熟年離婚の原因と、離婚前にしておくべき準備

熟年離婚の原因と、離婚前にしておくべき準備

近年、同居期間が25年を超える夫婦が離婚する件数が増えています。このように長い時間をパートナーとして過ごした夫婦が離婚することを、“熟年離婚”といいます。夫が定年退職を迎えるタイミング、子供が就職や結婚をして独立するタイミング等、人生の節目をきっかけに妻が離婚を切り出し、熟年離婚をすることになるケースが多いようです。

なぜ、長年連れ添った配偶者との別れを選ぶのでしょうか?熟年離婚の原因や、実際に熟年離婚をする際に気をつけるべき点等を中心に解説していきます。

熟年離婚の原因

夫婦仲を悪化させる要因には様々なものがあります。そこで、何がきっかけで長年のパートナーに愛想を尽かせてしまうのか、熟年離婚の原因として特に考えられる要因を以下に挙げてみました。

相手の顔を見ることがストレス

定年退職を迎え、夫婦で過ごす時間が増えると、それまで気にならなかったお互いの嫌な部分が目につくようになることがあります。そして、相手の顔を見ることがだんだんとストレスになっていき、結婚生活を続けることが困難になってしまうケースがあります。

また、それまで表面上は喧嘩もせずに夫婦生活を続けてきた場合でも、どちらかが強く我慢していたために生活が成り立っていたということもあります。しかし、配偶者の定年退職等で一緒にいる時間が増えた結果、我慢の限界に達してしまい、熟年離婚を決めるケースもあります。

価値観の違い、性格の不一致

“価値観の違い”や“性格の不一致”は、熟年離婚以外の離婚でもよく挙げられる要因です。結婚当初から「金銭感覚が違う」「趣味に対する理解がない」「なんとなく性格が合わない」といった不満を抱えながら一緒に生活していたものの、配偶者の定年退職や子供の独立等で一緒に過ごす時間が増えたことでついに限界を迎えてしまい、「これ以上相手に合わせるのは嫌だ」と離婚を切り出す方も少なくありません。

また、離婚に対する世間のイメージが変わり、ハードルが低くなってきたことも影響して、結婚当初から価値観の違い等の不満を抱えていた方が離婚に踏み切るケースも増えているようです。

夫婦の会話がない

仲の良い夫婦でいるために、必ずしも会話を弾ませる必要はないのかもしれません。ほとんど会話がなくとも、お互いにその空気を心地よく思っているのであれば問題ないでしょう。しかし、どちらかが会話がないことに孤独を感じていたり、不満に思っていたりする場合には、夫婦生活を続けていくことに耐えきれなくなり熟年離婚を決意するケースがあります。

子供の自立

“仮面夫婦”という言葉もあるとおり、夫婦間の愛情はないものの、表面上は共同生活を続けている夫婦もいます。これは、子供が幼い、または自立していない等、まだ両親を必要とする年齢であるため、表面上だけでも夫婦生活を続ける必要があると考えているからであることが多いです。このようなケースでは、お互いに「子供が独立したら離婚する」と気持ちを固めているため、条件面等について大きく揉めることもなく、冷静に離婚の手続が進められることが多いようです。

借金、浪費癖

配偶者に借金や浪費癖がある等、お金の管理に問題がある場合にも、熟年離婚に至ることがあります。
こうした問題が一向に改善せず、長年続いてしまうと、家計は非常に苦しくなってしまいます。そのため、夫婦生活を続けていくことを困難だと感じて熟年離婚を決意する方もいらっしゃいます。

介護問題

熟年離婚をする夫婦の年代では、両親の介護問題が出てくるケースが多いです。ご自身の親の介護ですら大変なのに、配偶者の親の介護まで任されてしまっては、その苦労はより大きなものとなるでしょう。特にこの年代では、「義両親の介護は妻の仕事」という考えを強く持っている人も少なくなく、妻一人に負担が集中してしまっているケースが多くみられます。その結果、介護の疲れが限界を超えてしまい、熟年離婚を切り出す女性が多いのです。

熟年離婚に必要な準備

熟年離婚では、離婚後の生活設計をきちんとしておくことが特に重要です。なぜなら、熟年離婚をした場合、夫も妻も経済的に不安定な状況に陥ってしまうケースが多いからです。
こうした事態を防ぐためにも、熟年離婚をするときには、離婚後の老後資金をどのように確保するかをしっかり検討し、入念に準備しておく必要があります。

就職活動を行う

特に熟年離婚世代の女性の場合、結婚や出産・子育てをきっかけに仕事から離れてしまっていることが多く、収入がなかったり、あったとしてもパート代やアルバイト代程度で離婚後の生活資金には足りなかったりするケースが多いです。そこで、年金を受け取ることができるようになるまでの間の生活費をまかなう必要があります。離婚後、生活に困らないためにも、できればあらかじめ就職先を見つけておけると良いでしょう。

しかし、しっかりとした職歴がない場合、十分な収入を得られるだけの新たな就職先を見つけるのは難しいという現実があります。このような場合には、離婚条件として財産を多くもらえるように働きかける等、対応を考えなければなりません。

味方を作る

あらかじめ味方を作っておくことも大切です。
熟年離婚をした後、「強い孤独感」を感じる方が多くいらっしゃいます。そこで、離婚する前から子供や親戚、友人や知人と交流する機会を増やしておき、熟年離婚をした後の自分の居場所を作っておきましょう。
また、周囲の方と良好な関係を築いていれば、困ったときに相談したり頼ったりすることができるので、気持ちの面でも健康面でも安心することができます。

住居を確保する

熟年離婚をするにあたっては、離婚後の住居の算段をつけておきましょう。
まず、結婚中に家を購入した等、夫婦の共有財産として家がある場合には、財産分与で家を受け取って離婚後も住み続けることができます。ただし、ローンが残っている場合等には話が複雑になります。

また、
①実家で暮らす
②独立している子供と同居する
③賃貸物件を借りる
といった選択肢もあります。もっとも、賃貸物件を借りようとしても、就職先が決まっていない、預貯金額が少ない、高齢すぎるといった場合には、入居審査に通らないおそれが大きいです。こうした場合には、家賃補助を受けられる高齢者向けの優良賃貸住宅等を探すことになるでしょう。

財産分与について調べる

夫婦の共有財産は、離婚する際に、財産分与として2分の1ずつ分け合うのが原則です。ただし、離婚後に夫婦の一方(現実的には妻であることが多いです)が生活できるだけの収入を得られる見込みがなく、財産分与でもらえる財産も十分ではない場合には、“扶養的財産分与”が行われることがあります。“扶養的財産分与”とは、元配偶者が、生活に困窮してしまう他方の配偶者のために一定期間定額を支払う、財産分与の種類のひとつです。

熟年離婚の場合には、扶養的財産を行うことがよくみられます。収入に不安のある方は、離婚するにあたってこうした条件をつけることも検討してみてください。

専業主婦(専業主夫)の場合は年金分割制度について調べておく

熟年離婚をする夫婦では、妻が専業主婦である等、第3号被保険者に当たるケースが多いです。このようなケースでは、“3号分割”という年金分割の方法をとることができます。
年金分割とは、結婚生活中に夫婦が納めた厚生年金の記録を、多い方から少ない方へ分け与える制度です。3号分割を利用すれば、相手の同意を得ずに2分の1の割合で年金分割を受けることができます。
年金分割を利用できれば年金の受給額が増えるので、生活費に充てることができます。ご自身のケースでは利用できるのかどうか、ぜひ年金事務所にてお調べください。

退職金について把握しておく

熟年離婚の場合、定年退職を迎えるまでの期間がわずかであるケースも多いので、退職金が支払われる可能性が高いときは、一般的に退職金も財産分与の対象にします。
退職金は基本的に高額である場合が多いので、財産分与の対象になるかどうかは非常なポイントとなります。そこで、定年退職時に退職金が支払われる可能性の有無、予想される金額等を把握しておき、財産分与の対象になるのかどうか、検討をつけておくことをおすすめします。

熟年離婚の手続

熟年離婚の手続と通常の離婚手続に違いはありません。まず、夫婦で話し合い、双方の合意のうえで離婚することを目指します(協議離婚)。話し合いが難しい、または夫婦だけでの話し合いでは合意に至らない場合には、家庭裁判所に調停を申し立て、調停で離婚条件等の調整を図ります(離婚調停)。それでも合意に至らず、調停が不調に終わった場合には、離婚の成否やその条件についての判断を裁判所に委ねるという選択肢があります(離婚裁判)。

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熟年離婚で慰謝料はもらえるのか

熟年離婚の場合も通常の離婚の場合と同様、離婚することになった原因が一方の配偶者にあるときには、もう一方の配偶者は、精神的苦痛を強いられたとして慰謝料を請求することができます。例えば、夫婦間にDVやモラハラ、セックスレスの事実がある場合や一方の配偶者が不貞行為をしていた場合、正当な理由がないのに勝手に別居していたり生活費を入れなかったりした場合には、慰謝料の支払義務が認められる可能性があります。

なお、慰謝料の金額は、配偶者のした行為の内容や程度、子供の有無や年齢、婚姻期間等によって異なってきますが、熟年離婚のように婚姻期間が長い場合には高額になる傾向があります。

退職金は必ず財産分与できるわけではない

退職金が財産分与の対象になれば、離婚時にもらえる、あるいは渡す財産の金額が跳ね上がるため、夫・妻のどちらにとっても気になる事柄のひとつではないでしょうか。

この点、退職金には“給与の後払い”という性質があるので、夫婦が協力して作り上げた財産として、財産分与の対象となる可能性があります。もっとも、たとえ財産分与の対象に含まれる場合でも、婚姻期間に相当する退職金として支払われる分以外は財産分与の対象にはなりません。なぜなら、婚姻期間に相当する分以外は、夫婦が協力して作り上げた財産とはいえないからです。

退職金が既に支払われている場合

財産分与の時点でもう退職金が支払われている場合、退職金のうち、婚姻期間に相当する分は、財産分与することができます。なお、婚姻期間に相当する退職金の額は、退職金の支給にかかる勤務年数と実質的な婚姻期間を考慮して決定します。

ただし、離婚時に退職金が残っていなければ財産分与できないため、注意しましょう。もっとも、退職金が残っていない原因が一方の浪費であるようなケースでは、他の財産を分与する際に考慮してもらえる可能性があるでしょう。

退職金がまだ支払われていない場合

退職金がまだ支払われていない場合には、「支給されることがほぼ確実である」といえなければ、退職金を財産分与の対象とすることはできません。

支給が確実であるかどうかは、下記のような事情を踏まえて判断されます。
①就業規則等に退職金に関する定めがあるか
②退職金の計算方法が明示されているか
③会社の規模
④定年退職までの期間
⑤これまでの勤務状況・成績

なお、配偶者が定年間近であるケースや、勤務先が倒産するおそれが小さい公務員であるケース等では、退職金が支給される確実性が高いと判断される傾向にあります。

熟年離婚したいと思ったら弁護士にご相談ください

ずっと円満な夫婦生活を送れるのが何よりですが、結婚生活が長くなれば、お互いの良い面も悪い面もよく見えるようになるかと思います。そして、 “離婚”という選択肢をとるしかなくなるほど追い詰められてしまう方もいらっしゃるでしょう。しかし、何も準備しないままに熟年離婚をしてしまうと、夫側も妻側もいろいろな面で苦しい状況に置かれてしまうおそれがあります。離婚後の生活について、あらかじめしっかりと準備してから離婚を切り出すことが重要です。

何を、どのように準備すれば良いのか、疑問やご不安のある方は、弁護士へ相談されることをおすすめします。ご相談者様の状況に応じたアドバイスをさせていただきますので、後悔のない離婚を迎えるためにも、熟年離婚を検討している方はぜひ弁護士にご相談ください。

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この記事の監修

横浜法律事務所 所長 弁護士 沖田 翼
弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長弁護士 沖田 翼
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&apm;Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。