻度だと考えられます。実際には、証拠不足により、これらの事情が十分に立証できないことが多いです。
慰謝料請求を認めてもらい、また、なるべく認容額を高額にしたいのであれば、客観的証拠や日記等の積み重ねが重要ということになります。
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モラハラ離婚で慰謝料を請求する流れ
モラハラでの離婚を考える場合には、まずは別居を検討した方がよいです。モラハラを受けると精神的な負担も大きく、正常な判断ができなくなることもあるためです。
別居をした場合にはモラハラの証拠を収集することは難しくなりますが、そのどちらを優先するかは決めなければなりません。
また、別居する場合には、事前に話し合いをすることが出来るか否か、荷物として持ち出すものはどうすればよいか等、悩む点も多いと思われますので、慎重に検討する必要があります。
②話し合いで請求する
次に、離婚の意思とモラハラの慰謝料請求の意思があることを相手方に連絡をしなければなりません。連絡の方法は何でも構いませんが、形に残るように、可能であれば手紙やFAX,メール等にすべきでしょう。
通常であれば、裁判所を通すことなく、話し合いを求めることが多いですが、モラハラ案件では、およそ話し合いにならないということも多いと考えられます。そのような場合には、家庭裁判所に離婚調停の申し立てをすることが考えられます。
最初の連絡をする勇気が出ない方もいらっしゃると思います。そのような場合、弁護士に相談されるのがお勧めです。
③内容証明郵便で請求する
最初の連絡方法として、内容証明郵便というものを利用することがあります。内容証明郵便というのは、記載した文章の内容や、相手方に配達できた日にち等が客観的に記録に残るものです。そのため、どういった内容の文章を、いつ相手方に送付したのかを立証するためには最適な方法といえます。
このようなメリットがあるため、最初の連絡は内容証明郵便にすることも多いです。内容証明郵便は郵便局にて利用できます。具体的な利用方法は郵便局にお問い合わせください。
④離婚調停で請求する
離婚調停というのは、当事者だけでの話し合いでは解決が困難と考えられるときに、裁判所の関与のもと話し合いを行う手続きです。相手方住所地を管轄する家庭裁判所に離婚調停の申立書を提出することで、離婚調停を申し立てることができます。話し合いは調停委員を介して行うことになります。
この中で、離婚自体の可否や離婚条件について協議をしていき、最終的に合意が成立すれば離婚調停成立として、離婚が成立します。合意が成立しなければ、離婚調停不成立となり、婚姻関係は継続することになります。
⑤離婚裁判で請求する
離婚調停が成立しなかった場合、離婚が出来ていない状態ということになります。そのため、なお離婚をしたい人は、離婚裁判を提起する必要があります。
離婚裁判では、離婚自体を認めるか否か、(申立があった場合には)離婚を認める場合の条件を裁判官が判断することになります。離婚裁判中話し合いで解決をすることも多いですが、やはり合意が成立しない場合には、裁判官が判決という形で判断を下します。
離婚裁判の中で、離婚が認められるべきということと、モラハラの慰謝料が認められるべきであるという主張を行っていくことになります。
モラハラの慰謝料請求の時効はいつまで?
多くの事案では、過去の個々のモラハラ行為自体を不法行為と捉えて慰謝料請求するのではなく、モラハラ行為により婚姻関係が破綻し、離婚に至ることとなったことを不法行為と捉えて慰謝料請求するものと思われます。
これは離婚慰謝料といって、時効については、離婚成立時から3年となっています。そのため、通常は時効について気にする必要はなく、離婚の協議をしているタイミングや、離婚訴訟のタイミングで、一緒に請求をすることになります。
モラハラの慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット
モラハラ案件では、離婚自体もそうですが、慰謝料の請求をするにあたって、相手方配偶者が激高して話し合いにならないということが考えられます。そのような反応をされることが事前に分かってしまうため、恐怖から、そもそも離婚を切りだすことができない、慰謝料請求をすることができないという方も多くいます。
確かに自分だけで離婚を進める場合には、全て自分で対応しなければなりませんが、弁護士へ依頼すれば、自分の代わりに弁護士が対応してくれることになります。大きくストレスが軽減され、自分の希望どおりに請求の意思表示等をすることも出来ます。モラハラ案件では、特に弁護士に依頼するメリットが大きいといえるでしょう。
よくある質問
姑からのモラハラを理由に、離婚や慰謝料を請求することは可能ですか?
基本的には配偶者自身の行為である場合と比較して、離婚が認められるハードルや、慰謝料請求が認められるハードルは高くなるものと考えられます。
もっとも、実際にそういったケースは存在しますし、離婚も慰謝料も認められる場合はあるものと考えられます。
ここでは、配偶者自身が、姑の暴言等を止めていたか、積極的に関与していたか等の事情により、判断が変わってくるものと考えられます。
旦那が子供にもモラハラをしていた場合、慰謝料の増額は期待できますか?
自身に対するモラハラのみならず、子供へのモラハラもなされていたような場合、それが婚姻関係の破綻及び離婚に繋がっていると認められれば、慰謝料の増額もあり得るということになります。
もっとも、自身へのモラハラ行為そのものではないため、大幅なモラハラによる離婚慰謝料の増額を期待できるものとはいえないと考えられます。
妻からモラハラを受けていたことを理由に、養育費の支払いを減額してもらえますか?
話し合いであれば、離婚条件について双方が合意すればそのとおり離婚が成立します。そのため、モラハラを受けていたことを理由に、養育費を本来の金額より低い金額で設定することも可能です。
他方、離婚裁判においては、モラハラを受けていたことを理由に、養育費の金額を下げるということは認められないと考えられます。
また、モラハラを理由に慰謝料請求が認められた場合でも、慰謝料と養育費とを一方的に相殺することは許されていません。
モラハラで慰謝料請求するなら、離婚問題に強い弁護士に依頼することがおすすめです。
モラハラで離婚請求、慰謝料請求をする場合には、離婚問題に強い弁護士に依頼することがおすすめです。モラハラ案件では、相手方と対応するだけでも大きなストレスがかかり、場合によっては離婚協議を行っている中で体調を崩してしまったり、不本意ながら離婚自体を取りやめてしまったりすることがあります。
また、裁判で離婚自体や慰謝料を認めてもらうためには詳細な主張・立証で、弁護士のアドバイスが有用です。モラハラ離婚、慰謝料請求をお考えの場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。
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保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)