労務

譴責処分とは?内容や処分の流れについて弁護士が解説

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

譴責(けん責)処分とは?

譴責処分とは、懲戒処分の1つですが、懲戒処分の中では、軽微な行為に対してされるものです。
もっとも、軽微な処分とはいえ、通常は人事評価に影響し、年俸や賞与にはかかわってくる点で、軽視はできません。以下で、譴責処分について解説していきます。

懲戒処分における譴責処分の位置付け

従業員が不正行為や違反行為をした場合に、就業規則への事前の定めがなされていれば、会社は懲戒処分をすることができます。譴責処分とは、従業員に始末書や顛末書を提出させ、反省をさせる懲戒処分です。

譴責処分の対象となる行為

譴責処分の対象となる行為は、典型的には、以下のものが挙げられます。
もっとも、あくまで一例にすぎず、就業規則への事前の定めを前提として、最終的にどのような処分を下すのかは、会社の判断です。

・何度も遅刻や早退をする
・和を乱す言動で、業務に支障を生じさせた
・髪型や服装等の身だしなみに問題がある
・社内の風紀を乱す言動が目立つ

懲戒処分を行う際に企業が守るべき7つの原則

①就業規則の内容確認
②証拠の確保
③弁明の機会の付与
④処分の決定
⑤処分の通知書の交付
⑥始末書の提出を求める
⑦処分の社内開示

譴責処分を行う際の流れ

譴責処分は、懲戒処分の1つであるため、これを行うには、正当な手続きを踏まなければなりません。従業員にとって不利益となるからです。以下でその手続きについて解説していきます。

①就業規則を確認する

就業規則に規定されていなければ、懲戒処分をすることはできません。したがって、就業規則に、処分の種類や内容を記載したうえで、従業員に周知していることが前提になります。

②証拠を確保する

対象となる行為について、処分を下せるか否かを判断するにあたり、事実の確認が必要です。そして、事実を証明する証拠も収集しなければならないので、従業員の証言や日報など、記録となる客観的証拠が必要になります。

③弁明の機会を付与する

処分を下す前に、対象行為をした従業員に対し、その旨を告げて、本人の主張も聞かなければなりません。従業員に不利益を与えることになるので、この手順は必ず踏まなければならないとされています。
この弁明の機会は、可能であれば口頭の方が望ましいでしょう。

④譴責処分を決定する

事実確認や本人の主張を聴取し、最終的に処分を決定しなければなりません。社内の人事部や管理職で話し合い、最終的に処分をするかどうか、どのような内容の処分とするかを決定します。

⑤譴責処分の通知書を交付する

最終的に処分を決定した場合、本人に対し、どのような行為が原因となり、どのような処分が下されたのかを記載した通知書を交付することになります。

⑥始末書の提出を命じる

就業規則において、譴責処分の場合に始末書の提出を義務付けていれば、その提出を求める必要があります。本人の意思で作成してもらうため、会社が内容について指示を出してはいけません。

始末書の提出を拒否された場合の対応

従業員が始末書の提出を拒否した場合、始末書の提出を強制することにより、本人が思想良心の自由を害されたと主張することがあります。そのような主張がなされた場合は、譴責処分にしたにもかかわらず、始末書の提出を拒んだということになりますので、始末書の提出拒絶を捉えて懲戒処分や今後の評価の対象にしていく方向で対応していきましょう。

⑦譴責処分の社内開示を行う

社内で譴責処分があったことについて、メーリングリストや掲示板等により公表します。

名誉棄損とならないよう配慮が必要

社内開示の範囲は、譴責処分があった事実にとどめなければなりません。
処分対象者を特定できるような情報や、不確かな事実について、記載することは名誉棄損のおそれがあるので気を付けましょう。

譴責について争われた裁判例

従業員が、会社の規則に反し組合活動をしたり、正当な理由なく数時間職場を離れていた事案において、従業員を譴責処分にしたものの、始末書の提出を拒んだため、出勤停止等の処分をした事例。

事件の概要(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

昭和38年(ワ)10257号・昭和42年11月15日・東京地裁・労働判例

裁判所の判断

従業員が始末書の提出を命じられたが、これを拒否し続けたことについて、裁判所は、「上司から始末書の提出を命ぜられた以上、関係各原告においてこれを提出すべき義務があるものというべく、これを拒否したことは就業規則の懲戒事由に該当する」として、本件の昇給停止、出勤停止処分は、該当事由がある以上、有効であると判断しています。

ポイント・解説

この裁判例では、軽微な行為について譴責処分がなされるとはいえ、始末書の提出を拒む等、処分対象者が反省の意を示さない場合に下された処分については、正当であると判断しています。
そのため、譴責処分自体が妥当性を欠くものでない限り、始末書の提出を拒むなどの行為は、許されるべきではないと裁判所は考えていると言えます。

譴責処分に関して不安な点がある場合は、労働問題に精通した弁護士にご相談下さい。

譴責処分の決定をしてよいか、お困りの際は、まず弁護士にご相談することをおすすめします。
不当な内容や手続きにより懲戒処分をすると、従業員に不正行為があったとしても、会社側に落ち度があると判断されるケースも少なくありません。
まずは、小さな行為であっても、弁護士に相談をしてみましょう。

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横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
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