労務

時間単位の有給休暇とは?時間単位年休を導入するメリット・デメリットや注意点

横浜法律事務所 所長 弁護士 伊東 香織

監修弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長 弁護士

時間単位の有給休暇とは?時間単位年休を導入するメリット・デメリットや注意点 という内容で以下の項目に繋がるような冒頭文をお願いします。

有給は1日単位で取得するものですが、より細かな単位、具体的には、時間単位で取得することはできるのでしょうか。 もし可能であれば、会社側に与える影響は1日休むよりも少なく済むように思え、有給をより取りやすくなるように見えます。

時間単位の有給について、以下で解説していきます。

時間単位の有給休暇とは|時間単位年休の基本

時間単位の有給休暇とは、労使協定を前提として、年次有給休暇について、5日の範囲内で時間を単位として与えることができることとしたものです。 一定の条件のもと、ルールを整えれば時間単位での有給休暇制度自体は実現可能です。

時間単位年休の取得日数の上限

労使協定の締結を前提として、年に5日を限度として時間単位で年次有給休暇を与えることができます。

時間単位年休の繰り越し

注意が必要なのは、繰り越しが発生した場合です。 仮に繰り越しがあったとしても、当該繰り越し分も含めて年に5日分以内での付与という限定がありますので注意してください。

半日単位の有給休暇との併用

半日単位の年次有給休暇については、時間単位年休とは異なるものです。注意しなければなりません。 半日単位の年次有給休暇を取得しても、時間単位で取得できる時間数に影響を与えるものではありません。

時間単位年休の賃金の計算方法

時間単位で年休を取得した場合の1時間分の賃金額の計算は、

①平均賃金、 ②所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、 ③労使協定に基づく健康保険法上の標準報酬日額相当額をその日の所定労働時間数で割った額

のいずれかによります。 いずれとするかを就業規則に定めてください。

時間単位の有給休暇を導入するメリット

時間単位での有給休暇導入には次のメリットがあります。

企業側のメリット

有給がたまっている場合、一般論として、労働者側が予期せぬ長期休暇を取得することによって、事業の遂行に影響が生じる可能性があります。 時間単位での年次有給休暇は労働者側からすると取りやすいため、 有給取得率の向上につながり、安定的な事業遂行につながる可能性があります。

労働者側のメリット

労働者側からすると、同僚や上司への負荷を抑えられるため、有給自体を取得しやすくなるというメリットがあります。

時間単位の有給休暇を導入するデメリット

企業側のデメリット

通常1日単位で管理すれば足りる有給休暇を、時間単位というより細かな単位で管理することとなるため、管理がより煩雑となります。

人数にもよりますが、手作業は現実的ではなく、システムの導入等検討いただいた方がよいでしょう。 加えて、時間単位での取得にあたっては時季変更権が認められることは基本的にありません。そのため、「その日のその時間に居てもらわないと困る」といった場面では、制度自体が弊害になる可能性があります。

労働者側のデメリット

有給制度の本質は、労働者に休養を与え、疲れをいやすという点にあります。 時間単位で取得することでこの「休養」の目的が達成できるかは、疲労度、有給の取り方・使い方に依存することになるかと思います。

時間単位年休を導入する際に必要な手続き

時間単位年休を導入するにあたっては、以下の手続きを踏む必要があります。

就業規則に記載する

就業規則に年次有給休暇の時間単位での付与に関する一連の規定をする必要があります。

労使協定を締結する

就業規則の定めにしたがって、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で、書面による協定を締結する必要があります。 なお、この協定は、労基署に届出る必要はありません。

労使協定で定める事項

以下の事項を定める必要があります。

① 時間単位年休の対象者の範囲 ② 時間単位年休の日数 ③ 時間単位年休1日分の時間数 ④ 1時間以外の時間を単位として与える場合の時間数

なお、実際に定めるにあたっては、以下に述べるとおり、注意が必要です。

時間単位年休を導入する際の6つの注意点

時間単位での年休制度を導入するにあたっては、以下の注意点があります。

①30分単位など分単位での取得は認められない

あくまで「時間単位」ですので、30分単位など、分単位での年休取得は認められていません。 分単位での年休では、体を休めるという年休制度の本来の目的が達成できないと考えてられているためです。

②年5日間の有給取得義務分に含めることはできない

企業側は、年次有給休暇付与日数が10日以上の全ての労働者に対し、年5日の年次有給休暇を確実に取得させることが必要となっています。 時間単位の有給取得義務分については、この「年5日」の年次有給休暇から差し引くことは認められていません。

③時間単位年休を計画的付与として与えることはできない

時間単位年休は、労働者が請求した時季に与えるものであることが前提とされています。 したがって、計画的付与の対象とすることはできません。

④時間単位年休は原則労働者が自由に取得できる

そして、時間単位の年休取得にあたっては、会社側は時季変更権の行使をすることが基本的にはできません。

⑤時季変更権の行使は認められにくい

時間単位年休は、年休取得を促進するために導入するという前提があります。 加えて、時間単位であれば、企業側への負担が大きいということはないことが多数と思われます。 なので、時季変更権は基本的には認められないことに注意しましょう。

⑥これまで以上に有給休暇の適切な管理が求められる

時間単位年休については、より細かな単位での管理が必要となり、さらに会社側で、時季変更権の行使をしても認められることはありません。

時季変更権が行使できないという意味で、場合によっては、一日単位での取得より会社に与える影響が大きくなりかねないため、これまで以上に、適切な有給休暇の管理が求められます。

時間単位年休の導入でお悩みなら、労務問題の専門家である弁護士にご相談下さい。

時間単位年休の導入にあたっては、そもそも誰がどのように管理するかといったフロー整備に加えて、労使協定等の事前整備や、導入後の実施についても注意すべき点が多数あります。 導入に先立って、まずは弁護士にご相談ください。

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監修:弁護士 伊東 香織弁護士法人ALG&Associates 横浜法律事務所 所長
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