離婚裁判について

離婚問題

離婚裁判について

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

一般的に知られている離婚の形式は、協議離婚・調停離婚・審判離婚・裁判離婚の4種類でしょう。
このうち協議離婚と調停離婚は、話し合いによって離婚問題の解決を目指すものですが、審判離婚と裁判離婚は、問題に対する最終的な判断を裁判所に委ねるものです。

では、裁判で離婚をするには、具体的にどのような流れで進むのでしょうか。
今回は、離婚裁判の流れや必要な費用・時間、メリット・デメリットといった概要について、詳しく解説します。

目次

離婚裁判とは

離婚裁判とは、離婚の可否やその条件に関する争いの解決を求めて行う裁判のことです。
離婚するかしないかという問題はもちろん、財産分与や年金分割、親権、養育費、面会交流といった離婚条件をどう取り決めるかといった問題についても、裁判所に判断してもらうことができます。

しかし、離婚裁判については「調停前置主義」という考え方がとられているので、裁判所に離婚裁判を申し立てる前に、まずは離婚調停を行わなければなりません。つまり、離婚調停を行っても問題を解決できず、不成立になって初めて家庭裁判所に訴えを起こせるようになるということです。

離婚裁判以外の離婚方法

離婚裁判の結果、成立する離婚が「裁判離婚」です。
裁判離婚以外にも、日本では下記の形式の離婚が認められています。

  • 協議離婚・・・
    当事者である夫婦で話し合った末、離婚することに合意した場合に成立する離婚です。
    日本で行われる離婚のうちのほとんどを占めています。
  • 調停離婚・・・
    家庭裁判所の調停委員を介して夫婦で話し合い、離婚することに合意した場合に成立する離婚です。
    協議離婚の成立が難しいときに、夫婦の片方が家庭裁判所に離婚調停を申し立て、成立を目指します。
  • 審判離婚・・・
    家庭裁判所の離婚審判の結果、裁判所の判断によって成立する離婚です。
    離婚審判は、離婚すること自体には合意しているものの、細かい離婚条件に折り合いがつかず調停が不成立になったような場合に限って行われるので、実際に成立する件数は多くありません。

離婚裁判で争われること

離婚裁判では、主に下記に挙げるような問題について争われることが多いです。

離婚が認められるか否か

離婚裁判の主軸となる問題です。離婚が認められると、付帯請求をしていれば親権、養育費、財産分与などについても判断されます。

親権

離婚するにあたって、夫婦のどちらが子供の親権者になるのかを必ず決めなければなりません。夫婦両方が親権を希望する場合に、特に揉めやすい問題のひとつです。

慰謝料

夫婦の一方が不貞行為(不倫)やDVなどをして、もう一方に精神的な苦痛を与えた場合、賠償金として慰謝料を請求される可能性があります。支払義務の有無や金額を巡って争いになることが多いです。

財産分与

離婚の際、結婚している間に夫婦が協力して作り上げた財産を分け合う必要があります。共有財産の範囲や具体的な分与の割合・分け方について争いとなります。

年金分割

結婚している間に納付した年金の記録を一方に分け与えることを「年金分割」といいます。分割の可否や割合を巡って揉め事になることがあります。

養育費や面会交流

子供と別居している親には、子供が自立するまでにかかる費用(養育費)を支払う義務があります。また、子供の健全な成長のためにも、別居している親と子供が交流(面会交流)できるようにすることは重要です。
そのため、養育費や面会交流に関するルールを巡って争いになることが多いです。

裁判で離婚が認められる条件

離婚裁判では、民法770条で定める条件を満たしていることを証明できなければ、裁判所に離婚を認めてもらえません、この条件を「法定離婚事由」といいます。
法定離婚事由には、以下のようなものがあります。

①配偶者が不貞行為をした
②配偶者から悪意の遺棄をされた
③配偶者が3年以上生死不明である
④配偶者が強い精神病にかかり、回復の見込みがない
⑤その他、婚姻を継続し難い重大な事由がある

ただし、法定離婚事由があれば必ず離婚が認められるわけではありません。裁判所が“結婚を続けることが相当”だと判断する場合、離婚を認めないこともあります。

離婚裁判の流れ

離婚裁判は、下記のような流れで行われます。

①管轄の家庭裁判所に訴状を提出する
②家庭裁判所が第1回口頭弁論の期日を指定し、夫婦それぞれへ呼出状を送付する
③被告が反論を記載した答弁書を提出する
④第1回口頭弁論期日に、夫婦がそれぞれ主張や立証を行う
⑤第2回、第3回…と口頭弁論期日を繰り返す
⑥離婚を認めるかどうか、裁判所が判決を下す

離婚裁判にかかる費用について

離婚裁判にかかる費用は、おおまかに「離婚裁判自体にかかる費用」と「弁護士への依頼にかかる費用」の2種類に分けられます。

離婚裁判自体にかかる費用

  • 収入印紙代:1万3000円(離婚の成否だけの場合)
    ※他の請求も併せて行う場合、請求1件につき1200円の追加費用が発生します
  • 郵便切手代:6000~7000円前後(管轄の家庭裁判所によって異なります)

弁護士への依頼にかかる費用

  • 相談料:~1万円程度
  • 着手金:20万~50万円程度
  • 成功報酬30万~ (事案に応じて)
  • その他(裁判所への交通費、日当など):実費

費用はどちらが負担するのか

離婚裁判自体にかかる費用は、裁判を起こす段階では原告(裁判を起こす人)が負担します。
しかし、裁判所は判決の内容に応じて費用の負担割合を決めるので、最終的にどちらがどれだけ費用を負担することになるのかは判決が下るまでわかりません。
なお、原告の主張が全面的に認められた場合は、被告(裁判を起こされた人)が全額を負担することになります。

これに対して、弁護士への依頼にかかる費用は、基本的に依頼した人が全額を負担することになります。

離婚裁判に要する期間

離婚裁判は、一般的に1~2年程度で終了するケースが多いです。
ただし、争っている内容や状況によっては半年ほどで終了したり、逆に2年以上かかったりすることもあるので、一概にいうことはできません。

最短で終わらせるためにできること

離婚裁判が長引いても、結論が先延ばしになるだけで良いことはありません。短期間で終わらせられるように、次のポイントを押さえて裁判に臨むと良いでしょう。

和解することを視野に入れる

裁判官は、離婚裁判で聴き取った夫婦の主張や反論を踏まえて、和解案を提示してくることがあります。和解案に納得できるなら、受け入れることで裁判の長期化を防ぐことができます。

必要最小限の争点に絞る

離婚協議、離婚調停で合意できた点を事前に確認しておき、離婚裁判で争うポイントを最小限にしておくことで、裁判にかかる時間を短くすることができます。
また、必要な証拠や資料を事前に集めておくことも大切です。

離婚問題に強い弁護士に依頼する

離婚分野に精通している弁護士なら、裁判を有利に進めるためのアドバイスをしたり、依頼者に代わって裁判で主張・立証したりすることも可能です。
効率的かつ有利に裁判を進めるためにも、離婚問題に強い弁護士への依頼を検討すると良いでしょう。

長引くケース

次のようなケースでは、離婚裁判が長引く傾向にあります。

請求するものが多い(争点が多い)

離婚するかしないかだけを争うケースと比べて、財産分与や慰謝料といった離婚条件もまとめて争うケースは主張・立証すべきことが多いため、裁判に必要な時間もその分増えます。

事情が複雑である

例えば、妻が夫のDVを原因として離婚と慰謝料を請求している一方、夫は妻の不倫による慰謝料を請求しているものの、離婚に応じる意思はないような場合、裁判官が判断しなければならない事柄はかなり多くなってしまいます。
当事者が主張・立証する事柄も多くなるため、離婚裁判も長期化します。

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離婚裁判で認められる別居期間

一般的に、別居が3~5年程度続いていると、離婚が認められやすくなる傾向にあります。何も事情がないのに別居が相当期間続くことは常識的に考えにくく、婚姻関係が破綻していると判断されるためです。
また、単に「別居期間が長い」というのではなく、「同居期間と比較して長いといえるかどうか」も判断において重要です。
なお、離婚の原因が相手方にある場合は、別居期間が多少短くとも、婚姻関係が破綻したとして離婚が認められることもあります。

なお、外からは夫婦関係がうまくいっているように見える「家庭内別居」と、仕事の都合でやむを得ずする「単身赴任」は、「別居」とみなされない可能性が高いのでご注意ください。

離婚裁判の欠席について

当事者の一方が離婚裁判に欠席しても、手続きは進められます。そのため、欠席すると自分に不利な形で裁判が進んでしまう可能性があるので、なるべく日程を調整して出席できるように心がけましょう。

なお、被告(裁判による請求を受けた人)の場合、第1回口頭弁論期日に限って、「答弁書」を提出しておけば被告本人が出席のうえ意見を述べたとみなしてもらえます。これを「擬制陳述」といいます。
しかし、二回目以降は、「欠席した=争う意思がない」とみなされてしまう可能性があります。

原告(裁判を起こした人)も被告も、一度や二度の欠席で不利になることはありません。とはいえ、正当な理由のない欠席を繰り返すと、裁判官に悪い印象を与えて判決に影響が及ぶこともあるので気をつけましょう。

離婚裁判で負けた場合

離婚裁判で負けてしまったとしても、判決に不満がある場合は、判決後2週間以内に「控訴」することができます。
控訴とは、裁判の判決に不服を申し立て、より上級の裁判所の判断を求める手続きです。日本では三審制が取り入れられているので、控訴で負けた場合には最高裁判所に不服を申し立てることになります。

また、離婚の場合は、裁判に負けたからといって、二度と離婚裁判を提起できないというわけではありません。別居期間が継続して伸びてることを捉え、再度、離婚裁判を提起することは可能です。
裁判に勝つ可能性を高めるためにも、離婚問題に強い弁護士に相談し、主張・立証の方法を改善することをおすすめします。

離婚裁判のメリット、デメリット

メリット

離婚裁判は、裁判所が離婚を認めることで成立するので、「相手の同意がなくとも離婚することが可能」です。
また、裁判所の下す判決には法的な強制力があるので、「判決書を根拠に強制執行することが可能」になるというメリットもあります。

デメリット

離婚裁判で得られるメリットは大きい一方、デメリットもそれなりにあります。
まず、後で相手方に支払ってもらえる可能性はあるものの、離婚裁判には時間、費用、労力がかかるのはデメリットでしょう。
また、「不利な判決が下された場合に受けるダメージが大きい」こと、「有力な証拠がないと勝つのが難しい」ことといったデメリットもあります。
ただ、離婚することを後回しにしてズルズルいってしまうと、ご自身だけではなくお子様や親族などにとっても精神的ストレスになることが多々あるので、一歩でも前に進むためにも、弁護士に相談することをお勧めします。

離婚裁判についてQ&A

裁判の申立てを拒否することは可能なのでしょうか?

離婚裁判の申立てを拒否することはできません。面倒だから、離婚を拒否したいからといって裁判所の呼び出しを無視して裁判を欠席し続けていると、原告(裁判を起こした人)の主張どおりの判決が下ってしまう可能性があります。
したがって、離婚裁判を申し立てられてしまったら、自分の言い分を主張するためにも、裁判に出席する必要があります。そして、法定離婚事由など、原告が請求の根拠としている事実がないことを立証して、原告の主張を退ける判決を獲得しなければなりません。

他人が離婚裁判を傍聴することはできますか?

裁判が公正に行われるようにするため、離婚裁判を含めて、裁判は公開されるのが基本です。したがって、誰でも傍聴することができます。
しかし、ほとんどの離婚裁判では、初回の口頭弁論期日や尋問期日以外の手続きは「弁論準備手続」という非公開の場で行っています。
こうした非公開の手続きは、裁判所の許可がない限り第三者は傍聴できないので、実際に他人が離婚裁判を傍聴するのは難しいといえるでしょう。

配偶者が行方不明でも離婚裁判を行うことはできますか?

できます。 配偶者が行方不明の場合、「配偶者が3年以上生死不明」、「配偶者から悪意で遺棄された」、または「結婚生活を継続することが難しい重大な事由がある」といった法定離婚事由があると認められる可能性があります。また、行方不明になり連絡が取れないことをもって「婚姻を継続し難い重大な事由」と認められることもあるでしょう。その場合には、行方不明の配偶者を被告として離婚裁判を起こすことができます。
被告が行方不明の場合は、住所がわからないので、呼出状などの必要書類は「公示送達」することになります。具体的には、原告が離婚を希望する旨などを、裁判所の掲示板に掲示したり、官報に掲載したりします。
その後は被告が不在のまま裁判を行い、法定離婚事由があると認められれば、離婚を認める判決が下されます。

離婚裁判で敗訴した場合、すぐに調停を申し立てられますか?

離婚裁判で敗訴した直後に、離婚調停の申し立てをすることは可能です。
ただし、相手方が離婚裁判に勝訴しているため、話し合いをしたり、相手方の譲歩を引き出すことは難しいでしょう。
ただ、相手方も離婚の紛争に疲れている場合もあり、こちらが様々な譲歩をすることを前提に離婚調停で協議を行い、調停が成立することもあります。

離婚後すぐに再婚することはできますか?

すぐに再婚できるかどうかは、性別によって異なります。
まず、男性は離婚した翌日にでも再婚することが可能です。
一方、女性には「再婚禁止期間」が設けられているため、離婚した日から100日経過しなければ基本的に再婚できません。
なぜ女性にだけこのような決まりがあるのかというと、民法上、

  • 離婚後300日以内に生まれた子供は前の夫との子供
  • 再婚後200日より後に生まれた子供は再婚相手との子供

と推定されるからです。
万が一離婚後100日経過しないうちに再婚して子供が生まれた場合、子供の父親がどちらとの子供なのかを判別できなくなってしまう可能性があります。このような不都合を回避するため、女性は離婚後すぐに再婚することはできないとされています。

相手が離婚を拒否し続けたら裁判でも離婚することはできませんか?

どんな場合であっても、裁判所が「離婚を認める」と判断すれば、裁判離婚が成立します。
そもそも離婚裁判は、夫婦の話し合いでは問題を解決できないため、裁判所に解決を委ねる手続きです。相手が離婚を強く拒んでいたとしても、離婚が相当だと判断すれば、裁判所は離婚を認める判決を下します。
また、裁判所の判決には法的な強制力があるので、判決後に離婚を拒否することは当然できません。
役所での離婚手続きも、判決書があれば相手方の同意を必要とせず一方当事者のみで可能です。

離婚裁判を考えている場合は弁護士にご相談ください

離婚裁判のメリットは大きいですが、その分デメリットも多いという難点があります。しかし、弁護士に相談・依頼することで、離婚裁判のデメリットを少なくすることができます。

例えば、弁護士に訴状や証拠の準備を任せれば時間や労力を削減できるので、普段のお仕事や育児に専念していただけます。また、離婚裁判では、法的な主張と主張を裏づける証拠の提出が必要ですが、弁護士には法律の専門知識があります。また、交渉のプロでもあるので、裁判官にこちらの主張の正当性を印象づけて、有利な判決の獲得につなげることも期待できます。

離婚裁判を起こすことを検討されている方は、ぜひお気軽に弁護士にご相談ください。

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織
監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
保有資格弁護士(神奈川県弁護士会所属・登録番号:57708)
神奈川県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。